JP4032056B2 - 多孔性アルミナ膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔性アルミナ膜及びその形成方法、磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記憶装置に係り、特に、規則的かつ一様な大きさ及び形状を有する細孔が形成された多孔性アルミナ膜、及びその安価で容易な形成方法、並びにその細孔に磁性材料を充填した磁気記録媒体に関する。
数nmから数百nmサイズの細孔が規則的な配列を有する多孔性材料は、フラットディスプレーの電子エミッタとして用いられるカーボンナノチューブを配列するためのテンプレート、あるいは100Gビット/平方インチ以上の高密度磁気記録媒体を達成するために低ノイズ化を図ることを目的として磁性材料を規則的に配置するためのテンプレート等として注目されている。
多孔性材料として、アルミニウム膜を陽極酸化して細孔が形成された陽極酸化アルミナ材料はナノスケールの構造形成が可能である。陽極酸化アルミナ材料に規則的な細孔を形成する手法として、2段階陽極酸化法や細孔の起点となる窪みを予め形成後陽極酸化法を用いる手法などがある。特に窪みを予め形成する手法は、アルミニウム表面に細孔形成の起点となる窪みパターンを押し付け・転写等により形成しておくことで、陽極酸化により窪みの位置に細孔が形成されるので、細孔の位置制御が容易な点など優れた手法である(例えば非特許文献1及び特許文献1参照。)。
しかしながら、細孔形成の起点となるべき窪みパターンは、ナノスケール構造となるために、従来は電子ビームあるいはイオンビームで形成することが必要であり、これでは大面積に安価にパターンを形成することが困難であった。
一方、ナノスケールの構造を形成する手法として、ポリスチレンなどの球状微粒子を自己組織化的に六方細密充填構造に配列させ、配列した微粒子の隙間に金属等を成膜し、これをナノ構造パターンとして利用する提案もなされている(非特許文献2参照)。さらに、こうした球状微粒子の自己組織化配列を陽極酸化の窪みパターン形成に利用する手法が提案されている(特許文献1参照。)。すなわち、アルミニウム板表面にポリスチレン微粒子を配列させ、これをマスクにしてSiOを蒸着し、ポリスチレン微粒子の隙間に堆積させる。さらに堆積されたSiOをマスクにアルミニウムをエッチングして窪みパターンとするものである。
しかし、この手法ではSiOをポリスチレン球の隙間を通じて回り込ませているので、ポリスチレン球の微妙な配列のずれにより生じる隙間の大小により堆積されるSiOのパターンが変化し、マスクの開口部の位置がずれてしまう。その結果、ポリスチレン球の配列の不均一性を増長させてしまい、規則的な配列な細孔を形成することが困難である。また、マスクの開口部の形状自体も真円からほど遠い形状となってしまう。その結果、窪みを基点として陽極酸化法により形成される細孔の配列は不均一となり、また細孔の形状も真円からほど遠い形状となってしまうという問題がある。さらにこの方法はナノ構造を形成しようとする基板毎に微粒子を配列させなければならず、生産性に乏しいという問題がある。
特許文献1:特開平10−121292号公報
特許文献2:特開平6−277501号公報
非特許文献1:益田、日経先端技術、2002年07月22日号、p9−12
非特許文献2:C.L.Hayes,R.P.Van Duyne:J.Phys.Chem.B 2001,105,5599−5611.
そこで、本発明は上記の課題を解決した新規かつ有用な多孔性アルミナ膜びその形成方法、多孔性アルミナ膜を用いた磁気記録媒体及びその製造方法、並びに磁気記憶装置を提供することを概括課題とする。
本発明のより具体的な課題は、優れた規則性を有し欠陥が低減された細孔パターンを有する多孔性アルミナ膜、及びその安価な生産方法を提供することである。
本発明の他の具体的な課題は、上記多孔性アルミナ膜を用いた、高密度記録が可能な磁気記録媒体及びその磁気記録媒体を備えた磁気記憶装置を提供することである。
本発明の一観点によれば、
複数の細孔を有する多孔性アルミナ膜の形成方法であって、
プロセス基板上に形成した感光性樹脂層の表面に、粒径の略揃った球状粒子を配列しレーザ光を照射して凹部を形成する凹型形成工程と、
前記凹部に対応する突起を表面に有する押圧部材を形成する押圧部材形成工程と、
主基板上に形成されたアルミニウム膜の表面に前記押圧部材を押圧して、該アルミニウム膜に窪みを形成する窪み形成工程と、
陽極酸化法によりアルミニウム膜をアルミナ膜に変換すると共に、前記窪みを起点として細孔を形成する工程とを備えた多孔性アルミナ膜の形成方法が提供される。
本発明によれば、球状粒子を配列させた感光樹脂層にレーザ光を照射することにより、感光樹脂層の表面に凹部が規則的に配列した凹型を容易に形成することができる。この凹部は球状粒子の配列に従って形成されるので、凹部が形成された凹型を転写してスタンパを形成し、さらにスタンパをアルミニウム膜に押圧して窪みを形成し、陽極酸化法により窪みを基点として細孔を形成することにより、球状粒子の優れた規則性を有する配列パターンを細孔の配列パターンに転写することができる。球状粒子の配列パターンは略六方細密充填配列を形成しており、細孔の配列パターンも同様となる。優れた規則性を有する多孔性アルミナ膜を形成することができる。
また、前記凹部は単にレーザ光を球状粒子を配列させた感光樹脂層に照射するだけで形成され、現像工程を必要としないので、低コスト化を図ることができる。
前記凹型形成工程において感光性樹脂層を選択的に除去して凹部を形成してもよく、さらに、前記球状粒子の底に接する感光性樹脂層の部分を少なくとも除去してもよい。感光樹脂層に形成する凹部を球状粒子の底に接する部分にすることにより、球状粒子の中心と凹部の中心を合わせることができ、その結果球状粒子の配列パターンに忠実な凹部のパターンを形成することができる。
本発明の他の観点によれば、
複数の細孔を有する多孔性アルミナ膜であって、
前記細孔の配列パターンは略六方細密充填配列をなし、
当該多孔性アルミナ膜表面の細孔の形状が円であることを特徴とする多孔性アルミナ膜が提供される。
従来のアルミナ膜に細孔を規則的に形成する方法では例えば2段階陽極酸化法が提案されている(Masuda et al.,Science,vol.268,p.1466(1995))。この方法では、細孔が長距離規則構造を得ることができる。しかしながら、形成された細孔は局所的には乱れを生じ、細孔の形状も円とはならない。一方、本発明によれば、球状粒子の配列は、球状粒子の粒径、形状により決定され、例えば第1実施の形態において説明するポリスチレン球のように狭い幅の粒径分布を有するものを用いることにより、高度の規則的なパターンを形成することができる。そのパターンを転写することにより本発明の多孔性アルミナ膜の細孔が形成されるので、六方細密充填配列のパターンを形成することができる。また、細孔の形状は、球状粒子の形状が転写されたものであるので円とすることができる。
本発明のその他の観点によれば、
基板と、
前記基板上に、上記の形成方法により形成された多孔性アルミナ膜と、
前記多孔性アルミナ膜に形成された細孔の内部に充填された磁性粒子とを備えた磁気記録媒体が提供される。
本発明によれば、多孔性アルミナ膜の細孔が優れた規則性を有する配列パターンを形成しているので、磁性粒子間の静磁気的相互作用、交換相互作用の大きさのバラツキを低減することができ、磁気記録媒体の媒体ノイズを低減することができる。その結果、高記録密度化を図ることができる。
本発明のその他の観点によれば、磁気抵抗効果型再生ヘッドを有する磁気ヘッドと、上記の磁気記録媒体とを備えた磁気記憶装置が提供される。
本発明によれば、上述したように、磁気記録媒体は低ノイズ媒体であり高密度記録可能であるので、磁気抵抗効果型再生ヘッドと組み合わせることにより高密度記録を実現することができる。
図1Aは、本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜が形成された積層構造体の要部平面図である。
図1Bは、図1AのX−X断面図である。
図2は、本発明の第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の形成工程を示すフローチャートである。
図3A〜3Cは、第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程(その1)を示す図である。
図4A〜4Bは、第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程(その2)を示す図である。
図5A〜5Bは、第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程(その3)を示す図である。
図6A〜6Bは、第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程(その4)を示す図である。
図7A〜7Bは、第1実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程(その5)を示す図である。
図8は、引き上げ法によりポリスチレン球を感光性樹脂層表面に塗布する様子を示す図である。
図9は、感光性樹脂層表面に塗布されたポリスチレン球のAFM像である。
図10は、レーザ光照射の初期に集中的にレーザ光が照射される部分とポリスチレン球との配置の関係を示す平面図である。
図11は、本発明の第2実施の形態に係る磁気記録媒体の断面図である。
図12は、第2実施の形態の変形例に係る磁気記録媒体の断面図である。
図13は、本発明の第3実施の形態に係る磁気記憶装置の要部を示す断面図である。
図14は、図13に示す磁気記憶装置の要部を示す平面図である。
符号の説明:10…多孔性アルミナ膜、11…主基板、12…電極層、14…細孔、23…ポリスチレン球、26…凹型、27…スタンパ、30…磁気記録媒体、32…軟磁性裏打ち層、33…磁性粒子、40…磁気記憶装置
発明を実施するための最良の態様
以下に、本発明を実施の形態を挙げて詳細に説明する。
(第1の実施の型態)
本発明の第1の実施の形態に係る多孔性アルミナ膜およびその製造方法について説明する。図1Aは本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜が形成された積層構造体の要部平面図、図1Bは、図1AのX−X断面図である。
図1A及び図1Bを参照するに、本実施の形態の多孔性アルミナ膜は、基体11を覆う電極層12上に形成され、複数の規則的に配列された細孔14を有するアルミナ材料から構成されている。
細孔14は、アルミナ膜表面に略円形の形状を有し、膜厚方向がアルミナ膜表面から電極層12に達して、略円筒状の形状を有している。また、細孔の平面的な配列は略六方細密充填構造をなしている。すなわち、1つの細孔は6つの細孔が形成する正六角形のほぼ中心に位置する。係る細孔の配置は、後述するポリスチレン球の配置が複写されたものである。このような細孔配列は2段階陽極酸化法を用いて酸及び化成電圧を厳密に制御することによっても得ることができる。しかし、本実施の形態の多孔性アルミナ膜は、粒径の揃ったポリスチレン球を使用することにより容易に六方細密充填構造を形成することができると共に、ポリスチレン球の粒径を選択することにより細孔の間隔を容易に制御することができるという特長を有する。
電極層12は、導電材料であれば特に材料は限定されず、例えば、導電性の金属や合金、例えばCu、W、Pt、Pdなど、及びこれらの合金よりなり、陽極酸化処理を行う際のアノードとしての役割を果たす。電極層12は、基体11が導電材料よりなる場合は省略してもよい。
基体11は、特に材料は限定されず、例えば金属材料や、半導体材、樹脂材料、セラミックス材料料でもよく、また、細孔を有する多孔性アルミナ膜を形成後、電極層12と共にあるいは基体のみ溶解等して除去してもよい。
図2は本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の形成工程を示すフローチャートである。
図2を参照するに、多孔性アルミナ膜の形成工程は、感光樹脂層の表面に球状粒子を配列してレーザ光により凹部を形成する凹型形成工程(S100)と、前記凹部に対応する凸部を有するスタンパ形成工程(S102)と、前記スタンパを主基板上に形成されたアルミニウム膜に押圧してアルミニム膜に窪みを形成する窪み形成工程(S104)と、窪みを起点として細孔(アルマイトポア)を形成すると共にアルミニウム膜をアルミナ膜に変換する細孔形成工程(S106)から構成されている。本実施の形態の新規で有用な特徴は、主として凹型形成工程にあるが、スタンパ形成工程(S102)から細孔形成工程については、凹型形成工程(S100)において形成された、円形状の凹部が規則正しく形成された配列パターンが複写されて多孔性アルミナ膜の細孔の配列パターン及び細孔の形状が確実に複写され、かつ1枚のスタンパから100〜10、000枚の多孔性アルミナ膜を形成することができるという特長を有する。
図3A〜図7Bは、本発明の実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の製造工程を示す図である。以下、各工程を詳しく説明する。
(凹型形成工程)
図3A〜図4Bは、凹型形成工程を示す図である。図3Aの工程では、例えばガラス基板よりなるプロセス基板21上にスプレー法、スピンコート法などにより感光性樹脂材料を塗布し、次いでプリベークして厚さ5μmの感光性樹脂層22を形成する。
感光樹脂材料としては、アゾ色素を含むウレタン−ウレア共重合体よりなる感光性樹脂材料を用いることができる。アゾ色素はアルゴンイオンレーザのレーザ光の波長488nmに近い476nm付近に吸収のピークを有するので、レーザ光を効率良く吸収することによりアゾ結合のシス−トランス光異性化反応が起こり、引き続き主鎖の化学結合が切断され蒸発することによるものと推察される。アゾ色素を含むウレタン−ウレア共重合体よりなる感光性樹脂材料としては、例えば、下式(1)に示すジアゾ系ウレタン−ウレア共重合体、下式(2)に示すジアゾ系エポキシ樹脂が挙げられる。
Figure 0004032056
ここで、RはH(水素)又は下式(3)で示されるものである。
Figure 0004032056
図3Bの工程では、引き上げ法、スピンコート法、滴下法によりポリスチレン球23を感光性樹脂層22表面に塗布する。図8は、引き上げ法によりポリスチレン球23を感光性樹脂層表面に塗布する様子を示す図である。図8を参照するに、ポリスチレン球23を容器24中に前もって水、あるいは水とアルコール(例えば、イソプロピルアルコール、ブタノール等。)、セロソルブ(例えば、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート)との混合溶媒25に分散させる。ポリスチレン球23の重量濃度は0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1質量%の範囲に設定する。
次いで感光樹脂層22が形成された基板21を浸漬後、一定の速度で引き上げる。引き上げ速度は、ポリスチレン球23の溶媒中の濃度や平均粒径により適宜選択されるが、例えば0.05μm/秒〜3μm/秒に設定される。特に高度の規則性を有する六方充填細密配列を形成させる観点からは0.1μm/秒〜1.0μm/秒に設定される。
図9は感光性樹脂層22表面に塗布された数平均粒径100μmのポリスチレン球23のAFM像である。図中の白い部分がポリスチレン球23、黒い部分がポリスチレン球23間のすき間を示す。図9を参照するに、ポリスチレン球23は規則正しく配列し、六方細密充填配列を形成し、隙間すなわち欠陥が少ないことが分かる。
次いで図3Cの工程では、プロセス基板21上方より、例えばアルゴンイオンレーザ(図示せず)を用いて波長488nmのレーザ光(矢印で示す。)を照射する。レーザ光のパワーは、レーザ光のスポット径(直径)数mmに対して例えば30mWが選択される。なお、レーザ光をスキャンしてもよい。例えばレーザ発振器から出射されたレーザ光を均一光学系を通してレーザ強度分布を均一化し、1軸あるいは2軸のガルバノミラーを用いてレーザ光をスキャンして、ポリスチレン球23が配列した感光性樹脂層22全面に照射されるようにする。レーザ光のビーム系をスリット形状あるいは長方形に整形したものを用いてもよい。効率良く均一に照射することができる。また、レーザ光は集光してもよく平行光でもよい。
レーザ光が照射されると、ポリスチレン球23によりレーザ光が集光され、レーザ光照射の初期においては、感光性樹脂層22のポリスチレン球23と接している部分22Aに集光されたレーザ光が照射され、その部分22Aの感光性樹脂層が蒸発・昇華される。すなわち、ポリスチレン球23の底と接している感光性樹脂層22Aが選択的に除去される。
図10は、レーザ光照射の初期に集中的にレーザ光が照射される部分とポリスチレン球との配置の関係を示す平面図である。集中的にレーザ光が照射される部分22Aは、ポリスチレン球23の中心と同心の円状、さらには真円状となる。したがって、ポリスチレン球23は六方細密充填配列をなし、その配列が感光樹脂層に複写されるので、規則正しいポリスチレン球23の配列が凹部の配列に正確に複写される。
ポリスチレン球23の底に接している感光性樹脂層の部分が選択的に除去される理由としては以下のように考えられる。すなわち、ポリスチレン球23に照射されたレーザ光がポリスチレン球23のレンズ効果によりポリスチレン球23の底付近に集光されると考えられる。ただし、レーザ光の波長よりポリスチレン球23が小さな直径を有する場合は、上記集光効果よりはむしろポリスチレン球23の底と感光性樹脂層との境界面においてエバネセント光が生じていると推察される。エバネセント光は、ポリスチレン球23と感光性樹脂層との距離が近いほど強度が大であり、距離が大となると指数関数的に減少するという性質を有する。したがってポリスチレン球23の底と接する感光樹脂層の部分が選択にエバネセント光が照射されると考えられる。特にエバネセント光は、ポリスチレン球23の粒径がレーザ波長の1/10以下であっても十分な強度を有すると考えられる。
したがって、後述する実施例において用いたポリスチレン球23の直径より小なる直径を有するポリスチレン球23を用いた場合であっても感光性樹脂層を選択的に除去することが可能である。
ポリスチレン球23の数平均粒径は、ポリスチレン球23が六方細密充填配列されるので、本実施の形態において最終的に形成される多孔性アルミナ膜の細孔の位置関係、すなわち細孔同士の距離を決定するものである。多孔性アルミナ膜が適用される用途にあわせて数平均粒径は設定されるが、例えば10nm〜200nmの範囲に設定される。上述したように、レーザ光の波長より1/10以下の直径であっても使用することができる。
さらに、ポリスチレン球23の粒径分布は、分散係数σ/Dが0.05以下であることが好ましい。ここで、σはポリスチレン球の粒径の標準偏差、Dは数平均粒径を示す。
図4Aに示すように、さらにレーザ光を照射することにより感光樹脂層22に深く凹部22Bが形成される。
次いで図4Bの工程では、図4Aの構造体を流水による水洗により、あるいは水等を使用した超音波洗浄器を用いてポリスチレン球23を除去する。あるいは接着テープをポリスチレン球23の表面に接着して、テープを引き剥がすことにより効率良くポリスチレン球23を除去することも可能である。以上により規則的に配列された凹部22Bを有する凹型26が形成される。
本実施の形態の凹部形成工程では、プロセス基板21の上方から見ると、ポリスチレン球23の中心に凹部22Bが感光性樹脂層22に形成されるので、ポリスチレン球23の配列に従って、規則正しく配列した凹部22Bが形成された凹型26を形成することができる。
(スタンパ形成工程)
図5A〜図5Bはスタンパ形成工程を示す図である。
図5Aの工程では、凹型26の感光性樹脂層22上に真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、めっき法等により導電材料よりなる厚さ5μmのめっきシード層28を形成する。めっきシード層としては、Ni、Ni−W合金、Feなどの金属材料、WCやTiCなどの遷移金属の炭化物、WSi、TaSi、NbSi、VSiなどの遷移金属のケイ化物、NbN、TaN、TiN、VN、ZrNなどの遷移金属の窒化物が挙げられる。特に後述するスタンパの表面を形成するので硬度が高く、かつ耐摩耗性の高い、Ni−W合金、WC、TiC、WSi、TaSiが好ましい。また、めっきシード層は上記のレーザ光により形成された感光性樹脂層22の凹部22Bに堆積されるので、感光性樹脂層22表面を損傷し難い真空蒸着法やめっき法が好ましい。めっきシード層28の厚さは0.1μm〜10μmに設定される。
図5Aの工程ではさらに、めっきシード層28を電極として電解めっき法を用いて厚さ300μmのNiめっき膜29を形成する。例えば、スルファミン酸ニッケル浴など公知のNiめっき浴を用いることができる。なお、Niめっき膜29の替わりにNi−W合金めっき膜を形成してもよい。
次いで図5Bの工程では、Niめっき膜をプロセス基板21側から剥離し、さらにめっきシード層28上に残留する感光性樹脂層22をメチルエチルケトン等の感光性樹脂層を溶解可能な有機溶剤により溶解除去し、Niめっき膜29の裏面を機械的研磨あるいは化学的機械研磨により研磨して平坦性及び表面粗さを調整する。以上により凸部28Aが規則的に配列した配列パターンを有するスタンパ27が形成される。
(窪み形成工程)
図6A〜図7Aは窪み形成工程を示す図である。
図6Aの工程では、ガラス基板などの主基板11上に真空蒸着法、スパッタ法、無電解めっき法等により厚さ0.1μm〜10μmの導電材料よりなる電極層12を形成する。
図6Aの工程ではさらに、電極層12上に真空蒸着法、スパッタ法、めっき法等により厚さ500nmのアルミニウム膜13を形成する。具体的には、アルミニウム膜13の厚さは多孔性アルミナ膜が適用される用途にあわせて選択されるが、50nm〜500μmの範囲に設定される。また、アルミニウム膜の純度はより高い方が好ましく、純度が99.995%〜99.9995%の範囲に設定されることが好ましい。
アルミニウム膜の表面粗さは、平均表面粗さRaで1nm以下、最大粗さRmaxで20nm以下(好ましくは10nm以下)に設定される。最大粗さRmaxが20nmより大となると、スタンパ27の凸部28Aが転写されて形成される窪みより表面粗さが大となり、細孔形成工程において表面粗さに起因する細孔が形成され、細孔配列の規則性を乱してしまう。
次いで図6Bの工程では、油圧式のプレス機(図示せず)等を用いてスタンパ27をアルミニウム膜13表面に押圧して窪み13Aを形成し、図7Aに示す窪み13Aが形成されたアルミニウム膜13を有する構造体が形成される。窪み13Aはスタンパ27の凸部28Aの配列を複写したものであるので、規則性を有する窪みパターンが形成される。
(細孔形成工程)
図7Bは細孔形成工程を示す図である。
図7Bの工程では、陽極酸化法により図7Aの構造体の窪み13Aを起点としてアルマイトポアの細孔14を形成すると共に、アルミニウム膜13を酸化アルミニウム膜14なる多孔性アルミナ膜10に変換する。アルミニウム膜13に対する陽極酸化法には、例えば硫酸浴、リン酸浴、あるいはシュウ酸浴中で、電極層12をアノード、カーボンあるいは白金電極をカソードとして用いて電圧を印加する。陽極酸化法を用いると、窪み13Aのみを起点として電極層12に向かって成長し、電極層12に到達する細孔14を形成することができる。したがって、窪み13Aの配列パターンの規則性を有する細孔14の配列パターンを形成することができる。また、細孔14は電極層12まで達して形成されるので、細孔14の深さはアルミニウム膜13の厚さにより設定することができる。この細孔14は、アスペクト比が大であっても形成することができ、また、細孔14同士が結合することがない。さらに、窪み13Aが円形状であるので、多孔性アルミナ膜の表面の細孔14の形状も円形状に形成される。
なお、細孔14の直径を拡大する場合は、陽極酸化処理後にリン酸などの溶液中でウェットエッチングしてもよく、等方性のドライエッチング法を用いてもよい。ドライエッチングでは、たとえば、CClガスを処理ガスとして用いることができる。必要により細孔14の直径を拡大し、次の炭素層15を形成する際の細孔14の直径は、例えば10〜100nmに設定される。以上により、本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜が形成される。
本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜は、ポリスチレン球23の配列パターンが複写されて細孔が形成されているので、細孔配列パターンが規則的であり、ほぼ六方細密充填構造をなしている。さらに、ポリスチレン球23にレーザ光が照射されて形成される凹部は円形状であるので、凹部が転写されて多孔性アルミナ膜の細孔の形状も円形状に形成される。
本実施の形態に係る多孔性アルミナ膜の形成方法では、凹型26からスタンパ27を形成しているので、スタンパの凸部が摩耗、破壊されるまでアルミニウム膜に窪みを形成できるので、従来の基板一枚ごとにポリスチレン球23を配列させる場合と比較して、著しく低コスト化を図ることができる。
なお、本実施の形態ではポリスチレン球23を例に説明したが、粒径の揃った粒子であってレーザ光を透過するものであれば限定されない。例えば、シリカ粒子を用いることができる。
(第2の実施の形態)
図11は、本発明の実施の形態に係る磁気記録媒体の断面図である。図11を参照するに、本発明の実施の形態に係る磁気記録媒体30は、基板31と、基板31上に形成された軟磁性裏打ち層32と、軟磁性裏打ち層32上に形成された多孔性アルミナ膜10と、多孔性アルミナ膜10に形成された複数の規則的に配列された細孔14と、細孔14を充填する磁性粒子33と、多孔性アルミナ膜10と磁性粒子33を覆うように形成された保護膜34と、保護膜34上に形成された潤滑層35などから構成されている。
本実施の形態の磁気記録媒体30は、多孔性アルミナ膜10が第1の実施の形態に係るものであるので、細孔33が一様かつ規則的に形成され、さらに細孔の部分的な欠落や細孔同士の間隔が著しく異なるなどの欠陥の発生が抑制されているので、細孔14に充填された磁性粒子33同士の相互作用、例えば静磁気的相互作用、交換相互作用の大きさのバラツキを低減することができ、磁気記録媒体30の媒体ノイズを低減することができるものである。
本実施の形態の磁気記録媒体30の基板31は、例えばディスク状のプラスチック基板、ガラス基板、NiPメッキアルミ合金基板、シリコン基板などを用いることができ、特に基板11がテープ状である場合は、PET、PEN、ポリイミド等のプラスチックフィルムを用いることできる。
軟磁性裏打ち層32は、スパッタ法、CVD法、メッキ法などにより形成され、軟磁性の非晶質層あるいは多結晶層より構成されている。具体的には、厚さが50nm〜2μmのNiFe(パーマロイ)、CoFeB、CoCrNb、CoZrNb、NiFeNb等を用いることができる。軟磁性裏打ち層32を設けることにより、単磁極ヘッドにより記録する場合に、単磁極ヘッドからの全磁束を軟磁性裏打ち層32が吸収することができ、特に、軟磁性裏打ち層32の飽和磁束密度Bsと膜厚の積の値は大きい方が好ましい。飽和記録が可能となり、磁性粒子33を単磁区化することができる。また、軟磁性裏打ち層31の高周波特性、例えば、高周波透磁率を高い方が好ましい。より高い周波数の記録すなわち高転送レートの記録が可能となる。なお、軟磁性裏打ち層32は、導電性を有し、多孔性アルミナ膜10を陽極酸化法により形成する際の電極(アノード)として機能する。
多孔性アルミナ膜10は、第1の実施の形態に係る多孔性アルミナ膜であり、膜厚は20nm〜500nmに設定されることが好ましい。また、多孔性アルミナ膜10に形成される細孔の間隔(中心間距離)は、細孔14の直径+2nm以上あることが好ましく、細孔14の直径+50nm以下とする。細孔14の直径+50nmより大きいと一単位の情報を保持する磁性粒子33の密度が低下するので、記録密度が著しく低下してしまう。また、細孔14の直径は2nm〜50nmの範囲であることが好ましい。
磁性粒子33は、例えば軟磁性裏打ち層32をカソードとして電解めっき法により磁性粒子33にCo層あるいはCo合金層を用いて、磁性粒子33の磁化容易軸を基板11面に垂直に形成する。例えば、Co層のc軸を基板に垂直方向に配向させるためには、下地層32Aとして基板面に垂直方向に(111)が配向したfcc構造の材料、例えば白金族の元素、Pt、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びこれらの合金よりなる層を形成する。これらの元素または合金は基板面に垂直方向に(111)配向する自己配向性を有しているので、容易に(111)配向を形成することができる。下地層32Aは軟磁性裏打ち層32を形成した後に、軟磁性裏打ち層32上に同様の方法により形成することができ、厚さが例えば5nm〜100nmに設定される。
磁性粒子33には、Coの他にCoにCr,Ni、W、Re、Mn、P等を添加してCoの飽和磁化を低下させてもよい。基板面に垂直にc軸配向を保持しながら、記録再生における媒体ノイズを低減することができる。磁性粒子33を形成するためのメッキ液は、例えば硫酸コバルト(II)7水和物0.2Mとホウ酸0.3Mよりなる水溶液(Coよりなる磁性粒子を形成する場合)、さらに硫酸ニッケル(II)7水和物を添加した水溶液(CoNiよりなる磁性粒子を形成する場合)等、公知のメッキ液を用いることができる。
また、磁性粒子33には、スパッタ法により、CoCr系合金、特に、CoCrPt、CoCrTa、CoCrPt−M合金(M=B、Mo、Nb、Ta、W、Cu、Cまたはこれらの合金)、さらには、FePt、CoPt、及びCoPdを用いて形成することができる。磁気異方性定数が大であり、磁化容易軸であるc軸を基板31に対して略垂直方向にすることにより、熱揺らぎ耐性の優れた垂直磁気記録媒体を形成することができる。なお、FePt、CoPt、及びCoPdにはさらにAg、Au、Cu、Sb、Ni、又はこれらの合金を添加してもよい。
保護層34は、スパッタ法、CVD法などを用いて形成され、アモルファスカーボン、水素化カーボン、窒化カーボン等により構成される。具体的には、例えば水素化カーボンは、Hガスを含むArガス雰囲気中でカーボンをスパッタすることにより形成することができ、さらに窒素ガスを添加してもよい。また保護層34の厚さを0.5nm〜5nmとする。保護層34はその硬度及び潤滑剤との結合性の観点からは水素化カーボンが好ましい。
なお、保護層34を形成する前に、多孔性アルミナ膜10と磁性粒子33の表面を平滑化処理を行ってもよい。磁気記録媒体30の平滑性を高め磁気ヘッドの再生素子と磁性粒子との距離の狭小化を図ることができ、一層の高記録密度化を図ることができる。平滑化処理は、機械的研磨法、CMP法等を用いることができる。例えば、CMP法を用いる場合は酸化アルミニウムと磁性粒子を形成する合金に対して研磨速度の大なるスラリーを用いて行う。また、酸化アルミニウムに対しては研磨速度の小なるスラリーを用いて、多孔性アルミナ膜10表面を研磨ストッパとして磁性粒子表面のみを研磨しもよい。特に、第1の実施の形態において説明したように、多孔性アルミナ膜10の表面性及び平坦度は良好であるので、多孔性アルミナ膜10を研磨ストッパとすることにより、容易に良好な平滑性を得ることができる。平滑化処理後の表面粗さは、平均表面粗さRaが1nm以下に設定される。
潤滑層18は、公知のパーフルオロポリエーテルを主鎖として各種末端基を有するZDol(Monte Fluos社製 末端基:−OH)、AM3001(アウジモント社製、末端基:ベンゼン環)、あるいは末端基を有さないZ25(Monte Fluos社製)等を用いることができる。
本実施の形態によれば、隣接している磁性粒子33が所定の間隔をもって離隔されている。例えば、従来の連続膜により垂直磁気記録層を形成していた場合は磁化の方向が変化する領域(いわゆる磁化遷移領域)は、磁性粒子の大きさ、形状、磁気特性、磁性粒子間の相互作用等のバラツキによりジグザグの形状を呈し、媒体ノイズが増加し高記録密度化の障害となっていた。しかし、本実施の形態によれば、磁性粒子33間の距離及びその均一性は、第1の実施の形態において説明したポリスチレン球の粒径及び粒径分布に依存する。したがって、磁性粒子33同士が接することなく、かつ距離がほぼ一定となる。その結果、静磁気的相互作用、交換相互作用の大きさのバラツキを低減することができ、磁気記録媒体30の媒体ノイズを低減することができる。
次に本実施の形態の変形例について説明する。図12は、本実施の形態の変形例である磁気記録媒体の断面図である。本変形例は、軟磁性裏打ち層の替わりに電極層を設け、さらに磁性粒子の下部に下地層を設けた以外は、上述した実施の形態と同様である。本変形例の磁性粒子が基板と平行方向に磁化容易軸を有することに特徴がある。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図12を参照するに、本実施の形態の変形例に係る磁気記録媒体50は、基板31と、基板31上に形成された電極層51と、電極層51上に形成された多孔性アルミナ膜10と、多孔性アルミナ膜10に形成された複数の規則的に配列された細孔14と、細孔14を充填し電極層51上に形成された下地層52、及び下地層52上に形成された磁性粒子53と、多孔性アルミナ膜10と磁性粒子53を覆うように形成された保護膜34と、保護膜34上に形成された潤滑層35などから構成されている。
電極層51は上述したように導電材料であれが限定されないが、特にNiPが好ましい。電極層51上に形成される下地層52を配向させることができる。
下地層52は、スパッタ法、蒸着法を用いて膜厚20nmのCrまたはCrMo、CrV、CrWなどより形成されている。かかる下地層はこの上に形成される磁性粒子53のc軸配向を基板面に平行にすることができる。具体的には厚さが10nm〜100nmに設定される。
磁性粒子53はスパッタ法、蒸着法により形成され、強磁性を有するCoCr系合金、例えばCoCrPt、CoCrTa、CoCrPt−M(M=B、Mo、Nb、Ta、W、Cu、Cまたはこれらの合金)より構成されている。下地層によりc軸が基板面に平行に形成される。磁性粒子53の厚さが例えば10nm〜100nmに設定される。これらの材料のうち、面内記録媒体として好適な磁性材料は、例えばCoCrPt合金、特にBを添加したCoCrPtBである。結晶磁気異方性エネルギーが大であるので、異方性エネルギーを増加させることができる。KV/kTで表される熱的安定性の指標を向上し、熱的揺らぎによる減磁を抑制にすることができる。ここで、Kは異方性定数、Vは磁性粒子53の体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。特に本変形例に係る磁気記録媒体は磁性粒子53がそれぞれ隣接する磁性粒子53とが分離されており、磁性粒子53間相互作用の観点から孤立性が高まっているので、異方性エネルギーが大であるほど熱的安定性が向上する。
またさらに熱的安定性を向上するために、磁性粒子53を複数の強磁性膜間にRu等の非磁性膜を形成し、強磁性膜間を反強磁性結合した積層体により磁性粒子53を構成してもよい。磁性粒子53は、例えば上(表面)から、CoCrPtB強磁性膜(厚さ10nm)/Ru膜(厚さ0.8nm)/CoCrPtB強磁性膜(厚さ5nm)/CrMo下地層(厚さ20nm)の構成とする。上下のCoCrPtB強磁性膜が反強磁性結合し、磁性粒子53の実質的な残留磁化を増加させずに上記指標のKV/kTのVを増加させることができるので、熱的安定性を高めることができる。
本変形例によれば、磁性粒子53は細孔14の規則的な配列に従って、略一定の間隔をもって離隔されている。したがって、磁性粒子53間の交換相互作用及び静磁気的相互作用の大きさのバラツキが低減され、さらにこれらの相互作用が切られる。その結果、高記録密度での媒体ノイズの増加を低減することができ、高密度記録が可能となる。磁性粒子53の磁化容易軸は基板31の面内方向に配向されており、面内記録の記録密度の限界をさらに高めることができる。
以下、第1及び第2実施の形態に係る実施例について説明する。
ガラス基板(直径1cm)に、上式(1)のアゾ色素含有ウレタン−ウレア共重合体を10mL滴下し、5μm厚さにスピンコートし(回転数1500rpm、20秒間)、感光樹脂層を形成した。数平均粒径200nmのポリスチレン球を分散させた1質量%水溶液(米Polysciences社、商品名Nanobead)を純水で10倍に希釈し、該感光樹脂層表面に1.0mL滴下し乾燥して、六方充填細密構造のポリスチレン球配列パターンを形成した。
次いで、該感光樹脂層表面のポリスチレン球配列パターンにビーム径3mmのアルゴンイオンレーザ(波長488nm、出力30mW)をスキャンしながら照射した。その後、ポリスチレン球を水洗して除去し、凹型とした。AFMを用いた感光樹脂層の表面形状の測定によりポリスチレン球配列パターンに応じた凹部パターンが形成されていることを確認した。
このようにして得られた凹型の該感光樹脂層の表面にNi材料を蒸着法により厚さ5μmのめっきシード層を形成し、電解めっき法により該めっきシード層を電極としてスルファミン酸ニッケル浴(塩化ニッケル30g/L、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L)を用いて、めっきシード層上に厚さ300μmのNi膜のめっき層を形成した。次いで、ガラス基板からめっきシード層/めっき層の積層体を剥離し、めっきシード層表面の感光樹脂層の残渣をメチルエチルケトンにより溶解除去し、さらに該積層体の裏面をCMP法より研磨して、凹型の凹部パターンに対応した凸部パターンが形成されたスタンパを得た。
このようにして得られたスタンパをプレス機を用いてアルミニウム板に1.47×10Pa(1.5t/cm)の圧力により押し付けて、アルミニウム板表面にスタンパの凸部パターンに対応した窪みパターンを形成した。
次いで、窪みパターンが形成されたアルミニウム板を、硫酸浴(濃度2.0mol/dm)にて80Vを印加して陽極酸化を行い、アルミニウム板表面に細孔が形成されたアルミナ膜が得られた。以上により本実施例に係る多孔性アルミナ膜が得られた。
AFMを用いた測定によりアルミナ膜表面にポリスチレン球配列パターンに対応した200nm間隔の細孔パターンが形成されていることを確認した。
ディスク状のガラス基板(2.5インチサイズ、日本板硝子社製)に実施例1と同様にしてスピンコートにより厚さ5μmの感光樹脂層を形成した。次いで、数平均粒径100nmのポリスチレン球を分散させた1質量%水溶液(米Polysciences社、商品名Nanobead)に浸漬し、引き上げ法(引き上げ速度:2μm/秒)を用いて、該感光樹脂層表面にポリスチレン球を塗布し乾燥し、感光樹脂層表面に六方充填細密構造のポリスチレン球配列パターンを形成した。
このようにして得られた該感光樹脂層表面のポリスチレン球配列パターンに、実施例1と同様にレーザ光を照射、水洗し、ポリスチレン球配列パターンに応じた凹部パターンが形成された凹型を得た。次いでこのようにして得られた凹型を用いて実施例と同様にしてスタンパを形成した。
他のディスク状のガラス基板(2.5インチサイズ、日本板硝子社製)に、スパッタ法により厚さ2μmのTi膜よりなる電極層を形成し、該電極層上に純度99.995質量%のアルミニウム材のスパッタターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタ法により厚さ500nmのアルミニウム膜を形成した。スタンパをプレス機を用いて該アルミニウム膜に1.47×10Pa(1.5t/cm)の圧力により押し付けて、アルミニウム膜表面にスタンパの凸部パターンに対応した窪みパターンを形成した。
次いで、窪みパターンが形成されたアルミニウム膜を、電極層であるTi膜をアノードとして、硫酸浴(濃度2.0mol/dm)にて40Vを印加して陽極酸化を行い、細孔が形成されたアルミナ膜が得られた。以上により本実施例に係る多孔性アルミナ膜が得られた。
AFMを用いた測定によりアルミナ膜表面に、ポリスチレン球配列パターンに対応した100nm間隔の細孔パターンが形成されていることを確認した。
ディスク状のシリコン基板(2.5インチサイズ)に、スパッタ法により厚さ500nmのCoZrNb膜よりなる軟磁性裏打ち層を形成し、該軟磁性裏打ち層上に純度99.995質量%のアルミニウム材のスパッタターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタ法により厚さ100nmのアルミニウム膜を形成した。
実施例2と同様にして得られたスタンパをプレス機を用いて該アルミニウム膜に1.47×10Pa(1.5t/cm)の圧力により押し付けて、アルミニウム膜表面にスタンパの凸部パターンに対応した窪みパターンを形成した。
このようにして得られた窪みパターンが形成されたアルミニウム膜を、軟磁性裏打ち層であるCoZrNb膜を電極として、実施例2と同様の条件により陽極酸化を行ない、100nm間隔の細孔パターンが形成されたアルミナ膜を得た。
次いで、このようにして得られたアルミナ膜に形成された細孔底部のバリア層をリン酸(濃度1質量%)を用いてエッチングしてCoZrNb膜までをスルーホール化した。さらに電解めっき法を用いて、CoZrNb膜をカソードとして硫酸鉄と硫酸コバルトの混合溶液浴(硫酸第一鉄80g/L、硫酸コバルト50g/L、ホウ酸30g/L)にて、細孔内に強磁性膜FeCoを形成した。
次いで、アルミナ膜及び強磁性膜FeCo表面をCMP法により平坦化した。平坦化された表面に、スパッタ法によりHガスを含むArガス雰囲気中でカーボンを成膜して厚さ3nmの水素化カーボンよりなる保護膜を形成した。
次いで、アルミナ粒子材を研磨剤とする研磨テープをもちいて該保護膜の表面の微少突起を除去する研磨処理を行い、ついで、保護膜上にZ−Dol潤滑剤を塗布して厚さ10nmの潤滑層を形成した。以上により本実施例に係る垂直磁気記録方式の磁気記録媒体が得られた。
[比較例1]
本発明によらない比較例に係る磁気記録媒体として、実施例3においてスタンパを使用せず、窪みパターンをアルミニウム膜に形成しないで陽極酸化法により細孔を形成した以外は、実施例3と同様の条件により垂直磁気記録方式の磁気記録媒体を形成した。
(S/N比の評価)
実施例3及び比較例1に係る磁気記録媒体のS/N比の評価を行った。垂直磁気記録用の単磁極ヘッドを用いて、75Gbit/inの記録密度条件により磁気記録媒体に記録しGMRヘッドにより再生してS/Nを測定した。
その結果、比較例1に係る磁気記録媒体は21dBに対して、実施例3に係る磁気記録媒体は25dBであり、優れた低ノイズ特性を示すことが確認できた。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の磁気記憶装置の一実施の形態を示す図13及び図14と共に説明する。図13は、磁気記憶装置の要部を示す断面図である。図14は、図13に示す磁気記憶装置の要部を示す平面図である。
図13及び図14を参照するに、磁気記憶装置40は大略ハウジング43からなる。ハウジング43内には、モータ44、ハブ45、複数の磁気記録媒体46、複数の記録再生ヘッド47、複数のサスペンション48、複数のアーム49及びアクチュエータユニット41が設けられている。磁気記録媒体46は、モータ44より回転されるハブ45に取り付けられている。記録再生ヘッド47は、MR素子(磁気抵抗効果型素子)、GMR素子(巨大磁気抵抗効果型素子)、又はTMR素子(トンネル磁気効果型)の再生ヘッドと薄膜ヘッドの記録ヘッドとの複合型ヘッドからなる。記録ヘッドはリング型ヘッド、あるいは、磁気記録媒体46が垂直記録媒体の場合は、単磁極ヘッドでもよい。各記録再生ヘッド47は対応するアーム49の先端にサスペンション48を介して取り付けられている。アーム49はアクチュエータユニット41により駆動される。この磁気記憶装置の基本構成自体は周知であり、その詳細な説明は本明細書では省略する。
本実施の形態の磁気記憶装置40は、磁気記録媒体46に特徴がある。磁気記録媒体46は、例えば、第2実施の形態あるいは第3実施例に係る磁気記録媒体である。磁気記録媒体46の枚数は3枚に限定されず、1枚でも、2枚又は4枚以上であってもよい。
磁気記憶装置40の基本構成は、図13及び図14に示すものに限定されるものではない。本発明で用いる磁気記録媒体46は、磁気ディスクに限定されない。
本実施の形態によれば、磁気記憶装置40は、磁気記録媒体46が優れた低媒体ノイズ特性を有している。また、磁気記録媒体46の磁性粒子には、磁気異方性定数が大なるCoCrPt系合金、FePt、FePd、CoPt等を用いることができるので、優れた熱揺らぎ耐性を有している。したがって、高密度記録に対応可能である。
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本発明は、大型コンピュータ等の補助記憶装置として用いられるリニア走行の磁気テープ、あるいはヘリカルスキャン型の磁気テープに適用することができる。また、本発明は、上記磁性粒子に公知の光磁気ディスクの記録層等の積層構造を採用することにより、光磁気ディスクなどの光磁気記録媒体に適用することができる。
本発明によれば、感光樹脂層の表面に球状粒子を配列して、例えばレーザ光により凹部を形成して凹型を形成して転写することにより、優れた規則性を有し欠陥が低減された細孔パターンを有する多孔性アルミナ膜、及びその安価な形成方法を提供することができる。また前記多孔性アルミナ膜を用いた磁気記録媒体及びその磁気記録媒体を備えた磁気記憶装置を提供することができる。

Claims (9)

  1. 複数の細孔を有する多孔性アルミナ膜の形成方法であって、
    プロセス基板上に形成した感光性樹脂層の表面に、粒径の揃った透光性の球状粒子を配列し、レーザ光を前記球状粒子に照射して前記球状粒子と同心円状に集光し、複数の凹部を形成する凹型形成工程と、
    前記凹部に対応する突起を表面に有する押圧部材を形成する押圧部材形成工程と、
    主基板上に形成されたアルミニウム膜の表面に前記押圧部材を押圧して、該アルミニウム膜に窪みを形成する窪み形成工程と、
    陽極酸化法により前記アルミニウム膜をアルミナ膜に変換すると共に、前記窪みを起点として細孔を形成する工程とを備えた多孔性アルミナ膜の形成方法。
  2. レーザ光を用いた、複数の細孔を有する多孔性アルミナ膜の形成方法であって、
    プロセス基板上に形成した感光性樹脂層の表面に、前記レーザ光の波長より直径が小さく粒径の揃った透光性の球状粒子を配列し、前記レーザ光を前記球状粒子に照射して前記球状粒子と接する前記感光性樹脂層の部分を選択的に照射し、複数の凹部を形成する凹型形成工程と、
    前記凹部に対応する突起を表面に有する押圧部材を形成する押圧部材形成工程と、
    主基板上に形成されたアルミニウム膜の表面に前記押圧部材を押圧して、該アルミニウム膜に窪みを形成する窪み形成工程と、
    陽極酸化法により前記アルミニウム膜をアルミナ膜に変換すると共に、前記窪みを起点として細孔を形成する工程とを備えた多孔性アルミナ膜の形成方法。
  3. 前記凹型形成工程において感光性樹脂層を選択的に除去して凹部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  4. 前記球状粒子の数平均粒径が10nm〜200nmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  5. 前記球状粒子を溶媒中に分散した分散液を用いて引き上げ法により感光性樹脂層上に配列し、
    前記分散液中の球状粒子の重量濃度が0.05質量%〜3質量%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  6. 前記レーザ光はアルゴンイオンレーザを用いることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  7. 前記感光性樹脂層はアゾ染料を含む材料よりなることを特徴とする請求項1〜6のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  8. 前記感光性樹脂層はウレタン−ウレア共重合体又はエポキシ樹脂よりなることを特徴とする請求項1〜7のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
  9. 前記押圧部材形成工程において前記凹部が形成された感光性樹脂層の表面に導電材料よりなるめっきシード層を形成し、
    前記めっきシード層が、遷移金属、あるいは、遷移金属の炭化物、ケイ化物、及び窒化物の群のうちいずれか1つよりなることを特徴とする請求項1〜8のうち、いずれか一項記載の多孔性アルミナ膜の形成方法。
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