JP4031892B2 - 送風羽根及び回転電機 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、羽根を有する電動機,送風機,ポンプ,水車,圧縮機等の騒音・振動の低減を図った送風羽根及び回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、羽根を有するファンやブロア等の送風羽根は、羽根ピッチ角が一般に等配に形成されている。これら羽根ピッチ角が等配のものでは、回転数×羽根枚数を基本周波数とする周期的な騒音が発生し、この騒音は羽根切り音と呼ばれ問題となることがあった。そして、羽根切り音は、羽根の周囲の流路に局部的に流れを絞る舌部がある場合に大きくなって、聴感上好ましくなくなり、その対策が必要とされていた。
【0003】
例えば、横流ファンが設けられた空気調和機の室内機においては、ファンによって作り出された空気の流れが、入り口側に戻らないようにファンの周りに設けられたケースに舌部が設けられている。このような舌部があることによって、この舌部に生じている渦を羽根が周期的に横切り羽根切り音を大きくすると一般に言われている。この為、舌部を羽根から離すようにすることで、羽根切り音を小さくすることができるが、入口側に戻る空気の流れが多くなり、ファンの送風効率が低下するという問題があった。
【0004】
これらに対して、例えば、特開昭55−25555公報に示される電動機送風機,ポンプ等の回転機に使用される羽根車に係わり、低振動,低騒音化するために、羽根を車盤に不等配ピッチ角度で円形配列した羽根車が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の送風羽根の場合は、実際に使用される回転電機の実用面で課題があった。例えば、図9に示すファンの送風羽根1は、等配に円形配列して成る車盤3に引抜孔7を有する。この引抜き孔7は、回転軸からファンを引抜く際にクランプ締付具を引抜治具として使用する挿入する孔として設けてある(クランプ締付具は両側に腕があって、この腕の先端にある爪を引抜き孔7に挿入して羽根を締付け、回転軸からファンを引抜く)。しかしながら、羽根の不等配列の9枚羽根の配列間隔角度が狭くなる位置においては、引抜き孔7の必要開口幅bの寸法から半径方向の位置を車盤の外周側近くに配置せざるを得なかった。
【0006】
引抜き孔7の位置が外周側近くになると、▲1▼回転時に引抜き孔7に送風空気が流れ込み易くなり、流れの乱れが生じて乱流騒音が増大する。▲2▼送風量が減少して冷却性能が劣る恐れがあると共に、引抜き孔7の有効体積(b×h×t)に対する重さの機械的アンバランスが生じ振動が発生する恐れがある。▲3▼羽根引抜きの際に、車盤3に対して引抜治具のモーメント荷重が加わることから、車盤3の板厚を大きくして強度増を要していた。別課題として、不等配の機械的バランスは羽根のみで計算されている為、羽根の廻止用のキー8またはネジ9により重さの機械的アンバランスの補正が考慮されていないので、振動が発生する虞れがあった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて成されたもので、不等配羽根が回転電機の実使用において、引抜き孔,キー,ネジ等を有していても機械的バランスが良く、乱流騒音が減少できてファン効率の低下しない送風羽根を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の送風羽根は、複数枚の羽根を不等配に円形配列してなる車盤に引抜き孔を有する送風羽根において、引抜き孔を羽根間で該羽根の間隔が最も大きくなる180度対向できる2箇所に配置させたことにより、引抜き孔の位置が内径側となって回転半径が小さくなり、送風空気の流れが安定する。従って、回転時送風空気の乱れがないため、乱流騒音が増大したり送風量が減少して冷却性能が劣る虞れがない。(請求項1)
引抜き孔の中心位置は実験結果から確認して、車盤の半径rからr/2以下の内側とすることによって回転半径が小さくなり、送風空気の流れが安定する。回転時に送風空気の乱れがないため、乱流騒音が増大したり送風量が減少して冷却性能が劣る虞れがない。(請求項2)
引抜き孔の形状は、羽根に沿った扇形状とすることにより、羽根周りに余分な渦が発生し難くなって、回転時に送風空気の乱れがなくなり乱流騒音が増大したり送風量が減少して冷却性能が劣る虞れがない。(請求項3)
羽根の廻止用のキーまたはネジ等の位置は、羽根の配列間隔が最大位置とすることにより、機械的アンバランス影響が少なくなり、その対向した180度の位置とする羽根で機械的バランスを取るようにバランス重りを付けた送風羽根であることから振動の発生する虞れがない。(請求項4)
又、本発明の請求項5の回転電機は、冷却のファンとして請求項1乃至4のいずれかに記載の送風羽根を備えていることを特徴とする。送風羽根は、羽根ピッチ角が互いに所定のずれ角を持つよう設定されたピッチ角において、実際に用いられている回転電機の引抜き孔,キー,ネジを有しても、機械的アンバランスがなく乱流騒音が低減できることと、ファン効率が低下しないことを評価の下に確認した。(請求項5)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を回転電機たる全閉外扇形の誘導電動機に適用した一実施例について図1乃至図8を参照して説明する。
まず、図2は、本実施例に係わる誘導電動機の全体の構成を示している。この図2において、電動機本体11は、固定子枠12及び軸受ブラケット13を備えており、固定子枠12の内周面には固定子巻線15を巻装した固定子鉄心14が固着されている。この固定子鉄心14の内部には、所定の間隔を在して回転子16が配設され、回転子16の回転軸17は軸受18を介して前記軸受ブラケット13に支持されている。この時、回転軸17の両端部は電動機本体17よりも外方に突出するように構成されている。又、前記固定子枠12の外周面には、回転軸17に沿った方向に冷却フィン19が形成されており、これらの冷却フィン19間に通風路20が形成されている。
【0010】
上記回転軸17の両端部の内、反負荷側端部である図示左端部には、冷却ファンであるラジアルファンの送風羽根21が固定され、回転軸17と一体に回転するように構成されている。そして、送風羽根21を覆うように左側の軸受ブラケット13には、ファンカバー22が例えばネジ止めにより取付けられている。
【0011】
送風羽根21は、例えば鋼製,鋳物製,ポリアミド製で,図1及び図2に示すように車盤23に9枚の羽根24が円形配列し、具体的には放射状に配列されている。この時、前記羽根24は、各羽根24間の間隔が不等配となるように配設されている。又、前記車盤23は、中央部から周辺部に向って図1中、奥側(図2中、右)に傾斜する漏斗状をなし、前記中央部には回転軸17の左端部に嵌合されるボス部25が一体に形成されている。
【0012】
更に、ファンカバー22の前記送風羽根21と対向する左端面には、多数の貫通孔26aからなる吸気口26が形成されている。上記構成においては、回転子16が回転駆動されて送風羽根21が回転されると、その送風作用により空気が矢印Aで示すように吸気口26から吸引される。そして吸引された空気は、羽根24によって出口27から通風路20内に送風されることによって、電動機本体11が冷却される。
【0013】
さて、上記送風羽根21の9枚の羽根24の位置を定める位置角度は次のように設定している。ここで、9枚の羽根24の内、図1中、1番目上に位置する羽根24を1番目の羽根とし、時計廻りの順に2番目の羽根,3番目の羽根……とする。そして、n番目の羽根の位置角度θnとは、1番目の羽根24の重心と回転中心とを結ぶ直線及びn番目の羽根の重心と回転中心とを結ぶ直線の間の角度をいう。(但し、nは1から9までの整数)
羽根枚数が9枚の送風羽根においては、次のように各羽根の位置角度θnを設定することが好ましい。
【0014】
θ1=0,θ2=31,θ3=88.5,θ4=120,θ5=151,
θ6=206.5,θ7=248,θ8=276.5,θ9=310
一方、引抜き孔28は中心側の方が望ましい。引抜き孔28の開口面積(b×h)は、必要開口面積として決まっている。
【0015】
一般に、車盤23に羽根24が不等配に配置されていると、羽根24の等配置の場合よりも、羽根24間の間隔が大きくとれる位置が可能となる。引抜き孔28が内周側にある程、引抜き孔28の位置が内径側に配置できることにより、回転半径が小さくなり送風空気の流れが安定する。送風空気の流れが乱れると、流体の渦が発生してそれに伴う騒音が増大する。そこで、本実施例では騒音を極力押える為に、羽根24の配列間隔角度が最も大きい位置を引抜き孔28に配列するように設定した。羽根24の間隔が大きいことにより、引抜き孔28が内側に取れることを狙ったものである。
【0016】
引抜き孔28の中心位置を、車盤23の半径rのr/2以下の内側に設定したのは、図3に示す騒音レベルと引抜き孔の中心位置との関係に基づく実験結果から得たものである。この結果から明らかなように、車盤23の半径rと中心からの位置qの比率q/rが、0.6以上の時は騒音レベルが急激に増大している。この送風羽根21の動作時(回転周波数は30Hz)の騒音レベル(dB(A))、詳しくは騒音計にて得られた音の波形をFFTにて周波数分析した結果を図5に示す。引抜き孔28の位置比率が0.7にある場合に、800Hzから960Hzにランダムなスペクトルが卓越していることが分る。位置比率q/rが0.5では、ランダムなスペクトルが小さいことが分る。引抜き孔28の中心位置を、車盤23の半径rからr/2以下の内側とすることによって回転半径が小さくなり、送風空気の流れが安定する。回転時に送風空気の乱れがないため、乱流騒音が増大したり送風量が減少して冷却性能が劣る虞れがない。
【0017】
次に、引抜き孔28の形状は、図5に示すように扇形状で円弧内周側がボス部25側となるように設定されることで、更に騒音レベルが低減される。図6に示すように、四角形の引抜き孔形状より扇形状の方が騒音レベルが減少している。引抜き孔28の形状は、羽根24に沿った扇形状とすることにより、羽根24周りに余分な渦が発生し難くなって、回転時に送風空気の乱れがなくなり乱流騒音が増大したり送風量が減少して冷却性能が劣る虞れがない。
【0018】
又、羽根24のボス部25に穿孔した該羽根24の廻止用のキー8或いはネジ9等の位置は、図7及び図8に示すように羽根24の配列間隔が最も大きくなる位置とした。この位置は、回転羽根の機械的アンバランスの影響が小さくなることを実験で確認し、その対向した180度の位置に基準羽根θ1を設けて、この基準羽根θ1で機械的バランス修正を取るように設定してある。
【0019】
各羽根24に加わる遠心力が釣合っていない時は、機械的アンバランスが生じて振動が発生する。このような振動は、騒音の原因のひとつになる。そこで、各羽根24に加わる遠心力の釣合を、数式(1)と定義すると
【0020】
【数式1】
【0021】
RBの値が0(零)に近付く程、各羽根24に加わる遠心力は釣合っていることを示す。ここで、羽根24の廻止用のキー8或いはネジ9等の位置は、基準羽根θ1を0度とした場合に180度のボス部25位置に設け、基準羽根θ1で機械的バランス修正を取るように設定してある。具体的には、キー8或いはネジ9の重心位置の回転半径をr1 とし、質量をm1 とした場合に、回転数をωとすると、
Fr=m1 ×r1 ×ω2 (2)
で示される。このFrを基準羽根θ1で回転バランスを修正する。つまり、図7及び図8で示すように、修正錘の重心位置の回転半径をr2 とし、質量をm2 とした場合に、回転数をωとすると、
Fr=m2 ×r2 ×ω2 (3)
として表され、基準羽根θ1の質量を減量する方法である。
【0022】
羽根24の廻止用のキー8或いはネジ9等の位置は、羽根24の配列間隔が最大位置とすることにより、機械的アンバランス影響が少なくなり、その対向した180度の位置とする羽根24で機械的バランスを取るようにバランス錘を付けた送風羽根21であることから振動の発生する虞れがない。
【0023】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、複数枚の羽根を不等配に配置した送風羽根の不等配置が最大の羽根間に、引抜き孔を配設することによって、引抜き孔を穿孔したことによる騒音の発生を極力おさえることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を示す不等配羽根の車盤に引抜き孔を穿孔した送風羽根の平面図、
【図2】回転電機本体の一部断面を含む側面図、
【図3】引抜き孔の穿孔による騒音レベル図、
【図4】引抜き孔の穿孔による騒音レベルの周波数比較図、
【図5】第2実施例を示す図1相当図、
【図6】引抜き孔の形状による騒音レベル比較図、
【図7】不等配の羽根のボス部に配設のネジを示す図1相当図、
【図8】不等配の羽根のボス部に穿孔のキー溝を示す図1相当図、
【図9】従来の等配置した羽根間に穿孔の引抜き孔を示す図1相当図。
【符号の説明】
11…電動機本体、 13…軸受ブラケット、
16…回転子、 17…回転軸、
20…通風路、 21…送風羽根、
22…ファンカバー、 23…車盤、
24…羽根、 26a…貫通孔、
26…吸気口、 27…出口、
28…引抜き孔。
Claims (5)
- 複数枚の羽根を不等配に円形配列してなる車盤に引抜き孔を有する送風羽根において、前記引抜き孔を、羽根間で該羽根の間隔が最も大きくなる180度対向できる2箇所に配置させたことを特徴とする送風羽根。
- 引抜き孔の中心位置は、車盤の半径rに対してr/2以下とする請求項1記載の送風羽根。
- 引抜き孔の形状は、羽根に沿った扇形状した請求項1及び2記載の送風羽根。
- 羽根の廻止用のキー又はネジの位置は羽根の配列間隔が最も大きくなる位置とし、その対向した180度の位置に基準羽根を設け前記基準羽根で機械的バランスを取ることを特徴とする送風羽根。
- 冷却のファンとして請求項1乃至4記載の送風羽根を備えていることを特徴とする回転電機。
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-
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- 1999-09-16 JP JP26209699A patent/JP4031892B2/ja not_active Expired - Lifetime
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