JP5668220B2 - 多翼送風機 - Google Patents

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Description

本発明は、天井埋込型換気扇などの換気空調機器等に使用される多翼送風機に関するものである。
従来、この種の多翼送風機は、図4に示すように、ベルマウス101を有するファンケーシング102と、ファンケーシング102内に回転駆動可能に設置された羽根車103と、羽根車103を駆動する電動機104から構成されている。羽根車103は、主板105の外周側に複数の羽根106を有し、羽根106の外周よりも外径が大きい外周リング107を羽根車103の吸込側端部108に設けている(例えば特許文献1参照)。
この構成において、電動機104から発生する電磁振動の周波数と羽根車103の固有振動モードの周波数が一致すると、共振現象が励起され羽根車103の振動が増幅し、騒音が発生する。電磁振動の加振力は回転軸の円周方向に作用するため、羽根車103の固有振動モードが、図5に示すような主板105と外周リング107を支持点とする羽根106の曲げ変形によって主板105と吸込側端部108が円周方向の逆位相にねじれる挙動である場合、加振に対して応答しやすいと共に、羽根車103がスピーカーの振動板の働きをして、過大な騒音になり易い。また、この固有振動モードの周波数は主板105と外周リング107の間の距離、すなわち羽根106の長さに依存しているため、共振現象を抑制するには羽根106の長さを変更することが最も効果的である。しかし、羽根の長さは多翼送風機として送風性能から決められており、大幅に短くする、または長くすることはできない。
そこで、電動機からの振動を絶縁する構造にして共振現象の励起を抑制し、騒音の発生を防止するものが広く知られている(例えば特許文献2参照)。
以下、その多翼送風機について図6を参照しながら説明する。
羽根車109の羽根ボス110の内径を電動機の回転軸111外径より大きくするとともに、羽根ボス110の両端側にゴム製のリング112が入る凹部113を設け、回転軸111に羽根ボス110を挿入しワッシャ114を当てて、ねじ115で止めることで、羽根車109がワッシャ114とねじ115とにより押圧され回転軸111から浮いた状態となる。回転軸111からの電磁振動がリング112によって絶縁されて羽根車109に伝達されなくなるため、羽根車109が持つ固有振動数と共振しなくなり、騒音の発生を防止することができる。
特開2001−173596号公報(第2図) 実開平5−1899号公報(第2図)
このような従来の多翼送風機では、振動を絶縁するためにゴム製のリングなど損失係数が大きい素材の別部品が必要となるため、構造が複雑となりコストが増加するという課題があった。また、長期間の使用によってゴムが劣化して振動を絶縁する効果が低下した場合、電動機からの振動が羽根車に伝達してしまい共振現象が励起され、騒音が発生するという課題があった。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、構造が簡単で低コストに共振現象の励起を抑制でき、長期間安定して騒音の発生を防止できる多翼送風機を提供することを目的とする。
そして、この目的を達成するために、本発明は、主板と、前記主板の一面に環状に並ぶ複数の羽根板と、前記羽根板の外周面をつなぐ外周リングとを備えた樹脂製の羽根車と、前記羽根車を内包し吸込口を備えたケーシングと、前記吸込口に対向する主板側に、前記羽根車の回転中心に回転軸が接続された電動機とを備え、前記外周リングは、等しい長さで円周方向に偶数個に分割され、前記分割された各外周リングそれぞれが前記主板と平行であり、前記主板と外周リングの距離が全て羽根板の長手方向の長さの半分以上であり、対向する一対の外周リングのみが、前記主板とは逆の羽根板端部に位置するとともに、対向する外周リングの前記主板からの距離がそれぞれ同一、かつ隣接する外周リングの前記主板からの距離が異なる構成とし、前記羽根板端部に位置する一対の外周リングを基点に、前記羽根車の回転方向とは逆方向に隣接する外周リングの前記主板からの距離を順次短く配置することで、前記主板との距離を円周方向に周期的に変化せしめた構成にしたものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
本発明によれば、羽根板の曲げ変形によって主板と羽根板の開口端が円周方向の逆位相にねじれる固有振動モードの周波数を羽根板毎に異なるようにできるため、固有振動モードの周波数が分散され、電動機から発生される円周方向の加振力の周波数との共振現象の励起を抑制することができ、構造が簡単で低コストにでき、長期間安定して騒音の発生を防止できる多翼送風機を提供することができる。
本発明の実施の形態1の多翼送風機を示す側断面図 同多翼送風機の羽根車の上面図 同多翼送風機の羽根車の斜視図 従来の多翼送風機を示す側断面図 従来の多翼送風機の羽根車の斜視図 従来の翼送風機の羽根車の部分断面図
本発明の請求項1記載の多翼送風機は、主板と、前記主板の一面に環状に並ぶ複数の羽根板と、前記羽根板の外周面をつなぐ外周リングとを備えた樹脂製の羽根車と、前記羽根車を内包し吸込口を備えたケーシングと、前記吸込口に対向する主板側に、前記羽根車の回転中心に回転軸が接続された電動機とを備え、前記外周リングは、等しい長さで円周方向に偶数個に分割され、前記分割された各外周リングそれぞれが前記主板と平行であり、前記主板と外周リングの距離が全て羽根板の長手方向の長さの半分以上であり、対向する一対の外周リングのみが、前記主板とは逆の羽根板端部に位置するとともに、対向する外周リングの前記主板からの距離がそれぞれ同一、かつ隣接する外周リングの前記主板からの距離が異なる構成とし、前記羽根板端部に位置する一対の外周リングを基点に、前記羽根車の回転方向とは逆方向に隣接する外周リングの前記主板からの距離を順次短く配置することで、前記主板との距離を円周方向に周期的に変化せしめた構成を有する。これにより、羽根板の主板と外周リングの間の部分の曲げ変形によって主板と羽根板の外周リングが円周方向の逆位相にねじれる固有振動モードの周波数を羽根板毎に異なるようにできるため、固有振動モードの周波数が分散され、電動機から発生される円周方向の加振力の周波数との共振現象の励起を抑制することができ、構造が簡単で低コストにでき、長期間安定して騒音の発生を防止できるという効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1から図3に示すように、多翼送風機1は1つの吸込口2と吹出口3を有するファンケーシング4と、ファンケーシング4内部に配置された羽根車5と、羽根車5と回転軸6が接続され、ファンケーシング4の吸込口2に対向する側に固定された電動機7を備えている。
羽根車5は、主板8(例えば直径100mm)の一方に環状に並ぶ複数(例えば47枚)の羽根板9(例えば長さ90mm)を備え、羽根板9の周りには羽根板9をつなぐ外周リング10を備えている。
外周リング10は円周方向に六等分されており、分割された外周リング10の一部を回転方向に順に10a、10b、10c、10d、10e、10fとする。外周リング10aから10fはそれぞれ主板8と並行であり、それぞれの主板8からの距離DをそれぞれDa〜Dfとすると、対向する外周リング(例えば10aと10d)の距離(例えばDaとDd)は同一となっている。
また外周リング10aと10dは羽根板9の端部11に位置し、また外周リング10cと10fは羽根板9の長さの半分よりも端部11側に位置し、また外周リング10bと10eは外周リング10aと10cの中間に位置している。つまり、Da(=Dd)>Db(=De)>Dc(=Df)の関係となっており、円周方向に周期的に距離Dが変化している。
上記構成において、電動機7の駆動により羽根車5を回転させると、羽根板9の働きにより空気が昇圧されるため、吸込口2から空気を吸い込み、羽根板9を通り、羽根車5からファンケーシング4内へと送り出され、吹出口3から空気が吹き出される。
このとき、電動機7は例えばDCブラシレスモーターを用いた場合、その構造上、運転時に回転軸6の円周方向に加振力が発生し、その加振周波数は回転数に比例して変化することが知られている。例えばその加振周波数をFm(Hz)、回転数をRm(1/min)、係数をαとすると、Fm=α×Rm/60(Hz)で表すことができる。係数αはモータの構造や駆動制御方法で決まり、係数αが18のDCブラシレスモーターの場合、回転数Rmが740(1/min)のとき加振周波数Fmは220(Hz)となる。
羽根車5は樹脂による一体射出成形品であり、その材質は例えばポリプロピレン(PP)を用いているが、アクリロニトリル・ブタジエン・スチロール(ABS)など他の熱可逆性樹脂を用いる場合もある。樹脂製であるため、振動減衰率が高く加振力が伝達しても過度の振動や騒音放射を発生しにくいが、共振現象が励起すると加振力に対して大きな応答となり、過大な振動を発生することがある。
例えば図5に示すような従来の羽根車103では、主板105から複数の長さが一定な羽根106が環状に配置されており、主板105と外周リング107の距離は全周で同一であるため、それぞれの羽根106の主板105側と吸込側端部108が円周方向の逆位相にねじれる固有振動モードは、全ての羽根106で同一となるため、電動機7の加振周波数とFmとその固有振動モードが重なった場合、卓越した共振現象が励起される。
しかし本実施の形態の羽根車5では、主板8と外周リング10の距離Dが回転方向に不均一であるので、羽根板9の主板8と外周リング10の間の部分の曲げ変形によって主板8と羽根板9の外周リング10が円周方向の逆位相にねじれる固有振動モードの周波数を羽根板9毎に異なるようにできるため、固有振動モードの周波数が分散され、電動機7から発生される円周方向の加振力の周波数との共振現象の励起を抑制することができる。
また、主板8との距離Dが同一な外周リング10の全長が、外周リング10の全周の半周以下である構成となっているので、主板8と羽根板9の外周リング10が円周方向の逆位相にねじれる固有振動モードの周波数が同一となる羽根板9を半数以下にすることができ、十分に固有振動モードの周波数が分散され、電動機7から発生される円周方向の加振力の周波数との共振現象の励起を抑制することができる。
また、主板8と外周リング10の距離Dが全て羽根板9の長手方向の長さの半分以上であるため、羽根板9の外周リング10と羽根板9の端部11の間の部分が回転中の遠心力などの外力によって変形することによる強度低下や異音の発生を抑制することができる。
また、外周リング10の一部(外周リング10aと10d)が羽根板9の端部11に位置するため、羽根車5から流出した流れが羽根板9の端部11から逆流する流れを抑制することができ、効率の低下や騒音の発生を抑制することができる。
また、主板8と外周リング10の距離Dが円周方向に周期的に変化しているので、羽根車5のバランスを良くすることができ、羽根車5の振動の発生を抑制し、振動による騒音の発生を抑制することができる。
また、複数に分割された外周リング10のそれぞれが主板8と平行であるので、外周リング10の表側もしくは裏側に空気が衝突して揚力や抗力が発生し羽根車5の回転バランスが悪化することを抑制することができ、羽根車5の振動の発生を抑制し、振動による騒音の発生を抑制することができる。
また、振動を絶縁するゴムなどの別部品を使用しないため、劣化もなく長期間安定して共振現象を抑制する効果を得られる。
また、羽根車5は、樹脂一体成形品であり別部品や複雑な分割金型による製造の必要はなく、一般的な上下二面方式の金型で成型可能となり、低コストにできる。
本発明にかかる多翼送風機は、室内の換気に使用する天井埋込形換気扇等に用いる用途として有用である。また、空気調和装置や空気清浄機などの送風機としての用途としても有用である。
1 多翼送風機
2 吸込口
3 吹出口
4 ファンケーシング
5 羽根車
6 回転軸
7 電動機
8 主板
9 羽根板
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f 外周リング
11 端部
D、Da、Db、Dc、Dd、De、Df 距離
Fm 加振周波数
Rm 回転数
α 係数

Claims (2)

  1. 主板と、前記主板の一面に環状に並ぶ複数の羽根板と、前記羽根板の外周面をつなぐ外周リングとを備えた樹脂製の羽根車と、
    前記羽根車を内包し吸込口を備えたケーシングと、
    前記吸込口に対向する主板側に、前記羽根車の回転中心に回転軸が接続された電動機とを備え、
    前記外周リングは、
    等しい長さで円周方向に偶数個に分割され、
    前記分割された各外周リングそれぞれが前記主板と平行であり、
    前記主板と外周リングの距離が全て羽根板の長手方向の長さの半分以上であり、
    対向する一対の外周リングのみが、前記主板とは逆の羽根板端部に位置するとともに、
    対向する外周リングの前記主板からの距離がそれぞれ同一、かつ隣接する外周リングの前記主板からの距離が異なる構成とし、
    前記羽根板端部に位置する一対の外周リングを基点に、前記羽根車の回転方向とは逆方向に隣接する外周リングの前記主板からの距離を順次短く配置することで、前記主板との距離を円周方向に周期的に変化せしめた多翼送風機。
  2. 前記円周方向への偶数個の分割は、六等分である請求項1に記載の多翼送風機。
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