JP4031720B2 - 画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置 - Google Patents
画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主走査方向に複数の光電変換部が配列されてなるセンサを、記録媒体に対して前記主走査方向と略直交する副走査方向に相対的に移動させ、前記記録媒体に記録された画像情報を前記センサにより2次元的に読み取る画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射すると、この放射線エネルギの一部が蓄積され、その後、可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギ強度に応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を利用して、人体等の被写体の放射線画像情報をシート状の蓄積性蛍光体層を備えてなる蓄積性蛍光体シートに一旦記録した後、この蓄積性蛍光体シートにレーザ光等の励起光を照射して得られる輝尽発光光を光電変換器を用いて電気信号に変換し、得られた画像信号を写真感光材料等の記録媒体、あるいは、CRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置に被写体の放射線可視画像として出力させる放射線画像情報記録読取システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この場合、副走査搬送される蓄積性蛍光体シートに対して励起光を主走査方向に移動させながら照射し、得られる輝尽発光光を集光ガイドを介してフォトマルチプライア等からなる単一の光電変換器に集光させ、励起光の走査位置に同期させて読み取る、いわゆる、ポイントスキャン方式のシステムにおいては、蓄積性蛍光体シートから光電変換器に至る光学系の読取条件が主走査方向および副走査方向で略同じである。従って、輝尽発光光が蓄積性蛍光体シートから主走査方向および副走査方向に等方的に出力されるものとすると、光電変換して得られた画像信号の主走査方向および副走査方向に対する空間周波数特性が略等しく、鮮鋭度も主走査方向および副走査方向で略同じになる。
【0004】
これに対して、主走査方向に複数の光電変換部を配列してなるセンサを副走査方向に移動させながら蓄積性蛍光体シートの放射線画像情報を読み取る、いわゆる、ラインスキャン方式のシステムでは、主走査方向と副走査方向とで読取条件が異なるため、光電変換して得られた画像信号の主走査方向および副走査方向に対する空間周波数特性は等しくならない。この場合、主走査方向に対する画像信号の空間周波数特性は、センサに輝尽発光光を導く集光光学系の主走査方向の結像特性と、センサを構成する各光電変換部の主走査方向の間隔とに依存する。また、副走査方向に対する画像信号の空間周波数特性は、前記集光光学系の副走査方向の結像特性と、前記光電変換部の副走査方向の読取間隔とに依存する。
【0005】
例えば、集光光学系が主走査方向に多数のレンズを配列してなるセルフォックレンズ等のレンズアレイからなる場合、各光電変換部により得られた画像信号のレンズアレイに対する主走査方向の位置関係と、各光電変換部により得られた画像信号のレンズアレイに対する副走査方向の位置関係とが異なるため、画像信号の空間周波数が主走査方向と副走査方向とで一致しなくなってしまう。従って、このような画像信号から得られる画像は、主走査方向と副走査方向とで鮮鋭度に差異のある不適切なものとなってしまう。
【0006】
【特許文献1】
特開昭55−12429号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の不具合を解消するためになされたもので、主走査方向および副走査方向に対して略同一の鮮鋭度を有する良好な画像情報を得ることのできる画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明では、主走査方向に複数の光電変換部が配列されてなるセンサを、記録媒体に対して前記主走査方向と略直交する副走査方向に相対的に移動させ、前記記録媒体に記録された画像情報を前記光電変換部により2次元的に読み取る画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置において、前記記録媒体は、被写体を透過した放射線に係る前記画像情報を蓄積性蛍光体に記録する蓄積性蛍光体シートであり、前記蓄積性蛍光体シートを読み取って得られた前記画像情報の前記主走査方向に対する鮮鋭度と、前記画像情報の前記副走査方向に対する鮮鋭度とを略同一にするための空間フィルタを、前記蓄積性蛍光体シートに前記画像情報を記録する際の記録条件、または、前記蓄積性蛍光体シートから前記画像情報を読み取る際の読取条件に従って選択し、選択された前記空間フィルタにより前記主走査方向および前記副走査方向に対する鮮鋭度補正処理を行うことを特徴とする。
【0009】
この場合、鮮鋭度補正処理は、例えば、空間周波数特性に影響する蓄積性蛍光体シートに対する画像情報の記録条件または読取条件に従い、主走査方向および副走査方向に対して夫々設定した1次元の空間フィルタを選択し、夫々に対して1次元フィルタリング処理を行うことにより、等方的な鮮鋭度からなる画像情報を得ることができる。また、主走査方向に対する空間フィルタと副走査方向に対する空間フィルタとを合成してなる2次元の空間フィルタを選択し、あるいは、予め設定されている2次元のフィルタを選択し、画像情報に対する2次元フィルタリング処理を行うようにしてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の画像読取装置における鮮鋭度補正方法および装置が適用される放射線画像情報記録読取装置10の概略構成を示す。
【0011】
放射線画像情報記録読取装置10は、人体等の被写体18の放射線画像を蓄積性蛍光体シートIP(記録媒体)に一旦記録する放射線記録部12と、前記蓄積性蛍光体シートIPに励起光Lを照射し、放射線の強度に応じて発光する輝尽発光光Rを光電的に読み取る読取部14と、蓄積性蛍光体シートIPに残存している放射線エネルギを放出させる消去光源部16とを備える。
【0012】
放射線記録部12は、放射線Sを発生させる放射線源20と、被写体18を所定位置に保持する放射線透過性の撮影台22とを備える。撮影台22の後方には、フォトタイマ23と、散乱線除去用のグリッド24とが配置され、前記グリッド24のさらに後方には、蓄積性蛍光体シートIPが所定の撮影位置に固定される。
【0013】
読取部14は、鉛直方向(矢印Y方向)に延在するガイドレール66に沿って移動可能に構成される。読取部14を構成する筐体42は、ガイドレール66に係合しており、上下両端部に配設される駆動プーリ58および従動プーリ60に架け渡されたベルト64によって副走査方向(矢印Y方向)に移動する。
【0014】
読取部14を構成する筐体42の上部には、励起光Lを出力するレーザダイオードアレイ36が配設される。レーザダイオードアレイ36から出力された励起光Lは、筐体42に固定されたミラー37によって反射され、蓄積性蛍光体シートIPの主走査方向(矢印Y方向と直交する方向)に照射される。
【0015】
また、読取部14を構成する筐体42の下部には、励起光Lによって蓄積性蛍光体シートIPから取り出された輝尽発光光Rを集光レンズアレイ44およびプリズム46を介して受光し、電気信号に変換するCCD等のラインセンサ48a〜48cが配設される。集光レンズアレイ44は、例えば、主走査方向に多数のレンズを配列してなるセルフォックレンズによって構成することができる。プリズム46は、筐体42の側部に配設されるラインセンサ48a、48cと、筐体42の下部に配設されるラインセンサ48bとに輝尽発光光Rを振り分ける。千鳥状に配設された各ラインセンサ48a〜48cは、夫々多数の光電変換部を主走査方向に配列して構成される。
【0016】
なお、ラインセンサ48a〜48cは、主走査方向(矢印X方向)に複数の光電変換部を配列したものであれば、副走査方向(矢印Y方向)に複数ラインを有するセンサや、主走査方向に長尺なエリアセンサを用いることもできる。また、ラインセンサ48a〜48cは、必ずしも3本で構成する必要はない。ラインセンサ48a〜48cには、蓄積性蛍光体シートIPから発せられる輝尽発光光Rを透過する一方、励起光Lを含む外光を遮断する図示しないフィルタが装着される。
【0017】
消去光源部16は、読取部14を挟んで蓄積性蛍光体シートIPに対向して配設される。消去光源部16は、蓄積性蛍光体シートIPに消去光Qを照射し、蓄積性蛍光体シートIPに残存する放射線エネルギを放出させる複数の蛍光灯68を備える。
【0018】
図2は、放射線画像情報記録読取装置10の読取部14における処理回路ブロックを示す。
【0019】
読取部14の処理回路は、ラインセンサ48a〜48cによって光電変換して得られた電気信号を増幅する増幅器70と、増幅された電気信号をデジタル信号としての画像信号に変換するA/D(Analog/Digital)変換器72と、ラインセンサ48a〜48cのオフセット補正を行うオフセット補正部74と、ラインセンサ48a〜48cによって光電変換された電気信号の非線形性を補正して線形信号に変換する線形変換部76と、ラインセンサ48a〜48cの接続部分における信号調整を行うつなぎ処理部78と、画像信号を対数変換する対数変換部80と、対数変換された画像信号のシェーディング補正を行うシェーディング補正部82と、シェーディング補正された画像信号の主走査方向および副走査方向の鮮鋭度を補正する鮮鋭度補正部86とを備える。
【0020】
A/D変換器72には、オフセット補正部74に供給するオフセット補正データを演算するオフセット補正データ演算部88が接続される。オフセット補正データ演算部88によって演算されたオフセット補正データは、オフセット補正データ記憶部90に記憶される。この場合、オフセット補正データとは、光を受光しない状態での各ラインセンサ48a〜48cの光電変換部からの出力(暗時出力)を補正する補正データである。
【0021】
対数変換部80には、シェーディング補正部82に供給するシェーディング補正データを演算するシェーディング補正データ演算部92が接続される。シェーディング補正データ演算部92によって演算されたシェーディング補正データは、シェーディング補正データ記憶部94に記憶される。この場合、シェーディング補正データとは、例えば、主走査方向に配列されたレーザダイオードアレイ36、集光レンズアレイ44、ラインセンサ48a〜48cを構成する光電変換部の1次元方向(主走査方向)の特性ばらつきを補正する高周波成分を含む補正データや、放射線源20から出力される放射線Sの照射むら、蓄積性蛍光体シートIPの蓄積性蛍光体の塗布むら、グリッド24の散乱線除去特性のむら等を補正する低周波成分を主体とした補正データである。
【0022】
鮮鋭度補正部86には、鮮鋭度補正処理を行うための複数種類の空間フィルタを構成するフィルタリング係数を記憶する空間フィルタ記憶部96が空間フィルタ選択部98を介して接続される。この空間フィルタ記憶部96に記憶された空間フィルタは、蓄積性蛍光体シートIPに対する放射線画像情報の記録条件、あるいは、蓄積性蛍光体シートIPに記録された放射線画像情報の読取条件に従い、空間フィルタ選択部98によって選択される。この場合、記録条件とは、例えば、放射線画像情報記録読取装置10による被写体18に対する撮影メニューによって決定される撮影部位、放射線量、放射線画像情報の記録される蓄積性蛍光体シートIPの種類等であり、読取条件とは、例えば、蓄積性蛍光体シートIPに記録された放射線画像情報の読取モードによって決定される読取速度等である。
【0023】
本実施形態の放射線画像情報記録読取装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その動作並びに作用効果について説明する。
【0024】
先ず、図3に示すフローチャートに基づき、放射線画像情報記録読取装置10におけるオフセット補正データおよびシェーディング補正データの作成方法について説明する。なお、以下の説明では、図4に示すように、ラインセンサ48a〜48cの各光電変換部により蓄積性蛍光体シートIPを主走査方向(矢印X方向)にn画素に分割するとともに、副走査方向(矢印Y方向)にm画素に分割し、矢印X方向および矢印Y方向を座標軸とした各画素の座標を(x,y)で表すものとする。
【0025】
読取部14のレーザダイオードアレイ36および消去光源部16の蛍光灯68を消灯状態とし、この状態でのラインセンサ48a〜48cからの電気信号を増幅器70およびA/D変換器72を介して検出する。オフセット補正データ演算部88は、検出された電気信号を各ラインセンサ48a〜48cにおける各光電変換部のオフセット補正データO(x)とし、オフセット補正データ記憶部90に記憶させる(ステップS1)。
【0026】
次に、被写体18を介在させることなく、放射線源20から出力される放射線Sをフォトタイマ23およびグリッド24を介して蓄積性蛍光体シートIPに一様に照射する。読取部14は、このようにして一様露光された蓄積性蛍光体シートIPの読み取りを行う(ステップS2)。この場合、一様露光された蓄積性蛍光体シートIPに記録された画像情報には、放射線Sの照射むらや蓄積性蛍光体シートIPにおける蓄積性蛍光体の塗布むらに基づく変化の小さい低周波成分からなるむらが含まれている。
【0027】
レーザダイオードアレイ36から出力された励起光Lは、ミラー37によって反射された後、蓄積性蛍光体シートIPの主走査方向に照射される。蓄積性蛍光体シートIPに蓄積された放射線エネルギは、輝尽発光光Rとして出力され、集光レンズアレイ44およびプリズム46を介してラインセンサ48a〜48cに導入される。ラインセンサ48a〜48cは、輝尽発光光Rを電気信号に変換する。この電気信号は、増幅器70によって増幅された後、A/D変換器72によってデジタル信号としての補正データ取得画像データDorg(x,y)に変換される。なお、補正データ取得画像データDorg(x,y)には、レーザダイオードアレイ36、集光レンズアレイ44、ラインセンサ48a〜48cを構成する光電変換部の個々の特性ばらつきに起因するランダムな高周波成分からなるむらが含まれている。
【0028】
そこで、オフセット補正部74は、ステップS1で作成されたオフセット補正データO(x)をオフセット補正データ記憶部90から読み込み、
Doff(x,y)=Dorg(x,y)−O(x)
として補正データ取得画像データDorg(x,y)のオフセット補正を行い、オフセット補正画像データDoff(x,y)を作成する(ステップS3)。
【0029】
オフセット補正画像データDoff(x,y)は、次に、線形変換部76において線形変換された後(ステップS4)、つなぎ処理部78において各ラインセンサ48a〜48c間のつなぎ処理が行われる(ステップS5)。つなぎ処理されたオフセット補正画像データDoff(x,y)は、対数変換部80において、加算演算処理が可能な対数変換データに変換される(ステップS6)。
【0030】
シェーディング補正データ演算部92は、対数変換されたオフセット補正画像データDlog(x,y)=Log(Doff(x,y))を各光電変換部毎に矢印Y方向に加算平均し、平均オフセット補正画像データDs(x)を、
Ds(x)=1/m・ΣDlog(x,y)
として求める(ステップS7)。上式のΣは、オフセット補正画像データDlog(x,y)を矢印Y方向にm画素分加算することを意味するものとする。
【0031】
次に、平均オフセット補正画像データDs(x)を矢印X方向に加算平均し、平均値Ds_aveを、
Ds_ave=1/n・ΣDs(x)
として求める(ステップS8)。上式のΣは、平均オフセット補正画像データDs(x)を矢印X方向にn画素分加算することを意味するものとする。
【0032】
最後に、平均値Ds_aveと平均オフセット補正画像データDs(x)とから、1次元補正データS1(x)を、
S1(x)=Ds_ave−Ds(x)
として求める(ステップS9)。このようにして求められた1次元補正データS1(x)を用いることにより、レーザダイオードアレイ36、集光レンズアレイ44、ラインセンサ48a〜48cを構成する各光電変換部の個々の特性ばらつきに起因するランダムな高周波成分からなるシェーディングを補正することができる。算出された1次元補正データS1(x)は、シェーディング補正データ記憶部94に記憶される。
【0033】
次に、1次元補正データS1(x)を用いて対数変換されたオフセット補正画像データDlog(x,y)の1次元補正を行い、1次元補正画像データD1(x,y)を、
D1(x,y)=Dlog(x,y)+S1(x)
として求める(ステップS10)。
【0034】
さらに、1次元補正画像データD1(x,y)に対してアンシャープマスキング処理を施し(ステップS11)、低周波補正画像データDlow(x,y)を求める。この低周波補正画像データDlow(x,y)は、例えば、注目する1次元補正画像データD1(x,y)の周囲の複数の1次元補正画像データD1(x,y)を加算平均することで得ることができる。すなわち、矢印X方向の処理範囲の画素数をj、矢印Y方向の処理範囲の画素数をkとして、低周波補正画像データDlow(x,y)は、
Dlow(x,y)=1/(j・k)・ΣΣD1(x,y)
として求めることができる。上式のΣは、夫々1次元補正画像データD1(x,y)を矢印X方向にj画素分、矢印Y方向にk画素分加算することを意味するものとする。このようにして1次元補正画像データD1(x,y)を平滑化することにより、高周波成分からなるノイズの影響を小さくすることができる。
【0035】
次いで、低周波補正画像データDlow(x,y)を矢印X方向および矢印Y方向に加算平均し、平均値Daveを、
Dave=1/(n・m)・ΣΣDlow(x,y)
として求める(ステップS12)。上式のΣΣは、夫々低周波補正画像データDlow(x,y)を矢印X方向にn画素分、矢印Y方向にm画素分加算することを意味するものとする。
【0036】
平均値Daveと低周波補正画像データDlow(x,y)とから、平滑化された2次元補正データS2(x,y)を、
S2(x,y)=Dave−Dlow(x,y)
として求める(ステップS13)。このようにして求められた2次元補正データS2(x,y)を用いることにより、放射線Sの照射むらや蓄積性蛍光体シートIPにおける蓄積性蛍光体の塗布むらに基づく変化の小さい低周波成分からなるシェーディングを補正することができる。
【0037】
平滑化された2次元補正データS2(x,y)は、低周波成分からなるむらを補正するものであって、高周波成分を含んでいないため、隣接する2次元補正データS2(x,y)間で大きく変動することはない。そこで、2次元補正データS2(x,y)を間引き処理することにより、データ数の少ない2次元補正データS2(x,y)とし(ステップS14)、1次元補正データS1(x)とともにシェーディング補正データ記憶部94に記憶する。
【0038】
次に、図5に示すフローチャートに基づき、放射線画像情報記録読取装置10における放射線画像情報の読取処理について説明する。
【0039】
撮影部位、撮影管電圧、撮影線量等を所定の撮影メニューに従って設定し、被写体18を放射線画像情報記録読取装置10における放射線記録部12の所定位置に位置決めした後、放射線源20を駆動して放射線Sを被写体18に照射する。被写体18を透過した放射線Sは、フォトタイマ23およびグリッド24を介して蓄積性蛍光体シートIPに到達し、被写体18の放射線画像情報が記録される(ステップS21)。
【0040】
次に、蓄積性蛍光体シートIPに対する放射線画像情報の読み取りに先立ち、上述したステップS1の場合と同様にして、オフセット補正データO(x)の作成を行う(ステップS22)。すなわち、オフセット補正データO(x)は、放射線画像情報記録読取装置10の温度等に依存して変動するものであるため、一定時間周期あるいは各読取動作の直前に行うことが望ましい。作成されたオフセット補正データO(x)は、オフセット補正データ記憶部90に記憶される。
【0041】
次に、低速走査による高画質モード、高速走査による高速読取モード等の読取モードを設定し、その読取モードに従って読取部14が駆動され、蓄積性蛍光体シートIPに記録された放射線画像情報の読み取りが行われる(ステップS23)。蓄積性蛍光体シートIPから読み取られた放射線画像情報に係る画像データDorg(x,y)は、オフセット補正部74において、オフセット補正データ記憶部90から取得したオフセット補正データO(x)を用いてオフセット補正処理が行われ、オフセット補正画像データDoff(x,y)が、
Doff(x,y)=Dorg(x,y)−O(x)
として求められる(ステップS24)。
【0042】
オフセット補正画像データDoff(x,y)は、線形変換部76で線形変換された後(ステップS25)、つなぎ処理部78でラインセンサ48a〜48c間のつなぎ処理が施され(ステップS26)、さらに、対数変換部80で対数変換され(ステップS27)、
Dlog(x,y)=Log(Doff(x,y))
としてオフセット補正画像データDlog(x,y)が得られる。
【0043】
対数変換されたオフセット補正画像データDlog(x,y)は、シェーディング補正部82において、シェーディング補正データ記憶部94に記憶されている1次元補正データS1(x)を用いて、
D1(x,y)=Dlog(x,y)+S1(x)
として1次元補正され、1次元補正画像データD1(x,y)が得られる(ステップS28)。
【0044】
次いで、シェーディング補正データ記憶部94に記憶されている2次元補正データS2(x,y)を用いて、1次元補正画像データD1(x,y)が、
D2(x,y)=D1(x,y)+S2(x,y)
として補正され、2次元補正された補正画像データD2(x,y)が得られる(ステップS29)。なお、シェーディング補正データ記憶部94には、データ量を少なくするため、ステップS14の処理で間引かれた2次元補正データS2(x,y)が記憶されているため、補正画像データD2(x,y)の算出に当たっては、補間した2次元補正データS2(x,y)を用いて補正画像データD2(x,y)の算出を行う。
【0045】
1次元補正および2次元補正された補正画像データD2(x,y)は、鮮鋭度補正部86において、主走査方向に対する鮮鋭度補正処理が施され(ステップS30)、次いで、副走査方向に対する鮮鋭度補正処理が施される(ステップS31)。
【0046】
ここで、例えば、被写体18に照射される放射線量は、撮影メニューに従い放射線源20の撮影管電圧を撮影部位によって制御することで調整される。また、被写体18に照射される放射線量が同じであっても、蓄積性蛍光体シートIPに到達する放射線量は、撮影部位によって異なる。一方、蓄積性蛍光体シートIPの種類によって、放出される輝尽発光光Rの広がり特性が異なる。さらに、高速走査するか、低速走査するかといった読取モードの違いにより蓄積性蛍光体シートIPに照射される励起光Lのエネルギが異なるため、その励起光Lによって放出される輝尽発光光Rの広がり特性も異なってくる。この場合、蓄積性蛍光体シートIPから得られる放射線画像情報の空間周波数特性は、蓄積性蛍光体シートIPに照射される放射線量に応じて蓄積された放射線エネルギやその放出特性に依存する。
【0047】
一方、放射線画像情報の空間周波数特性は、ラインセンサ48a〜48cに輝尽発光光Rを導く集光レンズアレイ44およびプリズム46の主走査方向および副走査方向の特性に依存するとともに、ラインセンサ48a〜48cを構成する各光電変換部の主走査方向の間隔および副走査方向の読取間隔に依存する。
【0048】
従って、鮮鋭度補正前の放射線画像情報である補正画像データD2(x,y)の主走査方向および副走査方向に対する鮮鋭度およびそのバランスは、撮影メニュー、蓄積性蛍光体シートIPの種類、読取モード等によって異なることになる。
【0049】
そこで、空間フィルタ選択部98は、オペレータによって設定された撮影メニュー、蓄積性蛍光体シートIPの種類、読取モード等の記録条件または読取条件に従い、鮮鋭度およびそのバランスに対応した空間フィルタを空間フィルタ記憶部96から選択し、鮮鋭度補正部86に供給する。鮮鋭度補正部86は、供給された空間フィルタを用いて、補正画像データD2(x,y)に対する鮮鋭度補正処理を行う。
【0050】
すなわち、主走査方向の鮮鋭度を補正する空間フィルタを構成するフィルタリング係数をf(a)とすると、補正画像データD2(x,y)は、
Dx(x,y)=1/N・Σf(a)・D2(x+a,y)
として、主走査方向に補正された画像データDx(x,y)が求められる(ステップS30)。aは、フィルタリング処理を行うために利用される画素範囲を表す整数であり、Σは、画素範囲aでの加算処理を表す。また、N=Σf(a)である。
【0051】
図6は、フィルタリング係数f(a)を、
f(a)=(−2 3 10 3 −2)
としたときの主走査方向に対する空間周波数(サイクル/mm)とレスポンスとの関係を表したものである。このフィルタリング係数f(a)を用いた場合、鮮鋭度補正前の補正画像データD2(x,y)の鮮鋭度を主走査方向に強める効果が得られる。
【0052】
また、鮮鋭度補正部86は、空間フィルタ記憶部96から選択した副走査方向の鮮鋭度を補正する空間フィルタを構成するフィルタリング係数をg(b)として、主走査方向の鮮鋭度が補正された画像データDx(x,y)を、
Dy(x,y)=1/M・Σg(b)・Dx(x,y+b)
として補正することにより、副走査方向に補正された画像データDy(x,y)を求める(ステップS31)。bは、フィルタリング処理を行うために利用される画素範囲を表す整数であり、Σは、画素範囲bでの加算処理を表す。また、M=Σg(b)である。
【0053】
図7は、フィルタリング係数g(b)を、
【0054】
【数1】
【0055】
としたときの副走査方向に対する空間周波数(サイクル/mm)とレスポンスとの関係を表したものである。このフィルタリング係数g(b)を用いた場合、画像データDx(x,y)の鮮鋭度を副走査方向に弱める効果が得られる。
【0056】
以上のようにして、適切なフィルタリング係数f(a)、g(b)を有する空間フィルタを用いることにより、主走査方向および副走査方向に対して略同一の鮮鋭度補正処理が施された画像データDy(x,y)を得ることができる。
【0057】
次いで、画像データDy(x,y)の規格化処理を行った後(ステップS32)、階調補正、カラーコレクション等の画像処理が施される(ステップS33)。この場合、主走査方向および副走査方向の鮮鋭度の差を考慮することなく、所望の画像処理を行うことができる。このようにして画像処理された放射線画像情報は、外部の診断装置等に提供される。なお、ステップS33での画像処理は、放射線画像情報記録読取装置10で行うのではなく、外部の画像処理装置で行うようにしてもよい。
【0058】
一方、蓄積性蛍光体シートIPからの放射線画像情報の読取処理が終了すると、消去光源部16が駆動され、蛍光灯68から出力される消去光Qが蓄積性蛍光体シートIPの全面に照射されることにより、残存する放射線エネルギが除去され、次の撮影に供される。
【0059】
ここで、上述した実施形態では、主走査方向に対して鮮鋭度を強める1次元フィルタリング処理を行うとともに、副走査方向に対して鮮鋭度を弱める1次元フィルタリング処理を行っているが、主走査方向または副走査方向の一方の鮮鋭度を基準として固定しておき、他方の鮮鋭度のみを一方の鮮鋭度に合わせるように調整するようにしてもよい。
【0060】
また、主走査方向のフィルタリング係数f(a)と副走査方向のフィルタリング係数g(b)との内積であるフィルタリング係数fg(a,b)を、例えば、
【0061】
【数2】
【0062】
として求め、このフィルタリング係数fg(a,b)を用いて、画像データD(x,y)を、
D(x,y)=1/P・ΣΣfg(a,b)・D2(x+a,y+b)
として2次元フィルタリング処理することにより、主走査方向および副走査方向の鮮鋭度補正処理を同時に行うこともできる。ΣΣは、主走査方向および副走査方向のフィルタリング処理の画素範囲a、bでの加算処理を表す。また、P=ΣΣfg(a,b)である。
【0063】
なお、上述した実施形態における放射線画像情報記録読取装置10では、ラインセンサ48a〜48cを蓄積性蛍光体シートIPに対して副走査方向に移動させて放射線画像情報を読み取るようにしているが、固定されたラインセンサ48a〜48cに対して蓄積性蛍光体シートIPを副走査方向に移動させるように構成した放射線画像情報記録読取装置に適用することもできる。
【0064】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、主走査方向に複数の光電変換部が配列されてなるセンサを用いて読み取られた画像情報から、主走査方向および副走査方向の夫々に対して所望の鮮鋭度補正処理を行うことができ、これによって、主走査方向および副走査方向に略同一の鮮鋭度を有する良好な画像情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の放射線画像情報記録読取装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態の放射線画像情報記録読取装置の読取部における処理回路ブロック図である。
【図3】本実施形態の放射線画像情報記録読取装置の補正データの作成手順を示すフローチャートである。
【図4】蓄積性蛍光体シートに設定した座標系の説明図である。
【図5】放射線画像情報のシェーディング補正処理および鮮鋭度補正処理のフローチャートである。
【図6】鮮鋭度を強めることのできるフィルタにおける空間周波数とレスポンスとの関係説明図である。
【図7】鮮鋭度を弱めることのできるフィルタにおける空間周波数とレスポンスとの関係説明図である。
【符号の説明】
10…放射線画像情報記録読取装置 12…放射線記録部
14…読取部 16…消去光源部
18…被写体 20…放射線源
48a〜48c…ラインセンサ 74…オフセット補正部
82…シェーディング補正部 86…鮮鋭度補正部
88…オフセット補正データ演算部 90…オフセット補正データ記憶部
92…シェーディング補正データ演算部
94…シェーディング補正データ記憶部
96…空間フィルタ記憶部 98…空間フィルタ選択部
IP…蓄積性蛍光体シート
Claims (8)
- 主走査方向に複数の光電変換部が配列されてなるセンサを、記録媒体に対して前記主走査方向と略直交する副走査方向に相対的に移動させ、前記記録媒体に記録された画像情報を前記光電変換部により2次元的に読み取る画像読取装置における鮮鋭度補正方法において、
前記記録媒体は、被写体を透過した放射線に係る前記画像情報を蓄積性蛍光体に記録する蓄積性蛍光体シートであり、前記蓄積性蛍光体シートを読み取って得られた前記画像情報の前記主走査方向に対する鮮鋭度と、前記画像情報の前記副走査方向に対する鮮鋭度とを略同一にするための空間フィルタを、前記蓄積性蛍光体シートに前記画像情報を記録する際の記録条件、または、前記蓄積性蛍光体シートから前記画像情報を読み取る際の読取条件に従って選択し、選択された前記空間フィルタにより前記主走査方向および前記副走査方向に対する鮮鋭度補正処理を行うことを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正方法。 - 請求項1記載の方法において、
前記鮮鋭度補正処理は、前記主走査方向および前記副走査方向に対して夫々設定した前記空間フィルタを用いた1次元フィルタリング処理であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正方法。 - 請求項1記載の方法において、
前記鮮鋭度補正処理は、前記主走査方向および前記副走査方向に対して設定した前記空間フィルタを用いた2次元フィルタリング処理であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正方法。 - 請求項1記載の方法において、
前記記録条件は、前記被写体の撮影部位、前記被写体に照射される前記放射線の放射線量、または、前記蓄積性蛍光体シートの種類に係る条件であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正方法。 - 請求項1記載の方法において、
前記読取条件は、前記蓄積性蛍光体シートから前記画像情報を読み取る前記副走査方向に対する読取速度に係る条件であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正方法。 - 主走査方向に複数の光電変換部が配列されてなるセンサを、記録媒体に対して前記主走査方向と略直交する副走査方向に相対的に移動させ、前記記録媒体に記録された画像情報を前記光電変換部により2次元的に読み取る画像読取装置における鮮鋭度補正装置において、
前記記録媒体は、被写体を透過した放射線に係る前記画像情報を蓄積性蛍光体に記録する蓄積性蛍光体シートであり、前記蓄積性蛍光体シートを読み取って得られた前記画像情報の前記主走査方向に対する鮮鋭度と、前記画像情報の前記副走査方向に対する鮮鋭度とが略同一となるよう、前記主走査方向および前記副走査方向に対して鮮鋭度補正処理を行う空間フィルタを記憶する空間フィルタ記憶部と、
前記蓄積性蛍光体シートに前記画像情報を記録する際の記録条件、または、前記蓄積性蛍光体シートから前記画像情報を読み取る際の読取条件に従い、前記空間フィルタ記憶部から前記空間フィルタを選択する空間フィルタ選択部と、
選択された前記空間フィルタにより前記画像情報に対する鮮鋭度補正処理を行う鮮鋭度補正部と、
を備えることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正装置。 - 請求項6記載の装置において、
前記記録条件は、前記被写体の撮影部位、前記被写体に照射される前記放射線の放射線量、または、前記蓄積性蛍光体シートの種類に係る条件であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正装置。 - 請求項6記載の装置において、
前記読取条件は、前記蓄積性蛍光体シートから前記画像情報を読み取る前記副走査方向に対する読取速度に係る条件であることを特徴とする画像読取装置における鮮鋭度補正装置。
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