JP4031702B2 - 光路偏向素子 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電気信号によって光の方向を変える光路偏向素子、光偏向デバイスおよびこれらの光路偏向素子、または光偏向デバイスを利用した画像表示装置に関する。光路シフト素子はプロジェクションディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの電子ディスプレイ装置等に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
従来技術の説明に先立って、本明細書において用いる用語について定義しておく。
”光路偏向素子”とは、外部からの電気信号により光の光路を偏向、即ち、入射光に対して出射光を平行にシフトさせるか、或る角度を持って回転させるか、或いは、その両者を組合せて光路を切換えることが可能な光学素子を意味する。この説明において、平行シフトによる光路偏向においてそのシフトの大きさを”シフト量”と呼ぶものとする。”光路偏向装置”とは、このような光路偏向素子を含み、光の光路を偏向させるデバイスを意味する。
【0003】
また、”ピクセルシフト素子”とは、少なくとも画像情報に従って光を制御可能な複数の画素を二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学部材と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールド毎に画像表示素子と光学部材の間の光路を偏向する光偏向手段とを有し、光路偏向手段によりサブフィールド毎の光路の偏向に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示させることで、画像表示素子の見掛け上の画素数を増倍して表示する画像表示装置における光路偏向手段を意味する。従って、基本的には、上記定義による光路偏向素子や光路偏向デバイスを光路偏向手段として応用することが可能といえる。
【0004】
従来より、光路偏向素子なる光学素子として、KHPO(KDP)、NHPO(ADP)、LiNbO、LiTaO、GaAs、CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料や、KTN、SrTiO、CS、ニトロベンゼン等の第2次電気光学効果の大きな材料を用いた電気光学デバイスや、ガラス、シリカ、TeOなどの材料を用いた音響光学デバイスが知られている(例えば、非特許文献1 参照)。これらは、一般的に、十分大きな光路偏向量を得るためには光路長を長く取る必要があり、また、材料が高価であるため用途が制限されている。
【0005】
一方で、液晶材料を用いた光路偏向素子なる光学素子も各種提案されており、その数例を挙げると、以下に示すような提案例がある。
光空間スイッチの光の損失を低減することを目的に、人工複屈折板からなる光ビームシフタが提案されている(例えば、特許文献1 参照。)。内容的には、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間に液晶層を挟んだ光ビームシフタ、及びマトリクス形偏向制御素子の後面に前記光ビームシフタを接続した光ビームシフタが提案され、併せて、2枚のくさび形の透明基板を互いに逆向きに配置し、該透明基板間にマトリクス駆動が可能で、入射光ビームを半セルシフトする液晶層を挟んだ光ビームシフタを半セルずらして多段接続した光ビームシフタが提案されている。
【0006】
また、大きな偏向を得ることが可能で、偏向効率が高く、しかも、偏向角と偏向距離とを任意に設定することができる光偏向スイッチが提案されている(例えば、特許文献2 参照。)。具体的には、2枚の透明基板を所定の間隔で対向配置させ、対向させた面に垂直配向処理を施し、透明基板間にスメクチックA相の液晶を封入し、前記透明基板に対して垂直配向させ、スメクチック層と平行に交流電界を印加できるように電極対を配置し、電極対に交流電界を印加する駆動装置を備えた液晶素子である。即ち、スメクチックA相の液晶による電傾効果を用い、液晶分子の傾斜による複屈折によって、液晶層に入射する偏光の屈折角と変位する方向を変化できるようにしたものである。
【0007】
前者の特許文献1においては、液晶材料にネマチック液晶を用いているため、応答速度をサブミリ秒にまで速めることは困難であり、高速なスイッチングが必要な用途には用いることはできない。
また、後者の特許文献2においては、スメクチックA相の液晶を用いているが、スメクチックA相は自発分極を持たないため、高速動作は望めない。
【0008】
次に、ピクセルシフト素子に関して従来提案されている技術を数例挙げて説明する。
表示素子に表示された画像を投写光学系によりスクリーン上に拡大投影する投影表示装置において、前記表示素子から前記スクリーンに至る光路の途中に透過光の偏光方向を旋回できる光学素子を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子を少なくとも1個以上を有してなる投影画像をシフトする手段と、前記表示素子の開口率を実効的に低減させ、表示素子の各画素の投影領域が前記スクリーン上で離散的に投影される手段と、を備えた投影表示装置がある(例えば、特許文献3 参照。)。
【0009】
特許文献3においては、偏光方向を旋回できる光学素子(旋光素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上と複屈折効果を有する透明素子(複屈折素子と呼ぶ)を少なくとも1個以上を有してなる投影画像シフト手段(ピクセルシフト手段)によりピクセルシフトを行っている。問題点として、旋光素子と複屈折素子とを組合せて使用するため、光量損失が大きいこと、光の波長によりピクセルシフト量が変動し解像度が低下しやすいこと、旋光素子と複屈折素子との光学特性のミスマッチから本来画像が形成されないピクセルシフト外の位置に漏れ光によるゴースト等の光学ノイズが発生しやすいこと、素子化のためのコストが大きいこと等が挙げられる。特に、複屈折素子に前述したようなKHPO(KDP),NHPO(ADP),LiNbO,LiTaO,GaAs,CdTeなど第1次電気光学効果(ポッケルス効果)の大きな材料を使用した場合、顕著である。
【0010】
また、制御回路により、画像蓄積回路に蓄積した本来表示すべき画像を市松状に画素選択回路へサンプリングして順次空間光変調器に表示し、投影させ、さらに、制御回路により、この表示に対応させてパネル揺動機構を制御して空間光変調器の隣接画素ピッチ距離を整数分の一ずつ移動させることで、本来表示すべき画像を時間的な合成により再現するようにした投影機がある(例えば、特許文献4 参照。)。これにより、空間光変調器の画素の整数倍の分解能で画像を表示可能にするとともに、画素の粗い空間光変調器と簡単な光学系を用いて安価に投影機を構成可能としている。
【0011】
ところが、特許文献4においては、画像表示用素子自体を画素ピッチよりも小さい距離だけ高速に揺動させるピクセルシフト方式が記載されており、この方式では、光学系は固定されているので諸収差の発生が少ないが、画像表示素子自体を正確かつ高速に平行移動させる必要があるため、可動部の精度や耐久性が要求され、振動や音が問題となる。
【0012】
さらに、LCD等の画像表示装置の画素数を増加させることなく、表示画像の解像度を、見掛け上、向上させるため、縦方向及び横方向に配列された複数個の画素の各々が、表示画素パターンに応じて発光することにより、画像が表示される画像表示装置と、観測者又はスクリーンとの間に、光路をフィールド毎に変更する光学部材を配し、また、フィールド毎に、前記光路の変更に応じて表示位置がずれている状態の表示画素パターンを画像表示装置に表示させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献5 参照。)。ここに、屈折率が異なる部位が、画像情報のフィールド毎に、交互に、画像表示装置と観測者又はスクリーンとの間の光路中に現れるようにすることで、前記光路の変更が行われるものである。
【0013】
特許文献5においては、光路を変更する手段として、電気光学素子と複屈折材料の組合わせ機構、レンズシフト機構、バリアングルプリズム、回転ミラー、回転ガラス等が記述されており、上記旋光素子と複屈折素子を組合せてなる方式の他に、ボイスコイル、圧電素子等によりレンズ、反射板、複屈折板等の光学素子を変位(平行移動、傾斜)させ光路を切り替える方式が提案されているが、この方式においては、光学素子を駆動するために構成が複雑となりコストが高くなる。
【0014】
また、回転機械要素を不要化でき、全体の小型化、高精度・高分解能化を実現でき、しかも外部からの振動の影響を受け難い光ビーム偏向装置が提案されている(例えば、特許文献6 参照。)。具体的には、光ビームの進行路上に配置される透光性の圧電素子と、この圧電素子の表面に設けられた透明の電極と、圧電素子の光ビーム入射面Aと光ビーム出射面Bとの間の光路長を変化させて光ビームの光軸を偏向させるために電極を介して圧電素子に電圧を印加する電圧印加手段とを備えている。
【0015】
特許文献6では、透光性の圧電素子を透明の電極で挟み、電圧を印加することで厚みを変化させて光路をシフトさせる方式が提案されているが、比較的大きな透明圧電素子を必要とし、装置コストがアップする等、前述の特許文献5の場合と同様の問題点がある。
【0016】
【特許文献1】
特開平6−18940号公報 (第2頁、請求項1、2、段落0004)
【特許文献2】
特開平9−133904号公報(第3頁、段落0017〜0019)
【特許文献3】
特許第2939826号公報(請求項1、第4〜5頁、第4〜5図)
【特許文献4】
特開平5−313116号公報(請求項1、第1〜2頁、第1図)
【特許文献5】
特開平6−324320号公報(第5頁、第5図)
【特許文献6】
特開平10−133135号公報(第3〜4頁、段落0020〜0024)
【非特許文献1】
青木昌治編 「オプトエレクトロニックデバイス」、初版第1刷、日本国、昭晃堂、昭和61年10月31日、p.119−161
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の技術では、構成の簡易化や小型化を図った光路偏向装置では光路シフト動作を十分に高速化することができず、光路シフト動作の高速化を図った光偏向装置では装置構成の複雑化や、装置構成の複雑化に伴う高コスト化や装置の大型化等の問題を抱えている。
発明者らは、一対の基板間にホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相よりなる液晶分子を略垂直配向させ、液晶層に対して略平行な方向に電界を発生させることで液晶分子の方向を所望の方向に変化させてピクセルシフトを行う構成の光路偏向素子により、比較的簡単な構成で高速なピクセルシフトを可能とすることを見出した(特願2001−014321)。従来の光路偏向素子の構成が複雑であることに伴う高コスト、装置大型化、光量損失、光学ノイズ等を改善でき、かつ、従来のスメクチックA液晶やネマチック液晶などにおける応答性の鈍さも改善でき、高速応答が可能となるようにした。
【0018】
この光路偏向素子では、一対の電極間に数百Hz程度の交流電圧(例えば、矩形波電圧)を作用させることで、入射光の光路を数百Hzの切り替えタイミングで2方向に切り替えて出射させることができる。上述したように、光路シフトは人間の目の残像現象を利用しているため、入射光の光路の切り替えタイミングは30Hz以上であれば良いが、フリッカーを確実に防止するためには、百〜数百Hzに設定することが好ましい。
【0019】
ところで、このような光路偏向素子で数μmから数十μm程度の実用的な光路シフト量を得るためには、液晶層の厚みを数十μmから数百μmと比較的厚く設定する必要があるが、液晶素子としては十分に厚い垂直配向のスメクチック相を形成する強誘電性液晶を素子化した例は少ない。発明者らの検討の結果、光路偏向素子作成時あるいは継続的な光路シフト駆動に伴い、液晶部に白濁が発生する場合があることを見出した。
【0020】
一般に液晶層において液晶分子が均一に垂直配向している場合、該液晶層中にはアイソジャアと呼ばれる暗十字線状のコノスコープ像を鮮明に観察することができるが、白濁が発生した部分では、コノスコープ像が非常に不鮮明であり、また、白濁の強い部分ではアイソジャアは全く観察されなかった。これは、液晶分子の垂直配向状態が乱れている証拠であり、白濁した部分の液晶分子のダイレクタは不揃いであり、白濁が発生した光偏向素子では良好な光路シフトの機能を得ることができない。詳細は煩雑になるので後述する。
【0021】
したがって、比較的液晶層が厚い垂直配向強誘電性液晶素子においては、均一な配向状態を形成・維持することが重要課題であることに着目し、本発明に至った。
本発明の目的は、構成を容易化した光偏向素子による光路シフト動作の高速化を図るとともに、繰り返し使用による配向欠陥の発生を抑制し、信頼性を向上させることである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相を形成可能な液晶層と、該液晶層内の前記基板面と平行な方向に駆動電界を形成する電極対とを有し、該電極対にかける駆動電界の方向の切換えによって液晶分子の配向方向を切換えて前記液晶層の層法線に対する光学軸の傾斜方向を切換えて、前記基板面への入射光に対する、前記基板面からの出射光路を切換える光路偏向素子において、前記電極対に対する無電界時の前記光学軸が前記液晶層の層法線に対して駆動電界の方向に傾斜しており、前記液晶層が繊維状あるいは網目状の組織を含有することを特徴とする。
【0023】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光路偏向素子において、前記光学軸の傾斜は、前記液晶層の垂直配向膜をラビング処理することにより達成することを特徴とする
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の光路偏向素子において、前記組織は、モノマーまたはプレポリマーの少なくとも一方を光重合開始剤によって重合することにより形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の光路偏向素子において、前記組織の重合は、ホメオトロピック配向をなすスメクチックA相を示す温度域で行うことを特徴とする。
請求項5に記載の発明では、請求項3に記載の光路偏向素子において、前記組織の重合は、前記液晶層内の前記基板面と平行な方向に交流電界を印加した状態で、スメクチックA相の温度からキラルスメクチックC相の温度まで冷却し、前記交流電界が印加された状態で重合させたことを特徴とする。
【0025】
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載の光路偏向素子において、前記光学軸を前記液晶層の層法線に対して駆動電界の方向に傾斜させるための第2の電極対が設けられ、前記組織の重合は、キラルスメクチックC相を示す温度域で、前記第2の電極対により発生する直流電界を印加した状態で行うことを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光路偏向素子において、前記組織は、液晶性骨格を部分構造として有することを特徴する。
【0026】
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、二つの液晶性ジ ( メタ ) アクリレートの各アクリロイルオキシ基と、メチレンスペーサーを挟んで重合されていることを特徴する。
請求項9に記載の発明では、請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、一つの液晶性ジ ( メタ ) アクリレートのアクリロイルオキシ基と、メチレンスペーサーを挟んで重合されていることを特徴する。
【0027】
請求項10に記載の発明では、請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、メチレンスペーサーが無い液晶性ジ ( メタ ) アクリレートのアクリロイルオキシ基と重合されていることを特徴する。
請求項11に記載の発明では、請求項1または2に記載の光路偏向素子において、前記組織は、予め形成された繊維状、あるいは網目状の構造体であり、前記液晶層は該構造体の空間部に含浸されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明では、請求項11に記載の光路偏向素子において、前記構造体はガラスファイバ、カーボンナノチューブ、多孔質延伸ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の光路偏向素子において、前記構造体が繊維からなる場合は、繊維径が透過光の波長程度以下であることを特徴とする。
【0028】
請求項14に記載の発明では、請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光路偏向素子において、前記光路偏向素子への入射光の偏光方向を、液晶層内にかける電界の方向と直交する方向に設定する偏光方向規制手段を有することを特徴とする。
【0029】
請求項15に記載の発明では、請求項14に記載の光路偏向素子において、前記光路偏向素子の出射光の偏光面を所定の方向に回転させる偏光面回転手段と、偏光面回転後の出射光を入射光とする第2の光路偏向素子を有し、前記光路偏向手段と該第2の光路偏向手段の液晶層法線方向は略一致させ、両光路偏向手段の電界方向が所定の角度になるように配置されてなることを特徴とする。
【0030】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光路偏向素子を有し、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源および照明装置と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学装置と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールドで形成する表示駆動手段と、サブフィールド毎の光路の偏向状態に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示することで、画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示する画像表示装置を特徴とする。
【0033】
【実施の形態】
本発明の説明に先立って、本発明で使用する光路偏向素子の構成と基本動作について説明しておく。
図12は光路偏向素子の断面を模式的に示した図である。
同図において符号1は光路偏向素子、2は基板、3は垂直配向膜、4は電極、5はスメクチックC相からなる液晶層をそれぞれ示す。
一対の透明な基板2、2が対向配置させられている。透明な基板としては、ガラス、石英、プラスチックなどを用いることが出来るが、複屈折性の無い透明材料が好ましい。基板の厚みは数十μm〜数mmのものが用いられる。
【0034】
基板2の内側面には垂直配向膜3が形成されている。垂直配向膜3は基板表面に対して液晶分子を垂直配向、すなわち、ホメオトロピック配向させる材料ならば特に限定されないが、液晶ディスプレイ用の垂直配向剤やシランカップリング剤、SiO蒸着膜などを用いることが出来る。
【0035】
本発明で言うホメオトロピック配向とは、基板面に対して液晶分子の長軸方向が基板面に対して垂直に配向した状態だけではなく、基板面法線方向から数十度程度までチルトした配向状態も含む。また、キラルスメクチックC相のように液晶分子長軸が傾斜する方向(以後方位角と呼ぶ)が液晶層厚み方向に対して変化することで螺旋構造を形成していても良い。
【0036】
両基板間隔をスペーサーを挟んで規定し、基板間に電極4と液晶層5を形成する。スペーサーとしては数μmから数mm程度の厚みを持つシート部材あるいは同程度の粒径の粒子などが用いられ、光路偏向素子の有効領域外に設けられることが好ましい。電極4としてはアルミ、銅、クロムなどの金属、ITOなどの透明電極などが用いられるが、液晶層内に均一な水平電界を印加するためには、液晶層厚みと同程度の厚みを持つ金属シートを用いることが好ましく、素子の有効領域外に設けられる。
【0037】
図12ではより好ましい例として、スペーサ部材と金属シート部材が共通であり、金属シート部材の厚みにより液晶層厚みが規定される。液晶層としては常温でホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相を形成可能な液晶が用いられる。ここで言う常温とは、光路偏向素子が、通常の使用条件あるいは保管条件で置かれる温度であり、50℃ないしマイナス10℃程度の温度範囲を意味する。電極間に電圧を印加することで、液晶層の水平方向に電界が印加される。
図13は図12と異なる電極構成の例を示す図である。
同図において符号4は透明ライン電極、6は誘電体層、7はスペーサをそれぞれ示す。
図13のように有効領域内に多数の透明ライン電極4と誘電体層6を設け、各ライン電極4に段階的に変化した電圧値を印加するようにしても良い。この構成では、比較的広い面積に対して均一な水平電界を印加することが出来る。
【0038】
次に、スメクチックC相を形成可能な液晶層に関して詳細に説明する。「スメクチック液晶」は液晶分子の長軸方向を層状(スメクチック層)に配列してなる液晶層である。このような液晶に関し、上記層の法線方向(層法線方向)と液晶分子の長軸方向とが一致している液晶を「スメクチックA相」、法線方向と一致していない液晶を「スメクチックC相」と呼んでいる。スメクチックC相よりなる強誘電液晶は、一般的に外部電界が働かない状態において各スメクチック層毎に液晶ダイレクタ方向が螺旋的に回転しているいわゆる螺旋構造をとり、「キラルスメクチックC相」と呼ばれる。
【0039】
また、キラルスメクチックC相反強誘電液晶は各層毎に液晶ダイレクタが対向する方向を向く。これらのキラルスメクチックC相よりなる液晶は、不斉炭素を分子構造に有し、これによって自発分極しているため、この自発分極Psと外部電界Eにより定まる方向に液晶分子が再配列することで光学特性が制御される。なお、本実施の形態等では、液晶層5として強誘電液晶を例にとり光路偏向素子1の説明を行うが、反強誘電液晶の場合にも同様に使用することができる。
【0040】
キラルスメクチックC相はスメクチックA相やネマチック液晶に比較して極めて高速な応答性を有しており、サブmsでのスイッチングが可能である点が特徴である。特に、電界方向に対して液晶ダイレクタ方向が一義的に決定されるため、スメクチックA相よりなる液晶に比べダイレクタ方向の制御が容易であり、扱いやすい。
【0041】
ホメオロトピック配向をなすスメクチックC相よりなる液晶層5は、ホモジニアス配向(液晶ダイレクタが基板面に平行に配向している状態)をとる場合に比べて、液晶ダイレクタの動作が基板からの規制力を受けにくく、外部電界方向の調整で光路偏向方向の制御が行いやすく、必要電界が低いという利点を有する。
【0042】
また、液晶ダイレクタがホモジニアス配向している場合、電界方向だけでなく基板面に液晶ダイレクタが強く依存するため、光路偏向素子の設置についてより位置精度が求められることになる。逆に、本実施の形態のようなホメオロトピック配向の場合は、光偏向に対して光路偏向素子1のセッティング余裕度が増す。これらの特徴を活かす上で、厳密に螺旋軸を基板面に垂直に向ける必要はなく、或る程度傾いていても差し支えない。液晶ダイレクタが基板からの規制力を受けずに2つの方向を向くことが可能であればよい。
【0043】
本発明は、液晶層中に繊維状あるいは網目状の組織を添加して配向安定性を向上させたものであり、透明基板、垂直配向膜、スペーサー、電極などは上述した従来構成と同様のものを用いることが出来る。
【0044】
図14は、図12に示した構成に関して電界方向と液晶分子の傾斜方向を模式的に示した図である。
図15は、図14の状態から電界が反転したときの様子を示す模式図である。
両図において符号5aは液晶分子、Cは仮想コーン、dは液晶層の厚み、Eは電界方向、Psは自発分極、Vsは矩形波交流電源をそれぞれ示す。
液晶分子5aの幅が広く描いてある側が紙面上側、幅が狭く描かれている側が紙面下側に傾いている様子を示している。また、液晶の自発分極Psを矢印で示してある。
【0045】
電界Eの向きが反転すると、略垂直配向した液晶分子5aの方位角が図14の状態から、図15の状態に反転する。ここでは、自発分極が正の場合について電界E印加方向と液晶分子5aの方位角の関係を図示している。ここで、方位角が反転する際、図14b、15bの斜視図に示したような仮想コーンCの面内を回転運動すると考えられる。
【0046】
図16は液晶分子の配向状態と光路偏向の原理を模式的に示した図である。
図17は図16において電界を反転させた状態を模式的に示した図である。
両図において、符号L0は光路偏向素子に入射する直線偏光、L1は電界が一方向のときの出射光、L2は電界が反転したときの出射光、θはチルト角を示す。
垂直配向膜、スペーサー、電極は省略してある。図16、17は、それぞれ図14、15を左側から見た断面図として表されており、電界は紙面表裏方向に作用している。電界方向は目的とする光の偏向方向に対応して、図14、15に示される電源により切換えられる。また、光路偏向素子1に対する入射光は直線偏光である。ここに言うチルト角θとは、個々の液晶分子の方位を角総平均したものとする。
【0047】
図16のように紙面裏側から紙面表側への電界Eが印加された場合、液晶分子5aの自発分極Psが正ならば液晶ダイレクタが図右上に傾斜した分子数が増加し、液晶層としての平均的な光学軸も図右上方向に傾斜して、複屈折板として機能する。キラルスメクチックC相のらせん構造が解ける閾値電界以上では、すべての液晶ダイレクタがチルト角θを示し、光学軸が上側に角度θで傾斜した複屈折板となる。異常光として左側から入射した直線偏光は上側に平行シフトする。ここで、液晶分子の長軸方向の屈折率をne、短軸方向の屈折率をno、液晶層5の厚み(ギャップ)をdとするときシフト量Sは以下の式で表される(例えば、「結晶光学」応用物理学会、光学懇話会編、p198参照)。
S=[(1/no)−(1/ne)]sin(2θ)・d
÷[2((1/ne)sinθ+(1/no)cosθ)] ……式1
【0048】
同様に図17のように電極への印加電圧を反転して紙面裏側への電界が印加された場合、液晶分子の自発分極が正ならば液晶ダイレクタは図右下に傾斜し、光学軸が下側に角度θで傾斜した複屈折板として機能する。異常光として左側から入射した直線偏光は下側に平行シフトする。電界方向の反転によって、2S分の光路偏向量が得られる。
【0049】
図16、17は理想的な配向状態を示しているが、光路偏向量Sを大きく設定するために液晶層5の厚みdを大きくした場合などには、配向欠陥が発生する場合がある。液晶層の厚みが大きくなると、層の中央部になるほど配向膜からの配向規制力が弱くなって、スメクチック層の方向が乱れやすくなる。
【0050】
図18はスメクチックC相における配向欠陥の発生を説明するための図である。
例えば、図18(a)のように、或る温度においてスメクチックA相では均一な垂直配向をしていたものが、冷却してキラルスメクチックC相に転移する共に層中央部のスメクチック層の方向が図18(b)のように乱れて、光散乱を生じる場合がある。このメカニズムは明らかでないが、液晶分子のチルト角増加によるスメクチック層間距離の変化や、螺旋ピッチの発生によってスメクチック層を歪ませる力が発生するためと考えられる。また、初期的には均一なキラルスメクチックC相を形成できる場合でも、長期間の駆動や温度変化、外的圧力などによっても図18(b)のような配向乱れが生じてしまう場合がある。
【0051】
配向が乱れた部分では液晶のスメクチック層が不連続になり、配向性が不連続な部分の大きさや間隔が透過光の波長程度よりも大きいと、その境界面での屈折率の不一致により光の散乱が発生する。光の前方散乱および後方散乱により白濁して見える場合が多い。光路偏向素子の液晶層に白濁が発生すると透過率の低下、不要な方向への透過光の発生などが生じるため、光利用効率や、SN比や、コントラストが低下してしまい好ましくない。白濁の許容量は光路偏向素子を使用する装置の目的によっても異なるが、光学素子として見た場合には、透過率が80%以上、空間周波数50lp/mmにおけるMTF(変調伝達関数)が80%以上、空間周波数100lp/mmにおいてMTFが50%以上であることが好ましい。
【0052】
ここでいう透過率とは、白色レーザ光源からの平行光を液晶層の法線方向に出射し、液晶層を透過させたときの液晶層透過前の光量と、液晶層透過後光源からの出射方向に進む光の光量との比を意味する。
MTFとは光学顕微鏡を用い、所定の一方向に向かってサインカーブ状に濃度が変化する、所定の空間周波数の白黒のテストパターンの、液晶層透過後の画像をCCDで受光した際の光量の最大値と最小値から算出される値である。
【0053】
一般に、キラルスメクチックC相の液晶層5を均一に配向制御することは困難であり、従来様々な検討が行われているが、その多くは画像表示素子への応用を前提とした表面安定型強誘電性液晶素子に対するものであった。表面安定型強誘電液晶素子では、キラルスメクチックC相の螺旋ピッチよりも薄い基板ギャップ間にホモジニアス配向させるものであり、配向性の悪化はスメクチック層の形成方向の違いとして現われ、画像表示素子として偏光板のクロスニコル中で透過光を観察した場合には、配向欠陥部分は明暗部の違いとして観察される。
【0054】
一方、光路の偏向量は液晶層の膜厚に比例するため、本発明の光路偏向素子では、数μmから数十μm程度の光路偏向量を得るために、液晶層の膜厚を数μmから数百μmと比較的厚く設定することを特徴としている。ただし、最大に厚くしても1mm以下とする。特に、画像表示素子の画素ピッチの2分の1程度のシフト量を得るためには、液晶層の厚さは50ないし100μm程度になる。
【0055】
このように厚いホメオトロピック配向のキラルスメクチックC相の強誘電性液晶では、上述のような白濁現象が起こる場合がある。この白濁の発生と液晶材料の物性値との相関は明らかではないが、キラルスメクチックC相の螺旋ピッチ、カイラル剤の量や種類などが影響していると考えられる。本発明ではホメオトロピック配向したキラルスメクチックC層の強誘電性液晶層の膜厚が10μm以上であることが好ましいが、このような構造を実用的な素子として提案した例は少なく、白濁現象の低減に関する提案は無い。
【0056】
図17では、液晶分子が反転して再配向した後の安定状態を図示しているが、液晶分子が反転する過程で一時的に配向状態が乱れ、過渡光散乱が発生する。過渡光散乱のモデルを図19に示す。
図19は図14、15と同様に光路偏向素子内の液晶分子の傾斜状態を示した図である。
【0057】
キラルスメクチックC相の螺旋構造が解ける閾値電界以上では、図19(a)のように液晶分子が均一に配向している。この状態から液晶の応答時間より短時間で印加電界を反転させると、液晶分子は図14(b)にCで示したようなコーン状の仮想面内に沿って反転し始める。この時、図19(b)のように右回りに回転する領域と左回りに回転し始める領域があると推測される。この回転方向の異なるドメイン間の界面で過渡的光散乱が生じると考えられる。その後、図19(c)のように液晶分子が反対側に均一に傾斜した状態に再配向されると光散乱は消滅する。
【0058】
この過渡光散乱を低減させるために、電界方向の反転により液晶層内の少なくとも一部の液晶分子がスメクチック層内でコーン状の仮想面内を回転運動して配向方向を反転する時に、図19(d)のように反転する各液晶分子の回転方向を同一方向に制御することが有効である。液晶分子の回転方向の制御方法としては、液晶層自体の配向方向に指向性を与える方法や、外部から電場や磁場を与える方法がある。
【0059】
本発明の光路偏向素子の液晶層自体に配向方向の指向性を与えるということは、無電界時の液晶層の光学軸が液晶層の層法線に対して傾斜している状態とすることである。光路偏向動作時の液晶分子の傾斜方向は駆動電界の方向に直交する方向であるから、液晶分子の回転方向を制御するためには、無電界時の光学軸が液晶層の層法線に対して、駆動電界の方向に傾斜している必要がある。液晶層自体の配向方向に指向性与えて、無電界時の光学軸が液晶層の層法線に対して傾斜させる方法としては、垂直配向膜のラビング処理、液晶層中での高分子あるいはゲル化剤などによる組織の形成などが適用できる。
【0060】
本発明はこれらの諸問題を解決すべくなされたものである。以下に図を参照しながら本発明の各実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態を説明するための光路偏向素子の断面模式図である。
同図において符号5bは無機材料、あるいは有機材料から成る、繊維状、あるいは網目状の組織である。
同図は図18を用いて説明した問題点の解決を目的としたものであり、図1(a)はある程度温度が高くて液晶層5がスメクチックA相を呈している状態、図1(b)は温度が下がって液晶層5がキラルスメクチックC相に転移した状態を示す。
【0061】
本実施形態では図1のように、液晶層5中に無機材料、あるいは有機材料から成る、繊維状、あるいは網目状の組織5bを含有させてスメクチック相の配向性を安定化させる。このとき、2枚のガラス基板2、2の間に、予め形成された繊維状、あるいは網目状の構造体の空間部に液晶材料を含浸させても良い。この場合の構造体としては、ガラスファイバ、カーボンナノチューブ、多孔質延伸ポリマーなどを用いることができる。液晶層5中の構造体が光散乱を起こさないように、繊維構造の径は透過光の波長程度以下にすることが望ましい。
また、液晶材料中に高分子材料や、ゲル化剤を予め混合した状態で、2枚のガラス基板2、2間に注入しても良い。高分子材料は鎖状あるいは三次元網目構造で液晶分子中に分散されるように構造や含有濃度が最適化される。
図1(a)のように比較的配向性の良いスメクチックA相の状態では高分子材料がスメクチック層の水平方向や垂直方向に均一に分散され、スメクチック相の層構造の配向安定性を高めることが出来る。
【0062】
この状態から冷却することで、図1(b)のようにキラルスメクチックC相に転移した後も配向安定性を高めることが出来る。この時の高分子材料あるいはゲル化剤の含有量は0.5重量%から10重量%程度の範囲が好ましい。これよりも少ない場合にはスメクチック相の層構造を安定化する効果が小さくなり、多い場合には液晶層の電気特性や光学特性が悪化してしまう。高分子材料あるいはゲル化剤の含有量や分子量を最適化することにより、液晶層バルク中での配向状態が安定化され、配向欠陥の発生を防止できる。
【0063】
図1(a)のように液晶材料中に直接高分子材料を溶解させるためには、両材料の相溶性や溶媒との相性などから材料が限定される場合がある。液晶材料と相分離するような高分子材料を均一に分散することは困難である。また、室温程度でスメクチック層を示す強誘電性液晶材料は粘度が高いため、高分子材料を均一に分散させることが困難になる。
【0064】
そこで、液晶中にモノマーまたはプレポリマーを均一に溶解した状態で素子中に注入しておき、その後に重合反応により均一な高分子材料を形成することが好ましい。重合反応としては、重合開始剤の種類により熱重合や光重合を用いることが出来る。熱重合の場合、液晶材料を比較的高温に加熱する必要があるが、液晶材料自体が相転移などの温度特性を有しているため、熱重合開始温度と液晶の相転移温度を最適化する必要があり、材料の選択範囲は限られる傾向がある。
ゲル化剤を使用する場合も、ゲル化剤の種類や濃度によって、形成される組織の形状が決まってしまうため、液晶層の安定化に適したゲル化剤の選択の範囲は限られる傾向がある。
【0065】
本発明の第2の実施形態では、組織5bが、モノマーまたはプレポリマーの少なくとも一方が光重合により形成された高分子材料である。この場合、光路偏向素子内へ液晶材料とモノマーまたはプレポリマーの混合物を注入した後、光重合開始剤によって、室温下などの比較的低温での露光処理により液晶層中に均一な高分子組織が形成できる。高分子組織は用いるモノマー中の官能基の数によって鎖状あるいは三次元網目構造となる。
一般に鎖状の場合は高分子鎖、ポリマーチェーン、三次元網目構造の場合はポリマーネットワークなどと呼ぶが、ここでは総称して高分子組織と呼ぶ。
【0066】
この実施形態の場合、低分子量の材料同士の混合であるため、液晶材料に直接高分子材料を溶解させる場合に比べて均一な液晶混合物の調整が容易であり、効果的に配向安定性を向上させることが出来る。また、光重合の場合、光強度と照射時間の二つのパラメーターの組合せをコントロールすることで同一のモノマーを用いても高分子組織の分子量や相分離構造を制御することも出来る。したがって、熱重合やゲル化剤に比べてモノマー材料の選択の幅を広くできるという利点も有る。
【0067】
上述のように液晶層中での重合反応により高分子組織を形成させる場合、重合前の液晶層が均一なスメクチック相に配向している必要がある。そこで、本発明の第3の実施形態では、液晶層がホメオトロピック配向をなすスメクチックA相を示す温度域で重合硬化させる。スメクチックA相は、キラルスメクチックC相よりも高温域で現れ、スメクチック層の法線方向に対する液晶分子のチルト角がゼロで、螺旋構造を有しない。このスメクチックA相の温度域で重合することで、図1(a)のように均一なスメクチック層の状態の中に高分子組織を発生させることが出来る。
【0068】
その後、温度を低下させてキラルスメクチックC相に転移する時に、スメクチック層間隔の変化や、螺旋構造の発生に伴う歪が発生しても、高分子組織による規制力により図1(b)のように配向欠陥の発生が防止出来る。このように、キラルスメクチックC相の配向性が悪い液晶材料を使った場合でも、均一な高分子組織を形成して配向性を良くすることが出来る。
ただし、スメクチックA相の段階で配向性があまり良くない液晶材料もある。そのような材料に対してはさらに工夫が必要である。
【0069】
重合前のキラルスメクチックC相の配向性を向上させるために、本発明の第4の実施形態では、光路偏向動作時と同様、液晶層内の基板面と平行な方向に交流電界を印加した状態でスメクチックA相の温度からキラルスメクチックC相の温度まで冷却し、交流電界が印加された状態で重合硬化させる。一般に液晶材料を用いた光偏向素子では、液晶材料の粘弾性や誘電特性に応じて、光偏向動作を数十Hzから数百Hzに設定することが多いが、液晶分子の応答性が十分に間に合わないような比較的高周波の電界を印加することで、キラルスメクチックC相の垂直配向性が向上する。
【0070】
配向を安定化させるための交流電界の周波数も、液晶材料の粘弾性や誘電特性に応じて異なるが、50Hzから10KHz程度の間が好ましい。これよりも低周波数では直流電界的な挙動を示し、液晶層の流動などが発生してしまう。これよりも高周波数では液晶分子が全く応答できず、配向性向上の効果が現れない。特に比較的高温のスメクチックA相から、キラルスメクチックC相に転移する温度範囲を少なくとも含んで、すなわち、冷却の過程を通して、上記の交流電界を印加することで、キラルスメクチックC相での配向欠陥を効果的に防止することが出来る。
【0071】
この効果の理由は明らかではないが、液晶分子の層水平方向に対称の振動を与えることによって、液晶分子がどちらか一方に偏って傾斜することがなくなる、すなわちスメクチック層が湾曲して配向欠陥が発生することを防止している、と推測される。更に、誘電異方性が負の液晶を用いた場合には、高周波の水平電界によって液晶分子に垂直に配向させる静電力も働くため、より好ましい。したがって、本来キラルスメクチックC相の配向性が悪い液晶材料でも、比較的低温で配向欠陥の無いキラルスメクチックC相を一時的に形成することが出来、その状態で高分子材料を重合硬化させることで、配向欠陥の無い配向状態を長期的に安定化させることが出来る。
【0072】
図2は、光偏向動作時とは異なる方向の直流電界を印加しながら高分子重合させる様子を示す模式図である。
本発明の第5の形態では、キラルスメクチックC相を示す温度域で、高分子への重合の過程において、液晶層内の基板面と平行で、光路偏向動作時の電界印加方向に直交する方向に、一時的に直流電界E’をかけた状態で重合硬化させることで、液晶分子が一方向に傾斜した状態に規制力を受ける高分子組織を形成する。
図2(a)のように一時的に外部電極4’などを設置するなどして、通常動作時の電界方向と異なる方向に電界を印加した状態で重合反応を行わせることで、光偏向方向と異なる方向に液晶分子の安定な傾斜方向を設定する。
図2(b)はこの方法で得られた光路偏向素子に一方向の電界をかけたときの様子を示す図である。
【0073】
図2(b)の状態から、印加電界が反転するとき、過渡的に印加電界が0になるが、このとき、液晶分子のチルト方向は、高分子の規制力を受けて図2(a)の状態に戻る。その状態から、反転した電界に対応したチルト方向に向くことになる。すなわち、液晶分子の回転し易さに非対称性が生じるため、光路偏向動作時に、液晶分子のチルト方向が反転する時、一方向に回転方向が制御され、回転方向のバラツキによる過渡光散乱現象が低減される。
ポリマーの添加量や材質を最適化することで、光偏向方向がずれてしまうことや応答時間が長くなるという副作用をを低減することが出来る。この場合、安定な傾斜方向は一方向しか設定できないので、液晶分子の反転時の回転運動は、常に安定な傾斜方向を経由する往復運動となる。
【0074】
図3は高分子材料として液晶性ポリマーを用いた場合の液晶層の状態を示す模式図である。
同図において、符号5cは液晶性ポリマーを示す。
本発明の第6の実施形態では、高分子材料として液晶性骨格を部分構造として有するものを用いる。液晶性高分子は液晶性骨格のメソゲン基を主鎖中に含んだ主鎖型でも良いし、側鎖に結合した側鎖型でも良い。また、主鎖と側鎖に含む複合型でも良い。ホスト材料であるキラルスメクチックC相の強誘電性液晶と相溶性が良い液晶性モノマーや液晶性プレポリマーを用いることで、重合後の高分子材料5cを均一に相分離させることが出来る。高分子鎖が均一に分散されているため、均一に配向性を安定化させることが出来る。また、高分子材料自体も配向性と光学異方性を有しているため、高分子成分の導入による複屈折性の低下や光路偏向現象の劣化が防止できる。
【0075】
液晶性モノマーとしては種々の材料を用いることが出来るが、ホスト液晶との相溶性を向上させるために室温でネマチック相を示すことが好ましい。また、ホスト液晶であるキラルスメクチックC相の配向性や応答性に応じて以下のような液晶性モノマーを用いることが好ましい。
本発明の第七の形態では、モノマーが液晶骨格と二つのアクリロイルオキシ基の間にメチレンスペーサーがある、液晶性ジアクリレート、または液晶性ジメタアクリレートを含有する。ここでは、両者を合せて液晶性ジ(メタ)アクリレートと表記する。
液晶性ジ(メタ)アクリレートとしては、下記の一般式(1)のような材料を用いることが出来る。
【0076】
【化1】
Figure 0004031702
【0077】
(1)式中、Xは水素原子又はメチル基を表し、nは0又は1の整数を表し、6員環A、B及びCはそれぞれ独立的に、(2)式に示す構造のいずれかを表す。
【0078】
【化2】
Figure 0004031702
【0079】
mは1〜4の整数を表し、Y及びYはそれぞれ独立的に、単結合、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH−、−CHCHCHO−、−OCHCHCH−、−CH=CH−CHCH−、−CHCH−CH=CH−を表し、Yは単結合、−O−、−COO−、−OCO−を表し、aおよびbは1〜20の整数を表す。
好ましい例としては、下記の構造式(3)のようなものがあげられる。
【0080】
【化3】
Figure 0004031702
【0081】
このような液晶性ジ(メタ)アクリレートは重合すると三次元網目構造を形成し、液晶層の配向状態を効果的に安定化することが出来る。例えば、キラルスメクチックC相を形成可能な液晶の中でも、特にチルト角と自発分極が大きく、配向安定性が悪いが高速応答性に優れた液晶と組み合わせることで、配向性と応答性を両立した光路偏向素子が得られる。
【0082】
本発明の第8の形態では、モノマーが、液晶骨格と一つのアクリロイルオキシ基の間にメチレンスペーサーを有する液晶性アクリレート、または液晶性メタアクリレートを含有する。ここでは、両者を合せて液晶性(メタ)アクリレートと表記する。メチレンスペーサーを有する液晶性(メタ))アクリレートは重合すると側鎖型の液晶ポリマーを形成する。
液晶性(メタ)アクリレートとしては、下記の一般式(4)のような材料を用いることが出来る。
【0083】
【化4】
Figure 0004031702
【0084】
(4)式中、Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基又は炭素原子数2〜20のアルケニル基を表し、その他の記号は(1)式で示した記号と同じ定義である。
好ましい例としては、下記の構造式(5)のようなものがあげられる。
【0085】
【化5】
Figure 0004031702
【0086】
このような材料は、液晶骨格がメチレンスペーサーを介して高分子主鎖に結合するため液晶骨格が比較的動きやすく、配向状態の安定化効果は比較的弱いものの、液晶の反転動作に対する抵抗力が小さく応答性の劣化が少ないという利点がある。例えば、キラルスメクチックC相を形成可能な液晶の中でも、特にチルト角と自発分極が小さく、配向安定性は比較的良いが応答性が並の液晶と組み合わせることで、配向性と応答性を両立した光路偏向素子が得られる。
【0087】
本発明の第9の形態では、モノマーが、液晶骨格と1つのアクリロイルオキシ基の間に、メチレンスペーサーが無い液晶性(メタ)アクリレートを含有する。液晶性(メタ)アクリレートとしては、下記の一般式(6)のような材料を用いることが出来る。
【0088】
【化6】
Figure 0004031702
【0089】
(6)式中の各記号は(4)式に示した記号と同じ定義である。
特に、一般式(6)において、Xは水素原子を表し、nは0を表し、6員環A及びCはそれぞれ独立的に1,4−フェニレン基、又は1,4−トランスシクロヘキシル基を表し、Yは単結合又は−C≡C−を表し、Yは単結合を表し、Zはハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表す材料が好ましい。
【0090】
また、さらに好ましい例として下記の構造式(7)や(8)のようなものがあげられる。また、これらの混合物を用いても良い。例えば(7)と(8)を50重量部づづ混合したものは、室温下でネマチック相を示し、扱いやすい。
【0091】
【化7】
Figure 0004031702
【0092】
【化8】
Figure 0004031702
【0093】
このようなメチレンスペーサーが無い液晶性(メタ)アクリレートは、重合すると液晶骨格が高分子主鎖に直接結合するため、液晶骨格の動きが制限され、液晶骨格が配向安定性に直接寄与する。配向安定性は比較的強いが、高分子鎖自体にも動きやすさがあるため、配向状態の安定化効果は比較的強いものの、液晶の反転動作に対する抵抗力も比較的小さく、応答性の劣化が少ないという利点がある。例えば、キラルスメクチックC相を形成可能な液晶の中でも、特に配向安定性と応答性が悪い液晶と組み合わせることで、配向性と応答性を両立した光路偏向素子が得られる。
【0094】
以上の第1から第9の実施形態では、光路の偏向方向、すなわち電界印加時の液晶分子の傾斜方向に平行な偏光方向、の直線偏光のみが光路の偏向を受け、これに直交した直線偏光はそのまま直進する。したがって、無偏光の光を入射した場合、出射光には偏向を受けない成分を含むため、光路偏向の有無に対するコントラストが低下してしまう。
【0095】
図4は光路偏向素子への入射光の偏光方向を特定の方向に規制する手段を有する光路偏向装置の概要を示す図である。
同図において、符号8は直線偏光板を示す。
本発明の第10の実施形態では、図4に示すように光路偏向素子への入射光の偏光方向を、液晶層内にかける電界の方向と直交する方向に設定する偏光方向規制手段を設ける。言い換えれば、光路偏向のシフト方向と平行な方向に直線偏光させる制御手段を設ける。偏光方向規制手段としては、直線偏光板8を用いることが出来る。直線偏光板8の偏光方向を電極4の長手方向に平行に合わせて、光路偏向素子1の入射面側に設置する。入射光が無偏光の場合でも、液晶分子の傾斜による光路偏向作用を受けない光成分をカットするので、確実に光路偏向による光スイッチングを行うことが出来る。
【0096】
図5は光路偏向素子の組み合わせによる4方向シフト装置の構成を説明するための概略図である。
同図において、符号9は4方向シフト装置、10は第1の光路偏向素子、11は2分の1波長板、12は第2の光路偏向素子をそれぞれ示す。
本発明の第11の実施形態を図5に基づいて説明する。本実施形態は、前述した実施形態のように構成された光路偏向装置に、もう一つの光路偏向素子をシフト方向を変えて組み合わせた装置である。両光路偏向素子の間には偏光面回転手段としての2分の1波長板を挟んである。図5では、スペーサー、配向膜などは省略してある。
【0097】
第1、第2光路偏向素子10、12は、各々の電極対4、4による電界発生方向を直交させて光進行方向に直列に配列されており、これらの両光路偏向素子間に偏光面回転手段として1/2波長板11が配設されている。ここでは、電界発生方向が直交している例を図示しているが、直交に限らず所定の角度に設定しても良い。
1/2波長板11は通常市販されている結晶板や液晶フィルムなど可視光用のものをそのまま適用できる。また、ツイストネマチック(以後TNと略記する)液晶セルを用いて、偏光面を回転させることも出来る。
【0098】
あらかじめ直線偏光に揃えられた光束Lは、光進行方向に対して前段側の第1光路偏向素子10において偏向を受け左右2方向L1、L2のいずれかの光路を経た後、1/2波長板11によって偏光方向を90°回転させられて上下方向の偏光方向となることで、後段の第2光路偏向素子12で偏向を受け、L1は上下2方向L11、L12のいずれかの光路をとり、また、L2も上下2方向L21、L22のいずれかの光路をとることにより、結果として4方向のいずれか1つの光路を通ることになる。
ここでは、偏向方向が90°回転された例を図示しているが、90°に限らず、第1光路偏向素子から出射した偏光方向を、第2光路偏向素子での偏向方向に一致させる所定の角度としても良い。
【0099】
図6は4方向シフト装置の駆動の一例を示すタイミングチャートである。
図6(a)は第1光路偏向素子の駆動タイミング、図6(b)は第2光路偏向素子の駆動タイミングを示す図である。両者を図示のようにタイミングを合わせることにより、4方向のシフトを一方向まわりに順次選択していく。
【0100】
図7は光路偏向素子を用いた画像表示装置の概要図である。
同図において符号21は光源としてのLEDランプ、22は拡散板、23はコンデンサレンズ、24は画像表示素子としての透過型液晶パネル、25は投影レンズ、26はスクリーン、27は光源ドライブ部、28は透過型液晶パネルのドライブ部、29は光路偏向手段、30は4方向シフト装置のドライブ部をそれぞれ示す。
本発明の第12の実施形態を図7に基づいて説明する。本実施形態は、画像表示装置への適用例を示す。図7において、2次元アレイ状に配列した光源LEDランプ21からスクリーン26に向けて発せられる光の進行方向には、拡散板22、コンデンサレンズ23、画像表示素子としての透過型液晶パネル24、画像パターンを観察するための光学部材としての投影レンズ25が順に配設されている。
【0101】
透過型液晶パネル24と投影レンズ25との間の光路上にはピクセルシフト素子として機能する4方向シフト装置29が介在されており、ドライブ部30に接続されている。このような光路偏向手段29として、前述したような4方向シフト装置等が用いられる。
【0102】
光源ドライブ部27で制御されて光源31から放出された照明光は、拡散板22により均一化された照明光となり、コンデンサレンズ23により液晶ドライブ部28で照明光源21と同期して制御されて透過型液晶パネル24を照明する。この透過型液晶パネル24で空間光変調された照明光は、画像光として光路偏向手段29に入射し、この光路偏向手段29によって画像光が画素の配列方向に所定の距離だけシフトされる。この光は投影レンズ25で拡大されスクリーン26上に投影される。
【0103】
光路偏向手段29により画像フィールドを、時間的に分割した複数のサブフィールド毎の光路の偏向に応じて、表示位置をずらした状態の画像パターンを表示させることで、透過型液晶パネル24の見掛け上の画素数を増倍して表示する。このように光路偏向手段29によるシフト量は、透過型液晶パネル24の画素の配列方向に対して2倍の画像増倍を行うことから、画素ピッチの1/2に設定される。シフト量に応じて、透過型液晶パネル24を駆動する画像信号をシフト量分だけ補正することで、見掛け上高精細な画像を表示することができる。
【0104】
この際、光路偏向手段29として、前述した各実施の形態のような光偏向素子を用いているので、光の利用効率を向上させ、光源の負荷を増加することなく、観察者に明るく高品質の画像を提供できる。光路偏向制御を、当該光路偏向素子1における電極対4、4による電界印加方向及び電界強度により行うことで、適切なピクセルシフト量が保持され良好な画像を得ることができる。
【0105】
(実施例1)
図8は光路偏向素子の動作を確認するための試験装置を示す図である。
同図において符号1’は空セル、31は電界印加用の電源をそれぞれ示す。
厚さ1mmのガラス基板の表面に厚み600Åのホメオトロピック配向膜を形成した。厚み80μm、幅1.0mm、長さ12mmのアルミ電極シートをスペーサー兼電極とし、有効領域が1cm幅となるように電極対を平行に配置した図8のような空セル1’を作製した。
次に市販の光重合開始剤を1重量部と、(7)式、および(8)式で示した化合物を各々50重量部ずつからなる液晶性アクリレート組成物1重量%と強誘電性液晶「CS1029」(チッソ製)99重量%からなる強誘電性液晶組成物を調整した。
【0106】
空セル1’と強誘電性液晶組成物を約80℃に加熱した状態で、空セル1’に強誘電性液晶組成物を注入した。このセルを、液晶がスメクチックA相を示す温度まで冷却し、スメクチックA相の垂直配向状態を維持したまま60mJ/cmの紫外線を照射した。その後、室温まで冷却して接着剤で封止し、光路偏向素子1としての高分子安定化垂直配向強誘電性液晶セルを得た。電極対4、4にパルスジェネレータと高速アンプとからなる電源31を接続し、試験装置を構成した。
【0107】
無電界の状態で、この光路偏向素子の有効領域内における液晶層のコノスコープ像を室温下で観察したところ、十字形と円環の画像が中心部に観察された。したがって、無電界下では光学軸が液晶層に垂直であることを確認できた。この状態では液晶分子のチルト方向が、基板面に垂直な方向に対して回転する螺旋構造を取っており、平均的な光学軸は螺旋軸の方向である基板面に垂直な方向として観察される。
【0108】
次に、電源31から電極対4、4に±3kV、1Hzの矩形波電圧を印加したところ、コノスコープ像の十字と円環の位置が上下方向に1Hzで往復シフトした。顕微鏡の対物レンズのNA値と、液晶の屈折率と、十字位置のシフト量から光学軸の傾斜角度を計算すると約20度であった。
【0109】
空間周波数が100lp/mmの矩形波に相当する開口部が5μm角のマスクパターンを裏面から照明し、その透過光を図8に示す装置に組み込んだ光路偏向素子1を通して観察した。光路偏向素子1を動作させることでマスクパターンの位置がシフトしたように観察される。このシフトの様子を顕微鏡付き高速度カメラで観察することで、光路シフト量とその応答時間を測定した。電源31から電極対4、4に±3kV、120Hzの矩形波電圧を印加しながら、高速度カメラによる観察(時間分解能40500フレーム/秒)を行ったところ、シフト量は7μm、その移動に要する応答時間は1msecであり、実用上問題無いシフト量と高速応答性を示した。
【0110】
この動作を8時間連続で行っても液晶層の配向状態に変化は見られなかった。また、駆動のオン/オフを繰り返しても液晶層の配向状態に変化は見られなかった。したがって、光路偏向動作にも劣化などが無く、安定した光路偏向素子が得られた。
【0111】
(比較例1)
電極兼スペーサーのアルミシート厚みを65μmに減らして、液晶性ジアクリレート組成物による高分子安定化液晶セルにしなかった以外は、実施例1と同様にした。液晶材料として「CS1029」(チッソ製)を用いた場合、コノスコープ測定による光学軸の傾斜角度は25度であった。高速度カメラによる測定では、シフト量は9μm、その移動に要する応答時間は0.8msecであり、実用上問題無いシフト量と高速応答性を示した。
この動作を8時間連続で行ったところ、有効領域の液晶層中に僅かな白濁部が発生した。この状態で、駆動のオン/オフを繰り返したところ、白濁部が成長した。この状態では液晶素子の光透過率が減少し、光散乱が発生した。
この素子を80℃まで加熱して再冷却することで、初期の配向性の良い状態に戻すことができたが、安定した光路偏向素子は得られなかった。
【0112】
(実施例2)
強誘電性液晶組成物と、光重合時の操作と条件を、以下のように変えた以外は実施例1と同様にして液晶セルを作成した。液晶層の厚みは65μmに設定した。
市販の光重合開始剤を1重量部と、(3)式に示した化合物の液晶性ジアクリレート組成物0.5重量%と、強誘電性液晶「CS2005」(チッソ製)99.5重量%からなる強誘電性液晶組成物を調整した。
CS2005はスメクチックA相を示さず、スメクチックC相の配向性が悪いが、自発分極とチルト角が比較的大きい。
【0113】
空セルと強誘電性液晶組成物を約80℃に加熱した状態で、空セルに強誘電性液晶組成物を注入した。このセルの電極対に±2000V、200Hzの交流電圧を印加した状態で冷却したところ、キラルネマチック相からキラルスメクチックC相への転移温度近傍で配向乱れによる白濁が一時的に発生したが、徐々に配向性が回復した。その後、室温まで冷却しても比較的配向性の良いキラルスメクチックC相の垂直配向状態を維持した。その状態で60mJ/cmの紫外線を照射した。その後、接着剤で封止し、高分子安定化垂直配向強誘電性液晶セル、すなわち光路偏向素子1を得た。この光路偏向素子を図8に示す試験装置に組み込んだ。
【0114】
無電界の状態で、この光路偏向素子の有効領域内において液晶層のコノスコープ像を室温下で観察したところ、十字形と円環の画像が中心部に観察された。したがって、無電界下では光学軸が液晶層に垂直であることを確認できた。次に、電源から電極対に±3kV、1Hzの矩形波電圧を印加したところ、コノスコープ像の十字と円環の位置が上下方向に1Hzで往復シフトした。顕微鏡の対物レンズのNA値と、液晶の屈折率と、十字位置のシフト量から光学軸の傾斜角度を計算すると約25度であった。
【0115】
実施例1と同様、開口部が5μm角のマスクパターンを裏面から照明し、その透過光を図8に示した試験装置に組み込んだ本実施例の光路偏向素子を通して観察した。光路偏向素子を動作させることでマスクパターンの位置がシフトしたように観察される。このシフトの様子を顕微鏡付き高速度カメラで観察することで、光路シフト量とその応答時間を測定した。電源から電極対に±3kV、120Hzの矩形波電圧を印加しながら、高速度カメラによる観察(時間分解能40500フレーム/秒)を行ったところ、シフト量は7μm、その移動に要する応答時間は1msecであり、実用上問題無いシフト量と高速応答性を示した。
【0116】
(3)式に示す化合物のような、液晶性ジアクリレート化合物を重合した場合、3次元網目組織を形成するため液晶層の配向安定化の効果は非常に大きいと考えられるが、同時に液晶分子の切換え動作を制限する効果も大きいため、応答速度が遅くなることが懸念される。そこで、本実施例のように、自発分極とチルト角が大きく、高速応答性に優れるが、配向安定性が比較的悪い液晶材料と組合せることで、実用的な応答速度を確保しつつ、配向安定性も向上させることが出来た。
【0117】
この動作を8時間連続で行っても、液晶層の配向状態に変化は見られなかった。また、駆動のオン/オフを繰り返しても、液晶層の配向状態に変化は見られなかった。したがって、光路偏向動作にも劣化などが無く、安定した光路偏向素子が得られた。
【0118】
(比較例2)
液晶注入後に交流電界を印加しなかった以外は、実施例2と同様にした。実施例2の液晶は配向性が悪いために、冷却時に、キラルネマチック相からキラルスメクチックC相への転移温度近傍で配向乱れによる白濁が発生し始め、室温でもそのまま白濁が残ってしまった。この状態で光重合を行っても、配向が乱れたまま状態が固定化されてしまうため、重合による高分子組織の形成を行わなかった。
【0119】
(実施例3)
実施例1同様な空セルを作成した。液晶層の厚みは65μmに設定した。
次に市販の光重合開始剤を1重量部と(5)式に示した化合物の液晶性アクリレート組成物1重量%と、強誘電性液晶「CS1024」(チッソ製)99重量%からなる強誘電性液晶組成物を調整した。CS1024は単体でも配向性は比較的良く、応答速度も十分であるが、長時間動作時の安定性は更なる改善の余地が有る。
【0120】
空セルと強誘電性液晶組成物を約80℃に加熱した状態で、空セルに強誘電性液晶組成物を注入した。このセルを液晶がスメクチックA相を示す温度まで冷却し、スメクチックA相の垂直配向状態を維持したまま60mJ/cmの紫外線を照射した。その後、室温まで冷却して接着剤で封止し、高分子安定化垂直配向強誘電性液晶セルを得た。この光路偏向素子を図8に示す試験装置に組み込んだ。
【0121】
無電界の状態で、この光路偏向素子の有効領域内において液晶層のコノスコープ像を室温下で観察したところ、十字形と円環の画像が中心部に観察された。したがって、無電界下では光学軸が液晶層に垂直であることを確認できた。次に、電源から電極対に±3kV、1Hzの矩形波電圧を印加したところ、コノスコープ像の十字と円環の位置が上下方向に1Hzで往復シフトした。顕微鏡の対物レンズのNA値と、液晶の屈折率と、十字位置のシフト量から光学軸の傾斜角度を計算すると約25度であった。
【0122】
実施例1と同様、開口部が5μm角のマスクパターンを裏面から照明し、その透過光を図8に示す試験装置に組み込んだ光路偏向素子を通して観察した。光路偏向素子を動作させることでマスクパターンの位置がシフトしたように観察される。このシフトの様子を顕微鏡付き高速度カメラで観察することで、光路シフト量とその応答時間を測定した。電源から電極対に±3kV、120Hzの矩形波電圧を印加しながら、高速度カメラによる観察(時間分解能40500フレーム/秒)を行ったところ、シフト量は7μm、その移動に要する応答時間は1.5msecであり、実用上問題無いシフト量と高速応答性を示した。
【0123】
(5)式に示す化合物のような、メチレンスペーサーを有する液晶性アクリレート化合物を重合した場合、側鎖型の液晶ポリマーを形成するため、液晶層の配向安定化の効果は比較的小さいと考えられるが、液晶分子の切換え動作を制限する効果は小さいため、応答速度への影響は少ない。そこで、本実施例のように配向安定性が比較的良い液晶材料と組合せることで、実用的な応答速度を確保しつつ、長期的な配向安定性を維持することが出来る。
【0124】
この動作を8時間連続で行っても、液晶層の配向状態に変化は見られなかった。また、駆動のオン/オフを繰り返しても、液晶層の配向状態に変化は見られなかった。したがって、光路偏向動作にも劣化などが無く、安定した光路偏向素子が得られた。
【0125】
(比較例3)
液晶性アクリレート組成物による高分子安定化液晶セルにしなかった以外は、実施例3と同様にした。高速度カメラによる測定では、シフト量は9μm、その移動に要する応答時間は1.3msecであり、実用上問題無いシフト量と高速応答性を示した。
この動作を8時間連続で行ったところ、有効領域の液晶層中に僅かな白濁部が発生した。この状態で、駆動のオン/オフを繰り返したところ、白濁部が成長した。この状態では素子の光透過率が減少し、光散乱が発生した。
この素子を80℃まで加熱して再冷却することで、初期の配向性の良い状態に戻すことができたが、安定した光路偏向素子は得られなかった。
【0126】
(実施例4)
図9は第2の電極対を有する光路偏向素子を用いた光路偏向装置を示す図である。
同図において符号32は第2の電極を示す。
同図に示すように第2の電極対4”、4”を設けた以外は、実施例1と同様な空セル1’を作成した。実施例1と同様な強誘電液晶性組成物を注入し、実施例2と同様に交流電圧を印加した状態で冷却して、室温でも配向性の良いキラルスメクチックC相を形成した。次に図9に示す光路偏向装置を組み、第2の電極対4”、4”に第2の電源32から200V/mmの直流電界を印加した状態で同様に光重合を行った。その後、接着剤で封止し、高分子安定化垂直配向強誘電性液晶セルを得た。第2の電極対4”、4”による電界の方向は、光路偏向駆動用の電界と異なる方向であり、図2のようにキラルスメクチックC相の螺旋が解けて液晶分子が駆動時以外の方向に傾斜した状態で高分子安定化されていると考えられる。
【0127】
図10は光路偏向素子の透過光の検出装置を示す模式図である。
同図において、符号33、34は偏光板、35は光検出器をそれぞれ示す。
同図の光路偏向素子1は、図9に示した光路偏向装置に組み込まれた状態で用いられているものとする。ただし、実使用時は電極対4”、4”には電界をかけないので、第2の電源32は外しておく。
実施例4で作成した光偏向素子1を用いた図9に示す光路偏向装置を、図10に示すような装置に組み込んで過渡光散乱の時間の強度を測定した。以下の説明においては、図9に示した符号も援用する。
図10(a)は、光路偏向素子1に図9に示した電源31によって所定の電界がかけられ、液晶分子が均一に配列している状態を示す図である。図10(b)は電界の反転時に過渡的に液晶分子の配列が乱れたときの状態を示す図である。
【0128】
無偏光のレーザー光L0を偏光板33を通して図の上下方向の偏光L1として光偏向素子1に入射させる。入射光L1の偏光方向と光偏向素子1の偏向方向が一致するように配置し、光偏向素子1の後にクロスニコルの偏光板34を配置する。図10(a)に示すように、光路偏向素子1に所定の電界がかけられた状態では、光路偏向素子1内の液晶分子が均一に配向し、光路シフト現象は生じるが、偏光面の回転や乱れは生じないため、透過光L1’は後の偏光板34を透過しない。一方、図10(b)に示すように、光路偏向素子1にかけられる電界が反転するときの過渡的状態では、液晶分子の配向が乱れているため偏光面も乱れて、透過光L2は散乱光となり、後の偏光板34を漏れて出てくる紙面に垂直な偏光方向を有する光L3が生じる。この漏れて出てきた光L3の強度と時間を光検出器35で検出することで、過渡光散乱の強度や時間を測定することが出来る。
【0129】
図10に示す光路偏向素子1において、第1電源31から第1電極対4、4に±2000V、100Hzの矩形波電圧を印加し、測定を行ったところ、過渡的な光散乱による漏れ光L3の検出電圧は10mV、漏れ光の検出時間は1msecであった。この駆動条件での光路シフトの様子を実施例1と同様に、開口部が5μm角のマスクパターンを裏面から照明し、その透過光を図9に示した光路偏向素子を通して顕微鏡付き高速度カメラで観察した。
【0130】
図11は透過光のパターンの移動の様子を示す図である。
同図において、符号36はマスクパターンの透過光のパターンの位置を示す。開口部が移動する時に、透過光のパターンの位置36は図11に示すように僅かに円弧状の軌跡を描いて第1の位置36aから、中間点36bを経由して第2の位置36cへ移動した。また、移動中も開口ドットは比較的コントラスト良く観察された。したがって、液晶分子の反転時の回転方向が一方向に制御され、反転に伴う過渡光散乱が問題無いレベルであり、この程度の漏れ光強度と時間では実際の光路シフト現象では実用上問題無いと判断した。
【0131】
(比較例4)
実施例4に対して、第2の電極対に直流電界を印加しないで光重合を行った液晶素子を用いて、同様な過渡光散乱の測定を行った。漏れ光の検出電圧は20mV、漏れ光の検出時間は1.5msecであった。また、開口部の移動過程を高速度カメラで観察したところ、直線状の軌跡を描いた。また、移動中に開口ドットがボケて過渡的な光散乱が起きていることが観察された。液晶分子の反転時の回転方向を制御していないため、反転に伴う過渡光散乱が起きているが、漏れ光の発生時間は比較的短く、実用上許容範囲であると判断した。
【0132】
(実施例5)
図5に類似の4方向シフト装置を作成し、図7に類似の画像表示装置を構成した。以下に示す符号は両図に示した符号に準ずる。画像表示素子24として対角0.9インチXGA(1024×768ドット)のポリシリコンTFT液晶ライトバルブを用いた。画素ピッチは縦横ともに約18μmである。画素の開口率は約50%である。また、画像表示素子24の光源側にマイクロレンズアレイを設けて照明光の集光率を高める構成とした。本実施例では、光源21としてRGB三色のLED光源を用い、上記の一枚の液晶パネルの画像表示素子24に照射する光の色を高速に切換えてカラー表示を行う、いわゆるフィールドシーケンシャル方式を採用している。
【0133】
本実施例では、画像表示のフレーム周波数が60Hz、ピクセルシフトによる4倍の画素増倍のため、サブフィールド周波数は4倍の240Hzとする。一つのサブフレーム内をさらに3色分に分割するため、各色に対応した画像を720Hzで切換える。液晶パネルの画像表示素子24の各色の画像の表示タイミングに合わせて、対応した色のLED光源21をオン/オフすることで、観察者にはフルカラー画像が見える。
光路偏向素子1の基本構成は実施例1と同様である。また、外気の送風ファンを設け、光路偏向素子1の温度が外気温と同じ25℃となるように空冷した。
【0134】
光路偏向素子を2組用い、入射側を第1光路偏向素子10、出射側を第2光路偏向素子12とした。互いの透明電極ライン4の方向が直交し、画像表示素子24の画素の配列方向に一致するように配置した。本実施例では画像表示素子24の液晶ライトバルブからの出射光が既に直線偏光であり、その偏光方向が第一光路偏向素子10の光路偏向方向と一致するように配置されているが、光路偏向素子への入射光の偏光度を確実にするために、光路偏向素子10の入射面側に偏光方向規制手段として直線偏光板を設けた。
【0135】
さらに、第1、第2光路偏向素子の間に偏光面回転素子11’を設けた。偏光面回転素子11’は、2枚のガラス基板(3cm×4cm、厚さ3mm)上にポリイミド系の配向材料をスピンコートし、約0.1μmの配向膜を形成した。ガラス基板のアニール処理後、ラビング処理を行った。2枚のガラス基板の周辺部に8μm厚のスペーサを挟んでラビング処理面を対向させ、ラビング方向が直交するように両基板を張り合わせて空セルを作製した。このセルの中に、誘電率異方性が正のネマチック液晶にカイラル材を適量混合した材料を常圧下で注入し、液晶分子の配向が90度捻じれたTN液晶セルを作成した。
【0136】
このセルには電極を設けていないため、単なる偏光回転素子11’として機能する。また、両光路偏向素子10、12のアルミ電極間での放電を防止する。第1光路偏向素子10から出射した光の偏光面と偏光回転素子11’の入射面のラビング方向が一致するように、2つの光路偏向手段の間に挟んで配置した。偏光面回転素子11’により第1光路偏向素子10からの出射光の偏光面が90度回転し、第2光路偏向素子12の偏向方向に一致する。第1光路偏向素子10、偏光面回転素子11’、第2光路偏向素子12からなる光偏向装置29を画像表示素子24の直後に設置した。
【0137】
光路偏向素子10、12を送風ファンで約25℃に冷却し、光路偏向素子10、12を駆動する矩形波電圧の電圧を±3kV(平均電界は±300V/mm)、周波数を120Hzとし、2枚の光路偏向素子にかける矩形波の位相を図6で示したように90度ずらして、4方向に画素シフトするように駆動タイミングを設定した。この駆動電圧では光路シフト量は約9μmで、1/2画素分だけ画素がシフトして表示される。
【0138】
画像表示素子24に表示するサブフィールド画像を240Hzで書き換えることで、縦横2方向に見かけ上の画素数が各2倍に増倍したフレーム周波数60Hzの画像が表示できた。画像中央から端部まで画素シフト量は均一であり、高精細な画像が得られた。光路偏向素子10、12の切換え時間は約1msecであり、充分な光利用効率が得られた。また、フリッカーなどは観測されなかった。さらに8時間の連続運転後も高精細な画像を維持していた。
【0139】
(比較例5)
光路偏向素子1として液晶層厚10μmのツイストネマチック液晶セルによる旋光素子と、LiNbOの複屈折素子を編み合わせた素子を使用した以外は実施例5と同様にした。実施例5と同様に符号は図5、7を援用する。
2組の光路偏向素子10、12を用いて、両者の間に実施例5と同様な偏光面回転素子11’を設けた。光路偏向素子10、12を送風ファンで約25℃に冷却し、光偏向素子10、12を駆動する矩形波電圧の電圧を±10V、周波数を120Hzとし、2枚の光路偏向素子10、12にかける矩形波の位相を90度ずらして、4方向に画素シフトするように駆動タイミングを設定した。
【0140】
この駆動電圧では光路シフト量は約9μmで、1/2画素分だけ画素がシフトして表示されるが、この光路偏向素子10、12の応答速度は15msecであり、120Hzの高速駆動には応答できなかった。そこで、光路偏向素子10、12を60Hzで駆動し、画像表示素子24に表示するサブフィールド画像を120Hzで書き換えることで、縦横2方向に見かけ上の画素数が各2倍に増倍したフレーム周波数30Hzの画像が表示できた。しかし、フリッカーなどが観測された。また、光路シフト量の波長依存性が大きく、シフト位置外にゴースト画素が発生した。
【0141】
【発明の効果】
基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相の液晶層が、繊維状、あるいは網目状の組織を含有するため、配向状態が安定化し、繰り返しの使用においても配向が乱れることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を説明するための光路偏向素子の断面模式図である。
【図2】 光偏向動作時とは異なる方向の直流電界を印加しながら高分子重合させる様子を示す模式図である。
【図3】 高分子材料として液晶性ポリマーを用いた場合の液晶層の状態を示す模式図である。
【図4】 光路偏向素子への入射光の偏光方向を特定の方向に規制する手段を有する光路偏向装置の概要を示す図である。
【図5】 光路偏向素子の組み合わせによる4方向シフト装置の構成を説明するための概略図である
【図6】 4方向シフト装置の駆動の一例を示すタイミングチャートである。
【図7】 光路偏向素子を用いた画像表示装置の概要図である。
【図8】 光路偏向素子の動作を確認するための試験装置を示す図である。
【図9】 第2の電極対を有する光路偏向素子を用いた光路偏向装置を示す図である。
【図10】 光路偏向素子の透過光の検出装置を示す模式図である。
【図11】 透過光のパターンの移動の様子を示す図である。
【図12】 光路偏向素子の断面を模式的に示した図である。
【図13】 異なる電極構成の例を示す図である。
【図14】 図12に示した構成に関して電界方向と液晶分子の傾斜方向を模式的に示した図である。
【図15】 図14の状態から電界が反転したときの様子を示す模式図である。
【図16】 液晶分子の配向状態と光路偏向の原理を模式的に示した図である。
【図17】 図16において電界を反転させた状態を模式的に示した図である。
【図18】 スメクチックC相における配向欠陥の発生を説明するための図である。
【図19】 図14、15と同様に光路偏向素子内の液晶分子の傾斜状態を示した図である。
【符号の説明】
1、10、12 光路偏向素子
2 基板
3 垂直配向膜
4 電極
5 液晶層
7 スペーサ
8 直線偏光板
9 4方向シフト装置
11 2分の1波長板

Claims (16)

  1. 透明な一対の基板と、該基板間に充填されたホメオトロピック配向をなすキラルスメクチックC相を形成可能な液晶層と、該液晶層内の前記基板面と平行な方向に駆動電界を形成する電極対とを有し、該電極対にかける駆動電界の方向の切換えによって液晶分子の配向方向を切換えて前記液晶層の層法線に対する光学軸の傾斜方向を切換えて、前記基板面への入射光に対する、前記基板面からの出射光路を切換える光路偏向素子において、前記電極対に対する無電界時の前記光学軸が前記液晶層の層法線に対して駆動電界の方向に傾斜しており、前記液晶層が繊維状あるいは網目状の組織を含有することを特徴とする光路偏向素子。
  2. 請求項1に記載の光路偏向素子において、前記光学軸の傾斜は、前記液晶層の垂直配向膜をラビング処理することにより達成することを特徴とする光路偏向素子。
  3. 請求項1または2に記載の光路偏向素子において、前記組織は、モノマーまたはプレポリマーの少なくとも一方を光重合開始剤によって重合することにより形成されていることを特徴とする光路偏向素子。
  4. 請求項3に記載の光路偏向素子において、前記組織の重合は、ホメオトロピック配向をなすスメクチックA相を示す温度域で行うことを特徴とする光路偏向素子。
  5. 請求項3に記載の光路偏向素子において、前記組織の重合は、前記液晶層内の前記基板面と平行な方向に交流電界を印加した状態で、スメクチックA相の温度からキラルスメクチックC相の温度まで冷却し、前記交流電界が印加された状態で重合させたことを特徴とする光路偏向素子。
  6. 請求項2に記載の光路偏向素子において、前記光学軸を前記液晶層の層法線に対して駆動電界の方向に傾斜させるための第2の電極対が設けられ、前記組織の重合は、キラルスメクチックC相を示す温度域で、前記第2の電極対により発生する直流電界を印加した状態で行うことを特徴とする光路偏向素子。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光路偏向素子において、前記組織は、液晶性骨格を部分構造として有することを特徴する光路偏向素子。
  8. 請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、二つの液晶性ジ ( メタ ) アクリレートの各アクリロイルオキシ基と、メチレンスペーサーを挟んで重合されていることを特徴する光路偏向素子。
  9. 請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、一つの液晶性ジ ( メタ ) アクリレートのアクリロイルオキシ基と、メチレンスペーサーを挟んで重合されていることを特徴する光路偏向素子。
  10. 請求項7に記載の光路偏向素子において、前記液晶性骨格は、メチレンスペーサーが無い液晶性ジ ( メタ ) アクリレートのアクリロイルオキシ基と重合されていることを特徴する光路偏向素子。
  11. 請求項1または2に記載の光路偏向素子において、前記組織は、予め形成された繊維状、あるいは網目状の構造体であり、前記液晶層は該構造体の空間部に含浸されていることを特徴とする光路偏向素子。
  12. 請求項11に記載の光路偏向素子において、前記構造体はガラスファイバ、カーボンナノチューブ、多孔質延伸ポリマーの少なくとも1つを含むことを特徴とする光路偏向素子。
  13. 請求項12に記載の光路偏向素子において、前記構造体が繊維からなる場合は、繊維径が透過光の波長程度以下であることを特徴とする光路偏向素子。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1つに記載の光路偏向素子において、前記光路偏向素子への入射光の偏光方向を、液晶層内にかける電界の方向と直交する方向に設定する偏光方向規制手段を有することを特徴とする光路偏向素子。
  15. 請求項14に記載の光路偏向素子において、前記光路偏向素子の出射光の偏光面を所定の方向に回転させる偏光面回転手段と、偏光面回転後の出射光を入射光とする第2の光路偏向素子を有し、前記光路偏向手段と該第2の光路偏向手段の液晶層法線方向は略一致させ、両光路偏向手段の電界方向が所定の角度になるように配置されてなることを特徴とする光路偏向素子。
  16. 請求項1ないし15のいずれか1つに記載の光路偏向素子を有し、画像情報に従って光を制御可能な複数の画素が二次元的に配列した画像表示素子と、画像表示素子を照明する光源および照明装置と、画像表示素子に表示した画像パターンを観察するための光学装置と、画像フィールドを時間的に分割した複数のサブフィールドで形成する表示駆動手段と、サブフィールド毎の光路の偏向状態に応じて表示位置がずれている状態の画像パターンを表示することで、画像表示素子の見かけ上の画素数を増倍して表示することを特徴とする画像表示装置。
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