JP4031682B2 - 接合構造体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の構造部材に対して、補強リブ等の板状の部材やアンカーボルトを設けた接合構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鋼鉄製の構造脚柱構造体と基礎との接合部には、従来から図15や図16に示されるような接合構造体が用いられてきた。この従来の接合構造体は、構造部材10の端部にボルト接合用のベースプレート11を溶接するとともに、構造部材10とベースプレート11との間を補強リブ12で補強したものである。補強リブ12は構造部材10の主応力方向に延びる板状の部材であり、構造部材10の表面に対してT型に突設されている。
【0003】
しかしながら上記のような従来の接合構造体では、構造部材10に曲げモーメントが作用したとき、補強リブ12の止端部付近の構造部材10に大きい面外曲げ応力集中が生じ、構造性能が低下するという問題があった。更に補強リブ12を構造部材10に溶接した場合には、補強リブ12の上端部の回し溶接部が、溶接熱残留応力と溶接止端部の熱影響部材質劣化との重複により構造欠陥となりやすく、耐力や疲労性能が低下するという問題があった。このような問題は構造部材10に補強リブ12をT字溶接した多くの接合構造体に共通するものであり、日本鋼構造協会「鋼構造物の疲労設計指針・同解説」でも、ガセットをすみ肉あるいは開先溶接した継手が鋼部材の耐力や疲労性能を低下させるので、設計に配慮するように指摘されているとおりである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、補強リブ等の板状の部材の止端部の応力集中を大幅に緩和することができ、また板状の部材を溶接したので溶接熱残留応力を大幅に緩和することができ、その結果として耐力や疲労性能を従来よりも大幅に向上させることができる構造部材と板状の部材またはアンカーボルトとの接合構造体を提供するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、構造部材の表面に別の板状の部材を溶接して突出させた接合構造体であって、この板状の部材が構造部材の主応力方向に延びるT型に突出させた補強リブであり、この補強リブの前記主応力方向端部を前記構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に逆J字状に屈曲させたことを特徴とするものである。なお、前記補強リブの前記主応力方向端部を曲線状に緩和屈曲させることが好ましく、特に前記主応力の方向に対して直角になるまで屈曲させることが好ましい。
【0006】
上記の構造部材を接合用フランジまたはベースプレートを備えたものとし、板状の部材は構造部材と接合用フランジまたはベースプレートとの間に設けられたものとしてもよく、あるいは板状の部材を継手取り付け用のものとしてもよい。さらに板状の部材を二次部材取り付け用のものとしてもよい。また本発明は、構造部材の表面にその主応力方向にのびるアンカーボルトを溶接した接合構造体であって、このアンカーボルトの前記主応力方向端部を前記構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させた形態にも適用することができる。
【0007】
上記のように本発明では補強リブ等の板状の部材の端部(止端部)を好ましくは構造部材の主応力方向から逃げる方向に逆J字状に屈曲させたことにより、板状の部材の端部の剛性を低下させている。この結果、構造部材に荷重が作用した際に板状の部材端部付近の応力集中が大幅に緩和され、また板状の部材が溶接されているので、板状の部材端部付近の溶接熱残留応力を緩和することができる。その結果、接合構造体としての耐力や疲労性能を従来よりも大幅に向上させることができる。
以下に本発明の好ましい実施の形態を示す。以下の実施形態では板状の部材は補強リブであり、溶接により構造部材の表面に突設されている。
【0008】
【発明の実施の形態】
(構造部材とベースプレートとの接合構造体)
図1は本発明の第1の実施形態を示す斜視図であり、図2はその正面図、図3はその平面図である。この実施形態では構造部材1は鋼管よりなる脚柱構造体であり、5はこの構造部材1を基礎に固定するためのベースプレートである。これらの構造部材1とベースプレート5との間に、逆J字状に屈曲させた補強リブ3がT字溶接によりT型に突設されている。
【0009】
構造部材1の主応力方向は図1において上下方向である。図示のとおりこれらの補強リブ3は全体として構造部材1の主応力方向に延びている。また補強リブ3のベースプレート5から遠い側の上側の端部4は、構造部材1の表面に沿って主応力方向に対して直角になるまで曲線状に緩和屈曲させてある。補強リブ3は構造部材1に溶接されるとともに、ベースプレート5に対して廻し溶接されている。溶接を確実に行うために、補強リブ3の内側コーナー部にはスカーラップを設けておくことが好ましい。
【0010】
この構造の接合構造体では、補強リブ3の端部4を構造部材1の主応力方向から逃げる方向に逆J字状に屈曲させてあるため、補強リブ3の端部4を低剛性構造とすることができる。その結果、補強リブ3の端部4における応力集中が大幅に緩和されるとともに、溶接部の溶接熱残留応力も緩和され、接合構造体としての耐力や疲労性能が大幅に向上する。
【0011】
この効果を十分に発揮させるためには、補強リブ3の端部4の曲率半径rを板厚tの3倍以上としておくことが好ましい。曲率半径rがこれより小さいと補強リブ3を湾曲させる際に材質劣化が生じ易くなり、また剛性を低下させる効果も小さくなる。補強リブ3の幅を端部4に向かって狭くなるよう斜めに切り落とし、端部4の剛性を一段と低下させることもできる。
【0012】
いずれの実施形態でも構造部材1を構成する管は丸鋼管として図示したが、角管としても差し支えはなく、また構造部材1を型鋼製としてもよい。
【0013】
本発明の接合構造体をFEM解析したところ、端部を屈曲させない従来構造に比較して、補強リブ3の周辺の応力集中が大幅に緩和されることが確認された。
【0014】
図4に示す第2の実施形態は、補強リブ3の全体を構造部材1の主応力方向に対してわずかに傾斜させたものである。この場合にも端部4は大きく逆J字状に屈曲させておくものとする。
【0015】
図5に示す第3の実施形態では、図1に示されたような逆J字状の補強リブ3を背中合わせとし、ほぼT字状の補強リブ3としてある。
【0016】
なお、補強リブ3の端部4は各図面に示したように曲線状に緩和屈曲させることが好ましいのであるが、直線状に屈曲させることも可能である。この場合にも補強リブ3の端部4は構造部材1の主応力に対して低剛性となるので、前記と同様の効果を得ることができる。ただし屈曲部に新たな応力集中が発生するので、やはり曲線状に緩和屈曲する方が好ましい。
【0017】
(構造部材と継手取り付け用の補強リブとの接合構造体)
図6に示す第4の実施形態は、2本の構造部材1(鋼管)を接合する継手として、主応力方向の端部4を構造部材1の表面に沿って屈曲させた補強リブ3を用いたものである。このような接合構造を採用する場合、従来は図6の右側に示したように平板状の鋼管継手7を各鋼管の端部に溶接し、ボルトまたはリベットで連結していたのであるが、やはり鋼管継手7の端部に応力集中が発生する。しかし図6の左側に示すように端部4を屈曲させた補強リブ3を用いれば、応力集中を緩和することができるとともに、溶接熱残留応力をも緩和することができる。
【0018】
(構造部材と二次部材取り付け用の補強リブとの接合構造体)
図7に示す第5の実施形態は、構造部材1である鋼管の側面に二次部材8を取り付けるための補強リブ3を溶接によりT型に設けたものである。この補強リブ3も構造部材1の主応力方向に延びるものであり、その上下両端部が構造部材1の主応力方向から逃げる方向に逆J字状に屈曲されている。図8に示す従来の構造に比較して、端部の応力集中を緩和でき、また溶接熱残留応力をも緩和できることは他の実施形態と同様である。
【0019】
図9に示す第6の実施形態は、本発明を水平横構ガセット構造に適用したものである。この場合には構造部材1が水平に設置されたI型鋼であり、その主応力方向は水平である。両端部が主応力方向から逃げるように屈曲された補強リブ3が構造部材1の側面に水平にT字溶接されており、この補強リブ3に水平方向に延びる二次部材8が固定されている。図10は従来の水平横構ガセット構造を示すものであり、平板状の補強リブが用いられているため、端部における応力集中が大きいが、図9の構造とすれば端部の応力集中を緩和でき、また溶接熱残留応力を緩和することができる。
【0020】
図11に示す第7の実施形態は、本発明を対傾構ガセット構造に適用したものである。この場合にも構造部材1は水平に設置されたI型鋼であるが、その主応力方向は上下方向である。両端部が屈曲された補強リブ3が構造部材1の側面に上下方向にT字溶接されており、斜め上方向に延びる二次部材8が固定されている。図12に示す従来の対傾構ガセット構造に比較して、補強リブ3の端部における応力集中及び溶接熱残留応力が緩和される。
【0021】
(構造部材とアンカーボルトとの接合構造体)
以上に説明した接合構造体はいずれも構造部材1と補強リブ3との接合構造体であったが、図13に示す第8の実施形態は、構造部材1の端部にアンカーボルト9を溶接したものである。この場合にもアンカーボルト9は構造部材1の主応力方向に延びている。図14に示す従来のアンカー構造ではアンカーボルトの端部に応力集中が生じていたが、図13に示すようにアンカーボルト9の主応力方向の端部を構造部材1の表面に沿って主応力方向から逃げるように屈曲させれば、応力集中が緩和されるとともに、溶接熱残留応力が緩和される。
【0022】
上記した本発明の効果を確認するために、疲労強度試験を行ったところ、従来技術に対応する試験体は鉄道橋の設計示方書の設計寿命曲線のG等級程度であったのに対し、本発明に対応する試験体はA〜B等級に相当するものとなり、本発明の構造とすることにより疲労強度が大幅に向上したことが確認できた。
【0023】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、接合構造体における板状の部材の止端部の応力集中および溶接熱残留応力を緩和することができ、接合構造体の耐力や疲労性能を従来よりも大幅に向上させることができる。このため本発明は、照明用ポール等の鋼管柱脚部アンカー構造を始め、実施形態に示したような幅広い用途において、信頼性の向上に大きく寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第1の実施形態を示す正面図である。
【図3】第1の実施形態を示す平面図である。
【図4】第2の実施形態を示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態を示す斜視図である。
【図6】第4の実施形態を従来構造とともに示す斜視図である。
【図7】第5の実施形態を示す斜視図である。
【図8】第5の実施形態に対応する従来構造を示す斜視図である。
【図9】第6の実施形態を示す斜視図である。
【図10】第6の実施形態に対応する従来構造を示す斜視図である。
【図11】第7の実施形態を示す斜視図である。
【図12】第7の実施形態に対応する従来構造を示す斜視図である。
【図13】第8の実施形態を示す斜視図である。
【図14】第8の実施形態に対応する従来構造を示す斜視図である。
【図15】従来の接合構造体を示す斜視図である。
【図16】従来の他の接合構造体を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 構造部材
3 板状の部材である補強リブ
4 補強リブの端部
5 ベースプレート
6 ボルト
7 鋼管継手
8 二次部材
9 アンカーボルト
10 従来技術における構造部材
11 従来技術におけるボルト接合用のベースプレート
12 従来技術における補強リブ

Claims (6)

  1. 構造部材の表面に別の板状の部材を溶接して突出させた接合構造体であって、この板状の部材が構造部材の主応力方向に延びるT型に突出させた補強リブであり、この補強リブの前記主応力方向端部を前記構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に逆J字状に屈曲させたことを特徴とする接合構造体。
  2. 前記補強リブの前記主応力方向端部を主応力の方向に対して直角になるまで屈曲させたことを特徴とする請求項1に記載の接合構造体。
  3. 構造部材が接合用フランジまたはベースプレートを備えたものであり、前記補強リブが構造部材と接合用フランジまたはベースプレートとの間に設けられたものである請求項1〜2の何れかに記載の接合構造体。
  4. 前記補強リブが継手取り付け用のものである請求項1〜2の何れかに記載の接合構造体。
  5. 前記補強リブが二次部材取り付け用のものである請求項1〜2の何れか記載の接合構造体。
  6. 構造部材の表面にその主応力方向にのびるアンカーボルトを溶接した接合構造体であって、このアンカーボルトの前記主応力方向端部を前記構造部材の表面に沿って前記主応力方向から逃げる方向に屈曲させたことを特徴とする接合構造体。
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