JP4031672B2 - 成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート組成物からなる成形体に関し、より詳細には、機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、色相に優れ、臭気などの問題もない、食品容器の用途に好ましく用いられるポリカーボネート組成物からなる成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートは、耐熱性、機械的強度、寸法安定性、透明性等に優れた樹脂として、飲料水等の食品容器はじめ、多くの分野で用いられている。この芳香族ポリカーボネートの製造方法については、従来から種々の研究が行われ、その中で、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという。)とホスゲンとの界面重縮合法が工業化されている。また、炭酸ジエステル化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物を重縮合させてポリカーボネートを製造する、いわゆるエステル交換法は、上記界面重縮合法に比べて、工程が比較的単純であり、操作、コスト面で優位性が発揮できるだけでなく、毒性の強いホスゲンや、塩化メチレン等のハロゲン系溶剤を使用しないという点において、環境保全の面からも優れているといった利点があり、将来有望であると考えられる。ここで、エステル交換反応法では、通常、二段階以上の多段工程によりポリカーボネートが製造される。具体的には、反応温度140〜320℃、反応時間0.1〜5時間、圧力は常圧より段階を追って減圧度を上げ、副生する低分子量体をラインから連続的に除去しながら、重縮合反応を行う。最終的には267Pa以下の減圧下、250〜320℃の温度で重縮合反応を行い、粘度平均分子量10000〜100000、好ましくは12000〜40000に高分子量化する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エステル交換反応法によって高分子量化されたポリカーボネートは、溶融粘度が非常に高いので、減圧処理してもポリカーボネート中に残存しているビスフェノール、フェノール、ジ芳香族カーボネート等の低分子量体を完全に除去するのが困難である。この残存低分子量体に起因して、エステル交換法により得られたポリカーボネートは、溶融成形時に臭気を発し、成形品にも臭気が残り、食品容器等、臭気などが問題となる用途に供するには限界があった。
【0004】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、ポリカーボネート本来の機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、透明性、成形性に優れ、臭気が軽減された、特に、食品容器に適する成形体を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネートに含まれる残存モノマー及び副生成物等の低分子量体のうち、炭酸ジエステル化合物が不快な臭気成分として中心的な原因物質であることを見出した。さらにその量を200重量ppm以下に低減させるとともに、特定の染料及び顔料を特定量の範囲で含有させると、ポリカーボネート本来の機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、透明性、成形性を犠牲にすることなく、溶融成形中及び成形後に食品用容器等として使用中にも臭気が感じられない程、臭気を著しく軽減し得るとの知見を得、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、前記課題を解決するため、本発明の成形体は、ポリカーボネート(A)に対し、フタロシアニンブルー、コバルトブルー及びアントラキノン系染料から選ばれる1種以上の化合物(B)を0.1〜100重量ppm、及び炭酸ジエステル化合物を1〜200重量ppm含有する組成物を成形してなる成形体である。
【0007】
本発明の好ましい態様として、前記ポリカーボネート(A)が芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とをエステル交換することにより製造されたポリカーボネートである上記成形体;前記組成物において、芳香族ジヒドロキシ化合物が300重量ppm以下、及び芳香族モノヒドロキシ化合物が300重量ppm以下である上記成形体;前記ポリカーボネートの末端水酸基量が50重量ppm以上(より好ましくは50〜1500重量ppm)である上記成形体;が提供される。
【0008】
また、本発明の一態様として、食品用容器である上記成形体;乳製品用ボトル、清涼飲料水用ボトル又は水用ボトルである上記成形体;ブロー成形によって成形されてなる上記成形体;が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の成形体はポリカーボネート(A)と特定の染料又は顔料(B)とを含有する組成物からなる。この組成物中に含まれる炭酸ジエステル化合物は1〜200重量ppmであり、好ましくは10〜180重量ppm、最も好ましくは20〜150重量ppmである。炭酸ジエステル化合物は溶融成形時、又は成形体となった後に臭気の原因となり、特に、食品用容器などの用途では、この臭気が問題となる場合がある。本発明ではポリカーボネート組成物中の炭酸ジエステル化合物の含有量を前記範囲とするとともに、特定の染料又は顔料を用いることにより、ポリカーボネート本来の機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、透明性、成形性を維持しつつ、臭気を軽減している。なお、炭酸ジエステル化合物は、エステル交換反応によりポリカーボネートを製造する際に、モノマーとして使用されたものが、ポリカーボネート中に残存するために、組成物中に含まれることになる。
【0010】
エステル交換法により製造されたポリカーボネートには、残留モノマーとして芳香族ジヒドロキ化合物、及び副生物として芳香族モノヒドロキシ化合物も含まれ、該ポリカーボネートを用いることにより組成物中に各々のヒドロキシ化合物が含まれることになる。組成物中の炭酸ジエステル化合物及び芳香族モノヒドロキシ化合物の残存量が多くなると、耐熱老化性及び耐加水分解性等の物性に悪影響を与えるので、好ましくない。組成物中、芳香族ジヒドロキシ化合物は300重量ppm以下、及び芳香族モノヒドロキシ化合物は300重量ppm以下であることが好ましい。
【0011】
以下、本発明の成形体を構成している組成物中に含まれるポリカーボネート(以下、「(A)成分」という場合ある)及び特定の染料又は顔料(以下「(B)成分」という場合がある)について説明する。
【0012】
本発明に用いられるポリカーボネートは、エステル交換法により製造することができる。エステル交換法では、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステル化合物を原料モノマーとして用いることができる。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。
【0013】
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という場合及び「BPA」と略記する場合がある)が好ましい。
【0014】
ブロー成形に好適な高荷重下での流動性の改良された分岐化ポリカーボネートを得る目的で、分岐剤として1分子中に1個以上のカルボキシル基、カルボン酸エステル基又はハロカルボニル基、ならびに2個以上のヒドロキシル基を有する化合物を、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、0.01モル%以上用いることもできる。
【0015】
ポリカーボネートの他の原料である炭酸ジエステル化合物としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等に代表される置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と略記する場合がある)、置換ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0016】
また、上記の炭酸ジエステルのうち、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで代替して、芳香族ヒドロキシ化合物とエステル交換反応させることもできる。代表的なジカルボン酸及びジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。この様なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを併用した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0017】
炭酸ジエステルの使用量(上記ジカルボン酸又はジカルボン酸のエステルを併用する場合は、炭酸ジエステルの使用量に、ジカルボン酸又はジカルボン酸のエステルの使用量を含めることとする。以下同じ)と芳香族ヒドロキシ化合物の使用量は、得られるポリカーボネートの末端OH基含有量、及びエステル交換反応速度に影響する。炭酸ジエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常、過剰に用いられる。すなわち、芳香族ジヒドロキシ化合物に対してモル比が1.001〜1.3であるのが好ましく、1.01〜1.2であるのがより好ましい。モル比が1.001未満であると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、熱安定性及び耐加水分解性が悪化する。一方、モル比が1.3を超えると、ポリカーボネートの末端OH基は減少するが、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望の分子量のポリカーボネートを製造することが困難になる傾向がある。本発明に用いるポリカーボネートは、末端OH基含有量が50〜1500ppmであるのが好ましい。
【0018】
次に、エステル交換法によるポリカーボネートの製造例について説明する。
まず、原料混合槽へ原料である炭酸ジエステル、芳香族ヒドロキシ化合物及び所望により添加される種々の添加剤を供給する。液体状態で供給する方が計量精度を高く維持し易いので、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルのうち一方又は両方を溶融させて、液体状態で供給することが好ましい。液体状態で原料を供給する場合には、計量装置としては、オーバル流量計、マイクロモーション式流量計等を用いることができる。
一方、固体状態で原料を供給する場合には、スクリュー式フィーダーのような容量を計量するものよりも、重量を計量するものを用いるのが好ましく、べルト式、ロスインウェイト式等の重量フィーダーを用いることができるが、ロスインウェイト方式が特に好ましい。
【0019】
エステル交換反応法によりポリカーボネートを製造する際には、通常、触媒が使用される。本発明のポリカーボネートを製造する際に用いる触媒の種類については特に制限はないが、一般的にはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物又はアミン系化合物等の塩基性化合物を使用することができる。中でもアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が特に好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの水酸化物、炭酸塩ならびに炭酸水素化合物等の無機アルカリ金属化合物、同アルカリ金属のアルコラート、フェノラート及び有機カルボン酸塩等の有機アルカリ金属化合物等がある。これらのアルカリ金属化合物の中でも、セシウム化合物が好ましく、より具体的には、炭酸セシウム、炭酸水素セシウム及び水酸化セシウムが好ましい。
【0021】
また、アルカリ土類金属化合物としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムの水酸化物、並びに炭酸塩等の無機アルカリ土類金属化合物、同アルカリ土類金属のアルコラート、フェノラート及び有機カルボン酸塩等の有機アルカリ土類金属化合物等がある。
これらの触媒の中でも、前述の関係式を満たすシグナルを含む1H−NMRを示すポリカーボネートを高い生産性で製造するには、アルカリ金属化合物を用いるのが好ましい。
【0022】
上記エステル交換触媒は、溶媒に溶解した触媒溶液の形態で用いることができれる。前記溶媒としては、例えば、水、アセトン、アルコール、トルエン、フェノールの他、原料芳香族ジヒドロキシ化合物や炭酸ジエステル等を溶解する溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中では水が好ましく、特にアルカリ金属化合物を触媒とする場合には、水溶液とするのが好ましい。触媒の使用量は、アルカリ金属触媒の場合には、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対してアルカリ金属が4×10-7〜1×10-5モルであるのが好ましく、1×10-6〜6×10-6モルであるのがより好ましい。触媒の使用量が上記量未満であると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得難くなり、重合時の滞留時間を長くしたり、温度を上げる必要が生じる。一方、触媒量が多すぎると耐加水分解性が悪化し、機械的強度や透明性の低下につながり、好ましくない。
【0023】
本発明に用いられるポリカーボネートは、例えば以下の方法で製造することができる。
原料混合槽等で両原料を、均一に撹拌した後、触媒を添加して重合する。例えば、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステルの両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。その際、少なくとも以下の(1)及び(2)の双方を満足する条件で重合を行うと、上記特定の物性のポリマーを安定して製造することができるので好ましい。
(1) 全製造時間を一以上に分画した単位製造時間ごとに、重合槽に供給される芳香族ジヒドロキシ化合物又は炭酸ジエステル 1モルに対する触媒量を一定に保つための目標触媒供給量である「設定触媒量」を、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して、0.05〜5μモルの範囲内から選択する。なお、「全製造時間」とは、重合槽においてポリマーを安定的に生産する原料供給時間に対応し、立ち上げ時や、グレード切り替え時、製造終了時等の非安定時のポリマー製造時間は含まない。
(2) 各単位製造時間の少なくとも95%の時間は、供給される実際のエステル交換触媒量(以下、単に「実際の触媒量」という)が、芳香族ジヒドロキシ化合物 1モルに対して、各設定触媒量±0.1μモル以内の値に維持されるようにする。
【0024】
上記(1)において、設定触媒量は、全製造時間を通して必ずしも一定値である必要はなく、全製造時間を一つ以上に分画して、その単位製造時間ごとに設定することが可能である。
この方法について詳しく説明すると、全製造時間が単一分画の単位製造時間である場合は、その少なくとも95%の時間は、芳香族ジヒドロキシ化合物 1モルに対して、設定触媒量±0.1μモル以内の値に実際の触媒量を維持する様に制御するのが好ましい。また、全製造時間が複数の単位製造時間に分画され、設定触媒量が変更される場合には、各単位製造時間の少なくとも95%の時間は、各設定触媒量±0.1μモル以内の値に実際の触媒量を維持する様に制御するのが好ましい。設定触媒量±0.08μモル以内に維持することがより好ましく、設定触媒量±0.06μモル以内に維持することがさらに好ましい。実際の触媒量を、設定触媒量±0.1μモルと極めて小さな変動範囲以内に維持して、供給を続けることにより、煩雑な重合操作を必要とせずに、狭い分子量分布、色調、流動性、耐熱性、機械物性等、諸物性に優れたポリマーを安定的に生産することができる。前記の実際の触媒量を、設定触媒量±0.1μモル以内の値に維持させるためには、重合槽に供給する触媒流量を、オーバル流量計、マイクロモーション式流量計等を用いて、計量、供給することが好ましい。
【0025】
実際の触媒量が設定触媒量±0.1μモル以内の値に制御される時間は、全製造時間又は各単位製造時間の100%に近いほどより好ましい。95%未満であると、所望の分子量及び末端OH基含有量のポリマーが得られなくなる場合があり、特に、実際の触媒量が設定触媒量より多くなる時間の割合が高くなると、得られるポリマーの色相が悪化したり、またポリマーの分岐化が進む等して流動性が低下し、成型が困難になる傾向がある。
【0026】
触媒供給を自動制御するには、例えば、まずコンピュータに、継続的に実際の触媒流量の測定値を入力し、前述した設定触媒量と芳香族ジヒドロキシ化合物又は炭酸ジエステルの原料調製槽への供給量より算出された設定触媒流量とを比較させる。その際、実際の触媒流量の測定値が、該設定触媒流量と異なる場合、この結果を触媒計量・供給装置に伝え、バルブの開度等を調節して、実際の触媒流量と設定触媒流量が一致するように制御する。
【0027】
ここで、触媒供給の自動制御は、実際の触媒流量の測定間隔の適正化に充分配慮すれば、継続的な間歇測定に基づく制御でも、連続的な測定と同様に制御を行うことは可能であるが、安定した品質の製品を得るには、連続的な自動測定であることが好ましい。即ち、連続的に触媒流量を自動測定できれば、重合槽への触媒供給量を迅速且つ連続的に制御することが可能となり、その結果、一定の設定触媒流量に維持され、ポリカーボネートの粘度平均分子量や末端OH基含有量等のふれが小さく、かつ分子量分布が狭くなり、さらに色調、流動性、耐熱性、機械物性等、諸物性の均一な製品が得られるので好ましい。
【0028】
ある設定触媒量の単位製造時間中に、実際の触媒量が、設定触媒量±0.1μモル以内の値に、どれ程の時間存在したかは、上記測定手段による測定結果から容易に判定することができる。連続的測定の場合、実際の原料モル比と測定時間の関係を示す曲線より、予め設定した設定触媒量±0.1μモル以内にある累積時間と、±0.1μモルよりはずれた累積時間とを求めることにより、該設定触媒量での単位製造時間の少なくとも95%の時間は、±0.1μモル以内の値に維持されていたかどうかが判定される。連続的測定ではない場合でも、継続的な測定であれば、これを統計処理する方法等により判定することができる。
【0029】
ポリカーボネートの重合反応(エステル交換反応)は、一般的には2以上の重合槽での反応、すなわち2段階以上、通常3〜7段の多段工程で連続的に実施されることが好ましい。具体的な好ましい反応条件は、温度 150〜320℃、圧力 常圧〜2.0Pa、及び平均滞留時間 5〜150分である。反応の進行とともに副生するフェノールの排出をより効果的なものとするために、上記条件の範囲内において、段階的により高温、より高真空な反応条件となる様に、各重合槽の反応条件を設定するのが好ましい。なお、得られるポリカーボネートの着色等の品質低下を防止するためには、できるだけ低温で且つできるだけ短い滞留時間の条件が好ましい。
なお、多段工程で重合槽を複数用いる場合の実際の触媒量の自動制御は、触媒の供給量を連続的に自動制御することが好ましく、その場合は、第1重合槽の滞留時間の1/3以内に測定及び制御が完了していることが必要である。
【0030】
上記エステル交換反応において使用する装置は、竪型、管型又は塔型、横型のいずれの形式であってもよい。通常、タービン翼、パドル翼、アンカー翼、フルゾーン翼(神鋼パンテック(株)製)、サンメラー翼(三菱重工業(株)製)、マックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)、ヘリカルリボン翼、ねじり格子翼((株)日立製作所製)等を具備した1以上の竪型重合槽に引き続き、円盤型、かご型等の横型一軸タイプの重合槽やHVR、SCR、N−SCR(三菱重工業(株)製)、バイボラック(住友重機械工業(株)製)、メガネ翼、格子翼((株)日立製作所製)、又はメガネ翼とポリマーの送り機能を持たせた、例えばねじりやひねり等の入った翼及び/又は傾斜がついている翼等を組み合わせたもの等を具備した、横型二軸タイプの重合槽を用いることができる。
【0031】
上記方法で製造したポリカーボネート中には、通常、原料モノマー(芳香族ジヒドロキシ化合物、炭酸ジエステル化合物)、エステル交換反応で副生した芳香族モノヒドロキシ化合物が残存しているとともに、触媒、ポリカーボネートオリゴマー等の低分子量化合物も残存している。従って、炭酸ジエステル、及び所望により他の低分子化合物を除去した後、本発明の成形体の製造に用いるのが好ましい。
エステル交換法ポリカーボネートから炭酸ジエステル化合物を除去する方法については、特に制限はなく、例えば、ベント式の押出機により連続的に脱揮して除去してもよい。その際、樹脂中に残留している塩基性エステル交換触媒を、あらかじめ酸性化合物又はその前駆体を添加し、失活させておくことにより、脱揮中の副反応を抑え、効率よく原料モノマーである芳香族ジヒドロ化合物と炭酸ジエステル化合物及び芳香族モノヒドロキシ化合物を除去することができる。
【0032】
添加する酸性化合物又はその前駆体には特に制限はなく、重縮合反応に使用する塩基性エステル交換触媒を中和する効果のあるものであれば、いずれも使用できる。具体的には、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アゼライン酸、アデノシンリン酸、安息香酸、ギ酸、吉草酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、シュウ酸、p−トルエンスルフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、ピクリン酸、ピコリン酸、フタル酸、テレフタル酸、プロピオン酸、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、マレイン酸等のブレンステッド酸及びそのエステル類が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの酸性化合物又はその前駆体のうち、スルホン酸化合物又はそのエステル化合物、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸ブチル等が特に好ましい。
【0033】
これらの酸性化合物又はその前駆体の添加量は、重縮合反応に使用した塩基性エステル交換触媒の中和量に対して0.1〜50倍モルが好ましく、0.5〜30倍モルがより好ましい。酸性化合物又はその前駆体を添加する時期としては、重縮合反応後であれば、いつでもよく、添加方法にも特別な制限はなく、酸性化合物又はその前駆体の性状や所望の条件に応じて、直接添加する方法、適当な溶媒に溶解して添加する方法、ペレットやフレーク状のマスターバッチを使用する方法等のいずれの方法でもよい。
【0034】
炭酸ジエステル化合物等、低分子量体の脱揮に用いられる押出機は、単軸でも二軸でもよい。また、二軸押出機としては、噛み合い型二軸押出機で、回転方向は同方向回転でも異方向回転でもよい。脱揮の目的には、酸性化合物添加部の後にベント部を有するものが好ましい。ベント数に制限はないが、通常は2段〜10段の多段ベントが用いられる。また、該押出機では、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等の添加剤を添加し、樹脂と混練することもできる。
【0035】
本発明に用いるポリカーボネートの末端水酸基量は、50重量ppm以上が好ましく、50〜1500重量ppmがより好ましい。末端水酸基量が50重量ppm未満であると、重合直後のポリカーボネート中の炭酸ジエステル化合物量が多く、脱揮により炭酸ジエステル化合物量を200重量ppm以下まで下げるのが困難であるばかりか、脱揮による着色、ゲル化等の好ましくない影響がある。
【0036】
また、エステル交換法ポリカーボネート中には、Polymer,42(2001),7653に記載されるように、重合中にコルベシュミット反応やフリース転移反応により生成した各種分岐構造が含まれていることが知られている。本発明で使用するポリカーボネートはこれらの各種分岐構造をそれぞれ含有していてもよく、その含有量は、ポリカーボネート繰り返し単位のモル基準で1モル%以下であるのが好ましい。
【0037】
本発明では、ポリカーボネートに対して、フタロシアニンブルー、コバルトブルー及びアンスラキノン系染料から選ばれる1種以上の化合物を配合する。これらの(B)成分を配合することにより、組成物中に上記範囲の含有量で含まれる炭酸ジエステル化合物の臭気を、著しく軽減することができる。
【0038】
前記フタロシアニンブルーとして、Pigment Blue15:3(C.I.Generic Name)が好ましい。前記アントラキノン系染料としては、ブルー又はバイオレット染料が好ましく、特に、Solvent Blue90、Solvent Blue 97、Solvent Violet 36、Solvent Violet 13(それぞれC.I.Generic Name)が好ましい。これらのうちでPigment Blue15:3(C.I.Generic Name)が最も好ましい。
【0039】
(B)成分の配合量は、(A)成分に対して0.1〜100重量ppmであり、0.5〜40重量ppmが好ましく、3〜30重量ppmがより好ましい。化合物(B)の配合量が100重量ppmを越えても臭気の低減効果は小さい。エステル交換法ポリカーボネートへの化合物(B)の配合方法及び時期は、添加剤の配合方法及び時期に準ずる。
【0040】
本発明の成形体を構成している組成物中には、(A)成分及び(B)成分以外に、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤などから選ばれた少なくとも1種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、特に制限は無く、通常ポリカーボネートに使用されているものが使用できる。
【0041】
安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、リン化合物、イオウ化合物、エポキシ化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらの中で、ヒンダードフェノール化合物及びリン化合物から選ばれた少なくとも1種の酸化防止剤が好ましく用いられる。
【0042】
ヒンダードフェノール化合物の具体的例には、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)等が挙げられる。これらの中で、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが好ましい。
【0043】
リン化合物は、3価のリン化合物で有ることが好ましく、特に亜リン酸エステル中の少なくとも1つのエステルがフェノール及び/又は炭素数1〜25のアルキル基を少なくとも1つ有するフェノールでエステル化された亜リン酸エステル、又はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイトから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。亜リン酸エステルの具体例としては、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、トリスノニルフェニルホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フッ化ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、モノノニルフェノール及びジノニルフェノールからなる亜リン酸エステル等を挙げることができる。
【0044】
本発明においては、リン化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0045】
安定剤の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対して1重量部以下が好ましく、0.4重量部以下がより好ましい。1重量部を超えると耐加水分解性が悪化する等の問題がある。また、安定剤を併用して使用する場合の配合比率は任意に決定することができ、また、いずれを使用するか又は併用するかは、ポリカーボネートの用途等によって適宜決定される。例えば、リン化合物は、一般にポリカーボネートを成形する際の高温下における滞留安定性、及び成形品の使用時の耐熱安定性に効果が高く、フェノール化合物は、一般に耐熱老化性等のポリカーボネートを成形品とした後の使用時の耐熱安定性に効果が高い。また、リン化合物とフェノール化合物を併用することによって、着色性の改良効果が高まる。
【0046】
紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の無機紫外線吸収剤の他、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。本発明では、これらのうち有機紫外線吸収剤が好ましく、特にベンゾトリアゾール化合物、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン]、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−プロパンジオイックアシッド−ジメチルエステルから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0047】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、2−ビス(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、[メチル−3−〔3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール]縮合物等を挙げることができる。
これらの中で、特に好ましいものは、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノールである。
【0048】
紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対して5重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。5重量部を超えると射出成形時の金型汚染等の問題がある。該紫外線吸収剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0049】
離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルから選ばれた少なくとも1種の化合物である。これらの中で、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステルから選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0050】
脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0051】
脂肪族カルボン酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸成分としては、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、脂肪族カルボン酸エステルを構成するアルコール成分としては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸オクチルドデシル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートを挙げることができる。
【0052】
該離型剤の配合量は、ポリカーボネート100重量部に対して5重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。5重量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染等の問題がある。該離型剤は1種でも使用可能であるが、複数併用して使用することもできる。
【0053】
前記(B)成分、及び所望により添加される安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤の添加時期及び添加方法については特に制限はない。例えば、添加時期としては、▲1▼重合反応の途中、▲2▼重合反応終了時又は▲3▼重合に使用した触媒を触媒失活剤で失活後、ペレット化する前、さらにはポリカーボネート等の混練途中等のポリカーボネートが溶融した状態で添加することができるが、ペレット又は粉末等の固体状態のポリカーボネートとブレンド後、押出機等で混練することもできる。しかし、▲1▼重合反応の途中、▲2▼重合反応終了時又は▲3▼重合に使用した触媒を触媒失活剤で失活後、ペレット化する前のいずれかに添加することが、これら添加剤の分解を抑制し、着色抑制の観点から好ましい。
【0054】
添加方法としては、(B)成分、及び所望により添加される安定剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を直接ポリカーボネートに混合又は混練することもできる。また、適当な溶媒で溶解し、又は少量のポリカーボネート若しくは他の樹脂等で調製した高濃度のマスターバッチとして添加することもできる。また、これらの化合物を併用して使用する場合は、これらを別々にポリカーボネートに添加しても、同時に添加してもよい。
【0055】
本発明は、上記のポリカーボネートに、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、難燃剤、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤等の添加剤を添加した、所望の物性を有するポリカーボネート樹脂組成物をも対象とする。
【0056】
本発明の成形体は、前記組成物を種々の成形方法で成形してなる。本発明の成形体の一実施形態は、前記組成物を成形してなる食品用容器である。食品用容器には、乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル又は水ボトル等の種々の態様があり、本発明にはいずれの態様も含まれる。
ボトル形状の中空状の食品用容器は、通常、公知のブロー成形方法により成形することができる。本実施の形態の食品用容器は、例えば、シリンダー設定温度240〜270℃の単軸又は二軸押出機に、前記ポリカーボネート組成物のペレットを供給し、スクリュー剪断下で溶融・混練し、ノズルを通してチューブ状の溶融パリソンを押出し、その後、温度70〜110℃に設定した所定の形状を有する金型内に挟み込み、空気又は不活性ガスをブローすることにより成形することができる。さらに乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル、又は水ボトルの形態の食品用容器は、特開平6−122145号公報等に開示されている二軸延伸ブロー成形により製造することもでき、ポリエチレンテレフタレート又はポリアミドとの多層ブロー成形により、ポリカーボネートのガスバリヤー性を改良した容器を製造することもできる。
【0057】
本実施の形態の食品容器の大きさは特に制限はないが、肉厚は、食品容器の強度及び形状保持の観点から、0.1〜7mmが好ましく、更に好ましくは0.2〜5mmであり、最も好ましくは0.3〜3mmである。本実施の形態の食品容器は、多種多様の用途に使用できるが、好ましくは乳製品用、清涼飲料水用、又は水用の容器として好ましく、特にボトル形状の容器、即ち、乳製品用ボトル、清涼飲料水用ボトル、又は水用ボトルとして好ましい。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、分析及び物性評価は下記の測定方法により行った。
【0059】
(1)粘度平均分子量(Mv) ウベローデ粘度計を用いて、塩化メチレン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式よりポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)を求めた。
[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83
【0060】
(2)炭酸ジエステル化合物の定量
カラムにWaters社製μ−Bondersphereを使用し、溶媒としてアセトニトリル/酢酸水を使用し、UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフにて測定した。
【0061】
(3)末端水酸基の定量
四塩化チタン/酢酸法(Makromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)により比色定量を行った。測定値は、ポリカーボネート重量に対する末端OH基の重量をppm単位で表示した。
【0062】
(4)耐加水分解性(ヘイズ)
120℃5時間乾燥したポリカーボネートのペレット(試料)から、シリンダー設定温度280℃の射出成形機M150AII−SJ((株)名機製作所製)により3mm厚の試験片を成形し、120℃の水蒸気中で50時間保持した。濁度計NDH 2000(日本電色工業(株)製)を用い、この試験片の処理前及び処理後のヘイズを測定した。
【0063】
(5)臭気
日本製鋼所(株)製B−30でバレル温度270〜260℃、金型温度70℃で5ガロンボトルのブロー成形を行った直後の成形品の口に鼻を近づけて臭気を嗅ぎ、臭気の感じられない試験片を○、臭気の僅かに感じられる試験片を△、臭気の感じられる試験片を×と判定した。
【0064】
[実施例1〜4]
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを原料として溶融エステル交換法により得られたポリカーボネート(粘度平均分子量 28000、末端水酸基量800ppm、炭酸ジエステル量 40ppm)にフタロシアニンブルー20重量ppmを添加し、混合後、40mm単軸押し出し機290℃で混練、ペレット化した。得られたペレットを120℃、5時間乾燥後、名機製作所製M150AII−SJ射出成形機を用いてシリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル60秒の条件で3mm厚の成形品を成形し、耐加水分解性試験に使用した。また、同様に乾燥したペレットを日本製鋼所(株)製B−30でバレル温度270〜260℃、金型温度70℃で5ガロンボトルのブロー成形を行い、臭気測定結果を行った。結果を表1に示した。
【0065】
[実施例2〜5]
表1に示したエステル交換法ポリカーボネートの組成物を表1の組成で実施例1と同様に混練及び成形し、測定に使用した。結果を表1に示した。
【0066】
[比較例1〜4]
表2に示したエステル交換法ポリカーボネートの組成物を表2の組成で実施例1と同様に混練及び成形し、測定に使用した。結果を表2に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
フタロシアニンブルー:CROMOPHTAL Blue 4GNP(チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)
コバルトブルー:Light Blue 2R(BAYER製)
アンスラキノン系染料:MACROLEX VIOLET 3R(BAYER製)
群青:No3000(第一化成工業(株)製)のシラン化合物処理品
【0070】
【発明の効果】
本発明の成形体は、ポリカーボネート本来の機械的強度、耐熱性、耐加水分解性、透明性、成形性に優れ、非常に臭気が低いので乳製品ボトル、清涼飲料水ボトル、水ボトルなどの食品用容器に好適に使用できる。
Claims (3)
- ポリカーボネート(A)に対し、フタロシアニンブルー、コバルトブルー及びアントラキノン系染料から選ばれる1種以上の化合物(B)を0.1〜100重量ppm、及び炭酸ジエステル化合物を1〜200重量ppm含有する組成物を成形してなる成形体であって、前記ポリカーボネート(A)が、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物とをエステル交換することにより製造されたポリカーボネートであり、及び食品用容器であることを特徴とする成形体。
- 乳製品用ボトル、清涼飲料水用ボトル又は水用ボトルである請求項1に記載の成形体。
- ブロー成形によって製造された請求項1又は2に記載の成形体。
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