JP4031466B2 - 固体電解質の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な固体電解質、それを含む電気化学素子及び固体電解質の形成方法に関するものである。
電解質を含む電気化学素子においては、その電解質の固体化(固形化)が強く望まれている。従来より、電気化学素子としての電池は電解液を使用しているため、電解液の漏れ、溶媒の揮発による電池内の乾燥があるばかりでなく、電池容器(電槽)内では、電解液のかたよりにより隔膜が部分的に乾燥状態になり、このことが内部インピーダンスの上昇あるいは内部短絡の原因になる。またエレクトロクロミックデバイスの表示用固体電解質においても、動作速度を十分に満足するものは得られていない。これらの欠点を解決するための方法として高分子固体電解質を用いることが提案されている。その具体的例として、オキシエチレン鎖や、オキシプロピレン鎖を含有するマトリックスポリマーと無機塩との固溶体が挙げられるが、このものは完全固体であり、加工性に優れるものの、そのイオン伝導度は室温で1/10S/cmと通常の非水電解液に比べて3桁ほど低い。この低い伝導度を改良する方法として、ミクロンオーダーの薄膜の高分子固体電解質膜を用いることも提案されているが、このようなミクロンオーダーの薄膜の厚さを電池内部の電界が均一になるようにコントロールすることは難しく、得られる電池の信頼性も低い。高分子固体電解質のイオン伝導度を向上させるために、高分子に有機電解液を溶解させて半固形状のものにする方法(例えば、特許文献1参照)や、電解質を加えた液状モノマーを重合反応させて電解質を含む架橋重合体とする方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかし、前者の方法で得られる固体電解質はその固体強度が十分でないという問題を含み、また、後者の方法で得られる固体電解質は、十分な固体強度を有するものの、イオン伝導度の点で未だ不満足であるという問題を含む。
本発明は、従来の高分子を基材とする固体電解質に見られる前記問題点を解決し、イオン伝導度及び均一性にすぐれるとともに、電気化学素子用固体電解質としての使用に十分な固体強度を有する高分子を基材とする固体電解質及びこれを含む電気化学素子を提供するとともに、そのような特異な性状を有する固体電解質の形成方法を提供することをその課題とする。
特開昭54−104541号公報 特開昭63−94501号公報
本発明の目的は、イオン伝導度及び均一性にすぐれるとともに、電気化学素子用固体電解質としての使用に十分な固体強度を有する高分子を基材とする固体電解質を形成する、固体電解質の形成方法を提供することである。
本発明の一つの態様は、下記一般式(I)で表される化合物及び多官能不飽和カルボン酸エステルの混合物若しくは該混合物を主成分とする不飽和カルボン酸エステル又は下記一般式(II)で表わされる化合物若しくはこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステル100重量部を、重合開始剤の存在下に、200重量部以上の電解質塩濃度が1.0モル/l以上である非水電解液中に溶解させて重合反応を行い、粘弾性を有する重合物を生成させることを特徴とする固体電解質の形成方法である。
一般式(I):
CH =CHCOO(CH CHO) (I)


(式中、R は、水素原子又はメチル基、R は、炭化水素基、nは1以上の整数を表わす。)
一般式(II):

(II)
CH =CCOOR
(式中、R は、水素原子又はメチル基、R は、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基を表わす。)
本発明の一つの態様によれば、イオン伝導度及び均一性にすぐれるとともに、電気化学素子用固体電解質としての使用に十分な固体強度を有する高分子を基材とする固体電解質を形成する、固体電解質の形成方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、下記の発明が提供される。
(1)非水電解液中で重合性単量体を重合させて得られる高分子量重合体中に非水電解液を含有する弾性率が10〜10dyne/cm、伸びが20%以上の粘弾性体であって、該非水電解液の含有率が高分子量重合体に対して200重量%以上であることを特徴とする固体電解質。
(2)高分子量重合体が、不飽和カルボン酸エステルの重合体、ポリエン/ポリチオール混合物の重合体又はポリウレタンである前記(1)の固体電解質。
(3)該重合性単量体が下記一般式(I)で示される分子量500未満のアクリレート又はこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステルからなり、該電解質塩が該非水電解液中に電解質塩が1.0モル/l以上の割合で存在することを特徴とする前記(1)又は(2)の固体電解質。
CH=CHCOO(CHCHO)
| (I)

(式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、炭化水素基又は複素環を含む基、nは、1以上の整数を表す。)
(4)該重合性単量体が下記一般式(II)で示される化合物又はこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステルからなり、該非水電解液中に電解質塩が1.0モル/1以上の割合で存在することを特徴とする前記(1)又は(2)の固体電解質。

| (II)
CH=CCOOR
(式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、複素環を含む基を表わす)
(5)該不飽和カルボン酸エステルが(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能不飽和カルボン酸エステルを含むことを特徴とする前記(2)、(3)又は(4)の固体電解質。
(6)固体電解質を含む電気化学素子であって、該固体電解質が前記(1)〜(5)のいずれかの固体電解質である電気化学素子。
(7)電気化学素子の構成要素の少なくとも一部と固体電解質とが複合化されている前記(6)の電気化学素子。
(8)前記(1)〜(5)のいずれかの固体電解質を含む電池。
(9)電極、隔膜及び固体電解質を有する電池において、該固体電解質は前記(1)〜(5)のいずれかの固体電解質であって、該電極、隔膜及び固体電解質が一体化されていることを特徴とする電池。
(10)前記一般式(I)又は(II)で表わされる化合物又はこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステル100重量部を、重合開始剤の存在下に、200重量部以上の電解質塩濃度が1.0モル/l以上である非水電解液中に溶解させて重合反応を行い、粘弾性を有する重合物を生成させることを特徴とする固体電解質の形成方法。
本発明の固体電解質を含む電池は、それに用いた固体電解質が多量の電解液を含有する高分子量重合体の粘弾性体であり、イオン伝導度が高く、電解液の漏れがなく、電池内が乾燥せず、電解液のかたよりがなく、隔膜が部分的に乾燥状態にならないので内部インピーダンスが上昇しない。従って本発明では、内部短絡が起こらず信頼性に優れた電池及び高電圧の薄型電池が得られるので、本発明は、電気機器の軽量化、小型化に大きく貢献できるものである。本発明の固体電解質は、電池以外のコンデンサー、キャパシター、センサー、生体関連機器(心電図電極、超音波接触子、高周波治療パッド等)、エレクトロクロミックデバイス等にも使用でき、それらの電気機器の軽量化、小型化に大きく貢献できるものである。
本発明の固体電解質は、高分子量重合体基材と、非水電解液とから構成される全体が均質な粘弾性体からなるものである。本発明の粘弾性体状固体電解質は、高いイオン伝導度、低弾性率、低いガラス転移温度(Tg)、高温安定性、易加工性、低いクリープ特性及び粘着性を有し、さらに多量の電解液を含みながら保液性に優れ、かつ保形性においても優れたものである。本発明の固体電解質の交流インピーダンス法による25℃のイオン伝導度、その電解質の構成要素である非水電解液の伝導率に大きく影響を受けるとともに、それを超えるものではないが、固体化によってその伝導率の低下はほとんどなく、通常1/10〜1/10S/cmを有する。本発明の固体電解質の動的粘弾性試験機(RHEOMETRIC,INC(株)RDS−7700)による弾性率は通常10dyn/cm以下、好ましくは、10〜10dyn/cm、より好ましくは10〜10dyn/cmであり、Tgは、−30℃以下であり、100℃に置いても溶解することはない。伸びは20%以上で、最大400%程度まで破断することなく延伸変形に対する回復力を有する。また180度折り曲げても破断することはない。
本発明の固体電解質は、クリープメーター(山電(株)RE−3305、プランジャー断面積2cm、荷重30g)を使用してその歪量の時間変化を測定したところ、歪量は時間で変化せず低いクリープ特性を有する。クリープメーターを使用して荷重25g/cmで本固体電解質を圧縮しても内部に含まれる電解液が流出することはない。更に、この粘弾性体は高い粘着性を示し、粘弾性体同士を張り合わせた後、剥離しようとしても材料破壊を生じ、張り合わせ面から剥がれることはない。本発明の固体電解質は、重合性化合物を、非水電解液に溶解させて重合反応を行なわせることによって形成させることができる。この場合、重合性化合物は、熱重合性の他、光、紫外線、電子線、γ線、X線等の活性光線で重合性を示すものである。
本発明で用いる重合性化合物は、その分子内に酸素原子、窒素原子、イオウ原子等の炭素以外のヘテロ原子を含むものである。これらのヘテロ原子を含有する重合性化合物を非水電解液に溶解させ、重合反応させて得られる固体電解質(粘弾性体)においては、その炭素以外のヘテロ原子は電解質塩のイオン化を促進させ、固体電解質のイオン伝導性を向上させるとともに、固体電解質の強度を向上させる働きもあると考えられる。また、本発明で用いる重合性化合物の種類は、特に制約されず、熱重合及び活性光線重合などの重合反応を生起して得るものが包含されるが、特に活性光線による光重合性を示すものが好ましい。熱重合反応としては、ウレタン化反応の他、エポキシ基やアクリレート基による重合反応等が挙げられるが、ウレタン化反応が好ましい。また活性光線重合反応としては、不飽和カルボン酸エステル、ポリエン/ポリチオール混合物及び架橋性マクロマー(有機シラン、ポリイソチアナフテン等)による重合反応が挙げられるが、好ましくは不飽和カルボン酸エステル、ポリエン/ポリチオール混合物による反応である。以下特に電解液中の重合反応として優れている不飽和カルボン酸エステルの重合反応、ポリエン/ポリチオール混合物の重合反応、ポリウレタン化反応について詳述する。なお、本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。
本発明の固体電解質を得るための非水電解液中における重合反応は、電解質の熱分解を避けるために低温プロセスである活性光線重合反応が好ましい。活性光線重合性化合物としては、(メタ)アクリレートや、ポリエンとポリチオールとの組合せ等が挙げられる。(メタ)アクリレートとしては、単官能及び多官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。単官能アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート〔メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート等〕、脂環式(メタ)アクリレート〔テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等〕、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート〔ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等〕、ヒドロキシポリオキシアルキレン(オキシアルキレン基の炭素数は好ましくは1〜4)(メタ)アクリレート〔ヒドロキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等〕及びアルコキシ(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜4)(メタ)アクリレート〔メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等〕が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートの例としては、UV、EB硬化技術((株)総合技術センター発行)142頁〜152頁記載の光重性モノマー及び光重合性プレポリマーのうち3官能以上のモノマー、プレポリマー〔トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等〕が好ましい。
アクリレートのうち、下記一般式に示す(I)で表わされる分子量500未満の化合物及び一般式(II)で示される構造のものが特に好ましい。
CH=CHCOO(CHCHO)
| (I)

(式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、炭化水素基又は複素環を含む基、nは1以上の整数を表す。)

| (II)
CH=CCOOR
(式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、複素環を含む基を表わす。)
前記一般式(I)において、Rは、炭化水素基又は複素環を含む基を示すが、この場合、炭化水素基としては、脂肪族系及び芳香族系のものが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等の炭素数1〜10、好ましくは1〜5のものが挙げられる。また、芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、フェネチル等が挙げられる。複素環を含む基としては、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含む各種の複素環基が包含され、このようなものとしては、例えば、フルフリル、テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。前記一般式(I)で示されるアクリレートの具体例としては、例えば、アルキルエチレングリコールアクリレート〔メチルエチレングリコールアクリレート、エチルエチレングリコールアクリレート、プロピルエチレングリコールアクリート、フェニルエチレングリコールアクリレート等〕、アルキルプロピレングリコールアクリレート〔エチルプロピレングリコールアクリレート、ブチルプロピレングリコールアクリレート等〕、複素環を有するアルキレングリコールアクリレート〔フルフリルエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルエチレングリコールアクリレート、フルフリルプロピレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルプロピレングリコールアクリレート等〕が挙げられる。一般式(I)で表わされるこれらのアクリレートの分子量は通常500未満であるが、300以下がより好ましい。分子量が500以上のアクリレートでは得られる固体電解質から非水溶媒が滲出しやすい。
一般式(II)で示される(メタ)アクリレート中に含まれる複素環は特に限定はされない。この場合、複素環を含む基としては、酸素や、窒素、イオウ等のヘテロ原子を含む複素環の残基、例えば、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基等が挙げられる。前記一般式(II)で示される(メタ)アクリレートとしては、例えば、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートが好ましい。一般式(I)あるいは(II)で表わされる化合物は単独で使用してもよいが、2種類以上を混合して使用することもできる。
前記一般式(I)あるいは(II)で示される化合物には、多官能不飽和カルボン酸エステルを併用することにより、弾性率、イオン伝導度とも理想的な固体電解質を得ることができる。多官能不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが挙げられる。このものの好ましい具体例としては、「UV、EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)142頁〜152頁記載の光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーのうち2官能以上のモノマー、プレポリマー〔ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等〕が挙げられるが、3官能(メタ)アクリレートが、保液性、イオン伝導度、強度にすぐれた固体電解質を与える点で最も好ましい。一般式(I)及び(II)で示される化合物又はこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステルの使用割合は、非水電解液に対して50重量%以下、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%が良い。この範囲外では固体電解質のイオン伝導度及び強度が低下する。一般式(I)及び(II)の化合物に多官能不飽和カルボン酸エステルを併用する場合、その多官能不飽和カルボン酸エステルの添加量は、非水電解液に対して4重量%以下、好ましくは0.05〜2重量%であり、特に3官能不飽和カルボン酸エステルを併用する場合には、2重量%以下、好ましくは0.05〜0.5重量%という少量の添加量でイオン伝導度や強度の点で優れた固体電解質を得ることができる。このような多官能不飽和カルボン酸エステルの併用により、イオン伝導度や強度の点でよりすぐれた固体電解質を得ることができる。また、多官能不飽和カルボン酸エステルの併用量が多すぎると、得られる固体電解質は粘弾性体としての性状を示さず、柔軟性に欠け、特に外部応力に対してクラックを生じやすくなる。
一般式(I)及び(II)で示される化合物又はこれを主成分として含む不飽和カルボン酸エステルの重合開始剤としては、カルボニル化合物{ベンゾイン類〔ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等〕、アントラキノン類〔アントラキノン、メチルアントラキノン、クロルアントラキノン等〕、その他の化合物〔ベンジル、ジアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート等〕}、硫黄化合物〔ジフェニルスルフィド、ジチオカーバメート等〕、多縮合環系炭化水素のハロゲン化物〔α−クロルメチルナフタリン等〕、色素類〔アクリルフラビン、フルオレセン等〕、金属塩類〔塩化鉄、塩化銀等〕、オニウム塩類〔P−メトキシベンゼンジアゾニウム、ヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルアイオドニウム、トリフェニルスルフォニウム等〕などの光重合開始剤が挙げられる。これらは単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。好ましい光重合開光剤は、カルボニル化合物、硫黄化合物及びオニウム塩類である。必要により熱重合開始剤〔アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、エチルメチルケトンペルオキシド等〕を併用することができるし、また、ジメチルアニリン、ナフテン酸コバルト、スルフィン酸、メルカプタン等の重合開始剤も併用できる。さらに、増感剤、貯蔵安定剤も必要により併用できる。増感剤及び貯蔵安定剤の具体例としては、「UV、EB硬化技術((株)総合技術センター発行)」158頁〜1569頁記載の増感剤、貯蔵安定剤のうち、前者としては、尿素、ニトリル化合物〔N,N−ジ置換−P−アミノベンゾニトリル等〕、燐化合物〔トリ−n−ブチルホスフィン等〕が好ましく、後者としては、第4級アンモニウムクロライド、ベンゾチアゾール、ハイドロキノンが好ましい。重合開始剤の使用量は、全不飽和カルボン酸エステルに対し、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%である。この範囲外では適度な反応性が得られない。増感剤及び貯蔵安定剤の使用量は、全不飽和カルボン酸エステル100重量部に対し、通常、0.1〜5重量部である。
本発明による電解液の固体化は、前記した一般式(I)又は(II)で示される化合物又はこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステルを含む非水電解液を密封容器に注入するか、あるいは支持体(例えばフィルム、金属、ガラス)にコーティングした後、熱又は活性光線で重合することにより達成される。活性光線としては、通常、光、紫外線、電子線、X線が使用できる。これらのうち、好ましくは、100〜800nmの波長を主波長とする活性光線である。固体化された電解液(固体電解質)は、フィルム状やシート状であるいは電気化学素子の構成要素の一部とあらかじめ複合化された形態で製品とすることができる。電解液は基本的には水系、非水系のどちらであってもよいが、特に非水電解液の使用が好ましい。本発明の固体電解質は、リチウム電池のような非水電解液を含む電池において、その非水電解液の代りに用いると、電解質として優れた性能を発揮する。固体化すべき非水電解液としては、電解質塩を非水溶媒に溶解させたものが挙げられる。電解質塩としては通常の非水電解液に用いるものであれば、特に制限はない。このようなものとしては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiCFCOO、NaClO、NaBF、NaSCN、KBF、Mg(ClO、Mg(BF等が挙げられるが、電池に用いる場合には、重量エネルギー密度の点で分子量の小さいものが好ましい。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタンの他、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルグライム、エチルジグライム、ブチルジグライム等のグライム類が挙げられる。これらのうち、グライム類とプロピレンカーボネート及び/又はγ−ブチロラクトンとの組み合わせがイオン伝導度、電解質塩の溶解性の点で特に好ましい。非水電解液中の電解質塩の濃度は非水溶媒中、通常、1.0〜7.0モル/l、好ましくは2.0〜5.0モル/lの割合である。1.0モル/l未満では充分な固体強度を有する固体電解質が得られない。また、7.0モル/lを超えると電解質塩の溶解が難しくなる。非水電解液はマトリックスを形成する高分子量重合体に対し、通常、200重量%以上、好ましくは400〜900重量%、特に好ましくは500〜800重量%である。200重量%未満では十分に高いイオン伝導度が得られず、900重量%を超えると非水電解液の固体化が困難になる。本発明の固体電解質を得るためには、非水電解液中における電解質塩濃度と不飽和カルボン酸エステル濃度を適切な範囲に規定することが必要であり、両者の間には密接な関係がある。電解質塩濃度がその下限の1.0モル/1付近では電解液の固体化のための全不飽和カルボン酸エステルの濃度としては20〜50重量%程度が必要となり、電解質塩濃度が3モル/l以上の高濃度では不飽和カルボン酸エステル濃度は10〜20重量%程度の添加量で充分な特性を有する固体電解質が作製できる。
一般式(I)で表わされる化合物を含む不飽和カルボン酸エステルを用いて得られる固体電解質を構成する溶媒、電解質塩及び不飽和カルボン酸エステルの組成範囲を図1に示す。図1において、A,B,C,D,E,Aで囲まれる領域は好ましい組成を示し、F,G,H,I,J,Fで囲まれる領域はより好ましい領域を示し、K,L,M,I,J,Kで囲まれる領域はさらに好ましい領域を示し、P,Q,M,I,J,Pで囲まれる領域はさらに好ましい領域を示し、特に好ましくはR,M,I,Jで囲まれる領域で、弾性、イオン伝導性の両面で最適な固体電解質を与える。図1における各点における不飽和カルボン酸エステル、電解質塩、溶媒の組成を示すと次の通りである。
A:(0,100,0)
B:(33,67,0)
C:(33,0,67)
D:(30,0,70)
E:(0,30,70)
F:(10,52,38)
G:(33,38,29)
H:(33,5,62)
I:(24,6,70)
J:(10,20,70)
K:(10,32,58)
L:(24,28,48)
M:(28,5,67)
P:(10,28,62)
Q:(27,11,62)
R:(10,23,67)
ポリエン/ポリチオール混合物の重合反応は基本的には次式の通りである。
RSH → RS・ + H・
RS・ + CH=CH−CHR′ → RS−CH−CH・−CHR′
RSH → RS−CH−CH−CHR′ + RS・
(前記式中、R及びR′はアルキル基等の有機基である)
ポリエンとしては、ポリアリルエーテル化合物、ポリアリルエステル化合物があげられる。ポリアリルエーテル化合物の例としては、置換、未置換のアリルアルコールにエポキシ化合物[エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エピハロヒドリン、アリルグリシジルエーテル等]を付加した化合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは、置換、未置換のアリルアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した化合物である。ポリアリルエステル化合物としては、アリルアルコール又は上記のポリアリルエーテル化合物とカルボン酸との反応生成物が挙げられる。カルボン酸の例としては、脂肪族、脂環式及び芳香族系のモノ及びポリカルボン酸[酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、安息香酸などのモノカルボン酸(炭素数1〜20);アジピン酸、フタル酸などのジカルボン酸等]が挙げられる。これらのうち好ましいものは、ポリアリルエーテル化合物とポリカルボン酸の反応生成物である。ポリチオールとしては、液状ポリサルファイド;脂肪族、脂環式及び芳香族系のポリチオール化合物;メルカプトカルボン酸エステルが挙げられる。液状ポリサルファイドとしてはチオコールLPシリーズ(東レチオコール(株))が挙げられる。このうち好ましいものは平均分子量が400以下のものである。脂肪族、脂環式及び芳香族系のポリチオール化合物の例としては、メタン(ジ)チオール、エタン(ジ)チオールが挙げられる。メルカプトカルボン酸エステルとしては、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応又はメルカプトカルボン酸アルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換反応により得られる化合物が挙げられる。メルカプトカルボン酸の例としては、2−メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸が挙げられる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ショ糖及びこれらのアルキレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物、ブチレンオキサイド付加物等)が挙げられる。多価アルコールとして好ましいものは3価以上の多価アルコールでアルキレンオキサイド付加物を含まないものである。メルカプトカルボン酸アルキルエステルの例としては、2−メルカプト酢酸エチルエステル、3−メルカプトプロピオン酸メチルエステル等が挙げられる。ポリチオールのうちで好ましいものは、液状ポリサルファイド及びメルカプトカルボン酸エステルである。ポリエチレン/ポリチオールの反応混合物の重合開始剤としては、不飽和カルボン酸エステルの重合について示したものと同様のものが用いられる。
熱重合反応を生起する重合性化合物として、ポリウレタンを形成するポリイソシアネートとポリオール及び/又は架橋剤との組合せ及びその予備重合物を挙げることができる。ポリオールとしては、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社発行)99頁〜117頁記載のポリオールが挙げられ、それらのうちアルキレンオキサイド〔エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフランなど〕を重合して形成した融点が10℃以下のポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。この場合、オキシアルキレン基は、単独であっても2種以上であっても良い。特にエチレンオキシドとプロピレンオキシドを共重合したて形成したポリオキシアルキレンポリオールが好ましい。また、ポリオキシアルキレンポリオールは2種以上の混合物であってもよい。ポリオキシアルキレンポリオールの融点は通常10℃以下、好ましくは0℃〜−60℃である。融点が10℃を超えるとその結晶性のためイオン伝導度が低下する。ポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は通常84以下、好ましくは60以下である。水酸基価が84を超えると固体電解質のイオン伝導度が低くなる。ポリイソシアネートとしては、前述の書籍90頁〜98頁記載のポリイソシアネートのうち、トリレンジイソシアネート、4,4′−メタフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのプレポリマーが好ましい。NCO基の含有割合は、通常、48%(重量%)以下、好ましくは40%以下である。NCO基含有割合が48%を超えると固体電解質のイオン伝導度が低くなる。架橋剤としては前述の書籍122頁〜123頁記載の架橋剤のうち、多価アルコール類、多価アミン類のほか水も使用できる。このうちエチレングリコールなどの多価アルコール類が好ましい。ポリオール及び/又は架橋剤とポリイソシアネートは必要により触媒の存在下で重付加反応を起してポリウレタンを与える。この場合、触媒としてはポリウレタンの合成に慣用されているものが挙げられ、その具体例としては、トリエチレンジアミン、スタナスオクトエート等がある。ポリエン/ポリチオール混合物の反応及びウレタン化反応を用いて固体電解質を形成する際に用いられる電解液としては、不飽和カルボン酸エステルの重合反応により固体電解質を形成する場合に示した電解液と同様のものが用いられる。
本発明の固体電解質を得る場合に用いる非水電解液には、非水電解液の表面張力を下げて、隔膜あるいは活物質への浸透を向上させる浸漬助剤を添加するのが好ましい。このような浸漬助剤としては、シリコンオイル、シリコン−アルキレンオキサイド付加物等のシリコン誘導体;ポリプロピレンオキシド誘導体;パーフルオロアルキルスルホン酸塩;パーフルオロアルキル第4級アンモニウムヨウ化物、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル等のフッ素誘導体が挙げられる。これらのうち好ましいものはシリコン誘導体及びフッ素誘導体である。この浸漬助剤は、固体電解質中、通常、0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%である。この範囲外では経済的な浸漬効果が得られない。本発明の固体電解質の形成は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、この場合には、大気中で製造する場合にくらべてイオン伝導度、強度の点で優れた固体電解質が得られる。
本発明の固体電解質は、電池、コンデンサ、センサー、エレクトロクロミックデバイス、半導体デバイス等の電気化学素子における固体電解質層として利用することができる。次に本発明の固体電解質を電池電解質として用いる場合について詳述する。一般的に、電池は、正極活物質からなる正極、負極活物質からなる負極、隔膜及び電解質より構成される。この電池における電解質として、本発明の固体電解質を用いることにより、従来にない有利な電池を得ることができる。本発明の固体電解質を電池に適用する場合、本発明の固体電解質そのものに隔膜としての機能を兼用させることも可能であるが、極間の電界を均一にし、得られる電池の信頼性向上のために隔膜と一体化することが好ましく、特に二次電池においてはこのような配慮が必要である。本発明の場合、この隔膜と固体電解質との一体化は容易で、隔膜を有する電池容器内において直接固体電解質を形成することにより、あるいは隔膜中に固体電解質形成用組成物を含浸させ、重合反応を行なうことにより達成することができる。この場合、固体電解質形成用組成物には、浸漬助剤を添加するのが好ましい。
電池における正極活物質としては、カルコゲナイト化合物〔TiS、Nb、MoS、CoS、FeS、V、Cr、MnO、CoO等〕、正極電気活性高分子[ポリアニリン、ポリピロール、ポリ−3−メチルチオフェン、ポリジフェニルベンジジン、ポリアズレン等の導電性高分子や、メタロセンポリマー等]を挙げることができる。これらのうち好ましいものは正極電気活性高分子であり、より好ましくは導電性高分子である。負極活物質としては、金属[Li、Na、K、Ag、Cu、Zn等]、合金[Liと、Al、Mg、Pb、Si、Mn、Ga、In等との合金]、導電性高分子[ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、ポリピリジン、ポリアセン等]、グラファイト等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは、リチウム、リチウム合金、導電性高分子である。正極及び/又は負極活物質に導電性高分子を使用した場合、電解液中の電解質塩はドーピング量に相当する以上溶解せしめる必要があり、それ故、電解質塩が高濃度でかつ電解液の含有量も高い固体電解質であることが望まれる。隔膜としては、イオン移動に対して低抵抗であり、かつ、溶液保持性に優れたものが用いられる。例えば、ガラス繊維フィルター;ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン等を基材とする高分子ポアフィルター又は不織布;ガラス繊維と高分子繊維からなる混抄紙等を用いることができる。中でも0.1〜0.01μmのミクロポア径を有するポリプロピレン製不織布と固体電解質との複合体は性能面において特に有用である。
本発明の電池は、高分子量重合体と非水電解液からなる粘弾性体を従来の電池における固体電解質の代わりに用いて製造することができる。本発明の固体電解質は、非水電解液中に溶解させた重合性化合物を重合させ、反応液を柔軟性に富む粘弾性体に変換させることにより形成されるので、電極上、隔膜上あるいは電槽内において直接重合反応を行なって形成するのが好ましい。即ち、電極や隔膜等の電池要素に固体電解質形成用組成物を含浸させ、加熱あるいは活性光線の照射等の重合手段により粘弾性体とし、固体電解質と電池要素の一体化を行なうことが好ましい。各電池要素と固体電解質との一体化は、各電池要素毎に一体化させてもよいが、正極と隔膜との組合わせ、負極と隔膜との組合せあるいは正極と隔膜と負極との組合せを固体電解質と一体化させてもよい。このように電池要素と前記固体電解質が一体化していれば正極、負極での電極反応及びイオンの移動をスムーズに進行させることができ、電池の内部抵抗を大幅に低減することができる。
本発明の固体電解質は、導電性高分子材料との複合化において好ましい特性を有する。これは、重合する前のモノマー溶液が高分子材料にしみこんで高分子材料を膨潤させるとともに、高分子材料内部にまで充分浸透し、その後重合反応により固体化するため、高分子材料と明確な界面が形成されず、両者の界面抵抗を小さくすることが出来るためである。従来のイオン解離基を含むポリマーマトリックスと無機塩の固溶体に代表されるような固体電解質では、固体電解質と活物質との界面において分極が生じやすく、大きな界面抵抗を有する。これに対して本発明の固体電解質は前述したごとく溶液の性質を持ちつつ固体状であるため、通常の電解液と同様に陰イオン、陽イオンとも移動が容易なため、導電性高分子材料を用いる電池においては分極等が生じにくくより好ましい組み合わせであるといえる。導電性高分子材料と本発明の固体電解質の複合化方法は一般的には固体電解質形成用組成物を導電性高分子材料に含浸させた後、前述したような重合手段により粘弾性体とし複合化を行なう。本発明において、導電性高分子材料としては、例えばピロール、チオフェン等を単量体とする複素五員環系化合物重合体、ベンゼン、アズレン等を単量体とする芳香族炭化水素系化合物重合体、アニリン、ジフェニルベンジジン等を単量体とするアミン化合物重合体、負極被覆体として有用なポリアリーレンビニレンの他、エチレン、ブタジエン、ヘキサトリエン等の不飽和炭化水素のハロゲン置換体を単量体とする不飽和脂肪族系化合物重合体を使用することができる。それら単量体の重合方法としては、酸化剤を使用する化学重合法、電気エネルギー利用する電解重合法を用いることができる。
化学重合は、単量体を含む溶液中に酸化剤を加え、単量体を酸化することにより実施する。酸化剤としては、ヨウ素、しゅう素、ヨウ化しゅう素などのハロゲン;五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン、フッ化ケイ素、五塩化リンなどの金属ハロゲン化物;硫酸、硝酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸などのプロトン酸;三酸化イオウ、二酸化窒素、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどの含酸素化合物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、過酢酸、ジフルオロスルホニルパーオキサイドなどの過酸化物等の酸化剤が用いられる。化学重合法において得られる高重合度の重合体は不溶性であり、粉末状で合成される。粉末状の活物質(無機材料、有機材料を問わない)の場合、活物質と電解液の複合化方法はおおきく分けて二通りある。その第1の方法は、成形体としての活物質に電解液を固体化せしめる方法であり、第2の方法は、活物質と電解液の混合成形体を作製し固体化せしめる方法である。化学重合において粉末状に合成された導電性高分子材料においては、第1の方法によれば、あらかじめ所望の形状の電極(ペレット状、シート状等)を作成したのち、これに固体電解質形成用組成物を含浸させ、加熱あるいは活性光線等の重合手段により導電性高分子材料と固体電解質との複合化を行なえる。第2の方法によれば、粉末状の導電性高分子材料に適量の固体電解質形成用組成物を添加し、導電性高分子材料に組成物を充分しみこませたのち、混合してペースト状とし、所望の形態にしたのち加熱あるいは活性光線等の重合手段により複合化することができる。もちろん、第1及び第2の方法を問わず、必要に応じて他の添加物、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトに代表されるような導電材を加えることができる。本発明の場合、固体電解質は結着剤としての機能を有するので、テフロン(登録商標)等の結着剤の使用は特に必要とされない。前記ペースト状物を用いた場合の電極の作製においては、任意の形状のものの作製が可能であるが、例えばペレット状の場合、ペーストをそのままペレット状に成形するか、あるいは多孔質炭素体、発泡金属等にねりこみ、ペレット状とすることができる。シート状電極の作製の場合、ブラスト処理を施こしたパチングメタルホイル、金属メッシュ、エキスパンドメタル、炭素繊維等のシート状材料にペーストをねりこみ、あるいは塗布することによりシート状電極とすることができる。
電解重合法による導電性高分子の合成は、一般的には、例えば、J.Electrochem.Soc.,Vol.130.No.7.1506〜1509(1983)、Electrochem.Acta.,Vol.27.No.61〜85(1982)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1199〜(1984)などに示されているが、単量体と電解質とを溶媒に溶解した液を所定の電解槽に入れ、電極を浸漬し、陽極酸化あるいは陰極還元による電解重合反応を起こさせることによって行なうことができる。電解質としては、例えばアニオンとして、BF、AsF、SbF、PF、ClO、HSO、SO及び芳香族スルホン酸アニオンが、また、カチオンとして、水素イオン、4級アンモニウムカチオン、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを例示することが出来るが、特にこれらに限定されるものではない。また、溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピレンカーボネイト、γ−ブチロラクトン、ジクロルメタン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、あるいはニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼンなどのニトロ系溶媒などを挙げることが出来るが、特にこれらに限定されるものではない。電解重合は、定電圧電解、定電流電解、定電位電解のいずれもが可能である。電解重合法においては、シート状導電体を反応電極とすることで実質的に一段階でシート状電極を形成することが可能なため、本質的にシート状電極の作成に向いている方法である。電解重合法により形成された高分子材料と本発明の固体電解質との複合化においては、導電性高分子材料を粉末状で回収して利用する場合は前述の第1及び第2の方法を用いることになるが、電解重合により得られた導電性高分子材料の付着した電極をそのまま用いる場合は、その電極上の導電性高分子材料に固体電解質組成物を充分しみこませたのち、重合反応を実施することにより複合化を行うことが可能である。
また、このような導電性高分子材料からなる電極のエネルギー容量を向上させるために、その電極には無機の活物質材料をさらに複合化することも可能である。使用できる活物質としては、カルコゲナイト系化合物、例えば、TiS、Nb、MoS、CoS、FeS、V、Cr、MnO、CoO、WO等が挙げられる。複合化の方法としては、これらのカルコゲナイト系化合物の粉末を、前述した粉末状導電性高分子と固体電解質の複合化の系に加えて実施する方法あるいは前述したような電解重合時にこれらの粉末を系中に分散させ、導電性高分子にとりこませて複合化する方法が可能である。以上、導電性高分子材料を主体とする活物質と固体電解質との複合化及び固体電解質を複合化した電極の形成法について述べたが負極活物質となりうるアルカリ金属、特に、リチウム及びリチウム系合金と固体電解質との複合化や、粉末状(粒塊状)の活物質(LiAl,LiMg,LiPb,LiAlMg,LiAlMn等)と固体電解質の複合化及び固体電解質を複合化させた電極の形成については、粉末状の導電性高分子材料と固体電解質との複合化の場合と同様な手法が可能である。シート状の金属活物質に対する固体電解質の複合化においては、その表面に固体電解質形成用組成物を均一に塗布したのち加熱あるいは活性光線等の重合法により固体電解質をその表面に形成させることにより実施される。このような複合化は、界面抵抗を下げるのに重要なことはもちろんであるが、負極活物質であるLiやLiAl系合金等の金属活物質の界面に固体電解質が確実に複合化することにより、モス状リチウムやデンドライトの発生を防止が可能になり、また、LiAl合金の崩壊を抑制することもでき、負極の充放電効率の向上、ひいては、電池サイクル寿命の向上につながるため非常に重要なことである。また、負極の充放電効率の向上という面から考えると、固体化すべき電解液に充放電効率向上に寄与する種々の添加剤を加えて固体化することもできる。このような添加剤としては、有機系材料として、ベンゼン、クラウンエーテル(12クラウン−4,15−クラウン5等)、ヘテロ原子を含有する5員環系化合物(2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、4−メチルチアゾール等)が挙げられる。また無機系材料としては、Mg(II)、Fe(III)などの金属イオンからなる組成物〔Mg(Cl、MgCl、Fe(ClO、FeCl等〕が挙げられる。このような添加剤の添加量は、その種類によって最大の効果を示す量が異なるが、一般的には、ppmオーダーから1mol/l程度である。本発明によれば、正極及び負極のそれぞれを固体電解質と一体化させて隔膜を介して積層した積層体をそのまま、あるいはスパイラル状に巻成し、コイン型、円筒型、角型、ガム型、シート型等の各種電池容器に実装して、電池を製造することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。また、実施例、比較例において使用した固体電解形成用組成物は以下に示した通りである。尚、非水溶媒及び電解質塩は充分に精製を行い、水分20ppm以下としたもので更に脱酸素及び脱窒素を行った電池グレードのものを使用し、すべての実験操作はアルゴンガス雰囲気でおこなった。また、イオン伝導度の測定温度は25℃である。なお、固体電解質のイオン伝導度の測定は、2種の方法により行った。即ち、第1の方法では、対極を構成するSUS製円筒状容器(内径20mm)内に固体電解質を充填し、その固体電解質の表面に、作用極として、外周をテフロン(登録商標)で被覆した小直径のSUS製円柱体(直径5mm)を圧着させることによって行った。この方法で得られたイオン伝導度の値は、以下においては、符号*を付して示されている。第2の方法では、対極として、底面を除いた内周面を絶縁テープで被覆したSUS製円筒状容器(内径20mm)を用い、この容器内に固体電解質を充填し、その固体電解質表面に、作用極として、直径18mmのSUS製円柱体を圧着させることによって行った。この方法で得られたイオン伝導度の値は、以下においては、符号**を付して示されている。
固体電解質形成用組成物(I)
プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを各々重量比6:4の割合で混合した非水溶媒に3モル/lの割合でLiBFを溶解せしめて得た電解液を79.2%、エトキシジエチレングリコールアクリレートを19.5%、メチルベンゾイルフォーメートを0.8%及びシリコン−アルキレンオキサイド付加物を0.5%の割合で混合したもの。
固体電解質形成用組成物(II)
プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及び1,2−ジエトキシエタンを各々重量比7:1:2の割合で混合した非水溶媒に、3モル/lの割合でLiBFを溶解せしめて得た電解液を68.8%、エトキシジエチレングリコールアクリレートを29%及びびベンゾインイソプロピルエーテルを1.2%及びシリコン−アルキルオキサイド付加物を1.0%の割合で混合したもの。
固体電解質形成用組成物(III)
プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを各々重量比7:3の割合で混合した非水溶媒に、LiBFを3モル/l溶解せしめて得た電解液を85.8%、エトキシジエチレングリコールアクリレートを12.8%、トリメチロールプロパントリアクリレートを0.2%、メチルベンゾイルフォーメイトを0.5%、シリコン−アルキレンオキサイド付加物を0.7%の割合で混合したもの。
固体電解質形成用組成物(IV)
プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを各々重量比6:4の割合で混合した非水溶媒に、3モル/lとなるようにLiBFを溶解せしめて得た電解液を79.2%、フルフリルアクリレートを19.5%、メチルベンゾイルフォーメートを0.8%及びシリコン−アルキレンオキサイド付加物を0.5%の割合で混合したもの。
固体電解質形成用組成物(V)
プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及び1,2−ジエトキシエタンを各々重量比7:1:2の割合で混合した非水溶媒に、3モル/lとなるようにLiBFを溶解せしめて得た電解液を68.8%、テトラヒドロフルフリルアクリレートを30%及びベンゾインイソプロピルエーテルを1.2%の割合で混合したもの。
参考例1
5.5NのHSO水溶液1000部中に0.5モルのアニリンを溶解した表面抵抗4Ω/□のネサガラス(1cm×2cm)上に0.8V vs SCEの定電位で0.02C/cmの電荷量でポリアニリン薄膜を形成した。これを所定の還元処理により完全還元体とした後、充分に乾燥してポリアニリン電極を作製した。この電極とともに、対極及び参照電極にリチウムを使用してビーカー型のセルを作製した。このセルに固体電解質形成用組成物(II)を入れ、蛍光灯で8時間活性光線を照射した。この組成物は完全に粘弾性体状に固化して流動性が無く、相当の粘着力を持ち電極と一体化した。ポリアニリン電極を作用極として、電位掃引速度25mV/secでサイクリックボルタムメトリーを測定したところ、図2に示すボルタモグラムが得られた。このボルタモグラムから、電解液中と同様に良好なドーピング特性を示すことが確認された。固体電解質のイオン伝導度は、1.5/103S/cm*、1.0/103S/cm**であった。
実施例2
1.5NのHSO水溶液1000部に0.5モルのアニリンを溶解した。表面抵抗4Ω/□のネサガラス(1cm×2cm)上に0.8V vs SCEの定電位で0.04C/cmの電荷量でポリアニリン薄膜を形成した。これを所定の還元処理により完全還元体とした後、充分に乾燥してポリアニリン電極を作製した。この電極とともに、対極及び参照極にリチウムを使用してビーカー型のセルを作製した。このセルに固体電解質形成用組成物(III)を入れ高圧水銀灯で1.5時間活性光線を照射した。この組成物は完全に粘弾性体状に固化して流動性がなく、相当の粘着性を持ち電極と一体化した。ポリアニリン電極を作用極としてポリアニリンのドーピング量を測定したところ、25℃で118mAh/g、0℃で108mAh/g、−20℃で103mAh/gが得られ、低温域でも良好なドーピング特性を示すことが確認された。固体電解質のイオン伝導度は、4/103S/cm*、2.7/103S/cm**であった。
参考例3
過硫酸アンモニウムと塩酸からA.G.MacDiamid et al.,Conducting Polymers.,105(1987)に示された方法によりポリアニリンを合成した。還元処理を十分に行った後、ポリアニリン白色粉末を得た。このポリアニリン白色粉末75部、アセチレンブラック25部を混練して直径14.5mm、厚さ0.6mmの円盤状に加圧成形して正極とした。この正極に固体電解質形成用組成物(I)を充分しみこませ、ガラス基板に挟んで高圧水銀灯により活性光線を照射して含浸した組成物を固化せしめた。つぎに隔膜(ポリサイエンス製ジュラガード2502)にも同様にして組成物(I)を充分しみこませ、これをガラス基板に挟んで高圧水銀灯により活性光線を照射して含浸した組成物を固化せしめた。負極には厚さ0.1mmのリチウムを使用した。前記正極、隔膜及び負極を積層し、CR2016タイプのコイン型電池を作製した。
参考例4
厚さ0.02mmの粗面化したSUSパンチングメタルの片面に、1mol/lのアニリンを含む3mol/lのHBFを含む水溶液を用いる3mA/cmの定電流電解重合法により厚さ0.1mmのポリアニリン膜を析出せしめた。この膜を還元処理し、真空乾燥を十分に行なった後、PET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に貼り付けた。ポリアニリン膜に固体電解質形成用組成物[I]を十分にしみこませてガラス基板に挾み1kgで加圧して高圧水銀灯により活性光を照射し、正極と固体電解質との複合体からなるシート状正極を得た。次に隔膜(トーネンタピルスP010SW−000)を、このシート状正極上に配置して、固体電解質形成用組成物(I)を隔膜に充分にしみこませガラス基板に挾んで高圧水銀灯により活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめた。別に、PET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に、厚さ0.1mmのリチウムを厚さ0.02mmのSUS基板に貼り合わせた負極を貼り付け、リチウム上に固体電解質形成用組成物(I)を塗布し、ガラス基板に挾んで高圧水銀灯により活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめ、負極と固体電解質を複合化した。前記正極、隔膜及び負極を積層し、積層体周辺部をヒートシールして4cm×5cmのシート型電池を作製した。
実施例5
厚さ0.02mmの粗面化したSUSパンチングメタルの片面に、1mol/lのアニリンを含む3mol/lのHBFを含む水溶液を用いる3mA/cmの定電流電解重合法によりポリアニリン膜を5mg/cm析出せしめた。この膜を還元処理し、真空乾燥を十分に行なった後、PET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に貼り付けた。ポリアニリン膜に固体電解質形成用組成物(III)を十分にしみこませてガラス基板に挾み1kgで加圧して高圧水銀灯により活性光を照射し、正極と固体電解質との複合化体からなるシート状正極を得た。次に隔膜(セルガード4501)をこのシート状正極上に配置して固体電解質形成用組成物(III)を含浸した後、活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめた。一方、PET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に厚さ0.08mmのリチウムを厚さ0.02mmのSUS基板に貼り合わせた負極を貼り付け、リチウム上に固体電解質形成用組成物(III)を塗布し、ガラス基板に挾んで高圧水銀灯により活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめ、負極と固体電解質を複合化した。前記正極、隔膜及び負極を積層し、積層体周辺部をヒートシールして5cm×7cmのシート型電池を作製した。この電池について、2.2mAの定電流で3.7Vまで充電後各電流値で放電を行なった時の充放電曲線を図3に示す。
参考例6
厚さ0.3mmのアルミニウムと厚さ0.1mmのリチウムを張り合わせ、加熱することによりリチウム/アルミニウム合金積層体を作製して負極とした。この負極のリチウム/アルミニウム合金表面にも固体電解質形成用組成物(I)をしみこませて固化した。この負極を用いた以外は参考例3と同様にしてCR2016タイプのコイン型電池を作製した。
(電池性能試験)
参考例3、4、6で作製した電池を0.5mAの定電流で充放電を行い電池性能を評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0004031466
参考例7
前記固体電解質形成用組成物(I)中の電解液を69.1%にし、そしてエトキシジエチレングリコールアクリレートを29.6%にし、さらに電解質塩濃度を変化させた以外は同様の組成物[I′]を使用した。これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0004031466
参考例8
前記固体電解質形成用組成物[II]において、電解液中の電解質塩濃度を変化させて各種の組成物を作り、これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表3に示す。
Figure 0004031466
実施例9
5.5NのHSO水溶液1000部中に0.5モルのアニリンを溶解した。表面抵抗4オームのネサガラス(1cm×2cm)上に0.8V vs SCEの定電位で0.02C/cmの電荷量でポリアニリン薄膜を形成した。これを所定の還元処理により完全還元体とした後、充分に乾燥してポリアニリン電極を作製した。この電極とともに、対極及び参照極にリチウムを使用してビーカー型のセルを作製した。このセルに固体電解質形成用組成物(V)を入れ、蛍光灯で8時間活性光線を照射した。この組成物は完全に粘弾性体状に固化して流動性が無く、相当の粘着力を持ち電極と一体化した。ポリアニリン電極を作用極として、電位掃引速度50mV/sec及び20mV/secでサイクリックボルタモメトリーを測定したところ、そのボルタモグラムから、電解液中と同様に良好なドーピング特性を示すことが確認された。固体電解質のイオン伝導度は1.7/103S/cm*、1.2/103S/cm**あった。
実施例10
過硫酸アンモニウムと塩酸からA.G.MacDiamid et al.,Conducting Polymers.,105(1987)に示された方法によりポリアニリンを合成した。このポリアニリンの還元処理を十分に行った後、ポリアニリン白色粉末を得た。このポリアニリン白色粉末75部、アセチレンブラック25部を混練して直径14.5mm、厚さ0.6mmの円盤状に加圧成形して正極とした。この正極に固体電解質形成用組成物(IV)を充分しみこませ、ガラス基板に挟んで高圧水銀灯により活性光線を照射して含浸した組成物を固体せしめた。一方、隔膜(ポリサイエンス製ジュラガード2502)にも同様にして組成物(IV)を充分しみこませ、これをガラス基板に挟んで高圧水銀灯により活性光線を照射して含浸した組成物を固化せしめた。負極には厚さ0.1mmのリチウムを使用した。前記正極、隔膜及び負極を積層し、CR2016タイプのコイン型電池を作製した。
実施例11
厚さ0.02mmの粗面化したSUSパンチングメタルの片面に、1mol/lのアニリンを含む3mol/lのHBF水溶液を用いる3mA/cmの定電流電解重合法により厚さ0.1mmのポリアニリン膜を形成せしめた。このポリアニリン膜の還元処理を十分に行なった後、これをPET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に貼り付けた。このポリアニリン膜に固体電解質形成用組成物[IV]を十分にしみこませてガラス基板に挟み、1kgで加圧して高圧水銀灯により活性光線を照射し、正極と固体電解質との複合体からなるシート状正極を得た。次に隔膜(トーネンタピルスPO10SW−OOO)をこのシート状正極上に配置し、固体電解質形成用組成物(IV)を隔膜に充分にしみこませ、ガラス基板に挟んで高圧水銀灯により活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめた。一方、PET/アルミニウム/ポリプロピレン積層体の外装材に厚さ0.1mmのリチウムを厚さ0.02mmのSUS基板に貼り合わせた負極を貼り付け、そのリチウム上に固体電解質形成用組成物(IV)を塗布し、ガラス基板に挾んで高圧水銀灯により活性光線を照射することによりその組成物を固化せしめ、負極と固体電解質を複合化した。前記正極、隔膜及び負極を積層し、積層体周辺部をヒートシールして4cm×5cmのシート型電池を作製した。
実施例12
厚さ0.3mmのアルミニウムと厚さ0.1mmのリチウムを張り合わせ、加熱することによりリチウム/アルミニウム合金積層体を作製し、負極とした。この負極のリチウム/アルミニウム合金表面にも固体電解質形成用組成物(IV)をしみこませて固化した。この負極を用いた以外は実施例2と同様にしてCR2016タイプのコイン型電池を作製した。
電池性能試験実施例10〜12で作製した電池を0.5mAの定電流で充放電を行い電池性能を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0004031466
実施例13
前記固体電解質形成用組成物[IV]中の電解液を69.1%にし、フリフリルアクリレートを29.6%にした以外は同様の組成物[IV′]を使用した。これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表5に示す。
Figure 0004031466
実施例14
前記固体電解質形成用組成物[V]において、電解液中の電解質塩濃度を変化させて各種の組成物を作り、これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表6に示す。
Figure 0004031466
参考例15
プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンを各々重量比8:2の割合で混合した非水溶媒1000部に1モルのLiBFを溶解せしめ電解液とし、この電解液89.1%に、ポリエン(分子量400のポリオキシエチレングリコール400部にアリルグリシジルエーテル342部を反応させたもの)6.4%、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート3.6%、メチルベンゾイルフォーメート0.4%及びシリコン−アルキレンオキサイド付加物0.5%の割合で混合して、固体電解質形成用組成物(VI)を得た。β層を有する電解二酸化マンガン(EMD)とアセチンブラック(電化ブラック)及びPTFEディスパージョン(三井フロロケミカル製PJ−30)を7.5:2.0:0.5の重量比で混練し、直径14.5mm、厚さ0.6mmの円盤状に加圧成形した。この成形体を充分に加熱乾燥してこれに固体電解質形成用組成物(VI)を含浸させてガラス基板に挟み、活性光線によりその組成物を固化せしめて正極を得た。この正極、実施例2の隔膜及び負極を用いてCR2016タイプのコイン型電池を作製した。
参考例16
前記固体電解質形成用組成物〔VI〕において、電解液中の電解質塩濃度を変化させて各種の組成物を作り、これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表7に示す。
Figure 0004031466
参考例17
下記成分組成の熱重合性の固体電解質形成用組成物を調製した。
トリレンジイソシアネート 2.4部
ポリオキシアルキレンポリオール 27.6部
電解液 70部
触媒(ジブチルスズラウレート) 0.1部
なお、前記ポリオキシアルキレンポリオールとしてはグリセリンにエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=8/2(重量比)を付加重合して得た分子量3000(融点は0℃以下)のものを用いた。また、電解液としては、γ−ブチロラクトンにLiBF4を3モル/l溶解したものを用いた。前記組成物をビーカに入れ、温度50℃で1時間加熱し、得られた重合反応物の性状を調べた。その結果を表8に示す。
Figure 0004031466
参考例18
プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを各々重量比6:4の割合で混合した非水溶媒1000部に3モルのLiBFを溶解せしめた電解液を79.2%、ヒドロキシエチルアクリレートを19.5%、メチルベンゾイルフォーメートを0.8%及びシリコン−アルキレンオキサイド付加物を0.5%の割合で混合して固体電解質形成用組成物(VII)を得た。前記固体電解質形成用組成物(VII)において、電解液中の電解質塩濃度を変化させて各種の組成物を作り、これをビーカに入れ、8時間蛍光灯からの活性光線を照射し、得られる重合反応物の性状を調べた。その結果を表9に示す。
Figure 0004031466
実施例19
エトキシジエチレングリコールアクリレート64部にトリメチロールプロパントリアクリレートの1部を混合して得た不飽和カルボン酸エステル混合物Aに、プロピレンカーボネート及び1,2−ジメトキシエタンを各々重量比8:2の割合で混合して得た非水溶媒BとLiBF(電解質塩)を混合して下記成分組成の組成物を作り、これをビーカーに入れ、高圧水銀灯にて1時間活性光線を照射した。次に、得られた重合反応物の弾性率、伸びを測定した。その結果を表10に示す。なお、重合開始剤にはメチルベンゾイルフォーメートを用いた。固体電解質の伸びの測定は、1cm×1cm×0.3cmの固体電解質について行なった。
Figure 0004031466
*比較例を示す。
比較例1
分子量3000のポリエチレンオキシドトリオール100部、ジブチル錫ジラウレート0.06部、トリレン−2,4−ジイソシアネート8.5部、LiBF5.4部をメチルエチルケトン100部に溶解して組成物(a)を得た。実施例10において、固体電解質形成用組成物(I)の代わりに組成物(a)を使用し、80℃、3日間加熱して固体電解質を形成する以外は同様にして電池を作製した。
比較例2
参考例4において、固体電解質形成用組成物(I)の代わりに組成物(a)を使用し、80℃、3日間加熱して固体電解質を形成する以外は同様にして電池を作製した。次に、前記比較例1及び2で得られた電池を0.5mAの定電流で充放電を行い、電池性能を評価した。その結果を表11に示す。
Figure 0004031466
比較例3
メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(分子量496)を0.25部、ポリエチレングリコールジメタクリレート(分子量550)を0.75部、過塩素酸リチウムを0.08部及び2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.004部を混合し、均一溶液とした。この液状組成物を、アルミシャーレに薄く流延し、窒素雰囲気で超高圧水銀灯を照射して無溶媒の固体電解質フィルムを得た。このフィルムのイオン伝導度は3.7/107S/cm*であった。このフィルムにプロピレンカーボネイトと1,2−ジメトキシエタンの混合溶媒(6:4重量比)を含有させ、固体電解質とした(電解液の含有量108%)。この固体電解質のイオン伝導度は2.0/104S/cm*であり、固体電解質の表面から電解液の滲出が生じた。また、この固体電解質を電池の固体電解質として用いるために、電極間にはさみ圧力をかけたところ固体電解質の破断が起こり、電池は機能しなかった。
固体電解質を構成する溶媒、電解質塩及び不飽和カルボン酸エステルの好ましい組成範囲を示す線図である。 参考例1で得た電池についてのボルタモグラムを示す。 実施例5で得た電池の充放電曲線を示す。

Claims (1)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物及び多官能不飽和カルボン酸エステルの混合物若しくは該混合物を主成分とする不飽和カルボン酸エステル又は下記一般式(II)で表わされる化合物若しくはこれを主成分とする不飽和カルボン酸エステル100重量部を、重合開始剤の存在下に、200重量部以上の電解質塩濃度が1.0モル/l以上である非水電解液中に溶解させて重合反応を行い、粘弾性を有する重合物を生成させることを特徴とする固体電解質の形成方法。
    一般式(I):
    CH=CHCOO(CHCHO) (I)


    (式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、炭化水素基、nは1以上の整数を表わす。)
    一般式(II):

    | (II)
    CH=CCOOR
    (式中、Rは、水素原子又はメチル基、Rは、フルフリル基又はテトラヒドロフルフリル基を表わす。)
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