JP4030316B2 - 食器洗い機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は食器洗い機に関する。
【0002】
【従来の技術】
食器洗い機では、通常、洗剤を用いて食器を洗浄している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は洗剤を使用せずに食器を洗うことのできる食器洗い機を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1に記載の発明は、洗浄タンク内に洗浄液を溜め、この洗浄液を洗浄タンクに収容した食器に向けて噴射することにより食器を洗浄する食器洗い機であって、
食器に噴射されて洗浄タンク下部へと落下する洗浄液を汲み出して食器に向けて噴射させる汲み出し手段と、
汲み出し手段により汲み出される洗浄液の一部を流し、汲み出し手段と洗浄タンク下部とを連通する通水路と、
通水路に備えられこれを流れる洗浄液を電気分解することにより電解水を生成する電解ユニットと、
通水路を流れる洗浄液の流量を所定量以下に抑制する流量抑制手段とを有し、
流量抑制手段は、電解ユニットにおいて電解水の電解される度合いが高まるように、通水路の一部を狭くすることにより構成したことを特徴とする。
【0005】
この発明によれば、例えば、汲み出し手段により洗浄液が流れると、洗浄液の一部は、汲み出し手段から通水路を経て洗浄タンク下部へと流れる。その間に電解ユニットで電解水が生成される。生成された電解水は通水路の流れとともに、洗浄タンク下部へ戻されて、洗浄に利用される。
このように電解水の洗浄効果を得られ、例えば、食器の洗浄に洗剤を使わずに済ませることができる。また、通水路により洗浄液を繰り返し電解ユニットで電気分解できるので、濃い電解水を得て、洗浄効果を高くすることができ、従って、ひどい汚れを対象とする傾向にある食器洗い機に好ましい。また、汲み出し手段により電解ユニットに洗浄液を洗浄中やすすぎ中に流して、通水路や電解ユニット内に残菜やスケールが付着することを抑制できる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、上記通水路は、汲み出し手段により汲み出される洗浄液の一部を洗浄タンク下部へ戻す循環路からなることを特徴とする。
この発明によれば、汲み出し手段により洗浄液を循環路および電解ユニットに確実に流すことができるので、循環路や電解ユニット内に残菜が付着することをより確実に抑制できる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、上記洗浄タンクには、食器に噴射された洗浄液が落下して洗浄タンク下部に溜まる際に、その洗浄液を濾過するフィルタが設けられ、循環路は、濾過された後の洗浄液に電解水が混ざるように洗浄液を洗浄タンク下部に戻すことを特徴とする。
この発明によれば、循環路から流出した直後の電解水と残菜等の汚れとがすぐに反応することを防止できる。従って、汚れと電解水との必要以上の反応を防止して、電解水の洗浄効果を高く維持しつつ洗浄に利用することができる。
【0008】
ここで請求項1に記載の発明について更に説明するに、流量を抑制することにより、効率よく電解できるので、電解される度合いの高い、いわゆる濃い電解水を得ることができ、その結果、洗浄能力を高めることができる。
【0009】
しかも、通水路の一部を絞ることで、通水路の流量を所定量以下に抑制できる。このように、通水路の一部を狭くするだけの簡素な構成で済み、しかも、狭い部分は一部だけなので、残菜が詰まることを抑制できる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかにおいて、上記電解ユニットに電解促進剤を投入するための添加ユニットをさらに有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、電解促進剤により効率よく電解できるので、例えば、濃い電解水を容易に得ることができる。また、電解促進剤を用いることにより、電解能力を同じ場合で比較して、電解ユニットの電極間距離を広くできる。従って、電解ユニット内に残菜やスケールが付着することをより一層抑制できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態の食器洗い機を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態の食器洗い機の概略構成を示す右側面断面図である。図2は、上述の食器洗い機の水路図である。なお、各図には、方向を示す矢印を必要に応じて図示している。また、前後左右上下の各方向は正面視を基準に表すこととする。
【0013】
本食器洗い機1は、流し台の上に設置される卓上型の食器洗い機であり、前部2に食器投入用開口3を有し、この開口3は前方を向いていて、開閉可能な扉4で覆われるようになっている。食器洗い機1の平面形状は、前後方向に長く、左右方向にかなり短く形成され、食器洗い機1を流し台のシンクの横に設置したときに、扉4が流し台の正面を向いて配置することができるようになっている。
食器洗い機1は、外形を形成するキャビネット5と、このキャビネット5の内部に配置されて被洗浄物としての食器等(図1に食器Pを図示。以下単に食器という。)を洗浄するための洗浄タンク6と、この洗浄タンク6の内部に着脱自在に収容されて食器を保持する食器カゴ7とを有している。洗浄タンク6の前部には、食器を出し入れするための上述の開口3が形成され、この開口3を覆う開閉可能な上述の扉4が取り付けられている。この扉4を閉じることにより、洗浄タンク6の内部を密閉することができる。
【0014】
食器洗い機1では、水道等の外部の給水設備(図示せず)からの水を給水機構8により洗浄タンク6内に供給して溜め、溜めた水を洗浄液として汲み出し手段としての洗浄ポンプ9により噴射機構としてのノズル10,11,12に送り、これにより洗浄タンク6に収容した食器に向けて洗浄液を噴射することにより食器を洗浄するようにされている。
噴射機構としては、洗浄タンク6の内部の食器カゴ7の下方に、2つのアーム形ノズル10,11が前後方向に沿って並んで配置されている。各アーム形ノズル10,11は、洗浄タンク6の底部13に固定された前後に長い管状のノズルベース14に鉛直軸線周りに回転自在に支持されている。また、洗浄タンク6の側方内壁15には、食器カゴ7の側方に、アーム形ノズル12が固定されている。このアーム形ノズル12は、ノズルベース14から内壁15に沿って延設されている。これら各アーム形ノズル10,11,12は、複数の噴射口16(一部のみ図示)を有し、洗浄時には、各噴射口16から洗浄水が噴射されるようになっている。
【0015】
給水機構8は、管47とこの管47を開閉可能な電磁弁48とを有している。管47の一端には、外部の給水設備と接続可能な給水口49が設けられている。また、管47の他端は、洗浄タンク6の後部の側壁に形成された孔に、通水可能に連結されている。
洗浄タンク6の下部としての底部13は、容器状に形成されており、ここに給水機構8により供給された洗浄液を溜めることができる。洗浄タンク6の底部13は一段低い水溜め部17を有し、この水溜め部17の上には、洗浄液を濾過し残菜を除去するためのフィルタ18が設けられると共に、水溜め部17は洗浄ポンプ9の吸込口19に連通し、この洗浄ポンプ9の吐出口20は、ノズルベース14から各アーム形ノズル10,11,12へとつながっている。
【0016】
洗浄時には、給水機構8により洗浄タンク6の底部13の所定水位にまで洗浄液が溜められる。モータ21により駆動されて洗浄ポンプ9が運転されると、洗浄液は、洗浄タンク6の水溜め部17から吸い込まれてアーム形ノズル10,11,12へ圧送される。回転自在なアーム形ノズル10,11は、洗浄液が噴射されるときの反力、特にその水平方向成分により回転しながら、噴射口16から洗浄液を食器に吹き付けて、食器をむらなく洗浄する。また、固定されたアーム形ノズル12の噴射口16からも、洗浄液が食器に吹きつけられる。その後、洗浄液は洗浄タンク6の底部13に落下して戻り、洗浄ポンプ9、アーム形ノズル10,11,12へと循環しながら、洗浄が行われる。洗浄後、洗浄液は排水ポンプ22により水溜め部17から排水管23を通して外部に排出される。
【0017】
また、洗浄タンク6の底部13には、ヒータ24(図2参照)が配置されている。このヒータ24は、通電されることにより、洗浄時に洗浄タンク6の底部13に溜められる洗浄液を温めることができ、また、乾燥時に洗浄タンク6内の空気を温めることができる。また、洗浄タンク6には、乾燥時に外気を洗浄タンク6の内部に取り込むための送風装置25(図2参照)が設けられている。送風装置25は、送風ファンと、これを駆動するモータと、洗浄タンク6の内外を連通する風路を区画するケーシングとを有している。乾燥時には、送風ファンが回転し、ヒータ24が駆動される。外部からの空気が、洗浄タンク6内に取り込まれて温められて、洗浄後の食器を乾燥させ、その後、排気口(図示せず)から排出される。
【0018】
本発明の食器洗い機1では、洗浄液として用いる電解水を生成するための電解ユニット30が設けられている。これにより、電解水の洗浄効果を得て、例えば、食器の洗浄に洗剤を使わずに済ませることができる。
特に、本実施形態では、通水路として、洗浄ポンプ9により汲み出される洗浄液の一部を洗浄タンク6の下部へ戻す循環路29が設けられ、この循環路29に電解ユニット30が設けられている。
【0019】
循環路29は、洗浄ポンプ9のケーシング72につながる第1連通路45と、電解ユニット30の電解槽31の内部と、第2連通路46とを有している。これら各部45,31,46は、洗浄タンク6の底部13から吸込管28、洗浄ポンプ6およびノズルベース14を経て複数の噴射口16へ至る噴射用の流路とは、別室として区画されている。
循環路29では、洗浄液が、第1連通路45から、電解槽31内部を経て、第2連通路46へと、この順に流れるようにされている。洗浄ポンプ9が運転されると、洗浄液は、水溜め部17から吸込管28を通り洗浄ポンプ9のケーシング72内に入る。そして、洗浄ポンプ9からの洗浄液の一部は、循環路29を通じて洗浄タンク6の底部13へ戻される。また、上述の一部の洗浄液を除いた洗浄ポンプ9からの洗浄液の残りは、噴射用の流路を通り、各噴射口16から噴射されて、落下して洗浄タンク6の底部13へ戻される。
【0020】
このように、電解ユニット30により生成された電解水は、循環路29を流れる洗浄液とともに洗浄タンク6に供給され、また、洗浄タンク6内に溜められている洗浄液と混ざりあい、これにより希釈されて洗浄液として用いられる。
また、希釈された電解水であっても、繰り返し電解を継続することにより、電解水の電解される度合い、いわゆる濃さを所望の程度に容易に高めることができる。それゆえ、洗浄に適した濃さ、例えば、電解される度合いの高い濃い電解水で洗浄効果を高めることができるので、ひどい汚れを対象とする傾向にある食器洗い機に好ましい。
【0021】
また、洗浄液を洗浄中に繰り返し電解できるので、洗浄中に汚れと反応して電解水の洗浄能力が低下するとしても、低下した電解水の洗浄能力を高めて、洗浄能力を高く維持することができる。
また、洗浄ポンプ9と連通する通水路としての循環路29を設けていることにより、洗浄ポンプ9により洗浄液を循環路29や電解ユニット30に洗浄中やすすぎ中に流すことができるので、循環路29や電解ユニット30内に残菜や後述するスケールが付着することを抑制できる。その結果、例えば、スケールの付着を原因とする電極同士の短絡や電解効率の低下を防止できる。また、残菜の付着を原因とする電解効率の低下を防止できる。
【0022】
特に、循環路29での流れが、洗浄ポンプ9から循環路29を経て洗浄タンク6の底部13へと流れるようにされているので、洗浄ポンプ9により圧の高まった洗浄液を循環路29や電解ユニット30に確実に流すことができ、循環路29や電解ユニット30に残菜やスケールが付着することをより一層確実に抑制できる。
また、電解ユニットを噴射用の流路に設ける場合には電解ユニットが噴射用の流路の邪魔になり、噴射用の流路の流れに悪影響が生じることが想定される。しかし、上述の循環路29であれば、洗浄ポンプ6からの洗浄液の流れの一部だけが流れ、しかも、噴射用の流路に循環路29の出口が合流しないので、噴射用の流路の流れに悪影響がほとんど生じず、従って、噴射による洗浄効果を高く維持できる。
【0023】
また、循環路29は洗浄タンク6の内部と仕切られている。従って、このような循環路29に設けられる電解ユニット30であれば、ユーザが電解ユニット30を不用意に触れることを容易に防止できる。
電解ユニット30は、洗浄タンク6内と別室として区画されて内部に水を溜めることができる所定の内容積の貯水容器としての電解槽31と、この電解槽31内に配置された複数の電極32とを有する。電解ユニット30は、電解槽31と複数の電極32とを一体的に扱えるようにされている。各電極32は、金属板、特に、チタンが白金によりコーティングされた電極板からなる。この電極板は、チタンまたはチタン合金製の板材の全表面に白金のコーティング皮膜を形成したものであり、公知のものを利用できる。この電極板は耐蝕性が高いので、濃い電解水を得る場合であっても高い耐久性を確保できる。
【0024】
電解ユニット30は、本実施の形態では図3に示すように、キャビネット5のカバー40に覆われて、キャビネット5内に収容されている。電解ユニット30は、食器カゴ7よりも下方で且つ洗浄タンク6の側方、例えば、左側に配置され、洗浄タンク6の底部13の側壁42に沿うようにして、この側壁42とカバー40との間に区画される空きスペースに配置され、食器の収容スペースの邪魔にならないようにされている。なお、電解ユニット30を洗浄タンク6の右側や後側となる側方に配置してもよい。
【0025】
第1連通路45は、洗浄ポンプ9のケーシング72内と、電解ユニット30の電解槽31の入口33とを連通し、管により形成される。洗浄ポンプ9は、渦巻ポンプであり、回転することにより中心部から取り込んだ水を径方向の外方へ送り出すインペラ71と、このインペラ71を取り囲む渦巻形状のケーシング72とを有している。インペラ71は、回転する円板の一方の板面に複数の羽根が径方向に放射状に延びて立設されたものである。ケーシング72は、インペラ71の羽根の軸方向の先端に隣接し中央部に吸込口19を形成される第1側壁73と、第1側壁73と対向して配置されインペラ71の円板と軸方向に隣接する第2側壁74と、両側壁73,74の外周縁同士をつなぎ径方向についてインペラ71の外方に配置されて吐出口20を形成する周壁75とを有している。ケーシング72は、洗浄ポンプ9の吸込口19から吐出口20とを連通する流路を区画していて、その途中で洗浄液の圧が高められるようになっている。洗浄ポンプ9のケーシング72の第1側壁73には、内周縁寄り部分、例えば、吸込口19に隣接した位置に開口が形成され、この開口と第1連通路45とがつながっている。洗浄ポンプ9が運転されると、ケーシング72内の流路を流れる洗浄液の一部が、ケーシング72の開口を通じて、第1連通路45に流入するようになっていて、残りとなる大部分の洗浄液は吐出口20から流出する。
【0026】
第1の連通路45が、ケーシング72内の流れに沿って吸込口19寄りのケーシング72の位置に接続されることにより、吐出口20寄りの位置に接続する場合に比べて、循環路29へ流入する洗浄液の流量を小さく抑制することができる。また、第1の連通路45をケーシング72の側壁73の径方向についての内方部分に接続することにより、残菜が循環路29へ流入することを抑制できる。というのは、残菜等の異物は、通例、水よりも重く渦巻ポンプ内で大きな遠心力を受けるので、径方向の外方となるケーシング72の部分、例えば、周壁75に沿って移動する傾向にあるからである。
【0027】
なお、第1連通路45の入口の位置は、吸込口19の近傍に限定されない。例えば、洗浄ポンプ9の吐出口20の近傍となるケーシング72の位置に開口が形成され、この開口と第1連通路45とがつながっていてもよい。また、ノズルベース14等の、上述の噴射用の流路に沿って吐出口20よりも下流側の部材に配置してもよい。要は、第1連通路45は、洗浄液に循環路29に流れ込む圧力を付与できるケーシング72の位置に接続できればよく、上述の噴射用の流路において、洗浄ポンプ9のケーシング72の吸込口19よりも下流側で分岐させればよい。
【0028】
また、第1連通路45には、ここを通って電解ユニット30に供給される水に電解促進剤等の薬剤を添加するための添加ユニット52が設けられている。薬剤は、例えば、固形で所定の形状の錠剤に形成され、自動投入できて、水に溶けるようにされている。
添加ユニット52は電解ユニット30よりも上流側にあるので、循環路29の流れとともに、薬剤を水に混ぜつつ電解ユニット30内に満遍なく供給できる。なお、添加ユニット52が薬剤を投入する位置は、特に限定されず、例えば、添加ユニット52を電解ユニット30の電解槽31に設け、電解槽31内に薬剤を投入することも考えられる。また、添加ユニット52が洗浄タンク6の底部13に薬剤を投入するようにしてもよく、このように投入される薬剤であっても、上述のように循環路29に流入して電解ユニット30に至ることができる。
【0029】
添加ユニット52は、複数回の洗浄に対応して多数の錠剤を貯蔵できる貯蔵容器55と、この貯蔵容器55内の錠剤を所定量、例えば、ひとつを取り出すためのモータ等により電動駆動される取出し機構56とを有している。モータを駆動すると、取出し機構56により所定量の薬剤が第1連通路45に形成された投入口を通じて第1連通路45内に投入されるようになっている。取出し機構56は、公知の構造を利用できる。添加ユニット52は、後述するように制御部60の制御により、所定のタイミングで薬剤を投入できるようにされている。
【0030】
ところで、水道水に通常混ざっている不純物を利用して、水道水にそのままで電気を流すことにより、電解水を得ることもできるが、例えば、電解効率が低くなる場合がある。そこで、水道水の電気分解を促進するために、添加ユニット52を設け、上述の薬剤は少なくとも電解促進剤を含むようにしている。
電解促進剤は、塩化化合物と、アルカリ金属を含む化合物とを含んでいる。塩化化合物は、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カルシウム等を例示できる。アルカリ金属を含む化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を例示できる。電解促進剤としては、塩化化合物が所定量で、アルカリ金属を含む化合物が所定量で、ともに錠剤中に含まれている。
【0031】
電解促進剤は、上述の何れの化合物でも、水に溶けた状態で水に電気を流し易くできるので、水道水をそのまま電気分解する場合に比べて、電解効率を高めることができる。例えば、濃い電解水を容易に得ることができ、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンが発生し易くなるので、電解水中の次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの濃度を高めることができ、その結果、食器を漂白する効果や食器を殺菌する効果を高めることができる。これとともに、電解水のアルカリ性の度合いを高めることができるので、蛋白質を溶解して分解する効果を高めることができる。
【0032】
電解促進剤により電解水の洗浄効果が地域間でばらつくことを抑制できる。すなわち、通常、水道水の導電率は地域により異なり、水の導電率に応じて、電流の流れ易さが異なり、その結果、同条件で電解したときに電解水の電解度合いが異なる。しかし、上述の電解促進剤を添加することにより、上述の水溶液の導電率は、水道水に比べて格段に高くなる。従って、水道水の導電率の地域差に影響されずに、電解しようとする水の導電率を、電解促進剤により決まる値にほぼ一定に保つことができ、生成される電解水の電解度合い、ひいては洗浄効果をほぼ一定にして得ることができる。また、所定の濃さの電解水を得るために流す電流量を同じにして比較すると、電解促進剤を入れる場合には、電極32同士の間隔を広くでき、残菜やスケールの付着を抑制できる。このスケールは、水中の不純物等が原因で、電極32の表面に沈着する固体層のことであり、このようなスケールが電極32の表面に付着すると、電解効率が低下するが、本実施形態では上述のように付着を抑制できる。
【0033】
特に、電解促進剤が塩化化合物を含む場合には、水道水にもともと含まれている塩素に加えて、電解促進剤に含まれている塩化化合物が水に溶けて、水中の塩素の濃度が高まる。さらに、電解促進剤の作用で電解水の電解度合いが高まる。その結果、電解水に次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンがより一層生じ易くなり、電解水中の次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの濃度がより一層高まり、食器の漂白や除菌の効果がより一層高くなる。例えば、電解促進剤として塩化ナトリウムを用いる場合の所定量としては、この所定量の電解促進剤が水に溶けて、洗浄タンク6および電解槽31内で所定濃度、例えば、1%以下の濃度の水溶液を得られるようにされるのが好ましい。水溶液の濃度が1%を超える場合には、その水溶液を電気分解するときに、塩素が過度に多く発生することがあるからである。
【0034】
また、電解促進剤に、アルカリ金属を含む化合物が含まれる場合には、アルカリ金属を含む化合物が電解水に溶けて、電解水ひいては洗浄液のアルカリ性の度合いをより一層強めて、蛋白質を溶解する効果をより一層強めることができる。例えば、電解促進剤として炭酸ナトリウムを用いる場合の所定量としては、洗浄タンク6および電解槽31内で炭酸ナトリウムが0.3%以上の濃度で含まれる水溶液になるように設定され、この濃度の水溶液を電解して得た電解水が、pH10.5のアルカリ性を得られるようにされる。この洗浄液であれば、食器に付着した蛋白質を溶解する作用を、蛋白質を洗浄するのに十分な程度で得ることができる。
【0035】
また、薬剤には、アミラーゼ等の酵素を含むようにしてもよい。酵素は、汚れを分解する化学反応の触媒として機能する。特に、アミラーゼは、でんぷん等を分解し易くする。
これらの薬剤は、洗剤に比べて格段に安価であるので、洗剤を利用して洗浄する場合に比べて、洗浄のためのコストを安価にできる。また、上述の薬剤であれば、洗浄後に洗浄液とともに外部に排出されても、環境を汚す虞がない。
【0036】
薬剤の形状としては、例えば、錠剤の表面に突起を形成して、表面積を大きくし、水に溶け易くすることも考えられる。また、薬剤としては、塩化化合物からなる電解促進剤と、アルカリ金属を含む化合物からなる電解促進剤と、酵素との3つの成分のなかの複数、例えば、全ての成分を一つの錠剤に含まれるようにしてもよい。全ての成分を一つの錠剤に含む場合には、一種類の錠剤を扱うだけでよいので、電解槽31等に投入し易く、例えば、添加ユニット52の構造を簡素化できる。また、上述の3つの成分を、ひとつずつそれぞれ別々の錠剤に形成してもよく、この場合、錠剤の製造時に、3つの成分を混ぜる手間を省け、錠剤を作り易い。
【0037】
また、電解促進剤としては、塩化化合物と、アルカリ金属を含む化合物との両方を含む場合に限定されず、例えば、何れか一方の化合物だけを含むようにしてもよい。
なお、添加ユニット52の構造は上述のものに限定されない。例えば、洗浄運転ごとに薬剤を手動で投入するようにしてもよい。例えば、扉4に薬剤を収容する容器を設け、この容器から所定のタイミングで薬剤を洗浄タンク6内に落下させるようにしてもよい。このように扉4に添加ユニット52を設ける場合には、ユーザが扱い易くて好ましい。
【0038】
また、添加ユニット52を省略した構成も考えられる。この場合には、構造を簡素化できる。
以下では、添加ユニット52を備え、薬剤が、塩化化合物と、アルカリ金属を含む化合物と、酵素とを含む場合を主に説明する。
第2連通路46は、管により形成され、電解ユニット30の電解槽31の出口34と、洗浄タンク6の水溜め部17内とを連通し、洗浄タンク6下部の水溜め部17の側壁42に形成された開口43に接続されている。
【0039】
第2連通路46は、高くなった途中部54を有し、この部分54は電解ユニット30の電解槽31の出口34よりも高く、且つ開口43よりも高い位置に配置される。これにより、電解ユニット30への残菜の浸入をより確実に防止できる。
第2連通路46の出口は、洗浄タンク6の底部13でありフィルタ18から離れて残菜の溜まり難い部分に接続してもよいが、本実施の形態では以下のように接続して、洗浄ポンプ9に速やかに吸い込まれるようにしている。
【0040】
第2連通路46の出口となる水溜め部17への開口43は、フィルタ18で濾過された後の洗浄液が溜まる部位となる、フィルタ18よりも下方となる側壁42の部分に配置されている。これにより、濾過後の洗浄液と電解水とが混ざる。そして、第2連通路46の出口に残菜が達することを防止できるので、残菜等の汚れと電解水との必要以上の反応を防止できる。従って、このような反応を原因として電解水の洗浄効果が、洗浄に利用される前に低下することを防止できる結果、電解水の洗浄効果を高く維持しつつ食器に付着した汚れを効果的に洗浄することができる。
【0041】
上述のフィルタ18は、食器に噴射された洗浄液が落下して洗浄タンク6の底部13に溜まる際に、その洗浄液を濾過して通し、洗浄液と一緒に落下した残菜を洗浄液から除去するためのものである。フィルタ18は、網状に形成されて洗浄液を通す孔58を有している。この孔58は、例えば、一辺の長さが略2mmの矩形の網目により形成されている。
また、第2連通路46の出口となる開口43は、この開口43よりも上流側の部分よりも断面積が小さくされている。このように一部、例えば、開口43が狭くされることで、循環路29を流れる洗浄液の流量を所定量以下に抑制でき、流量抑制手段として機能する。
【0042】
このように、流量を抑制することで、同じ電解ユニットを用いても、効率よく電解できるので、電解水の電解された度合いを高めて、いわゆる濃い電解水を得ることができ、洗浄能力を高めることができる。なお、流量を抑制して、流れない状態としてもよい。また、流量を抑制するために狭くする部分は、開口43以外の部分とすることも考えられ、要は、循環路29の一部が狭くされていればよい。
【0043】
また、循環路29の一部を狭くするだけの簡素な構成で済み、しかも、狭い部分は一部だけなので、残菜が詰まることを抑制できる。また、循環路29の構造そのものを小流量にするので、洗浄ポンプ9の動作に関係なく、流量を抑制できる。
また、循環路29により洗浄液を入れ換えることができるので、電解槽31の内容積は小さくてもよく、小型化することができ、洗浄タンク6で洗浄時に溜められる水量の略3分の1以下の水量を溜めるようにされている。この程度の内容積であれば、食器洗い機1の外形を大型化させずに、電解ユニット30をキャビネット5内に収容できる。例えば、本実施形態では電解槽31に溜まる水量は、洗浄タンク6で洗浄時に溜められる水量の略10分の1程度とされている。
【0044】
電解槽31は、図3および図4に示すように、洗浄タンク6と別体に合成樹脂材料により形成されている。電解槽31は、構造部材としてのキャビネット5のベース41にねじ止めにより着脱可能に固定される。なお、構造部材としては洗浄タンク6を利用してもよい。
電解槽31は、左右方向に薄くされた薄型箱状に形成されている。電解槽31は、上下に分割可能な一対の分割体35,36により構成されている。分割体同士の間は、Oリング等の封止部材37により封止されている。
【0045】
電解槽31の上部は、上方に一段高く突出する突出部38を有している。突出部38の内部は、電解槽31内に溜められた水が入らずに、空気溜まりになっている。これにより、電解時に生じるガスを外部に出さずに電解槽31内に溜めることができ、ここに溜められたガスを電解水に再度溶かして、電解効率を高めることができる。
突出部38は、電解槽31の前部に偏って配置される。突出部38から遠い側となる後部側に偏って電極32が配置される。電極32の上端部は、洗浄タンク6内に洗浄時に溜められる水位Hよりも低くなるようにされ、仮にサイホン効果により電解槽31内の水が第2連通路46を通じて洗浄タンク6内へ流れるとしても、電極32が確実に水没できるようにされている。また、電解槽31の後面部は、電極32に接近して隣接し、管状の一対の延設部が後方へ延設されている。延設部に、第2連通路46の管や、第1連通路45の管が接続される。下側にある一方の延設部は、内部に水を入れるための入口33を区画し、上側にある他方の延設部は、内部から水を出すための出口34を区画している。
【0046】
電解槽31の入口33は、電解槽31の底部近傍に、例えば、電極32の高さ方向のほぼ中間部に対応する位置に配置されている。また、出口34は、電解槽31の側部の上端部に、電極32の上端よりも上方に配置されている。電解槽31の入口33および出口34は、互いに上下方向に離間し、水を水平方向に互いに逆向きで平行に流すように配置されている。これにより、水が、入口33から入り、内部の広い範囲を折り返し状に流れ、その間に内部の電解水と水道水とが均一に混ざり、内部の電解水を効率よく押し出して、出口34を通り流し出すことができる。また、電解槽31の内部に水の淀みや電極32近傍に空気溜まりの発生を抑制できて、効率良く電解できる。
【0047】
また、第2連通路46の入口となる電解槽31の出口34は、洗浄時に洗浄タンク6内に溜められる洗浄液の水位Hよりも高い位置に配置されていて、洗浄タンク6からの洗浄液の電解ユニット30への逆流を防止できる。従って、電解ユニット30への残菜の浸入を防止できる。
各電極32は、ほぼ同形の方形の薄型板状をなし、それぞれの電極32の表面が、電解槽31の薄くなる方向、例えば、左右方向に向くようにして、互いに対向して並んでいる。各電極32は立ち上がって立設され、電解時に電極32の表面に発生するガスが電極32の表面から離れ易くできるので、ガスの付着に起因する電解効率の低下を抑制できる。
【0048】
各電極32は、下端部を電解槽31に保持され、所定間隔(D3)を隔てられている。なお、電極32は、左右および上側の端部で保持されてもよい。
複数の電極32の数は、例えば、3枚とされる。これら複数の電極32は、互いに逆の極性とされる一対の電極32を有している。例えば、3枚の電極32の場合には、互いに隣接する2つの電極32が互いに逆極性となるように、電極32の極性を交互に入れ換えて配置すればよい。なお、電極32の枚数は、4枚、5枚でもよく、少なくとも一対の電極32があればよい。
【0049】
電極32同士の間隔(D3参照)および電極32と電解槽31の内壁39との間の間隔(D4参照)は、上述のフィルタ18の孔58の大きさ(D2参照)よりも大きくされ(D3>D2,D4>D2)、間隔がフィルタ18の孔58の大きさよりも大きくされることで、フィルタ18の孔58を通るような汚れが詰まることを防止できる。例えば、孔58の標準的な大きさである2ミリよりも大きい寸法、具体的には、3ミリ以上且つ5ミリ以下の寸法とするのが好ましい。間隔が3ミリ未満の場合には、スケールが電極32に付着し易くなり、電解効率が低下することや、付着したスケールを原因とする短絡が生じることが懸念されるからである。また、間隔が5ミリを超えると、電解効率を高く維持するために高い電圧を印加する必要があり、実用的に構成することが困難になる。また、電極32と電解槽31との間隔(D4)は、上述の寸法としてもよいし、または0、すなわち、電極32と電解槽31との間に隙間を開けないようにしてもよい。
【0050】
なお、電極32同士の間隔が3ミリ以上の場合、仮にスケールが電極32に付着したとしても、スケールを介しての電極32同士の短絡を長期間にわたり防止でき、標準的な家庭での使用であれば実用上で問題ない。
上述の電解ユニット30、洗浄タンク6等により、電解水は以下のように生成されて、洗浄効果を発揮する。すなわち、水道水が洗浄タンク6内に供給され、洗浄ポンプ9が運転されると、水道水が、洗浄タンク6内から循環路29を通じて電解槽31内に流入して溜められる。これとともに、電解促進剤等の薬剤が、溜められた水に投入されて満遍なく混ぜられる。なお、水道水が洗浄タンク6に供給されるのに伴い、電解槽31内にも溜まるようにすることも考えられる。水道水には、もともと、鉄、カルシウム、マグネシウム、塩素などの含有物が微量に含まれていて、これに加えて、上述の電解促進剤が混ぜられている。このように、含有物を多量に含む状態で、水道水を電解槽31内で電気分解し、電解水が生成される。さらに、電解槽31内と洗浄タンク6内との間で循環路29を通じて水道水や電解水等の洗浄液が循環することにより、洗浄タンク6内は徐々に電解水で満たされる。また、洗浄液が循環する間に、電解されて、電解水は徐々に濃くされる。
【0051】
このように循環しながら繰り返し電気分解されて電解度合いが高められることにより、また、電解促進剤を用いて電解度合いが高められることにより、さらに、アルカリ金属を含む化合物が電解促進剤に用いられることにより、洗浄タンク6、電解槽31等の内部の電解水のアルカリ性の度合いが強くされている。また、電解槽31内の電解水中には次亜塩素酸(HClO)および次亜塩素酸イオン(ClO−)が発生していて、上述のように電解度合いが高められることにより、さらに電解促進剤に塩素化合物が用いられることにより、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの濃度が高くされている。次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンは電解水とともに循環路29を通じて洗浄タンク6内に流れる。また、電解槽31内の電解水中には活性酸素が発生していて、上述のように電解度合いが高められることにより、その濃度が高くされている。また、洗浄タンク6、電解槽31等の内部の電解水には、酵素が混ざっている。
【0052】
電解水は、循環路29を通じて、電解槽31と洗浄タンク6内を循環する。洗浄液は、食器の洗浄に適した所定の電解度合いおよびアルカリ性の度合いとされるとともに、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンが、電解水とともに洗浄タンク6内に流入する。洗浄タンク6内において、食器に付着した汚れは、アルカリ水の効果、洗浄液の噴射の効果、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの効果および酵素の効果により分解や溶解がなされて落とされる。また、次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンの効果により食器の漂白、例えば、茶渋の洗浄が行われ、除菌が行われる。また、洗浄液は強いアルカリ性なので、蛋白質に対する高い洗浄能力を発揮する。さらに、酵素が澱粉を分解し易くする。食器から落とされた汚れは、洗浄液とともに、循環路29を通じて電解槽31内に流入し、活性酸素の効果により分解され、汚れが食器に再度付着することが防止される。
【0053】
なお、繰り返し電解して濃い電解水を生成することにより、例えば、上述のアルカリ性を強める薬剤を用いない場合であっても、アルカリ性の度合いを高め、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンの濃度を高めることができる。その結果、洗浄能力を高めることができる。
また、本食器洗い機1は、図1および図2に示すように、予め定める手順に従って上述の各部を制御して洗浄運転を実行するための制御部60と、制御部60に接続されて運転操作するための操作パネル61とを有している。
【0054】
制御部60は、例えばマイクロコンピュータ(CPU)、RAM、ROM、タイマ等を含み、予め記憶されたプログラムや、操作パネル61のスイッチからの信号に基づいて、モータ21等を制御して洗浄を行う。
制御部60は、駆動回路(図示せず)を介してモータ21の回転を制御し、モータ21の回転方向を切り換えることにより、洗浄ポンプ9の動作と排水ポンプ22の動作とを切り換える。また、モータ21を所定の態様で、例えば、間欠的に駆動することができる。また、制御部60は、トランス等を有する通電回路63を介して電解ユニット30の複数の電極32への通電を制御できるようにされている。また、制御部60には、図示していないが、洗浄タンク6内の水位を検知する水位センサが接続され、電磁弁48を動作させることにより、水を所定の水位まで溜めることができる。また、制御部60は、駆動回路(図示せず)を介して、ヒータ24、送風装置25と接続されている。
【0055】
操作パネル61には、電源を投入するための電源キー(図示せず)、洗浄を開始するための洗浄開始手段としてのスタートキー62、洗浄コースを選択するための選択手段としてのコースキー(図示せず)とを有している。コースキーを操作することにより、洗剤コースおよび電解水コースの何れかの洗浄コースを選択することができる。洗剤コースは、洗剤を使用して標準的な洗浄運転を行う。電解水コースは、洗剤を使用せずに電解水を洗浄液として利用して洗浄運転を行う。
【0056】
制御部60は、予め記憶されたプログラムに基づき、以下の各処理を実行する。図5のフローチャートおよび図2を参照する。電解水コースが選択されたときには、制御部60は、スタートキー62により実行されて食器に付着した大まかな汚れを落とすための予洗実行処理(ステップS1)と、予洗実行処理後に食器をすすぐための予備すすぎ処理(ステップS2)と、予備すすぎ処理後に電解ユニット30で電解水を生成しつつ洗浄する電解水生成洗い処理(ステップS3)と、生成された電解水を洗浄液として用いて食器の本洗いを行う本洗い実行処理(ステップS4)と、本洗いの後にすすぎを行う第1〜第3のすすぎ実行処理(ステップS5,6,7)と、洗浄後の食器を乾燥させる乾燥実行処理(ステップS8)とを実行する。
【0057】
予洗実行処理は、給水機構8を開いて洗浄タンク6に水を溜めて予洗を行う。洗浄ポンプ9は、所定時間、例えば、10分間運転され、ヒータ24は通電されずに常温の水で洗浄される。その後、排水される。
予備すすぎ処理は、給水機構8を開いて洗浄タンク6に水を溜めてすすぎを行う。洗浄ポンプ9は、所定時間、例えば、1分間運転され、ヒータ24は通電されずに常温の水ですすぎが行われる。その後、排水される。ここでの所定時間は、予洗実行処理での洗浄ポンプ9の運転時間よりも短い時間とされる。
【0058】
なお、予洗実行処理と予備すすぎ処理との組合せを、複数回実行してもよい。また、予洗実行処理での洗浄ポンプ9の運転時間をより長くしたり、ヒータ24を通電してもよい。これらの場合には、より一層洗浄効果を高めることができる。上述の洗浄ポンプ9の運転時間は、長くされる場合、汚れにより泡が発生しない程度の時間とされるのが望ましい。また、ヒータ24を通電する場合には、水温が45℃を超えないようにするのが、蛋白質が固まらずに落とし易くて好ましい。
【0059】
また、予洗実行処理で、洗浄タンク6内に給水し、このときに電解ユニット30を動作させずに、添加ユニット52により薬剤を水道水に投入し、薬剤を含む洗浄液を得て、この洗浄液で洗浄タンク6内の食器を洗浄するようにしてもよい。すなわち、電解水でなくとも、上述の薬剤が混ざることにより、洗浄液のアルカリ性がある程度高まり、予洗い時に蛋白質を落とし易くでき、また、薬剤の酵素により澱粉を落とし易くできる。
【0060】
電解水生成洗い処理は、予備すすぎで用いた水が洗浄タンク6から排水された後に実行される。電解水生成洗い処理では、まず、洗浄タンク6内の所定の水位にまで、給水される。その後、添加ユニット52により薬剤が投入される。そして、複数の電極32に所定時間、例えば、30分間連続して通電される。電極32に通電される間、洗浄ポンプ9が、洗浄液を噴射口16から噴射できてしかも循環路29の流量を抑制できるような所定の態様、例えば、10秒間の駆動の後に170秒間の駆動停止がある間欠的なサイクルを繰り返す態様で運転される(図6参照)。また、ヒータ24は通電されずに、常温の水が電解される。これは、温められた水よりも常温の水の電解効率が高いからである。
【0061】
電解水生成洗い処理では、洗浄ポンプ9が停止している間に、電解槽31内に流れずに溜まっている洗浄液が効率よく電気分解されて、濃い電解水が生成される。洗浄ポンプ9が駆動されると、電解水が洗浄液に混ざって食器に吹きつけられ、これと同時に、循環路29を洗浄液が流れて、洗浄タンク6内の洗浄液と電解ユニット30内の洗浄液とが入れ換えられる。
ここで、電解水生成洗い処理で給水される所定の水位としては、本洗いのための水位と同じ水位とされる。また、所定の水位としては、本洗いのための水位よりも低く、複数の電極32が水没して電解槽31に水がほぼ満たされる水位であり、洗浄ポンプ9により噴射口16から洗浄液を十分に噴射できる程度の水位とされてもよい。また、電解を開始するには、複数の電極32の少なくとも一部が水没するような水位でもよい。また、電解水生成洗い処理は排水をしない。
【0062】
また、電解水生成洗い処理では、制御部60が洗浄ポンプ9を間欠的に動作させることにより、上述の流量抑制手段として機能するようにしている。これにより、循環路29中の洗浄液を間欠的に停止させたり流速を低下させて、この処理の時間の間の平均的な流量を抑制して、効率よく電解でき、濃い電解水を得ることができる。流量を抑制するような洗浄ポンプ9の動作としては、洗浄ポンプ9を駆動する回転数を周期的に早めたり遅くしてもよいが、このように連続して洗浄ポンプ9を駆動する態様では、電解槽31内の流れが維持され易く、電解効率が低くなることがある。一方、上述のように間欠的にオンオフさせる態様では、電解槽31内の流れを止め易く、電解効率を高めることができ、しかも構造も簡単で済む。
【0063】
また、流量の抑制のために、洗浄ポンプ9の動作の制御を利用するので、水路を狭くしたりする場合に比べて簡便に実施できる。また、動作の態様を異ならせることで、例えば、間欠的な動作の間隔を異ならせることで、所望の流量に容易に調節できる。また、電解水の生成工程中も、洗浄ポンプ9が動作して循環路29に流れが生じるので、残菜やスケールの付着を抑制できる。
本洗い実行処理は、電解水生成洗い処理で洗浄タンク6、第1および第2連通路45,46、電解ユニット30等に溜められた水を利用する。電解水生成洗い処理で溜められた水が、本洗い実行処理での所定の水位にまで達していない場合には、この水位まで給水される。本洗いでは、洗浄ポンプ9は、所定時間、例えば、5分間運転される。そして、ヒータ24が通電されて、水を常温から所定温度、例えば、60℃に達するまで温める。洗浄ポンプ9が運転される間、ヒータ24により水温を保ちつつ、電解水を含む高温の洗浄液で洗浄が行われる。その後、排水される。
【0064】
本洗いでは、電解水のアルカリ成分の作用、次亜塩素酸やそのイオンの作用、および高い水温の作用により、特に、洗浄中に水温を徐々に上げることにより、蛋白質、でんぷん等の汚れを効率よく分解洗浄する。すなわち、比較的低温の電解水により茶渋や蛋白質を効率よく洗浄する。次亜塩素酸は、30℃以下の温度で洗浄効果が高い。その後の比較的に高温の電解水により、でんぷんや油汚れを効率よく洗浄することができる。
【0065】
上述のように、予洗で大まかな汚れを落として外部に排出し、本洗いでは、予洗で落ちずに食器に残った汚れのみに電解水を噴射させて、電解水を効果的に利用して、洗浄効果を高めることができる。すなわち、予洗で落ちた汚れと電解水との必要以上の反応を防止できるので、このような反応を原因とする電解水の洗浄効果の低下を防止できる。さらに、電解水生成洗い処理で電解水を含む洗浄液を間欠的に食器に吹きつけるようにしているので、本洗いでは、食器に残っている汚れが落ち易くなり、その結果、本洗いを短時間で済ますことができる。
【0066】
第1および第2のすすぎ実行処理は、給水機構8を開き洗浄タンク6に水を溜めてすすぎを行う。洗浄ポンプ9は、所定時間、例えば、1分間運転され、ヒータ24は通電されずに常温の水ですすぎが行われる。その後、排水される。
第3のすすぎ実行処理は、給水機構8を開き洗浄タンク6に水を溜めてすすぎを行う。ヒータ24が通電されて、水を所定温度、例えば、70℃に達するまで温める。そして、洗浄ポンプ9は、所定時間、例えば、20分間運転され、その間、ヒータ24は通電されて、水温を保ちつつ、高温のすすぎ水ですすぎが行われる。高温のすすぎ水により、殺菌効果を得られ、また、仮に頑固な油汚れが残っていたとしても、確実に落とすことができる。その後、排水される。
【0067】
このように、洗浄ポンプ9と連動して電解ユニット30に通水できるので、乾燥時以外の全行程で電解ユニット30内を洗浄でき、電解促進剤を原因とする錆の発生を防止できる。また、残菜の付着を抑制できるので、残菜を原因とする電解効率の低下を抑制できる。また、スケールの付着を抑制できるので、スケールを原因とする電極32同士の短絡や、電解効率の低下を抑制できる。また、電解水が電解ユニット30内部に残ることを抑制できるので、耐久性を高めることができる。
【0068】
複数回のすすぎ実行処理(第1〜第3のすすぎ実行処理)により、洗浄タンク6内に付着している電解促進剤も確実に外部に排出できて、例えば、洗浄タンク6内の錆の発生を防止できる。
なお、すすぎ時(第1〜第2のすすぎ実行処理)に電解ユニット30を動作させ、電解水を用いてすすぎを行ってもよい。これにより、食器の除菌を行うことができる。
【0069】
乾燥実行処理は、送風装置25を所定時間、例えば、20分間運転し、その間ヒータ24が通電されて、温められた空気流で食器の乾燥が行われる。
また、制御部60は、洗剤コースが選択されたときには、電解水生成洗い処理を省略して、本洗い以外の上述の各処理を同様に実行する。洗剤コースの本洗いでは、所定水位まで給水し、洗剤を用いて、より長時間をかけて食器を洗浄する。
【0070】
このように本発明の実施形態によれば、電解水を用いて、洗剤を用いずに食器を洗浄できる。また、循環路29により繰り返し洗浄液を入れ換えつつ、電解ユニット30で電気分解できるので、濃い電解水を得られて、洗浄効果を高くすることができる。電解ユニット30には、洗浄ポンプ9により循環路29を通じて洗浄、すすぎ中に、おおむね常時通水されて、残菜やスケールの付着を抑制できる。
【0071】
なお、上述の流量抑制手段としては、循環路29の狭くされた一部となる開口43と、洗浄ポンプ9を間欠的に動作させる制御内容との両方が用いられていたが、何れか一方だけを利用することも考えられる。また、流量抑制手段を利用しない構成も考えられ、例えば、電解ユニット30への電流量を大きくしたり、通電時間を長くしたりして、濃い電解水を得ることも考えられる。
また、電解ユニット30は、循環路29の途中の他、端部に配置してもよい。また、上述の実施形態では循環路29は洗浄液を洗浄ポンプ9から流出するようにしていたが、これには限定されない。例えば、洗浄液を洗浄タンク6の下部から洗浄ポンプ9に吸い込まれて流入させる通水路を設けてもよい。この通水路としては、例えば、水溜め部17と電解槽31の入口33とを連通する管と、電解槽31と、吸込管28と電解槽31の出口34とを連通する管とにより構成できる。洗浄ポンプ9が運転されると、水が、通水路を、水溜め部17から電解槽31を経て吸込管28へと流れる。また、上述の通水路に、上述の流量抑制手段を組み合わせても良い。
【0072】
また、上述の説明では、電解促進剤として、塩化化合物と、アルカリ金属を含む化合物との両方を含む場合を説明したが、これには限定されない。すなわち、両方を含む場合には、上述の洗浄効果を高くできて好ましい。その一方で、軽い汚れだけを対象として洗浄効果をあまり高くする必要のない場合がある。これに対応して軽い汚れのための洗浄コースを設定する場合には、電解促進剤として、塩化化合物と、アルカリ金属を含む化合物との何れか一方のみを用いることや、いずれの電解促進剤も用いないようにすること(この場合には、水道水をそのまま電解することになる。)も考えられる。また、塩化化合物のみからなる電解促進剤と酵素とを組み合わせて用いること、アルカリ金属を含む化合物のみからなる電解促進剤と酵素とを組み合わせて用いること、および酵素のみを含む薬剤だけを投入するようにすることも考えられる。
【0073】
また、本発明を、卓上型の他、流し台に収容するビルトイン型等の他のタイプの食器洗い機に適用してもよい。また、食器洗い機1の平面形状を、前後に長くする他、左右に長くしてもよいし、ほぼ正方形に形成してもよい。
その他、本発明の特許請求の範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す食器洗い機の概略構成の側面一部断面図。
【図2】図1の食器洗い機の水路および電気的構成のブロック図。
【図3】図1の食器洗い機の電解ユニット近傍の正面一部断面図。
【図4】図1の食器洗い機の電解ユニットおよびその近傍部分の側面一部断面図。
【図5】図1の食器洗い機のフローチャート。
【図6】図1の食器洗い機の動作のタイミングチャート。
【符号の説明】
1 食器洗い機
6 洗浄タンク
9 洗浄ポンプ(汲み出し手段)
13 洗浄タンクの底部(洗浄タンクの下部)
18 フィルタ
29 循環路(通水路)
30 電解ユニット
31 電解槽(循環路)
43 開口(循環路の狭い一部分、流量抑制手段)
45 第1連通路(循環路)
46 第2連通路(循環路)
52 添加ユニット
60 制御部(流量抑制手段)
P 食器
Claims (4)
- 洗浄タンク内に洗浄液を溜め、この洗浄液を洗浄タンクに収容した食器に向けて噴射することにより食器を洗浄する食器洗い機であって、
食器に噴射されて洗浄タンク下部へと落下する洗浄液を汲み出して食器に向けて噴射させる汲み出し手段と、
汲み出し手段により汲み出される洗浄液の一部を流し、汲み出し手段と洗浄タンク下部とを連通する通水路と、
通水路に備えられこれを流れる洗浄液を電気分解することにより電解水を生成する電解ユニットと、
通水路を流れる洗浄液の流量を所定量以下に抑制する流量抑制手段とを有し、
流量抑制手段は、電解ユニットにおいて電解水の電解される度合いが高まるように、通水路の一部を狭くすることにより構成したことを特徴とする食器洗い機。 - 請求項1に記載の食器洗い機において、
上記通水路は、汲み出し手段により汲み出される洗浄液の一部を洗浄タンク下部へ戻す循環路からなることを特徴とする食器洗い機。 - 請求項2に記載の食器洗い機において、
上記洗浄タンクには、食器に噴射された洗浄液が落下して洗浄タンク下部に溜まる際に、その洗浄液を濾過するフィルタが設けられ、
循環路は、濾過された後の洗浄液に電解水が混ざるように洗浄液を洗浄タンク下部に戻すことを特徴とする食器洗い機。 - 請求項1から3の何れかに記載の食器洗い機において、
上記電解ユニットに電解促進剤を投入するための添加ユニットをさらに有することを特徴とする食器洗い機。
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