JP4030192B2 - 杭圧入方法、その装置及び杭 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤に鋼矢板等の杭を圧入する際に、杭の圧入を容易にするために地盤の削孔を並行して行う杭圧入方法、その装置及び杭に関する。
【0002】
【従来の技術】
土木、建築作業現場で鋼矢板を地盤に圧入する場合、図10に示すような杭圧入引抜機が用いられる。この杭圧入引抜機1は、複数の既設鋼矢板Pを挟持する複数のクランプ3を下部に備えたサドル2と、サドル2上に設けられ上面にマスト4を立設したスライドベース6と、マスト4に沿って鋼矢板P1を挟持して上下動するチャック7を備えた昇降体8とから成っている。
そして、クランプ3で複数の既設鋼矢板Pを挟持することにより、鋼矢板P1の地中圧入又は引き抜きを行う場合の反力を得ると共に、杭圧入引抜機1本体を前後に移動させる時には、昇降体8のチャック7で地中圧入又は引抜き途中の鋼矢板P1を挟持した状態で、クランプ3を解放してサドル2を上昇させ、スライドベース6に対して前後方向に移動させるようになっている。
【0003】
鋼矢板P1はこのような杭圧入引抜機1によって地盤に圧入されるが、当該地盤が砂礫等を含む硬質地盤である場合には、鋼矢板P1の圧入を容易にするために、前記圧入と並行して地盤の削孔をするオーガ装置10が杭圧入引抜機1に取り付けられる。オーガ装置10は、円筒状のケーシング11と、ケーシング11に内装され図示しないモータによって回転駆動されるオーガスクリュ12とから成り、同図に示すように昇降体8に取り付けられている。これらの機械装置によって、図11に示すように鋼矢板P1とオーガ装置10のケーシング11が隣接した状態で地盤に挿入される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この状態で鋼矢板P1の圧入とオーガスクリュ12による地盤の削孔とが並行して進められてゆくと、次のような問題が生じる。即ち、鋼矢板P1のウェブ14及びフランジ15によって囲まれる空間とケーシング11との間に入ってくる土砂等16の圧力が次第に高まってゆき、その圧力によってケーシング11の進入方向の軸線が所定位置から偏位するため削孔位置がずれ、ケーシング11が鋼矢板P1から図11の上方に向かって離反する。
そのため、オーガスクリュ12の駆動機構に無理がかかり、その機械寿命を縮めることになる。また、ケーシング11が偏位する結果、鋼矢板P1の圧入位置も所定位置よりずれて鋼矢板P1圧入の施工精度が下がることとなる。そして、このように鋼矢板P1の圧入位置がずれる結果、鋼矢板P1を順次連結して打設していく場合には、そのようなずれによって鋼矢板P1及び既設の鋼矢板Pは、その各セクション17が変形ないし破壊されるに至るので、圧入作業に支障を来し且つ鋼矢板の再使用寿命が短くなる。
【0005】
本発明は、以上のような従来の問題点に鑑みてなされたもので、杭の圧入と並行して地盤を削孔するオーガスクリュのケーシングが土砂等の圧力により所定の軸線位置から偏位する即ち杭から離反するのを防止することにより、オーガ装置の機械寿命を延ばすと共に、杭の圧入作業を円滑にし、杭の施工精度を上げることを目的とする。更に、本発明は、杭の再使用寿命を長くすることをも目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤への杭の圧入時にオーガスクリュと前記オーガスクリュが内装されたケーシングとから成るオーガ装置によって前記杭の近傍の地盤を削孔する杭圧入方法において、前記杭によって前記ケーシングの進入方向の軸線が所定位置に保持されるよう規制して、前記杭の圧入及びオーガスクリュによる削孔を行い、前記ケーシングに係合部材が設けられ、前記係合部材を前記杭のセクションに係合させることにより前記軸線が所定位置に保持されるよう規制することを特徴とする。
本発明は、地盤への杭の圧入時に、前記杭の近傍の地盤を削孔するオーガスクリュと前記オーガスクリュが内装されたケーシングとから成るオーガ装置において、前記ケーシングに前記杭との係合部材が杭の全長に亘って設けられていることを特徴とする。
本発明は、地盤への杭の圧入時に、前記杭の近傍の地盤を削孔するオーガ装置を構成するオーガスクリュが内装されたケーシングに設けられた係合部材と係合する係合部材が杭に設けられていて、上記ケーシング又は杭に設けられた係合部材を杭の全長に亘って、すなわち杭の長さと同じ長さに亘って設けたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図1から図9を参照しつつ、本発明方法を説明する。これらの図において、前記図11に示した要素と同一の要素には同一の符号を付し、重複する点については適宜説明を省略する。
【0008】
図1及び図2は本発明の実施例1を示すもので、符号11はオーガ装置20のケーシングで、それ自体は従来と同様のものであるが(以下の実施例においても同じ)、本発明の実施のために次のような新規な構造を有している。即ち、ケーシング11の側面に、圧入する鋼矢板P1の両セクション17に向かって対称に延びる一対の係合部材としてのリブ22,22が溶接等の手段により付設されている。リブ22,22の各自由端部は鋼矢板P1のセクション17と噛み合う形状の曲げ部22a,22aに形成されている。このリブ22は図2に示すように、ケーシング11の下端部に適宜長さ(本実施例では約30cm)だけ設けられている。一方、鋼矢板P1は、前記図11に示した従来と同様の構造を有するものである。
【0009】
このように構成されたケーシング11を有するオーガ装置20の駆動と共に鋼矢板P1は次のように地盤に圧入される。まず、前記のような杭圧入引抜機が砂等を含む硬質の地盤に設置され、次いで、ケーシング11のリブ22の曲げ部22aを圧入する鋼矢板P1のセクション17に係合させた状態で、両者を杭圧入引抜機にセットする。そして、杭圧入引抜機のチャックによって鋼矢板P1を下降させると共にオーガ装置20を駆動して、前記鋼矢板P1の圧入及びオーガスクリュ12による削孔を行う。
【0010】
そうすると、鋼矢板P1の圧入と同時に鋼矢板P1のセクション17を案内としてこれとリブ22の曲げ部22aとが係合した状態で、ケーシング11が地中に進入してゆくと、鋼矢板P1とケーシング11とリブ22とによって囲まれる空間に土砂等16が入ってくる。そのため、土砂等16の圧力によって、ケーシング11を鋼矢板P1から離反させようとする力が作用するが、ケーシング11は、リブ22によって鋼矢板P1と係合しているので、鋼矢板P1による規制が働き、進入方向の所定の軸線位置に保持される。
従って、この土砂等16の圧力によってケーシング11が鋼矢板P1から離反せず、所定の位置で削孔が行われる。そのため、オーガ装置20の駆動機構に無理がかからない。また、ケーシング11の軸線が偏位しないので、鋼矢板P1は所定の位置に確実に圧入され、且つ、鋼矢板P1のセクション17の変形ないし破壊が起こらない。なお、この実施例では鋼矢板P1は、その両セクション17がケーシング11のリブ22と係合するので、1本打ちの場合に限られることとなる。
【0011】
また、鋼矢板の圧入時に、ケーシングを引き抜きつつその引抜き抵抗力を利用して鋼矢板を圧入し、圧入後こんどはケーシングを単独で下降させて先行削孔する場合がある。この場合は、鋼矢板P1とケーシング11は独立して別々に上下動することになるため、ケーシング11のリブ22は前記実施例1記載の長さより長くする必要があり、鋼矢板P1の全長と同じ長さに設けることが好ましい。
【0012】
実施例2は、図3及び図4に示すように、オーガ装置30のケーシング11に、鋼矢板P1の両セクション17方向に向かって対称に延びる一対のリブ31,31が溶接等の手段により付設されている。このリブ31,31は平坦な板状であり、ケーシング11の軸方向全長にわたって形成されている。
一方、鋼矢板P1の両セクション17の内側部分にも溶接等の手段により一対のガイド32,32が付設されている。ガイド32は平坦な板状に形成され、リブ31の外側に位置するように設けられている。ガイド32は鋼矢板P1の下端部に適宜長さで設けられればよいが、本実施例では、約30cmとしている。
この場合も前述のように鋼矢板とケーシングが別々に上下動することがあるため、リブ31及びガイド32を鋼矢板の長さと同じ長さに構成すると良い。
リブ31及びガイド32は、前述のようにいずれも平坦な形状であるため、両者の係合状態は面接触となる。なお、次に述べる実施例3以降の各実施例においても、リブの付設長さ及びガイドの付設位置及び長さは、本実施例について述べたところと同様である。
【0013】
このような構成によれば、鋼矢板P1の圧入と同時に鋼矢板P1のガイド32にリブ31が沿いつつケーシング11が地中に進入し、鋼矢板P1とケーシング11との間に土砂等が入ってきて、その圧力がケーシング11にかかっても、ケーシング11は、リブ31がガイド32によって押さえられた状態で鋼矢板P1と係合しているので、鋼矢板P1から離反することがなく、前記実施例と同様な作用効果が得られる。
なお、この実施例では鋼矢板P1の両セクション17は、ケーシング11との係合部分として機能させていないので、1本打ちの場合のみならず複数本を連結する連続打ちも可能である。これは以下に述べる実施例3以降の実施例についても同様である。そして、そのような連続打ちの場合でも、鋼矢板P1は所定位置に圧入されるから、鋼矢板P1及び既設の鋼矢板Pの各セクション17の変形ないし破壊が生じない。この効果も実施例3以降の実施例についても同様である。
【0014】
実施例3は、図5に示すように、オーガ装置40のケーシング11に付設されるリブ41は前記実施例2と同様に平坦な板状である。一方、鋼矢板P1には横断面コ字状のガイド42,42が付設されており、その凹部42a,42aにリブ41,41が挿入された状態でケーシング11と鋼矢板P1とが係合する。この実施例に特有な作用効果として、前記の係合態様によって、施工中にケーシング11が鋼矢板P1に対して図中左右方向にずれることが防止される。このようなずれが防止される点については、次の実施例4以降の実施例についても同様である。
【0015】
実施例4は、図6に示すように、オーガ装置50のケーシング11に付設されるリブ51,51は前記実施例3と同様に平坦な板状である。鋼矢板P1に付設されるガイド52,52は、横断面C字状に形成されており、その凹部52a,52aにリブ51,51が挿入された状態でケーシング11と鋼矢板P1とが係合する。
【0016】
実施例5は、図7に示すように、オーガ装置60のケーシング11に付設されるリブ61,61は、鋼矢板P1の両セクション17,17方向に向かって対称に延び先端部が直角に曲げられた曲げ部61a,61aを有する、横断面L字形に形成されている。一方、鋼矢板P1の両セクション17の内側部分には、リブ61,61と係合するようにその曲げ部61a,61aとは逆方向に直角に曲げられた曲げ部62a,62aを有する、横断面L字形のガイド62,62が付設されている。ガイド62,62は、リブ61,61の外側に位置するように設けられている。この実施例においては、リブ61の曲げ部61aとガイド62の曲げ部62aとが互いに引っ掛け合う状態で、ケーシング11と鋼矢板P1と係合する。
【0017】
実施例6は、図8に示すように、オーガ装置70のケーシング11に付設されたリブ71,71の曲げ部71a,71a及び鋼矢板P1に付設されたガイド72,72の曲げ部72a,72aは、前記実施例6の曲げ部よりも曲げ角度を大きくしてあるため、両者の係合度が高くなっている。この状態でケーシング11と鋼矢板P1とが係合する。
【0018】
実施例7は、図9に示すように、オーガ装置80のケーシング11に付設されるリブ81,81は鋼矢板P1のウェブ14の両端部に近接しており、鉤状の曲げ部81a,81aが形成されている。一方、鋼矢板P1に付設されるガイド82,82は、ウェブ14とフランジ15との境界部に位置し、鉤状の曲げ部82a,82aが形成されている。リブ81の曲げ部81aとガイド82の曲げ部82aとがかみ合った状態でケーシング11と鋼矢板P1とが係合する。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の杭圧入方法及び装置によれば、オーガ装置におけるオーガスクリュを内装したケーシングの軸線が杭の圧入時に偏位しないので、オーガ装置の駆動機構に余分な負担をかけることなく、杭を所定の位置に迅速正確に圧入することができるため圧入作業の向上がはかれる。さらにオーガ装置の機械寿命が長くなる。また、杭は所定の位置に圧入されるため複数連結する場合でもセクションに変形、破壊が生じることがなくなり再使用のための寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を示す横断面図
【図2】図1のケーシングのII矢視図
【図3】本発明の実施例2を示す横断面図
【図4】図3のIV矢視図
【図5】本発明の実施例3を示す横断面図
【図6】本発明の実施例4を示す横断面図
【図7】本発明の実施例5を示す横断面図
【図8】本発明の実施例6を示す横断面図
【図9】本発明の実施例7を示す横断面図
【図10】従来の杭圧入引抜機を示す正面図
【図11】図10のX−X線拡大断面図
【符号の説明】
11 ケーシング
12 オーガスクリュ
17 セクション
20,30,40,50,60,70,80 オーガ装置
22,31,41,51,61,71,81 リブ
22a,61a,62a,71a,72a,82a,81a 曲げ部
32,42,52,62,72,82 ガイド
42a,52a 凹部
P1 鋼矢板
Claims (3)
- 杭の圧入時に、オーガスクリュとケーシングとから成るオーガ装置によって杭の近傍の地盤を削孔する杭圧入方法において、
前記ケーシングに係合部材を設け、この係合部材を前記杭のセクションに係合させることにより、前記ケーシングの進入方向の軸線が所定位置に保持されるよう規制して、前記杭の圧入及びオーガスクリュによる削孔を行うことを特徴とする杭圧入方法。 - 杭の圧入時に、杭の近傍の地盤を削孔するオーガスクリュとケーシングとから成るオーガ装置において、前記ケーシングに前記杭との係合部材が杭の全長に亘って設けられていることを特徴とするオーガ装置。
- 杭の圧入時に、杭の近傍の地盤を削孔するオーガ装置を構成するオーガスクリュが内装されたケーシングに設けられた係合部材と係合する係合部材が設けられていて、前記ケーシング及び杭に設けられた係合部材が杭の全長に亘って設けられていることを特徴とする杭。
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JP20105298A JP4030192B2 (ja) | 1998-06-11 | 1998-06-11 | 杭圧入方法、その装置及び杭 |
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