JP4029024B2 - 固形具材入り食品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固形具材入り食品の製造方法に関し、特に、中華丼、牛丼、パスタ、スープ等の固形具材を容器に充填殺菌して固形具材入り食品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子レンジやオーブンで加熱することにより簡単に調理することができる中華丼、牛丼、パスタ等の種々のレトルト食品や冷凍食品が多く製造されている。これらの食品の肉や野菜等の固形具材は、衛生上の必要から殺菌され、その後1食分の分量を計量して容器や袋に分配されて包装される(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、殺菌した固形具材を無菌下で分配して容器や袋に移し替えるためには、大掛かりな無菌充填装置が必要となるため、コストがかさみ、操作が煩雑になる。
【0004】
特許文献2には、1食分の固形物をカップに充填して蒸気殺菌し、クリーンブース内で別に殺菌処理された調味液を添加して袋又は容器に密封包装するための方法及び装置が開示されているが、カップに入れた固形具材を蒸気殺菌すると、具材の肉汁、野菜の水分等のドリップ類がカップの底に溜まり、蒸気の拡散が阻害され、殺菌時の温度上昇が律速されたり、またドリップが突沸したりすることがある。
【0005】
ドリップの問題を解決するため、容器の底面に設けた孔からドリップを排出して固形具材を殺菌し、その後、殺菌した固形具材を無菌下で別の包装容器に移し替え、調味料を入れて包装容器全体を無菌下でシールする方法や(例えば特許文献3参照)、蒸煮処理した固形食品を製品容器に充填し、開放系加熱殺菌処理を施して無菌雰囲気内で製品容器を密閉する殺菌済み固形食品の製造方法が考案されている(例えば特許文献4参照)。
【0006】
しかし、固形具材の商業的無菌を達成するためには、通常130℃を超える高温による加熱を必要とするが、この高温加熱により熱変性したタンパク系の固形具材が容器の側面に付着するため、固形具材を別の包装容器や皿に移し替えるために容器を逆さにしても具材が容易に剥離せず、容器内に残ってしまう。また、殺菌効率を高め、突沸を防ぐために、固形具材の肉汁、野菜の水分等のドリップ類が排出されると、熱変性した固形具材の付着はより強力なものとなる。特に、豚肉、牛肉などの肉類、海老、貝などの魚介類は、容器に強力に付着する。無菌下において、へら等を用いてこれらの付着物をかき出すことは困難である一方、付着物が多いと固形具材が無駄になり、別容器に移した際に、固形具材の重量不足のために製品が不良品となってしまうおそれもある。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−199410公報
【特許文献2】
特許第2907763号公報
【特許文献3】
特許第3130697号公報
【特許文献4】
特開2000−316542公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、殺菌した固形具材を個別容器に移し替える必要がなく、固形具材の容器側面への付着の問題が生じない、容器に充填した固形具材入り食品を製造する方法を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、殺菌時間が短く、固形具材や調味液本来の食感や風味を保つことができる、容器に充填した固形具材入り食品を製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1)底面、又は底面及び側面の一部又は全体に孔を設けた内容器に固形具材を充填して殺菌する工程、内容器の一部又は全部を無菌下において滅菌済み外容器に収納し、一体型容器を形成する工程、内容器及び/又は外容器に必要に応じて殺菌済みの調味液を添加する工程、及び無菌下において一体型容器の一部又は全部をシールする工程を含む、容器に充填した固形具材入り食品の製造方法。
(2)内容器に充填した固形具材を殺菌する工程が、空気を減圧除去する工程、高圧蒸気を導入して固形具材を加熱殺菌する工程、及び減圧して固形具材を真空冷却する工程を含む、上記(1)記載の、容器に充填した固形具材入り食品の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を各工程毎に図面を用いて説明する。
1.本発明に係る固形具材入り食品の製造方法において用いる容器
図1(a)に、本発明に係る固形具材入り食品の製造方法において用いる一体型容器10の斜視図を示す。図1(b)は、内容器20を外容器30に収納して一体型容器10を形成するところを示した図である。
【0012】
図2は、内容器20の斜視図である。内容器20は、上方開放型の容器であり、側面21に囲まれた底面22上に固形具材を保持することができる。内容器の大きさは、製造する食品に適合するように選択することができるが、1食分の食品に使用される固形具材が入る大きさであることが好ましく、例えば角型の形状の内容器であれば、通常、5〜15cm×5〜20cm、深さ2〜10cmのものが選択される。
【0013】
内容器の形状に特に制限はなく、水平横断面が四角形、三角形、六角形等の角型、円形又は楕円形である等、任意の形状を選択することができる。また、内容器20の側面21が底面22から上方に向かって垂直に伸長してもよいし、一定の角度をもって(例えば上方に向かって拡開するように)伸長してもよい。
【0014】
また、図2に示すように、内容器20の上方開口部の一部又は全部にフランジ23を設けることが好ましい。フランジ23は、食品を食べ終わった後に外容器30から内容器20を取り外して洗浄する際の取っ手として利用することができる。また、フランジ23を設けることにより、内容器20の強度が高まる。さらに、固形具材の殺菌後に一体型容器10をシールする工程において、フランジ23の全部又は一部を、シールの接着部分の一部とすることもできる。
【0015】
また、必要に応じて内容器20の底面の任意の場所に、底面から上方に向かって伸長する任意の高さの仕切りを設けることができる(図示せず)。仕切りを設けることにより、固形具材を分離して配置したり、内容器20に入れた固形具材の位置を略固定したりすることが可能となる。
【0016】
図2に示すように、内容器20の底面には、複数の孔24が設けられている。孔24を設けることにより、高圧蒸気殺菌時のための蒸気を内容器20内に導入し、固形具材の全体に速やかに満遍なく行き渡らせることが可能となる。また、固形具材から発生する肉汁、野菜の水分等のドリップを孔24から排出することができる。ドリップを排出することにより、固形具材の熱伝導性が高くなり、固形具材の殺菌の効率が向上して殺菌時間が短縮され、固形具材本来の食感や風味が保たれ、また過加熱による容器の変形を防ぐことができる。さらに、固形具材の殺菌後に、殺菌に用いた殺菌釜等において減圧冷却した際のドリップの突沸を防ぐことができる。
【0017】
内容器20の深さが深い場合や固形具材の量が多い場合は、底面22に加えて、一つ以上の側面にも孔を設けることができる(図2参照)。側面21にも孔24を設けることにより、より速やかに固形具材の全体に蒸気を行き渡らせることが可能となる。孔24は、底面又は底面及び側面の全面に設けることもできるし、部分的に設けることもできる。また、孔24の開孔率は、孔24の面積の総和が、内容器の底面及び側面を合計した面積の10%〜80%であることが好ましい。
【0018】
内容器20に固形具材を保持するために、孔24は、固形具材が落下しない程度の大きさとする必要がある。例えば、中華丼の場合は2〜5mm、牛丼の場合は2〜8mmとすることが好ましい。孔24の形状は、円、楕円、角型等、任意の形状を選択することができるが、円形にすることにより、固形具材が孔から落下するのを防ぎ、かつ殺菌のための高圧蒸気の導入やドリップの排出を良好にすることができる。また、孔24は、格子状のように規則的な配置に設けることもできるし、ランダムに設けることもできる。
【0019】
内容器20は、殺菌工程における高圧蒸気による加熱、加熱後の減圧冷却、電子レンジやオーブンによる加熱、冷凍庫での冷却等の温度変化に耐え得る材料を用いて製造する必要がある。また、耐寒衝撃性、保香性能、耐油性等に優れた材料であることが好ましい。天丼のように、油を使用した固形具材を用いる場合は、加熱により油が高温となる可能性があるため、特に耐油性に優れた容器が必要となる。具体的には、内容器20は、−20〜150℃の間の温度に耐える耐温性を有する材料を用いることが好ましい。
【0020】
このような内容器20の材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂を使用することができるが、特にポリプロピレンが好ましい。また、電子レンジで加熱を行う食品を収納する場合は、金属を含まない材料を用いることが好ましいが、オーブンによる加熱を行う場合は、アルミ、スチール等の金属、紙等を用いることができる。さらに、加熱の方法に応じて、適宜、樹脂、金属又は紙等を積層した多層容器を選択することもできる。また、複数の異なる固形具材を含む食品の場合は、特に高い温度で加熱することが必要な具材を配置する場合についてポリプロピレン等の材料を用い、高温での加熱が必要とされない具材の場合にはポリエチレン等の材料を用いて内容器20を製造する等、加熱殺菌や電子レンジ等での加熱時における温度に適した材質を選択すればよい。
さらに、固形具材の付着を少なくするために、内容器20の底面や側面の内側に、テフロン加工等の加工を施すことも好ましい。
【0021】
図3に、外容器30の斜視図を示す。外容器30は、内容器を収納することができる任意の大きさ及び形状に形成される。従って、内容器20が角型である場合は、外容器30もそれに対応する角型とされ、内容器20が円形である場合は、外容器30もそれに対応する円形とされる。外容器30の大きさは、内容器20及び製造する食品に合わせて選択することができる。
【0022】
また、図3に示すように、外容器30の上方開口部の一部又は全部にフランジ33を設けることが好ましい。フランジ33は、固形具材の殺菌後に一体型容器10をシールする工程において、シールの接着部分として使用する。なお、内容器20を外容器30内に収納するために、内容器20にもフランジ23を設けて後述のようにフランジ33と係合させる場合は、外容器30のフランジ33の幅を内容器20のフランジ23の幅よりも広く形成する必要がある。また、外容器30のフランジ33も、消費者が一体型容器10を加熱して固形具材入り食品を食べる際に取っ手として利用したり、外容器30の強度を高めたりすることができる。
【0023】
外容器30の材料は、内容器20同様に、耐温性、耐寒衝撃性、保香性能、耐油性等に優れていることが好ましいが、さらに、固形具材入り食品を保存する場合の長期保管性能に優れた材料を用いる必要がある。このため、外容器30は、酸素透過性が低い材料や、水蒸気透過性の低い材料等と組み合わせた積層材料を用いて作ることが好ましい。酸素透過性の低い材料等を用いる代わりに、外容器30をアルミ積層フィルムで被覆することも可能である。また、外容器30の殺菌方法として、過酸化水素水を用いた殺菌や、放射線殺菌、ガス殺菌等の冷殺菌方法を選択する場合は、内容器20よりも耐熱性の低い材料を用いることができる。この場合、外容器30は、−20〜120℃の間の温度に耐える耐温性を有していればよい。外容器30の材料として、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びこれらにナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体を積層させた材料等を使用することができる。特に、外容器30をポリプロピレンにエチレンビニルアルコール共重合体を積層させたラミネート容器とすることが好ましい。
【0024】
内容器20は、図1(a)及び(b)に示すようにその一部又は全体が外容器30に収納される。外容器30に収納した内容器20は、当業者に周知の方法で外容器30と係合させることができる。内容器20と外容器30との係合の強度は、消費者が食品を食べる際に、内容器20内の固形具材入り食品をご飯等の上に移すべく一体型容器10を傾けた際に、意図せずに内容器20が外容器30から容易に分離してしまうことがない程度であることが必要とされる。一方、内容器20と外容器30との係合は、一体型容器10を廃棄又は回収、再利用するために、使用後に内容器20と外容器30とを分離して洗浄し消費者が手で容易に外すことができる強度であることが望ましい。係合手段として、例えば、内容器20及び/又は外容器30の側面に、波型やボタン型の表面凹凸を設けることにより内容器20と外容器30とを係止する方法、内容器20及び/又は外容器30の可撓性を利用する方法、内容器20の側面と外容器30の側面の接触部分における摩擦を利用する方法、内容器20と外容器30の底面の一部に係合部を設けて係合させることにより内容器20と外容器30とを係止する方法、又は熱溶着や接着剤を用いて内容器20と外容器30の側面及び/底面を軽度に接着する方法等を用いることができる。
【0025】
また、一実施例において、一体型容器10の部分拡大断面図である図4(a)に示すように、内容器20のフランジ23を外容器30のフランジ33と係合させることができる。この場合、後述の一体型容器をシールする工程において、外容器のフランジ33のみをフィルムと接触させて一体型容器10をシールする場合は、内容器20のフランジの水平位置を、外容器30のフランジの水平位置よりも低い位置に配置することが好ましい(図4(a)参照)。さらに、一体型容器10の他の実施例の部分拡大断面図である図4(b)に示すように、内容器20にフランジを設けずに内容器20を外容器30に収納することもできる。
【0026】
2.底面、又は底面及び側面の一部又は全体に孔を設けた内容器に固形具材を充填して殺菌する工程
まず、内容器20に所望の固形具材を充填する。このとき、殺菌時の熱の伝導を均一にするために、固形具材を略均一な厚さで充填することが好ましい。また、熱伝導度の異なる固形具材を共に充填する場合は、熱の伝わり難い固形具材の大きさを小さくすることにより、より短時間での殺菌が可能となる。
【0027】
なお、充填する固形具材は、調理済み又は未調理のいずれであってもよい。調理済みの固形具材を用いる場合、消費者は、購入した最終製品を電子レンジ等で単に温めることにより、当該食品を食べることができる。また、未調理の固形具材を用いた場合は、製造工程においてさらに固形具材を調理する工程を設けることもできるし、またここで述べる殺菌時の加熱時間を長くする等の手段により、殺菌と同時に調理を行うこともできる。また、消費者が最終製品を電子レンジやオーブン等によって加熱する等の手段により必要な調理を行うようにすることもできる。
【0028】
固形具材を充填した後、殺菌釜、オートクレーブ、蒸気殺菌器、圧力釜等の装置を用いて、固形具材を入れた内容器の高圧蒸気による殺菌処理を行う。殺菌は、衛生上の理由から、105℃以上の雰囲気温度で行う必要があるが、熱による固形具材の食感や風味の劣化を少なくするために、130℃以上の雰囲気温度中において行うことが好ましい。殺菌時間は、固形具材の性質、pH、大きさ、使用する殺菌装置、容器の形状等により異なるが、固形具材の熱劣化を防ぐために、できる限り短時間で行うことが望ましい。殺菌条件は、固形具材の性質等により異なるが、少なくとも121℃、4分間相当以上殺菌が望ましい。なお、本発明の方法では、内容器20に設けられた孔24より予めドリップが排出されているため、ドリップが内容器20の底面に溜まって蒸気の拡散が阻害され、殺菌時の温度上昇が律速されるということがない。
【0029】
殺菌釜を用いて殺菌処理を行う場合は、殺菌前に釜内の空気を脱気することにより、固形具材への熱伝導を高め、短時間で殺菌を行うことが可能となり、固形具材の食感や風味の熱劣化が少なくなる。殺菌釜として、例えば株式会社日阪製作所製の短時間調理殺菌装置(RIC)を利用することができる。
【0030】
殺菌終了後は、熱劣化による固形具材の食感等の劣化を防ぐために、できるだけ速やかに固形具材の温度を下げる。好ましくは、1分以内に殺菌釜を常圧に戻す。より好ましくは、常圧に戻した後にさらに減圧を続けて真空冷却を行う。真空冷却を行うことにより、より固形具材の食感や風味の熱劣化を少なくすることができる。また、真空冷却を行うと、固形具材の温度が30〜60℃に低下するため、次工程を安全に実施することができる。なお、本発明の方法においては、固形具材のドリップ等は予め孔24から排出されているため、殺菌釜の減圧時にドリップが突沸するというおそれがない。
【0031】
3.内容器を無菌下において滅菌済み外容器に収納して一体型容器を形成する工程
内容器20内の固形具材の殺菌が終了し、固形具材の温度が十分に下がった後、無菌下において内容器を取り出し、過酸化水素水を用いた殺菌、放射線殺菌、ガス殺菌等により予め滅菌した外容器30に収納して一体型容器を形成する。
【0032】
殺菌釜を使用して固形具材の殺菌を行った場合は、殺菌釜の排出口にクリーンルームを接続して内容器20を取り出し、該クリーンルーム中において内容器20と予め滅菌した外容器30内に無菌的に収納することができる。
【0033】
本発明の方法では、このように無菌下において、殺菌済みの固形具材を入れたまま内容器20を外容器30に収納するため、内容器20内の固形具材を別容器に分配して移し替える手間が省け、さらに移し替えの際に生じる固形具材の付着の問題が生じない。
【0034】
4.内容器及び/又は外容器に必要に応じて殺菌済みの調味液を添加する工程
一体型容器を形成した後、必要に応じて、タレ、しょうゆ等の予め殺菌した調味液を、ノズルやホースを通じて無菌的に内容器20及び/又は外容器30に添加する。調味液の殺菌は、従来より用いられている熱交換器を使用した方法を用いて行うことができる。また、調味液中に、ノズル等を通過することが可能な大きさの範囲内の香辛料、野菜のみじん切りやミンチ肉を含めることもできる。
【0035】
このように、固形具材を殺菌した後に調味液を入れることにより、固形具材が湿潤状態となり、消費者が食品を食べる頃には付着した固形具材が容易に剥離するため、消費者が固形具材を内容器20から米飯等の入った皿等に移したときに、固形具材が内容器20に付着したまま残ることがない。
【0036】
また、内容器20内の固形具材に予め調味液を添加して殺菌を行う場合と比較して、本発明の方法は、固形具材を直接蒸気殺菌するため、固形具材への熱伝導性が速く、固形具材の食感や風味を良好に保つことができる。さらに、熱交換器により調味液を短時間で殺菌するため、調味液の熱劣化が少なく、調味液の風味や味が良好に保たれる。このために、本発明の方法により固形具材と調味液とを合わせて製造した固形具材入り食品は、食感、風味ともに優れた食品となる。
【0037】
また、内容器20内の固形具材から排出されるドリップ類は、通常そのまま廃棄されるが、固形具材によっては、調味液と混合して旨み成分として利用することも可能である。
【0038】
5.無菌下において一体型容器の一部又は全部をシールする工程
調味液を添加した後、無菌下において、紫外線照射等により予め滅菌した合成樹脂製のフィルム(例えばナイロン、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンのラミネートフィルム等)を用いて、一体型容器の一部又は全部をシールする。例えば図5(a)に示すように、フィルム34を外容器30のフランジ33に接着することにより、外容器30の上方開口部を密封することができる。また、図5(b)に示すように、フィルム34を外容器30及び内容器20のフランジ23の両方に接着することも可能であるが、内容器20のフランジ23が前工程において固形具材等で汚染された場合や、消費者が容易に一体型容器からフィルムをはがすことができるようにする場合等は、内容器20のフランジ23をフィルム34に接触をさせないようにして、フィルム34を外容器30のフランジ33にのみに接着することが好ましい。また、一体型容器の全体をシュリンクフィルム等で覆うことも可能であるが(図示せず)、外容器30のフランジ33とフィルム34とを接着又は密着させる必要がある。
さらに窒素雰囲気下でシールを行うことにより、食品の酸化を防ぎ、賞味期限を長くすることができる。
【0039】
シール後は、容器を無菌雰囲気から開放することができる。また、シール後に容器を反転させたり加温したりすることにより、固形具材と調味液とをなじませることもできる。
【0040】
【実施例】
中華丼の製造方法
チキンエキス1部、ポークエキス0.5部、しょうゆ2.5部、砂糖5部、食塩2部、グルタミン酸ソーダ2部、ジンジャーミンチ0.5部、ニンニクミンチ0.2部、こしょう0.05部、オイスターソース2.5部、食酢0.5部、澱粉4部、及び水79.25部を原料として、常法により調味液を調合した。
【0041】
日阪製作所株式会社製の小容量液体連続殺菌装置RMS−2S−Tを用いて調味液を140℃で10秒殺菌した後に冷却し、40℃まで温度を低下させて無菌容器に入れて保存した。
【0042】
適当な大きさに切った人参20g、ピーマン5g、白菜15g、たまねぎ15g、いか15g、海老16g、豚肉18g、あさり15gを略均一の高さで内容器に充填した。内容器は、長径16cm、短径10cm、深さ2.7cmの楕円形でありフランジを有するポリプロピレン製容器を使用した。内容器の底面の全体に、直径3mmの円形の孔をランダムに設けた。開孔率は、底面全体の面積の30%とした。なお、このような内容器を3個用意した。
【0043】
次に、日阪製作所株式会社製の短時間調理殺菌試験機RIC−15Tに内容器3個を入れて密閉し、ゲージ圧−0.095MPaまで、約2分間かけて脱気した。その後蒸気を導入し、雰囲気温度を135℃に設定して2分間高圧蒸気による加熱殺菌を行った。殺菌終了後、5秒間で常圧に戻し、その後減圧して2分間真空冷却を行い、固形具材の温度が40℃以下になったところで、装置取り出し口に密着させたクリーンブース内に内容器を取り出し、予め過酸化水素水で殺菌した外容器(ポリプロピレン/エチレンビニルアルコール共重合体/ポリプロピレン製)に内容器を収納して一体型容器を形成した。次いで殺菌、冷却した上記調味液を115gを無菌的に内容器に入れ、予め過酸化水素水で殺菌したナイロン/シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン製フィルムを用いて、外容器の上方開口部を熱シールした。
【0044】
このように製造した中華丼の具材を電子レンジで温めて食べたところ、従来のレトルト殺菌を施した中華丼の具材よりも野菜、海老、あさりの加熱による劣化が少なく、良好な食感と風味を保っていた。
また、この中華丼の具材を2週間30℃で保存したものについて、微生物汚染による膨れはみられず、商業的無菌が保たれていた。
【0045】
【発明の効果】
本発明の方法は、充填して殺菌した固形具材を内容器に入れたまま、内容器を外容器に収納するため、殺菌した固形具材を1食分ずつ別の容器に分配するための大掛かりな装置が必要なく、コストがかからず操作が簡単である。また、殺菌した固形具材は内容器に入れたままであり、別の容器に移す必要がないため、固形具材を移し替えた場合に起こる、固形具材が内容器の側面に付着して残り、固形具材が無駄になったり、製品が重量不足になったりするという問題が生じない。
【0046】
また、固形具材を殺菌した後に調味液を添加するため、固形具材の熱伝導性が良く、殺菌時間が短くなり、固形具材本来の食感や風味を保つことができる。また、過加熱により容器が変形することがない。
【0047】
内容器の側面に付着した固形具材は、殺菌後に添加された調味液により湿潤状態となり、調味が充分になるばかりか、固形具材が内容器の側面から容易に剥離するため、消費者が食品を食べる際に、容易に固形具材を皿等に移すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の方法に使用される一体型容器の斜視図である。図1(b)は、本発明の方法に使用される一体型容器を形成するところを示した図である。
【図2】図2は、内容器の斜視図である。
【図3】図3は、外容器の斜視図である。
【図4】図4(a)は、一体型容器の一実施例の部分拡大断面図である。図4(b)は、一体型容器の他の実施例の部分拡大断面図である。
【図5】図5(a)は、フィルムが外容器のフランジに接着した状態を示す一体型容器の一実施例の部分拡大断面図である。図5(b)は、フィルムが外容器及び内容器のフランジに接着した状態を示す一体型容器の一実施例の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
10・・・一体型容器
20・・・内容器
21・・・内容器側面
22・・・内容器底面
23・・・内容器フランジ
24・・・孔
30・・・外容器
31・・・外容器側面
32・・・外容器底面
33・・・外容器フランジ
34・・・フィルム
Claims (2)
- 底面、又は底面及び側面の一部又は全体に孔を設けた内容器に固形具材を充填して殺菌する工程、
前記内容器の一部又は全部を無菌下において滅菌済み外容器に収納し、一体型容器を形成する工程、
前記内容器及び/又は前記外容器に必要に応じて殺菌済みの調味液を添加する工程、及び
無菌下において前記一体型容器の一部又は全部をシールする工程、
を含む、容器に充填した固形具材入り食品の製造方法。 - 前記内容器に充填した固形具材を殺菌する工程が、
空気を減圧除去する工程、
高圧蒸気を導入して固形具材を加熱殺菌する工程、及び
減圧して固形具材を真空冷却する工程、
を含む、請求項1に記載の容器に充填した固形具材入り食品の製造方法。
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