JP4027251B2 - モータの非常停止方法、モータの非常停止装置、ワイヤソーのワイヤ駆動停止方法およびワイヤソー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のサーボモータを同期して駆動させる各種機械装置等に適した前記モータの非常停止方法および非常停止装置と、この方法、装置を使ったワイヤソーのワイヤ駆動停止方法およびワイヤソーとに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体インゴット等のワークからウエハ等の薄状片を切り出す手段として、従来から特許文献1に開示されるようなワイヤソーが知られている。このワイヤソーは、複数のガイドローラ間に切断用ワイヤが巻き掛けられることにより該ワイヤが多数本並んだ状態で張設され、かつその軸方向に高速駆動された状態で、この軸方向と直交する方向にワークが切断送りされることにより、このワークから多数枚の薄状片を同時に切り出すように構成されている。
【0003】
この種のワイヤソーでは、ガイドローラを含むワイヤ駆動用の各ローラ等がサーボモータ(以下、モータと略す)により同期して駆動されることによりワイヤが一定張力を保持した状態で高速駆動される。そのため、ワイヤソーの駆動中に停電等が発生して電源からの電力供給が停止されると、サーボアンプからモータへの制御信号および駆動用電力の供給が停止され、これによりモータ同士の同期が損なわれてガイドローラ等に巻回されているワイヤが緩んだり、切れたりするトラブルが発生する。このようなトラブルは、最悪の場合、ワークを無駄にすることもあるため極力回避する必要がある。
【0004】
そこで、このようなトラブルの発生を防止すべく、停電等が発生した場合でも制御系および動力系に対する電力供給が一切停止することがないように、無停電電源装置(Uninterruptive Power System;以下UPSという)を設けて必要な電源の全てをバックアップするようにしたワイヤソーが開発されている。
【0005】
ところが、このようなワイヤソーでは、電源全体をバックアップするために極めて大型のUPSが必要となり、装置の大型化、コスト高を助長するという問題がある。そこで、最近では、ワイヤソーに搭載されるNC装置等、制御系の電源だけをUPSでバックアップし、その他の動力系(例えばモータ)の電源については、例えば特許文献2に開示されているように、サーボアンプにコンデンサを設けて電力を蓄電しておき、停電時にはその電力を使ってモータを停止させるという所謂UPSフリーシステムが考えられている。つまり、モータが減速動作にさえ入れば、後は外部からの電力供給がなくても、減速動作により発生する回生電力を利用することにより各モータを正常に停止させることが可能となるため、この減速開始用の駆動電力だけをコンデンサによって確保することにより、ワイヤ切断等のトラブル発生を効果的に防止する一方で、UPSの適用範囲を狭めて装置の大型化等を回避するというものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−323741号公報
【特許文献2】
特開平8−309738号公報(段落0019,0024参照)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ワイヤソーにおいては、近年、例えば太陽電池のシリコン基板を切り出すものなど、一度に極めて多数枚の薄状片を切り出し可能なものが求められており、上記のようなUPSフリーシステムを採用するワイヤソーでは、このような傾向に対応するに当たり次のような問題を抱えている。
【0008】
すなわち、一度に多数枚の薄状片を切り出し可能なワイヤソーでは、切断送り中、モータに過大な負荷がかかるため、減速開始用の駆動電力をバックアップするには、より多数の大容量のコンデンサをサーボアンプに搭載することが要求され、その結果、ワイヤソーの駆動を制御する制御系の構成が大型化し、装置(ワイヤソー)の大型化やコスト高を抑えるというUPSフリーシステム本来の効果が充分に発揮されない場合が起きている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、UPSフリーシステムの上記のような問題を合理的に解決することにより、一度に多数枚の薄状片を切り出し可能な装置についても、停電等、電源異常が発生した際に通常通り正常にモータを停止させるとともに、装置の大型化やコスト高を抑え得るようにすることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願出願人は、上記のような事情に鑑み、ワイヤソーでは切断用ワイヤが複数のモータで駆動されており、各モータに作用する負荷がその用途によって大きく異なるとともに、負荷の大きいモータほどより多くの減速開始用の駆動電力をバックアップする必要がある点、また、負荷の大きいモータほど該負荷によって早期に減速、停止する点に着目した。そして、その結果、次のような発明を考えるに至った。すなわち、本発明のモータ非常停止方法は、同期して駆動される複数のモータに対する電力供給が電源異常により停止されたときに、互いの同期を保った状態で前記各モータを停止させるモータの非常停止方法であって、電力供給が停止されたときに、前記モータのうち負荷が最も大きい高負荷モータを無制御状態として自然減速させ、この高負荷モータに追従させるべく該高負荷モータ以外のモータの制動を行うことにより、前記各モータを停止させるというものである。
【0011】
つまり、このように複数のモータのうち最も負荷の大きいもの(高負荷モータ)を無制御状態として自然に減速、停止(フリーラン)させながら、その他のモータをこれに追従させるように制動すれば、高負荷モータについては減速開始用の駆動電力をバックアップしておく必要がなくなる。一方、高負荷モータ以外のモータについては、高負荷モータに追従するように制動することによって結果としてフリーラン状態よりも短い時間で停止するように減速することとなるので、この減速により発生する回生電力を使って駆動を維持させることができる。従って、高負荷モータに追従させるかたちで全てのモータの同期を保った状態で停止させながらも、高負荷モータについては、そのサーボアンプ内に減速開始用の駆動電力をバックアップするためのコンデンサを設ける必要がなくなり、その分、モータ制御系をコンパクトに構成することが可能となる。
【0012】
また、本発明のワイヤ駆動停止方法は、複数のワイヤ駆動用モータにより切断用ワイヤを高速駆動するワイヤソーの前記切断用ワイヤの駆動停止方法であって、電源異常により電力供給が停止されたときに、上記のような非常停止方法に基づいて前記ワイヤ駆動用モータを停止させることにより、前記切断用ワイヤの駆動を停止させるようにしたものである。
【0013】
これによれば、最も負荷の大きいワイヤ駆動用モータの減速開始用の駆動電力をバックアップすることなく、電源異常時には、全てのワイヤ駆動用モータを同期させた状態で停止させることができるようになる。従って、最も負荷の大きいワイヤ駆動用モータについては、そのサーボアンプ内に減速開始用の駆動電力をバックアップするコンデンサを設ける必要がなくなり、その分、ワイヤソーのモータ制御系をコンパクトに構成することが可能となる。
【0014】
一方、本発明のモータの非常停止装置は、同期して駆動されている複数のモータに対する電力供給が電源異常により停止されたときに、互いの同期を保った状態で前記各モータを停止させるモータの非常停止装置であって、前記モータのうち負荷が最も大きい高負荷モータの回転速度を検出する速度検出手段と、前記各モータの駆動を制御する制御手段とを備え、この制御手段が、各モータへの電力供給が停止されると、前記高負荷モータを無制御状態として自然減速させる一方、この高負荷モータに追従させるべく前記速度検出手段による検出速度に基づいて高負荷モータ以外のモータの制動を行うようにしたものである。
【0015】
この装置によると、電源異常により各モータへの電力供給が停止されると、高負荷モータは無制御状態となり自然減速し停止する。一方、その他のモータは、速度検出手段により検出される高負荷モータの回転速度に基づき高負荷モータに追従するように制御手段により制動制御される。その結果、高負荷モータに追従するかたちで全てのモータが同期を図った状態で減速、停止することとなる。
【0016】
また、本発明のワイヤソーは、複数のワイヤ駆動用モータにより切断用ワイヤを高速駆動するワイヤソーにおいて、電源異常により電力供給が停止されたときに前記ワイヤ駆動用モータを停止させる手段として上記ようなモータの非常停止装置を備えているものである。
【0017】
このワイヤソーによると、電源異常により各ワイヤ駆動用モータへの電力供給が停止されると、これらのモータのうち最も負荷の大きいワイヤ駆動用モータ(高負荷モータ)が無制御状態となり自然減速し停止する。一方、その他のワイヤ駆動用モータは、速度検出手段により検出される高負荷モータの回転速度に基づき高負荷モータに追従するように制御手段により制動制御される。その結果、全てのワイヤ駆動用モータが同期を図った状態で減速、停止することとなる。
【0018】
なお、ワイヤソーは、複数のガイドローラとこれらローラのうち少なくとも一つを回転駆動するローラ駆動用モータとを有し、前記各ガイドローラの外側に前記切断用ワイヤが多数回螺旋状に巻回されることにより多数本のワイヤが互いに平行な状態で張られ、前記ローラ駆動用モータにより前記ガイドローラを駆動することにより前記切断用ワイヤをその軸方向に往復駆動させるように構成されるのが一般的であり、切断用ワイヤを駆動するモータのうち上記ローラ駆動用モータの負荷が最も大きい。そのため、電力供給が停止されたときには、前記高負荷モータとして前記ローラ駆動用モータを無制御状態として自然減速させるようにするのが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明に係るワイヤソーの全体構成図である。この図に示すワイヤソーは、一対のワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10B、トラバーサ12A,12B、ガイドプーリ14A,14B、ガイドプーリ16A,16B、及び4つのガイドローラ24A,24B,26A,26Bを備えている。
【0021】
ガイドローラ24A,24Bは互いに同じ高さ位置に配され、ガイドローラ26A,26Bはそれぞれガイドローラ24A,24Bの下方の位置に配されており、ガイドローラ26Aがローラ駆動モータ25によって回転駆動されるようになっている。
【0022】
各ワイヤ繰出し・巻取り装置10A,10Bは、切断用のワイヤWが巻かれるボビン9A,9Bと、これを回転駆動するボビン駆動モータ11A,11Bとを備えている。一方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Aのボビン9Aから繰出されたワイヤWは、トラバーサ12Aの後記ガイドプーリ20A、ガイドプーリ14A、及びガイドプーリ16Aの順に掛けられ、さらにガイドローラ24A,24B,26B,26Aの外周面のガイド溝(図示省略)に嵌め込まれながらこれらガイドローラの外側に多数回螺旋状に巻回された(巻き掛けられた)後、ガイドプーリ16B,14B、及びトラバーサ12Bの後記ガイドプーリ20Bの順に掛けられ、他方のワイヤ繰出し・巻取り装置10Bのボビン9Bに巻き取られており、図外のワイヤ張力調節装置によってワイヤWに適当な張力が与えられている。そして、駆動モータ25によるガイドローラ26Aの回転駆動方向と、各ボビン駆動モータ11A,11Bによるボビン9A,9Bの回転駆動方向が正逆に切換えられることにより、ワイヤWがボビン9Aから繰出されてボビン9Bに巻き取られる状態と、ワイヤWがボビン9Bから繰出されてボビン9Aに巻き取られる状態とに切換えられるようになっている。
【0023】
すなわち、このワイヤソーにおいては、ガイドローラ24A,24Bの間に多数本のワイヤWが互いに平行な状態で張られながらその軸方向に往復駆動されるようになっている。
【0024】
なお、トラバーサ12A,12Bは、ワイヤWをボビン9A,9Bに対してその軸方向に整列した状態で巻き取らせるための装置で、それぞれワイヤWを案内するガイドプーリ20A,20Bを有し、トラバーサ駆動モータ22A,22Bにより駆動される図外の移動機構によりこれらガイドプーリ20A,20Bをガイド部材21A,21Bに沿ってボビン9A,9Bの軸方向に移動させるように構成されている。つまり、同図の実線および破線に示すように、ガイドプーリ20A,20BによってワイヤWを案内しながら該ガイドプーリ20A,20Bをガイド部材21A,21Bに沿って往復移動させることにより、ワイヤWをボビン9A,9Bに対して整列した状態で巻き取らせるように構成されている。
【0025】
前記ガイドローラ24A,24B間に張られたワイヤWの上方には、円柱状のワーク(例えば半導体インゴット)28を移動させるワーク送り装置30が設けられている。このワーク送り装置30は、ワーク保持部32と、ワーク送りモータ34とを備えている。ワーク保持部32は、上記ワーク28をその軸方向とワイヤ並び方向とが合致する向きに保持するものであり、ワーク送りモータ34は、図略のボールネジとの組み合わせにより、上記ワーク保持部32とワーク28とを一体に昇降させる(すなわち切断送りする)ものである。
【0026】
ガイドローラ24A,24B間に張られたワイヤWの上方において、ワーク28の左右両側の位置には、砥粒供給装置36A,36Bが設けられている。これらの砥粒供給装置36A,36Bは、高速駆動される各ワイヤWに対し、加工用砥粒が混合された加工液(スラリー)を同時供給し、ワイヤWの表面に付着させるものである。
【0027】
従って、このワイヤソーでは、ガイドローラ24A,24B間に張られた多数本のワイヤWがその長手方向に同時高速駆動され、かつこれらのワイヤWに砥粒供給装置36A,36Bからスラリーが供給されながら、上記ワイヤWに対してワーク28が下方に切断送りされることにより、このワーク28から一度に多数枚のウエハ(薄片)が同時に切り出される。
【0028】
なお、このワイヤソーでは、ワイヤWを駆動するための各モータ11A,11B,22A,22B,25(ワイヤ駆動用モータ)はいずれもサーボモータから構成されている。
【0029】
次に、上記ワイヤWの駆動を制御する制御系の構成について図2を用いて説明する。なお、この実施形態では、この制御系に本発明に係るモータの非常停止装置が組み込まれた構成となっている。
【0030】
図2において、符号40、42A、42B、50は、それぞれワイヤソーの電源である三相交流電源(以下、電源と略す)、ガイドローラ駆動モータ25の駆動を制御するサーボアンプ、ボビン駆動モータ11Aの駆動を制御するサーボアンプ、ワイヤソーの駆動を統括的に制御する制御装置50を示しており、この実施形態では、前記サーボアンプ42A,42Bおよび制御装置50によりワイヤソーを自動制御するNC(Numerical Control)装置が構成されている。
【0031】
なお、サーボアンプは、ワイヤWを駆動する各モータ11A,11B,22A,22B,25毎に設けられるが、これらのモータのうち最も負荷の大きいローラ駆動モータ25(高負荷モータ)以外の各モータ11A,11B,22A,22Bのサーボアンプについはその構成が共通しているため、図2中は、便宜上、ガイドローラ26Aを駆動するローラ駆動モータ25のサーボアンプ42Aおよびボビン9Aを駆動するボビン駆動モータ11Aのサーボアンプ42Bのみを図示し、以下の説明では、モータ11B,22A,22Bのサーボアンプについても駆動モータ11Aのサーボアンプ42Bと同符号を使って説明することにする。
【0032】
サーボアンプ42A,42Bは、それぞれコンバータ部44、インバータ部46および制御部48を有しており、前記電源40がコンバータ部44に、駆動モータ11A,25がインバータ部46にそれぞれ接続されている。
【0033】
コンバータ部44は、三相交流の電圧を直流に変換するもので、インバータ部46は、コンバータ部44で変換された前記直流電圧を三相電圧に変換する。
【0034】
制御部48は、駆動モータ11A,25の駆動を制御するもので前記制御装置50からの制御信号に基づいて各種演算処理を行うように構成されている。
【0035】
なお、ボビン駆動モータ11A(モータ11B,22A,22B)のサーボアンプ42Bについては、さらにコンバータ部44とインバータ部46との間にコンデンサCが設けられている。このコンデンサCは、コンバータ部44により変換された直流電圧を平滑化し、その直流電圧を電荷として蓄積するもので、駆動中のボビン駆動モータ11A(モータ11B,22A,22B)の減速を開始するのに必要な電荷(電力)を蓄積するものである。つまり、停電等、電源異常により電力供給が停止されたときには、ここに蓄積された電力が減速開始用の駆動電力としてボビン駆動モータ11A(モータ11B,22A,22B)に供給されるようになっている。
【0036】
一方、制御装置50は、その機能構成として主制御部52および速度演算部54を含んでいる。
【0037】
主制御部52は、予め記憶されている加工プログラムに従って前記ワイヤW等を駆動すべく前記各モータ25,11A,11B,22A,22Bの駆動を統括的に制御するもので、図外の入力部を介して数値情報として入力される加工指令情報に基づいてワイヤWを駆動すべく各モータ25,11A,11B,22A,22Bの各サーボアンプ42A,42B(制御部48)に制御信号を出力する。
【0038】
前記速度演算部54は、停電等の電源異常により電源40からの電力供給が停止されたときに前記ローラ駆動モータ25に内蔵される図外のエンコーダからの出力値に基づいてローラ駆動モータ25の回転速度を求め、その結果を前記主制御部52に出力するものである。つまり、当実施形態では、前記エンコーダおよび速度演算部54により本発明の速度検出手段が構成されている。
【0039】
なお、速度演算部54において回転速度が求められると、前記主制御部52は、ローラ駆動モータ25以外の各モータ11A,11B,22A,22Bの回転速度をローラ駆動モータ25の回転速度に追従させるべくサーボアンプ42B(制御部48)に制御信号を出力し、制御部48はこの制御信号に基づき各モータ11A,11B,22A,22Bがその回転速度となるように各モータ11A,11B,22A,22Bを駆動(制動)制御するように構成されている。
【0040】
同図中符号60は、周知のUPS60であって、電源40からの電力供給状態を検知しながら、停電等によって電源40からの電力供給が遮断されると、ローラ駆動モータ25以外の各モータ11A,11B,22A,22Bのサーボアンプ42Bの制御部48および制御装置50に対して所定の電力を供給することによりこれらの電源をバックアップするとともに、制御装置50に対して電源40からの電力供給が停止されたことを示す信号(電力供給停止信号)を出力するように構成されている。
【0041】
次に、上記のように構成されたワイヤソーの作用効果について説明する。
【0042】
上記のワイヤソーにおいて、そのメイン電源がオンされるとワイヤソーが起動し、所定のウォームアップ動作が開始される。このウォームアップ動作中、直流電圧が電荷として各サーボアンプ42BのコンデンサCにフル充電状態まで蓄積され、ローラ駆動モータ25以外の各モータ11A,11B,22A,22Bの減速開始用の駆動電力がバックアップされる。
【0043】
ウォームアップ動作が完了すると、主制御部52からサーボアンプ42A,42Bに制御信号が出力され、所定の加工指令情報に基づいて各モータ25,11A,11B,22A,22Bが駆動される。これによりワイヤWが高速駆動される一方で、ワーク送り装置30によりワイヤWに対してワーク28が切断送りされてワーク28の切り出しが開始される。
【0044】
このようなワイヤソーの駆動中、停電等の電源異常により電源40からの電力供給が停止されると、UPS60からモータ11A,11B,22A,22Bの各サーボアンプ42Bの制御部48および制御装置50に電力の供給が開始されるとともに、UPS60から制御装置50に電力供給停止信号が出力される。
【0045】
UPS60から電力供給停止信号が出力されると、前記エンコーダからの出力に基づいて速度演算部54においてローラ駆動モータ25の回転速度が求められるとともに、ローラ駆動モータ25以外の各モータ11A,11B,22A,22Bの回転速度をローラ駆動モータ25の回転速度に追従させるべく主制御部52から各サーボアンプ42Bに制御信号が出力される。
【0046】
この制御信号の出力により、各サーボアンプ42BのコンデンサCに電荷として蓄積されている直流電圧が駆動用電力として各モータ11A,11B,22A,22Bに供給され、これらローラ駆動モータ25以外のモータ11A,11B,22A,22Bの回転速度がローラ駆動モータ25の回転速度に追従するように各モータ11A,11B,22A,22Bが制動制御される。
【0047】
この際、上記の通り、UPS60はローラ駆動モータ25の制御系(サーボアンプ42Bの制御部48)の電源はバックアップしていないため、ローラ駆動モータ25はフリーラン、すなわち負荷に応じて自然に減速する。従って、このローラ駆動モータ25に追従するようにモータ11A等が制御されることにより、モータ11A等が発電機として機能することとなる。つまり、このワイヤソーでは、ワイヤWを駆動するモータのうちワイヤWが何重にも巻回されたガイドローラ26Aを駆動するローラ駆動モータ25に最も大きい負荷がかかる。そのため、モータ25,11A,11B,22A,22Bのうちフリーランによる停止時間、すなわち自然にモータが減速して停止するまでに要する時間はローラ駆動モータ25が最も短くなる。従って、フリーラン状態にあるローラ駆動モータ25に追従するようにその他のモータ11A,11B,22A,22Bが制動制御されると、結果としてモータ11A等はフリーラン状態よりも短い時間で停止することとなり、この減速により各モータ11A,11B,22A,22Bには回生電力が発生し、この電力が各モータ11A,11B,22A,22Bの駆動維持電力として消費されることとなる。
【0048】
こうしてローラ駆動モータ25に追従するかたちで各モータ11A,11B,19A,19Bが減速制御されることにより、全体として各モータ25,11A,11B,22A,22Bがそれぞれ同期した状態で正常に停止することとなる。
【0049】
以上のように、このワイヤソーによると、従来のワイヤソー(いわゆるUPSフリーシステムが採用されたワイヤソー)と同様に、制御装置50およびサーボアンプ42Bの電源だけをUPS60によりバックアップする構成で、停電等の電源異常時には、互いの同期を図った状態で切断用ワイヤWを駆動する各モータ25,11A,11B,22A,22Bを正常に停止させることができる。
【0050】
しかも、ワイヤWを駆動する各モータ25,11A,11B,22A,22Bのうち最も負荷が大きいローラ駆動モータ25をフリーラン状態で減速、停止させ、このローラ駆動モータ25にその他のモータ11A,11B,22A,22Bを追従させることにより、上記の通り、ローラ駆動モータ25のサーボアンプ42A内に減速開始用の駆動電力をバックアップするコンデンサを設けることなく、各モータ25,11A,11B,22A,22Bを正常に同期させた状態で停止させ得るようにしているので、このようにサーボアンプ42Aに電力バックアップ用のコンデンサが必要ない分、モータ制御系の大型化を抑えることができ、その結果、ワイヤソーの大型化およびコスト高を抑えることができるという効果がある。特に、ローラ駆動モータ25は上記の通り切断用ワイヤWを駆動するモータのなかで最も負荷が大きく、従来の構成(UPSフリーシステムの構成)、すなわちワイヤを駆動する全てのモータのサーボアンプ内にコンデンサを設ける構成であればローラ駆動モータのサーボアンプ内に大容量のコンデンサを数多く設ける必要があるところ、上記のワイヤソーによると、そのようなコンデンサが一切必要ない。従って、ワイヤソーの大型化およびコスト高を効果的に抑えることができるという効果がある。
【0051】
図3は、一般的な従来のワイヤソー(従来のUPSフリーシステムが採用されたワイヤソー)の切断用ワイヤの駆動制御パターンと、その駆動制御パターンにおける各モータの消費電力(エネルギー)の割合を示している。
【0052】
同図において、切断用ワイヤは加速走行 → 定速走行 →減速走行に従って前進と後退を繰り返すように制御されており、例えば定速走行では、切断用ワイヤの全消費電力(100%)のうち95%がWGモータ(上記実施形態のローラ駆動モータ25に相当)によって使用され、残りの5%がその他のモータ(上記実施形態のモータ11A,11B,22A,22B等に相当)により消費されていることを示している。この図からも明らかなように、切断用ワイヤの全消費電力の大部分はWGモータによって消費されており、換言すれば、従来構成では、WGモータのバックアップ電力をそれだけ多く確保する必要があった。
【0053】
従って、上記実施形態の構成によると、このようなWGモータの駆動電力をバックアップする大容量のコンデンサが必要なくなるため、モータ制御系の大型化を抑制する効果は絶大であり、ワイヤソーの大型化およびコスト高を抑える上で極めて有効であることが考察できる。
【0054】
なお、上述したワイヤソーは、本発明が適用されるワイヤソーの一実施形態であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。また、上記のように、複数のモータのうち最も負荷の大きいモータをフリーラン状態で停止させながら、それ以外のモータを最も負荷の大きいモータに追従させるように制動を行って各モータを停止させるという上記実施形態で説明したモータ非常停止方法(非常停止装置)は、勿論ワイヤソー以外の各種機械装置等についても適用可能である。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、停電等の電源異常により電力供給が停止されたときには、同期して駆動されている複数のモータのうち負荷が最も大きい高負荷モータを無制御状態として自然減速させ、この高負荷モータに追従するようにそれ以外のモータの制動を行うようにしたので、各モータの同期を保った状態で該モータを正常に停止させながらも、高負荷モータのサーボアンプ内に駆動電力バックアップ用のコンデンサを設ける必要がなくなる。従って、このようにバックアップ電力を確保するためのコンデンサ容量(数)を削減できる分、モータ制御系の小型化を図ることができ、その結果、装置の大型化およびコスト高を抑えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るワイヤソーの全体構成図である。
【図2】ワイヤソーの制御系(主にボビン駆動用のモータおよびワイヤ駆動用のモータを制御する部分)の構成を示す図である。
【図3】切断用ワイヤの駆動に必要な電力の割合を説明する図である。
【符号の説明】
11A,11B ボビン駆動モータ
19A,19B 駆動モータ
25 駆動モータ
40 三相交流電源
42 サーボアンプ
44 コンバータ部
46 インバータ部
48 制御部
50 制御装置
52 主制御部
54 速度演算部
60 UPS(無停電電源装置)
W 切断用ワイヤ
C コンデンサ
Claims (5)
- 同期して駆動される複数のモータに対する電力供給が電源異常により停止されたときに、互いの同期を保った状態で前記各モータを停止させるモータの非常停止方法であって、
電力供給が停止されたときに、前記モータのうち負荷が最も大きい高負荷モータを無制御状態として自然減速させ、この高負荷モータに追従させるべく該高負荷モータ以外のモータの制動を行うことにより、前記各モータを停止させることを特徴とするモータの非常停止方法。 - 複数のワイヤ駆動用モータにより切断用ワイヤを高速駆動するワイヤソーの前記切断用ワイヤの駆動停止方法であって、
電源異常により電力供給が停止されたときに、上記請求項1に記載のモータの非常停止方法に基づいて前記ワイヤ駆動用モータを停止させることにより、前記切断用ワイヤの駆動を停止させることを特徴とするワイヤ駆動停止方法。 - 同期して駆動されている複数のモータに対する電力供給が電源異常により停止されたときに、互いの同期を保った状態で前記各モータを停止させるモータの非常停止装置であって、
前記モータのうち負荷が最も大きい高負荷モータの回転速度を検出する速度検出手段と、
前記各モータの駆動を制御する制御手段とを備え、
この制御手段は、各モータへの電力供給が停止されると、前記高負荷モータを無制御状態として自然減速させる一方、この高負荷モータに追従させるべく前記速度検出手段による検出速度に基づいて高負荷モータ以外のモータの制動を行うことを特徴とするモータの非常停止装置。 - 複数のワイヤ駆動用モータにより切断用ワイヤを高速駆動するワイヤソーにおいて、
電源異常により電力供給が停止されたときに前記ワイヤ駆動用モータを停止させる手段として、前記請求項3に記載のモータの非常停止装置を備えていることを特徴とするワイヤソー。 - 請求項4に記載のワイヤソーにおいて、
複数のガイドローラとこれらローラのうち少なくとも一つを回転駆動するローラ駆動用モータとを有し、前記各ガイドローラの外側に前記切断用ワイヤが多数回螺旋状に巻回されることにより多数本のワイヤが互いに平行な状態で張られ、前記ローラ駆動用モータにより前記ガイドローラを駆動することにより前記切断用ワイヤをその軸方向に往復駆動させるように構成されるものであって、
電力供給が停止されたときに、前記高負荷モータとして前記ローラ駆動用モータを無制御状態として自然減速させる
ことを特徴とするワイヤソー。
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