JP4026175B2 - モータケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のワイパモータ等に用いられるヨークが二重構造でかつ軽量のモータケースに関する。
【0002】
【先行技術】
この種のモータケースとして、図8及び図9に示すものが開発されている。このモータケース1は、図8(a)及び図9(a)に示すように、円筒カップ形にプレス成形された鋼製の外側ヨーク2と、この外側ヨーク2の内部に、両突き合わせ端3a,3b(鋼帯板の両端)を突き合わせて円筒状に丸めた状態で圧入される内側ヨーク3と、この内側ヨーク3の内周面3dに取り付けられる一対のマグネット4,4とを備えている。
【0003】
そして、内側ヨーク3の両突き合わせ端3a,3bのうちの一方の突き合わせ端3bに圧入時の潰れ代用で山形(略二等辺三角形状)の突起3cを複数一体突出形成し、この複数の突起3cが外側ヨーク2の内部に内側ヨーク3を圧入した時にそれぞれ潰れて当該外側ヨーク2の内径寸法及び内側ヨーク3の外径寸法の寸法バラツキを吸収するようになっている。
【0004】
尚、外側ヨークと内側ヨークとからなるモータケースが例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−309586号公報(第2図−第24図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のモータケース1では、外側ヨーク2の内部に円筒状に丸めた状態の内側ヨーク3を圧入する際に、図9(b)に示すように、内側ヨーク3の一方の突き合わせ端3bの各突起3cが潰れて径方向の内側にバリBが発生し、内側ヨーク3の内周面3dにマグネット4を密着させた状態で取り付けることができなかった。これにより、図9(b)に示すように、内側ヨーク3の内周面3dとマグネット4との間に隙間tが発生してモータケース1の組立て精度が悪くなり、また、マグネット4の磁力にロスが発生したり、騒音・振動性能に悪影響を及ぼした。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、内側ヨークの一方の突き合わせ端の各突起の潰れによりバリが発生しても内側ヨークの内周面にマグネットを密着状態で簡単に取り付けることができるモータケースを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、円筒カップ形に形成された外側ヨークと、この外側ヨークの内周面に、両突き合わせ端を突き合わせて円筒状に丸めた状態で圧入される内側ヨークと、この内側ヨークの内周面に取り付けられるマグネットとを備え、前記内側ヨークの両突き合わせ端のうちの一方の突き合わせ端に、圧入時の潰れ代用の複数の突起をそれぞれ一体形成し、この複数の突起が前記外側ヨークの内部に前記内側ヨークを圧入した時に潰れて当該外側ヨークの内径寸法及び内側ヨークの外径寸法の寸法バラツキを吸収するようにしたモータケースであって、前記マグネットの軸方向の前記内側ヨークの両突き合わせ端に対向する位置に凹状の溝部を形成したことを特徴とする。
【0009】
このモータケースでは、外側ヨークの内周面に円筒状に丸めた状態の内側ヨークを圧入する際に、内側ヨークの一方の突き合わせ端の各突起の潰れにより径方向の内側にバリが発生しても、このバリをマグネットの凹状の溝部内に収納して内側ヨークの内周面にマグネットが密着状態で簡単に取り付けられる。
これにより、内側ヨークの内周面とマグネットとの間の隙間の発生が確実に防止されてモータケースの組立て精度が向上し、また、マグネットの磁力のロスが減少すると共に、騒音・振動性能の向上が図られる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のモータケースであって、前記複数の突起は、前記一方の突き合わせ端から突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成したことを特徴とする。
【0011】
このモータケースでは、複数の突起が一方の突き合わせ端から突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状に形成されたので、外側ヨークの内周面に円筒状に丸めた状態の内側ヨークを圧入する際に、内側ヨークの一方の突き合わせ端の各突起が内側ヨークの軸方向に潰れて径方向の内側に発生するバリの突出量が可及的に減少する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1(a)は本発明の一実施形態のモータケースを示す断面図、図1(b)は図1(a)中X部分の部分拡大図、図2(a)は同モータケースの正面図、図2(b)は図2(a)中Y部分の部分拡大図、図3は同モータケースに用いられるマグネットの側面図、図4は同マグネットの正面図、図5は同モータケースに用いられる内側ヨークを丸める前の展開状態の部分拡大図、図6は同内側ヨークを円筒状に丸めた圧入前の側面図、図7は同モータケースを使用したワイパモータの側面図である。
【0014】
図1(a),図2(a),図7に示すように、ワイパモータ10のモータケース11は、円筒カップ形にプレス成形された鋼板製の外側ヨーク12と、この外側ヨーク12の内周面12d内に、両突き合わせ端13a,13bを突き合わせて円筒状に丸めた状態で圧入される内側ヨーク13と、この内側ヨーク13の内周面13dの相対向する位置に取り付けられる一対のマグネット14,14とを備え、アルミニウム製のギヤケース20のフランジ21に外側ヨーク12の開口端に一体突出形成された4つの爪部12eを加締めることで一体に結合されるようになっている。即ち、ワイパモータ10は、モータ部の外殻をなすモータケース11と減速部の外殻をなすギヤケース20とを一体化したものである。
【0015】
図1(a),図2(a)に示すように、鋼板製の外側ヨーク12はモータケース11の外殻を兼ねており、円筒壁12aと底壁12bとを有した円筒カップ形にプレス成形されている。この外側ヨーク12の底壁12bの中心部には、軸受15を組み付けるための円筒部12cを一体形成してある。また、外側ヨーク12の円筒壁12aの開口端には周方向に間隔をおいて4つの爪部12eをそれぞれ一体突出形成してある。さらに、外側ヨーク12の円筒壁12aのヨークとして使用する部分には、実質的な厚みを増すために該部分の内周面12dだけに内側ヨーク13を圧入している。
【0016】
図5,図6に示すように、内側ヨーク13は鋼板製の帯板13′を円筒状に丸めたものであり、補助ヨークとしての機能を有する。この円筒状に丸めたときに互いに突き合わされる内側ヨーク13の両突き合わせ端13a,13bのうちの一方の突き合わせ端13bに、圧入時の潰れ代を賄うための複数の突起13cをそれぞれ一体突出形成してある。この複数の突起13cは、一方の突き合わせ端13bから突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成してあり、この各突起13cが外側ヨーク12の内周面12dに内側ヨーク13を圧入して行くに従って潰れることにより、外側ヨーク12の内径寸法及び内側ヨーク13の外径寸法の寸法バラツキを吸収しないがら簡単に圧入されるようになっている。
【0017】
図1〜図4に示すように、各マグネット14は内側ヨーク13の内周面13dに沿うように円弧状に形成してある。この各マグネット14の外面14aの中央(各マグネット14の軸方向の内側ヨーク13の接合部としての両突き合わせ端13a,13bに対向する位置)には、凹状の溝部としての断面U字状の溝部14bを形成してある。そして、一方のマグネット14は内側ヨーク13の両突き合わせ端13a,13bを跨ぐようにして内側ヨーク13の内周面13dに接着剤等により密着状態に取り付けられ、他方のマグネット14は一方のマグネット14の約180°隔てた内側ヨーク13の内周面13dに接着剤等により密着状態に取り付けられている。これにより、重量増を最小限に抑制しながら、磁気回路を構成するに十分なヨーク板厚を持ったモータケース11が製造されるようになっている。
【0018】
以上実施形態のモータケース11によれば、マグネット14の外面14aの軸方向の内側ヨーク13の両突き合わせ端13a,13bに対向する位置に断面U字状の溝部14bを形成したことにより、外側ヨーク12の内周面12d内に円筒状に丸めた状態の内側ヨーク13を圧入する際に、図2(b)に示すように、内側ヨーク13の一方の突き合わせ端13bの複数の突起13cの潰れにより径方向の内側にバリBが発生しても、このバリBをマグネット14の断面U字状の溝部14b内に収納して内側ヨーク13の内周面13dにマグネット14を密着させた状態で簡単に取り付けることができる。
【0019】
これにより、内側ヨーク13の内周面13dとマグネット14との間の隙間の発生を確実に防止することができてワイパモータ10のモータケース11の組立て精度を向上させることができ、また、マグネット14の磁力のロスを減少させることができると共に、騒音・振動性能の向上を図ることができる。
【0020】
さらに、内側ヨーク13の一方の突き合わせ端13bに一体突出形成された複数の突起13cを、一方の突き合わせ端13bから突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成したことにより、外側ヨーク12の内周面12d内に円筒状に丸めた状態の内側ヨーク13を圧入する際に、内側ヨーク13の一方の突き合わせ端13bの各突起13cを内側ヨーク13の軸方向に潰し易くして径方向の内側に発生するバリBの突出量を可及的に減らすことができる。
【0021】
尚、前記実施形態によれば、内側ヨーク13の突起13cの潰れにより発生するバリBを収納するマグネット14の溝部14bを断面U字状に形成したが、断面V字状や断面コ字状に形成しても良い。つまり、凹状の溝部であれば良い。また、内側ヨーク13の各突起13cを、一方の突き合わせ端13bから突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成したが、外側ヨーク12の内周面12dに内側ヨーク13を圧入した際に内側ヨーク13の軸方向に潰れ易い形状ならば略直角三角形状に限定されるものではないことは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、マグネットの軸方向の内側ヨークの両突き合わせ端に対向する位置に凹状の溝部を形成したので、外側ヨークの内周面に円筒状に丸めた状態の内側ヨークを圧入する際に、内側ヨークの一方の突き合わせ端の各突起の潰れにより径方向の内側にバリが発生しても、このバリを凹状の溝部内に収納して内側ヨークの内周面にマグネットを密着させた状態で簡単に取り付けることができる。これにより、内側ヨークの内周面とマグネットとの間の隙間の発生を確実に防止することができてモータケースの組立て精度を向上させることができ、また、マグネットの磁力のロスを減少させることができると共に、騒音・振動性能の向上を図ることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、複数の突起を、一方の突き合わせ端から突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成したので、外側ヨークの内周面に円筒状に丸めた状態の内側ヨークを圧入する際に、内側ヨークの一方の突き合わせ端の各突起を内側ヨークの軸方向に潰し易くして径方向の内側に発生するバリの突出量を可及的に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の一実施形態のモータケースを示す断面図、(b)は同(a)中X部分の拡大図である。
【図2】 (a)は上記モータケースの正面図、(b)は同(a)中Y部分の拡大図である。
【図3】 上記モータケースに用いられるマグネットの側面図である。
【図4】 上記マグネットの正面図である。
【図5】 上記モータケースに用いられる内側ヨークを丸める前の展開状態の部分拡大図である。
【図6】 上記内側ヨークを円筒状に丸めた圧入前の側面図である。
【図7】 上記モータケースを使用したワイパモータの側面図である。
【図8】 (a)は先行技術のモータケースの断面図、(b)は同(a)中Z部分の拡大図である。
【図9】 (a)は上記先行技術のモータケースの正面図、(b)は同(a)中W部分の拡大図である。
【符号の説明】
11 モータケース
12 外側ヨーク
12d 内周面
13 内側ヨーク
13a 突き合わせ端
13b 突き合わせ端(一方の突き合わせ端)
13c 突起
13d 内周面
14 マグネット
14b 断面U字状の溝部(凹状の溝部)
Claims (2)
- 円筒カップ形に形成された外側ヨークと、この外側ヨークの内周面に、両突き合わせ端を突き合わせて円筒状に丸めた状態で圧入される内側ヨークと、この内側ヨークの内周面に取り付けられるマグネットとを備え、
前記内側ヨークの両突き合わせ端のうちの一方の突き合わせ端に、圧入時の潰れ代用の複数の突起をそれぞれ一体形成し、この複数の突起が前記外側ヨークの内部に前記内側ヨークを圧入した時に潰れて当該外側ヨークの内径寸法及び内側ヨークの外径寸法の寸法バラツキを吸収するようにしたモータケースであって、
前記マグネットの軸方向の前記内側ヨークの両突き合わせ端に対向する位置に凹状の溝部を形成したことを特徴とするモータケース。 - 請求項1記載のモータケースであって、
前記複数の突起は、前記一方の突き合わせ端から突出する頂部が鋭角となる略直角三角形状にそれぞれ形成したことを特徴とするモータケース。
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