JP4025958B2 - ホ−ル素子を備えた電流検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は、ホ−ル素子を備えた電流検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホ−ル素子は、ここに印加される磁界に正比例した電圧即ちホ−ル電圧を発生する。従って、ホ−ル素子を電流通路に沿って配置すると、電流通路を流れる電流に比例して発生する磁界がホ−ル素子に作用し、ホ−ル素子から電流に比例した電圧を得ることができる。電流通路の電流の検出感度を高めるためには、電流通路をホ−ル素子に出来る限り接近させた方が良い。この目的のために、ホ−ル素子を含む半導体チップと被検出電流を流すための電流通路形成用導体とを同一の樹脂封止体の中に配置することがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ホール素子と電流通路形成用導体とを同一の樹脂封止体でモールドすると、ホール素子と電流通路形成用導体のいずれか一方が不良であっても、全体が不良になり、結果として電流検出装置がコスト高になる。また、従来の電流検出装置では十分な電流検出感度を得ることができなかった。また、従来の電流検出装置では外来ノイズを十分に防止することができなかった。また、例えば600Aのような大電流を容易に検出することができる電流検出装置が要求されている。
【0004】
そこで、本発明の第1の目的は、コストの低減が可能な電流検出装置を提供することにある。本発明の第2の目的は感度の高い電流検出装置を提供することにある。本発明の第3の目的は外来ノイズを防ぐことができる電流検出装置を提供することにある。本発明の第4の目的は、コストの低減が可能であり且つ高い信頼性を有して大電流を検出することが可能な電流検出装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し、上記目的を達成するための本発明は、電気回路の電流を検出するための装置であって、第1の部品と第2の部品と前記第2の部品を前記第1の部品に対して固着している接着層とを備え、前記第1の部品は、前記電気回路の電流を流すための電流通路形成用導体と、前記電流通路形成用導体の一部を被覆しており且つ前記第2の部品を位置決めするための位置決め部分を有している第1の絶縁性被覆体とから成り、前記第2の部品は、ホール素子と、前記ホール素子を外部回路に接続するための複数のリード端子と、前記ホール素子と前記複数のリード端子の一部とを被覆している第2の絶縁性被覆体とから成り、且つ前記電流通路形成用導体を流れる電流の基づいて発生する磁界が前記ホール素子に作用するように前記第1の部品の前記位置決め部分に対して位置決めされ、且つ前記接着層によって前記第1の部品に固着されていることを特徴とする電流検出装置に係わるものである。
なお、本願発明における、"前記ホール素子を外部回路に接続するための複数のリード端子”は、ホール素子に直接的に接続されるリード端子のみでなく、ホール素子に対して増幅器又は制御電流供給回路等の付加回路を介して間接的に接続されるリード端子も意味する。
【0006】
なお、請求項2に示すように第1の部品に第1及び第2の位置決め部分を形成することが望ましい。
また、請求項3に示すように、電流通路形成用導体は平面的に見て、U字状電流通路を形成するものであることが望ましい。
また、請求項4に示すように、電流通路を狭めるための補助溝を形成することが望ましい。
また、請求項5及び6に示すように、支持板上にホ−ル素子を配置することが望ましい。
また、請求項7に示すように、電流通路形成用導体の第1の部品の絶縁性被覆体に対向する部分を露出させることが望ましい。
また、請求項8に示すように、ホ−ル素子形成用半導体基体に増幅器を形成することが望ましい。
また、請求項9及び10に示すように、電流検出の感度を高めるために第1及び第2のホ−ル素子を設けることができる。
また、本発明の第4の目的を達成するために、前記電流通路形成用導体は平面的に見て前記第1及び第2の絶縁性被覆体から成る包囲体から導出された導出部を有し、前記複数のリ−ド端子は平面的に見て前記包囲体から導出された導出部を有し、平面的に見て、前記電流通路形成用導体の前記導出部が前記複数のリ−ド端子の前記導出部に重ならないように配置されていることが望ましい。
【0007】
【発明の効果】
各請求項の発明によれば次の効果が得られる。
(1) ホール素子を絶縁性被覆体で被覆した第1の部品と電流通路形成用導体を絶縁性被覆体で被覆した第2の部品とを組み合せて電流検出装置を構成するので、良品の第1及び第2の部品を組み合せることができ、完成品の不良の発生が少なくなり,結果としてコストの低減を図ることができる。
(2) 第2の部品に第1の部品の位置決め部分を設けるので、両者の位置関係を正確に保つことができ、電流検出精度を高めることができる。
また、請求項2の発明によれば、リード端子が位置決めされるので、複数のリード端子の相互間の短絡及びリード端子の変形を防ぐことができる。
また、請求項3の発明によれば、導体に溝によってU字状の電流通過が形成されており、平面的に見てこのU字状電流通路の中にホール素子の主動作領域が配置されているので、ホール素子に対して作用する磁束の数が多くなり、電流の検出感度が高くなる。
また、請求項4の発明によれば、導体に補助溝を設けて電流通路を狭めているので、放熱性及び機械的強度を高めるために導体を比較的幅広に形成したにも拘らず、電流を集中的に流すことができ、ホール素子に対して有効に作用する磁束を増大させることができる。
また、請求項5の発明によれば、支持板と電流通路形成用導体との間にホール素子が配置されているので、支持板がホール素子のシールド層として機能し、外部からの不要電界ノイズを低減することができる。
また、請求項6の発明によれば、電流通路形成用導体に乗ってくるノイズがホ−ル素子に及ぶことを支持板で低減することができる。
また、請求項7の発明によれば、ホール素子を電流通路形成用導体に接近させて電流検出感度を向上させることができる。また、第1の部品の位置決め精度を高めることができる。
また、請求項8の発明によれば、電流検出装置の小型化を達成することができる。
また、請求項9及び10の発明によれば、電流検出感度の向上及び耐ノイズ性の向上を図ることができる。
また、請求項11の発明によれば、電流通路形成用導体の導出部と複数のリ−ド端子の導出部とが平面的に見て重ならないように配置されているので、上記2つの導出部相互間の沿面距離を大きくすることが可能になり、比較的大きな電流を高い信頼性を有して検出することが可能になる。
【0008】
【実施形態】
次に、図1〜図22を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0009】
【第1の実施形態】
図1〜図14に示す第1の実施形態の電流検出装置は、図5に示す第1の部品1と第2の部品2とを図1〜図3に示すように接着層3で相互に結合したものから成り、例えば電気自動車における電流検出に使用することができるものである。
【0010】
第1の部品1は、被測定電流即ち被検出電流を流すための電流通路形成用導体4と、第1の絶縁性被覆体としての第1の樹脂成形体5とから成る。
【0011】
電流通路形成用導体4は、例えば100〜600A程度の電流を流すことができる比較的厚い銅板にニッケルメッキ層を設けた金属板をプレス加工したものであり、平面的に見て図8に示すように全体としてU字状に形成され、溝6を介して並置された第1及び第2の部分7、8と、第1及び第2の部分7、8の一方の端を相互に連結するように配置された第3の部分9とを有している。帯状に延びている第1及び第2の部分7、8は、図8で破線で区画して示すように第1及び第2の端子部分7a、8aと、第1及び第2の電流通路形成部分7b、8bとを有する。第1及び第2の端子部分7a、8aには、この導体4を電気回路に直列に接続するための貫通孔10a、10bが設けられている。従って、第1及び第2の端子部分7a、8aは電気回路導体(図示せず)に対してビスで固定される。導体4の第1及び第2の電流通路形成部分7b、8bには、この外周縁から内側に向うように切り込み溝11a、11b、11c、11dが形成されている。また、第3の電流通路形成部分として働く第3の部分9にも溝11e、11fが形成されている。この溝11a〜11eは電流通路を溝6寄りに狭める働き、及び樹脂成形体5との噛み合いを強めて結合強度を向上させる働きを有する。
【0012】
第1の樹脂成形体5は、導体4の機械的安定性の向上及び電気的絶縁性の向上及び第2の部品2の位置決め及び保護のためのものであって、対の端子部分7a、8aと第1及び第2の電流通路形成部分7b、8b及び第3の部分9の一方の主面の一部を露出させ、これ以外の部分を被覆するように形成されている。更に詳細には、図2及び図3から最も明らかなように、第1の樹脂成形体5は、第1及び第2の電流通路形成部分7b、8bと第3の部分9の下面側の全体を覆い、且つこれ等の上面側の一部を覆い、且つ第1及び第2の電流通路形成部分7b、8bの相互間及び溝11a〜11fに充填されている。第1の樹脂成形体5は、図1〜図6から明らかなように、第2の部品2を第1の部品1に位置決めするための第1及び第2の位置決め部分5a、5bを有する。この第1及び第2の位置決め部分5a、5bの詳細は追って説明する。なお、第1の樹脂成形体5の導体4の下面側部分の厚みは放熱性を良くするために導体4の上面側部分の厚みよりも薄く形成されている。第1の樹脂成形体5は周知のトランスファモールド法又はインジェクションによって一体に形成することができる。
【0013】
第2の部品2はホールIC即ちホール素子を含む半導体装置であって、
図7から明らかなようにホール素子を含む半導体チップ20と、金属製支持板21と、この支持板21に連結された外部リード端子22と、支持板21に連結されていない外部リード端子23、24、25と、内部接続ワイヤ26、27、28、29と、第2の絶縁性被覆体としての第2の樹脂成形体30とから成る。
【0014】
半導体チップ20は金属支持板21に固着されている。例えばAl線から成る内部接続ワイヤ26、27、28、29は、半導体チップ20と支持板21及び外部リード端子23、24、25との間を電気的に接続している。第2の樹脂成形体30は半導体チップ20、支持板21、外部リード端子22、23、24、25の一部、内部接続ワイヤ26、27、28、29を覆うように周知のトランスファモールド法又はインジェクションモールド法によって形成されている。このホールIC側の第2の樹脂成形体30は、図5に示すように電流通路形成体としての第1の部品1の導体4の平坦な露出主面31上に配置される主面32と、第1の樹脂成形体5の第1の位置決め部分5aを形成する凹部の1つの壁面33に対向させる側面34とを有する。第2の部品2の第2の樹脂成形体30は、平面的に見て第1の部品1の第1の樹脂成形体5に形成された凹状の第1の位置決め部分5aに収容させることができるパターンに形成されている。第1及び第2の部品1,2の組立て時に、第1の部品1側の導体4の主面31と第2の部品2側の主面32との間及び第1の部品1側の壁面33と第2の部品2側の側面34とが図2に示すように接着層3によって互いに固着される。従って、電流検出装置の組立が終了した後には、第1及び第2の部品1、2が一体化され、実質的に単一の電気部品となる。
ホール素子35を含む半導体チップ20に接続された4本の外部リード端子22,23,24,25は互いに平行になるように第2の樹脂成形体30から導出されている。これ等の外部リード端子22,23,24,25の一部は、図4から最も明らかなように第1の樹脂成形体5に溝状に形成された4つの第2の位置決め部分5bに挿入され、相互間の短絡及びこれ等の変形が防止されている。外部リード端子22〜25の先端側部分は半導体チップ20を外部回路に接続するために第1の樹脂成形体5の外側に導出されている。更に,第1及び第2の部品1,2の一体化を強めるために、第1及び第2の部品1,2が接着層3で一体化された後に、第1の位置決め部分5aと第2の位置決め部分5bとに生じた第1及び第2部品1,2間の隙間に絶縁性樹脂が注入されて固化され、図13及び図14に示す樹脂層90が形成されている。
接着層3で一体化された第1の部品1の第1の樹脂成形体5と第2の部品2の第2の樹脂成形体30との組み合せから成る絶縁性包囲体100は、図1のように平面的に見て四角形に形成されている。平面的に見て、電流通路形成用導体4の上記包囲体100又は第1及び第2の樹脂成形体5、30からの外側への導出部は、複数の外部リ−ド端子22〜25の上記包囲体100又は第1及び第2の樹脂形成態5、30からの外側への導出部に重ならないように配置されている。更に詳細には、第1及び第2の樹脂成形体5、30の組み合せから成る包囲体100は、互いに対向する第1及び第2の主面101、102と第1、第2、第3及び第4の側面103、104、105、106とを有する6面体即ち直方体である。電流通路形成用導体4の導出部は、第3の側面105から導出され、外部リ−ド端子22〜25の上記導出部は第3の側面105とは異なる第1の側面103から導出されている。
【0015】
半導体チップ20は、図10に概略的に示す底面図から明らかなように周知のホール素子35と、増幅器36と、制御電流供給回路37と、第1、第2、第3及び第4の端子38、39、40、41とを有し、平面的に見て四角形に形成されている。
【0016】
ホール素子35、増幅器36及び制御電流供給回路37は化合物半導体(例えばガリウム砒素)から成る同一の半導体基板42の中に周知の方法で形成されている。半導体チップ20の形成方法及び構成は周知であるので、図11及び図12には本発明に係わる電流通路形成用の第1の部品1と直接に関係するホール素子35のみが示され、増幅器36及び制御電流供給回路37の図示は省略されている。
【0017】
平面的に見て四角形の半導体基板42の中には、ホール素子35を形成するためにn型の第1、第2、第3、第4及び第5の半導体領域43、44、45、46、47と、p型の第6、第7及び第8の半導体領域48、49、50が形成されている。n型の第5の半導体領域47は半導体基体42の大部分を占めるp型の第8の半導体領域50の中に島状に形成され、図11に示すように平面的に見て十字状のパターンを有する。n型の第1及び第2の半導体領域43、44はn型の第5の半導体領域47の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するn+ 型半導体領域であって、図11に示すようにY軸方向において互いに離間して対向配置され且つ第5の半導体領域47の中に島状に形成されている。この第1及び第2の半導体領域43、44には図10に示すように第1及び第2の電極51、52がオーミック接触している。第1及び第2の電極51、52は制御電流供給回路37に接続されているので、第5の半導体領域47に第1の半導体領域43から第2の半導体領域44に向って周知の制御電流Ic が流れる。従って、第1及び第2の半導体領域43、44を制御電流供給用半導体領域と呼ぶこともできる。なお、第1及び第2の電極51、52は周知の制御電流供給回路37を介して直流電源接続用の第3及び第4の端子40、41に接続されている。
【0018】
n型の第3及び第4の半導体領域45、46は、n型の第5の半導体領域47の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有するn+ 型半導体領域であって、第5の半導体領域47のY軸方向の中央部分の両端の近くに配置されている。この第3及び第4の半導体領域45、46の一部は第5の半導体領域47に隣接し、残部はp型半導体から成る第6及び第7の半導体領域48、49に隣接している。X軸方向において互いに対向している第3及び第4の半導体領域45、46には図10及び図12に示すように第3及び第4の電極53、54がオーミック接触している。従って、第3及び第4の半導体領域45、46をホール電圧検出用半導体領域と呼ぶこともできる。p型の第6及び第7の半導体領域48、49はn+ 型の第3及び第4の半導体領域45、46の第5の半導体領域47に対する接触面積を制限するものである。
【0019】
第1及び第2の半導体領域43、44間に制御電流Ic が流れ、この制御電流Ic に対して直交するように磁界を印加すると、第3及び第4の半導体領域45、46間に周知のホール効果の原理に従って磁束密度に比例したホール電圧が得られる。従って、ホール素子35のホール電圧を発生させるための主動作領域は、第5の半導体領域47における第1及び第2の半導体領域43、44の相互間及び第3及び第4の半導体領域45、46の相互間である。しかし、概略的には第5の半導体領域47の全体をホール素子の主動作領域と呼ぶことができる。
ホール電圧検出用の第3及び第4の電極53、54は、図9に示すように周知の増幅器36を介して第1及び第2の端子38、39に接続されている。
【0020】
半導体基板42の一方の主面には例えばシリコン酸化膜から成る絶縁膜55が設けられ、他方の主面には例えばアルミニウムから成る金属層56が設けられている。絶縁膜55は多層配線構造とするために第1及び第2の絶縁膜55a、55bの積層体から成る。第1及び第2の電極51、52は第1及び第2の絶縁膜55a、55bの開口を介して第1及び第2の半導体領域43、44に接続され、第3及び第4の電極53、54は第1の絶縁膜55aの開口を介して第3及び第4の半導体領域45、46に接続されている。半導体基板42の他方の主面の金属層56は導電性又は絶縁性の接合材57によって支持板21に固着されている。
【0021】
支持板21は、図9から明らかなように、この主面に垂直な方向から見て即ち平面的に見て全体的に四角形のパターンに形成されており、半導体チップ20よりも大きな面積を有する。支持板21と第1〜第4の外部リード端子22〜25とはリードフレームに基づいて形成されており、互いに同一厚み且つ同一の材料の例えば銅板にニッケルメッキした金属板から成る。支持板21及びリード端子22〜25は、電流通路形成用導体4よりも薄く形成されている。支持板21はワイヤ26によって半導体チップ20の第1の端子38に接続されている。この支持板21に連結された外部リード端子22は一般にはグランドに接続される。半導体チップ20の第2、第3及び第4の端子39、40、41は、ワイヤ27、28、29によって外部リード端子23、24、25に接続されている。
【0022】
支持板21に固着された半導体チップ20のホール素子35は、図1から明らかなように平面的に見てその大部分が電流通路形成用導体4の溝6の内側になるように配置されている。更に詳細には、図1及び図5で破線で示すように少なくともホール素子35の主動作領域が平面的に見て溝6の内側になるように半導体チップ20が配置されている。
【0023】
図1の電流検出装置によって電流を検出する時には、被検出電流が流れている電気回路に導体4の第1及び第2の端子部7a、7bを接続し、U字状電流通路を形成する導体4に電流を流す。電流通路形成用導体4は平面的に見てホール素子35の主動作領域となる第5の半導体領域47の3方向に近接しているので、電流通路形成用導体4に電流が流れると、アンペアの右ネジの法則に従って図12で破線で示す向きの磁界Hが発生し、3方向からホ−ル素子35に磁界即ち磁束が作用する。この磁界Hの向きは第5の半導体領域47の制御電流Ic の向きに垂直であるので、第3及び第4の半導体領域45、46間即ち第3及び第4の電極53、54間にホール電圧が発生する。このホール電圧は磁界Hに比例し、磁界Hは被検出電流に比例するので、ホール電圧によって被検出電流を検出することができる。
【0024】
本実施形態の電流検出装置は次の効果を有する。
(1) 電流通路形成体としての第1の部品1とホール装置としての第2の部分2とを別の工程で独立に形成し、その後に組立てるので,それぞれの良品のみを組み合せることができる。これにより、電流検出装置の製造歩留りの向上及びコストの低減が達成される。
(2) 第1の部品1に位置決め部分5a、5bを設け、ここに第2の部品2を位置決めするので、電流通路形成用導体4に対するホール素子35の位置決めを正確に行うことができ、電流検出のバラツキを防ぐことができる。
(3) 外部リード端子22〜25の位置決め部分5bを設けたので、これ等の相互間の短絡及びこれ等の変形を防ぐことができる。
(4) ホール素子35と一体的に電流通路形成用導体4を設けたので、ホール素子35に接近させて例えば100〜600Aのような大電流を流すことが可能になり、且つ両者の位置関係を予め高精度に設定することができ、大電流の検出を高精度に行うことができる。
(5) 導体4の溝6によってU字状の電流通路が形成されており、平面的に見てこのU字状電流通路の中にホール素子35の主動作領域となる第5の半導体領域47が配置されているので、第5の半導体領域47に対して磁束が3方向から作用し、ここに作用する磁束の数が多くなり、電流の検出感度が高くなる。
(6) 導体4に補助溝11a〜11eを設けて電流通路を狭めているので、放熱性及び機械的強度を向上させるために導体4を比較的幅広に形成したにも拘らず、電流を集中的に流すことができ、ホール素子35に対して有効に作用する磁束を増大させることができる。
(7) 支持板21と電流通路形成用導体4との間に半導体チップ20が配置されているので、支持板21が半導体チップ20のシールド層として機能し、外部からの不要電界ノイズを低減することができる。
(8) ホール素子35を含む第2の部品2と大電流が流れる電流通路形成用の第1の部品1とを重ねるように組み合せるので、電流検出装置の小型化が達成される。
(9) 第1及び第2の部品1,2を独立に形成するので、導体4の厚みに拘束されずに支持板21及び外部リード端子22〜25を電流通路形成用導体4よりも薄くすることが可能になり、ホールIC即ち第2の部品2を低コスト且つ容易に形成することができる。
(10) 電流通路形成用導体4とホ−ル素子35とが一体化されているので、電気回路に対する接続及び配置が容易になる。
(11) 電流通路形成用導体4は絶縁性包囲体100の第3の側面105から導出され、外側リ−ド端子22〜25は第3の側面105と反対側の第1の側面103から導出され、且つ平面的に見て2つの導出部は重ならないので電流通路形成用導体4と外部リ−ド端子22〜25との沿面距離を大きくすることができる。この結果、電流検出装置の信頼性を向上させることができる。また、比較的多きな電流を流すことができる電流通路形成用導体4の外部回路への接続を外部リ−ド端子22〜25に妨害されずに容易且つ確実に行うことができる。
【0025】
【第2の実施形態】
次に、図15〜図20を参照して第2の実施形態の電流検出装置を説明する。但し、図15〜図20において図1〜図14と共通する部分には同一の符号、又はダッシュ又は添字a、bを伴なった同一の符号を付してその説明を省略する。また、図15〜図20の説明において、図1〜図14も参照する。
【0026】
図15〜図20に示す第2の実施形態の電流検出装置は、図15に示す第1の部品1’と図16に示す第2の部品2’とを図19に説明的に示す接着層3’で一体化したものである。図15の第1の部品1’は第1の実施形態の図6の第1の部品1と同様に電流通路形成用導体4aと第1の樹脂成形体5’とを有し、第1の樹脂成形体5’は第1及び第2の位置決め部分5a’、5b’を有する。第2の部品2’は図16に示すように第1及び第2のホール素子35,35’を有し、且つ第2の樹脂成形体30’、外部リード端子22’〜25’を有する。なお、第1及び第2のホール素子35、35’は図19に示すように同一の半導体基板42aに形成されている。この第1及び第2のホ−ル素子35、35’は同一構造であるので、互いに共通する部分には同一の符号を付し、第2のホール素子35’の各部の符号にダッシュを付して両者を区別する。
【0027】
図17に示す電流通路形成用導体4aは、第1及び第2のホール素子35、35′の主動作領域である第5の半導体領域47、47′に隣接するS字状電流通路形成するために、第1及び第2の溝6,6′と複数の補助溝11a’、11b’とを有する。第1及び第2の溝6,6’は互いに逆の方向から切り込まれている。電流通路形成用導体4aの第1及び第2の端子部分7a’、8a’は、図8の第1及び第2の端子部分7a、7bと同様に被検出電流が流れる電気回路に接続される。第1及び第2のホール素子35、35´の主動作領域としての第5の半導体領域47,47´は平面的に見て第1及び第2の溝6,6´の内側に配置されている。
第1及び第2のホール素子35,35´を含む半導体チップ20´は図17に示すように金属支持板21に固着されている。第2の部品2´は第1の部品1´に対して第1及び第2の位置決め部分5a´、5b´を使用して位置決めされ、接着層3´で固着される。第2の樹脂成形体30´を伴って包囲体を構成する第1の樹脂成形体5´は、図1の第1の樹脂成形体5と同様に6面体であって、第1及び第2の主面101、102、第1、第2、第3及び第4の側面103、104、105、106を有している。電流通路形成用導体4aの第1の端子部7a´から成る一方の導出部は、第3の側面105から導出され、第2の端子部8a´からなる他方の導出部は第1の側面103から導出されている。図16に示す複数の外部リ−ド端子22´〜25´は図15の位置決め部分5b´に配置されて第1の側面103から導出される。第1の側面103からは端子部8a´と外部リ−ド端子22´〜25´との両方が導出されるが、平面的に見て両者は重ならない。
【0028】
電流通路形成用導体4aに流れる電流に基づいて生じる磁界Hの向きは第1及び第2のホール素子35、35′に対して図19で破線で示すように互いに逆になる。第1及び第2のホール素子35、35′に周知の制御電流Ic を流すために第1のホール素子35の第1及び第2の電極51、52と第2のホール素子35′の第1及び第2の電極51′、52′とが図20の周知の制御電流供給回路37aに接続されている。第1及び第2のホール素子35、35′の出力電圧を合成して被検出電流に対応する電圧を得るための出力回路36aは、第1、第2及び第3の差動増幅器71、72、73から成る。第1の差動増幅器71の正入力端子は第1のホール素子35の第3の電極53に接続され、この負入力端子は第1のホール素子35の第4の電極54に接続されている。第2の差動増幅器72の正入力端子は第2のホール素子35′の第3の電極53′に接続され、この負入力端子は第2のホール素子35′の第4の電極54′に接続されている。従って、第1の差動増幅器71から得られる第1のホール電圧Vh1と第2の差動増幅器72から得られる第2のホール電圧−Vh2は互いに逆の極性を有する。第3の差動増幅器73の正入力端子は第1の差動増幅器71に接続され、この負入力端子は第2の差動増幅器72に接続されている。従って、第3の差動増幅器73からはVh1−(−Vh2)=Vh1+Vh2の出力が得られる。即ち、演算手段としての第3の差動増幅器73からは、第1の差動増幅器71の出力Vh1の絶対値と第2の差動増幅器72の出力−Vh2の絶対値との和が得られる。
なお、第2の差動増幅器72の出力段に反転回路を設け、第3の差動増幅器73の代りに加算器を設けることによってVh1+Vh2を示す出力を得ることもできる。
【0029】
第1及び第2のホール素子35、35′は、図19に示すように共通の半導体基体42aに形成されている。勿論、第1及び第2のホール素子35、35′を個別の半導体基体に形成することもできる。
【0030】
第2の実施形態は第1の実施形態の(1)〜(10)と同一の効果を有する他に次の効果も有する。
(1) 第1及び第2のホール素子35、35′の出力の絶対値の加算値が得られるので、電流検出感度が大きくなる。
(2) 電流通路形成用導体4aの中間部分を第1及び第2のホール素子35、35′で共用しているので、スペースの増大が抑えられている。
(3) 第1及び第2のホール素子35、35′を並置し、この合成出力を得る構成であり、且つ第1及び第2のホール素子35、35′に対する磁界Hの方向が逆になるので、不要な外部磁界(ノイズ)が第1及び第2のホール素子35、35′に加わった場合にこれ等の相殺が生じ、外部磁界の影響の少ない電流検出を行うことができる。即ち不要外部磁界に基づくホール電圧をV0 とすると、第1の差動増幅器71の出力はVh1+V0 、第2の差動増幅器72の出力は−Vh2+V0 となり、第3の差動増幅器73の出力はVh1+V0 −(−Vh2+V0 )=Vh1+Vh2となり、不要外部磁界の影響の少ない出力を得ることができ、電流Is の検出精度が向上する。
【0031】
【第3の実施形態】
次に、図21を参照して第3の実施形態の電流検出装置を説明する。但し、図21において図1と実質的に同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図21の電流検出装置は、電流通路形成用導体4の外部への導出構成を変え、この他は、図1と実質的に同一に形成したものである。即ち、図21では、第1及び第2の端子部分7a、8aが図1に比べて左側及び右側に延びている。また、電流通路形成用導体4の第1及び第2の端子部分7a、8aの間のU字状溝6を含む部分が第1の樹脂形成体5で被覆されている。従って、電流通路形成用導体4の第1の端子部分7aを含む一方の導出部が包囲体100即ち第1の樹脂成形体5の第2の側面104から導出され、第2の端子部分8aを含む他方の導出部が包囲体100即ち第1の樹脂成形体5の第4の側面106から導出されている。第2の部品2の外部リ−ド端子22〜25は図1と同様に包囲体100の第1の側面103から導出されている。この結果、平面的に見て電流通路形成用導体4の導出部と外部リ−ド端子22〜25の導出部との重なり合いが生じていない。
【0032】
図21の第3の実施形態は、図1の第1の実施形態と同一の効果(1)〜(11)を有する他に、次の効果も有する。
(1) 第1の端子部分7aと第2の端子部分8aとが互いに離間しているので、外部回路に対する第1及び第2の端子部分7a、8aの取付け作業が容易になる。
(2) 第1及び第2の端子部分7a、8aの間が第1の樹脂成形体5で被覆されているので、第1及び第2の端子部分7a、8aの短絡を防止することができる。
【0033】
【変形例】
本発明は上述の実施形態に限定されるものでなく、例えば次の変形が可能なものである。
(1) 図8の溝6及び図15の溝6,6’の代りに、図22に示すようにJ字状溝6aを設け、この溝6aで囲まれた部分にホール素子35を配置することができる。なお、J字状溝6aに囲まれた部分80は放熱体及び電界シールドとして機能する。
(2) 各実施形態において、半導体基体42、42aの電流通路形成用導体4,4aと反対側の主面上に磁性体から成る集磁板を配置することができる。
(3) 半導体基体42、42a’をシリコン等の別の半導体で形成することができる。
(4) 図23に示すように、支持板21の導体4又は4aに対向しない表面側に半導体チップ20を配置することができる。この場合には、導体4に乗ってくるノイズがホ−ル素子35を含む半導体チップ20に及ぶことを支持板21によって防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態の電流検出装置を示す平面図である。
【図2】図1の第1の実施形態の電流検出装置のA−A線の一部を示す断面図である。
【図3】図1のB−B線を示す断面図である。
【図4】図1のC−C線を示す断面図である。
【図5】図1の電流検出装置を第1及び第2の部品に分解して図2と同様な断面で示す断面図である。
【図6】図1の第1の部品の平面図である。
【図7】図1の第2の部品を示す平面図である。
【図8】図6の第1の部品の電流通路形成用導体を示す断面図である。
【図9】図7の第2の部品を樹脂成形体を省いて示す平面図である。
【図10】図9の半導体チップの底面図である。
【図11】図10の半導体基体のホール素子部分を示す平面図である。
【図12】図10のD−D線の一部を示す断面図である。
【図13】樹脂層を設けた電流検出装置を図2と同様に示す断面図である。
【図14】樹脂層を設けた電流検出装置を図3と同様に示す断面図である。
【図15】第2の実施形態の電流検出装置の第1の部品を示す平面図である。
【図16】第2の実施形態の第2の部品を示す平面図である。
【図17】図15の電流通路形成用導体を示す平面図である。
【図18】第2の実施形態のS字状電流通路と第1及び第2のホール素子とを示す平面図である。
【図19】第2の実施形態の電流検出装置の一部を図18のE−E線に相当する部分で示す断面図である。
【図20】第2の実施形態の電流検出装置を示す電気回路図である。
【図21】第3の実施形態の電流検出装置を図1と同様に示す平面図である。
【図22】変形例の電流通路形成用導体を示す平面図である。
【図23】変形例の電流検出装置を図14と同様に示す断面図である。
【符号の説明】
1、2 第1及び第2の部品
3 接着層
4 電流通路形成用導体
5、30 樹脂成形体
5a、5b 位置決め部分
20 半導体チップ
21 支持板
22〜25 外部リード端子
35 ホール素子
Claims (11)
- 電気回路の電流を検出するための装置であって、
第1の部品と第2の部品と前記第2の部品を前記第1の部品に対して固着している接着層とを備え、
前記第1の部品は、前記電気回路の電流を流すための電流通路形成用導体と、前記電流通路形成用導体の一部を被覆しており且つ前記第2の部品を位置決めするための位置決め部分を有している第1の絶縁性被覆体とから成り、
前記第2の部品は、ホール素子と、前記ホール素子を外部回路に接続するための複数のリード端子と、前記ホール素子と前記複数のリード端子の一部とを被覆している第2の絶縁性被覆体とから成り、且つ前記電流通路形成用導体を流れる電流の基づいて発生する磁界が前記ホール素子に作用するように前記第1の部品の前記位置決め部分に対して位置決めされ、且つ前記接着層によって前記第1の部品に固着されていることを特徴とする電流検出装置。 - 前記第1の絶縁性被覆体の前記位置決め部分は、前記第2の部品の前記第2の絶縁性被覆体を位置決めするための第1の位置決め部分と、前記複数のリード端子を位置決めするための第2の位置決め部分とから成ることを特徴とする請求項1記載の電流検出装置。
- 前記電流通路形成用導体は、溝を介して並置されている第1及び第2の部分と前記第1及び第2の部分を連結する第3の部分とを有し、全体としてU字状電流通路を形成する板状体であり、前記ホ−ル素子の主動作領域が平面的に見て前記溝の内側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電流検出装置。
- 前記電流通路形成用導体は、その外周縁から内側に向かって切り込まれた電流通路を狭めるための溝を有していることを特徴とする請求項3記載の電流検出装置。
- 前記第2の部品は、更に、前記ホール素子を支持する金属製支持板を有し、前記支持板は前記第2の絶縁性被覆体で被覆されており且つ前記電流通路形成用導体に対向するように配置され、前記ホ−ル素子は前記支持板の前記電流通路形成用導体に対向する側の主面に配置されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の電流検出装置。
- 前記第2の部品は、更に、前記ホール素子を支持する金属製支持板を有し、前記支持板は前記第2の絶縁性被覆体で被覆されており且つ前記電流通路形成用導体に対向するように配置され、前記ホ−ル素子は前記支持板の前記電流通路形成用導体に対向する側の主面と反対側の主面に配置されていることを特徴とする請求項1又は2又は3又は4記載の電流検出装置。
- 前記第1の絶縁性被覆体は、前記電流通路形成用導体の外部接続用端子部分と前記第2の絶縁性被覆体に対向する部分とを被覆しないように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電流検出装置。
- 前記ホ−ル素子は半導体基体に形成されており、更に、前記半導体基体に前記ホ−ル素子の出力電圧を増幅する増幅器が形成され、前記複数のリード端子は前記増幅器を介して前記ホール素子に接続されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電流検出装置。
- 電気回路の電流を検出するための装置であって、
第1の部品と第2の部品と前記第2の部品を前記第1の部品に対して固着している接着層とを備え、
前記第1の部品は、前記電気回路の電流を流すための電流通路形成用導体と、前記電流通路形成用導体の一部を被覆しており且つ前記第2の部品を位置決めするための位置決め部分を有している第1の絶縁性被覆体とから成り、
前記第2の部品は、第1及び第2のホール素子と、前記第1及び第2のホール素子を外部回路に接続するための複数のリード端子と、前記第1及び第2のホール素子と前記複数のリード端子の一部とを被覆している第2の絶縁性被覆体とから成り、且つ前記電流通路形成用導体を流れる電流の基づいて発生する磁界が前記第1及び第2のホール素子に作用するように前記第1の部品の前記位置決め部分に対して位置決めされ、且つ前記接着層によって前記第1の部品に固着され、
前記電流通路形成用導体は、平面的に見てS字状電流通路を形成するための第1及び第2の溝を有し、
平面的に見て前記第1のホ−ル素子は前記第1の溝の内側に配置され、前記第2のホ−ル素子は前記第2の溝の内側に配置されていることを特徴とする電流検出装置。 - 前記第1及び第2のホ−ル素子の出力電圧の絶対値の加算値に対応する出力を得るように前記第1及び第2のホ−ル素子に接続された出力手段を備えていることを特徴とする請求項8記載の電流検出装置。
- 前記電流通路形成用導体は平面的に見て前記第1及び第2の絶縁性被覆体から成る包囲体から導出された導出部を有し、前記複数のリ−ド端子は平面的に見て前記包囲体から導出された導出部を有し、平面的に見て、前記電流通路形成用導体の前記導出部が前記複数のリ−ド端子の前記導出部に重ならないように配置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の電流検出装置。
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