JP4025608B2 - 粒状シリコン結晶の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は粒状シリコン結晶の製造方法に関し、特に太陽電池に用いる粒状シリコンを形成するのに好適な粒状シリコン結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
太陽電池は、性能面での効率、資源の有限性、あるいは製造コストなどといった市場ニーズを捉えて開発がされている。有望な太陽電池の一つとして、粒状シリコンを用いた光電変換素子がある。
【0003】
粒状シリコンを作製するための原料としては、単結晶シリコンを粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法で気相合成された高純度シリコンを用いる。それら原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波コイルで容器内で溶融し、その後に自由落下させる方法(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、同じく高周波プラズマを用いる方法(特許文献3参照)で球状化させる。
【0004】
しかしながら、これらの方法では原料の重量の均一化や不純物量の制御の点から問題があった。すなわち、重量のバラツキは作られる球の大きさにそのまま反映するため、均一な重量の原料が望まれる。従って、ボールソーラー太陽電池向けに有効な大きさに対応する重量の原料を粉砕や分級などの手法で効率よく得ることはシリコンなどの金属材料では困難である。
【0005】
一方、球状のシリコン粒子でその形状を球状に維持するために、その周囲を酸化皮膜で覆った後、熱処理して再結晶化させて粒状シリコン結晶を作製しようとするものが提案されている(例えば特許文献4や特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、この方法の場合であっても、一旦は、一定重量の粒状シリコンあるいはシリコン粉末を安定して作製する必要があるため、製造過程では造粒あるいは粉砕と分級といった工程をとり入れる必要があり、製造プロセスは煩雑で長くなり、生産性は低いものである。また、作製される球の形状も、出発原料となる元の粒子の形状を反映するため太陽電池素子を形成する場合には、その不均一さが特性の安定した素子製造において支障がある。
【0007】
また、微小重力状態で自由落下させて粒状シリコンを作製する場合、シリコン融液を坩堝を使用して形成する必要があり、耐熱性、強度、熱伝導性を考慮に入れると坩堝材にはグラファイトなどが適している。
【0008】
しかし、グラファイトを坩堝材に用いた場合にはシリコン中への炭素不純物汚染が大きな問題となる。炭素不純物はシリコンのバンドギャップ内に不純物準位を形成するため、そこでキャリアがトラップされて起電力が低下する。シリコンの結晶中に混入した炭素不純物は酸素析出を増速し、デバイスプロセス中に欠陥などを引き起こすという欠点もある。
【0009】
単結晶シリコンウエハーを用いた太陽電池では、炭素濃度が2×1017atoms/ccで変換効率が13.7%、炭素濃度が1×1017atoms/cc以下であれば変換効率が14.4%が得られている(例えば非特許文献1参照)。このことからも、これら粒状シリコンを用いた太陽電池で高い変換効率を得るためには炭素不純物濃度を低減化することも必要不可欠である。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、多結晶シリコンを安定して高効率に単結晶化すると同時に、炭素不純物濃度が低減化された高品質な粒状シリコン結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【特許文献1】
国際公開第99/22048号パンフレット
【特許文献2】
米国特許第4188177号明細書
【特許文献3】
特開平5−78115号公報
【特許文献4】
米国特許第4430150号明細書
【特許文献5】
特開平58−55393号公報
【非特許文献1】
"Improve High Purity Arc-Furnace Silicon for Solar Cells", J.Electrochem Soc. 1985 p.339
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、サヤに入れた粒状シリコンを雰囲気ガス中で加熱して表面に前記ガスの成分を含む珪素化合物から成る被膜を形成して内部を溶融してシリコン融液とした後、降温して凝固させる粒状シリコン結晶の製造方法において、前記サヤとの接触部であるとともに前記被膜の膜厚が他に比べて薄い前記被膜の一部から前記シリコン融液の一部を排出して凝固させて微小突起を形成することを特徴とする。
【0013】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンの大きさが直径800μm以下であることが望ましい。
【0014】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記微小突起の大きさが直径10μm以上であることが望ましい。
【0015】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記微小突起の凝固させた後の炭素濃度が3×1018atoms/cc以上であることが望ましい。
【0016】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコン結晶内部の凝固させた後の炭素濃度が1.5×1018atoms/cc以下であることが望ましい。
【0017】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記被膜がシリコンの酸化膜あるいは酸窒化膜であることが望ましい。
【0018】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記シリコン融液の一部を排出させる部分の前記被膜の膜厚が1〜20μmであることが望ましい。
【0019】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記シリコン融液の一部を排出させる部分以外の前記被膜の膜厚が20μm以上であることが望ましい。
【0020】
また、上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンを石英ガラス、酸化アルミニウム、あるいは多結晶サファイアのいずれかからなるサヤに入れて前記雰囲気ガス中で加熱することが望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は粒状シリコンの形成に用いられる坩堝を示す図であり、1は全体として坩堝、2は本体部材、3はノズル部材である。
【0022】
坩堝1は、円筒状の本体部材2とこの本体部材2の底部に取り付けられる円盤状のノズル部材3とで構成される。
【0023】
坩堝の本体部材2は、例えばシリコンとの反応を抑えるための内壁部材2aとこの内壁部材2aの外側に配設される外壁部材2bとから構成される。この外壁部材2bは、強度を確保するために設ける。この内壁部材2aと外壁部材2bは、鋳込み成形法やホットプレス法などで緻密化された焼結体で構成される。シリコンとの反応を抑えるには、酸化アルミニウム、炭化珪素、グラファイトなどがよいが、加工のしやすさの点ではホットプレスで焼結したグラファイトなどがよい。グラファイトで形成する場合、加工した後にその純度を上げるために、酸による洗浄を行なった後、水洗と乾燥を行なって使用する。これらは、例えば内壁部材2aの外側と外壁部材2bの内側にネジ4を設けて組み立てる。
【0024】
また、坩堝1の先端側にはノズル孔3aを有するノズル部材3が設けられている。つまり、先端に小径部2cを有する坩堝1の外壁部材2bとは別体にシリコン融液を排出するためのノズル孔3aを有するノズル部材3を設け、このノズル部材3を坩堝1の本体部材2の先端小径部2cの内側に配設したものである。このノズル部材3は、炭化珪素、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、立方晶窒化ボロンなどからなる。この各材料は単結晶あるいは多結晶体が用いられる。
【0025】
このノズル部材3に設けられるノズル孔3aは複数設けてもよい。このことにより孔の数量だけ生産性の向上が図れるため、製造上のメリットは大きい。ノズル孔3aの加工は、機械加工、レーザー加工、あるいは超音波加工などで行なう。
【0026】
上述のように坩堝1の本体部材2とノズル部材3とを別部材で形成して、それを組立てることができる構造にすることで、ノズル部材3のみを差し替えることが可能となり、高価な坩堝1の本体部材2は繰り返して使用することができる。
【0027】
このような坩堝1にシリコン原料を投入して、誘導加熱または抵抗加熱ヒータ(不図示)で1470℃まで温度を上昇させシリコン原料全体を溶融させる。
【0028】
溶解したシリコン融液4の上部をアルゴンガスなどで例えば0.5MPa以下で加圧してノズル部材3のノズル孔3aから押し出すことにより、シリコン融液を噴霧して、多数の滴状にする。多数の滴状に噴出したシリコン融液は自由落下中に固化して粒状シリコンとなる。このとき、滴状のシリコン融液は、ガス雰囲気に調整が可能な管状体5の内部を自由落下する。この管状体5は気密が保たれるものであれば石英管、アルミナ管、ステンレス管などいずれの材料を用いることも可能である。管状体内部の雰囲気調整方法は、管状体に接続された圧力とガス濃度が調整可能な機構を持つものであれば特に限定されるものではない。また溶融させるシリコンには、所望の半導体用不純物を含有させておくのが望ましい。自由落下中に固化したものは容器に収容される。
【0029】
次に、回収した粒状シリコンの炭素不純物を除去するとともに単結晶化する。まず粒状シリコンの表面付着異物を除去するために、半導体物質の洗浄に一般的に用いられているRCA洗浄法で溶液洗浄を行う。次に粒状シリコンをサヤ上に一層で密に充填する。密とはできるだけ隙間がないようにという意味であり、粒同士は接触していてもよい。粒状シリコンの直径は100〜800μmが望ましく、それらの形が球に近いことが望ましい。ただしその他の形であってもよい。すなわち、粒状シリコンの直径が800μmより大きいと微小突起の大きさが直径10μm以下の大きさとなりシリコン融液の大部分が粒状シリコン結晶内部で凝固するため、シリコン融液中の凝縮された不純物を有効に被膜の外側に排除することができにくい。
【0030】
粒状シリコンを充填するサヤの材質は単結晶化するシリコンとの反応を抑えるために、石英ガラス、酸化アルミニウム、あるいは単結晶サファイヤのいずれかからなることが望ましいが、コストの面や扱い易さからは石英ガラスが望ましい。石英ガラスを用いる場合にはフッ酸による洗浄をした後、水洗と乾燥を行なって使用する。このサヤは何段に積み上げてもよい。
【0031】
図2は粒状シリコン結晶の製造方法に用いる温度プロファイルを示す図である。製造装置にはセラミックの焼成などに用いる雰囲気焼成炉あるいは半導体で一般的に用いられる横型酸化炉などが適する。このような製造装置にサヤ上に充填された粒状シリコンを配設して、酸素ガスあるいは酸素ガスと窒素ガスを含むアルゴン雰囲気ガスで満たされた炉内で誘導加熱または抵抗加熱ヒータ(不図示)で粒状シリコンを加熱する。
【0032】
次に101では粒状シリコンの表面上にシリコンの酸化膜あるいは酸窒化膜を形成するために、炉内の温度をシリコンの融点より低い温度へ上げていく。望ましくは約1380℃まで温度を上昇させる。酸化膜もしくは酸窒化膜の被膜が形成された被膜の内側でシリコンを溶融させる場合、102のように融点よりも若干低い約1380℃程度の温度で3分間程度一定温度に保持することが望ましい。すなわち約1380℃に保持することで炉内あるいはシリコンの温度分布の均一性を向上し、緻密な酸化被膜もしくは酸窒化膜を安定して形成することができ、もってシリコンが溶融するときにそれを充分に保持することができる。
【0033】
被膜の膜厚は1μm以上であることが望ましい。すなわち、被膜の膜厚が1μmより薄い場合にはシリコンが溶融時に形状を安定に保つことが困難で破れやすく、その結果サヤと融着固化反応をするため望ましくない。
【0034】
次に103においてシリコンの融点以上、望ましくは1420〜1440℃の温度へ昇温させ、104において約2分間その温度を保持する。この間に酸化膜もしくは酸窒化膜の被膜内のシリコンの溶融が起こる。103および104においては雰囲気中の酸素および窒素で連続的に酸化膜もしくは酸窒化膜の被膜が形成されるため、被膜表面の一部が破れることがあっても割れ目などを補整することができる。
【0035】
次に105において溶融したシリコンを凝固させて結晶化するために約1380℃まで降温する。シリコン融液のような液体状態の物質をシリコン酸化膜のような珪素化合物被膜の内側で徐々に冷却して凝固させる場合、冷却が進行するとシリコン融液の凝固は結晶表面から内部方向へ、あるいは結晶表面のある微小なシリコン結晶を核とした核成長で徐々に内部へ広がっていく。その際に被膜が変形可能な膜厚であれば表面張力で球形化しようとするため粒状シリコン結晶を真球に近い形にすることができる。ところが、被膜が変形できないほど厚く、しかも被膜の一部分に変形可能な膜厚の薄い部分が形成されていたとすれば、被膜の内側のシリコン融液と凝固により結晶化されたシリコンとの界面間では密度差が大きいため、中心に近い内部のシリコン融液の部分が凝固する際には固化膨張で自由空間のある領域、つまり被膜の膜厚の薄い部分からシリコン融液が押し出されてシリコンの微小突起が被膜の外側に形成されやすくなる。
【0036】
粒状シリコンとサヤとの接触部以外の被膜の厚みは20μm以上であることが望ましい。すなわち20μm以下であれば被膜が充分に変形できるため、シリコンが溶融したときの表面張力で粒状シリコンが真球に近い形になり、被膜の外側にシリコンの微小突起を形成することができない。また、粒状シリコンとサヤとは接触しているため、その接触部では被膜の膜厚が他に比べて若干薄くなっている。被膜の外側にシリコンの微小突起を形成するためには、その部分の被膜が変形可能である20μm以下の膜厚であることが望ましい。
【0037】
上記のように被膜が変形できないほど充分に厚い膜厚であり、しかも被膜の一部分では変形可能な膜厚の薄い部分が形成されていたとすれば、被膜の内側のシリコン融液と凝固により結晶化されたシリコンとの界面間では密度差が大きいため、中心に近い内部のシリコン融液の部分が凝固する際には固化膨張で自由空間のある領域つまり被膜の膜厚の薄い部分からシリコン融液が押し出されてシリコンの微小突起が被膜の外側に形成される。
【0038】
溶融と凝固という過程における結晶中の不純物濃度は、坩堝のノズル部からシリコン融液を滴状に排出して落下させて微小重力状態で冷却させる場合の溶融と固化の場合と異なり、有効偏析係数に依存するため、偏析係数が1より小さい場合には凝固された結晶中に不純物が固溶されにくく融液中に随時吐き出されて凝縮されていく。従って、シリコン融液中に凝縮された不純物を固化膨張で変形可能な珪素化合物被膜の膜厚の薄い部分から被膜の外側に微小突起として吐き出すことができれば結晶中の不純物濃度を低減化することが可能となる。特に平衡偏析係数がk=0.07と1よりかなり小さい炭素の場合は、溶融と凝固を利用すれば被膜の外側に形成されたシリコンの微小突起中にその多くを排出して除去することが可能となる。p型ドーパントとして一般的に用いられているホウ素は平衡偏析係数がk=0.8と1に近いため結晶中に固溶しやすく、粒状シリコン結晶の内部のホウ素濃度が溶融前と比べて低下したり、径方向で濃度分布を形成するようなことはない。このように不純物の偏析と溶融および凝固との現象を利用して被膜の外側に微小突起を形成することができれば、炭素不純物のような不必要な物質だけを粒状シリコン結晶中から除去できる。
【0039】
微小突起の大きさは直径10μm以上であることが望ましい。粒状シリコンの直径が800μm以下であれば微小突起の大きさは直径10μm以上となり、シリコン融液中の凝縮された炭素濃度を微小突起中に3×1018atoms/cc以上で有効に除去することができる。その結果シリコン結晶の内部の凝固させた後の炭素濃度を1.5×1018atoms/cc以下まで低減化できる。粒状シリコンの直径が800μm以上になると微小突起の大きさは直径10μm以下となりシリコン融液の大部分が粒状シリコン結晶内部で凝固するためシリコン融液中の凝縮された不純物を有効に被膜の外側に排除することができない。また、微小突起の大きさが直径10μm以下の場合は球状に近い形状とはならないため粒状シリコン結晶との区別がつきにくく、後工程で機械操作やエッチング等で除去することも困難となる。
【0040】
106においては全ての粒状シリコンを完全に凝固させるために約1380℃で約10分程度温度を保持することが望ましい。保持時間が10分よりも短い場合や保持時間がない場合は、サヤ上の面内温度が不均一になって凝固速度の違いによる結晶化のばらつきを生じるおそれがある。
【0041】
次に、107において1250℃まで降温し、108の約1250℃で約2時間程度のアニール処理を施すことが望ましい。酸化被膜もしくは酸窒化被膜の被膜を形成するときおよびシリコンが溶融したときに、被膜の内側のシリコン中に導入された過剰な酸素を除去するために、あるいは溶融凝固後のシリコンの結晶性を向上させるためである。シリコン中に混入した酸素は後工程の熱履歴で析出すると転位欠陥や積層欠陥となって電気特性を大幅に劣化させる。酸素析出核の収縮と成長は温度に依存するため、高温になれば析出物のサイズが大きくなってその密度は減少する。700℃より低い場合には酸素析出物の密度は減少しないので望ましくない。また、溶融して凝固した後の結晶性を向上させる方法としても熱アニールは有効である。高温で保持することで原子の再配列が起こって結晶内の歪低減や粒界等の欠陥等を減少させる効果がある。そして、109において室温まで降温する。
【0042】
上記雰囲気ガスは不活性ガスであるアルゴン以外に、酸素ガスもしくは酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを用いる。反応ガスとシリコンとの反応で形成される被膜のうち、酸窒化膜は酸化膜に比べて粒子が隣合っても粒子間の表面拡散が少ないためにより結合しにくくなり、たとえ高温で粒子同士が接触していても結合したり合体したりせず大粒子化することを回避できる。また、酸窒化膜を形成する際の反応ガスの各分圧は、酸素分圧が1〜20%、窒素分圧が4〜80%であることが望ましい。すなわち、雰囲気ガス中の酸素分圧が1%未満で、窒素分圧が4%未満の場合、粒子同志の結合が発生しやすくなって望ましくない。雰囲気ガス中の酸素分圧が20%以上で、窒素分圧が80%以上の場合、粒状シリコン表面に形成された酸窒化被膜に亀裂が発生しやすくなる。
【0043】
炉内のアルゴン不活性ガスおよび酸素ガスもしくは酸素ガスと窒素ガスを含む雰囲気ガス中の酸素ガスと窒素ガスの各分圧は、アルゴン流量に対する酸素ガスと窒素ガスの流量で調整することができる。圧力とガス濃度が調整可能な機構を持つものであればよい。また、酸素ガスもしくは酸素ガスと窒素ガスの分圧は酸窒化膜の形成からアニール後の冷却まで変化させず一定に保ってもよい。
【0044】
このようにして得られる粒状シリコン結晶は太陽電池を形成するために使用される。
【0045】
このような方法で被膜部分の一部から形成された直径10μm以上の大きさの微小突起は球状に近い形状となるため粒状シリコン結晶との区別がつきやすく、後工程で機械操作やエッチング等で除去することも比較的容易である。シリコンの酸化被膜あるいは酸窒化被膜についても、通常のシリコン酸化物の除去に用いられるフッ化水素等のエッチングで除去できる。
【0046】
【実施例】
内径19.0mmφ、外径25.0mmφ、長さ143mmの寸法に加工され、グラファイト(ポコ社グラファイトDFP−2など)で構成され、ノズル孔3aをレーザ加工したノズル部材3を有する坩堝を、ArまたはHeなどの不活性ガス雰囲気に維持できる炉の中にセットして1470℃に全体の温度を設定した。この坩堝へ同じく不活性雰囲気に保たれた経路を通じてシリコン原料18gを供給して完全に溶解した。この十分に溶解した状態の原料に0.5MPaのガス圧力をかけて、ノズル孔より一気に全量を噴霧して排出した。噴霧した液滴は同じく不活性雰囲気に維持した管状体5の中を自由落下して冷却凝固した。管状体4には石英管を用い、内部の圧力を外気圧と同じになるように維持した。不活性雰囲気にはArガスを用い、Ar流量に対する酸素流量で雰囲気中の酸素濃度を調整した。
【0047】
次に、RCA洗浄した平均粒径300μmの粒状シリコンを石英ガラスのサヤ上に一層で充填した。酸素ガスと窒素ガスとアルゴンガスとを含む雰囲気ガスで満たされた雰囲気焼成炉内でシリコン全体を加熱した。室温から1380℃まで昇温しながら酸化被膜もしくは酸窒化被膜をシリコン表面に形成し、1420℃で被膜の内側のシリコンを2分間溶融させた後、凝固過程で1380℃で10分保持した。その後1250℃まで降温し、2時間の熱アニールした。最後に室温まで降温させた。
【0048】
上記炉内の雰囲気ガス中の酸素ガスと窒素ガスの各分圧はアルゴンガス流量に対する酸素ガスと窒素ガスの各流量で調整した。酸素ガスと窒素ガスの各分圧は終始一定に保ちつつ室温状態まで流しつづけた。
【0049】
サヤとの接触部で粒状シリコンに形成される酸化被膜もしくは酸窒化被膜の厚みが20μm以下であり、サヤとの接触部以外で形成される粒状シリコンの酸化被膜もしくは酸窒化被膜の厚みが20μm以上の場合、サヤとの接触部で膜厚が薄く変形可能な被膜からシリコン融液の一部が外部に排出され、直径10μm以上の大きさのシリコンの微小突起が被膜の外側に形成された粒状シリコン結晶ができた(実施例)。
【0050】
サヤとの接触部以外で形成される粒状シリコンの酸窒化被膜の被膜被厚が20μm以下の場合にはシリコンの微小突起が被膜の外部に形成されない球形の粒状シリコン結晶ができた(比較例)。すなわち、サヤとの接触部以外で形成される粒状シリコンの酸化膜もしくは酸窒化膜の被膜厚が20μm以下であった場合には、被膜全体が充分に変形可能であるためシリコンが溶融したときの表面張力で粒状シリコンが真球に近い形になり、被膜の外側にシリコンの微小突起を形成することはできなかった。
【0051】
表1に示すように、粒状シリコンの大きさを段階的に変化させた実施例で作製された粒状シリコンの結晶と被膜の外部に形成されたシリコンの微小突起中の炭素不純物濃度について分析した。なお、粒状シリコン結晶中の炭素濃度はSIMS分析を用い、フッ酸および硝フッ酸のエッチングで酸化膜もしくは酸窒化膜が除去された状態の粒状シリコンの最表面から0.5μmよりも深い部分である一定濃度に落ち着いたところを測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
その結果、粒状シリコン結晶中の炭素不純物濃度は、実施例に示すように被膜の外側にシリコンの微小突起を形成した方がそのような微小突起を形成しない場合に比べて低くなった。比較例に示すような方法では、被膜の外側にシリコンの微小突起を形成できず、粒状シリコン結晶中の炭素不純物濃度を低減化できなかった。また、粒状シリコンの大きさが直径800μmより大きくなると微小突起を形成してもその大きさが直径10μm以下となり、粒状シリコン結晶中の炭素不純物濃度も低減化できなかった。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、サヤに入れた粒状シリコンを雰囲気ガス中で加熱して表面に上記ガスの成分を含む珪素化合物から成る被膜を形成して内部を溶融してシリコン融液とした後、降温して凝固させる粒状シリコン結晶の製造方法において、サヤとの接触部であるとともに被膜の膜厚が他に比べて薄い上記被膜の一部から上記シリコン融液の一部を排出して微小突起を形成することから、シリコン微小突起に炭素不純物を凝縮させることができ、その微小突起も後工程のエッチング等で除去が容易に可能であるため、粒状シリコン結晶の炭素不純物濃度低減化による高品質化が実現される。これにより、太陽電池素子向けに用いる粒状シリコン結晶の炭素不純物汚染を低減化でき、粒状シリコンの結晶性も向上して高品質化できるため、太陽電池モジュールの作製上、効率的なシリコン材料の利用を可能にすると同時にその高効率化と信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に用いる坩堝を示す図である。
【図2】本発明に係る粒状シリコン結晶の製造方法の温度プロファイルの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 坩堝
2 本体部材
2a 内壁部材
2b 外壁部材
3 ノズル部材
3a ノズル孔
4 融液
5 管状体
101 室温〜1380℃
102 1380℃(3分間)
103 1380℃〜1440℃(8分間)
104 1440℃(2分間)
105 1440℃〜1380℃(5分間)
106 1380℃(10分間)
107 1380℃〜1250℃
108 1250℃(2時間)
109 1250℃〜室温
Claims (9)
- サヤに入れた粒状シリコンを雰囲気ガス中で加熱して表面に前記ガスの成分を含む珪素化合物から成る被膜を形成して内部を溶融してシリコン融液とした後、降温して凝固させる粒状シリコン結晶の製造方法において、前記サヤとの接触部であるとともに前記被膜の膜厚が他に比べて薄い前記被膜の一部から前記シリコン融液の一部を排出して凝固させて微小突起を形成することを特徴とする粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコンの大きさが直径800μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記微小突起の大きさが直径10μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記微小突起の凝固させた後の炭素濃度が3×1018atoms/cc以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコン結晶内部の凝固させた後の炭素濃度が1.5×1018atoms/cc以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記被膜がシリコンの酸化膜あるいは酸窒化膜であることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記シリコン融液の一部を排出させる部分の前記被膜の膜厚が1〜20μmであることを特徴とする請求項1または5に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記シリコン融液の一部を排出させる部分以外の前記被膜の膜厚が20μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコンを石英ガラス、酸化アルミニウム、または多結晶サファイアのいずれかからなるサヤに入れて前記雰囲気ガス中で加熱することを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
Priority Applications (1)
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