JP2004217489A - 粒状シリコン結晶の製造方法および粒状シリコン結晶 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒状シリコン結晶の製造方法において、変換効率特性に優れた高品質な粒状シリコン結晶を安定して作製でき、量産性に優れた低コストな粒状シリコン結晶を製造する。
【解決手段】粒状シリコンを酸素ガスと窒素ガスの反応性ガスを含むアルゴンガス雰囲気中で加熱して表面にシリコンの酸窒化被膜を形成して内側のシリコンを溶融させた後、降温して凝固させて結晶化する粒状シリコン結晶の製造において、前記粒状シリコンを溶融・凝固した後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃の温度、30分間〜24時間の熱アニールを行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】粒状シリコンを酸素ガスと窒素ガスの反応性ガスを含むアルゴンガス雰囲気中で加熱して表面にシリコンの酸窒化被膜を形成して内側のシリコンを溶融させた後、降温して凝固させて結晶化する粒状シリコン結晶の製造において、前記粒状シリコンを溶融・凝固した後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃の温度、30分間〜24時間の熱アニールを行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粒状シリコン結晶の製造方法とその製造方法によって製造される粒状シリコン結晶に関し、特に太陽電池に用いる粒状シリコンを製造するのに好適な粒状シリコン結晶の製造方法とその製造方法によって製造される粒状シリコン結晶に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
太陽電池は、性能面での効率、資源の有限性、あるいは製造コストなどといった市場ニーズを捉えて開発がされている。有望な太陽電池の一つとして、粒状シリコンを用いた太陽電池がある。
【0003】
粒状シリコンを作製するための原料としては、単結晶シリコンを粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法で気相合成された高純度シリコンを用いている。それら原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波コイルを用いて容器内で溶融し、その後に自由落下させる方法(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、同じく高周波プラズマを用いる方法(例えば特許文献3参照)で球状化させる。
【0004】
しかしながら、これらの方法で製造された粒状シリコンはそのほとんどが多結晶体である。多結晶体は微結晶の集合体であるため微結晶間には粒界が存在する。粒界は半導体装置の電気特性を劣化させる。粒界の境界にはキャリヤの再結合中心が集まっており、再結合が生ずることで少数キャリヤのライフタイムが大幅に低減するためである。
【0005】
太陽電池のように電気特性が少数キャリヤの寿命の増大とともに大幅に向上する装置の場合には、シリコン中の粒界の存在は特に大きな問題となる。逆に言えば多結晶体から単結晶体にできれば太陽電池の電気特性を著しく改善できる。
【0006】
また、粒界は粒状シリコンの機械的強度を弱くすることから、太陽電池を製造する各工程の熱履歴、熱歪、あるいは機械的な圧力などで粒状シリコンが破壊されるという問題もあった。
【0007】
以上のことから、粒状シリコンで太陽電池を製造する場合、粒界などが存在しない結晶性に優れた粒状シリコン結晶の製造が必要不可欠となる。
【0008】
粒状シリコン結晶を得る方法として、多結晶シリコンまたは無定形シリコンの表面上にシリコンの酸化膜などの珪素化合物被膜を形成し、その被膜の内側のシリコンを溶融して冷却して固化させて結晶体を製造する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、シリコン酸化被膜の内側でシリコンを溶融させた場合、シリコン融液中にはシリコン酸化被膜から浸入した酸素が融液流によりわずかな時間で飽和限界まで達してしまう。シリコン中に飽和限界まで溶解した酸素はシリコンの固化開始後の冷却過程において、過飽和状態となると酸素析出物を形成するようになる。酸素析出物は粒界や結晶欠陥と同様に再結合中心となるため少数キャリヤのライフタイムを低下させ光劣化を起こす原因となる。
【0010】
酸素析出物を低減させる方法として上記特許文献4では、例えば1250℃で3〜5時間の熱処理を行っている。1000℃以上の高温下での熱処理は過飽和状態で析出した酸素析出物を結晶中に再溶解させることができる。また、バルク単結晶育成でも熱処理は一般的に用いられている方法であり、単結晶中の熱歪を開放させ結晶欠陥等も低減する効果がある。しかしながら、酸化被膜で覆われたシリコンを酸素ガス雰囲気中で熱処理した場合には、雰囲気ガス中の酸素とシリコン表面との界面反応が起こり易く酸化被膜が定常的に形成されるためシリコン中の酸素を有効的に除去することができない。また、酸化被膜とシリコンとの界面に形成されているSi−O結合は非常に不安定であり、界面で歪や酸素誘起積層欠陥(OSF)が発生することを抑制できない。OSFの発生はシリコン中の酸素により更に促進され、それに起因する結晶欠陥等も増加してしまうため太陽電池の電気特性を大幅に低下させる原因となる。
【0011】
すなわち、電気特性に優れた太陽電池を形成するために多数の高品質なシリコン粒子を必要とする粒状シリコン結晶の作製工程としては不向きなものである。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、多結晶シリコンを安定して高効率に結晶化すると同時に、高い結晶性をもった粒状シリコン結晶を低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
〔特許文献1〕
国際公開第99/22048号パンフレット
〔特許文献2〕
米国特許第4188177号明細書
〔特許文献3〕
特開平5−78115号公報
〔特許文献4〕
米国特許第290917号明細書
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、粒状シリコンを反応性ガスを含む雰囲気ガス中で加熱して表面に前記ガスの成分を含む珪素化合物被膜を形成して内側のシリコンを溶融させた後、降温して凝固させて結晶化する粒状シリコン結晶の製造において、前記粒状シリコンを溶融・凝固した後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃、30分間〜24時間の熱アニールを行うことにより前記粒状シリコン結晶中の酸素濃度を2×1018atoms/cc以下とすることを特徴とする。
【0015】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記熱アニールの雰囲気ガスとして酸素ガス以外に、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスの少なくとも一つ以上を含むことが望ましい。
【0016】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記熱アニールとして、1000〜1380℃の温度で30分間〜24時間の熱アニールを行うことが望ましい。
【0017】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンの大きさが直径1000μm以下であることが望ましい。
【0018】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記反応性ガスが酸素ガスと窒素ガスであることが望ましい。
【0019】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であることが望ましい。
【0020】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記被膜の厚みが1μm以上であることが望ましい。
【0021】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンを石英ガラス上に載置することが望ましい。
【0022】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンを1460℃以下の温度で溶融することが望ましい。
【0023】
また、請求項9に係る粒状シリコン結晶は、請求項1に掲載された製造方法により製造されることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
結晶化する粒状シリコンは所望の抵抗値に半導体不純物がドープされていることが望ましい。粒径は1000μm以下が望ましく、それらの形が球に近いことが望ましい。ただし、その他の形であってもよい。粒径が1000μm以上の場合には、所定の珪素化合物被膜厚に対しシリコン溶融時の形状を安定に保つことが難しく完全に溶融させることも困難であり、溶融が不完全な場合にはサブグレインが生じ易いので望ましくない。
【0025】
粒状シリコンは、その表面に付着した異物や有機物、金属不純物等を除去するためにRCA洗浄法であらかじめ溶液洗浄しておくことが望ましい。RCA洗浄法とはシリコンウェーハの標準的洗浄工程として半導体で一般的に用いられている方法であり、三段階の工程のうち一段階目に水酸化アンモニウムと過酸化水素の水溶液により酸化膜とシリコン表面を除去し、二段階目にフッ化水素水溶液により前段でついた酸化膜を除去、三段階目に塩化水素と過酸化水素の水溶液により重金属等を除去し自然酸化膜を形成する方法である。
【0026】
次に、粒状シリコンを板状のサヤ上に密に一層で充填する。密とはできるだけ隙間がないようにという意味であり、粒同士が接触していてもよい。このサヤは粒状シリコンを溶融した後に降温して結晶化させるときの凝固起点とするために用いる。サヤの材質は粒状シリコンとの反応を抑えるために、石英ガラス、酸化アルミニウム、炭化珪素、単結晶サファイヤなどが適するが、コストの面や扱い易さからは石英ガラスが適する。石英ガラスを用いる場合にはフッ酸溶液により洗浄し、その後水洗と乾燥を行なってから使用するのが望ましい。サヤは何段に積み上げてもよい。
【0027】
加熱装置としてはセラミックの焼成などに用いられる雰囲気焼成炉あるいは半導体で一般的に用いられる横型酸化炉などが適するが、温度分布の均一性やコスト面、扱い易さからは雰囲気焼成炉が適する。ただし、二珪化モリブデンや炭化珪素などの抵抗加熱型の発熱体やアルミナ系の炉材、断熱材からの金属不純物等の汚染を防止するために、雰囲気焼成炉内に石英ガラスのベルジャーを設置しその中にサヤを配設することが望ましい。石英ガラスの表面には窒化膜もしくは酸窒化膜を形成することが望ましい。すなわち、窒化膜もしくは酸窒化膜を形成することで石英ガラスに微量に含まれる金属不純物等からの汚染を防止するバリア効果がある。
【0028】
RCA洗浄後のシリコン表面のダングリングボンドは結合状態が不安定であるために、炉の加熱を行う前にベルジャー内の真空処理を行うか不活性ガス雰囲気で充分にガス置換されていることが望ましい。不活性ガスはアルゴン、窒素、ヘリウム、水素が適するが、コスト面や扱い易さからはアルゴンが適している。ガスの導入は炉外から石英ガラス管を通じてベルジャー内に導入することが望ましい。
【0029】
次に、炉内で誘導加熱または抵抗加熱ヒータ(不図示)で粒状シリコン全体を加熱する。まず粒状シリコンをアルゴン等の不活性ガス雰囲気のみで満たされた状態で昇温させる。通常、融点の2/3以上の温度から結晶粒間の結合が緻密化し焼結密度が高まることが知られており、珪素化合物被膜前のシリコン表面の粒界減少や歪低減、欠陥等を減少させるためにはより高温下で一定時間の保持を行うことが望ましい。1000℃以上の温度、5分間以上の保持が望ましいが、1300℃以上の温度あるいは180分間以上保持すると粒状シリコンが石英ガラスのサヤと反応し易くなり、その後の珪素化合物被膜を安定して形成しにくくなるとともに形状も不安定になるため望ましくない。950℃以下の場合や保持を行わなかった場合、各粒状シリコン内のグレイン間結合が緻密化しなかったり焼結密度が高まらないので望ましくない。
【0030】
次に、シリコンの表面にシリコンの珪素化合物被膜を形成するために、炉内の温度をシリコンの融点以下のより高い温度へ上げていく。珪素化合物被膜はシリコンの酸化膜もしくは酸窒化膜が適するが、膜の密度や単位膜厚あたりの強度、汚染物や不純物等のシリコン中への拡散阻止力等からは酸窒化膜が適する。
【0031】
酸素ガスと窒素ガスの反応性ガスは上記の一定時間保持後に導入するのが望ましい。すなわち一定時間の保持前あるいは保持中に反応性ガスを導入した場合、シリコン表面付近の粒界や歪などの結晶欠陥の低減化が十分でないため酸窒化膜からシリコン中の粒界等に酸素が拡散し易く酸素欠陥を形成しやすくなるので望ましくない。1300℃以上の温度で反応性ガスを導入した場合は形成されるシリコンの酸窒化被膜の膜厚が十分でないためシリコン溶融時に被膜が破れやすく、その結果石英ガラスのサヤと融着固化反応する恐れがあるので望ましくない。
【0032】
反応性ガスの雰囲気は酸素分圧が5%以上で窒素分圧が10%以上であることが望ましい。すなわち、雰囲気ガス中の酸素分圧が5%未満で窒素分圧が10%未満の場合、粒子同志の結合が発生しやすくなって望ましくない。また、雰囲気ガス中の酸素分圧が50%以上もしくは窒素分圧が50%以上の場合、結晶化するシリコン表面に形成された酸窒化被膜に亀裂が発生しやすくなるので望ましくない。
【0033】
次に、シリコンの融点以下の温度まで上昇させる。酸窒化被膜の内側でシリコンを溶融させる場合、融点よりも若干低い1400℃程度の温度で5〜10分間程度保持することが望ましい。すなわち融点以下の温度で一定時間保持することで炉内あるいはシリコンの温度分布の均一性が向上する。
【0034】
次に、シリコンの融点以上の1420〜1460℃まで昇温し、約2〜10分間その温度を保持する。この間にシリコンが溶融し始める。シリコン外殻に形成された酸窒化被膜はシリコンが溶融するときにそれを充分に保持することが可能である。ただし、1460℃以上の温度まで昇温させた場合、粒状シリコンの粒径が1000μm以下の場合には、シリコン溶融時の形状を安定に保つことが難しく石英ガラス製のサヤと融着しやすくなるので望ましくない。
【0035】
酸窒化被膜の膜厚は1μm以上であることが望ましい。膜厚が1μm以下である場合にはシリコンの溶融時に被膜が破れやすいので望ましくない。シリコンの溶融時に酸素ガスと窒素ガスも引き続き導入することによって、高温における酸窒化被膜の割れ目などを補整できる。さらにシリコン溶融時には表面張力で球形化しようとするが、上記の温度領域であれば酸窒化被膜は充分に変形可能であり、結晶化するシリコンを真球に近い形にできる。
【0036】
次に、溶融したシリコンを凝固させるために約1400℃以下の温度まで降温させる。その際には5分程度温度を一定に保持することが望ましい。保持時間がない場合は、過冷却によるサブグレインや熱歪などが生じ易いので望ましくない。
【0037】
次に、シリコンを溶融させたときに酸窒化被膜からシリコン中に飽和濃度まで導入された酸素をシリコン結晶中から除去するために、また凝固後の粒状シリコン結晶中の熱歪を低減するために、酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で熱アニールを行う。この熱アニールは1000〜1380℃の温度で30分間〜24時間行うことが望ましい。熱アニールを行うことでシリコン結晶中の酸素を酸窒化被膜の方へ外方拡散させることができる。ただし、1000℃以下の温度になると十分に酸素を外方拡散させるためには24時間を超えるような長時間の熱アニールが必要となる。より低温化させると過飽和度も大きくなってより多くの酸素析出物が析出してしまい再溶解させるのが困難となり、炭素や重金属等の不純物に起因する欠陥やシリコンと酸素との複合体形成によるドナー発生など他の欠陥等もより発生しやすくなるため望ましくない。1380℃であれば30分間程度の熱アニールで酸素外方拡散は十分に行えるが、1380℃よりも温度が高い場合には酸窒化被膜からの酸化珪素化合物(SiOx)蒸発が激しく形状が不安定となり、石英ガラス製のベルジャーも失透しやすく温度均一性が悪くなるので望ましくない。
【0038】
熱アニールの雰囲気ガスは酸素分圧を25%以下にする。すなわち、酸素分圧を25%以下にすることでより効果的にシリコン結晶中から外方拡散させた酸素を酸窒化被膜に取り込ませるか、もしくはシリコンとの界面でSiOxを形成することができる。また雰囲気ガス中の酸素分圧を下げることで酸窒化被膜表面からのSiOx蒸発も促進され、より効果的に酸素除去を行うことが可能となる。酸素分圧が25%よりも高い場合は雰囲気ガスから導入される酸素とシリコン表面との界面反応が起こりSiOx蒸発も抑制され、シリコン結晶中の酸素が低減化できない。
【0039】
雰囲気ガスとして酸素ガス以外には不活性ガスであるヘリウム、アルゴン、あるいは窒素や水素などが適しており、酸素ガス以外に前記ガスの1種類以上が含まれていることが望ましい。コスト面や扱い易さからはアルゴンが適しているが、窒素ガスや水素ガスは結晶欠陥を低減化させたり結晶中のスピン密度を低減させ結晶性を向上させる効果があることが知られており、雰囲気ガス中の酸素分圧が25%以下であれば酸素ガス以外の各種ガスは混合ガスでも特にかまわない。その混合比についても特に制約はない。
【0040】
酸窒化被膜から固体状態のシリコン結晶中には酸素は拡散しないことが明らかになっており、上記熱アニール条件でシリコン中から酸素を酸窒化被膜の方へ外方拡散し酸窒化被膜表面からSiOxを蒸発させることでシリコン結晶中の酸素濃度をより効果的に低減することができる。
【0041】
次に、熱アニール後の降温プロセスでは、700℃より温度が低い場合は酸素サーマルドナー等が発生しやすいので5℃/分以上の冷却速度で速やかに400℃以下の温度まで降温することが望ましい。
【0042】
炉内の酸素ガスおよびその他の各種ガスを含む雰囲気ガス中の酸素ガス分圧は、酸素ガス以外の全流量に対する酸素ガスの流量で調整できる。圧力とガス濃度が調整可能な機構を持つものであればよい。また、酸窒化被膜形成時の酸素ガスと窒素ガスの分圧は熱アニール開始前まで変化させず一定に保ってもよい。
【0043】
このようにして得られる粒状シリコン結晶は、太陽電池を形成するために使用される。
【0044】
図1に得られた粒状シリコン結晶106を用いて形成する太陽電池を示す。まず、粒状シリコン106の表面に形成された酸窒化膜をフッ酸およびフッ硝酸でエッチング除去する。除去される酸窒化膜の膜厚は1μm以上である。次に、、金属基板107の上に粒状シリコン106を配置する。次に、これを全体的に加熱して粒状シリコン106を金属基板107に接合層108を介して接合させる。粒状シリコン106の間に、金属基板107上に絶縁層109を形成する。これらの上側の全体にわたってアモルファスまたは多結晶のシリコン膜110を成膜する。このとき、粒状シリコン106は第1導電形のp型またはn型であるので、シリコン膜110は第2導電形のn型またはp型で成膜する。さらに、その上から透明導電膜111を形成する。このようにして、金属基板107を一方の電極にし、シリコン膜110上に銀ペースト等を塗布してもう一方の電極112とする光電変換素子が得られる。
【0045】
【実施例】
RCA洗浄した粒径約400μmの粒状シリコンを石英ガラスのサヤ上に一層に充填し、雰囲気焼成炉内の石英ガラス製ベルジャー内にセットした後にシリコン全体をアルゴンガスで満たされた環境下で加熱した。室温から約1150℃まで昇温させてその温度で30分間の保持を行った。続いて酸素ガスと窒素ガスの反応ガスを含むアルゴンガス雰囲気中1150℃以上の温度でシリコン表面に酸窒化被膜を形成し、約1400℃で約5分間保持後、更に1435℃まで加熱して3分間保持し被膜内側のシリコンを溶融させた後、約1350℃まで10分間で降温して約10分程度温度を保持し凝固させた。その後、更に1300℃まで降温させてからアルゴンガス雰囲気中で90分間の熱アニールを行った。熱アニール後は700℃まで1時間程度で降温させ、700℃以下の温度では速やかに5℃/分以上の冷却速度で400℃以下の温度まで降温させて粒状シリコン結晶を作製した。
【0046】
酸窒化被膜形成時の炉内の酸素ガスと窒素ガスのアルゴンガスに対する分圧はそれぞれ10%と40%とし、アルゴン流量に対する酸素ガスと窒素ガスの流量で調整した。酸素ガスと窒素ガスの分圧は終始一定に保ちつつ流した。
【0047】
回収した粒状シリコン結晶の表面に形成された酸窒化膜をフッ酸およびフッ硝酸でエッチング除去した。
【0048】
一方、比較例としてシリコンを溶融・凝固させた後に熱アニールを行わないで粒状シリコン結晶を作製した場合と熱アニールを酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、窒素ガスと各種混合ガスの雰囲気中で行って粒状シリコンを作製した場合で検討を行った。
【0049】
各粒子から、図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池の電気特性を示す変換効率を測定した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、シリコンの溶融・凝固後に熱アニールを行わなかった場合には粒状シリコン結晶を金属基板に加熱接合した際にシリコン結晶が割れ易く太陽電池を形成することができなかった。また、熱アニールを行った場合、熱アニール中の雰囲気ガスが酸素ガスの場合に最も変換効率が低かった。酸素ガス以外の各種ガスでは変換効率がいずれも高く、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスの各種混合ガス(各ガス分圧50%)を用いてもいずれも変換効率は高かった。
【0052】
次に、熱アニール中の酸素分圧を段階的に変化させた条件で作製された各粒状シリコン結晶を用いて図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池特性を測定して変換効率を計算した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果より、雰囲気ガス中の酸素分圧が25%以下の場合はいずれも変換効率が高く、25%より高い場合には変換効率は低かった。
【0055】
次に、アルゴンガスの雰囲気中で熱アニールの温度と時間を段階的に変化させた条件で作製された各粒状シリコン結晶を用いて図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池特性を測定して変換効率を計算した結果を表3に示す。一方、変換効率の測定とは別にエッチングした後の粒状シリコン結晶についてSIMSで表面から酸素濃度を分析した。その結果も表3に示す。ここでの分析値は最表面から1μmよりも深い部分で酸素濃度の値が一定になった値を記した。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果より、熱アニールを行う温度が1000℃よりも低い場合は変換効率が低く、熱アニールが1400℃の場合には20分間で粒状シリコンと石英ガラスのサヤとが融着して固化反応を起こしてしまい変換効率特性を示さなかった。熱アニールの温度が1000〜1380℃で時間が30分間〜24時間においてはいずれも変換効率が上記の場合に比較して高かった。また、粒状シリコン結晶中の酸素濃度も同様の結果であり、上記の熱アニール条件でシリコン中の酸素濃度が低減化されていた。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、シリコン溶融時に飽和限界まで導入された酸素を、シリコン凝固後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃の温度、30分間〜24時間の熱アニールを行うことで2×1018atoms/cc以下の濃度までシリコン中の酸素濃度を低減することができた。
【0059】
このように電気特性に優れた太陽電池向けに用いる高品質化された粒状シリコン結晶を安価に量産性よく製造できるため、太陽電池に効率的なシリコン材料を利用できると同時にその高効率化と信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で得られる粒状シリコン結晶を用いて作製した太陽電池を示す図である。
【符号の説明】
106 粒状シリコン
107 金属基板
108 接合層
109 絶縁層
110 シリコン膜
111 透明導電層
112 電極
【発明の属する技術分野】
本発明は粒状シリコン結晶の製造方法とその製造方法によって製造される粒状シリコン結晶に関し、特に太陽電池に用いる粒状シリコンを製造するのに好適な粒状シリコン結晶の製造方法とその製造方法によって製造される粒状シリコン結晶に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
太陽電池は、性能面での効率、資源の有限性、あるいは製造コストなどといった市場ニーズを捉えて開発がされている。有望な太陽電池の一つとして、粒状シリコンを用いた太陽電池がある。
【0003】
粒状シリコンを作製するための原料としては、単結晶シリコンを粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や流動床法で気相合成された高純度シリコンを用いている。それら原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波コイルを用いて容器内で溶融し、その後に自由落下させる方法(例えば特許文献1、特許文献2参照)や、同じく高周波プラズマを用いる方法(例えば特許文献3参照)で球状化させる。
【0004】
しかしながら、これらの方法で製造された粒状シリコンはそのほとんどが多結晶体である。多結晶体は微結晶の集合体であるため微結晶間には粒界が存在する。粒界は半導体装置の電気特性を劣化させる。粒界の境界にはキャリヤの再結合中心が集まっており、再結合が生ずることで少数キャリヤのライフタイムが大幅に低減するためである。
【0005】
太陽電池のように電気特性が少数キャリヤの寿命の増大とともに大幅に向上する装置の場合には、シリコン中の粒界の存在は特に大きな問題となる。逆に言えば多結晶体から単結晶体にできれば太陽電池の電気特性を著しく改善できる。
【0006】
また、粒界は粒状シリコンの機械的強度を弱くすることから、太陽電池を製造する各工程の熱履歴、熱歪、あるいは機械的な圧力などで粒状シリコンが破壊されるという問題もあった。
【0007】
以上のことから、粒状シリコンで太陽電池を製造する場合、粒界などが存在しない結晶性に優れた粒状シリコン結晶の製造が必要不可欠となる。
【0008】
粒状シリコン結晶を得る方法として、多結晶シリコンまたは無定形シリコンの表面上にシリコンの酸化膜などの珪素化合物被膜を形成し、その被膜の内側のシリコンを溶融して冷却して固化させて結晶体を製造する方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0009】
しかしながら、シリコン酸化被膜の内側でシリコンを溶融させた場合、シリコン融液中にはシリコン酸化被膜から浸入した酸素が融液流によりわずかな時間で飽和限界まで達してしまう。シリコン中に飽和限界まで溶解した酸素はシリコンの固化開始後の冷却過程において、過飽和状態となると酸素析出物を形成するようになる。酸素析出物は粒界や結晶欠陥と同様に再結合中心となるため少数キャリヤのライフタイムを低下させ光劣化を起こす原因となる。
【0010】
酸素析出物を低減させる方法として上記特許文献4では、例えば1250℃で3〜5時間の熱処理を行っている。1000℃以上の高温下での熱処理は過飽和状態で析出した酸素析出物を結晶中に再溶解させることができる。また、バルク単結晶育成でも熱処理は一般的に用いられている方法であり、単結晶中の熱歪を開放させ結晶欠陥等も低減する効果がある。しかしながら、酸化被膜で覆われたシリコンを酸素ガス雰囲気中で熱処理した場合には、雰囲気ガス中の酸素とシリコン表面との界面反応が起こり易く酸化被膜が定常的に形成されるためシリコン中の酸素を有効的に除去することができない。また、酸化被膜とシリコンとの界面に形成されているSi−O結合は非常に不安定であり、界面で歪や酸素誘起積層欠陥(OSF)が発生することを抑制できない。OSFの発生はシリコン中の酸素により更に促進され、それに起因する結晶欠陥等も増加してしまうため太陽電池の電気特性を大幅に低下させる原因となる。
【0011】
すなわち、電気特性に優れた太陽電池を形成するために多数の高品質なシリコン粒子を必要とする粒状シリコン結晶の作製工程としては不向きなものである。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、多結晶シリコンを安定して高効率に結晶化すると同時に、高い結晶性をもった粒状シリコン結晶を低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【0013】
〔特許文献1〕
国際公開第99/22048号パンフレット
〔特許文献2〕
米国特許第4188177号明細書
〔特許文献3〕
特開平5−78115号公報
〔特許文献4〕
米国特許第290917号明細書
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、粒状シリコンを反応性ガスを含む雰囲気ガス中で加熱して表面に前記ガスの成分を含む珪素化合物被膜を形成して内側のシリコンを溶融させた後、降温して凝固させて結晶化する粒状シリコン結晶の製造において、前記粒状シリコンを溶融・凝固した後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃、30分間〜24時間の熱アニールを行うことにより前記粒状シリコン結晶中の酸素濃度を2×1018atoms/cc以下とすることを特徴とする。
【0015】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記熱アニールの雰囲気ガスとして酸素ガス以外に、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスの少なくとも一つ以上を含むことが望ましい。
【0016】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記熱アニールとして、1000〜1380℃の温度で30分間〜24時間の熱アニールを行うことが望ましい。
【0017】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンの大きさが直径1000μm以下であることが望ましい。
【0018】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記反応性ガスが酸素ガスと窒素ガスであることが望ましい。
【0019】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であることが望ましい。
【0020】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記被膜の厚みが1μm以上であることが望ましい。
【0021】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンを石英ガラス上に載置することが望ましい。
【0022】
上記粒状シリコン結晶の製造方法では、前記粒状シリコンを1460℃以下の温度で溶融することが望ましい。
【0023】
また、請求項9に係る粒状シリコン結晶は、請求項1に掲載された製造方法により製造されることを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
結晶化する粒状シリコンは所望の抵抗値に半導体不純物がドープされていることが望ましい。粒径は1000μm以下が望ましく、それらの形が球に近いことが望ましい。ただし、その他の形であってもよい。粒径が1000μm以上の場合には、所定の珪素化合物被膜厚に対しシリコン溶融時の形状を安定に保つことが難しく完全に溶融させることも困難であり、溶融が不完全な場合にはサブグレインが生じ易いので望ましくない。
【0025】
粒状シリコンは、その表面に付着した異物や有機物、金属不純物等を除去するためにRCA洗浄法であらかじめ溶液洗浄しておくことが望ましい。RCA洗浄法とはシリコンウェーハの標準的洗浄工程として半導体で一般的に用いられている方法であり、三段階の工程のうち一段階目に水酸化アンモニウムと過酸化水素の水溶液により酸化膜とシリコン表面を除去し、二段階目にフッ化水素水溶液により前段でついた酸化膜を除去、三段階目に塩化水素と過酸化水素の水溶液により重金属等を除去し自然酸化膜を形成する方法である。
【0026】
次に、粒状シリコンを板状のサヤ上に密に一層で充填する。密とはできるだけ隙間がないようにという意味であり、粒同士が接触していてもよい。このサヤは粒状シリコンを溶融した後に降温して結晶化させるときの凝固起点とするために用いる。サヤの材質は粒状シリコンとの反応を抑えるために、石英ガラス、酸化アルミニウム、炭化珪素、単結晶サファイヤなどが適するが、コストの面や扱い易さからは石英ガラスが適する。石英ガラスを用いる場合にはフッ酸溶液により洗浄し、その後水洗と乾燥を行なってから使用するのが望ましい。サヤは何段に積み上げてもよい。
【0027】
加熱装置としてはセラミックの焼成などに用いられる雰囲気焼成炉あるいは半導体で一般的に用いられる横型酸化炉などが適するが、温度分布の均一性やコスト面、扱い易さからは雰囲気焼成炉が適する。ただし、二珪化モリブデンや炭化珪素などの抵抗加熱型の発熱体やアルミナ系の炉材、断熱材からの金属不純物等の汚染を防止するために、雰囲気焼成炉内に石英ガラスのベルジャーを設置しその中にサヤを配設することが望ましい。石英ガラスの表面には窒化膜もしくは酸窒化膜を形成することが望ましい。すなわち、窒化膜もしくは酸窒化膜を形成することで石英ガラスに微量に含まれる金属不純物等からの汚染を防止するバリア効果がある。
【0028】
RCA洗浄後のシリコン表面のダングリングボンドは結合状態が不安定であるために、炉の加熱を行う前にベルジャー内の真空処理を行うか不活性ガス雰囲気で充分にガス置換されていることが望ましい。不活性ガスはアルゴン、窒素、ヘリウム、水素が適するが、コスト面や扱い易さからはアルゴンが適している。ガスの導入は炉外から石英ガラス管を通じてベルジャー内に導入することが望ましい。
【0029】
次に、炉内で誘導加熱または抵抗加熱ヒータ(不図示)で粒状シリコン全体を加熱する。まず粒状シリコンをアルゴン等の不活性ガス雰囲気のみで満たされた状態で昇温させる。通常、融点の2/3以上の温度から結晶粒間の結合が緻密化し焼結密度が高まることが知られており、珪素化合物被膜前のシリコン表面の粒界減少や歪低減、欠陥等を減少させるためにはより高温下で一定時間の保持を行うことが望ましい。1000℃以上の温度、5分間以上の保持が望ましいが、1300℃以上の温度あるいは180分間以上保持すると粒状シリコンが石英ガラスのサヤと反応し易くなり、その後の珪素化合物被膜を安定して形成しにくくなるとともに形状も不安定になるため望ましくない。950℃以下の場合や保持を行わなかった場合、各粒状シリコン内のグレイン間結合が緻密化しなかったり焼結密度が高まらないので望ましくない。
【0030】
次に、シリコンの表面にシリコンの珪素化合物被膜を形成するために、炉内の温度をシリコンの融点以下のより高い温度へ上げていく。珪素化合物被膜はシリコンの酸化膜もしくは酸窒化膜が適するが、膜の密度や単位膜厚あたりの強度、汚染物や不純物等のシリコン中への拡散阻止力等からは酸窒化膜が適する。
【0031】
酸素ガスと窒素ガスの反応性ガスは上記の一定時間保持後に導入するのが望ましい。すなわち一定時間の保持前あるいは保持中に反応性ガスを導入した場合、シリコン表面付近の粒界や歪などの結晶欠陥の低減化が十分でないため酸窒化膜からシリコン中の粒界等に酸素が拡散し易く酸素欠陥を形成しやすくなるので望ましくない。1300℃以上の温度で反応性ガスを導入した場合は形成されるシリコンの酸窒化被膜の膜厚が十分でないためシリコン溶融時に被膜が破れやすく、その結果石英ガラスのサヤと融着固化反応する恐れがあるので望ましくない。
【0032】
反応性ガスの雰囲気は酸素分圧が5%以上で窒素分圧が10%以上であることが望ましい。すなわち、雰囲気ガス中の酸素分圧が5%未満で窒素分圧が10%未満の場合、粒子同志の結合が発生しやすくなって望ましくない。また、雰囲気ガス中の酸素分圧が50%以上もしくは窒素分圧が50%以上の場合、結晶化するシリコン表面に形成された酸窒化被膜に亀裂が発生しやすくなるので望ましくない。
【0033】
次に、シリコンの融点以下の温度まで上昇させる。酸窒化被膜の内側でシリコンを溶融させる場合、融点よりも若干低い1400℃程度の温度で5〜10分間程度保持することが望ましい。すなわち融点以下の温度で一定時間保持することで炉内あるいはシリコンの温度分布の均一性が向上する。
【0034】
次に、シリコンの融点以上の1420〜1460℃まで昇温し、約2〜10分間その温度を保持する。この間にシリコンが溶融し始める。シリコン外殻に形成された酸窒化被膜はシリコンが溶融するときにそれを充分に保持することが可能である。ただし、1460℃以上の温度まで昇温させた場合、粒状シリコンの粒径が1000μm以下の場合には、シリコン溶融時の形状を安定に保つことが難しく石英ガラス製のサヤと融着しやすくなるので望ましくない。
【0035】
酸窒化被膜の膜厚は1μm以上であることが望ましい。膜厚が1μm以下である場合にはシリコンの溶融時に被膜が破れやすいので望ましくない。シリコンの溶融時に酸素ガスと窒素ガスも引き続き導入することによって、高温における酸窒化被膜の割れ目などを補整できる。さらにシリコン溶融時には表面張力で球形化しようとするが、上記の温度領域であれば酸窒化被膜は充分に変形可能であり、結晶化するシリコンを真球に近い形にできる。
【0036】
次に、溶融したシリコンを凝固させるために約1400℃以下の温度まで降温させる。その際には5分程度温度を一定に保持することが望ましい。保持時間がない場合は、過冷却によるサブグレインや熱歪などが生じ易いので望ましくない。
【0037】
次に、シリコンを溶融させたときに酸窒化被膜からシリコン中に飽和濃度まで導入された酸素をシリコン結晶中から除去するために、また凝固後の粒状シリコン結晶中の熱歪を低減するために、酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で熱アニールを行う。この熱アニールは1000〜1380℃の温度で30分間〜24時間行うことが望ましい。熱アニールを行うことでシリコン結晶中の酸素を酸窒化被膜の方へ外方拡散させることができる。ただし、1000℃以下の温度になると十分に酸素を外方拡散させるためには24時間を超えるような長時間の熱アニールが必要となる。より低温化させると過飽和度も大きくなってより多くの酸素析出物が析出してしまい再溶解させるのが困難となり、炭素や重金属等の不純物に起因する欠陥やシリコンと酸素との複合体形成によるドナー発生など他の欠陥等もより発生しやすくなるため望ましくない。1380℃であれば30分間程度の熱アニールで酸素外方拡散は十分に行えるが、1380℃よりも温度が高い場合には酸窒化被膜からの酸化珪素化合物(SiOx)蒸発が激しく形状が不安定となり、石英ガラス製のベルジャーも失透しやすく温度均一性が悪くなるので望ましくない。
【0038】
熱アニールの雰囲気ガスは酸素分圧を25%以下にする。すなわち、酸素分圧を25%以下にすることでより効果的にシリコン結晶中から外方拡散させた酸素を酸窒化被膜に取り込ませるか、もしくはシリコンとの界面でSiOxを形成することができる。また雰囲気ガス中の酸素分圧を下げることで酸窒化被膜表面からのSiOx蒸発も促進され、より効果的に酸素除去を行うことが可能となる。酸素分圧が25%よりも高い場合は雰囲気ガスから導入される酸素とシリコン表面との界面反応が起こりSiOx蒸発も抑制され、シリコン結晶中の酸素が低減化できない。
【0039】
雰囲気ガスとして酸素ガス以外には不活性ガスであるヘリウム、アルゴン、あるいは窒素や水素などが適しており、酸素ガス以外に前記ガスの1種類以上が含まれていることが望ましい。コスト面や扱い易さからはアルゴンが適しているが、窒素ガスや水素ガスは結晶欠陥を低減化させたり結晶中のスピン密度を低減させ結晶性を向上させる効果があることが知られており、雰囲気ガス中の酸素分圧が25%以下であれば酸素ガス以外の各種ガスは混合ガスでも特にかまわない。その混合比についても特に制約はない。
【0040】
酸窒化被膜から固体状態のシリコン結晶中には酸素は拡散しないことが明らかになっており、上記熱アニール条件でシリコン中から酸素を酸窒化被膜の方へ外方拡散し酸窒化被膜表面からSiOxを蒸発させることでシリコン結晶中の酸素濃度をより効果的に低減することができる。
【0041】
次に、熱アニール後の降温プロセスでは、700℃より温度が低い場合は酸素サーマルドナー等が発生しやすいので5℃/分以上の冷却速度で速やかに400℃以下の温度まで降温することが望ましい。
【0042】
炉内の酸素ガスおよびその他の各種ガスを含む雰囲気ガス中の酸素ガス分圧は、酸素ガス以外の全流量に対する酸素ガスの流量で調整できる。圧力とガス濃度が調整可能な機構を持つものであればよい。また、酸窒化被膜形成時の酸素ガスと窒素ガスの分圧は熱アニール開始前まで変化させず一定に保ってもよい。
【0043】
このようにして得られる粒状シリコン結晶は、太陽電池を形成するために使用される。
【0044】
図1に得られた粒状シリコン結晶106を用いて形成する太陽電池を示す。まず、粒状シリコン106の表面に形成された酸窒化膜をフッ酸およびフッ硝酸でエッチング除去する。除去される酸窒化膜の膜厚は1μm以上である。次に、、金属基板107の上に粒状シリコン106を配置する。次に、これを全体的に加熱して粒状シリコン106を金属基板107に接合層108を介して接合させる。粒状シリコン106の間に、金属基板107上に絶縁層109を形成する。これらの上側の全体にわたってアモルファスまたは多結晶のシリコン膜110を成膜する。このとき、粒状シリコン106は第1導電形のp型またはn型であるので、シリコン膜110は第2導電形のn型またはp型で成膜する。さらに、その上から透明導電膜111を形成する。このようにして、金属基板107を一方の電極にし、シリコン膜110上に銀ペースト等を塗布してもう一方の電極112とする光電変換素子が得られる。
【0045】
【実施例】
RCA洗浄した粒径約400μmの粒状シリコンを石英ガラスのサヤ上に一層に充填し、雰囲気焼成炉内の石英ガラス製ベルジャー内にセットした後にシリコン全体をアルゴンガスで満たされた環境下で加熱した。室温から約1150℃まで昇温させてその温度で30分間の保持を行った。続いて酸素ガスと窒素ガスの反応ガスを含むアルゴンガス雰囲気中1150℃以上の温度でシリコン表面に酸窒化被膜を形成し、約1400℃で約5分間保持後、更に1435℃まで加熱して3分間保持し被膜内側のシリコンを溶融させた後、約1350℃まで10分間で降温して約10分程度温度を保持し凝固させた。その後、更に1300℃まで降温させてからアルゴンガス雰囲気中で90分間の熱アニールを行った。熱アニール後は700℃まで1時間程度で降温させ、700℃以下の温度では速やかに5℃/分以上の冷却速度で400℃以下の温度まで降温させて粒状シリコン結晶を作製した。
【0046】
酸窒化被膜形成時の炉内の酸素ガスと窒素ガスのアルゴンガスに対する分圧はそれぞれ10%と40%とし、アルゴン流量に対する酸素ガスと窒素ガスの流量で調整した。酸素ガスと窒素ガスの分圧は終始一定に保ちつつ流した。
【0047】
回収した粒状シリコン結晶の表面に形成された酸窒化膜をフッ酸およびフッ硝酸でエッチング除去した。
【0048】
一方、比較例としてシリコンを溶融・凝固させた後に熱アニールを行わないで粒状シリコン結晶を作製した場合と熱アニールを酸素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、水素ガス、窒素ガスと各種混合ガスの雰囲気中で行って粒状シリコンを作製した場合で検討を行った。
【0049】
各粒子から、図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池の電気特性を示す変換効率を測定した結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、シリコンの溶融・凝固後に熱アニールを行わなかった場合には粒状シリコン結晶を金属基板に加熱接合した際にシリコン結晶が割れ易く太陽電池を形成することができなかった。また、熱アニールを行った場合、熱アニール中の雰囲気ガスが酸素ガスの場合に最も変換効率が低かった。酸素ガス以外の各種ガスでは変換効率がいずれも高く、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスの各種混合ガス(各ガス分圧50%)を用いてもいずれも変換効率は高かった。
【0052】
次に、熱アニール中の酸素分圧を段階的に変化させた条件で作製された各粒状シリコン結晶を用いて図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池特性を測定して変換効率を計算した結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果より、雰囲気ガス中の酸素分圧が25%以下の場合はいずれも変換効率が高く、25%より高い場合には変換効率は低かった。
【0055】
次に、アルゴンガスの雰囲気中で熱アニールの温度と時間を段階的に変化させた条件で作製された各粒状シリコン結晶を用いて図1に示すような太陽電池を作製し、所定の強度、所定の波長の光を照射して、太陽電池特性を測定して変換効率を計算した結果を表3に示す。一方、変換効率の測定とは別にエッチングした後の粒状シリコン結晶についてSIMSで表面から酸素濃度を分析した。その結果も表3に示す。ここでの分析値は最表面から1μmよりも深い部分で酸素濃度の値が一定になった値を記した。
【0056】
【表3】
【0057】
表3の結果より、熱アニールを行う温度が1000℃よりも低い場合は変換効率が低く、熱アニールが1400℃の場合には20分間で粒状シリコンと石英ガラスのサヤとが融着して固化反応を起こしてしまい変換効率特性を示さなかった。熱アニールの温度が1000〜1380℃で時間が30分間〜24時間においてはいずれも変換効率が上記の場合に比較して高かった。また、粒状シリコン結晶中の酸素濃度も同様の結果であり、上記の熱アニール条件でシリコン中の酸素濃度が低減化されていた。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る粒状シリコン結晶の製造方法では、シリコン溶融時に飽和限界まで導入された酸素を、シリコン凝固後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃の温度、30分間〜24時間の熱アニールを行うことで2×1018atoms/cc以下の濃度までシリコン中の酸素濃度を低減することができた。
【0059】
このように電気特性に優れた太陽電池向けに用いる高品質化された粒状シリコン結晶を安価に量産性よく製造できるため、太陽電池に効率的なシリコン材料を利用できると同時にその高効率化と信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法で得られる粒状シリコン結晶を用いて作製した太陽電池を示す図である。
【符号の説明】
106 粒状シリコン
107 金属基板
108 接合層
109 絶縁層
110 シリコン膜
111 透明導電層
112 電極
Claims (9)
- 粒状シリコンを反応性ガスを含む雰囲気ガス中で加熱して表面に前記ガスの成分を含む珪素化合物被膜を形成して内側のシリコンを溶融させた後、降温して凝固させて結晶化する粒状シリコン結晶の製造方法において、前記粒状シリコンを溶融・凝固した後に酸素分圧25%以下の雰囲気ガス中で1000〜1380℃、30分間〜24時間の熱アニールを行うことにより前記粒状シリコン結晶中の酸素濃度を2×1018atoms/cc以下とすることを特徴とする粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記熱アニールの雰囲気ガスとして酸素ガス以外に、水素ガス、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコンの大きさが直径1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記反応性ガスが酸素ガスと窒素ガスであることを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記被膜の厚みが1μm以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコンを石英ガラス上に載置して熱アニールを行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 前記粒状シリコンを1460℃以下の温度で溶融することを特徴とする請求項1に記載の粒状シリコン結晶の製造方法。
- 請求項1に記載された製造方法により製造された粒状シリコン結晶。
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WO2013157473A1 (ja) * | 2012-04-18 | 2013-10-24 | 永田精機株式会社 | 刃物、その製造方法およびそれを製造するためのプラズマ装置 |
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2003
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