JP2005093617A - 光電変換装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 光電変換装置において、量産性や低コスト性に優れた高品質な結晶シリコン粒子を用いて作製された、変換効率特性に優れた光電変換装置を提供する。
【解決手段】 導電性基板107の一主面に、第1の導電型の結晶シリコン粒子106を多数個、下部を導電性基板107に接合し、隣接するもの同士の間に絶縁物質109を介在させるとともに上部を絶縁物質109から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子106および絶縁物質109を覆うように第2の導電型の半導体層110および透光性導体層111を順次形成した光電変換装置であって、結晶シリコン粒子106は、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 導電性基板107の一主面に、第1の導電型の結晶シリコン粒子106を多数個、下部を導電性基板107に接合し、隣接するもの同士の間に絶縁物質109を介在させるとともに上部を絶縁物質109から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子106および絶縁物質109を覆うように第2の導電型の半導体層110および透光性導体層111を順次形成した光電変換装置であって、結晶シリコン粒子106は、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は結晶シリコン粒子を用いて形成された光電変換装置に関し、特に、変換効率特性に優れた結晶シリコン粒子を有する光電変換装置に関するものである。
光電変換装置は、性能面での効率の良さ、資源の有限性への配慮、あるいは製造コストの低さ等といった市場ニーズを捉えて開発が進められている。今後の市場において有望な光電変換装置の一つとして、太陽電池として使用される、結晶シリコン粒子を用いた光電変換装置がある。
結晶シリコン粒子を作製するための原料としては、例えば単結晶シリコンを粉砕した結果として発生するシリコンの微小粒子や、流動床法で気相合成された高純度シリコン等が用いられている。これらの原料から結晶シリコン粒子を作製するには、それら原料をサイズあるいは重量によって分別した後に、赤外線や高周波を用いて容器内で溶融し、その後に自由落下させる方法(例えば、特許文献1および特許文献2を参照。)や、同じく高周波プラズマを用いる方法(例えば、特許文献3を参照。)によって球状化する。
国際公開第99/22048号パンフレット
米国特許第4188177号明細書
特開平5−78115号公報
米国特許第4430150号明細書
しかしながら、これらの方法で製造された結晶シリコン粒子は、そのほとんどが多結晶体である。多結晶体は、微結晶の集合体であるため、それら微結晶間に粒界が存在する。この粒界は、多結晶体を用いた半導体装置の電気特性を劣化させる。その理由は、粒界の境界にはキャリヤの再結合中心が集まっており、それによって再結合が生ずることで少数キャリヤのライフタイムが大幅に低減するためである。
光電変換装置のように電気特性が少数キャリヤの寿命の増大とともに大幅に向上する半導体装置の場合には、それに用いられる結晶シリコン粒子中の粒界の存在は、電気特性を悪化させてしまい、特に大きな問題となる。逆に言えば、結晶シリコン粒子を多結晶体から単結晶体にできれば、光電変換装置の電気特性を著しく改善することができる。
また、多結晶体中の粒界は多結晶体からなる結晶シリコン粒子の機械的強度を低下させることから、光電変換装置を製造する各工程の熱履歴や熱歪み、あるいは機械的な圧力等によって結晶シリコン粒子が破壊されやすいという問題点もあった。
従って、結晶シリコン粒子を用いて光電変換装置を製造する場合には、粒界等が存在しない、結晶性に優れた多結晶体または単結晶体からなる結晶シリコン粒子を製造することが必要不可欠となる。
そのような結晶性に優れた多結晶体または単結晶体からなる結晶シリコン粒子を得る方法として、多結晶シリコンまたは無定形シリコンの表面上にシリコンの酸化膜等の珪素化合物被膜を形成し、その珪素化合物被膜の内側のシリコンを溶融した後に冷却して固化させて、結晶性に優れた多結晶体または単結晶体からなる結晶シリコン粒子を製造する方法が知られている(例えば、特許文献4を参照。)。
しかしながら、結晶シリコン粒子を製造するのに多結晶シリコン等を用いた場合には、多結晶シリコン中に含まれる出発原料や製造工程中からの混入を主原因とする炭素不純物の結晶シリコン中への汚染が大きな問題となる。結晶シリコン中に混入した炭素不純物は、シリコンサイトに置換し基本的に電気的不活性であるが、結晶中に過剰酸素や金属不純物が存在した場合にはそれらの析出を促進する効果があり、ニュードナーの形成やデバイスプロセス中の欠陥発生等も生じるため、光電変換装置において起電力が低下したり、キャリヤのトラップとして働くため電流低下が生じたりしてしまうという問題点があった。
また、珪素化合物被膜、具体的には酸化シリコン被膜の内側でシリコンを溶融させた場合、内側のシリコン融液中には酸化シリコン被膜から浸入した酸素が融液流によりわずかな時間で飽和限界まで達してしまうこととなる。そして、シリコン中に飽和限界まで溶解した酸素は、シリコンの固化開始後の冷却過程において、過飽和状態となると酸素析出物を形成するようになる。この酸素析出物は、粒界や結晶欠陥と同様に再結合中心となるため、少数キャリヤのライフタイムを低下させ光劣化を起こす原因となるという問題点があった。
このような酸素析出物を低減させる方法として、特許文献4では、例えば1250℃で3〜5時間の熱処理を行なっている。このように1000℃以上の高温下での熱処理は、過飽和状態で析出した酸素析出物を結晶中に再溶解させることができ、これによって酸素析出物を低減させることができるというものである。また、バルク単結晶の育成においてもこのような熱処理は一般的に用いられている方法であり、単結晶中の熱歪みを開放させることができ結晶欠陥等も低減することができる効果がある。
しかしながら、酸化シリコン被膜で覆われたシリコンを酸素ガス雰囲気中で熱処理した場合には、雰囲気ガス中の酸素とシリコンの表面とで界面反応が起こり易く、その界面で酸化シリコン被膜が定常的に形成されるため、シリコン中の酸素析出物および酸素を有効的に除去することができないという問題点があった。また、酸化シリコン被膜とシリコンとの界面に形成されているSi−O結合は非常に不安定であるため、その界面で歪みや酸素誘起積層欠陥(OSF)が発生することを抑制することができないという問題点もあった。このOSFの発生はシリコン中の酸素によりさらに促進され、それに起因する結晶欠陥等も増加してしまうため、光電変換装置の電気特性を大幅に低下させる原因となる。
さらに、シリコン結晶中に混入しシリコンサイトに置換配置した炭素不純物は、酸素析出を増速し、デバイスプロセス中に結晶シリコン中に欠陥等を引き起こすものとなるという問題点もあった。
すなわち、電気特性に優れた光電変換装置を作製するために多数の高品質な結晶シリコン粒子を必要とするのに対し、以上のような従来の製造方法による結晶シリコン粒子は不向きなものであるという問題点があった。
本発明は、以上のような従来の技術における問題点に鑑み、これらを解決すべくなされたものであり、その目的は、多結晶シリコンを安定して高効率に結晶化すると同時に高い結晶性を持ち低コストで製造できる高品質な結晶シリコン粒子を用いた、電気特性に優れた良好な光電変換装置を提供することにある。
本発明の光電変換装置は、導電性基板の一主面に、第1の導電型の結晶シリコン粒子を多数個、下部を前記導電性基板に接合し、隣接するもの同士の間に絶縁物質を介在させるとともに上部を前記絶縁物質から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子および絶縁物質を覆うように第2の導電型の半導体層および透光性導体層を順次形成した光電変換装置であって、前記結晶シリコン粒子は、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されていることを特徴とするものである。
また、本発明の光電変換装置においては、前記炭素の濃度勾配は、最高濃度が最低濃度の1.25倍乃至2.0倍であることが望ましい。
また、本発明の光電変換装置においては、前記結晶シリコン粒子の大きさが30μm乃至1500μmであることが望ましい。
また、本発明の光電変換装置においては、前記珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であることが望ましい。
また、本発明の光電変換装置においては、前記珪素化合物被膜の厚みが1μm乃至50μmであることが望ましい。
本発明の光電変換装置によれば、導電性基板の一主面に、第1の導電型の結晶シリコン粒子を多数個、下部を導電性基板に接合し、隣接するもの同士の間に絶縁物質を介在させるとともに上部を絶縁物質から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子および絶縁物質を覆うように第2の導電型の半導体層および透光性導体層を順次形成した光電変換装置であって、結晶シリコン粒子は、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン結晶中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されていることにより、濃度勾配が形成された高濃度側で過剰酸素や金属不純物の析出を促進する効果があるため、低濃度側での結晶シリコン粒子の結晶シリコンの結晶性が著しく向上するとともに、炭素添加による熱歪み等によるクラックを生じにくくなる効果もあり、機械的な強度も向上させることができる。また、結晶シリコン中の炭素はサーマルドナーの形成を大幅に抑制する効果があるため、ニュードナーの形成やデバイスプロセス中の欠陥発生等も効果的に抑制することができる。
また、本発明の光電変換装置に用いる、電気特性に優れた高品質化された結晶シリコン粒子は、安価に量産性よく製造できるため、光電変換装置にシリコン材料を効率的に利用できると同時に、その高効率化と信頼性の向上を図ることができる。
また、本発明の光電変換装置によれば、結晶シリコン粒子の内部の結晶シリコン中の炭素の濃度勾配が、最高濃度が最低濃度の1.25乃至2.0倍であるときには、熱歪み等を起因としたクラックや濃度差に起因した熱膨張係数の変化によるクラックの発生を防止することができ、機械的な強度をより向上させることができる。
また、本発明の光電変換装置によれば、結晶シリコン粒子の大きさが30μm乃至1500μmであるときには、結晶シリコン粒子同士の合体を抑制することができ、サブグレインの発生がない球形状で良質な結晶シリコン粒子を作製することができる。
また、本発明の光電変換装置によれば、珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であるときには、結晶シリコン粒子同士の合体を効果的に抑制して、サブグレインの発生がない球形状で良質な結晶シリコン粒子を作製することができる。
また、本発明の光電変換装置によれば、珪素化合物被膜の厚みが1μm乃至50μmであるときには、結晶シリコン粒子の内部のシリコンが溶融時には表面張力で球形化しようとするのに対して珪素化合物被膜は充分に変形可能であるため、内部を結晶化して得られる結晶シリコン粒子を真球に近い形状とすることができる。
以上により、本発明の光電変換装置によれば、安定して高効率に結晶化すると同時に高い結晶性を持った、低コストで製造できる高品質な多結晶シリコンからなる結晶シリコン粒子を用いた、電気特性に優れた良好な光電変換装置を提供することができる。
以下、本発明の光電変換装置について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の光電変換装置の実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、106は結晶シリコン粒子、107は導電性基板、108は結晶シリコン粒子106と導電性基板107との接合層、109は絶縁物質、110は半導体層、111は透光性導体層、112は電極である。
図1に示すように、本発明の結晶シリコン粒子106を用いた光電変換装置においては、導電性基板107の一主面、この例では上面に、第1の導電型例えばp型の結晶シリコン粒子106を多数個、その下部を例えば接合層108によって導電性基板107に接合し、結晶シリコン粒子106の隣接するもの同士の間に絶縁物質109を介在させるとともにそれら結晶シリコン粒子106の上部を絶縁物質109から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子106および絶縁物質109を覆うように、第2の導電型例えばn型の半導体層110および透光性導体層111を順次形成した構成となっている。なお、電極112は、この光電変換装置を太陽電池として使用する際に、透光性導体層111の上に所定のパターン形状に被着形成される。
そして、本発明の光電変換装置においては、このような構成において、結晶シリコン粒子106は、その表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に、その結晶シリコン粒子106の表面近傍のある一部からほぼ対向する表面近傍の他の一部に向かうような、一方向に向かって濃度勾配が形成されていることを特徴とするものである。本発明の光電変換装置によれば、このように結晶シリコン粒子106がその表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に含有する炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されていることにより、濃度勾配が形成された高濃度側で過剰酸素や金属不純物の析出を促進する効果があるため、低濃度側での結晶シリコン粒子の結晶シリコンの結晶性が著しく向上するとともに、炭素添加による熱歪み等によるクラックを生じにくくなる効果もあり、機械的な強度も向上させることができる。また、結晶シリコン中の炭素はサーマルドナーの形成を大幅に抑制する効果があるため、ニュードナーの形成やデバイスプロセス中の欠陥発生等も効果的に抑制することができる。さらに、熱歪み等を起因としたクラックや濃度差に起因した熱膨張係数の変化によるクラックの発生を防止することができ、機械的な強度をより向上させることができるものとなっている。
本発明の光電変換装置において、結晶シリコン粒子106は、所望の抵抗値になるように第1の導電型とするためのドーパント、例えばp型ドーパントがドーピングされている。p型ドーパントとしてはホウ素,アルミニウム,ガリウム,インジウムがあるが、シリコンに対する偏析係数が大きい点やシリコン溶融時の蒸発係数が小さい点からは、ホウ素を用いることが望ましい。なお、結晶シリコン粒子106には、n型ドーパントがドーピングされていてもかまわない。n型ドーパントとしてはリン,砒素等が望ましい。
また、結晶シリコン粒子106の内部には、多結晶製造時の出発原料からの含有やグラファイト坩堝からの混入により、炭素不純物が含有されており、その炭素濃度に濃度分布が形成されている。
結晶シリコン粒子106の大きさ、通常はほぼ球状であることからその粒径は、1500μm以下が望ましく、その形状が球に近いことが望ましい。ただし、形状は球状に限られるものではなく、立方体状や直方体状等、その他の形状であってもよい。大きさが1500μmを超えて大きくなる場合には、その表面に形成された所定の珪素化合物被膜によって内部のシリコン溶融時における形状を安定に保つことが難しくなり、また内部のシリコンを完全に溶融させることも困難となって、溶融が不完全な場合にはサブグレインが生じ易いので望ましくない。他方、大きさが30μm未満と小さい場合には、表面の珪素化合物被膜の厚みも薄くなり、内部のシリコン溶融時に隣接して配置され互いに接触している結晶シリコン粒子106同士が合体しやすくなるので望ましくない。従って、結晶シリコン粒子106の大きさは30μm乃至1500μmであることが望ましく、これによって結晶シリコン粒子106同士の合体を抑制して、サブグレインの発生がない球形状で良質な結晶シリコン粒子106を作製することができる。
この結晶シリコン粒子106を作製するには、まず、その表面に付着した異物や有機物,金属不純物等を除去するために、RCA洗浄法であらかじめ溶液洗浄しておくことが望ましい。RCA洗浄法とは、シリコンウェーハの標準的洗浄工程として半導体素子の製造工程で一般的に用いられている洗浄方法であり、3段の工程のうち1段目の工程において水酸化アンモニウムと過酸化水素との水溶液により酸化膜とシリコン表面とを除去し、2段目の工程においてフッ化水素水溶液により前段の工程で付いた酸化膜を除去し、3段目の工程において塩化水素と過酸化水素との水溶液により重金属等を除去して自然酸化膜を形成させるというものである。
次に、結晶シリコン粒子106を板状のサヤ上に一層で充填する。サヤの材質は、結晶シリコン粒子106との反応を抑えるために、石英ガラス,酸化アルミニウム,炭化珪素,単結晶サファイヤ等が適するが、コストが低いという面や扱い易いという面からは、石英ガラスが好適である。
次に、これら結晶シリコン粒子106を加熱する。加熱装置としては、セラミックスの焼成等に用いられる雰囲気焼成炉あるいは半導体素子の製造工程で一般的に用いられる横型酸化炉等が適しており、温度分布の均一性やコスト面、あるいは扱い易さの点からは、雰囲気焼成炉が好適である。
なお、RCA洗浄後の結晶シリコン粒子106の表面のダングリングボンドは結合状態が不安定であるために、炉による加熱を行なう前に、加熱炉のベルジャー内は真空処理を行なうか不活性ガス雰囲気で充分にガス置換されていることが望ましい。ベルジャーは雰囲気焼成炉あるいは横型酸化炉からの炉材あるいは発熱体からの汚染を防止するものであり、その材質としては石英ガラス,酸化アルミニウム,炭化珪素,単結晶サファイヤ等が適しているが、コストの面や扱い易さの点からは石英ガラスが適する。不活性ガスとしてはアルゴン,窒素,ヘリウム,水素が適しているが、コスト面や扱い易さの点からはアルゴンが好適である。この不活性ガスの導入は、炉外から石英ガラス管を通じて加熱炉のベルジャー内に導入することが望ましい。
次に、炉内で誘導加熱または抵抗加熱ヒータによって結晶シリコン粒子106全体を加熱する。炉内の温度は、酸素ガスと窒素ガスとから成る反応性ガスを導入しながら、シリコンの融点より高い温度へ昇温していく。この過程で、結晶シリコン粒子106の表面には珪素化合物被膜が形成される。
結晶シリコン粒子106の表面に形成される珪素化合物被膜については、シリコンの酸化膜もしくは酸窒化膜が適するが、被膜の密度や単位膜厚当たりの強度が高く、汚染物や不純物等の内部のシリコン中への拡散阻止力が大きいという点からは、シリコンの酸窒化膜が好適である。
また、この酸窒化膜を形成する際の反応性ガスの雰囲気は、酸素分圧もしくは窒素分圧がそれぞれ1%以上であることが望ましい。雰囲気ガス中の酸素分圧あるいは窒素分圧が1%未満の場合は、内部を結晶化するシリコン粒子の表面に形成された酸窒化膜に亀裂が発生しやすくなる傾向がある。
なお、炉内の雰囲気ガス中の各ガス分圧は、全ガス流量に対する各ガス流量で調整できる。加熱装置としては、ガス圧力とガス濃度とが調整可能な機構を持つものであればよい。
引き続き、シリコンの融点(1414℃)以上で、好ましくは1480℃以下の温度までさらに昇温する。この間に内部のシリコンが溶融する。このとき、結晶シリコン粒子106の表面に形成された珪素化合物被膜(酸窒化膜)によって、内部のシリコンが溶融するときにそれを内部に保持するとともに粒子の形状を維持することが可能である。ただし、1480℃を超える温度まで昇温させた場合には、内部のシリコン溶融時に粒子の形状を安定に保つことが難しくなり、サヤと融着しやすくなるので望ましくない。
結晶シリコン粒子106の表面に形成される珪素化合物被膜の厚みは1μm以上であることが望ましい。厚みが1μm未満と薄い場合には内部のシリコンの溶融時に被膜が破れやすいので望ましくない。また、厚みが1μm以上で必要な強度を有する珪素化合物被膜であれば、内部のシリコンが溶融時には表面張力で球形化しようとするのに対し、上記の温度領域であれば珪素化合物被膜は充分に変形可能であるため、内部を結晶化して得られる結晶シリコン粒子106を真球に近い形状とすることができる。一方、珪素化合物被膜の厚みが50μmを超えて厚くなる場合には、珪素化合物被膜が上記の温度領域で変形しにくくなり、得られる結晶シリコン粒子106が真球になりにくいので望ましくない。従って、珪素化合物被膜の厚みは1μm乃至50μmであることが好ましく、これによって、真球に近い良好な形状の結晶シリコン粒子106を安定して得ることができ、変換効率に優れた光電変換装置を得ることができるようになる。
次に、溶融した内部のシリコンを凝固させるために約1400℃以下の温度まで降温させる。その後、さらに降温させて1200℃付近の一定温度にて60分間以上の熱アニールを行なうことが望ましい。この熱アニール処理を行なうことによって、凝固時に結晶中に析出した酸素を再溶解させることができ、また、凝固時に発生した結晶シリコン粒子106中の歪み等を除去することができる。
そして、このようにして得られた結晶シリコン粒子106は、凝固する際に板状のサヤ上での接触部分を凝固起点として一方向に凝固が進行するので、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されているものとなる。
なお、この濃度勾配の大きさを調節するには、珪素化合物被膜の内側で内部の溶融したシリコンを融点以下の温度まで降温させて凝固させる際に、降温速度を調整して過冷却度を変化させればよく、それによって最高濃度が最低濃度の1.25倍乃至2.0倍の範囲で調整された濃度勾配とすることができる。
そして、このように内部の結晶シリコンに炭素の濃度勾配が形成されていることにより、濃度勾配が形成された高濃度側で過剰酸素や金属不純物の析出を促進する効果があるため、低濃度側での結晶シリコン粒子の結晶シリコンの結晶性が著しく向上するとともに、炭素添加による熱歪み等によるクラックを生じにくくなる効果もあり、機械的な強度も向上させることができる。また、結晶シリコン中の炭素はサーマルドナーの形成を大幅に抑制する効果があるため、ニュードナーの形成やデバイスプロセス中の欠陥発生等も効果的に抑制することができる。さらに、熱歪み等を起因としたクラックや濃度差に起因した熱膨張係数の変化によるクラックの発生を防止することができ、機械的な強度をより向上させることができる。
ここで、結晶シリコン粒子106の内部の結晶シリコン中の炭素の濃度勾配は、最高濃度が最低濃度の1.25倍乃至2.0倍となっていることが好ましい。これは、最高濃度が最低濃度の1.25倍よりも小さい場合や2.0倍よりも大きい場合には、熱歪み等を起因としたクラックや濃度差に起因した熱膨張係数の変化によりクラックを生じやすくなり、機械的な強度が低下してしまう傾向があるからである。
このようにして得られる結晶シリコン粒子106は、本発明の光電変換装置を作製するために使用される。
図1に示した本発明の光電変換装置の例は、このようにして得られた結晶シリコン粒子106を用いて作製されたものである。この光電変換装置を得るには、まず、結晶シリコン粒子106の表面に形成された余分な酸化膜をフッ酸またはフッ硝酸でエッチング除去する。このとき除去される酸化膜の厚みは1μm以上である。
次に、導電性基板107の上に結晶シリコン粒子106を多数個配置する。次に、これを全体的に加熱して、結晶シリコン粒子106を導電性基板107に接合層108を介して接合させる。なお、この接合層108は、例えばアルミニウムとシリコンとの合金から成る層である。
次に、結晶シリコン粒子106の隣接するもの同士の間に介在するように、導電性基板107上に絶縁物質109を形成する。次に、これら結晶シリコン粒子106および絶縁物質109の上側の全体にわたってアモルファスまたは多結晶の半導体層、例えばシリコン層110を成膜する。このとき、結晶シリコン粒子106がp型であればシリコン層110はn型になるように成膜し、結晶シリコン粒子106がn型であればシリコン層110はp型になるように成膜する。さらに、そのシリコン層110の上に透光性導体層111を形成する。そして、太陽電池として所望の電力を取り出すために所定のパターン形状に銀ペースト等を塗布して電極112を形成する。このようにして、導電性基板107を一方の電極にし、電極112をもう一方の電極とすることにより、太陽電池としての光電変換装置が得られる。
次に、本発明の光電変換装置について具体例を作製工程に沿って説明する。
RCA洗浄した粒径が約500μmのホウ素ドーピングしたp型結晶シリコン粒子を石英ガラスのサヤ上に一層に多数個充填し、雰囲気焼成炉内の石英ガラス製ベルジャー内にセットした後に、酸素ガスと窒素ガスとから成るの反応ガスをアルゴンガス雰囲気中に導入しながら昇温し、シリコンの融点以上の1445℃まで加熱して6分間保持して表面のシリコンの酸窒化膜の内側のシリコンを溶融させた後、1400℃まで降温して凝固させた。その後、さらに1150℃まで降温させてから結晶中の歪み除去のために120分間の熱アニールを行なった。熱アニール後に室温付近まで降温させて結晶シリコン粒子を作製した。
結晶シリコン粒子の表面にシリコンの酸窒化膜を形成する際の炉内の酸素ガスおよび窒素ガスのアルゴンガスに対する分圧はそれぞれ6%および25%とし、アルゴンガス流量に対する酸素ガスおよび窒素ガスの流量で調整した。この酸素ガスおよび窒素ガスの分圧を終始一定に保ちつつ、アルゴンガス,酸素ガスおよび窒素ガスを流した。
回収した結晶シリコン粒子の表面に形成された酸窒化膜を所定の厚さまでフッ酸およびフッ硝酸でエッチング除去した。
以上のようにして結晶シリコン粒子を作製するに当たって、結晶シリコン粒子の内部の結晶シリコン中の炭素に濃度勾配が形成されていないものを得るには、珪素化合物被膜の内側で内部の溶融したシリコンを融点以下の温度まで降温させて凝固させる際に、降温速度を毎分20℃よりも速くして、過冷却度をより大きくさせて偏析効果を小さくするようにした。また、その濃度の大きさを調整するには、多結晶製造時の出発原料からの含有量やグラファイト坩堝からの混入量を調整することによって行なった。
一方、本発明の光電変換装置に用いる、結晶シリコン粒子の結晶シリコン中の炭素に濃度勾配が形成されているものを得るには、シリコンを凝固させる際の降温速度を毎分20℃よりも遅くして、過冷却度をより小さくさせて偏析効果を大きくすることによって、炭素に濃度勾配が形成されるようにした。
また、その濃度および濃度勾配の大きさを調整するには、多結晶製造時の出発原料からの含有量やグラファイト坩堝からの混入量を調整し、シリコンを凝固させる際の降温速度を調整することによって行なった。
そして、このようにして得た各結晶シリコン粒子から、図1に示すような構成の光電変換装置を作製し、所定の強度および所定の波長の光を照射して、光電変換装置の電気特性を示す変換効率(単位:%)を測定した。その結果を比較例1〜6について表1に、また本発明の実施例1〜5について表2に示す。なお、これらの比較例および実施例に用いた結晶シリコン粒子中の酸素濃度については、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy:2次イオン質量分析)で断面分析を行ない、その測定点は、結晶シリコン粒子の中心付近,中心付近と表面付近との中間付近,表面付近として、最表面から1μmよりも深い部分で一定濃度に落ち着いたところの測定結果(単位:×1016atoms/cm3)を示した。
表1に示す通り、比較例1で作製した炭素濃度が550×1016atoms/cm3の結晶シリコン粒子で形成された光電変換装置の変換効率は0.8%と低く、また、比較例2〜6で作製した炭素濃度が50×1016〜500×1016atoms/cm3の範囲内で一様な結晶シリコン粒子で形成された光電変換装置の変換効率も3.7〜4.6%であり、いずれも低いものであった。
これに対し、表2に示す通り、炭素濃度を段階的に変化させた結晶シリコン粒子を用いた本発明の実施例1〜5の光電変換装置においては、内部の炭素濃度は30×1016〜500×1016atoms/cm3範囲内で一方向に向かって濃度分布が形成されていることから、光電変換装置の変換効率は高いもので7.6%、低いものでも6.1%といずれも比較例1〜6に比べて高く、いずれも良好な変換効率であった。
また、以上の結果から分かるように、本発明の実施例1〜5における光電変換装置は、結晶シリコン粒子の内部の炭素濃度の濃度分布が最高濃度が最低濃度の1.25倍乃至2.0倍の範囲にあることにより、特に変換効率が高く電気特性に優れているものとなっている。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
106・・・結晶シリコン粒子
107・・・導電性基板
108・・・接合層
109・・・絶縁物質
110・・・半導体層(シリコン層)
111・・・透光性導体層
112・・・電極
107・・・導電性基板
108・・・接合層
109・・・絶縁物質
110・・・半導体層(シリコン層)
111・・・透光性導体層
112・・・電極
Claims (5)
- 導電性基板の一主面に、第1の導電型の結晶シリコン粒子を多数個、下部を前記導電性基板に接合し、隣接するもの同士の間に絶縁物質を介在させるとともに上部を前記絶縁物質から露出させて配置し、これら結晶シリコン粒子および絶縁物質を覆うように第2の導電型の半導体層および透光性導体層を順次形成した光電変換装置であって、前記結晶シリコン粒子は、表面に珪素化合物被膜を有するとともに、内部の結晶シリコン中に炭素を含有しており、この炭素に一方向に向かって濃度勾配が形成されていることを特徴とする光電変換装置。
- 前記炭素の濃度勾配は、最高濃度が最低濃度の1.25倍乃至2.0倍であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
- 前記結晶シリコン粒子の大きさが30μm乃至1500μmであることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
- 前記珪素化合物被膜がシリコンの酸窒化膜であることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
- 前記珪素化合物被膜の厚みが1μm乃至50μmであることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
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JP2003323583A JP2005093617A (ja) | 2003-09-16 | 2003-09-16 | 光電変換装置 |
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