JP4025444B2 - 低密度発泡紙ならびにその製造方法 - Google Patents

低密度発泡紙ならびにその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、断熱性、保湿性、クッション性等に優れた低密度の発泡紙及びその製造方法に関し、更に詳しくは加熱発泡剤の分散ムラや発泡剤の凝集によるアバタ状微細突起物が発現しない低密度発泡紙及びその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、食品容器や包装材料等に用いられるシートとしてはポリエチレン、ポリスチレン等のプラスチック発泡体が断熱性、保温性、クッション性に優れると共に成型加工性もよく、他の材料に比べ安価であるとの理由から大量に使われていた。しかし、昨今では環境を汚染させず、自然に分解したり、廃棄物を焼却処理した場合にも焼却炉を傷めたり、汚染物質や煤煙等の発生しにくいパルプ製の紙基材へと転換が迫られている。紙基材に、これらの断熱機能等をもたせる手段としては、断熱性能を発揮する発泡剤を、パルプと共に混抄して抄紙マシンの加熱ロール(ドライヤー)上で発泡させる方法等が知られている(特許第2689797号公報)。
【0003】
上記以外に、製紙用パルプを主材とした原料に発泡性マイクロカプセルを配合して抄紙した水分50〜60重量%の湿紙表面に、主としてゴムラテックスまたは合成樹脂エマルジョンから成る含浸液を重ねて含浸させた後、加熱発泡させて低密度紙を製造する方法も、特開平8−226097号公報に開示されている。
【0004】
前者の方法は、パルプに発泡剤として機能する発泡性粒子を配合して抄紙した湿紙シート(以下、ウェブという場合がある)を加熱により発泡させて低密度紙を製造するにあたり、該ウェブの加熱発泡前の水分量を65〜72%とすることを特徴としたもので、加熱発泡前のウェブ水分を65%未満にすると、発泡ムラが生じてしまい、均一な発泡紙が得られないとの知見の下に前記の水分範囲に保持したうえで加熱することを要件としたものである。
【0005】
また、後者にあっても、前述のようにプレス脱水した後のウェブ表面に前記エマルジョン液等を湿式含浸させる方法であるから、含浸前のウェブにおける水分が50〜60重量%の範囲にあっても加熱発泡前の水分は62〜69%(前記公開公報に記載されている数値に基づいた換算値)と高い値となり、結果的には、次のような不具合を解消できないでいた。
【0006】
すなわち、これらは先行技術にあっては、パルプ繊維を主体とする紙料中に発泡剤粒子を混在させて抄紙した場合に、従来の低密度発泡紙に比べて遥かに低密度の紙を製造し得ることを開示してはいるが、発泡剤粒子分散時に起こる分散ムラや凝集、ドライヤー表面温度による発泡ムラなどに起因するアバタ状微細突起物の発現という問題についてはなんらの解決策も示されていなかった。
【0007】
また、加熱発泡前のウェブに対し高水分量を保持させたがために、乾燥効率が悪く、一般紙に比べ大幅にエネルギー原単位を高騰させるばかりでなく、既存の抄紙機を利用せんとしたときには、通常、その抄紙機の乾燥能力は決まっているので、ウェブを所定の水分量(通常5〜8%)まで乾燥するためには、抄紙速度(以下、抄速とする)を極端に遅くして対応しなければならず、生産性が低いという問題があつた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はポリスチレン発泡体より低密度である0.2g/m以下で、断熱性、保温性、クッション性に優れ、かつ紙層中および紙面にアバタ状微細突起物の存在しない低密度発泡紙を提供することにある。
更に、本発明は前記低密度発泡紙を得るにあたり、発泡剤粒子分散液を篩にかけることにより、分散ムラや凝集が生じないようにし、かつ加熱発泡前の水分を41〜60%と低くしてからドライヤー温度120〜150℃で乾燥することにより、乾燥に要する熱エネルギーの原単位を大幅に低減させることができるようにしたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らはパルプに発泡剤を配合して抄紙した紙ウェブを、加熱発泡させて低密度発泡紙の嵩高な紙を製造する方法において、上記パルプ中に添加する加熱発泡剤として、熱膨張性マイクロカプセルを用い、その際、前記加熱発泡剤のパルプスラリー中における加熱発泡剤の粒子径として、少なくとも100メッシュパス分が98%以上を占めるように分散させた後、該スラリーを抄紙機のドライヤー上で乾燥させる。その際、加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量を41〜60%の範囲に保持して加熱発泡させるようにすれば、アバタ状微細突起物がなく、しかも安定した操業性と高い品質をもった製品が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
【0010】
(1)パルプに加熱発泡剤を配合して抄造した紙ウェブを、加熱により発泡させて低密度の嵩高な紙を製造する方法において、上記パルプ中に添加する加熱発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを用いると共に、該カプセルをパルプスラリー中に均一に分散させ、その際、前記発泡剤のパルプスラリー中における発泡剤粒子径として、少なくとも100メッシュパス分が98%以上を占めるように分散させた後、このパルプスラリーを抄紙した上で、加熱発泡させることを特徴とする低密度発泡紙の製造方法。
【0011】
(2)前記(1)記載のパルプスラリーを抄造した上で、加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量をすくなくとも41〜60%の範囲に保持して加熱発泡させることを特徴とする低密度発泡紙の製造方法。
【0012】
(3)前記加熱発泡剤をパルプスラリー中に均一に分散させるために界面活性剤を併用したことを特徴とする上記(2)記載の低密度発泡紙の製造方法。
【0013】
(4)前記加熱発泡剤をパルプスラリー中にパルプ重量に対して固形分で5〜20%添加した上で均一に分散させて湿紙ウェブを形成させ、かつ加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量を41〜60%の状態とした後に、前記ウェブをドライヤーを介して加熱発泡させて、低密度の紙シートを得ることを特徴とする前記(2)または(3)記載の低密度発泡紙の製造方法。
【0014】
(5)加熱発泡剤として、アクリロニトリル系の熱可塑性樹脂をカプセル外殻に使用したマイクロカプセルを選定した上で、該カプセルをパルプスラリー中に分散させるに際して、ポリカルボン酸型高分子からなるアニオン系界面活性剤を分散剤として用い、かつ発泡性粒子の固形分量に対し0.3〜0.8%添加することを特徴とする前記(2)ないし(4)の何れかに記載の低密度発泡紙の製造方法。
【0015】
(6)加熱発泡剤であるマイクロカプセルを100〜150メッシュの篩目を有するストレーナまたはスクリーンを経由させた後、該カプセルをパルプスラリー中に添加して均一に混合し、かつ加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量を41〜60%の状態とした後に、加熱発泡させることを特徴とする低密度発泡紙の製造方法。
【0016】
(7)前記(1)ないし(6)のいずれかに記載された方法により製造される低密度発泡紙。
【0017】
また、本発明においては発泡剤の水分散液をストレーナを経由させるか、もしくは分散剤を併用してパルプスラリーに配合した上で、抄紙機にて該スラリーをシート化した後、プレスパートで脱水する。脱水後の湿紙ウェブを次段のドライパートで乾燥、加熱発泡させ、発泡状態を固定化して低密度発泡紙を製造するようにした方法をも包含するものである。
【0018】
問題となる低密度発泡紙層又は低密度発泡紙表面に起こる発泡ムラによる「アバタ状微細突起物」は、▲1▼乾燥時におけるミクロ的な温度分布のムラと、▲2▼発泡剤の分散の不均一(以下、両者を総称して分散ムラという)との2つの現象に起因していることを突き止めた。
上記▲1▼の乾燥におけるミクロ的な温度分布のムラは、ウェブとドライヤー表面との接触が不均一(接触していない部分がある)のため、乾燥と温度上昇に不均一が生じ、結果的に「アバタ状微細突起物」となってしまうものである。一般紙の製造においては、湿紙ウェブの脱水プレスロールのプレス圧力やドライヤーに圧着させるタッチロールの圧力が、紙の密度に影響することが知られている。低密度発泡紙を製造するに当たり、タッチロールの圧力を低くしてしまうと、ウェブとドライヤーとの接触が不均一となり、上記「アバタ状微細突起物」が発生する。本発明にあっては、低密度発泡紙の製造に際してタッチロールのタッチ圧力は、通常の抄紙と同レベルの圧力にしておけばよく、そのことにより温度分布のムラは防止できることが分かった。
【0019】
一方、上記▲2▼として摘記した発泡剤の分散の不均一(分散ムラ)としては、
パルプスラリーに発泡剤を添加する時点において、発泡剤粒子の凝集があり塊状になっている場合と、パルプスラリーと発泡剤との分散が不均一の状態で抄紙された場合の2つがある。後者は、通常の抄紙における薬品添加技術を活用すれば何ら問題はない。主原因は前者と考えられ、発泡前の発泡剤粒子の単体は、粒子径が10〜数10ミクロン(μm)の球形カプセルであり、カプセルには低沸点の炭化水素が内包されている。該カプセルの外殻を形成する樹脂の軟化点以上の温度をカプセルに付与すると、発泡がおこり体積が発泡前の30〜150倍(径で3〜5倍)に膨張する。ウェブ中に発泡剤粒子の複数個が凝集して塊状となった部分が存在すると、加熱乾燥工程においてその部分が他の部分よりも体積膨張し、前述の「アバタ状微細突起物」となる。これを防止するには、100〜150メッシュの金網等で形成したストレーナに、前述の発泡剤の水分散液を通過させて該ストレーナの篩目より大きな塊状の凝集物を除去してやればよい。
【0020】
紙の乾燥において、ドライヤーによりウェブ水分が30%以下まで乾燥されると、セルロース繊維間の水素結合が作用し、徐々にパルプ繊維間結合が始まる。この結合は水分15%付近から急激に起こり、発泡剤の発泡を阻害することになる。紙の厚さ方向での現象を考察すると、ドライヤー表面に接している紙の表面付近では水分の急激な減少と温度上昇が起こり、発泡剤が十分に発泡しないうちに紙の厚さ方向での結合が起こることとなる。なお、発泡剤が発泡すると、その部分は内包された炭化水素の気体による断熱層となるため、ある米坪以上の低密度発泡紙を製造しようとした場合、ドライヤー表面よりさらに離れた裏層は、乾燥と発泡に時間を要するため、一方向からの乾燥では効率が悪く抄速を遅くして対応せざるを得なくなる。したがって、この場合は2段以上のドライヤーを使用して表裏交互に乾燥すれば、効率よく低密度発泡紙を製造をすることができる。
【0021】
本発明に使用するパルプとしては、通常の製紙で使用される、例えば針葉樹や広葉樹の化学パルプや機械パルプ等の木材パルプ、古紙パルプ、麻や綿等の非木材天然パルプ、合成化学パルプ、さらにはポリエルテルやレーヨン等の合成繊維等が挙げられるが、発泡剤は、それらの繊維間の空隙に位置して発泡し、結果としての紙の密度を低下(厚さを厚く)させる訳であるから、本来低密度になり易い麻や合成繊維等を使用しても、木材パルプより格段に低密度になるとは期待できない。
【0022】
本発明に使用する加熱発泡剤としてはマイクロカプセル内に低沸点溶剤を封入した熱膨張性マイクロカプセルであれば如何なる種類でも差し支えないが、非塩素系化合物であるポリアクリロニトリル系もしくはアクリロニトリル・メタクリル酸アルキル共重合体などの熱可塑性樹脂をカプセル外殻としたものは、使用済みの低密度発泡紙を焼却処理する際にも、ダイオキシンを発生させる虞れがないので環境上好ましい。
たとえば、市販されている一般に熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれるもので、エクスパンセル053WU(以下#053とする)はアクリロニトリル・メタクリル酸アルキル共重合体にてカプセル外殻が形成され、該外殻は95℃付近で軟化が始まる。前記カプセルには低沸点の炭化水素(イソブタン)が内包されており、外殻樹脂の軟化に伴いガス化したイソブタンの内圧により急激に体積が膨張(発泡)する。発泡剤粒子単体の発泡倍率は143℃付近で極大となり、それ以上の温度ではイソブタンの内圧が高くなり過ぎ、軟化したカプセルが徐々に破壊され(破泡)、発泡倍率が逆に低下してしまう。したがって、破泡を起こさせず発泡倍率が極大となるような温度を発泡剤に付与し、発泡した状態を保持したまま冷却固定すれば、最も効率よく低密度発泡紙を得ることができる。前記した発泡剤の配合量は、目的とする紙の密度、使用する発泡剤の性能およびコスト等により決定するもので、一概には言えないが、前述の発泡剤#053を使用した場合には、0.20g/cm程度の密度でパルプ重量に対し5%程度、0.10g/cm程度の密度で15%程度の配合量と推定され、さらに配合量を増加すれば、0.10g/cm未満の密度になることも確認された。
【0023】
加熱発泡剤は自重の5倍程度の水に分散攪拌して使用する。該加熱発泡分散液には分散助剤としてポリカルボン酸型高分子などのアニオン系界面活性剤を発泡剤の0.3〜0.8%添加し攪拌することにより凝集物の分離・分散に効果がある。市販されているものにポイズ521、ポイズ530(いずれも花王(株)製)がある。これら界面活性剤は親水性であるためサイズ剤との併用においては1.0%以上添加すると紙のサイズ性(インキ等の滲み防止防止効果)が低下するので好ましくない。なお、パルプスラリーに添加する分散剤としては、前記のポリカルボン酸型高分子等のアニオン系界面活性剤以外に、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることも可能である。
【0024】
この発泡剤分散液を100〜150メッシュの金網等から成るストレーナーを通過させた後、もしくは該分散液にポリカルボン酸型高分子等のアニオン系界面活性剤を分散助剤(以下、単に分散剤という)に用い、このものを発泡剤の固形分量に対して0.5%程度添加して撹拌した後、パルプスラリーに配合して該スラリー中に均一に分散させる。
100メッシュより粗い金網を使用しても、発泡剤粒子の凝集は解消せず、発泡したときにムラができアバタ状微細突起物ができる。また150メッシュより細かい金網の使用は、発泡粒子による金網の目詰まりを起こすため適当でない。当然ではあるが、目的とする製品の用途に応じてサイズ剤、紙力増強剤等の薬品や染料、顔料等の填料その他をさらに添加したものを製紙原料にすることは言うまでもない。
以上
【0025】
ドライヤーについては、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤー等があり、一般的にヤンキードライヤーを使用すれば、平滑な面の紙が得られるが、速度が遅く結果としてコスト上昇につながる。しかしこの事は、最終用途により任意に選択すれば良い事であり、特に限定されるものではない。
ドライヤーの表面温度は、130〜155℃であれば本発明の低密度発泡紙は得られるが、この温度範囲に限定されるものではない。ドライヤー表面温度とウェブ水分の関係、ウェブとドライヤーとの接触時間が発泡の重要な要因であるため、ドライヤー表面温度を上げる際は発泡剤の破泡をおこさせない条件を整えれば、良好な低密度発泡紙を製造することが可能であるといえる。
【0026】
木材パルプのみを原料として製造される紙製品の中で、比較的低密度の範疇に属するのは、含浸加工用原紙であり、密度は0.4〜0.6g/cmである。これより更に低密度のものとしては、コットンリンターパルプを原料とした濾紙や、特殊製法によって製造される蚊取りマット用原紙、芳香剤含浸基材等があり、その値は0.25〜0.50g/cmである。しかし、これらの紙ではポリスチレン発泡体(発泡スチロール)ほどの断熱性能は得られず、さらに、本発明においては通常の製紙原料に比べ高価な発泡剤を使用する訳であるから、密度レベルとしては0.20g/cm未満(同一米坪量であれば、密度が0.25g/cmの低密度発泡紙の厚さに対し、25%増しの厚さになる)、好ましくは0.18g/cm未満(同じく、厚さは50%増しとなる)となるのでなければ、上記低密度発泡紙に対して技術的観点ならびに商品価値等からみた優位性はないものと考える。
【0027】
本発明による製品は、例えば、即席麺類や加熱飲料または冷凍食品などの断熱容器ならびに各種商品の梱包、輸送に供する包装材料、生鮮野菜や果物などの下に敷くクッション材、もしくは建材、畳床などのクッション材、さらには芳香剤や液体薬品等の含浸基材としても有用である。その上、本発明による製品は、基材中に少なくとも5%以上の発泡性カプセル粒子(以下、発泡剤という)を含有し、しかも該発泡剤の外殻は熱可塑性樹脂で形成されているので、基材シート自体が熱エンボス適性とヒートセット性とを具備している。したがってシート状に形成された製品に対し後加工により部分的に表面に凸凹を設けたり、シート全体を波打ち加工することも容易である等の利点を有する。
【0028】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、%、部数は重量%重量部を示すものとする。
実施例1〜3
広葉樹パルプ(LBKP)80%と針葉樹パルプ(NBKP)20%からなる混合パルプをカナダ濾水度(CFS)で580mlに叩解したもの使用した。発泡剤としてエクスパンセル053WU(以下#053とする)を自重の3倍の水に攪拌し、発泡剤の水分散液を調整した。該発泡剤水分散液をJIS・z8801規格の標準篩100〜150メッシュを用いてパスさせ残渣分を2%以下にして、パルプの絶乾重量に対して9%になるように該発泡剤分散液を添加し、更に、乾燥紙力増強剤(ポリストロン194−7、荒川化学工業(株)製)を0.2%、澱粉(エースディンAP−20、大和化学(株)製)を0.8%、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(サイズパインK287、荒川化学工業(株)製)を0.1%、湿紙紙力増強剤(WS515LX、日本PMC(株)製)を0.25%、順次添加し、手抄を行い、乾燥前湿紙ウェブの水分率を41%〜60%になるように調整した。なお、上記各薬品の添加量はすべて絶乾パルプに対する固形分の重量%であり、作成した手抄紙の目標坪量は220g/mである。それぞれの水分に調整したウエブをロータリードライヤー(ジャッポー(株)製)にて表面温度135℃、145℃で乾燥し低密度発泡紙を得た。
【0029】
実施例4
標準篩100メッシュを通し残さ分2%以下、分散助剤ポイズ521を0.5%添加した以外は実施例1〜3と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0030】
実施例5〜6
発泡剤をエクスパンセル#007に変えて添加量をパルプ絶乾燥量に対して14%にし、ポイズ530を夫々0.5%、0.8%添加し攪拌した以外は実施例1〜3と同様に低密度発泡紙を得た。
【0031】
比較例1
発泡剤にエクスパンセル#053を使用し、標準篩を通さず、分散助剤も添加しないで実施例1〜3と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0032】
比較例2,3
発泡剤としてエクスパンセル#053を使用し、標準篩60メッシュ、80メッシュにパスさせた以外実施例1〜3と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0033】
比較例4
発泡剤としてエクスパンセル#053を使用し、標準篩100メッシュをパスさせたときに残さ分が2.29%存在するものを発泡剤水分散液として使用した以外実施例1〜3と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0034】
比較例5
プレス後の水分を38%とした以外は実施例1〜3と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0035】
実施例1〜6、比較例1〜5で得られた低密度発泡紙の物性を表1に示す。
【0036】
【表1】
Figure 0004025444
【0037】
実機抄造における低密度発泡紙の物性およびストレーナーの分散効果
実施例7
実機抄造に用いたパルプは、これまでと同様にLBKP80%、NBKP20%の混合パルプであり、叩解後の濾水度(CSF)は、坪量220g/で600mlとした。発泡剤としてエクスパンセル#053を9%、100メッシュのストレーナーを通したときの残渣分2%以下、分散助剤無添加の水分散液を使用し、丸網ヤンキー型の抄紙機を用いて低密度発泡紙を得た。また、サイズ剤等の使用薬品およびそれらの添加量は、これまでの実施例と同様である。
【0038】
実施例8
分散助剤としてポイズ530(花王(株)製)を添加し攪拌した以外は実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0039】
実施例9
150メッシュのストレーナーに通し、分散助剤ポイズ530を0.5%添加し攪拌した以外は、実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0040】
実施例10
抄紙機として短網多筒型のものを使用した以外は、実施例9と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0041】
実施例11
発泡剤添加量を18%に増量した以外は、実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0042】
実施例12
発泡剤をエクスパンセル#007に代え、添加量を14%にした以外は実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0043】
比較例6
発泡剤にエクスパンセル#053を9%添加し、ストレーナで80メッシュのものを通した以外は実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0044】
比較例7
ストレーナーを通さず、分散剤も添加しない以外は実施例7と同様にして、低密度発泡紙を得た。
【0045】
比較例8
プレス後の水分を65%とした以外は実施例7と同様にして低密度発泡紙を得た。
【0046】
参考例1
LBKP80%、NBKP20%の混合パルプで、発泡剤、分散剤を使用せず、ストレーナーも通さず、他の添加薬剤は実施例と同様に添加し、プレス後水分52%乾燥温度139℃で丸網ヤンキー型抄紙機を用いて抄紙した。目標坪量は220g/mとした。
【0047】
実施例7〜12、比較例6〜8および参考例の物性を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0004025444
【0049】
評価
表1の比較例1〜4の手抄紙に見られたアバタ状微細突起物が、実施例1〜6の手抄紙では認められず、篩による凝集物の除去、分散剤の分散効果が確認された。次に実施例5,6ともに、発泡剤を増量してもアバタ状微細突起物は認められず、さらに、密度はほぼ0.18g/cm以下であり、従来に比べて少ない発泡剤量で高品質の低密度発泡紙を得ることが可能であることが確認された。
【0050】
100メッシュより粗い篩を通したもの、100メッシュでも残渣が2%以上の分散液を使用するとアバタ状微細少突起物が現れた(比較例2〜4)。
このことにより、100メッシュの篩またはストレーナーでは、残渣2.0%以内であれば発泡剤粒子での、凝集による地合ムラが防げることを発見した。
なお、前記試験に使用した発泡剤エクスパンセル#053の平均粒子径は5〜30μmであるが、#007も同等の粒子径であり、他の発泡剤においても同等範囲の粒子径を有していれば、同じ結果が得られることは言うまでもない。
【0051】
表2に示すごとく実機の場合でも、ストレーナーを使用した場合(実施例7)は発泡ムラによるアバタ状微細突起物は確認されず、更に発泡剤を増加しても(実施例11、12)アバタ状突起物が認められず良好な低密度発泡紙が得られたことからも知られるように、均一な発泡剤の分散効果を得ることが実証された。なお、発泡剤を均一な状態にするための分散剤、ストレーナーも水による希釈でパルプ添加前に実施しなければ効果はない。
【0052】
一方、多筒ドライヤーを有する抄紙機においても(実施例9)、密度は0.14g/cmと低密度になり、マシンの種類に制限なく、本発明が有用である
ことが確認された。
【0053】
本発明は、均一に発泡剤を混入した湿紙ウェブをいかに効率よく発泡させるかを追求した点に特徴を有する。すなわち、ドライヤー乾燥により湿紙ウェブ水分が30%付近からセルロースの水素結合でセルロース間の結合力が増し、その後では熱エネルギーで発泡剤が発泡し始めても水素結合による阻害で、目的とする低密度発泡紙は得られない。発泡条件は如何に低いウェブ水分でドライヤーからの熱エネルキーを受け発泡剤が効率良く発泡させるかを、本発明者らは鋭意研究を進め、
(1)発泡剤をいかに均一に分散させるかの問題と、乾燥におけるミクロ的な温度分布
(2)発泡剤が有効に加熱発泡する際の湿紙ウェブ水分分布
との2つの現象に起因していることを突き止めた。
このことは、分散剤およびストレーナーによる発泡剤を均一の分散を進めることであり、湿紙ウェブ水分を41%以上、好ましくは45%以上であれば発泡が効率良く行われ、ウェブ水分の低減がとりも直さず乾燥エネルギーの低減と生産性の向上に寄与することを見出し、コスト的に優位な方法にて低密度発泡紙の製造を可能にしたものである。

Claims (4)

  1. パルプに加熱発泡剤を配合して抄造した紙ウェブを、加熱により発泡させて低密度の嵩高な紙を製造する方法において、上記パルプ中に添加する加熱発泡剤として熱膨張性マイクロカプセルを用いると共に、該カプセルをパルプスラリー中に均一に分散させ、その際、前記発泡剤のパルプスラリー中における発泡剤粒子径として、少なくとも100メッシュパス分が98%以上を占めるように分散させた後、このパルプスラリーを抄紙機のウエットパート上で湿紙ウェブとして形成するに当り、加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量を少なくとも41〜60%の範囲に保持して加熱発泡させることを特徴とする低密度発泡紙の製造方法。
  2. 前記加熱発泡剤をパルプスラリー中に均一に分散させるために界面活性剤を併用したことを特徴とする請求項1記載の低密度発泡紙の製造方法。
  3. 前記加熱発泡剤をパルプスラリー中にパルプ重量に対して固形分で5〜20%添加した上で均一に分散させて湿紙ウェブを形成させ、かつ加熱発泡前の湿紙ウェブの水分量を41〜60%の状態とした後に、前記ウェブをドライヤーを介して加熱発泡させて、低密度の紙シートを得ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の低密度発泡紙の製造方法。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載された方法により製造される低密度発泡紙。
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