JP4025430B2 - エアバッグリッド構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用エアバッグ装置の構成部材であるエアバッグリッドを成形するための成形装置であって、特にエアバッグリッド本体をインサートするインストルメントパネルの射出成形時に使用される成形型装置の経済性を高めると共に、そのインストルメントパネルの車体への組付作業性を高めることができるエアバッグリッド構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車のインストルメントパネル内部に設備されるエアバッグ装置の一般的な構成は図3で示すように、不図示のインフレータ、エアバッグを含むエアバッグモジュール1と、上記インフレータの起動により膨脹するエアバッグをインストルメントパネル2の外部へ膨出せしめるためにエアバッグの膨出力を受けてそのインストルメントパネル1を開裂するエアバッグリッド本体3とからなっており、そのエアバッグモジュール1は、インストルメントパネル2の裏側で例えば車体の一部であるステアリングメンバー4等に固定されており、またエアバッグリッド本体3は、インストルメントパネル2の芯材2Aと一体にインサート成形されており、エアバッグの膨脹力を受けることで、インストルメントパネル2と共に開裂されて膨脹されたエアバッグがインストルメントパネルの外部へ膨出されるものである。
【0003】
上記エアバッグリッド本体をインストルメントパネルと一体にインサート成形するために使用される成形装置、つまりインストルメントパネル芯材の射出成形時に上記エアバッグリッド本体をインサートするエアバッグリッド構造体成形装置の従来例としては、例えば図4で示す如き成形装置がある。この成形装置でエアバッグリッドを成形する手順は、先ずは表皮層5A、発泡層5Bをラミネートしてなるラミネートシート5と、エアバッグリッド本体3を予め用意する。このエアバッグリッド本体3は、後述するインストルメントパネル芯材の裏面に沿って重り合うように位置される開裂壁面3Aと、この開裂壁面の各辺縁から、エアバッグモジュール1の容器軸芯(L)方向と平行方向に延びる周囲のリッド側壁3Bを有し、それら各リッド側壁3Bの外側面には、それら側壁から突出されていてインストルメントパネル芯材との結合力を高めるためのリブ3Cが一体に樹脂成形されているものである。
【0004】
そこでエアバッグリッド構造体を成形するには、固定型6の内部にラミネートシート5をセット(インサート)し、可動型7と関連するスライドコア8には上記エアバッグリッド本体3をセット(インサート)してそれらの型を型閉めする。次にその型内に溶融樹脂を射出することで上記ラミネートシート5及びエアバッグリッド本体3と一体に結合されたインストルメントパネル芯材9が射出成形される。次にスライド型8を可動型7内で後退せしめた後、固定型6と可動型7とを型開きすることで成形されたエアバッグリッド構造体を離型することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記エアバッグリッド構造体を成形するに使用される成形型装置にあっては、少なくともエアバッグリッド本体3の全体をインサートすべき大きさのスライドコア8を必要としていることから、そのスライドコア8が大型となり、このためにエアバッグリッド構造体成形のための型装置が高価となり、経済性が悪いものであった。
【0006】
また上記エアバッグリッド構造体を車体に取り付けるには、先ずエアバッグモジュール1を車体(ステアリングメンバー4)に取付けておき、次いで上記エアバッグリッド構造体を車体のフロントガラスの内側面に沿って、例えば図2、図3で示すように水平面に対し約20度の傾斜角である取付方向(Y)から組付けるのであるが、このエアバッグリッド構造体のロボット等による自動組付装置を用いる組付時において、そのエアバッグリッド構造体に形成されているリッド側壁3Bが、既に車体に取付けられているエアバッグモジュール1の辺縁隅部1Aに干渉しやすく、これが原因でエアバッグリッド構造体の自動組付装置による組付作業性が悪いものであった。
【0007】
本発明は、かかる従来の不具合に着目してなされたもので、エアバッグリッド構造体を車体に組付けるとき、該エアバッグリッド構造体の一部が車体に既設の部材等に干渉されることがないようにエアバッグリッド構造の特に内側形状を設定して、該エアバッグリッド構造体の車体への取付作業性を高めることを第1の目的とする。
【0008】
また本発明では、エアバッグリッド構造体を成形する成形型に組付けられるスライド型の大きさを小型化することができるようにして、エアバッグリッド構造体を製作するに必要とする型装置の経済性を高めることを第2の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記第1及び第2の目的を達成するために、本発明の請求項1では、射出成形されるインストルメントパネル芯材(13)の表側にラミネートシート(16)を、またそのインストルメントパネル芯材(13)の裏側にエアバッグリッド本体(12)をそれぞれインサート成形し、インストルメントパネル成形時の可動型(18)の型抜き方向と車体の前後軸とのなす鋭角が、該車体に取付けられているエアバッグモジュール容器(15)の軸芯方向と該車体の前後軸とのなす鋭角より小さいエアバッグリッド構造体において、前記エアバックリッド本体(12)は、前記インストルメントパネル芯材(13)と重り合う開裂壁面(12A)と、該開裂壁面(12A)の前記車体前方側の辺縁部で、前記インストルメントパネル芯材(13)との結合力を高めるために設けられている前方側リッド壁(12C)と、該前方側リッド壁(12C)に対応して前記開裂壁面(12A)の前記車体後方側の辺縁部で、前記インストルメントパネル芯材(13)との結合力を高めるために設けられている後方側リッド壁(12B)と、が一体に形成されており、前記前方側リッド壁(12C)は、前記インストルメントパネル成形時の可動型(18)の型抜き方向であり、かつ前記エアバッグリッド構造体(11)の前記車体への組付け方向と略平行に延設され、前記後方側リッド壁(12B)は、前記車体に取付けられている前記エアバッグモジュール容器(15)の軸芯方向であり、かつ上記可動型(18)内で摺動可能に嵌入されているスライド型(19)のスライド方向と略平行方向に延設されているエアバッグリッド構造体であることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図1、図2に示す実施形態に基いて詳細に説明する。
【0011】
先ず本実施形態のシームレスタイプのエアバッグリッド構造体11を図1に基いて説明すると、12はエアバッグリッド本体であって、このエアバッグリッド本体12は、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を成形材料として用いて形成しており、このエアバッグリッド本体12の構成は、開裂壁面12Aと、この開裂壁面12Aの各辺縁部より、エアバッグリッド本体12の裏側方向へ延びる周囲のリッド壁12B,12Cを有しており、さらにそれらのリッド壁12B,12Cの外側面にはインストルメントパネル芯材13との結合力を高めるためのリブ12Dが突設されている。
【0012】
また、上記リッド壁のうち、車体の前方側(フロントガラス14側)に位置されるリッド壁12Cの延設方向は、上記エアバッグリッド構造体11を成形するときに用いられる可動型の型抜き方向、つまりエアバッグリッド構造体11の車体への組付方向(Y)と略平行方向に傾斜されており、この傾斜角度は、水平面に対して約20〜23度に設定している。
【0013】
また、車体の後方側に位置されるリッド壁12Bの延設方向は、車体に取付けられているエアバッグモジュール容器15の軸芯方向(L)と略平行方向に傾斜されており、この傾斜角度は水平面に対して約60度に設定されている。上記開裂壁面12Aには平面H字形状に開裂溝12Eが形成されており、また開裂壁面12Aとリッド壁12B,12Cとはヒンジ部12Fを介して連結されている。
【0014】
かかる構造のエアバッグリッド本体12は、インストルメントパネル芯材13の射出成形時にそのインストルメントパネル芯材13と一体にインサート成形されるものである。また上記インストルメントパネル芯材13の表面には、厚さが約1mmである表皮層16Aと厚さが約3mmである発泡層16Bを形成しているラミネートシート16が溶着されている。このラミネートシート16は、パウダースラッシュ成形法又は真空成形法により層成され、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で形成されている。
【0015】
以上がエアバッグリッド構造体の構成であるが、次にそのエアバッグ構造体を製造する型装置について図2を用いて説明する。17は上記エアバッグリッド構造体を成形するための固定型、18はその可動型であって、この可動型18には、上記した形状のエアバッグリッド本体12をインサートすべきインサート受け面18Aと、このインサート受け面に続いてインストルメントパネル芯材13の射出成形面18Bが形成されており、さらに上記エアバッグリッド本体12の車体後方側リッド壁12Bの外側面に沿ってインストルメントパネル芯材13の成形樹脂を射出せしめるためのスライド型19が可動型18内で摺動可能に嵌入されている。
【0016】
可動型18の型抜き方向(移動方向)は、上記エアバッグリッド本体12に設けられている車体前方側リッド壁12Cの延設方向と平行となるように設定されており、またスライド型19の型抜き方向(スライド方向)は、上記エアバッグリッド本体12に設けられている車体後方側リッド壁12Bの延設方向と平行となるように設定されていて、アンダーカット部を有する形状のエアバッグリッド構造体11であっても、可動型18及びスライド型19の型抜きが容易となるようになっている。
【0017】
次に上記型装置を用いるエアバッグリッド構造体11の成形について述べると、先ずは上記固定型17内にラミネートシート16をインサートし、また可動型18内には、予め形成している上記エアバッグリッド本体12をインサートし、その両型を型閉めした後に、その型内に向けてインストルメントパネル芯材13を成形すべき所定の樹脂(PPC)を射出する。これによってエアバッグリッド本体12、ラミネートシート16、及びインストルメントパネル芯材13の三者が一体であるエアバッグリッド構造体11が成形される。次にスライド型19を(L)方向へ後退させた後、可動型18を(Y)方向へ後退することで型開きすることができ、これにより、エアバッグリッド構造体11を離型することができる。
【0018】
このようにして形成されたエアバッグリッド構造体11は、そのエアバッグリッド構造体11の裏側面で突設されているフロントガラス側のリッド壁12Cの突設向きが、エアバッグリッド構造体11の車体への組付方向と略一致するように約20度の角度で開いて形成されている。従ってこのエアバッグリッド構造体11を車体に組付ける作業時において、上記リッド壁12Cが、車体に既に取付けられているエアバッグモジュールに干渉することがなく、エアバッグリッド構造体11の車体への取付作業性が良い。
【0019】
また上記エアバッグリッド構造体11の裏面で突設されている車体後方側のリッド壁12Bの突設向きは、エアバッグモジュール容器15の軸芯(L)方向と平行方向に延設している。従って該リッド壁12B面に沿うインストルメントパネル芯材部分を射出成形するに使用されるスライド型19のスライド方向を、エアバッグモジュール容器15の軸芯方向と平行方向に移動させることができる小型のスライド型19とすることができ、これによりエアバッグリッド構造体11を成形するに使用される型装置の経済性が高められる。
【0020】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエアバッグリッド構造体によれば、このエアバッグリッド構造体の車体への組付作業性が良好となり、特にロボット等による組付装置を用いて組付ける作業時において、円滑なる組付作業を行なうことができる。またエアバッグリッド構造体を成形するに用いる可動型の移動方向に対してアンダーカット部となる成形部分を補なうスライド型を小型化することができ、これにより型装置の経済性が高められるという作用効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明よりなるエアバッグリッド構造体の実施形態を示した断面説明図。
【図2】本発明よりなるエアバッグリッド構造体を成形する型装置の説明図。
【図3】従来のエアバッグリッド構造体を示した説明図。
【図4】従来のエアバッグリッド構造体を成形する型装置の説明図。
【符号の説明】
11…エアバッグリッド構造体
12…エアバッグリッド本体
13…インストルメントパネル芯材
14…フロントガラス
15…エアバッグモジュール容器
16…ラミネートシート
17…固定型
18…可動型
19…スライド型
Claims (1)
- 射出成形されるインストルメントパネル芯材(13)の表側にラミネートシート(16)を、またそのインストルメントパネル芯材(13)の裏側にエアバッグリッド本体(12)をそれぞれインサート成形し、インストルメントパネル成形時の可動型(18)の型抜き方向と車体の前後軸とのなす鋭角が、該車体に取付けられているエアバッグモジュール容器(15)の軸芯方向と該車体の前後軸とのなす鋭角より小さいエアバッグリッド構造体において、
前記エアバックリッド本体(12)は、前記インストルメントパネル芯材(13)と重り合う開裂壁面(12A)と、
該開裂壁面(12A)の前記車体前方側の辺縁部で、前記インストルメントパネル芯材(13)との結合力を高めるために設けられている前方側リッド壁(12C)と、
該前方側リッド壁(12C)に対応して前記開裂壁面(12A)の前記車体後方側の辺縁部で、前記インストルメントパネル芯材(13)との結合力を高めるために設けられている後方側リッド壁(12B)と、が一体に形成されており、
前記前方側リッド壁(12C)は、前記インストルメントパネル成形時の可動型(18)の型抜き方向であり、かつ前記エアバッグリッド構造体(11)の前記車体への組付け方向と略平行に延設され、
前記後方側リッド壁(12B)は、前記車体に取付けられている前記エアバッグモジュール容器(15)の軸芯方向であり、かつ上記可動型(18)内で摺動可能に嵌入されているスライド型(19)のスライド方向と略平行に延設されていることを特徴とするエアバッグリッド構造体。
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