JP4025251B2 - 防水施工用役物およびそれを用いた接合構造、接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性を有する基材をフッ素樹脂にて被覆してなる防水施工用役物及びそれを用いた接合構造、接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築物の陸屋根面のシート防水工事における出入隅部分を有する施工面に対して防水シートを敷設する際、入隅線及び出隅線が交わる部分の入隅角及び出隅角や床スラブを貫通している円形パイプ等の曲線状の入隅線及び出隅線を有する部分には必ず小さな穴が残ってしまい、防水シートのみの敷設では防水が出来ない部分が生じる。そこで、この様な部位には予め、その形状に合わせて防水シートを構成するシート材と同様の熱可塑性樹脂のみから成る役物をその部分にあてがい、適当な接着剤もしくは熱溶着を用いて防水シートに接合して防水層を形成している。
【0003】
役物と防水シートの接合方法は溶剤系の接着剤による常温接着が一般的であるが、接着剤を用いる接合方法では、防水シートを構成するシート材の繊維強化による表面の凹凸に起因して接着が不十分となり、接着剤塗布後、ローラや鏝による加圧により防水シートと役物との接合部を密着させる作業が必要で非常に手間がかかる。また、役物の形状が施工面と若干異なり整合しなかった場合において、役物を手持式熱風機で加熱し、役物を軟化させた上で加圧して、その形状を施工面に馴染ませてから防水シートを接着しているために、施工性がよくない。しかし、役物本体に使用される熱可塑性樹脂は軟質塩化ビニール樹脂等の適度な柔軟性と粘りがあり、120℃程度の温度で軟化し、材料が伸び易い性質をもった樹脂であるため、材料厚みが1.5〜2.0mm程度であれば施工面への形状に整合させることが可能であり、接合品質及び止水性能は確保できるため汎用されている。ただし、接着剤使用時の溶剤揮発による臭気問題がある。
【0004】
ここで、ガラス繊維で補強されたフッ素樹脂製シートは膜屋根材料として用いられてはいるものの、建物の屋上防水における防水シートとしての利用例はない。したがって、それの役物も存在しない。また、膜構造物では入隅線、出隅線、入隅角及び出隅角等を有する施工面に対する有効な材料・工法がないために、その設計形状や納まりに制約がある。このことはフッ素樹脂が高耐久性という特徴は有するものの、難接着性、難加工性、難作業性などに起因している。
【0005】
なお、前述したフッ素樹脂とは市販されているニフッ化ポリエチレン樹脂、三フッ化ポリエチレン樹脂などではなく、耐久性の非常に高いPTFE(四フッ化エチレン)樹脂やPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)樹脂、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)樹脂など主鎖および側鎖の炭素・フッ素結合で構成されている所謂パーフルオロ樹脂を指す。具体的に言えば、前述したフッ素樹脂は接着剤による接着が困難であり、ホットメルト接着(溶着)のみでしか接合できない。しかもその特性上、一般的に汎用されている熱可塑樹脂と比べ融点が300℃前後と高く、メルトフローしにくいために加圧しなければ接着しない。また、それ自体が硬く柔軟性が少ないことから加熱しても伸びにくい性質などが挙げられる。しかしながら、これらの特性は樹脂の種類によって若干異なる性質があり、適宜、その用途によって使い分けがなされている。前述の膜屋根材料として用いられるフッ素樹脂製シートはPTFE樹脂が用いられている。このシート同士のホットメルト接合は熱盤により行われるのが常法である。しかし、このときの溶着条件としては、熱盤温度380℃で加熱時間が90秒と高温で長時間の加熱が必要であり、接合するシートの被着面同士が密着できるだけの加圧力が必要となる。さらに接合の信頼性を高めるためにメルトフローに比較的優れたFEP樹脂フィルムやFEP樹脂ゲルを溶着接合補助材としてシート被着面間に挿入する必要があり、極めて作業性が困難な接合作業となる。
【0006】
ここで熱盤での溶着接合時の発熱効率を改善した電磁誘導加熱を利用したホットメルト接合が一般的に知られている。電磁誘導加熱の場合では、発熱源として金属箔や金属板やその加工品といった導電性材料が必要となり、その導電性材料を被着物であるシートの上部、シートの内部、シート下部に配置して行われている。しかしながら、発熱源としての導電性材料をシートの上部、又は下部に設置した場合は被着面を直接加熱できないため、結果として熱盤と同様な作業性となり、電磁誘導加熱の高発熱効率の優位性を活用できない。一方、シート材間(被着面同士の間)に導電性材料を設置する場合には導電性材料と付着性が小さいことから接合の品質を損ないやすいことになる。
【0007】
例えば、特許文献1には、本体を熱可塑性樹脂であるポリオレフィン系樹脂で構成し、その表面もしくは中間部に電磁誘導加熱に必要な導電性多孔シート体を積層一体化した防水シート敷設用固定治具を用いて、敷設する防水シートと電磁誘導加熱により溶着する方法が記載されている。この方法においては、電磁誘導作用による導電性多孔シート体の発熱熱効率が高く、短時間で防水シートと固定用治具を接合できるとともに、その接合作業が容易となって施工性が向上する。また、導電性多孔シート体を用いることにより、固定治具本体の樹脂との付着性の小さいことによる接合品質の不具合が改善されている。また、防水シートとの接合時において、臭気などが発生しないために良好な作業環境となる。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−170327号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、防水シート敷設用固定治具は、本体全体が同じ樹脂層となっているので、仮に本体の樹脂を比較的メルトフローしやすいフッ素樹脂で構成し、導電性多孔シートと積層一体化した固定治具を用いて防水シートと接合すると、その接合時において、本体の樹脂全体がメルトフローして、防水シート敷設用固定治具の形状が保てなくなり、樹脂の厚みにバラツキが生じてそれ自体の耐久性が低下し、水密性を維持することが困難となる問題が生じる。
【0010】
本発明は、前述のような問題点を考慮し、接合時においてその形状を保つとともに、耐久性及び水密性を維持する防水施工用役物及びそれを用いた接合構造、接合方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の防水施工用役物は、導電性を有するシート状の基材と、前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成によると、高周波による電磁誘導作用によって基材を誘導加熱した場合において、一方又は両方の最外層にあって主成分が基層より低いフッ素樹脂で構成された表層が溶融し、それが接着層となるので、表層の主成分がフッ素樹脂で構成された防水シートと接合固定することができるとともに、防水施工用役物の表層が溶融するだけとなるので、本体全体の樹脂がメルトフローするものより、それの形状を保持することが可能となる。従って、防水施工用役物同士又は防水施工用役物と防水シートとを接合する場合において、防水施工用役物の厚みのバラツキが抑制され、耐久性及び水密性の機能を維持することができる。また、防水施工用役物の内部に基材が存在することによって、防水施工用役物の強度が向上し、下地にアンカー材などを用いて防水施工用役物を固定することができる。従って、防水施工用役物に下地から剥がす方向に力が加わっても、浮いたり、剥がれたりすることを防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の防水施工用役物は、前記基材が、線径が0.1mm〜0.5mmで且つ20〜60メッシュ(0.8mm〜2.4mm)の金属織物、又は厚さ0.01mm〜0.1mmの金属箔で形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成によると、基材が金属織物の場合では、線径が0.1mm〜0.5mmと適度に細いため、下地及び防水シート同士の接合部に防水施工用役物を追従変形させて固定することができる。つまり、下地に防水施工用役物を固定する場合においては、下地の形状が多少、防水施工用役物と異なっていても、必要に応じて変形させて下地に追従させることができるとともに、防水シート同士の接合部に防水施工用役物を固定する場合においては、防水シート同士の接合部の段差(防水シート同士の厚みによる段差)に防水施工用役物を変形させて追従させることができる。また、金属織物が20〜60メッシュ(0.8mm〜2.4mm)となっているために、防水施工用役物を構成する樹脂同士が、基材を境にして剥離することを防ぐことができる。つまり、20〜60メッシュの金属織物が有する開口部で、防水施工用役物を構成する樹脂同士が接合し、基材を境にして剥離することを防いでいる。
また、基材が金属箔の場合では、同面積あたりの密度が高くなり、電磁誘導作用による基材の発熱性がより向上する。そのため、厚さ0.01mm〜0.1mmの範囲内の金属箔とすることが可能となり、金属織物と同様に下地及び防水シート同士の接合部に防水施工用役物を追従変形させて固定することが容易に行える。
【0015】
請求項3に記載の防水施工用役物は、前記基層の片側の厚みが、それぞれ0.05mm〜0.4mmの範囲内で、前記密着層の片側の厚みが、それぞれ0.025mm〜0.05mmの範囲内であることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成によると、基材を挟むようにして配置された基層の片側の厚みがそれぞれ0.05mm〜0.4mmの範囲内であるために、防水施工用役物の下地に対する形状追従性を確保しつつ、防水施工用役物の耐久性が向上したものとなる。また、密着層の片側の厚みがそれぞれ0.025mm〜0.05mmの範囲内であるために、電磁誘導作用による基材の発熱時に基材の位置を安定させつつ、基材と基層との密着性を確保することができる。
【0017】
請求項4に記載の防水施工用役物の接合構造は、導電性を有するシート状の基材と、前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成された防水施工用役物と、表層がフッ素樹脂で構成されている防水シートとの当接部、又は前記防水施工用役物同士の当接部とが加熱により溶融一体化して接着層を形成していることを特徴とするものである。
【0018】
このような構成によると、高周波による電磁誘導作用によって基材を誘導加熱した場合において、防水施工用役物同士の当接部、又は防水施工用役物と防水シートとの当接部が溶融一体化して接着層を形成しているので、それらを接合固定することができる。従って、防水施工用役物同士を接合したり、防水施工用役物と防水シートとを接合固定することができる。
【0019】
請求項5に記載の防水施工用役物の接合方法は、導電性を有するシート状の基材と、前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成された防水施工用役物と、表層がフッ素樹脂で構成されている防水シートとを重ね合わせた部分、又は前記防水施工用役物同士を重ね合わせた部分を加熱装置により、前記重ね合わせた部分の接した両表層を溶融して接着することを特徴とするものである。
【0020】
このような構成によると、防水施工用役物と防水シートとを重ね合わせた部分、又は防水施工用役物同士を重ね合わせた部分の接した両表層を加熱装置で溶融して接着する。そのため、それらを接合固定することができる。従って、防水施工用役物同士を接合したり、防水施工用役物と防水シートとを接合固定することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態例を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物に防水シートが接合固定された状況を示す断面図である。図2は、本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物の概略構成を示す斜視図である。図3は、図2に示す防水施工用役物の要部拡大断面図である。
【0022】
図1に示すように防水施工用役物1は、構造物の防水すべき屋上などの床面となる底面体11と、その底面体11から立ち上がる側面体12と、底面体11と側面体12とが出会う位置に形成される入隅線13と、で構成された下地14に、ビスなどのアンカー材15で固定されている。そして、防水施工用役物1上には防水シート16が配置されて接合固定されている。
【0023】
なお、防水シート16は、図1に示すようにガラス繊維で形成されたシート材16aと、そのシート材16aを挟むようにして形成された表層16bとで構成された積層構造体である。本実施の形態における防水シート16のシート材16aは、ガラス繊維で形成されているが、特に限定するものではなく、他の繊維からなるシート材や金属製のシート材であっても良い。また、表層16bには後述する防水施工用役物1の表層34と同様の材質であるFEP樹脂で構成されており、防水施工用役物1と接合する際の加熱溶解時の相溶性が良く好ましいが、他のフッ素樹脂で構成されていても良い。
【0024】
図2に示すように防水施工用役物1は、水平フランジ2と垂直フランジ3とを有しており、その水平フランジ2及び垂直フランジ3の一端部同士が連結一体化し、断面がL字形状となるように構成されている。なお、水平フランジ2及び垂直フランジ3にそれぞれ2つずつ形成されたテーパ状の貫通孔10に前述したアンカー材15が貫通されて防水施工用役物1が下地14に固定されている。
【0025】
また、図3に示すように両フランジ2,3は、導電性を有するシート状の基材31と、その基材31を挟むように配置され、主成分がPTFE樹脂で構成された基層33と、基材31と基層33との間に配置されるとともに、基層33と基材31とを密着させ、主成分がPFA樹脂で構成された密着層32と、両フランジ2,3の両側の最外層に配置されるとともに、主成分がFEP樹脂で構成された表層34とが積層一体化して構成されている。
【0026】
図2及び図3に示すように基材31は、ステンレス製の線材5を経糸及び緯糸として交差するようにして構成されたシート状の金属織物となっているが、特に限定するものではない。本実施の形態において、基材31の材質には、耐食性及び発熱性からステンレスを適用しているが、鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、溶融アルミニウムメッキ鋼、溶融亜鉛メッキ鋼など、電磁誘導作用により発熱する導電性金属素材であればよい。
【0027】
また、基材31の線材5の線径は、0.1mm〜0.5mmの範囲内であればよく、線径が0.1mm未満であれば防水施工用役物1と若干形状が異なる下地に追従させて防水施工用役物1を敷設する際や後述するように防水シート18a〜18c同士の接合部の段差19が存在する部分に防水施工用役物1を接合する際に、基材31の線材5が切断される可能性がある。また、基材31を後述するように誘導加熱し、表層34を溶融して防水シート16と防水施工用役物1とを接合固定する際に、表層34を溶融させる程度が不十分となって、十分な接合強度を確保することが困難となる。一方、基材31の線径が0.5mm以上であれば、防水施工用役物1と若干形状が異なる下地に追従させて防水施工用役物1を敷設する際や後述するように防水シート18a〜18c同士の接合部の段差19が存在する部分に防水施工用役物1を接合する際に、防水施工用役物1の強度が大きくなりすぎて、下地及び防水シート18a〜18c同士の段差19に追従させることが困難となり、浮きやガタツキを生じさせる可能性があるので好ましくない。
【0028】
また、線材5の線径が0.1mm〜0.5mmであるために、線材5が防水施工用役物1の表面に凸となってあらわれにくく、防水施工用役物1の表面が比較的平滑になるために、防水シート16との接合が良好となる。つまり、電磁誘導作用により基材31が発熱して防水施工用役物1の表層34が加熱されて溶融した際に、線材5が防水施工用役物1の表面に凸となってあらわれにくいので、防水シート16との接合部(当接部)が比較的平滑な状態となるためにそれらの接合状態が良好となる。また、線材5の線径が0.1mm〜0.5mmと適度に細いため、下地及び防水シート同士の接合部に防水施工用役物1を追従変形させて固定することができる。つまり、下地に防水施工用役物1を固定する場合においては、下地の形状が多少、防水施工用役物1と異なっていても、必要に応じて変形させて下地に追従させることができるとともに、後述するように防水シート18a〜18c同士の接合部に防水施工用役物1を固定する場合においても、防水シート18a〜18c同士の接合部の段差(防水シート同士の厚みによる段差)19に防水施工用役物1を変形させて追従させることができる。
【0029】
また、基材31の金属織物の織り方としては、綾織、平織りのどちらでも適用することが可能であり、基材31の線材5間に形成される開口部6であるメッシュで、図3に示す両フランジ2,3の密着層32が連結一体化している。このメッシュは、20〜60メッシュ(0.8mm〜2.4mm)が好ましく、20メッシュ(0.8mm)未満であれば、両フランジ2,3の基材31とそれを挟む密着層32との接合強度が不足し、基材31を境にして剥離する可能性がある。一方、60メッシュ(2.4mm)以上であれば基材31を後述するように誘導加熱し、表層34を溶融して防水シート16と防水施工用役物1とを接合固定する際に、開口部6と重なる部分の表層34を溶融させる程度が不十分となって、防水シート16と防水施工用役物1との接合強度を確保することが困難となる。
【0030】
このように金属織物が20〜60メッシュの範囲内とすることで、防水施工用役物1を構成する樹脂同士が、基材31を境にして剥離することを防ぐことができる。つまり、20〜60メッシュの金属織物が有する開口部6で、防水施工用役物1を構成する密着層32同士が連結一体化し、基材31を境にして剥離することを防いでいる。
【0031】
また、基材31には、前述した金属織物と同様な材質で構成されるシート状の金属箔も適用することができる。金属箔の場合であれば、金属織物に比べ同面積あたりの密度が高く、電磁誘導作用による基材の発熱性がより向上する。また、金属箔の厚みは、前述した金属織物と同様に防水施工用役物と若干形状の異なった下地及び防水シート18a〜18c同士の接合部の段差19において、必要に応じて変形させて追従させることが容易に行えるように、0.01mm〜0.1mmの範囲内が好適である。金属箔の厚みが0.01mm未満であれば、防水施工用役物と若干形状が異なる下地に追従させて防水施工用役物を敷設する際や防水シート18a〜18c同士の接合部の段差19が存在する部分に防水施工用役物を接合する際に、金属箔の基材が破損して防水施工用役物の耐久性が低下する可能性がある。一方、金属箔の厚みが0.1mm以上であれば、防水施工用役物と若干形状が異なる下地に追従させて防水施工用役物を敷設する際や防水シート18a〜18c同士の接合部の段差19が存在する部分に防水施工用役物を接合する際に、防水施工用役物の強度が大きくなりすぎて、下地及び防水シート18a〜18c同士の段差19に追従させることが困難となり、浮きやガタツキを生じさせる可能性があるので好ましくない。
【0032】
また、基材31には、前述した金属織物や金属箔が適用されるため、その肉厚が、0.01mm〜1.0mmの範囲となる。なお、金属織物を基材31に適用した際において、線材5の線径が0.5mmの場合では、線材5が交差して重なるので金属織物の厚みが最大1.0mmとなる。このような、金属織物や金属箔を基材31に使用することで、防水施工用役物1を下地14に固定させる際に、追従させて変形させることが可能となり、下地14の形状が若干、防水施工用役物1と異なっていても、必要に応じて変形させて下地14の底面体11と側面体12に沿うようにして追従させることができるとともに、防水施工用役物1の厚みも薄いものとなり、防水施工用役物1と防水シート16とを接合固定した部分の出っ張りなどが余り目立たず、防水シート16の敷設後の美観がよくなる。
【0033】
本実施の形態において、基層33に融点が327℃のPTFE樹脂を適用しているが、融点が310℃のPFA樹脂やその変性樹脂を適用することが可能である。このPTFE樹脂は、熱特性面でメルトフロー性が小さく、電磁誘導加熱時の形状安定性が優れていることから適用している。この基層33の片側の厚さは、それぞれ0.05mm〜0.4mmの範囲内とし、基材31の金属織物の表面から0.05mm〜0.2mm程度は被覆できるようにしている。基層33の厚みが0.05mm未満であれば、防水施工用役物1の基材31を電磁誘導作用で加熱したときに、防水施工用役物1の形状が保持できない可能性が生じる。つまり、電磁誘導作用による基材31の発熱時に基層33が軟化した場合において、基層33の厚みが薄すぎるために、防水施工用役物1の形状を維持することが困難となり、防水施工用役物1の耐久性が減少する。一方、基層33の厚みが0.4mm以上であれば、防水施工用役物1の基材31を電磁誘導作用で加熱したときに、表層34を溶融する時間がかかり、防水施工用役物1と防水シート16との接合作業性が低下する。このように基層33の片側の厚みがそれぞれ0.05mm〜0.4mmの範囲内であるために、防水施工用役物1の下地14に対する形状追従性を確保しつつ、防水施工用役物1の耐久性が向上したものとなる。
【0034】
また、本実施の形態において、密着層32に融点が310℃のPFA樹脂を適用しているが、融点が260℃のFEP樹脂やその変性樹脂を適用することが可能である。このPFA樹脂は、FEP樹脂よりも融点が高く、後述するように表層34にFEP樹脂を適用した場合においては、防水シート16等と接合する溶着熱効率を高めることが可能になるので適用している。この密着層32の片側の厚さは、電磁誘導作用による基材31の発熱時に基材31の位置を安定させつつ、基材31と基層33との密着性を確保するために、それぞれ0.025mm〜0.05mmの範囲内としている。密着層32の厚みが0.025mm未満であれば、基材31と基層33とを密着させるその接合力が低いものとなり好ましくない。一方、密着層32の厚みが0.05mm以上であれば、電磁誘導作用による基材31の発熱に伴って密着層32が溶融した場合において、基材31の位置が大きく移動する可能性があり、基材31の位置安定性が低下して好ましくない。
【0035】
また、本実施の形態において、表層34に融点が260℃のFEP樹脂を適用しているが、PFA樹脂やその変性樹脂を使用することが可能である。つまり、基層33より融点が低いフッ素樹脂であれば適用可能であり、表層34と基層33の融点の温度差が30℃以上、好ましくは50℃程度である。このような融点の温度差は、基材31が電磁誘導作用によって発熱した場合に、基層33を溶融させずに表層34のみを溶融することができ、防水施工用役物1の形状保持性及び水密性確保のために好ましいからである。
【0036】
また、表層34の厚みは、防水施工用役物1と接合する相手側の接合面の凹凸に依存するために、接合時にメルトフローした表層34が接合面の凹凸を埋めて接合するに足る量が必要となり、基材31に金属箔を適用した場合では、表層34の厚みが0.01mm〜0.025mm程度となり、基材31に金属織物を適用した場合では、表層34の厚みが0.025mm〜0.05mm程度となる。なお、防水施工用役物1における基層33と表層34間は、基層33を変形させることなく接合を可能とする側面から傾斜構造を有するものが望ましい。具体的には、メルトフローの小さいPTFE樹脂にメルトフローの大きいFEP樹脂の組み合わせにおける浸漬法やラミネート法によって具現化が可能である。
【0037】
また、前述した防水施工用役物1を構成するフッ素樹脂は、前述したPTFE樹脂、PFA樹脂、FEP樹脂以外に、ETFE(四フッ化エチレン・エチレン共重合体)樹脂、PVDF(ビニリデンフルオライド)樹脂、PVF(ビニルフルオライド)樹脂、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)樹脂、ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン)樹脂などの樹脂からも適宜選択して適用することが可能である。
【0038】
また、前述した防水施工用役物1の形状は、本実施の形態において、入隅線13を構成する底面体11と側面体12に沿うようなL字形状となっているが、基材31の外側に向かって順に密着層32、基層33及び表層34が積層して一体化しておれば、どのような形状でもよく、特に限定するものではない。また、両側の最外層に表層34が形成されているが、片側だけに形成されていても良い。つまり、防水施工用役物と防水シートとが接する側の最外層が表層34となっていれば、後述する防水施工用役物1と防水シート16とが接合固定されるように同様に接合固定することが可能となり、両側の最外層に表層34が形成された防水施工用役物1と同様な効果を有することになる。
【0039】
次に、防水施工用役物1と形状が異なる防水施工用役物61,62,81,82について、以下に説明する。図4に示すような各階の底面となる底面体51と底面体51から立ち上がる側面体52とで形成されるB部の入隅角50B及びC部の出隅角50Cと、側面体52同士が出会う位置の上部であって、側面体52と側面体52の上部に位置する湾曲した部分53とで形成されるA部の出隅角50A及びD部の入隅角50Dを防水する場合では、それらに適合する形状を有する図5及び図6に示す防水施工用役物61、62が使用される。図4に示す出隅角50A及び入隅角50Bには、図5に示す防水施工用役物61が適用され、図4に示す出隅角50C及び入隅角50Dには、図6に示す防水施工用役物62が適用される。
【0040】
図5に示す防水施工用役物61は、出隅角50A及び入隅角50Bを形成する底面体51と側面体52と湾曲した部分53とに沿うような形状に形成されており、ほぼ中央部分に出隅角50A及び入隅角50Bと重なる点61aを有している。また、防水施工用役物61は前述した防水施工用役物1と同じ断面構造となるような基材31、密着層32、基層33及び表層34を有している。つまり、防水施工用役物61の両側の最外層には、表層34が形成されており、出隅角50Aに防水施工用役物61を配置させる場合には、防水施工用役物61の点61aが外側に向かって凸となるようにして配置させる。一方、入隅角50Bに防水施工用役物61を配置させる場合では、防水施工用役物61の点61aが内側に向かって凸となるようにして配置させる。つまり、出隅角50Aに配置した防水施工用役物61をひっくり返した状態で入隅角50Bに配置させる。
【0041】
また、図6に示す防水施工用役物62は、出隅角50C及び入隅角50Dを形成する底面体51と側面体52と湾曲した部分53とに沿うような形状に形成されており、ほぼ中央部分に出隅角50C及び入隅角50Dと重なる点62aを有している。また、防水施工用役物62は前述した防水施工用役物1と同じ断面構造となるような基材31、密着層32、基層33及び表層34を有している。つまり、防水施工用役物62の両側の最外層にも表層34が形成されており、出隅角50C及び入隅角50Dに防水施工用役物62を配置させる場合には、前述した防水施工用役物61と同様に防水施工用役物62が適合する方向で配置させる。
【0042】
このように、図5及び図6に示す形状の防水施工用役物61,62を適用することで、防水シートのみでは防水できない出入隅角50A〜50Dの防水を行うことが可能となる。また、防水施工用役物61,62には両面に表層34が形成されているので、防水シートを敷設して形成されたA部からD部の出入隅角部分に防水シート上に配置させて、防水シートと防水施工用役物61,62を接合固定することができる。また、防水施工用役物1も両側の最外層に表層34が形成されているので同様に防水シート16を敷設して形成された入隅線部分に防水シート16上に配置させて、防水シート16と防水施工用役物1とを接合固定することができる。
【0043】
また、図7に示すような底面体71から円柱状の構造物72が凸状に形成されている場合では、その構造物72の周壁73と底面体71とでなす入隅線74に適合する図8及び図9に示すような形状の防水施工用役物81,82を使用すればよい。図8及び図9に示す防水施工用役物81,82は、構造物72の周壁73及び底面体71の一部を覆いつつ、それらで形成される円状の入隅線74の一部を覆う形状に形成されており、前述した防水施工用役物1と同様な断面構造となるような基材31、密着層32、基層33及び表層34を有している。また、図8に示す防水施工用役物81は、図9に示す防水施工用役物82とほぼ同形状となっているが、防水施工用役物82より防水施工用役物81の周長が長くなっている。
【0044】
図7に示すように構造物72の周壁73と底面体71とでなす入隅線74を防水する場合においては、まず、周長の長い防水施工用役物81で周壁73及び底面体71の一部に沿わせつつ、入隅線の大半を覆うとともに、防水施工用役物81で覆われていない入隅線74を防水施工用役物82で覆うと共に、それの端部を防水施工用役物81の端部上に重ね合わせる。そして、後述する防水シート16と防水施工用役物1との接合方法と同様に防水施工用役物81,82同士が重なった部分の外方から電磁誘導加熱機(加熱装置)を配置すると共に、基材31を電磁誘導作用で加熱させつつ、0.02〜0.1N/mm2程度の加圧を行う。基材31の誘導加熱開始後、約10秒で防水施工用役物81,82同士の当接部83(防水施工用役物81,82同士が重なって接している部分)の両表層34がメルトフローし、接着層を形成しつつ防水施工用役物81,82同士が当接部83で接合固定される。このような防水施工用役物81,82同士の接合構造によって、前述と同様に防水シート16のみでは防水できない円状の入隅線74の防水を行うことが可能となる。なお、防水施工用役物1,61,62も同様な積層構造を有しているために同様に防水施工用役物同士を接合固定することができる。
【0045】
続いて、前述した防水施工用役物1を使用して防水シート16を接合固定する接合方法及び接合構造について、以下に説明する。なお、前述した防水施工用役物61,62,81,82は、防水施工用役物1と同様な断面構造を有しているために、同様にして防水シート16と接合固定することができるので、詳細の説明を省略する。
【0046】
図1に示すように構造物の防水すべき屋上などの床面となる底面体11とその底面体11から立ち上がる側面体12とが出会う位置に形成される入隅線13に、防水施工用役物1を配置させて下地14に固定する。つまり、防水施工用役物1の水平フランジ2と底面体11とを、ビス、開脚釘、カールプラグ等のアンカー材15を用いて水平フランジ2の貫通孔10を貫通させて、下地14の底面体11と固定するとともに、防水施工用役物1の垂直フランジ3と下地14の側面体12も同様にアンカー材15を用いて貫通孔10に貫通させて固定する。
【0047】
次いで、下地14に固定した防水施工用役物1を防水シート16で覆うとともに、底面体11と側面体12に沿うようにして配置する。そして、図10(a)に示すように電磁誘導加熱機(加熱装置)90を防水シート16と防水施工用役物1とが重なり合う部分の防水シート16の表面側に配置させると共に、図10(b)に示すように電磁誘導加熱機90の照射面91を当接させ、好ましくは、0.02〜0.1N/mm2程度の加圧を行いながら高周波を照射する。このとき、防水シート16と防水施工用役物1とが重なり合う部分の防水シート16の表面上で電磁誘導加熱機90の照射面91を動かしながら高周波を照射しても良い。
【0048】
そして、この高周波によって、導電性を有する基材31に過電流が生じ、防水施工用役物1の基材31が発熱(即ち、電磁誘導作用による発熱)し、防水シート16の表層16bと防水施工用役物1の表層34とが対向して接する当接部17で両表層16b,34が溶融一体化して接着層20となり、0.02〜0.1N/mm2の加圧で防水施工用役物1と防水シート16とが接合固定される。こうして、防水施工用役物1と防水シート16との接合構造が構成される。また、基材31の発熱によって表層34より融点が高い密着層32及び基層33が溶融しないものの軟化するために、下地14の形状が防水施工用役物1の形状と若干異なっていた場合に、防水施工用役物1が下地14に追従するとともに、防水シート16及び防水施工用役物1の当接部17の両表面が密着する。このようにして、下地14に固定された防水施工用役物1と防水シート16とを接合固定することができる。
【0049】
続いて、前述した下地14に敷設した防水シート18a〜18c上に防水施工用役物1を固定する接合方法及び接合構造について以下に説明する。
【0050】
図11は、本実施の形態における防水施工用役物が防水シート上に接合固定された状況を示す断面斜視図である。図11に示すように前述した下地14の底面体11に沿って防水シート18aが敷設され、その防水シート18aの入隅線13に沿う端部に重ねつつ、側面体12に沿って防水シート18bが敷設されている。また、防水シート18bには、それの一部と重なるように防水シート18cが敷設されており、防水シート18cの厚みによる段差19を覆うようにして防水シート18b,18c上に防水施工用役物1が配置されている。なお、防水シート18a,18b,18cの材質及び断面構造などは、前述した防水シート16と同様である。
【0051】
このように配置された防水施工用役物1を防水シート18b、18cへ接合する方法は、前述した防水シート16と防水施工用役物1との接合方法と同様の接合方法で行うことができる。すなわち、防水施工用役物1の表面側に前述した電磁誘導加熱機90を配置させると共に、それの照射面91を当接させ、0.02〜0.1N/mm2程度の加圧を行いながら高周波を照射する。すると、高周波によって導電性を有する基材31に過電流が生じ、防水施工用役物1の基材31が発熱し、防水シート18b,18cの表層と防水施工用役物1の表層34とが対向して接する当接部の両表層が溶融一体化して接着層となり、0.02〜0.1N/mm2の加圧で防水施工用役物1と防水シート18b,18cとが接合固定される。こうして、防水シート18a〜18c上に防水施工用役物1が接合した接合構造が構成される。
【0052】
また、基材31の発熱によって表層34より融点が高い密着層32及び基層33が溶融しないものの軟化するために、防水シート18cによる段差19に防水施工用役物1が追従変形し、防水シート18b,18cと防水施工用役物1との当接部の両表面が密着する。このようにして、下地14に敷設された防水シート18a〜18cに防水施工用役物1を接合固定することができる。また、前述した防水施工用役物61,62,81,82も同様にして防水シート上に接合固定することができる。
【0053】
以上のように、防水施工用役物1,61,62,81,82によれば、高周波による電磁誘導作用によって基材31を誘導加熱した場合において、表層34が溶融しそれが接着層となるので、表層の主成分がフッ素樹脂で構成された防水シートと接合固定することができるとともに、防水施工用役物1,61,62,81,82の表層34が溶融するだけとなるので、本体全体の樹脂がメルトフローするものより、それの形状を保持することが可能となる。従って、防水施工用役物同士又は防水施工用役物と防水シートとを接合する場合において、防水施工用役物の厚みのバラツキが抑制され、耐久性及び水密性の機能を維持することができる。また、防水施工用役物1,61,62,81,82の内部に基材31が存在することによって、それの強度が向上し、下地14にアンカー材などを用いて防水施工用役物を固定することができる。従って、防水施工用役物に下地14から剥がす方向に力が加わっても、浮いたり、剥がれたりすることを防止することができる。
【0054】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[実施例1]
線径が0.18mmで30メッシュの平織りのステンレスメッシュ金網及び厚さ0.025mmのアルミニウム箔を図2に示すような基材31の形状に加工して2種類の基材を製作した。そして、それら基材をそれぞれ挟むように密着層としての厚さ0.025mmのPFA樹脂フィルムを配置させ、PFA樹脂フィルムの外側に基層としての厚さ0.25mmのPTFE樹脂フィルムを配置させ、PTFE樹脂フィルムの外側に表層としての厚さ0.025mmのFEP樹脂フィルムを配置させつつ、加熱・加圧プレスにてラミネート加工を行い、所定の形状の防水施工用役物を2種類製作した。
【0055】
[実施例2]
次に、所定形状に加工された前述した2種類の基材をもちいて、PFA樹脂のディスパージョンの中に通して焼成するコーティングをそれぞれに対して数回行い、それら基材の両面に厚さ0.025mm程度の密着層としてのPFA樹脂コーティングを施した。次にPTFE樹脂のディスパージョン中に通して焼成するコーティングをPFA樹脂コーティングした2種類の基材に対して繰り返し行い、それらの両面に厚さ0.25mm程度の基層としてのPTFE樹脂コーティングを施した。そして、最後に密着層としてのPFA樹脂コーティング及び基層としてのPTFE樹脂コーティングが施された2種類の基材をFEP樹脂のディスパージョン中に数回通して焼成し、厚さ0.025mm程度のFEP樹脂コーティングをそれぞれの両面に表層として施し、所定形状の防水施工用役物を2種類製作した。
【0056】
[実施例3]
線径が0.18mmで30メッシュの平織りのステンレスメッシュ金網及び厚さ0.025mmのアルミニウム箔の2種類の基材をもちいて、実施例1と同様にPFA樹脂フィルム、PTFE樹脂フィルム及びFEP樹脂フィルムをそれぞれに対して配置させつつ、加熱・加圧プレスにてラミネート加工を行い、シート状材料を製作した。そして、シート状材料を所望形状の防水施工用役物を展開した形に切り取り、それを折り曲げて所定の形状に整えた上で、接合を要する部分においてはPFA樹脂棒をもちいて熱風にて溶接し、所望の防水施工用役物を2種類製作した。
【0057】
[比較例1]
線径が0.18mmで30メッシュの平織りのステンレスメッシュ金網を図2に示すような基材31と同形状に加工して基材とし、その両面に厚さ0.25mmのPTFE樹脂コーティング加工した防水施工用役物と、PTFE樹脂をPFA樹脂とした同様の防水施工用役物とを2種類製作した。
【0058】
以上のような、実施例1〜3の防水施工用役物と比較例1の防水施工用役物を図11に示すような下地14に敷設された表層がフッ素樹脂で形成された防水シート18a〜18c上に接合固定した。比較例1の2種類の防水施工用役物の場合においては、100V、550W、38KHzの電磁誘導加熱機を用いて、加圧力0.05N/mm2で15秒間加熱し、防水シート18b,18c上に溶着接合を行った。比較例1のPTFE樹脂コーティングされた防水施工用役物の場合には、防水シートとの接合時に段差19に形状が追従したものの、防水シート18b,18cとの剥離強度は非常に弱く、2N/cm程度となり接合強度、品質ともに不十分であった。一方、比較例1のPFA樹脂コーティングされた防水施工用役物の場合には、防水シート18b,18cとの接合時の電磁誘導作用による基材の発熱時にPFA樹脂がメルトフローし、部分的に基材が露出したり、PFA樹脂コーティングの厚みが不均一になり、防水施工用役物の形状保持が困難な状況となり、防水施工用役物による水密性機能を維持することができなくなった。また、防水シート18b,18cとの剥離強度は45N/cmで、破壊状況はステンレスメッシュ金網とPFA樹脂層との界面剥離となり、接合強度は十分であったが品質に関しては不十分な結果となった。このことからコーティング樹脂が1種類樹脂で形成された防水施工用役物では、十分な品質を確保することが難しいことがわかった。
【0059】
また、実施例1〜3の6種類の防水施工用役物の場合も前述と同様に100V、550W、38KHzの電磁誘導加熱機を用いて、加圧力0.05N/mm2で15秒間加熱し、防水シート18b,18c上に溶着接合を行った。ステンレスメッシュ金網を基材とした実施例1〜3の3種類の防水施工用役物の場合には、防水シートとの接合時に段差19に形状が追従し、接合状態もよく、加熱後の防水施工用役物の形態も安定しており、防水シートとの剥離強度は57N/cmで、破壊状況は防水シートの表層のフッ素樹脂(PTFE樹脂)の凝集破壊であり、接合強度、品質ともに十分なものであった。
【0060】
アルミニウム箔を基材とした実施例1〜3の3種類の防水施工用役物の場合には、前述したステンレスメッシュ金網を基材とした3種類の防水施工用役物と同様な結果となった。このように実施例1〜3の防水施工用役物のように積層構造体とすることで、接合時においても防水施工用役物の厚みのバラツキが抑制され、水密性の機能を維持すると共に、防水シートとの接合強度が十分な耐久性を有したものとなる。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、接合時においてもその形状を保ちつつその厚みのバラツキが抑制され、耐久性及び水密性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物に防水シートが接合固定された状況を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示す防水施工用役物の要部拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る防水施工用役物が適用される敷設箇所の模式図である。
【図5】図4におけるA部及びB部に適用される防水施工用役物の概略斜視図である。
【図6】図4におけるC部及びD部に適用される防水施工用役物の概略斜視図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る防水施工用役物が適用される敷設箇所の模式図である。
【図8】図7に示す防水施工用役物の概略斜視図である。
【図9】図7に示す防水施工用役物の概略斜視図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物と防水シートとの接合状況を示す説明図であり、(a)は防水施工用役物と防水シートとの接合前状況を示し、(b)は防水施工用役物と防水シートとが接合した状況を示すものである。
【図11】本発明の一実施の形態に係る防水施工用役物が防水シート上に接合固定された状況を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
1 防水施工用役物
2 水平フランジ
3 垂直フランジ
5 線材
13 入隅
14 下地
16 防水シート
17 当接部
18a,18b,18c 防水シート
20 接着層
31 基材
32 密着層
33 基層
34 表層
61,62,81,82 防水施工用役物
90 電磁誘導加熱機(加熱装置)
Claims (5)
- 導電性を有するシート状の基材と、
前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、
前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、
主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成されていることを特徴とする防水施工用役物。 - 前記基材が、線径が0.1mm〜0.5mmで且つ20〜60メッシュ(0.8mm〜2.4mm)の金属織物、又は厚さ0.01mm〜0.1mmの金属箔で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防水施工用役物。
- 前記基層の片側の厚みが、それぞれ0.05mm〜0.4mmの範囲内で、前記密着層の片側の厚みが、それぞれ0.025mm〜0.05mmの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水施工用役物。
- 導電性を有するシート状の基材と、
前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、
前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、
主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成された防水施工用役物と、表層がフッ素樹脂で構成されている防水シートとの当接部、又は前記防水施工用役物同士の当接部とが加熱により溶融一体化して接着層を形成していることを特徴とする防水施工用役物の接合構造。 - 導電性を有するシート状の基材と、
前記基材を挟むように配置され、主成分がフッ素樹脂で構成された基層と、
前記基層と前記基材との間に配置されるとともに、それらを密着させる密着層と、
主成分が前記基層より融点が低いフッ素樹脂で構成され、一方又は両方の最外層にあって加熱されることで接着層を形成する表層とが積層して構成された防水施工用役物と、表層がフッ素樹脂で構成されている防水シートとを重ね合わせた部分、又は前記防水施工用役物同士を重ね合わせた部分を加熱装置により、前記重ね合わせた部分の接した両表層を溶融して接着することを特徴とする防水施工用役物の接合方法。
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