JP4025125B2 - 使用済み燃料の再処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力発電所の軽水炉(LWR)、高速増殖炉(FBR)等の各種原子炉から回収された使用済み燃料中のウランやプルトニウムを核分裂生成物などから分離し、回収したウランやプルトニウムを燃料として再利用できるようにする使用済み燃料の再処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子炉から回収された使用済み燃料中には、ウラン、プルトニウムの他に、核分裂生成物などが含まれている。高速増殖炉は、軽水炉と比較して、使用済み燃料中に貴金属が蓄積しやすい。また、軽水炉においても、長期運転を続けると貴金属が使用済み燃料中に蓄積する。ウランやプルトニウムは再処理工程を経て燃料として再利用される。
【0003】
再処理方法には、使用済み燃料を酸に溶解して溶液状態で処理する湿式法と、使用済み燃料をそのまま高温で処理する乾式法とがある。
【0004】
乾式法には、湿式法と比べて、有機溶媒、イオン交換樹脂等の有機物質を用いないため、放射線損傷の問題が少なく、冷却期間を著しく短くできる、湿式法に比べて処理工程が少なく、かつ水溶液を用いないので、装置の数を少なく、寸法を小さくできる、放射性廃棄物の量が少なく、かつ固体の状態で発生するので、取り扱い貯蔵に便利である、等の本質的な長所がある(「原子力ハンドブック」、浅田忠一他、オーム社、p.593)。
【0005】
本発明者らは乾式法の一つである溶融塩電解再処理方法において、除染能力を高めるために、使用済み燃料の溶融塩への溶解と電解を同時に行う再処理方法を開発した(特開平9−90089号公報)。しかし、酸化ウランと貴金属は電解時の析出電位が近いため、この再処理方法では、同時電解により回収された酸化ウラン中に貴金属が含まれやすい。
【0006】
そこで、本発明者らは、酸化ウラン中への貴金属の混入を低減するために、同時電解により析出した酸化ウランと貴金属を溶融塩に溶解した後、貴金属が酸化ウランより先に析出するような低い電流密度で電解することにより、酸化ウランと貴金属とを分離する再処理方法を開発した(特開2000−155193号公報)。しかし、この再処理方法では、回収された貴金属中に酸化ウランが一部含まれ、酸化ウランの回収率が低かった。また、特開2000−155193号公報には、貴金属を溶融金属に溶解させることにより、酸化ウランと貴金属とを分離する再処理方法が記載されているが、この再処理方法では、貴金属を溶解した溶融金属を蒸留する工程が必要となり、再処理コストが増加した。
【0007】
そこで、本発明者らは、酸化ウランと貴金属とを、酸化ウランを無駄にすることなく、低コストで分離するために、更に、以下の再処理方法を開発した。
【0008】
第一に、使用済み燃料を溶融塩に溶解させる第一溶解工程と、第一溶解工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる貴金属と一部の酸化ウランを陰極の表面に析出回収し、溶融塩中から貴金属を除染する第一貴金属電解除染工程と、第一貴金属電解除染工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる酸化ウランを陰極の表面に析出回収する第一電解工程と、第一貴金属電解除染工程で回収された貴金属と一部の酸化ウランを再び溶融塩に溶解させる第二溶解工程と、第二溶解工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる貴金属を陰極の表面に析出回収して、溶融塩中から貴金属を除染する第二貴金属電解除染工程と、第二貴金属電解除染工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み酸化物燃料に含まれる酸化ウランを陰極の表面に析出回収する第二電解工程とを有する再処理方法を開発した。
【0009】
第一貴金属電解除染工程では、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値と同等の電流密度の電解を行い、第二貴金属電解除染工程では、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値よりも低い電流密度の電解を行う。
貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値iNMは以下のように表すことができ、DNMとCNMとδNMを測定することによりiNMを決定することができる。
【数1】
Figure 0004025125
【0010】
第二に、使用済み燃料の一部を溶融塩に溶解させる第一溶解工程と、残りの使用済み燃料を陽極とし、第一溶解工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて、使用済み燃料に含まれる酸化ウランを溶融塩に溶解させると同時に電解し、酸化ウランを陰極の表面に析出回収する第一電解工程と、使用済み燃料に含まれる貴金属が溶解し始めたところで電解を中止し、溶け残っている使用済み燃料を溶融塩に溶解させる第二溶解工程と、陰極を別の固体電極に交換して電解し、使用済み燃料に含まれる貴金属を陰極の表面に析出回収して、溶融塩中から貴金属を除染する貴金属電解除染工程と、貴金属電解除染工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる酸化ウランを陰極の表面に析出回収する第二電解工程とを有する再処理方法を開発した。
貴金属電解除染工程では、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値よりも低い電流密度の電解を行う。
【0011】
第三に、使用済み燃料を溶融塩に溶解させる溶解工程と、溶解工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる貴金属と一部の酸化ウランを陰極の表面に析出回収し、溶融塩中から貴金属を除染する貴金属電解除染工程と、貴金属電解除染工程で回収された貴金属と酸化ウランを、付着した塩を除去した後に加振機で振動させ、貴金属と酸化ウランを分層させて、それぞれ分離回収する分離工程と、貴金属電解除染工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる酸化ウランを陰極の表面に析出回収する電解工程とを有する再処理方法を開発した。
貴金属電解除染工程では、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値と同等、またはそれよりも低い電流密度の電解を行う。
【0012】
第四に、使用済み燃料を溶融塩に溶解させる溶解工程と、溶解工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる貴金属と一部の酸化ウランを陰極の表面に析出回収し、溶融塩中から貴金属を除染する貴金属電解除染工程と、貴金属電解除染工程で回収された貴金属と酸化ウランを水中で超音波振動機で振動させ、付着した塩を除去しながら貴金属と酸化ウランを分層させて、それぞれ分離回収する超音波分離工程と、貴金属電解除染工程後の溶融塩に浸漬された固体電極を陰極として用いて電解し、使用済み燃料に含まれる酸化ウランを陰極の表面に析出回収する電解工程とを有する再処理方法を開発した。
貴金属電解除染工程では、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値と同等、またはそれよりも低い電流密度の電解を行う。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、新たに開発した再処理方法では、貴金属電解除染工程において、貴金属の電解析出で使われる限界拡散電流密度値と同等、またはそれよりも低い電流密度の電解が行われるため、処理速度が遅いという問題点があった。
【0014】
また、新たに開発した再処理方法でもパラジウムの完全分離ができないという問題点があった。
【0015】
また、溶融塩電解再処理方法で再処理する場合、使用済み燃料を燃料棒から取り出さなければならないが、その方法が十分に確立されていない。
【0016】
また、高速増殖炉の燃料集合体は螺旋状に巻き付けたワイヤで燃料棒間隔を保った燃料棒束を六角形状のラッパ管に入れた構造であるため、使用済みの高速増殖炉燃料を再処理するために燃料集合体を解体したとき、燃料棒がばらばらになり、作業効率が悪いという問題点があった。
【0017】
この発明は以上の観点からなされたもので、貴金属や希土類元素などの不純物と、ウランやプルトニウムとの分離効率が高く、再処理速度が速い使用済み燃料の再処理方法を得ることを目的とする。
【0018】
また、脱被覆が容易な使用済み燃料の再処理方法を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第一の使用済み燃料の再処理方法は、使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、第二塩素化処理工程で得られた固体成分を、不活性ガス中で熱処理し、その固体成分中の不純物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得るFP分離処理工程と、ウランのオキシ塩化物とFP分離処理工程で得られた固体成分とを溶融塩に溶解させ、その後、その溶融塩を電解し、ウランの酸化物及びプルトニウムの酸化物を析出させるMOX電解処理工程とを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る第二の使用済み燃料の再処理方法は、使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、第二塩素化処理工程で得られた気体成分を固体成分として回収する気体成分回収工程と、気体成分回収工程で得られた固体成分を、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガス中で熱処理して、その固体成分中の不純物を含む気体成分と、ウランのオキシ塩化物を含む固体成分とを得る酸化処理工程と、酸化処理工程で得られた固体成分を溶融塩に溶解させ、その後、その溶融塩を電解し、ウランの酸化物を析出させる酸化ウラン電解処理工程とを備えたことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第三の使用済み燃料の再処理方法は、使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、第二塩素化処理工程で得られた気体成分を固体成分として回収する気体成分回収工程と、気体成分回収工程で得られた固体成分を、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガス中で熱処理して、その固体成分中の不純物を含む気体成分と、ウランのオキシ塩化物を含む固体成分とを得る酸化処理工程と、第二塩素化処理工程で得られた固体成分を、不活性ガス中で熱処理し、その固体成分中の不純物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得るFP分離処理工程と、酸化処理工程で得られた固体成分とFP分離処理工程で得られた固体成分とを溶融塩に溶解させ、その後、その溶融塩を電解し、ウランの酸化物及びプルトニウムの酸化物を析出させるMOX電解処理工程とを備えたことを特徴とする。
【0022】
上述した第一から第三の使用済み燃料の再処理方法では、第一塩素化処理工程における熱処理温度が160℃から350℃の範囲であることが好ましく、第二塩素化処理工程における熱処理温度が420℃から700℃の範囲であることが好ましい。
【0023】
また、上述した第一及び第三の使用済み燃料の再処理方法では、FP分離処理工程における熱処理温度が800℃から1000℃の範囲であることが好ましい。
【0024】
また、上述した第二及び第三の使用済み燃料の再処理方法では、酸化処理工程における混合ガス中の酸素ガスのモル分率が0.2以下であることが好ましく、熱処理温度が600℃から700℃の範囲であることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による使用済み燃料の再処理方法の工程図である。実施の形態1では、高速増殖炉から回収された使用済み燃料を再処理する場合について説明する。高速増殖炉では、酸化プルトニウム(PuO2 )と酸化ウラン(UO2 )との混合酸化物(MOX)燃料を使用し、SUS316ステンレス(Fe68%+Cr18%+Ni12%+Mo2%)製の被覆材を使用する。高速増殖炉から回収された使用済み燃料中には、核分裂生成物として、ネオジウム(Nd)などの希土類元素やパラジウム(Pd)などの貴金属が含まれている。
【0026】
図2は図1中の第一塩素化処理工程を模式的に示す図である。図3は図1中の第二塩素化処理工程を模式的に示す図である。図4は図1中の酸化処理工程を模式的に示す図である。図5は図1中のFP分離処理工程を模式的に示す図である。図6は図1中のMOX電解処理工程を模式的に示す図である。図7は図1中の酸化ウラン電解処理工程を模式的に示す図である。
【0027】
表1は図1に示す使用済み燃料の再処理方法に関与する主な元素の化合物の揮発温度を示している。表2は図1中の第一塩素化処理工程(温度が300℃の場合)に関与する主な元素の移行挙動を示している。表3は図1中の第二塩素化処理工程(温度が660℃の場合)に関与する主な元素の移行挙動を示している。表4は図1中の酸化処理工程(温度が660℃、酸素ガスのモル分率が0.2の場合)に関与する主な元素の移行挙動を示している。表5は図1中のFP分離処理工程(温度が1000℃の場合)に関与する主な元素の移行挙動を示している。図8は図1中の酸化処理工程(温度が600℃の場合)に関与する主な元素の化合物の存在量と混合ガス中の酸素ガスのモル分率との関係を示す特性図である。
【表1】
Figure 0004025125
【表2】
Figure 0004025125
【表3】
Figure 0004025125
【表4】
Figure 0004025125
【表5】
Figure 0004025125
【0028】
第一塩素化処理工程1において、使用済みの混合酸化物(MOX)燃料をSUS316ステンレス製の被覆材内に含んでなる燃料棒11を反応器12内に配置し、塩素(Cl2 )ガスを反応器12に流入させながら160℃から350℃の範囲で熱処理する。反応器12から流出する気体成分中には、被覆材に起因するものとして塩化鉄及び塩化モリブデンが含まれ、その他に塩素ガス、ガス状の核分裂生成物(FP)などが含まれる。反応器12内に残留する固体成分中には、使用済み燃料に起因するものとしてウラン酸化物、ウラン塩化物、ウランオキシ塩化物、プルトニウム酸化物、プルトニウム塩化物、プルトニウムオキシ塩化物、塩化ネオジウム及び塩化パラジウムが含まれ、被覆材に起因するものとして塩化クロム及び塩化ニッケルが含まれる。この工程1により、使用済み燃料が脱被覆される。
【0029】
第一塩素化処理工程1を160℃から350℃の範囲で行う理由は、表1に示すように、160℃より温度が高ければ、塩化鉄及び塩化モリブデンが完全に揮発すること、及び350℃より温度が高くなると、塩化クロムが揮発し始めることによる。例えば、熱処理温度が300℃の場合、表2に示すように、鉄(Fe)及びモリブデン(Mo)はすべて気体として存在し、ウラン(U)、プルトニウム(Pu)、ネオジウム(Nd)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)はすべて固体として存在する。
【0030】
この工程1で生じる使用済み燃料に起因する主な反応は以下の通りである。
UO2 +Cl2 →UO2 Cl4
PuO2 +Cl2 →PuO2 Cl2
Pd+Cl2 →PdCl2
Nd+3/2Cl2 →NdCl3
この工程1で生じる被覆材に起因する主な反応は以下の通りである。
2Fe+3Cl2 →2FeCl3
2FeCl3 →Fe2 Cl6
Cr+3/2Cl2 →CrCl3
Ni+Cl2 →NiCl2
Mo+5/2Cl2 →MoCl5
【0031】
第二塩素化処理工程2において、第一塩素化処理工程1で反応器12に残留する固体成分13を、塩素(Cl2 )ガスを炭素(C)粉末等の還元剤とともに反応器12に流入させながら420℃から700℃の範囲で熱処理する。反応器12から流出する気体成分中には、使用済み燃料に起因するものとしてウラン塩化物が含まれ、被覆材に起因するものとして塩化クロムが含まれ、その他に一酸化炭素、二酸化炭素、塩素ガスなどが含まれる。反応器12内に残留する固体成分中には、使用済み燃料に起因するものとしてプルトニウム塩化物、塩化ネオジウム及び塩化パラジウムが含まれ、被覆材に起因するものとして塩化ニッケルが含まれる。この工程2により、ウラン(U)と、プルトニウム(Pu)とが簡易分離される。
【0032】
第二塩素化処理工程2を420℃から700℃の範囲で行う理由は、表1に示すように、420℃より温度が高ければ、ウラン塩化物及び塩化クロムが揮発すること、及び700℃より温度が高くなると、塩化ニッケルが揮発し始めることによる。例えば、熱処理温度が660℃の場合、表3に示すように、ウラン(U)及びクロム(Cr)はすべて気体として存在し、プルトニウム(Pu)、ネオジウム(Nd)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)はすべて固体として存在する。
【0033】
この工程2で生じる使用済み燃料に起因する主な反応は以下の通りである。
UO Cl +Cl+C→UCl +CO
UO +C+Cl →UCl +CO
UCl4 +1/2Cl2 →UCl5
UCl4 →UCl4
PuO +3/2Cl +C→PuCl +CO
PuO Cl +1/2Cl +C→PuCl +CO
この工程2で生じる被覆材に起因する主な反応は以下の通りである。
CrCl3 +1/2Cl2 → CrCl4
【0034】
気体成分回収工程3において、第二塩素化処理工程2で反応器12から流出する気体成分を冷却し、ウラン塩化物、塩化ネオジウム、塩化クロム及び塩化ニッケルを含む固体成分を回収する。
【0035】
酸化処理工程4において、気体成分回収工程3で回収された固体成分14を反応器15内に配置し、塩素(Cl2 )ガスと酸素(O2 )ガスとの混合ガスを反応器15に流入させながら350℃から700℃の範囲で熱処理する。混合ガス中の酸素ガスのモル分率(すなわち、酸素ガスの分圧/(酸素ガスの分圧+塩素ガスの分圧))は0.2以下である。反応器15から流出する気体成分中には、被覆材に起因するものとして塩化クロムが含まれ、その他に塩素ガス、酸素ガスなどが含まれる。反応器15内に残留する固体成分中には、使用済み燃料に起因するものとしてウランオキシ塩化物が含まれる。この工程4により、クロム(Cr)が除去され、ウラン(U)が精製される。
【0036】
酸化処理工程4を350℃から700℃の範囲で行う理由は、表1に示すように、350℃より温度が高ければ、塩化クロムが揮発すること、及び700℃より温度が高くなると、ウランオキシ塩化物が揮発し始めることによる。混合ガス中の酸素ガスのモル分率を0.2以下とする理由は、それ以下においてウラン塩化物及びウランオキシ塩化物が安定して存在することによる。表4に示すように、混合ガス中の酸素ガスのモル分率が0.2、熱処理温度が660℃である場合、クロム(Cr)はすべて気体として存在し、ウラン(U)はすべて固体として存在する。
【0037】
この工程4で生じる使用済み燃料に起因する主な反応は以下の通りである。
UCl4 +O2 →UO2 Cl2 +Cl2
2UCl5 +2O2 →2UO2 Cl2 +3Cl2
この工程4で生じる被覆材に起因する主な反応は以下の通りである。
CrCl4 →CrCl3 ↑+1/2Cl2
CrCl4 →CrCl4
【0038】
FP分離処理工程5において、第二塩素化処理工程2で反応器12内に残留する固体成分16を、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスを反応器12に流入させながら800から1000℃の範囲で熱処理する。反応器12から流出する気体成分中には、使用済み燃料に起因するものとして塩化ネオジウム及び塩化パラジウムが含まれ、被覆材に起因するものとして塩化ニッケルが含まれ、その他に不活性ガスなどが含まれる。反応器12内に残留する固体成分中には、使用済み燃料に起因するものとしてプルトニウム塩化物が含まれる。この工程5により、ネオジウム(Nd)、パラジウム(Pd)などの不純物が除去され、プルトニウム(Pu )が精製される。
【0039】
FP分離処理工程5を800℃から1000℃の範囲で行う理由は、表1に示すように、800℃より温度が高ければ、塩化ネオジウム、塩化パラジウム及び塩化ニッケルが揮発すること、及び1000℃より温度が高くなると、プルトニウム塩化物が揮発し始めることによる。表5に示すように、熱処理温度が1000℃である場合、ネオジウム(Nd)、パラジウム(Pd)及びニッケル(Ni)はすべて気体として存在し、プルトニウム(Pu)はすべて固体として存在する。
【0040】
MOX電解処理工程6において、先ず、酸化処理工程4で反応器15内に残留する一部の固体成分とFP分離処理工程5で反応器12内に残留する固体成分とを、グラファイト製のるつぼ17内に収納された溶融塩18に投入する。そして、塩素(Cl2 )ガスと酸素(O2 )ガスとの混合ガスをガス吹込み管19を通して溶融塩18中に吹き込んで均一に攪拌しながらそれらの固体成分を溶融塩18に溶解させる。固体成分の溶解中、プルトナスイオン(Pu3+)がプルトニルイオン(PuO2 2+)に酸化され、ウランイオン(U4+)がウラニルイオン(UO2 2- )に酸化される。溶融塩18の温度は700℃程度である。溶融塩18としては、ナトリウム、カリウム、セシウム、あるいはリチウムなどの塩化物または弗化物、もしくはこれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0041】
その後、固体成分が溶解した溶融塩18を、その溶融塩18に浸漬された固体電極20を陰極として用い、るつぼ17を陽極として用いて電解する。電解により、以下に示す反応で顆粒状の酸化ウラン(UO2 )と酸化プルトニウム(PuO2 )との混合酸化物(MOX)21が固体電極20の表面に析出する。析出した顆粒状の混合酸化物(MOX)21は回収され、付着した塩が除去された後、振動充填法により被覆材に充填され、MOX燃料として再利用される。MOX燃料は炉心燃料に使用する。
UO2 2+ +2e- → UO2
PuO2 2+ +2e- →PuO2
【0042】
酸化ウラン電解処理工程7において、先ず、酸化処理工程4で反応器15内に残留する残りの固体成分を、グラファイト製のるつぼ22内に収納された溶融塩23に投入する。そして、均一に攪拌しながらその固体成分を溶融塩23に溶解させる。
【0043】
その後、固体成分が溶解した溶融塩23を、その溶融塩23に浸漬された固体電極24を陰極として用い、るつぼ22を陽極として用いて電解する。電解により、以下に示す反応で顆粒状の酸化ウラン(UO2 )25が固体電極24の表面に析出する。析出した顆粒状の酸化ウラン(UO2 )25は回収され、付着した塩が除去された後、振動充填法により被覆材に充填され、酸化ウラン燃料として再利用される。酸化ウラン燃料はブランケット燃料に使用する。
UO2 2+ +2e- →UO2
【0044】
以上のように、本実施の形態1によれば、燃料棒11を塩素ガス中で熱処理し、使用済み燃料及び被覆材を塩素化するので、使用済み燃料を容易に脱被覆することができる。
【0045】
また、本実施の形態1によれば、熱処理によりネオジウム、パラジウムなどの不純物を除去するので、再処理を迅速に行うことができる。さらに、ネオジウム、パラジウムなどの不純物をウランやプルトニウムと十分に分離することができる。従って、品質の高いMOX燃料及び酸化ウラン燃料を迅速に製造することがきる。
【0046】
また、本実施の形態1によれば、酸化処理工程4後の精製したウランとFP分離処理工程5後の精製したプルトニウムとを用いてMOX燃料を製造するので、MOX燃料を効率的に製造することができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態1では、高速増殖炉から回収された使用済み燃料を再処理する場合について説明したが、軽水炉から回収された使用済み燃料を再処理する場合にも、上述した再処理方法を適用することができる。軽水炉では、ジルカロイ合金製の被覆管を使用するので、軽水炉から回収された使用済み燃料を上述した再処理方法で再処理する場合には、第一塩素化処理工程1において、反応器から流出する気体成分中に塩化ジルコニウムが含まれる温度範囲で燃料棒を熱処理する。その他の工程は上述した場合と同様に行う。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明の使用済み燃料の再処理方法によれば、燃料棒を塩素ガス中で熱処理し、使用済み燃料及び被覆材を塩素化するので、使用済み燃料の脱被覆が容易である。
【0049】
また、本発明の使用済み燃料の再処理方法によれば、熱処理により不純物を除去するので、再処理速度が向上する。さらに、不純物とウランやプルトニウムとの分離効率が向上する。
【0050】
また、本発明の使用済み燃料の再処理方法によれば、酸化処理工程後の精製したウランとFP分離処理工程後の精製したプルトニウムとを用いてMOX燃料を製造するので、MOX燃料の製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1による使用済み燃料の再処理方法の工程図である。
【図2】第一塩素化処理工程を模式的に示す図である。
【図3】第二塩素化処理工程を模式的に示す図である。
【図4】酸化処理工程を模式的に示す図である。
【図5】FP分離処理工程を模式的に示す図である。
【図6】MOX電解処理工程を模式的に示す図である。
【図7】酸化ウラン電解処理工程を模式的に示す図である。
【図8】酸化処理工程に関与する主な元素の化合物の存在量と混合ガス中の酸素ガスのモル分率との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 第一塩素化処理工程
2 第二塩素化処理工程
3 気体成分回収工程
4 酸化処理工程
5 FP分離処理工程
6 MOX電解処理工程
7 酸化ウラン電解処理工程
11 燃料棒
12 反応器
13 固体成分
14 固体成分
15 反応器
16 固体成分
17 るつぼ
18 溶融塩
19 ガス吹込み管
20 固体電極
21 混合酸化物
22 るつぼ
23 溶融塩
24 固体電極
25 酸化ウラン

Claims (8)

  1. 使用済み燃料から核物質を回収し、回収した核物質を再使用するための使用済み燃料の再処理方法において、
    使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、上記使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、
    上記第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、
    上記第二塩素化処理工程で得られた固体成分を、不活性ガス中で熱処理し、該固体成分中の不純物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得るFP分離処理工程と、
    ウランのオキシ塩化物と上記FP分離処理工程で得られた固体成分とを溶融塩に溶解させ、その後、該溶融塩を電解し、ウランの酸化物及びプルトニウムの酸化物を析出させるMOX電解処理工程と
    を備えたことを特徴とする使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  2. 使用済み燃料から核物質を回収し、回収した核物質を再使用するための使用済み燃料の再処理方法において、
    使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、上記使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、
    上記第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、
    上記第二塩素化処理工程で得られた気体成分を固体成分として回収する気体成分回収工程と、
    上記気体成分回収工程で得られた固体成分を、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガス中で熱処理して、該固体成分中の不純物を含む気体成分と、ウランのオキシ塩化物を含む固体成分とを得る酸化処理工程と、
    上記酸化処理工程で得られた固体成分を溶融塩に溶解させ、その後、該溶融塩を電解し、ウランの酸化物を析出させる酸化ウラン電解処理工程と
    を備えたことを特徴とする使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  3. 使用済み燃料から核物質を回収し、回収した核物質を再使用するための使用済み燃料の再処理方法において、
    使用済み燃料を被覆材に含んでなる燃料棒を、塩素ガス中で熱処理して、上記使用済み燃料及び被覆材を塩素化する第一塩素化処理工程と、
    上記第一塩素化処理工程で得られた固体成分を、還元剤を含んだ塩素ガス中で熱処理し、ウランの塩化物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得る第二塩素化処理工程と、
    上記第二塩素化処理工程で得られた気体成分を固体成分として回収する気体成分回収工程と、
    上記気体成分回収工程で得られた固体成分を、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガス中で熱処理して、該固体成分中の不純物を含む気体成分と、ウランのオキシ塩化物を含む固体成分とを得る酸化処理工程と、
    上記第二塩素化処理工程で得られた固体成分を、不活性ガス中で熱処理し、該固体成分中の不純物を含む気体成分と、プルトニウムの塩化物を含む固体成分とを得るFP分離処理工程と、
    上記酸化処理工程で得られた固体成分と上記FP分離処理工程で得られた固体成分とを溶融塩に溶解させ、その後、該溶融塩を電解し、ウランの酸化物及びプルトニウムの酸化物を析出させるMOX電解処理工程と
    を備えたことを特徴とする使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  4. 第一塩素化処理工程における熱処理温度が160℃から350℃の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  5. 第二塩素化処理工程における熱処理温度が420℃から700℃の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  6. FP分離処理工程における熱処理温度が800℃から1000℃の範囲であることを特徴とする請求項1または請求項3記載の使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  7. 酸化処理工程における熱処理温度が350℃から700℃の範囲であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の使用済み酸化物燃料の再処理方法。
  8. 酸化処理工程における混合ガス中の酸素ガスのモル分率が0.2以下であることを特徴とする請求項2または請求項3記載の使用済み酸化物燃料の再処理方法。
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