JP4024695B2 - 平版印刷原版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有する平版印刷原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザ光のような指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
【0003】
CTPシステムに用いる平版印刷原版は、露光後、現像処理することなしに、そのまま印刷機に装着して、印刷できることが望ましい。
現像処理をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
【0004】
親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷原版が提案されている(例えば、特許文献1参照)。製版では、赤外線レーザ露光して熱可塑性疎水性重合体微粒子を熱により合体(融着)させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水及び/またはインキを供給することにより機上現像できる。この平版印刷版用原版は感光域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。
また、熱可塑性微粒子に代えて、熱反応性化合物を内包するマイクロカプセルを含む平版印刷原版も提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。熱可塑性化合物の融着により形成される画像よりも、熱反応性化合物の化学反応により形成される画像の方が、耐刷性が優れている。しかし、熱反応性化合物は反応性が高いために、マイクロカプセルを用いて隔離しておく必要がある。そして、マイクロカプセルのシェルには、熱分解性のポリマーを使用する。
なお、マイクロカプセルのシェルが、付加重合性官能基を有していると、シェルも画像形成反応に関与させることができる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特許2938397号公報
【特許文献2】
特開2000−211262号公報
【特許文献3】
特開2001−277740号公報
【特許文献4】
特開2002−029162号公報
【特許文献5】
特開2002−137562号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2000−211262号公報に開示されているマイクロカプセルのシェルは、付加重合性官能基を有しているため、従来よりも耐刷性が高い画像が形成できるとの特徴がある。しかし、付加重合性官能基の重合反応は、空気中の酸素によって反応が阻害されやすい。そして、マイクロカプセルのコアよりもシェルの方が、空気中の酸素の影響を受けやすい。
本発明の目的は、耐刷性が非常に高い平版印刷版を製版できる平版印刷原版を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1−1)または(1−2)の平版印刷原版、下記(2)の平版印刷版の製版方法、および下記(3)の平版印刷方法を提供する。
(1−1)マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有する平版印刷原版であって、該ポリマーがウレタン結合またはウレア結合を含む主鎖を有し、下記式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むことを特徴とする平版印刷原版:
【0008】
【化5】
【0009】
[式(I)において、X1 は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、アンモニオ、スルホ、スルファモイル、カルバモイルオキシ、チオカルバモイルオキシ、ウレイド、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−O−CO−R、−S−CO−R、−NH−CO−R、−N(−R)−CO−R、−SO2 −O−R、−O−SO2 −R、−SO2 −R、−SO−R、−SO2 −NH−R、−SO2 −N(−R)2 、−NH−SO2 −R、−N(−R)−SO2 −R、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)2 、−O−CS−NH−R、−O−CS−N(−R)2 、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)2 、−N(−R)−CO−NH2 、−N(−R)−CO−NH−R、−N(−R)−CO−N(−R)2 、−NH−CO−O−Rおよび−N(−R)−CO−O−Rからなる群より選ばれる一価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、X1 に含まれる二個以上のRは異なっていてもよく、X1 に含まれる二個以上のRが連結して環を形成してもよい;R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基であって、水素原子あるいは脂肪族基、芳香族基または複素環基に含まれる水素原子がR1 またはR2 から除かれ、水素原子が除かれた位置でポリマーと結合していてもよい;そして、Y1 は、−O−、−S−、−NH−および−N(−R)−からなる群より選ばれる二価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である]
【0010】
【化6】
【0011】
[式(II)において、X2 は、−O−、−S−、−NH−、−N(−R)−、−N+ H2 −、−N+ H(−R)−、−N+ (−R)2 −、−SO2 −および−SO−からなる群より選ばれる二価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、X2 に含まれる二個のRは異なっていてもよく、X2 に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよく、脂肪族基、芳香族基または複素環基に含まれる水素原子がRから除かれ、水素原子が除かれた位置でポリマーと結合していてもよい;R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基であって、水素原子あるいは脂肪族基、芳香族基または複素環基に含まれる水素原子がR3 またはR4 から除かれ、水素原子が除かれた位置でポリマーと結合していてもよい;そして、Y2 は、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 および−SO2 −Rからなる群より選ばれる一価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、Y2 に含まれる二個のRは異なっていてもよく、Y2 に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよく、脂肪族基、芳香族基または複素環基に含まれる水素原子がY2 から除かれ、水素原子が除かれた位置でポリマーと結合していてもよい]。
【0012】
(1−2)マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有する平版印刷原版であって、該ポリマーが、ポリオールおよび式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物であるか、あるいは式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むポリオールと多価イソシアナートとの反応生成物であることを特徴とする平版印刷原版。
(13)多価イソシアナートが、ジイソシアナートである(1−2)に記載の平版印刷原版。
(14)ジイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートである(13)に記載の平版印刷原版。
(15)重合性化合物が、重合性基としてビニルエーテル基またはエポキシ基を有し、画像形成層がさらに感熱性酸前駆体を含む(1−1)または(1−2)に記載の平版印刷原版。
(16)重合性化合物が、重合性基としてエチレン性不飽和基を有し、画像形成層がさらに熱重合性化合物を含む(1−1)または(1−2)に記載の平版印刷原版。
(17)画像形成層または任意に設けられる層が、光熱変換剤を含む(1−1)または(1−2)に記載の平版印刷原版。
(18)マイクロカプセルが、光熱変換剤を含む(17)に記載の平版印刷原版。
(19)画像形成層が、親水性ポリマーをマイクロカプセルのバインダーとして含む(1−1)または(1−2)に記載の平版印刷原版。
【00013】
(2)マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有し、該ポリマーが前記式(I)または(II)で定義される反応性構造を含む平版印刷原版を画像状に加熱し、これにより加熱した領域の重合性化合物を重合させると共に、前記式(I)または(II)で定義される反応性構造を反応させる工程;そして、加熱していない領域の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域として有する平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
【0014】
(21)該ポリマーがウレタン結合またはウレア結合を含む主鎖を有する(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
(22)該ポリマーが、ポリオールおよび式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物であるか、あるいは式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むポリオールと多価イソシアナートとの反応生成物である(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
(23)多価イソシアナートが、ジイソシアナートである(22)に記載の平版印刷版の製版方法。
(24)ジイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートである(23)に記載の平版印刷版の製版方法。
(25)重合性化合物が、重合性基としてビニルエーテル基またはエポキシ基を有し、画像形成層がさらに感熱性酸前駆体を含み、加熱した領域において感熱性酸前駆体から発生する酸により重合性化合物を重合させる(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
(26)重合性化合物が、重合性基としてエチレン性不飽和基を有し、画像形成層がさらに熱重合性化合物を含み、加熱した領域において熱重合開始剤により重合性化合物を重合させる(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
(27)画像形成層または任意に設けられる層が、光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
(28)マイクロカプセルが、光熱変換剤を含む(27)に記載の平版印刷版の製版方法。
(29)画像形成層が、親水性ポリマーをマイクロカプセルのバインダーとして含み、水または水性現像液で加熱していない領域の画像形成層を除去する(2)に記載の平版印刷版の製版方法。
【0015】
(3)マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有し、該ポリマーが前記式(I)または(II)で定義される反応性構造を含む平版印刷原版を画像状に加熱し、これにより加熱した領域の重合性化合物を重合させると共に、前記式(I)または(II)で定義される反応性構造を反応させる工程;平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより、加熱していない領域の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域として有する平版印刷版を製版する工程;そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【0016】
(31)該ポリマーがウレタン結合またはウレア結合を含む主鎖を有する(3)に記載の平版印刷方法。
(32)該ポリマーが、ポリオールおよび式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物であるか、あるいは式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むポリオールと多価イソシアナートとの反応生成物である(3)に記載の平版印刷方法。
(33)多価イソシアナートが、ジイソシアナートである(32)に記載の平版印刷方法。
(34)ジイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートである(33)に記載の平版印刷方法。
(35)重合性化合物が、重合性基としてビニルエーテル基またはエポキシ基を有し、画像形成層がさらに感熱性酸前駆体を含み、加熱した領域において感熱性酸前駆体から発生する酸により重合性化合物を重合させる(3)に記載の平版印刷方法。
(36)重合性化合物が、重合性基としてエチレン性不飽和基を有し、画像形成層がさらに熱重合性化合物を含み、加熱した領域において熱重合開始剤により重合性化合物を重合させる(3)に記載の平版印刷方法。
(37)画像形成層または任意に設けられる層が、光熱変換剤を含み、レーザー光で走査することにより平版印刷原版を画像状に加熱する(3)に記載の平版印刷方法。
(38)マイクロカプセルが、光熱変換剤を含む(37)に記載の平版印刷方法。
(39)画像形成層が、親水性ポリマーをマイクロカプセルのバインダーとして含み、水または水性現像液で加熱していない領域の画像形成層を除去する(3)に記載の平版印刷方法。
【0017】
【発明の効果】
本発明の平版印刷原版は、シェルポリマーがメタクリレート構造を含み、メタクリレート構造のメチルの炭素原子に、ヘテロ原子(ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子)が結合していることを特徴とする。
メタクリレート構造は、付加重合性官能基の一種であって、その重合反応は、一般に空気中の酸素によって反応が阻害されやすい。しかし、本発明者の研究の結果、メタクリレート構造のメチルの炭素原子にヘテロ原子を結合させると、重合反応に対する空気中の酸素の影響を軽減できることが判明した。
従って、本発明では、重合性化合物からなるコアに加えて、シェルのヘテロ原子置換メタクリレート構造が空気中の酸素の影響を大きく受けることなく、画像形成反応に関与するため、加熱領域が強固な疎水性領域となる。その結果、耐刷性が非常に高い平版印刷版を製版することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[平版印刷原版の基本構成]
図1は、平版印刷原版の代表的な構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、平版印刷原版は、親水性支持体(1)および画像形成層(2)を有する。
画像形成層(2)は、マイクロカプセル(21)を含む。図1に示す平版印刷原版では、マイクロカプセル(21)が親水性ポリマー(22)中に分散している。マイクロカプセル(21)は、コア(21c)とシェル(21s)とからなる。マイクロカプセル(21)のコア/シェル構造において、コア(21c)は重合性化合物からなり、シェル(21s)はポリマーからなる。図1に示す平版印刷原版では、コア(21c)は、さらに光熱変換剤(23)を含む。
【0019】
[マイクロカプセルのシェル]
【0020】
本発明の平版印刷原版では、マイクロカプセルのシェルポリマーが、前記式(I)または( II )で定義される反応性構造(ヘテロ原子置換メタクリレート構造)を含む。
【0021】
式(I)において、X1 は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル(−OH)、メルカプト(−SH)、アミノ(−NH2 )、アンモニオ(−N+ H3 )、スルホ(−SO3 H)、スルファモイル(−SO2 −NH2 )、カルバモイルオキシ(−O−CO−NH2 )、チオカルバモイルオキシ(−O−CS−NH2 )、ウレイド(−NH−CO−NH2 )、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−O−CO−R、−S−CO−R、−NH−CO−R、−N(−R)−CO−R、−SO2 −O−R、−O−SO2 −R、−SO2 −R、−SO−R、−SO2 −NH−R、−SO2 −N(−R)2 、−NH−SO2 −R、−N(−R)−SO2 −R、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)2 、−O−CS−NH−R、−O−CS−N(−R)2 、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)2 、−N(−R)−CO−NH2 、−N(−R)−CO−NH−R、−N(−R)−CO−N(−R)2 、−NH−CO−O−Rおよび−N(−R)−CO−O−Rからなる群より選ばれる一価の基である。酸性基および塩基性基は、解離していてもよく、対イオンと共に塩の状態であってもよい。
X1 は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル(−OH)、メルカプト(−SH)、アミノ(−NH2 )、アンモニオ(−N+ H3 )、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 および−N+ (−R)3 からなる群より選ばれる一価の基であることが好ましい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0022】
本明細書において、脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基および置換アルキニル基を含む。
脂肪族基は、分岐構造または環状構造を有していてもよい。
脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
脂肪族基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル(−OH)、メルカプト(−SH)、アミノ(−NH2 )、アンモニオ(−N+ H3 )、ホルミル(−CHO)、カルボキシル(−COOH)、カルバモイル(−CO−NH2 )、チオカルバモイル(−CS−NH2 )、スルホ(−SO3 H)、スルファモイル(−SO2 −NH2 )、カルバモイルオキシ(−O−CO−NH2 )、チオカルバモイルオキシ(−O−CS−NH2 )、ウレイド(−NH−CO−NH2 )、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−CO−R、−CO−O−R、−O−CO−R、−S−CO−R、−CO−NH−R、−CO−N(−R)2 、−CS−NH−R、−CS−N(−R)2 、−NH−CO−R、−N(−R)−CO−R、−SO2 −O−R、−O−SO2 −R、−SO2 −R、−SO−R、−SO2 −NH−R、−SO2 −N(−R)2 、−NH−SO2 −R、−N(−R)−SO2 −R、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)2 、−O−CS−NH−R、−O−CS−N(−R)2 、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)2 、−N(−R)−CO−NH2 、−N(−R)−CO−NH−R、−N(−R)−CO−N(−R)2 、−NH−CO−O−Rおよび−N(−R)−CO−O−Rが含まれる。酸性基および塩基性基は、解離していてもよく、対イオンと共に塩の状態であってもよい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0023】
本明細書において、芳香族基は、アリール基および置換アリール基を含む。
芳香族基の炭素原子数は、6乃至30であることが好ましく、6乃至20であることがさらに好ましく、6至15であることが最も好ましい。
芳香族基の置換基の例は、脂肪族基の置換基の例に加えて、脂肪族基を含む。
本明細書において、複素環基は、無置換複素環基および置換複素環基を含む。
複素環は、4員環乃至7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
複素環基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1至12であることが最も好ましい。
複素環基の置換基の例は、芳香族基の置換基の例に加えて、オキソ(=O)およびチオ(=S)を含む。
【0024】
X1 に含まれる二個以上のRは異なっていてもよい。
X1 に含まれる二個以上のRが連結して環を形成してもよい。例えば、−N(−R)2 における二個のRが連結して含窒素複素環基(例、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノ、4−ペルヒドロ−1,4−チアジニル、1−ピペラジニル)を形成できる。また、−N+ (−R)3 における三個のRが連結して含窒素複素環基(例、1−ピリジニウムイル)を形成できる。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、上記複素環基の置換基の例と同様である。
【0025】
式(I)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。R1 およびR2 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、水素原子または脂肪族基であることがより好ましく、水素原子またはアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることがさらにまた好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0026】
式(I)において、Y1 は、−O−、−S−、−NH−および−N(−R)−からなる群より選ばれる二価の基である。Y1 は、−O−であることが特に好ましい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
式(I)で定義される反応性構造は、Y1 の位置でポリマーの主鎖または側鎖に結合する。
第1表に、式(I)で表される部分構造の例を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
式( II )において、X 2 は、−O−、−S−、−NH−、−N(−R)−、−N + H 2 −、−N + H(−R)−、−N + (−R) 2 −、−SO 2 −および−SO−からなる群より選ばれる二価の基である。酸性基および塩基性基は、解離していてもよく、対イオンと共に塩の状態であってもよい。
【0033】
X2は、−O−、−S−、−NH−、−N(−R)−、−N+H2−、−N+H(−R)−および−N+(−R)2−からなる群より選ばれる二価の基であることが好ましい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。X2に含まれる二個のRは異なっていてもよい。X2に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよい。例えば、−N+(−R)2−における二個のRが連結して含窒素複素環基(例、1−ピロリジニウムジイル、1−ピペリジウムジイル、4−モルホリニウムジイル、4−ペルヒドロ−1,4−チアジニウムジイル、1−ピペラジニウムジイル)を形成できる。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、上記複素環基の置換基の例と同様である。
式(II)で定義される反応性構造は、X2の位置でポリマーの主鎖または側鎖に結合する。
【0034】
式(II)において、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。R3 およびR4 は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基または芳香族基であることが好ましく、水素原子または脂肪族基であることがより好ましく、水素原子またはアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることがさらにまた好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0035】
式(II)において、Y2 は、ヒドロキシル(−OH)、メルカプト(−SH)、アミノ(−NH2 )、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 および−SO2 −Rからなる群より選ばれる一価の基である。酸性基および塩基性基は、解離していてもよく、対イオンと共に塩の状態であってもよい。Y2 は、−O−R、−NH−Rおよび−N(−R)2 からなる群より選ばれる一価の基であることが好ましい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
Y2 に含まれる二個のRは異なっていてもよい。
Y2 に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよい。例えば、−N(−R)2 における二個のRが連結して含窒素複素環基(例、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホリノ、4−ペルヒドロ−1,4−チアジニル、1−ピペラジニル)を形成できる。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、前記複素環基の置換基の例と同様である。
【0036】
第2表に、式(II)で表される部分構造の例を示す。
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
反応性構造は、ポリマーの主鎖よりも側鎖に存在することが好ましい。側鎖に含まれる反応性構造は、主鎖と直結するよりも、連結基を介して主鎖と結合する方が好ましい。
連結基は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−CS−、−NH−、−N(−R)−、−N<、−N+ H2 −、−N+ H(−R)−、−N+ (−R)2 −、−N+ H<、−N+ (−R)<、>N+ <、−SO2 −、−SO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価以上の基である。酸性基および塩基性基は、解離していてもよい。
Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
【0043】
本明細書において、二価の脂肪族基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基および置換アルキニレン基を含む。
二価の脂肪族基は、分岐構造または環状構造を有していてもよい。
二価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1乃至12であることが最も好ましい。
二価の脂肪族基の置換基の例は、前記脂肪族基の置換基の例と同様である。
本明細書において、二価の芳香族基は、アリーレン基および置換アリーレン基を含む。
二価の芳香族基の炭素原子数は、6乃至30であることが好ましく、6乃至20であることがさらに好ましく、6至15であることが最も好ましい。
二価の芳香族基の置換基の例は、前記芳香族基の置換基の例と同様である。
本明細書において、二価の複素環基は、二価の無置換複素環基および二価の置換複素環基を含む。
二価の複素環は、4員環乃至7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましい。複素環に、脂肪族環、芳香族環または複素環が縮合していてもよい。
二価の複素環基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがさらに好ましく、1至12であることが最も好ましい。
二価の複素環基の置換基の例は、前記複素環基の置換基の例と同様である。
【0044】
シェルポリマーは、付加重合型のポリマーよりも縮合重合型のポリマーの方が好ましく、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステルまたはポリアミド、あるいはそれらのコポリマーまたは混合物が好ましく、ポリウレタンまたはポリウレア、あるいはそれらのコポリマーまたは混合物がさらに好ましい。
ポリウレタンはウレタン結合(−NH−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリウレアはウレア結合(−NH−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリエステルはエステル結合(−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリアミドはアミド結合(−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、コポリマーは二種類以上の結合を主鎖に含むポリマーである。
【0045】
ポリウレタン、ポリウレアおよびそれらのコポリマーは、ポリオールと多価イソシアナートとの反応により合成することができる。また、多価イソシアナートの加水分解により生成した多価アミンと、多価イソシアナートとの縮合反応により合成することもできる。マイクロカプセルのシェルポリマーとしての合成反応においては、まず、n価のポリオール1モルに対して、多価イソシアナートnモルを反応させた付加物(adduct)を中間体として合成し、次に付加物を反応させてシェルポリマーを合成することが好ましい。なお、実際の反応においては、n価のポリオール1モルに対して、過剰量の(nモルより多くの)多価イソシアナートを反応系に加える場合が多い。ポリオールに加えて、求核性基(例、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ)を有する求核性化合物(例、アルコール、フェノール、チオール、アミン)を多価イソシアナートと反応させる場合もある。また、ポリオールと多価イソシアナートとの付加物に、求核性化合物を反応させて一部を変性させてから、シェルポリマーを合成する場合もある。
【0046】
本発明において、反応性構造は、多価イソシアナートよりもポリオールまたはポリオールと共に用いる求核性化合物に導入することが好ましい。求核性化合物は、アルコール、フェノール、チオールおよびアミンが好ましく、アルコールおよびアミンがさらに好ましく、アルコールが最も好ましい。
反応性構造を含む求核性化合物は、下記式(III)または(IV)で定義されることが好ましい。
【0047】
【化7】
【0048】
式(III)において、X1 は、ハロゲン原子、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、アンモニオ、スルホ、スルファモイル、カルバモイルオキシ、チオカルバモイルオキシ、ウレイド、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 、−N+ H2 −R、−N+ H(−R)2 、−N+ (−R)3 、−O−CO−R、−S−CO−R、−NH−CO−R、−N(−R)−CO−R、−SO2 −O−R、−O−SO2 −R、−SO2 −R、−SO−R、−SO2 −NH−R、−SO2 −N(−R)2 、−NH−SO2 −R、−N(−R)−SO2 −R、−O−CO−NH−R、−O−CO−N(−R)2 、−O−CS−NH−R、−O−CS−N(−R)2 、−NH−CO−NH−R、−NH−CO−N(−R)2 、−N(−R)−CO−NH2 、−N(−R)−CO−NH−R、−N(−R)−CO−N(−R)2 、−NH−CO−O−Rおよび−N(−R)−CO−O−Rからなる群より選ばれる一価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、X1 に含まれる二個以上のRは異なっていてもよく、X1 に含まれる二個以上のRが連結して環を形成してもよい。
式(III)において、Y1 は、−O−、−S−、−NH−および−N(−R)−からなる群より選ばれる二価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
以上のX1 、R1 、R2 およびY1 の定義および例は、式(I)と同様である。
【0049】
式(III)において、Z1 は、求核性基である。Z1 は、ヒドロキシル(HO−)、メルカプト(HS)またはアミノ(H2 N−)であることが好ましく、ヒドロキシルまたはアミノであることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが最も好ましい。
式(III)において、L1 は、m+n価の連結基である。L1 は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−CS−、−NH−、−N(−R)−、−N<、−N+ H2 −、−N+ H(−R)−、−N+ (−R)2 −、−N+ H<、−N+ (−R)<、>N+ <、−SO2 −、−SO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる基であることが好ましい。酸性基および塩基性基は、解離していてもよい。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
式(III)において、mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至6の整数である。mおよびnは、それぞれ独立に、1、2、3または4であることが好ましく、1、2または3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
【0050】
【化8】
【0051】
式(IV)において、X2 は、−O−、−S−、−NH−、−N(−R)−、−N+ H2 −、−N+ H(−R)−、−N+ (−R)2 −、−SO2 −および−SO−からなる群より選ばれる二価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、X2 に含まれる二個のRは異なっていてもよく、X2 に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよい。
式(IV)において、Y2 は、ヒドロキシル、メルカプト、アミノ、−O−R、−S−R、−NH−R、−N(−R)2 および−SO2 −Rからなる群より選ばれる一価の基であって、Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基であり、Y2 に含まれる二個のRは異なっていてもよく、Y2 に含まれる二個のRが連結して環を形成してもよく、脂肪族基、芳香族基または複素環基に含まれる水素原子がY2 から除かれ、水素原子が除かれた位置に求核性基が結合していてもよい。
以上のX2 、R3 、R4 およびY2 の定義および例は、式(I)と同様である。
【0052】
式(IV)において、Z2 は、求核性基である。Z2 は、ヒドロキシル(HO−)、メルカプト(HS)またはアミノ(H2 N−)であることが好ましく、ヒドロキシルまたはアミノであることがさらに好ましく、ヒドロキシルであることが最も好ましい。
式(IV)において、L2 は、m+n価の連結基である。L2 は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−CS−、−NH−、−N(−R)−、−N<、−N+ H2 −、−N+ H(−R)−、−N+ (−R)2 −、−N+ H<、−N+ (−R)<、>N+ <、−SO2 −、−SO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる基であることが好ましい。酸性基および塩基性基は、解離していてもよい。Rは、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。
式(IV)において、mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至6の整数である。mおよびnは、それぞれ独立に、1、2、3または4であることが好ましく、1、2または3であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましく、1であることが最も好ましい。
【0053】
以下に、反応性構造を含む求核性化合物の例を示す。
【0054】
【化9】
【0055】
【化10】
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】
【化16】
【0062】
【化17】
【0063】
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
【化20】
【0066】
【化21】
【0067】
【化22】
【0068】
【化23】
【0069】
【化24】
【0070】
【化25】
【0071】
【化26】
【0072】
【化27】
【0073】
【化28】
【0074】
【化29】
【0075】
【化30】
【0076】
【化31】
【0077】
【化32】
【0078】
【化33】
【0079】
【化34】
【0080】
【化35】
【0081】
【化36】
【0082】
【化37】
【0083】
【化38】
【0084】
【化39】
【0085】
【化40】
【0086】
【化41】
【0087】
【化42】
【0088】
化合物例(1)〜(29)、(33)または(34)は、多官能イソシアネートに対して、1乃至80質量%の比率で使用し、多官能イソシアネートと反応させることが好ましい。
化合物例(30)〜(32)は、それと等モル量以上の多官能イソシアナート(好ましくは、キシリレンジイソシアナート)と反応させ、新たな多価イソシアナートを得ることができる。
反応性構造を含む求核性化合物と多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第一錫およびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
【0089】
反応性構造を含む求核性化合物を、二種類以上併用してもよい。
反応性構造を含む求核性化合物と他の求核性化合物(例、ポリオール)とを併用して、多価イソシアナートとの付加物を形成することもできる。反応性構造を含む求核性化合物と多価イソシアナートとの付加物および他の求核性化合物と多価イソシアナートとの付加物を併用することもできる。
反応性構造を含む求核性化合物と併用するポリオールは、下記式(V)で定義される三官能以上のポリオールであることが好ましい。
(V)L4 (−OH)n
式(V)において、L4 はn価の連結基であり、nは3以上の整数である。
【0090】
L4 は、三価以上の脂肪族基、三価以上の芳香族基、あるいはそれらとアルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−または−SO2 −との組み合わせであることが好ましい。
脂肪族基、芳香族基および複素環基の定義および例は、前述した通りである。
【0091】
反応性構造を含む求核性化合物またはポリオールに加えて、多価アミンをシェルポリマーの形成に使用してもよい。多価アミンは、水溶性であることが好ましい。多価アミンの例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタミンが含まれる。
【0092】
多価イソシアナートは、下記式(VI)で定義されるジイソシアナートであることが好ましい。
(VI)OCN−L5 −NCO
式(VI)において、L5 は、二価の連結基である。L5 は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の基であることが好ましい。アルキレン基とアリーレン基との組み合わせからなる二価の連結基が特に好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、オキソ(=O)、チオ(=S)、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
置換アリーレン基および置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
【0093】
ジイソシアナートの例には、キシリレンジイソシアナート(例、m−キシリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート)、4−クロロ−m−キシリレンジイソシアナート、2−メチル−m−キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート(例、m−フェニレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート)、トルイレンジイソシアナート(例、2,6−トルイレンジイソシアナート、2,4−トルイレンジイソシアナート)、ナフタレンジイソシアナート(例、ナフタレン−1,4−ジイソシアナート)、イソホロンジイソシアナート、アルキレンジイソシアナート(例、トリメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、プロピレン−1,2−ジイソシアナート、ブチレン−1,2−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,2−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,3−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,4−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−1,4−ジイソシアナート、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアナートおよびリジンジイソシアナートが含まれる。
【0094】
キシリレンジイソシアナートおよびトルイレンジイソシアナートが好ましく、キシリレンジイソシアナートがさらに好ましく、m−キシリレンジイソシアナートが特に好ましい。
二種類以上のジイソシアナートを併用してもよい。
【0095】
前述したように、ポリオールと多価イソシアナートとを反応させた付加物(adduct)を中間体(またはプレポリマー)として合成し、次に付加物を反応させてシェルポリマーを合成することが好ましい。
付加物の合成反応におけるポリオール/多価イソシアナートの質量比は、1/100乃至80/100であることが好ましく、5/100乃至50/100であることがさらに好ましい。
ポリオールと多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第1錫およびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
【0096】
[マイクロカプセルのコア]
マイクロカプセルのコアは、重合性化合物からなる。重合性化合物は、ポリマー(重合性基を架橋性官能基として有する架橋性ポリマー)であってもよい。
重合性化合物は、二個以上の重合性官能基を有することが好ましい。
重合性化合物の重合性官能基は、加熱することにより重合反応する。また、重合反応を促進する化合物(例えば、酸)の感熱性前駆体と、重合性化合物(例えば、ビニルエーテル化合物や環状エーテル化合物)とを併用してもよい。さらに、熱重合開始剤(ラジカル前駆体)と、重合性化合物(エチレン性不飽和重合性化合物)とを併用してもよい。
感熱性酸前駆体と、ビニルエーテルまたは環状エーテルとの組み合わせについては、特開2001−277740号、同2002−46361号および同2002−29162号の各公報に記載がある。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)とエチレン性不飽和重合性化合物との組み合わせについては、特開2002−137562号公報に記載がある。
重合性化合物が、ビニルエーテルまたはエチレン性不飽和重合性化合物であると、それらに含まれるビニル基またはエチレン性不飽和基は、前記ジエノフィル構造としても機能することができる。
【0097】
環状エーテル化合物の環状エーテルは、三員環のエポキシ基であることが好ましい。複数の環状エーテル基を有する化合物が好ましい。市販のエポキシ化合物またはエポキシ樹脂を用いてもよい。
ビニルエーテル化合物も、複数のビニルエーテル基を有することが好ましい。
ビニルエーテル化合物は、下記式(VII)で表されることが好ましい。
(VII)L7 (−O−CR11=CR12R13)p
【0098】
式(VII)において、L7 はm価の連結基であり、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、そして、pは2以上の整数である。
pが2の場合、L7 は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−、−SO2 −およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
二価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
置換アリーレン基、置換アリール基および置換複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
【0099】
pが3以上の場合、L7 は、三価以上の脂肪族基、三価以上の芳香族基、三価以上の複素環基、あるいはそれらとアルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−または−SO2 −との組み合わせであることが好ましい。
三価以上の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
芳香族基は、ベンゼン環残基であることが好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
L7 は、m個の繰り返し単位からなるポリマーの主鎖を構成してもよい。
【0100】
R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることがさらにまた好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0101】
エチレン性不飽和重合性化合物も、複数のエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和重合性化合物は、下記式(VIII)で表されることが好ましい。
(VIII)L7 (−CR11=CR12R13)q
【0102】
式(VIII)において、L7 はm価の連結基であり、R11、R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、そして、qは2以上の整数である。
L7 、R11、R12およびR13の定義は、式(VII)と同様である。
【0103】
マイクロカプセルのコアやマイクロカプセルの外部の画像形成層は、重合性化合物に加えて、後述する熱重合開始剤、感熱性酸発生剤や光熱変換剤を含むことができる。
【0104】
[熱重合開始剤]
重合性化合物が、エチレン性不飽和基のようなラジカル重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに熱重合開始剤を含むことが好ましい。
熱重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物である。熱重合開始剤の例には、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、キノンジアジド化合物およびメタロセン化合物が含まれる。オニウム塩(例、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩)が好ましく、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩およびスルホニウム塩が特に好ましい。
二種類以上の熱重合開始剤を併用してもよい。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)については、特開2002−137562号公報に記載がある。
熱重合開始剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.1乃至50質量%が好ましく、0.5乃至30質量%がさらに好ましく、1乃至20質量%が最も好ましい。
熱重合開始剤は、マイクロカプセルに添加することができる。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加する場合は、熱重合性開始剤は水不溶性であることが好ましい。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加しない場合は、熱重合性開始剤は水溶性であることが好ましい。
【0105】
[感熱性酸発生剤]
重合性化合物がビニルオキシ基またはエポキシ基のようなカチオン重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに感熱性酸発生剤を含むことが好ましい。
感熱性酸発生剤は、加熱すると酸を発生する化合物からなる。発生した酸は、ビニルオキシ基またはエポキシ基の重合反応を開始もしくは促進する。
感熱性酸発生剤は、オニウム塩であることが好ましい。
【0106】
感熱性酸発生剤の例には、ジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載)、アンモニウム塩(米国特許4069055号、同4069056号、同再発行27992号の各明細書および特開平4−365049号公報に記載)、ホスホニウム塩(D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad,Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許4069055号、同4069056号の各明細書に記載)、ヨードニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988) 、欧州特許104143号、米国特許339049号、同410201号の各明細書、特開平2−150848号、同2−296514号の各公報に記載)、スルホニウム塩(J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello etal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivel.lo et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979) 、欧州特許370693号、同3902114号、同233567号、同297443号、同297442号、米国特許4933377号、同161811号、同410201号、同339049号、同4760013号、同4734444号、同2833827号、独国特許2904626号、同3604580号、同3604581号の各明細書に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivel lo et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載)、およびアルソニウム塩(C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載)が含まれる。
オニウム塩の対アニオンの例には、BF4 -、PF6 -、AsF6 -およびSbF6 -が含まれる。
二種類以上の感熱性酸発生剤を併用してもよい。
感熱性酸発生剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.01乃至20質量%が好ましく、0.1乃至10質量%がさらに好ましい。
感熱性酸発生剤は、マイクロカプセルに添加することができる。感熱性酸発生剤をマイクロカプセルに添加する場合は、感熱性酸発生剤は水不溶性であることが好ましい。感熱性酸発生剤をマイクロカプセルに添加しない場合は、感熱性酸発生剤は水溶性であることが好ましい。
【0107】
[マイクロカプセルの製造]
マイクロカプセルは、公知のコアセルベーション法(米国特許2800457号、同2800458号の各明細書記載)、界面重合法(英国特許990443号、米国特許3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報記載)、ポリマー析出法(米国特許3418250号、同3660304号の各明細書記載)、イソシアナート・ポリオール壁形成法(米国特許3796669号明細書記載)、イソシアナート壁形成法(米国特許3914511号明細書記載)、尿素・ホルムアルデヒド壁もしくは尿素・ホルムアルデヒド−レゾルシノール壁形成法(米国特許4001140号、同4087376号、同4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド壁もしくはヒドロキシセルロース壁形成法(米国特許4025445号明細書記載)、モノマー重合によるin situ 法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各明細書記載)、スプレードライング法(英国特許930422号、米国特許3111407号の各明細書記載)、あるいは電解分散冷却法(英国特許952807号、同967074号の各明細書記載)により製造できる。
【0108】
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01乃至20μmが好ましく、0.05乃至2.0μmがさらに好ましく、0.10乃至1.0μmが最も好ましい。
二種類以上のマイクロカプセルを併用してもよい。
マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、10乃至95質量%であることが好ましく、15乃至90質量%であることがさらに好ましい。
【0109】
[親水性ポリマー]
画像形成層は、親水性ポリマーを含むことが好ましい。親水性ポリマーは、画像形成層においてマイクロカプセルのバインダーとして機能させることが好ましい。また、親水性ポリマーは、マイクロカプセルの製造における保護コロイドとして機能させることもできる。
親水性ポリマーの親水性基としては、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノが好ましい。
親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。
天然または半合成ポリマーとしては、多糖類(例、アラビアゴム、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、そのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム)またはタンパク質(例、カゼイン、ゼラチン)を用いることができる。
【0110】
ヒドロキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリヒドロキシブチルメタクリレート、ポリヒドロキシブチルアクリレート、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコールおよびポリ−N−メチロールアクリルアミドが含まれる。
カルボキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびそれらの塩が含まれる。
その他の親水性基(例、アミノ、多数のエーテル結合、親水性複素環基、アミド結合、スルホ)を有する合成ポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびその塩が含まれる。
親水性ポリマーは、その側鎖にエチレン不飽和基を有することもできる。エチレン性不飽和基の定義および例は、前述した重合性化合物のエチレン性不飽和基の定義および例と同様である。
【0111】
親水性合成ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。親水性合成ポリマーの繰り返し単位と、疎水性合成ポリマー(例、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン)の繰り返し単位とを含むコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーおよびビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)が含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は60%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
親水性ポリマーは、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびケン化度が60%以上のポリビニルアルコールが好ましく、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドがさらに好ましい。
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
【0112】
親水性ポリマーは、架橋構造を有していてもよい。架橋構造は、架橋剤の使用により親水性ポリマーに導入することが好ましい。架橋剤の例には、アルデヒド(例、グリオキザール)、アルデヒド樹脂(例、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂)、メチロール化合物(例、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂)、活性ビニル化合物(例、ジビニルスルホン、ビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸))、エポキシ化合物(例、エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミド・ポリアミン・エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂)、エステル(例、モノクロル酢酸エステル、チオグリコール酸エステル)、ポリカルボン酸(例、ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物)、無機酸(例、ほう酸)、チタニルスルフェート、金属塩(例、銅塩、アルミニウム塩、スズ塩、バナジウム塩、クロム塩)および変成ポリアミドポリイミド樹脂が含まれる。架橋剤に加えて、架橋触媒(例、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤)を用いてもよい。画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0113】
[光熱変換剤]
画像形成層または任意に設けられる層は、光熱変換剤を含むことが好ましい。
画像形成層が、光熱変換剤を含むことがより好ましく、マイクロカプセルが光熱変換剤を含むことがさらに好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤が吸収する光の波長(最大吸収波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
【0114】
赤外吸収顔料については、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載がある。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料を疎水性ポリマー中または疎水性ポリマーの微粒子の内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、あるいは、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
【0115】
赤外吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許3881924号同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
【0116】
赤外吸収染料については、米国特許4756993号、同5156938号の各明細書および特開平10−268512号公報にも記載がある。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許434875号、米国特許4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Lo=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Loは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
赤外吸収染料を画像形成層の親水性ポリマー中に添加する場合は、親水性の染料を用いることが好ましい。また、赤外吸収染料を疎水性ポリマー微粒子内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。
【0117】
金属は、一般に自己発熱性を有している。従って、赤外、可視または紫外領域に吸収をもつ金属、特に赤外領域に吸収をもつ金属は、光熱変換機能を有している。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
【0118】
合金の場合、低融点金属(例、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn)と、自己発熱性が高い金属(例、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge)とを組み合わせることもできる。また、光吸収が大きい金属(例、Ag、Pt、Pd)の微粒子と他の金属の微粒子とを組み合わせて用いることもできる。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、あるいは親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
【0119】
[画像形成層の他の任意成分]
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0120】
画像形成層には、機上現像の安定性を広げるため、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0121】
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0122】
[画像形成層の形成]
画像形成層は、マイクロカプセルおよび各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、親水性支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。
塗布液に使用する媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
【0123】
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0124】
[親水性支持体]
親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0125】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0126】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0127】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
親水性支持体に表面処理を実施してもよい。また、親水性支持体の上に下塗り層を設けてもよい。
【0128】
[水溶性オーバーコート層]
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
【0129】
水溶性有機ポリマーとして、酸素の透過率が低いポリマーを用いることも好ましい。酸素は重合禁止作用があるため、オーバーコート層に酸素の透過率の低いポリマーを用いると、画像形成層の重合反応を促進できる。酸素の透過率の低いポリマーとしては、ケン化度が高い(65%以上の)ポリビニルアルコールが代表的である。
オーバーコート層に、染料を添加してもよい。
【0130】
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0131】
[画像状加熱工程]
平版印刷原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
走査露光は、レーザー、特に赤外線レーザーを用いることが一般的である。赤外線の波長は、700乃至1200nmであることが好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。
【0132】
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、マイクロカプセルのシェルが破壊されると同時に、コアの重合性化合物が重合し、露光部に疎水性領域が形成される。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)には変化がない。
【0133】
[製版工程および印刷工程]
画像状に加熱した平版印刷原版は、現像することにより、平版印刷版を製版できる。
非加熱部分の画像形成層は、容易に除去できる。また、画像形成層を除去する処理(現像処理)を実施しなくても、画像状に加熱した平版印刷原版を直ちに印刷機に装着し、インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけでも、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷原版を印刷機に装着して、印刷機を稼動させると、湿し水、インク、または擦りにより画像形成層を除去することができる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又はインクをつけて機上現像する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
また、製版した印刷版をさらに全面加熱して、画像部に残存する未反応の重合性化合物を反応させ、印刷版の強度(耐刷性)をさらに改善することもできる。
【0134】
【実施例】
[実施例1]
(親水性支持体の作製)
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe0.30質量%、Si0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu0.013質量%を含むJIS−A−1050に従うアルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、アルミニウム板を鋳造した。清浄化処理では、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造はDC法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を、表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化しないように、550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0135】
次に平版印刷版用支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間中和およびスマット除去処理を行った。
次いで支持体と画像形成層との密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミニウムを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2 、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2 を与えることで電解砂目立てを行った。その後、10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間中和およびスマット除去処理を行った。
さらに、耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を設けた。電解質として20質量%硫酸水溶液を用いて35℃でアルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2 の直流で電解処理を行い、2.5g/m2 の陽極酸化皮膜を形成した。
そして、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は1.5質量%3号ケイ酸ナトリウム水溶液を用い、70℃でアルミウェブの接触時間が15秒となるように通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2 であった。
作製したアルミニウム支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0136】
(イソシアナート付加物の合成)
トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)の75質量%酢酸エチル溶液50gに、オクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)100mgを添加した。水浴中で冷却し、反応性構造を含む求核性化合物(2)5gを酢酸エチル10gに溶解した溶液を添加した。添加終了後室温で1時間攪拌し、次いで50℃で3時間撹拌を行なった。最後に固形分濃度が50質量%になるように酢酸エチルを添加し、イソシアナート付加物の酢酸エチル溶液を得た。
【0137】
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル12gに、得られたイソシアナート付加物の50質量%酢酸エチル溶液15g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(重合性化合物)4g、下記の光熱変換剤(赤外線吸収色素)1.5g、界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)0.1gおよび下記のヨードニウム化合物0.4gを溶解して油相を得た。
【0138】
【化43】
【0139】
【化44】
【0140】
別に、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ(株)製)の4質量%水溶液40gを調製して、水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。得られたマイクロカプセル分散液を、固形分濃度が20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.29μmであった。
【0141】
(画像形成層の形成)
親水性支持体の上に、下記組成の塗布液をバーコーターで塗布し、70℃のオーブンで90秒間乾燥して、画像形成層を形成した。画像形成層の乾燥塗布量は、1.0g/m2 であった。このようにして、平版印刷原版を作製した。
【0142】
────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────
水 75g
調製したマイクロカプセル分散液 25g
────────────────────────────────────
【0143】
(製版、印刷、評価)
得られた平版印刷原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter 3244VFS、Creo社製)にて、版面エネルギー300mJ/cm2 、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インクを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。湿し水は、市販の湿し水剤(IF−102、富士写真フイルム(株)製)の4質量%水溶液を使用し、インクは、市販の油性黒インク(バリウス墨、大日本インキ化学工業(株)製)を使用した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、ベタ部の耐刷枚数は、22000枚であった。
【0144】
[実施例2]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(4)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.33μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、23000枚であった。
【0145】
[実施例3]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(5)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.35μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、25000枚であった。
【0146】
[実施例4]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(6)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.30μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、28000枚であった。
【0147】
[実施例5]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(13)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.28μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、29000枚であった。
【0148】
[実施例6]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(19)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.33μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、24000枚であった。
【0149】
[実施例7]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(23)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.31μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、23000枚であった。
【0150】
[実施例8]
反応性構造を含む求核性化合物(2)に代えて、反応性構造を含む求核性化合物(27)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.31μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、耐刷枚数は、25000枚であった。
【0151】
[実施例9]
(イソシアナート付加物の合成)
反応性構造を含む求核性化合物化合物(30)12.8gを良く乾燥し、酢酸エチル30gおよびオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)100mgを添加した。次に、水浴中で冷却し、m−キシレンジイソシアナート20.7gを徐々に添加した。添加終了後室温で1時間攪拌し、次いで50℃で3時間撹拌を行なった。最後に固形分濃度が50質量%になるように酢酸エチルを添加し、イソシアネート付加物の酢酸エチル溶液を得た。
【0152】
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル12gに、得られたイソシアナート付加物の50質量%酢酸エチル溶液6g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)6g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(重合性化合物)4g、実施例1で用いた光熱変換剤(赤外線吸収色素)1.5g、界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)0.1gおよび実施例1で用いたヨードニウム化合物0.4gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ(株)製)の4質量%水溶液40gを調製して、水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。得られたマイクロカプセル分散液を、固形分濃度が20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.32μmであった。
【0153】
(製版、印刷、評価)
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を作製した。
得られた平版印刷原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter 3244VFS、Creo社製)にて、版面エネルギー300mJ/cm2 、解像度2400dpiの条件で露光した後、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インクを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。湿し水は、市販の湿し水剤(IF−102、富士写真フイルム(株)製)の4質量%水溶液を使用し、インクは、市販の油性黒インク(バリウス墨、大日本インキ化学工業(株)製)を使用した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができ、ベタ部の耐刷枚数は、25000枚であった。
【0154】
[比較例1]
酢酸エチル17gに、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)10g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(重合性化合物)4g、実施例1で用いた光熱変換剤(赤外線吸収色素)1.5g、界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)0.1gおよび実施例1で用いたヨードニウム化合物0.4gを溶解して油相を得た。
得られた油相を用いた以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル分散液を調製し、平版印刷原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.33μmであった。
得られた平版印刷原版を、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、問題なく機上現像を行うことができた。ただし、ベタ部の耐刷枚数は、2000枚であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】平版印刷原版の代表的な構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 親水性支持体
2 画像形成層
21 マイクロカプセル
21c コア
21s シェル
22 親水性ポリマー
23 光熱変換剤
Claims (2)
- マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有する平版印刷原版であって、該ポリマーがウレタン結合またはウレア結合を含む主鎖を有し、下記式(I)または(II)で定義される反応性構造を含むことを特徴とする平版印刷原版:
- マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有し、マイクロカプセルがポリマーからなるシェルと重合性化合物からなるコアとを有する平版印刷原版であって、該ポリマーがポリオールおよび下記式(I)または( II )で定義される反応性構造を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物であるか、あるいは下記式(I)または( II )で定義される反応性構造を含むポリオールと多価イソシアナートとの反応生成物であることを特徴とする平版印刷原版:
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