JP2005088346A - 平版印刷版原版および平版印刷方法 - Google Patents

平版印刷版原版および平版印刷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 赤外線走査露光が可能で、感度が高く、耐刷性が優れた平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を機上現像して印刷する平版印刷方法を提供する。
【解決手段】 親水性支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有する平版印刷用原版であって、該マイクロカプセルの壁が少なくとも一つのイソシアナート化合物の加水分解縮合物からなり、該イソシアナート化合物の少なくとも一つは、その加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが、1×10-9秒以下であるイソシアナート化合物であることを特徴とする平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を機上現像し、印刷する平版印刷方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、平版印刷版原版および平版印刷方法に関する。詳しくは、マイクロカプセルを含む画像形成層と親水性支持体とを有する平版印刷版原版、および、該平版印刷版原版を印刷機上で現像して印刷する平版印刷方法に関する。
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフィルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザー光の様な指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフィルムを介することなく、平版印刷版原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフィルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
CTPシステムに用いる平版印刷版原版は、露光後、現像処理することなしに、そのまま印刷機に装着して、印刷できることが望ましい。
現像処理をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層(画像形成層)を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
このような平版印刷版原版として、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この文献の記載によると、製版において、赤外線レーザー露光して熱可塑性疎水性重合体微粒子を熱により合体(融着)させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水および/またはインキを供給することにより機上現像できる。この平版印刷版原版は感光域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。
また、耐刷性を向上させるため、熱可塑性微粒子に代えて、重合性化合物などの熱反応性化合物を内包するマイクロカプセルを用いた平版印刷版原版が知られている(特許文献2、特許文献3参照。)。これらのマイクロカプセルの壁には、熱分解性のポリマーが使用されており、露光による熱で、マイクロカプセル壁がこわれて内包物がカプセル外に放出され、反応して画像形成が行われる。
特許2938397号公報 特開2001−277740号公報 特開2002−29162号公報
熱可塑性微粒子を含む平版印刷版原版では、微粒子が融着して形成される被膜の強度が不充分であるため、感度および耐刷性が低いという問題がある。熱可塑性微粒子に代えて、熱反応性化合物を内包するマイクロカプセルを用いることで、以上の問題は軽減されるが、まだ充分ではなく、更なる改良が要望された。
本発明の目的は、赤外線走査露光が可能で、感度が高く、耐刷性が優れた平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を機上現像して印刷する平版印刷方法を提供することである。
本発明は、下記(1)、(2)の平版印刷版原版、および(3)の平版印刷方法によって、上記課題を解決できた。
(1)親水性支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有する平版印刷用原版であって、該マイクロカプセルの壁が少なくとも一つのイソシアナート化合物の加水分解縮合物からなり、該イソシアナート化合物の少なくとも一つの加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが、1×10-9秒以下であることを特徴とする平版印刷版原版。
(2)該マイクロカプセルの壁がスルホン酸エステル結合を含む前記1に記載の平版印刷版原版。
(3)前記1〜前記2のいずれかに記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に印刷インキと湿し水とを供給して、画像形成層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
本発明のごとき画像形成層にマイクロカプセルを用いた平版印刷版原版においては、露光による熱で、カプセル壁が分解し、内包物がカプセル外に放出される必要がある。本発明は、イソシアナート化合物の加水分解縮合物でできたマイクロカプセル壁の分解速度が一定の値より速いことによって、高感度が得られ、それに伴って高耐刷が得られるが、そのためには、カプセル壁に用いるイソシアナート化合物の少なくとも一つが、その加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが1×10-9秒以下であるイソシアナート化合物である必要があることを見出したことに基づいている。さらにマイクロカプセル壁がスルホン酸エステル結合を含む場合に特に良好な分解速度が得られることを見出したことに基づいている。
本発明によれば、赤外線走査露光が可能で、感度が高く、耐刷性が優れた平版印刷版原版、および該平版印刷版原版を機上現像して印刷する平版印刷方法を提供できる。
本発明の画像形成層に用いられるマイクロカプセルは、マイクロカプセルの壁が少なくとも一つのイソシアナート化合物の加水分解縮合物からなり、該イソシアナート化合物の少なくとも一つの加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが、1×10-9秒以下であることを特徴とする。
ここで、換算時間とは、分解速度を表す指標であって、神戸 博太郎、小澤 丈夫著 新版熱分析(講談社、1992年発行、第4章63〜68頁)に詳細に記載されている値である。熱分解温度が物質固有の定数ではなく、昇温速度によって変化し、昇温速度が速いほど見掛け上熱分解温度は高くなるのに対して、この換算時間は昇温速度に依存しない。換算時間は、下記のようにして求められる。
温度に対して重量減少率をプロットした熱分解曲線(TG曲線)を、種々の昇温速度φで測定し、一群の昇温速度φの異なるTG曲線から、昇温速度毎に一定の重量減少率を与える温度T(絶対温度)を求める。そして、logφ対1/Tのプロットの傾きから、(1)式により活性化エネルギー(ΔE)を求める。
Figure 2005088346
換算時間θは、上記のΔEと下記(2)式から求められる。このθに対して重量減少率をプロットした曲線(マスターカーブ)は昇温時間によらないと言われている。マスターカーブは、温度∞時の反応曲線と考えることができ、レーザー照射時の反応率を反映していると考えられる。
Figure 2005088346
本発明では、マイクロカプセルの壁を構成するイソシアナート化合物の少なくとも一つの加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが、1×10-9秒以下である。換算時間は、より好ましくは1×10-10秒以下であり、1×10-11秒以下がさらに好ましい。上記換算時間θが、この範囲内で高感度、高耐刷が得られる。換算時間θが1×10-10秒を超えると、感度が低下すると共に、高耐刷が得にくくなる。
〔マイクロカプセル壁〕
本発明のマイクロカプセル壁に好適なイソシアナート化合物の加水分解縮合物としては、換算時間θの所定条件を満たせばどのようなイソシアナート化合物の加水分解縮合物であってもよいが、スルホン酸エステル結合を含むイソシアナート化合物の加水分解縮合物が特に好適である。
かかるスルホン酸エステル結合を含むイソシアナート化合物としては、スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとの付加物が挙げられる。スルホン酸エステル結合を含むポリオールは、下記式(I)で定義されるものが好ましい。
式(I) L1 (−SO −L −OH)n
式(I)において、L1 は、n価の連結基である。nは、2乃至6の整数である。L1は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましく、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることがさらに好ましく、二価以上の芳香族基または二価以上の芳香族基と二価以上の脂肪族基との組み合わせであることが最も好ましい。nは、2、3または4であることが好ましく、2または3であることがさらに好ましい。
式(I)において、−SO−は、−SO −O−または−O−SO−である。−SO−O−の方が、−O−SO−よりも好ましい。
式(I)において、Lは、二価の連結基である。Lは、二価の脂肪族基、二価の芳香族基、二価の複素環基、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO−、−NH−、−NR−(Rは、アルキル基または置換アルキル基)およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましく、二価の脂肪族基、−O−、−CO−、−NH−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることがさらに好ましく、二価の脂肪族基であることが最も好ましい。
本明細書において、脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
脂肪族基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、スルホ、硫酸エステル基、ホスホノ、リン酸エステル基、シアノ、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)、−N+ (−R) 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−Rおよび−P(=O)(−O−R)が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。カルボキシル、スルホ、硫酸エステル基、ホスホノおよびリン酸エステル基は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。
本明細書において、芳香族基の炭素原子数は、6乃至20であることが好ましく、6乃至15であることがさらに好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。
芳香族基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシル、スルホ、硫酸エステル基、ホスホノ、リン酸エステル基、シアノ、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−O−R、−S−R、−CO−R、−NH−R、−N(−R)、−N+ (−R) 、−CO−O−R、−O−CO−R、−CO−NH−R、−NH−CO−Rおよび−P(=O)(−O−R)が含まれる。上記Rは、それぞれ、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。カルボキシル、スルホ、硫酸エステル基、ホスホノおよびリン酸エステル基は、水素原子が解離していても、塩の状態になっていてもよい。
本明細書において、複素環基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。
複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、芳香族基の置換基の例と同様である。
以下に、スルホン酸エステル結合を含むポリオールの例を示す。
Figure 2005088346
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Figure 2005088346
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Figure 2005088346
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スルホン酸エステル結合を含むポリオールを二種類以上併用してもよい。
多価イソシアナートは、下記式(II)で定義されるジイソシアナートであることが好ましい。
式(II) OCN−L3 −NCO
式(II)において、L3 は、二価の連結基である。L3 は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の基であることが好ましい。アルキレン基とアリーレン基との組み合わせからなる二価の連結基が特に好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、オキソ(=O)、チオ(=S)、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
置換アリーレン基および置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
ジイソシアナートの例には、キシリレンジイソシアナート(例、m−キシリレンジイソシアナート、p−キシリレンジイソシアナート)、4−クロロ−m−キシリレンジイソシアナート、2−メチル−m−キシリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート(例、m−フェニレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート)、トルイレンジイソシアナート(例、2,6−トルイレンジイソシアナート、2,4−トルイレンジイソシアナート)、ナフタレンジイソシアナート(例、ナフタレン−1,4−ジイソシアナート)、イソホロンジイソシアナート、アルキレンジイソシアナート(例、トリメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、プロピレン−1,2−ジイソシアナート、ブチレン−1,2−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,2−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,3−ジイソシアナート、シクロへキシレン−1,4−ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン−1,4−ジイソシアナート、1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシビフェニルジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアナートおよびリジンジイソシアナートが含まれる。
キシリレンジイソシアナートおよびトルイレンジイソシアナートが好ましく、キシリレンジイソシアナートがさらに好ましく、m−キシリレンジイソシアナートが特に好ましい。
二種類以上のジイソシアナートを併用してもよい。
スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとを反応させた付加物(adduct)を中間体(またはプレポリマー)として合成し、次に付加物を反応させて壁ポリマーを合成することが好ましい。
付加物の合成反応におけるポリオール/多価イソシアナートの質量比は、1/100乃至80/100であることが好ましく、5/100乃至50/100であることがさらに好ましい。
スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第1錫およびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとの付加物を二種類以上併用してもよい。
スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとの付加物に加えて、他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物または他の多価イソシアナートを併用してもよい。ただし、壁ポリマーを合成する材料全体に対するスルホン酸エステル結合を含むポリオールの割合は、10質量%以上であることが好ましい。また、スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとの付加物と他の付加物とを併用する場合、スルホン酸エステル結合を含むポリオールと多価イソシアナートとの付加物の割合は、5乃至80質量%であることが好ましく、10乃至50質量%であることがさらに好ましい。
併用する他のポリオールは、下記式(III)で定義される三官能以上のポリオールであることが好ましい。
式(III) L4 (−OH)n
式(III)において、L4 はn価の連結基であり、nは3以上の整数である。
4 は、三価以上の脂肪族基、三価以上の芳香族基、またはそれらとアルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−または−SO2 −との組み合わせであることが好ましい。
三価以上の脂肪族基は、飽和脂肪族基であることが好ましい。飽和脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
脂肪族基は置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
芳香族基は、ベンゼン環残基であることが好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
nは、3であることが特に好ましい。
ポリオールおよび多価イソシアナートに加えて、多価アミンを壁ポリマーの形成に使用してもよい。多価アミンは、水溶性であることが好ましい。多価アミンの例には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタミンが含まれる。
〔マイクロカプセルのコア〕
本発明のマイクロカプセルのコア(内包物)は、親油性化合物である。親油性化合物は熱反応性化合物からなることが好ましい。熱反応性化合物は、重合性官能基を有する化合物(重合性化合物)であることがさらに好ましい。重合性化合物は、ポリマー(重合性基を架橋性官能基として有する架橋性ポリマー)であってもよい。
重合性化合物は、二個以上の重合性官能基を有することが好ましい。
重合性化合物の重合性官能基は、加熱することにより重合反応する。また、重合反応を促進する化合物(例えば、酸)の感熱性前駆体と、重合性化合物(例えば、ビニルエーテル化合物や環状エーテル化合物)とを併用してもよい。さらに、熱重合開始剤(ラジカル前駆体)と、重合性化合物(エチレン性不飽和重合性化合物)とを併用してもよい。
感熱性酸前駆体と、ビニルエーテルまたは環状エーテルとの組み合わせについては、特開2001−277740号、同2002−46361号および同2002−29162号の各公報に記載がある。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)とエチレン性不飽和重合性化合物との組み合わせについては、特開2002−137562号公報に記載がある。
環状エーテル化合物の環状エーテルは、三員環のエポキシ基であることが好ましい。複数の環状エーテル基を有する化合物が好ましい。市販のエポキシ化合物またはエポキシ樹脂を用いてもよい。
ビニルエーテル化合物も、複数のビニルエーテル基を有することが好ましい。ビニルエーテル化合物は、下記式(IV)で表されることが好ましい。
式(IV) L5 (−O−CR1 =CR2 3 m
式(IV)において、L5 はm価の連結基であり、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、そして、mは2以上の整数である。
mが2の場合、L5 は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−、−SO2 −およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
二価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
置換アリーレン基、置換アリール基および置換複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
mが3以上の場合、L5 は、三価以上の脂肪族基、三価以上の芳香族基、三価以上の複素環基、またはそれらとアルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−または−SO2 −との組み合わせであることが好ましい。
三価以上の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
芳香族基は、ベンゼン環残基であることが好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
5 は、m個の繰り返し単位からなるポリマーの主鎖を構成してもよい。
1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることがより好ましく、水素原子または炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチルであることがさらにまた好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
エチレン性不飽和重合性化合物も、複数のエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和重合性化合物は、下記式(V)で表されることが好ましい。
式(V) L5 (−CR1 =CR2 3 m
式(V)において、L5 はm価の連結基であり、R1 、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、そして、mは2以上の整数である。
5 、R1 、R2 およびR3 の定義は、式(IV)と同様である。
マイクロカプセルのコアは、熱反応性化合物に加えて、熱重合促進剤(例、感熱性酸発生剤)、熱重合開始剤、や光熱変換剤(後述)を含むことができる。
〔感熱性酸発生剤〕
熱反応性化合物がビニルオキシ基またはエポキシ基のようなカチオン重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに感熱性酸発生剤を含むことが好ましい。
感熱性酸発生剤は、加熱すると酸を発生する化合物からなる。発生した酸は、ビニルオキシ基またはエポキシ基の重合反応を開始もしくは促進する。
感熱性酸発生剤は、画像形成層に添加する。感熱性酸発生剤は、マイクロカプセルに添加することが好ましい。感熱性酸発生剤は、オニウム塩であることが好ましい。
なお、マイクロカプセルの壁ポリマーがスルホン酸エステル結合を含む場合、スルホン酸エステル結合が分解することで発生するスルホン酸が酸として機能し熱重合を促進できる。言い換えると、壁ポリマーに含まれるスルホン酸エステル結合は、感熱性酸発生剤としても機能することができる。
感熱性酸発生剤の例には、ジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,
387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載)、アンモニウム塩(米国特許第4069055号、同第4069056号、同再発行27992号の各明細書および特開平4−365049号公報に記載)、ホスホニウム塩(D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad,Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4069055号、同第4069056号の各明細書に記載)、ヨードニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p31(1988) 、欧州特許第104143号、米国特許第339049号、同第410201号の各明細書、特開平2−150848号、同2−296514号の各公報に記載)、スルホニウム塩(J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello etal,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivel.lo et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979) 、欧州特許第370693号、同3902114号、同233567号、同297443号、同297442号、米国特許第4933377号、同第161811号、同第410201号、同第339049号、同第4760013号、同第4734444号、同第2833827号、独国特許第2904626号、同第3604580号、同第3604581号の各明細書に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivel lo et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載)、およびアルソニウム塩(C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載)が含まれる。
オニウム塩の対アニオンの例には、BF4 -、PF6 -、AsF6 -およびSbF6 -が含まれる。
二種類以上の感熱性酸発生剤を併用してもよい。
感熱性酸発生剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.01乃至20質量%が好ましく、0.1乃至10質量%がさらに好ましい。
〔熱重合開始剤〕
熱反応性化合物が、エチレン性不飽和基のようなラジカル重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに熱重合開始剤を含むことが好ましい。
熱重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物である。熱重合開始剤の例には、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、キノンジアジド化合物およびメタロセン化合物が含まれる。オニウム塩(例、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩)が好ましく、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩およびスルホニウム塩が特に好ましい。
二種類以上の熱重合開始剤を併用してもよい。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)については、特開2002−137562号および特開2002−148790号公報に記載がある。
熱重合開始剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.1乃至50質量%が好ましく、0.5乃至30質量%がさらに好ましく、1乃至20質量%が最も好ましい。
熱重合開始剤は、マイクロカプセルに添加することができる。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加する場合は、熱重合性開始剤は水不溶性であることが好ましい。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加しない場合は、熱重合性開始剤は水溶性であることが好ましい。
〔マイクロカプセルの製造〕
マイクロカプセルは、公知のコアセルベーション法(米国特許第2800457号、同第2800458号の各明細書記載)、界面重合法(英国特許第990443号、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報記載)、ポリマー析出法(米国特許第3418250号、同第3660304号の各明細書記載)、イソシアナート・ポリオール壁形成法(米国特許第3796669号明細書記載)、イソシアナート壁形成法(米国特許第3914511号明細書記載)、尿素・ホルムアルデヒド壁もしくは尿素・ホルムアルデヒド−レゾルシノール壁形成法(米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド壁もしくはヒドロキシセルロース壁形成法(米国特許第4025445号明細書記載)、モノマー重合によるin situ 法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各明細書記載)、スプレードライング法(英国特許第930422号、米国特許第3111407号の各明細書記載)、または電解分散冷却法(英国特許第952807号、同第967074号の各明細書記載)により製造できる。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01乃至20μmが好ましく、0.05乃至2.0μmがさらに好ましく、0.10乃至1.0μmが最も好ましい。
二種類以上のマイクロカプセルを併用してもよい。
マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、10乃至95質量%であることが好ましく、15乃至90質量%であることがさらに好ましい。
〔親水性ポリマー〕
画像形成層は、親水性ポリマーを含むことが好ましい。親水性ポリマーは、画像形成層においてマイクロカプセルのバインダーとして機能させることが好ましい。また、親水性ポリマーは、マイクロカプセルの製造における保護コロイドとして機能させることもできる。
親水性ポリマーの親水性基としては、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノが好ましい。
親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーまたは合成ポリマーが使用できる。
天然または半合成ポリマーとしては、多糖類(例、アラビアゴム、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、そのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム)またはタンパク質(例、カゼイン、ゼラチン)を用いることができる。
ヒドロキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリヒドロキシブチルメタクリレート、ポリヒドロキシブチルアクリレート、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコールおよびポリ−N−メチロールアクリルアミドが含まれる。
カルボキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびそれらの塩が含まれる。
その他の親水性基(例、アミノ、多数のエーテル結合、親水性複素環基、アミド結合、スルホ)を有する合成ポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびその塩が含まれる。
親水性ポリマーは、その側鎖にエチレン不飽和基を有することもできる。エチレン性不飽和基の定義および例は、前述した重合性化合物のエチレン性不飽和基の定義および例と同様である。
親水性合成ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。親水性合成ポリマーの繰り返し単位と、疎水性合成ポリマー(例、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン)の繰り返し単位とを含むコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーおよびビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)が含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。
親水性ポリマーは、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびケン化度が60モル%以上のポリビニルアルコールが好ましく、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドがさらに好ましい。
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
親水性ポリマーは、架橋構造を有していてもよい。架橋構造は、架橋剤の使用により親水性ポリマーに導入することが好ましい。架橋剤の例には、アルデヒド(例、グリオキザール)、アルデヒド樹脂(例、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂)、メチロール化合物(例、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂)、活性ビニル化合物(例、ジビニルスルホン、ビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸))、エポキシ化合物(例、エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミド・ポリアミン・エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂)、エステル(例、モノクロル酢酸エステル、チオグリコール酸エステル)、ポリカルボン酸(例、ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物)、無機酸(例、ほう酸)、チタニルスルフェート、金属塩(例、銅塩、アルミニウム塩、スズ塩、バナジウム塩、クロム塩)および変成ポリアミドポリイミド樹脂が含まれる。架橋剤に加えて、架橋触媒(例、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤)を用いてもよい。
画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
〔光熱変換剤〕
画像形成層または任意に設けられる層は、光熱変換剤を含むことが好ましい。画像形成層が、光熱変換剤を含むことがより好ましく、マイクロカプセルが光熱変換剤を含むことがさらに好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤が吸収する光の波長(吸収極大波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
赤外吸収顔料については、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載がある。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料を疎水性ポリマー中または疎水性ポリマーの微粒子の内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、または、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
赤外吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許第3881924号、同第4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
赤外吸収染料については、米国特許第4756993号、同第5156938号の各明細書および特開平10−268512号公報にも記載がある。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許第434875号、米国特許第4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号、特開平9−96891号、特開2002−208757号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Lo=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Loは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
赤外吸収染料を画像形成層の親水性ポリマー中に添加する場合は、親水性の染料を用いることが好ましい。また、赤外吸収染料を疎水性ポリマー微粒子内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。
金属は、一般に自己発熱性を有している。従って、赤外、可視または紫外領域に吸収をもつ金属、特に赤外領域に吸収をもつ金属は、光熱変換機能を有している。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
合金の場合、低融点金属(例、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn)と、自己発熱性が高い金属(例、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge)とを組み合わせることもできる。また、光吸収が大きい金属(例、Ag、Pt、Pd)の微粒子と他の金属の微粒子とを組み合わせて用いることもできる。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、または親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3質量%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
〔画像形成層の他の任意成分〕
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
画像形成層には、機上現像の安定性を広げるため、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
〔画像形成層の形成〕
画像形成層は、マイクロカプセルおよび各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、親水性支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。
塗布液に使用する媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
〔親水性支持体〕
親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。なかでも、陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法または化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸またはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
〔水溶性オーバーコート層〕
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65モル%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
水溶性有機ポリマーとして、酸素の透過率が低いポリマーを用いることも好ましい。酸素は重合禁止作用があるため、オーバーコート層に酸素の透過率の低いポリマーを用いると、画像形成層の重合反応を促進できる。酸素の透過率の低いポリマーとしては、ケン化度が高い(65モル%以上の)ポリビニルアルコールが代表的である。
オーバーコート層に、染料を添加してもよい。
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
〔製版、印刷〕
平版印刷版原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷版原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
走査露光は、レーザー、特に赤外線レーザーを用いることが一般的である。赤外線の波長は、700乃至1200nmであることが好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷版原版の加熱部分(画像部)において、マイクロカプセルの壁が破壊されると同時に、コアの重合性化合物が重合し、露光部に疎水性領域が形成される。
これに対して、平版印刷版原版の非加熱部分(非画像部)には変化がない。
画像状に加熱した平版印刷版原版は、現像することにより、平版印刷版を製版できる。
非加熱部分の画像形成層は、容易に除去できる。また、画像形成層を除去する処理(現像処理)を実施しなくても、画像状に加熱した平版印刷版原版を直ちに印刷機に装着し、インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけでも、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷版原版を印刷機に装着して、印刷機を稼動させると、湿し水、インク、または擦りにより画像形成層を除去することができる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷版原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水またはインクをつけて機上現像する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
また、製版した印刷版をさらに全面加熱して、画像部に残存する未反応の重合性化合物を反応させ、印刷版の強度(耐刷性)をさらに改善することもできる。
上記の製版、印刷方法のなかでも、平版印刷版原版を印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、平版印刷版原版を赤外線レーザーで画像様に露光した後印刷機に装着し、該平版印刷版原版に印刷インキと湿し水とを供給して、画像形成層の赤外線レーザー未露光部分を除去する機上現像を経て、印刷する平版印刷方法が、製版の合理化を可能にする点で、特に好ましい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔支持体の製造例〕
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu 0.013質量%を含むJIS A1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。 次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。次いで支持体と感熱層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%水酸化ナトリウム水溶液で50℃30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃30秒間中和、スマット除去処理を行った。さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20質量%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2の陽極酸化皮膜を作製した。
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
〔予備実験1〕
(イソシアナート付加物(a)の合成)
スルホン酸エステル結合を含むポリオール(例示化合物(14))1モルをよく乾燥し、脱水した酢酸エチルに混合した。混合物を水冷し、窒素雰囲気下、m−キシリレンジイソシアナート2モルおよびオクチル酸第一錫(触媒)を加え、室温で1時間攪拌した。その後、50℃で3時間加熱攪拌し、下記のイソシアナート付加物(a)を合成した。
Figure 2005088346
〔予備実験2〕
(イソシアナート付加物(b)の合成)
予備実験1と同様に、スルホン酸エステル結合を含むポリオール(例示化合物(15))1モルと、m−キシリレンジイソシアナート2モルとを反応させ、下記のイソシアナート付加物(b)を合成した。
Figure 2005088346
〔予備実験3〕
(イソシアナート付加物(c)の合成)
予備実験1と同様に、スルホン酸エステル結合を含むポリオール(例示化合物(21))1モルと、m−キシリレンジイソシアナート2モルとを反応させ、下記のイソシアナート付加物(c)を合成した。
Figure 2005088346
〔予備実験4〕
(イソシアナート付加物(d)の合成)
予備実験1と同様に、スルホン酸エステル結合を含むポリオール(例示化合物(24))1モルと、m−キシリレンジイソシアナート2モルとを反応させ、下記のイソシアナート付加物(d)を合成した。
Figure 2005088346
(熱分解曲線の測定と換算時間θの算出)
イソシアナート付加物(a)〜(e)の33質量%酢酸エチル溶液を、それぞれガラス基板上に塗布し、80℃で1分間乾燥した。次に、40℃に加温した水中に、3時間浸漬して、イソシアナート基を水と反応させ、室温で一昼夜乾燥して、ポリマー被膜を形成した。ポリマー被膜について、熱分析装置(TG/DTA22、セイコー電子工業(株)製)を用い、昇温速度2、4、8、16℃/分で加熱し、質量20%減少時の温度を求めた。この温度の値からマスターカーブを作成し、換算時間θを求めた。結果は、表1に示す。
Figure 2005088346
実施例1
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル17gに、予備実験で得られたイソシアナート付加物(a)の50質量%酢酸エチル溶液5g、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)4g、下記の赤外線吸収色素0.8gおよび界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)0.1gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA−205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液40gを調製して、水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。得られたマイクロカプセル分散液を、固形分濃度が20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.34μmであった。
Figure 2005088346
(画像形成層の形成)
支持体の製造例で得た親水性支持体の上に、下記組成の塗布液をバーコーターで塗布し、70℃のオーブンで90秒間乾燥して、画像形成層を形成した。画像形成層の乾燥塗布量は、1.0g/m2 であった。このようにして、平版印刷版原版を作製した。
<画像形成層塗布液組成>
・水 75g
・調製したマイクロカプセル分散液 25g
・下記の重合開始剤 0.5g
Figure 2005088346
実施例2
イソシアナート付加物(a)に代えて、イソシアナート付加物(b)を用いた以外は実施例1と同様に、マイクロカプセル分散液を調整し、平版印刷版原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.31μmであった。
実施例3
イソシアナート付加物(a)に代えて、イソシアナート付加物(c)を用いた以外は実施例1と同様に、マイクロカプセル分散液を調整し、平版印刷版原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.32μmであった。
実施例4
イソシアナート付加物(a)に代えて、イソシアナート付加物(d)を用いた以外は実施例1と同様に、マイクロカプセル分散液を調整し、平版印刷版原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.31μmであった。
比較例1
酢酸エチル17gに、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアナートとの付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製)4g、実施例1で用いた赤外線吸収色素0.8gおよび界面活性剤(パイオニンA−41−C、竹本油脂(株)製)0.1gを溶解して油相を得た。
得られた油相を用いた以外は、実施例1と同様にして、マイクロカプセル分散液を調製し、平版印刷版原版を作製した。マイクロカプセルの平均粒径は、0.34μmであった。
〔製版、印刷および評価〕
1.製版、印刷
得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter 3244VX、Creo社製)にて、版面エネルギー150mJ/cm2 、解像度2400dpiの条件で、細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100および200μmの線幅画像)を含む画像露光をした後、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インクを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。湿し水は、市販の湿し水剤(IF−102、富士写真フイルム(株)製)の4質量%水溶液を使用し、インクは、市販の油性黒インク(バリウス墨、大日本インキ化学工業(株)製)を使用した。
2.評価
一般に、ネガ型平版印刷版原版の場合、露光量が少ないと画像形成層(感光層)の硬化度が低くなり、露光量が多いと硬化度が高くなる。画像形成層の硬化度が低すぎる場合には、平版印刷版の耐刷性が低くなり、また、小点や細線の再現性が不良となる。一方、画像形成層の硬化度が高い場合には、耐刷性が高くなり、また、小点や細線の再現性が良好となる。
本実施例では、上記平版印刷版原版を、上述した同一の露光量条件で、耐刷性および細線再現性を下記の評価方法に従って評価することにより、平版印刷版原版の感度の指標とした。即ち、耐刷性における印刷枚数が高いほど、また、細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷版原版の感度が高いと評価した。
(細線再現性の評価方法)
上述したように印刷をスタートし、100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャートを25倍のルーペで観察し、途切れることなくインキで再現された細線の線幅により、細線再現性を評価した。結果を表2に示す。
(耐刷性の評価方法)
上述した細線再現性評価の印刷を行った後、更に印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像形成層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2005088346
表2には、各実施例で用いた本発明の特徴であるイソシアナート付加物(a)〜(d)の加水分解縮合物の換算時間θと上記の細線再現性および耐刷性の評価結果とを対比して示した。この表から明らかなように、本発明の平版印刷版原版(実施例1〜4)を用い、本発明の印刷方法によれば、従来の平版印刷版原版(比較例1)を用いた場合に比べて、細線再現性および耐刷性が極めて優れたものになる。すなわち、本発明によれば、高感度、高耐刷が得られることが示された。

Claims (3)

  1. 親水性支持体上に、親油性化合物を内包するマイクロカプセルを含有する画像形成層を有する平版印刷版原版であって、該マイクロカプセルの壁が少なくとも一つのイソシアナート化合物の加水分解縮合物からなり、該イソシアナート化合物の少なくとも一つの加水分解縮合物の熱分解反応が20%進むまでの換算時間θが、1×10-9秒以下であることを特徴とする平版印刷版原版。
  2. 該マイクロカプセルの壁がスルホン酸エステル結合を含む請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 請求項1または請求項2に記載の平版印刷版原版を、印刷機に装着し、赤外線レーザーで画像様に露光した後、または、赤外線レーザーで画像様に露光した後、印刷機に装着し、該平版印刷版原版に印刷インキと湿し水とを供給して、画像形成層の未露光部分を除去し、印刷する平版印刷方法。
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