JP4011873B2 - 平版印刷原版 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷原版に関する。特に本発明は、ディジタル信号に基づいたレーザー光の走査露光によって画像を記録できる平版印刷原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフィルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。
近年では、コンピュータを用いて画像情報をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザ光の様な指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフィルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフィルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
従来のPS版による印刷版の製版方法を、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術で実施しようとすると、レーザ光の波長領域と感光性樹脂の感光波長領域とが一致しないとの問題がある。
【0003】
また、従来のPS版では、露光の後、非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠である。さらに、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像形成処理)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。環境への配慮からも、湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更するか、さらには無処理化することが望ましい。
【0004】
処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
従来のPS版では、このような要求を満足することは、実質的に不可能であった。
【0005】
特許2938397号公報には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感光層を親水性支持体上に設けた平版印刷原版が記載されている。同公報の記載によると、製版において、赤外線レーザ露光して熱可塑性疎水性重合体微粒子を熱により合体(融着)させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水及び/またはインキを供給することにより機上現像できる。この平版印刷版用原版は感光域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。
しかしながら、上記のような高分子重合体粒子を露光によって生じる熱で融着、合体させる画像形成方法では、機上現像をしやすくすると耐刷力が得にくく、耐刷力を高めると機上現像性や、印刷での汚れ難さが劣化するといった、両立させるのが困難な問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐刷性のある平版印刷版を製版できる平版印刷原版を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(3)の平版印刷原版を提供する。
(1)親水性支持体上に、疎水性ポリマーの微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、疎水性ポリマーの微粒子が、アスペクト比が1.5乃至10の形状を有することを特徴とする平版印刷原版。
【0008】
(2)疎水性ポリマーの微粒子が、扁平な形状を有する(1)に記載の平版印刷原版。
(3)疎水性ポリマーの微粒子が、0.05乃至2μmの平均粒径を有する(1)に記載の平版印刷原版。
【0009】
【発明の実施の形態】
[微粒子の形状]
本発明では、疎水性ポリマー微粒子が、アスペクト比が1.2乃至10の形状を有する。アスペクト比は、1.5乃至5であることがさらに好ましい。
本明細書において、アスペクト比は、粒子の平均短径(t)と粒子の平均粒径(d)との比(t/d)を意味する。
粒子の平均粒径(d)は、粒子を球に近似した場合の直径の平均を意味する。疎水性ポリマー微粒子の平均粒径は、0.05乃至2μmであることが好ましく、0.01乃至1μmであることがさらに好ましい。
粒子の平均短径(t)は、粒子を直方体に近似した場合の最も短い辺長の平均を意味する。
【0010】
アスペクト比が大きな粒子は、一般に、扁平状または棒状の形状を有する。すなわち、長径方向と短径方向以外の径(具体的には、粒子形状を直方体に近似した場合に中間の長さとなる辺長)の径が、長径に近い(具体的には、平均粒径よりも長い)長さを有する場合は扁平状であり、短径に近い(具体的には、平均粒径よりも短い)長さを有する場合は棒状である。
疎水性ポリマー微粒子の形状は、棒状よりも扁平状の方が好ましい。
疎水性ポリマー微粒子の形状と大きさは、顕微鏡(通常は電子顕微鏡)による観察で測定できる。粒子を球または直方体に近似する場合は、粒子が含まれる最小の大きさを有する球または直方体を仮定すればよい。
【0011】
疎水性ポリマー微粒子が扁平状であるの一方または両方の面に、凹部が形成されていてもよい。
扁平状のポリマー微粒子は、コア/シェル構造の微粒子を形成してから、変形処理(例えば、有機溶媒の離脱あるいはポリマーの架橋)を行うことにより容易に形成できる。コア/シェル構造におけるコア部のポリマーとシェル部のポリマーとは、同一であってもよい。
また、一般に製造されている球状のポリマー微粒子を、圧力によって変形してもよい。
扁平状のポリマー微粒子については、特開平2−14222号、同2−69386号、同6−322008号、同7−188313号の各公報に記載がある。
二種類以上の疎水性ポリマー微粒子を混合して用いてもよい。
【0012】
疎水性ポリマーを含むマイクロカプセルを、疎水性ポリマー微粒子として用いることもできる。
マイクロカプセルは、公知のコアセルベーション法(米国特許2800457号、同2800458号の各明細書記載)、界面重合法(英国特許990443号、米国特許3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報記載)、ポリマー析出法(米国特許3418250号、同3660304号の各明細書記載)、イソシアネート・ポリオール壁形成法(米国特許3796669号明細書記載)、イソシアネート壁形成法(米国特許3914511号明細書記載)、尿素・ホルムアルデヒド壁もしくは尿素・ホルムアルデヒド−レゾルシノール壁形成法(米国特許4001140号、同4087376号、同4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド壁もしくはヒドロキシセルロース壁形成法(米国特許4025445号明細書記載)、モノマー重合によるin situ 法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各明細書記載)、スプレードライング法(英国特許930422号、米国特許3111407号の各明細書記載)、あるいは電解分散冷却法(英国特許952807号、同967074号の各明細書記載)により製造できる。
【0013】
マイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤することが好ましい。そのためには、マイクロカプセルの壁材として、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドおよびこれらの混合物を用いることが好ましい。ポリウレアおよびポリウレタンが特に好ましい。マイクロカプセル壁に、先述した疎水性ポリマーを用いてもよい。
【0014】
マイクロカプセルを画像形成層に添加する場合、内包物が溶解し、かつ壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。
溶剤としては、アルコール、エーテル、アセタール、エステル、ケトン、多価アルコール、アミド、アミン、脂肪酸を用いることができる。好ましい溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、t−ブタノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドが含まれる。二種類以上の溶剤を併用してもよい。
溶剤の添加量は、塗布液の5乃至95質量%が好ましく、10乃至90質量%がさらに好ましく、15乃至85質量%が最も好ましい。
【0015】
[疎水性ポリマー]
疎水性ポリマーの主鎖は、炭化水素(ポリオレフィン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。炭化水素主鎖が特に好ましい。
【0016】
以下に疎水性ポリマーの繰り返し単位の例を示す。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
【化17】
【0034】
【化18】
【0035】
【化19】
【0036】
【化20】
【0037】
【化21】
【0038】
【化22】
【0039】
【化23】
【0040】
【化24】
【0041】
【化25】
【0042】
【化26】
【0043】
【化27】
【0044】
【化28】
【0045】
【化29】
【0046】
【化30】
【0047】
【化31】
【0048】
【化32】
【0049】
【化33】
【0050】
【化34】
【0051】
【化35】
【0052】
【化36】
【0053】
【化37】
【0054】
二種類以上の繰り返し単位を有するコポリマーを用いてもよい。二種類以上の疎水性ポリマーを併用してもよい。
疎水性ポリマーは、前述した繰り返し単位に対応するモノマー(一般に、エチレン性不飽和モノマー)の重合反応によって合成できる。具体的な重合反応としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応あるいはアニオン重合反応が採用できる。
重合は、乳化重合反応であることが好ましい。乳化重合反応であると、疎水性ポリマーの合成と同時に微粒子を形成することができる。乳化重合反応は、ラテックスの製造に一般に用いられている反応条件を採用すればよい。
均質な微粒子を形成するため、乳化重合反応において界面活性剤を使用することが好ましい。カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤の使用量は、モノマーの総量の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
重合反応は、重合開始剤(連鎖移動剤)を用いることが好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマーの総量の0.05乃至10質量%であることが好ましい。
疎水性ポリマーの分子量は、質量平均で、5百乃至100万であることが好ましく、千乃至50万であることがより好ましく、2千乃至20万であることがさらに好ましく、5千乃至10万であることが最も好ましい。
疎水性ポリマーは、画像形成層に5乃至90質量%含まれていることが好ましく、30乃至80質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0055】
[親水性ポリマー]
親水性ポリマーは、画像形成層において、微粒子のバインダーとして機能できる。
親水性ポリマーの親水性基としては、ヒドロキシル、カルボキシル、スルホ、アミノまたはアミド結合が好ましい。カルボキシルおよびスルホは、塩の状態であってもよい。
親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。
天然または半合成ポリマーとしては、多糖類(例、アラビアゴム、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、そのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム)またはタンパク質(例、カゼイン、ゼラチン)を用いることができる。
【0056】
ヒドロキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリヒドロキシブチルメタクリレート、ポリヒドロキシブチルアクリレート、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコールおよびポリ−N−メチロールアクリルアミドが含まれる。
カルボキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびそれらの塩が含まれる。
その他の親水性基(例、アミノ、多数のエーテル結合、親水性複素環基、アミド結合、スルホ)を有する合成ポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩が含まれる。
【0057】
親水性合成ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。親水性合成ポリマーの繰り返し単位と、疎水性合成ポリマー(例、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン)の繰り返し単位とを含むコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーおよびビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)が含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0058】
[光熱変換剤]
画像形成層は、光熱変換剤を含むことが好ましい。光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤は、疎水性ポリマー微粒子の内部に存在させることができる。光熱変換剤を微粒子の外部(親水性バインダー中)に添加してもよい。
光熱変換剤が吸収する光の波長(最大吸収波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
【0059】
赤外吸収顔料については、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載がある。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料を疎水性ポリマー中または疎水性ポリマーの微粒子の内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、あるいは、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
【0060】
赤外吸収染料については、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシーに記載がある。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許3881924号同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
【0061】
赤外吸収染料については、米国特許4756993号、同5156938号の各明細書および特開平10−268512号公報にも記載がある。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許434875号、米国特許4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Le=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Leは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Leは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
【0062】
赤外吸収染料を画像形成層の親水性ポリマー中に添加する場合は、親水性の染料を用いることが好ましい。親水性の赤外吸収染料の例を以下に示す。
【0063】
【化38】
【0064】
【化39】
【0065】
【化40】
【0066】
【化41】
【0067】
【化42】
【0068】
【化43】
【0069】
赤外吸収染料を疎水性ポリマー微粒子内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。疎水性の赤外吸収染料の例を以下に示す。
【0070】
【化44】
【0071】
【化45】
【0072】
【化46】
【0073】
【化47】
【0074】
金属は、一般に自己発熱性を有している。従って、赤外、可視または紫外領域に吸収をもつ金属、特に赤外領域に吸収をもつ金属は、光熱変換機能を有している。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
【0075】
合金の場合、低融点金属(例、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn)と、自己発熱性が高い金属(例、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge)とを組み合わせることもできる。また、光吸収が大きい金属(例、Ag、Pt、Pd)の微粒子と他の金属の微粒子とを組み合わせて用いることもできる。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、あるいは親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
【0076】
[画像形成層の他の任意成分]
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0077】
画像形成層には、機上現像の安定性を広げるため、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。
ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。
非イオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0078】
画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0079】
[画像形成層の形成]
画像形成層は、各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、親水性支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。塗布液に使用する液状媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
【0080】
塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0081】
[親水性支持体]
親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0082】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0083】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0084】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
【0085】
[水溶性オーバーコート層]
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルローズ)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリンプルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65質量%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
【0086】
オーバーコート層に、前記の光熱変換剤を添加してもよい。オーバーコート層に添加する光熱変換剤は、水溶性であることが好ましい。
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0087】
[画像状加熱工程]
平版印刷版原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷版原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
走査露光は、レーザー、特に赤外線レーザーを用いることが一般的である。赤外線の波長は、700乃至1200nmであることが好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。
【0088】
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、疎水性ポリマー微粒子が融合し、親水性支持体に付着している疎水性領域を形成する。
これに対して、平版印刷原版の非加熱部分(非画像部)の疎水性ポリマーには変化がない。
【0089】
[製版および印刷工程]
画像状に加熱した平版印刷原版は、現像することにより、平版印刷版を製版できる。
具体的には、水または水性溶媒により非加熱部分(非画像部)の疎水性ポリマー微粒子を除去することができる。ただし、微粒子を除去する処理(現像処理)を実施しなくても、画像状に加熱した平版印刷原版を直ちに印刷機に装着し、インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけでも、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷原版を印刷機に装着して、印刷機を稼動させると、湿し水、インク、または擦りにより非加熱部分(非画像部)の画像形成層を除去することができる。
なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又はインクをつけて機上現像する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
【0090】
【実施例】
[実施例1]
(アルミニウム支持体の作製)
99.5%以上のアルミニウムと、Fe 0.30%、Si 0.10%、Ti0.02%、Cu 0.013%を含むJIS A1050合金の溶湯を清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理には、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理をおこなった。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃にて60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0091】
次に平版印刷版支持体とするための表面処理を行った。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃にて30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃にて30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0092】
次いで支持体と画像形成層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2 、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2 を与えることで電解砂目立てを行った。その後10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃にて30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃にて30秒間中和、スマット除去処理を行った。
【0093】
さらに耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させた。電解質として硫酸20%水溶液を35℃で用い、アルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2 の直流で電解処理を行うことで2.5g/m2 の陽極酸化皮膜を作成した。
この後印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2 であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは0.25μmであった。
【0094】
(下塗り層の形成)
アルミニウム支持体表面に、下記の組成の下塗り層塗布液を塗布し、80℃で30秒間乾燥して、下塗り層を形成した。下塗り層の乾燥塗布量は、10g/m2 であった。
【0095】
【0096】
(疎水性ポリマー微粒子(1)の合成)
攪拌機、温度計および還流コンデンサー付のセパラブルフラスコに、水250質量部およびラウリル硫酸ナトリウム0.1質量部を入れ、窒素置換しながら攪拌して、70℃まで加熱した。内温を70℃に保ち、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0質量部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.05質量部を添加し、溶解後、スチレン10質量部とアクリル酸0.3質量部との混合モノマーを添加し、2時間反応させた。
別に、水200質量部に、ラウリル硫酸ナトリウム1.5質量部、スチレン270質量部、メタクリル酸ブチル30質量部、アクリル酸9.0質量部、ジビニルベンゼン9.0質量部およびn−ヘプタン45.0質量部を、撹拌しながら加えて、混合物を調製した。この混合物を、上記の反応が終了後、連続的に4時間かけて添加し、反応させた。添加終了後、さらに3時間の熟成を行った。
得られたエマルジョンは、不揮発分が約40質量%、粘度が40cps(BM型粘度計ローターNo.1、回転数60rpm、温度25℃で測定)、pHが1.7であった。粒子を電子顕微鏡で測定したところ、平均粒径(d)が0.5μm、平均短径(t)が0.2μmであり、アスペクト比(t/d)が2.5の偏平状粒子であった。さらに、得られたエマルジョンを、蒸留水を用いて希釈し、固形分濃度を10質量%に調節した。
【0097】
(画像記録層の形成)
下記の組成からなる画像記録層塗布液を調製した。
【0098】
【0099】
画像記録層塗布液を、アルミニウム支持体の下塗り層の上に、ロッドバーを用いて塗布し、50℃で5分間乾燥して、画像記録層を形成した。画像記録層の乾燥後の質量は、0.9g/m2 であった。
このようにして、平版印刷原版を製造した。
【0100】
(製版、印刷および評価)
作製した平版印刷原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter3244VFS、Creo社製)にて、9Vの出力、210rpmの外面ドラム回転数、500mJ/m2 の版面エネルギー、そして2400dpiの解像度の条件で画像露光した。
次に、現像処理することなく、印刷機(ハイデルSOR−M)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに上を供給し印刷を行った。
印刷スタート(機上現像)に要した印刷枚数と、耐刷枚数を第1表に示す。
【0101】
[実施例2]
(疎水性ポリマー微粒子(2)の合成)
攪拌機、温度計および還流コンデンサー付のセパラブルフラスコに、水250質量部およびラウリル硫酸ナトリウム0.2質量部を入れ、窒素置換しながら攪拌して、70℃まで加熱した。内温を70℃に保ち、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.0質量部およびt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.1質量部を添加し、溶解後、メタクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸ブチル10.0質量部およびアクリル酸1.0質量部の混合モノマーを添加し、2時間反応させた。
別に、水200質量部に、メタクリル酸200質量部、メタクリル酸ブチル50質量部、アクリロニトリル30.0質量部、アクリル酸10.0質量部、n−ヘプタン1.0質量部およびn−デカン40.0質量部を、撹拌しながら加えて、混合物を調製した。この混合物を、上記の反応が終了後、連続的に4時間かけて添加し、反応させた。添加終了後、さらに3時間の熟成を行った。
得られたエマルジョンは、不揮発分が約40質量%、粘度が40cps(BM型粘度計ローターNo.1、回転数60rpm、温度25℃で測定)、pHが1.7であった。粒子を電子顕微鏡で測定したところ、平均粒径(d)が0.3μm、平均短径(t)が0.15μmであり、アスペクト比(t/d)が2.0の偏平状粒子であった。さらに、得られたエマルジョンを、蒸留水を用いて希釈し、固形分濃度を10質量%に調節した。
【0102】
(製版、印刷および評価)
疎水性ポリマー微粒子(2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を作製した。
作製した平版印刷原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter3244VFS、Creo社製)にて、9Vの出力、210rpmの外面ドラム回転数、500mJ/m2 の版面エネルギー、そして2400dpiの解像度の条件で画像露光した。
次に、現像処理することなく、印刷機(ハイデルSOR−M)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに上を供給し印刷を行った。
印刷スタート(機上現像)に要した印刷枚数と、耐刷枚数を第1表に示す。
【0103】
[比較例1]
(疎水性ポリマー微粒子(3)の合成)
n−ヘプタンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、疎水性ポリマー微粒子を合成した。
得られたエマルジョンは、不揮発分が約42質量%、粘度が10cps(BM型粘度計ローターNo.1、回転数60rpm、温度25℃で測定)、pHが1.8であった。粒子を電子顕微鏡で測定したところ、平均粒径(d)が0.4μm、平均短径(t)が0.4μmであり、アスペクト比(t/d)が1.0の球状粒子であった。さらに、得られたエマルジョンを、蒸留水を用いて希釈し、固形分濃度を10質量%に調節した。
【0104】
(製版、印刷および評価)
疎水性ポリマー微粒子(3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、平版印刷原版を作製した。
作製した平版印刷原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter3244VFS、Creo社製)にて、9Vの出力、210rpmの外面ドラム回転数、500mJ/m2 の版面エネルギー、そして2400dpiの解像度の条件で画像露光した。
次に、現像処理することなく、印刷機(ハイデルSOR−M)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、さらに上を供給し印刷を行った。
印刷スタート(機上現像)に要した印刷枚数と、耐刷枚数を第1表に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【発明の効果】
本発明によれば、非常に耐刷性が高い平版印刷版を製版することができる。これは、アスペクト比が高い粒子を用いることで、画像部の微粒子が確実に融着するためと考えられる。
Claims (3)
- 親水性支持体上に、疎水性ポリマーの微粒子と親水性ポリマーとを含む画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、疎水性ポリマーの微粒子が、アスペクト比が1.2乃至10の形状を有することを特徴とする平版印刷原版。
- 疎水性ポリマーの微粒子が、扁平な形状を有する請求項1に記載の平版印刷原版。
- 疎水性ポリマーの微粒子が、0.05乃至2μmの平均粒径を有する請求項1に記載の平版印刷原版。
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