JP2005099667A - 平版印刷原版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 画像形成層並びに親水性支持体からなり、画像形成層中に重合性化合物を含むマイクロカプセルが分散しており、マイクロカプセルの外部の画像形成層中に親水性化合物を含む平版印刷原版において、親水性支持体に付着性を有するポリマーでマイクロカプセルのシェルを構成する。
【選択図】 図1
Description
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザー光のような指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。
従来のPS版による印刷版の製版方法を、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術で実施しようとすると、レーザー光の波長領域と感光性樹脂の感光波長領域とが一致しないとの問題がある。
特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。環境への配慮からも、湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更するか、さらには無処理化することが望ましい。
このような機上現像に適した平版印刷原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。
従来のPS版では、このような要求を満足することは、実質的に不可能であった。
しかし、熱可塑性疎水性重合体微粒子を合体(融着)させて形成する画像は、強度が不充分で、印刷版としての耐刷性に問題がある。
マイクロカプセルのシェルが付加重合性官能基を有していると、シェルも画像形成反応に関与させることができる(例えば、特許文献2参照)。また、マイクロカプセルの内包物を支持体表面と相互作用させることにより画像を形成することもできる(例えば、特許文献7参照)。
本発明の目的は、耐刷性が非常に高い平版印刷版を製版できる平版印刷原版を提供することである。
(3)シェルのポリマーが、アルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である(1)に記載の平版印刷原版。
(4)多価イソシアナートが、ポリオールとジイソシアナートとの付加物である(3)に記載の平版印刷原版。
(5)ジイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートである(4)に記載の平版印刷原版。
(6)重合性化合物がビニルエーテル基またはエポキシ基を有し、画像形成層がさらに感熱性酸前駆体を含む(1)に記載の平版印刷原版。
(7)重合性化合物がエチレン性不飽和基を有し、画像形成層がさらに熱重合開始剤を含む(1)に記載の平版印刷原版。
(8)画像形成層または任意に設けられる層が、光熱変換剤を含む(1)に記載の平版印刷原版。
(9)親水性支持体がアルミニウム板からなる(1)に記載の平版印刷原版。
(11)カチオン性基がオニウム基である(10)に記載の平版印刷原版。
(12)オニウム基がアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基およびヨードニウム基からなる群より選ばれるである(11)に記載の平版印刷原版。
(13)シェルのポリマーが、カチオン性基を有するアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である(13)に記載の平版印刷原版。
(14)親水性支持体が、シリケート処理された陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板からなる(10)に記載の平版印刷原版。
(16)錯体を形成する官能基が、中間に一個の炭素原子が介在している二個のカルボニル基を含む(15)に記載の平版印刷原版。
(17)錯体を形成する官能基が、非共有電子対を有する窒素原子を含む(15)に記載の平版印刷原版。
(18)シェルのポリマーが、アルミニウムと錯体を形成できる官能基を有するアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である(15)に記載の平版印刷原版。
(20)ラクトン環が5員環または6員環である(19)に記載の平版印刷原版。
(21)シェルのポリマーが、ラクトン環を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である(19)に記載の平版印刷原版。
(31)画像形成層並びに親水性支持体からなり、画像形成層中に重合性化合物を含むマイクロカプセルが分散しており、マイクロカプセルの外部の画像形成層中に親水性化合物を含み、マイクロカプセルのシェルが親水性支持体表面に対して付着性のポリマーからなる平版印刷原版を画像状に加熱して、重合性化合物を反応させると共に、加熱した領域のマイクロカプセルを破壊し、シェルのポリマーを親水性支持体表面に付着させる工程;そして、加熱していない領域の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域として有する平版印刷版を製版する工程からなる平版印刷版の製版方法。
本発明の第1の態様では、シェルのポリマーのカチオン性基と、親水性支持体の親水性表面のアニオン性基とがイオン結合することにより、シェルのポリマーが親水性支持体表面に付着する。
本発明の第2の態様では、シェルのポリマーの官能基と、アルミニウム支持体とが配位結合することにより、シェルのポリマーが親水性支持体表面に付着する。
本発明の第3の態様では、シェルのポリマーのラクトン環と、親水性支持体の親水性表面とが化学的に結合することにより、シェルのポリマーが親水性支持体表面に付着する。
(32)画像形成層並びに親水性支持体からなり、画像形成層中に重合性化合物を含むマイクロカプセルが分散しており、マイクロカプセルの外部の画像形成層中に親水性化合物を含み、マイクロカプセルのシェルが親水性支持体表面に対して付着性のポリマーからなる平版印刷原版を画像状に加熱して、重合性化合物を反応させると共に、加熱した領域のマイクロカプセルを破壊し、シェルのポリマーを親水性支持体表面に付着させる工程;平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより加熱していない領域の画像形成層を除去し、これにより露出した親水性支持体表面を親水性領域、残存する画像形成層表面を疎水性領域として有する平版印刷版を製版する工程;そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、製版された平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
画像形成前の平版印刷原版では、シェルポリマーと親水性支持体の親水性表面とは親水性化合物によって隔離されている。平版印刷原版を画像状に加熱すると、加熱領域においてマイクロカプセルが破壊され、シェルポリマーと親水性支持体の親水性表面とが接触し、シェルポリマーが親水性支持体表面に付着する。従って、本発明では、重合性化合物を含むコアに加えて、シェルポリマーも画像形成反応に関与するため、加熱領域が強固な疎水性領域となる。
シェルポリマーが親水性支持体の親水性表面に付着する反応は、従来技術で提案されている重合反応とは異なり、空気中の酸素によって反応が阻害されることもない。
以上の結果、本発明の平版印刷原版を用いると、耐刷性が非常に高い平版印刷版を製版することができる。
本願発明の平版印刷原版は親水性支持体並びに画像形成層からなり、画像形成層はマイクロカプセルを含み、マイクロカプセルはコアとシェルからなり、そして、シェルが親水性支持体表面に対して付着性のポリマーからなる。
ポリマーが親水性支持体表面に対して付着性を有するか否かは、下記の実験により決定することができる。
最初に、試験すべきポリマーを親水性支持体上に塗布する。ポリマーの塗布層の上に、透明な感圧テープ(PETテープ)を貼り付ける。荷重をかけながらテープを薄利する。ポリマーが親水性支持体表面から剥離した時の荷重を剥離強度として測定する。剥離強度が5g以上である場合、ポリマーは親水性支持体表面に対して付着性を有すると判定する。剥離強度が5g未満である場合は、付着性がないと判断する。
図1は、第1の態様の平版印刷原版の構成を示す断面模式図である。
図1に示す平版印刷原版は、親水性支持体(1)および画像形成層(2)を有する。
図1に示す親水性支持体(1)は、アルミニウム板(11)上に陽極酸化皮膜(12)を有する。陽極酸化皮膜(12)は、シリケート処理された親水性表面(13)を有する。親水性表面(13)は、シリケート処理によりアニオン性基(−O−)を有する。
画像形成層(2)では、マイクロカプセル(21)が親水性バインダー(22)中に分散している。マイクロカプセル(21)は、コア(21c)とシェル(21s)とからなる。マイクロカプセル(21)のコア/シェル構造において、コア(21c)は熱反応性化合物を含み、シェル(21s)はポリマーからなる。図1に示す平版印刷原版では、コア(21c)は、さらに光熱変換剤(23)を含む。第1の態様では、親水性バインダー(22)がノニオン性親水性基(−OH)を有し、シェル(21s)のポリマーがカチオン性基(−N+R3)を有する。
アンモニウム基は下記式(I)、ホスホニウム基は下記式(II)、アルソニウム基は下記式(III)、スチボニウム基は下記式(IV)、オキソニウム基は下記式(V)、スルホニウム基は下記式(VI)、セレノニウム基は下記式(VII)、スタンノニウム基は下記式(VIII)、ヨードニウム基は下記式(IX)で定義される。
ホスホニウム基: (II)−P+R3
アルソニウム基: (III)−As+R3
スチボニウム基: (IV)−Sb+R3
オキソニウム基: (V)−O+R2
スルホニウム基: (VI)−S+R2
セレノニウム基: (VII)−Se+R2
スタンノニウム基:(VIII)−Sn+R2
ヨードニウム基: (IX)−I+R
各式において、Rは、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基である。一つのオニウム基に含まれる複数のRは、異なっていてもよい。
脂肪族基は置換基を有していてもよい。
芳香族基は置換基を有していてもよい。
芳香族基の置換基の例は、脂肪族基の置換基の例に加えて、脂肪族基を含む。
複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、芳香族基の置換基の例と同様である。
ポリウレタンはウレタン結合(−NH−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリウレアはウレア結合(−NH−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリエステルはエステル結合(−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリアミドはアミド結合(−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、コポリマーは二種類以上の結合を主鎖に含むポリマーである。
シェルポリマーの合成に用いるカチオン性基を含む化合物は、下記式(X)で定義されることが好ましい。
式(X)において、L1は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至100の整数であり;Ctは、カチオン性基であり;そして、Zは、求核性基である。
L1は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO2−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であることが好ましく、1乃至20の整数であることがより好ましく、1乃至10の整数であることがさらに好ましく、1乃至5の整数であることが最も好ましい。
Zは、OH、SHまたはNH2であることが好ましく、OHまたはNH2であることがさらに好ましく、OHであることが最も好ましい。
(XI)L2Onm(OH)n
式(XI)において、L2は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であり;そして、Onは、オニウム基である。
カチオン性基を含む化合物と他のポリオールとを併用して、多価イソシアナートとの付加物を形成することもできる。カチオン性基を含む化合物と多価イソシアナートとの付加物および他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物を併用することもできる。また、他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物とカチオン性基を含む化合物とを反応させて、カチオン性基を含む付加物を合成(付加物を変性)してもよい。
カチオン性基を含む化合物と併用するポリオールは、下記式(XII)で定義される三官能以上のポリオールであることが好ましい。
(XII)L3(−OH)n
式(XII)において、L3はn価の連結基であり、nは3以上の整数である。
脂肪族基、芳香族基および複素環基の定義および例は、前述した通りである。
(XIII)OCN−L4−NCO
式(XIII)において、L4は、二価の連結基である。L4は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の基であることが好ましい。アルキレン基とアリーレン基との組み合わせからなる二価の連結基が特に好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、オキソ(=O)、チオ(=S)、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
置換アリーレン基および置換アリール基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
二種類以上のジイソシアナートを併用してもよい。
付加物の合成反応におけるポリオール/多価イソシアナートの質量比は、1/100乃至80/100であることが好ましく、5/100乃至50/100であることがさらに好ましい。
ポリオールと多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第1錫およびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
図4は、第2の態様の平版印刷原版の構成を示す断面模式図である。
図4に示す平版印刷原版は、アルミニウム支持体(101)および画像形成層(102)を有する。
図4に示す画像形成層(102)では、マイクロカプセル(121)が親水性バインダー(122)中に分散している。マイクロカプセル(121)は、コア(121c)とシェル(121s)とからなる。マイクロカプセル(121)のコア/シェル構造において、コア(121c)は熱反応性化合物を含み、シェル(121s)はポリマーからなる。図4に示す平版印刷原版では、コア(121c)は、さらに光熱変換剤(123)を含む。第2の態様では、親水性バインダー(122)が親水性基(−OH)を有し、シェル(121s)のポリマーがアルミニウムと錯体を形成できる官能基(−CO−CH2−CO−R)を有する。
シェル(121s)の官能基(−CO−CH2−CO−R)とアルミニウム支持体(101)とは、実質的に親水性バインダー(122)によって隔離されている。そのため、製版前の段階では、シェルポリマーの官能基と支持体のアルミニウムとは、ほとんど錯体を形成しない。
アルミニウムと錯体を形成できる機能に関しては、形成されるアルミニウム錯体の25℃におけるアルミニウム錯体安定度定数の常用対数値が、3以上となることが好ましく、5以上となることがさらに好ましく、8以上となることが最も好ましい。
アルミニウム錯体安定度定数については、各種文献、例えば、グレゴリー・H・ロビンソン(Gregory H. Robinson )編「Coordination Chemistry of Aluminum」(米国)ブイシーエイチ・パブリッシャーズ・インク(VCH Publishers,Inc)1993年、89〜103頁に記載がある。
アルミニウムと錯体を形成する官能基は、中間に一個の炭素原子が介在している二個のカルボニル基、または非共有電子対を有する窒素原子を含むことが好ましい。
中間に一個の炭素原子が介在している二個のカルボニル基を含む官能基は、下記式(XIV)で表されることが好ましい。
非共有電子対を有する窒素原子は、芳香族性複素環に含まれていることが好ましい。芳香族性複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。非共有電子対を有する窒素原子を含む芳香族性複素環(単環)の例には、ピロール環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環およびトリアジン環が含まれる。
芳香族性複素環に、芳香族環、他の複素環あるいは脂肪族環が縮合してもよい。縮合環の例には、インドール環、カルバゾール環、アザインドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズイソオキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、フェナントロリン環およびプテリジン環が含まれる。
非共有電子対を有する窒素原子を含む官能基は、上記芳香族性複素環およびその縮合環の炭素原子に結合している水素原子を一個除いた原子団に相当する一価の基であることが好ましい。
シェルポリマーの合成に用いるアルミニウムと錯体を形成する官能基を含む化合物は、下記式(XV)で定義されることが好ましい。
式(XV)において、L1は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至100の整数であり;Fuは、アルミニウムと錯体を形成する官能基であり;そして、Zは、求核性基である。
L1は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO2−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であることが好ましく、1乃至20の整数であることがより好ましく、1乃至10の整数であることがさらに好ましく、1乃至5の整数であることが最も好ましい。
Zは、OH、SHまたはNH2であることが好ましく、OHまたはNH2であることがさらに好ましく、OHであることが最も好ましい。
(XVI)L2Fum(OH)n
式(XVI)において、L2は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であり;そして、Fuは、中間に一個の炭素原子が介在している二個のカルボニル基を含む一価の基、または非共有電子対を有する窒素原子を含む一価の基である。
アルミニウムと錯体を形成する官能基を含む化合物と他のポリオールとを併用して、多価イソシアナートとの付加物を形成することもできる。アルミニウムと錯体を形成する官能基を含む化合物と多価イソシアナートとの付加物および他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物を併用することもできる。また、他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物とアルミニウムと錯体を形成する官能基を含む化合物とを反応させて、アルミニウムと錯体を形成する官能基を含む付加物を合成(付加物を変性)してもよい。
アルミニウムと錯体を形成する官能基を含む化合物と併用するポリオールは、三官能以上のポリオールであることが好ましく、第1の態様で説明した下記式(XII)で定義されるポリオールであることがさらに好ましい。
付加物の合成反応におけるポリオール/多価イソシアナートの質量比は、1/100乃至80/100であることが好ましく、5/100乃至50/100であることがさらに好ましい。
ポリオールと多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第1錫、ジブチル錫ジラウリレートおよびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
第3の態様では、シェルのポリマーが、ラクトン環を含む。ラクトン環は、エステル(−CO−O−)に相当する原子団を含む複素環(環状エステル)である。エステル(−CO−O−)以外の環状部については、特に制限はない。エステル以外の環状部に、不飽和結合、縮合環(脂肪族環、芳香族環、複素環)、置換基(例、脂肪族基、芳香族基、複素環基)、あるいはヘテロ原子(例、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)が存在していてもよい。
ラクトン環は、5員環(γ−ラクトン)または6員環(δ−ラクトン)であることが好ましい。
ポリウレタンはウレタン結合(−NH−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリウレアはウレア結合(−NH−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリエステルはエステル結合(−CO−O−)を主鎖に含むポリマーであり、ポリアミドはアミド結合(−CO−NH−)を主鎖に含むポリマーであり、コポリマーは二種類以上の結合を主鎖に含むポリマーである。
シェルポリマーの合成に用いるラクトン環を含む化合物は、下記式(XVII)で定義されることが好ましい。
(XVII)L1LcmZn
式(XVII)において、L1は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至100の整数であり;Lcは、ラクトン環からなる一価の基であり;そして、Zは、求核性基である。
L1は、二価以上の脂肪族基、二価以上の芳香族基、二価以上の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−N<、−CO−、−SO−、−SO2−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。
mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であることが好ましく、1乃至20の整数であることがより好ましく、1乃至10の整数であることがさらに好ましく、1乃至5の整数であることが最も好ましい。
Lcは、γ−ラクトン環またはδ−ラクトン環からなる一価の基であることが好ましい。
Zは、OH、SHまたはNH2であることが好ましく、OHまたはNH2であることがさらに好ましく、OHであることが最も好ましい。
(XVIII)L2Lcm(OH)n
式(XVIII)において、L2は、m+n価の連結基であり;mおよびnは、それぞれ独立に、1乃至50の整数であり;そして、Lcは、ラクトン環からなる一価の基である。
以下にラクトン環を含む化合物の例を示す。
ラクトン環を含む化合物と他のポリオールとを併用して、多価イソシアナートとの付加物を形成することもできる。ラクトン環を含む化合物と多価イソシアナートとの付加物および他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物を併用することもできる。また、他のポリオールと多価イソシアナートとの付加物とラクトン環を含む化合物とを反応させて、ラクトン環を含む付加物を合成(付加物を変性)してもよい。
ラクトン環を含む化合物と併用するポリオールは、三官能以上のポリオールであることが好ましく、三官能以上のポリオールであることが好ましく、第1の態様で説明した下記式(XII)で定義されるポリオールであることがさらに好ましい。
付加物の合成反応におけるポリオール/多価イソシアナートの質量比は、1/100乃至80/100であることが好ましく、5/100乃至50/100であることがさらに好ましい。
ポリオールと多価イソシアナートとは、有機溶媒中で加熱することにより反応させることができる。触媒を使用しない場合、加熱温度は50乃至100℃が好ましい。触媒を使用する場合は、比較的低い温度(40乃至70℃)でも反応が進行する。触媒の例には、オクチル酸第1錫およびジブチル錫ジアセテートが含まれる。
有機溶媒は、活性水素を含まない液体である(すなわち、アルコール、フェノールやアミンではない)ことが好ましい。有機溶媒の例には、エステル(例、酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素(例、クロロホルム)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、ケトン(例、アセトン)、ニトリル(例、アセトニトリル)および炭化水素(例、トルエン)が含まれる。
マイクロカプセルのコアは、重合性化合物からなる。重合性化合物は、ポリマー(重合性基を架橋性官能基として有する架橋性ポリマー)であってもよい。
重合性化合物は、二個以上の重合性官能基を有することが好ましい。
重合性化合物の重合性官能基は、加熱することにより重合反応する。また、重合反応を促進する化合物(例えば、酸)の感熱性前駆体と、重合性化合物(例えば、ビニルエーテル化合物や環状エーテル化合物)とを併用してもよい。さらに、熱重合開始剤(ラジカル前駆体)と、重合性化合物(エチレン性不飽和重合性化合物)とを併用してもよい。
感熱性酸前駆体と、ビニルエーテルまたは環状エーテルとの組み合わせについては、特開2001−277740号、同2002−46361号および同2002−29162号の各公報に記載がある。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)とエチレン性不飽和重合性化合物との組み合わせについては、特開2002−137562号公報に記載がある。
ビニルエーテル化合物も、複数のビニルエーテル基を有することが好ましい。ビニルエーテル化合物は、下記式(XIX)で表されることが好ましい。
mが2の場合、L5は、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基、二価の複素環基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO−、−SO2−およびそれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。
アルキレン基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
置換アルキレン基および置換アルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
アリーレン基は、フェニレンであることが好ましく、p−フェニレンであることが最も好ましい。
二価の複素環基は、置換基を有していてもよい。
置換アリーレン基、置換アリール基および置換複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
三価以上の脂肪族基は、環状構造または分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、1乃至15であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることが最も好ましい。
脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
芳香族基は、ベンゼン環残基であることが好ましい。芳香族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例には、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基およびアルコキシ基が含まれる。
(XX)L5(−CR5=CR6R7)m
式(XX)において、L5はm価の連結基であり、R5、R6およびR7は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基であり、そして、mは2以上の整数である。
L5、R5、R6およびR7の定義は、式(XIX)と同様である。
重合性化合物が、エチレン性不飽和基のようなラジカル重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに熱重合開始剤を含むことが好ましい。
熱重合開始剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進させる化合物である。熱重合開始剤の例には、オニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ化合物、アジド化合物、キノンジアジド化合物およびメタロセン化合物が含まれる。オニウム塩(例、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩)が好ましく、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩およびスルホニウム塩が特に好ましい。
二種類以上の熱重合開始剤を併用してもよい。
熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)については、特開2002−137562号公報に記載がある。
熱重合開始剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.1乃至50質量%が好ましく、0.5乃至30質量%がさらに好ましく、1乃至20質量%が最も好ましい。
熱重合開始剤は、マイクロカプセルに添加することができる。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加する場合は、熱重合性開始剤は水不溶性であることが好ましい。熱重合開始剤をマイクロカプセルに添加しない場合は、熱重合性開始剤は水溶性であることが好ましい。
重合性化合物がビニルオキシ基またはエポキシ基のようなカチオン重合性基を有する場合、画像形成層は、さらに感熱性酸発生剤を含むことが好ましい。
感熱性酸発生剤は、加熱すると酸を発生する化合物からなる。発生した酸は、ビニルオキシ基またはエポキシ基の重合反応を開始もしくは促進する。
感熱性酸発生剤は、オニウム塩であることが好ましい。
二種類以上の感熱性酸発生剤を併用してもよい。
感熱性酸発生剤の添加量は、画像形成層全固形分の0.01乃至20質量%が好ましく、0.1乃至10質量%がさらに好ましい。
[疎水性ポリマー]
疎水性ポリマーの主鎖は、炭化水素(ポリオレフィン)、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせから選ばれることが好ましい。炭化水素またはポリウレタンを含む主鎖が特に好ましい。
主鎖の複数の置換基が結合して、脂肪族環または複素環を形成してもよい。形成される環は、主鎖とスピロ結合の関係になっていてもよい。形成される環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、上記主鎖の置換基に加えて、オキソ(=O)が含まれる。
重合性化合物とは別に疎水性ポリマーを用いる場合、疎水性ポリマーは、画像形成層に5乃至90質量%含まれていることが好ましく、30乃至80質量%含まれていることがさらに好ましい。
マイクロカプセルは、公知のコアセルベーション法(米国特許第2800457号、同2800458号の各明細書記載)、界面重合法(英国特許第990443号、米国特許第3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報記載)、ポリマー析出法(米国特許第3418250号、同3660304号の各明細書記載)、イソシアナート−ポリオール壁形成法(米国特許第3796669号明細書記載)、イソシアナート壁形成法(米国特許第3914511号明細書記載)、尿素−ホルムアルデヒド壁もしくは尿素−ホルムアルデヒド−レゾルシノール壁形成法(米国特許第4001140号、同4087376号、同4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド壁もしくはヒドロキシセルロース壁形成法(米国特許第4025445号明細書記載)、モノマー重合によるin situ 法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各明細書記載)、スプレードライング法(英国特許第930422号、米国特許第3111407号の各明細書記載)、あるいは電解分散冷却法(英国特許第952807号、同967074号の各明細書記載)により製造できる。
二種類以上のマイクロカプセルを併用してもよい。
マイクロカプセルの画像形成層への添加量は、固形分換算で、10乃至95質量%であることが好ましく、15乃至90質量%であることがさらに好ましい。
親水性化合物は、マイクロカプセルのシェルポリマーと親水性支持体の親水性表面とを隔離する目的で用いる。
親水性化合物として、親水性ポリマーを用いることができる。親水性ポリマーは、マイクロカプセルのバインダーとしても機能することができる。
親水性ポリマーの親水性基は、ノニオン性基であることが好ましく、ヒドロキシルまたはポリエーテルがさらに好ましく、ヒドロキシルが最も好ましい。ヒドロキシルは、フェノールよりもアルコールの方が好ましい。親水性ポリマーは、ノニオン性親水性基に加えて、他の親水性基(カチオン性基、アニオン性基)を有していてもよい。
親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。
天然または半合成ポリマーとしては、多糖類(例、アラビアゴム、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、そのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム)またはタンパク質(例、カゼイン、ゼラチン)を用いることができる。
ポリエーテルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが含まれる。
二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
低分子量の親水性化合物は、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)が特に好ましい。
画像形成層中に親水性化合物は、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
光熱変換剤は、光を吸収し、光エネルギーを熱エネルギーに変換して、発熱する機能を有する物質である。
光熱変換剤は、マイクロカプセルの内部に存在させることができる。光熱変換剤をマイクロカプセルの外部(親水性バインダー中)に添加してもよい。
光熱変換剤が吸収する光の波長(最大吸収波長)は、700nm以上(赤外光)であることが特に好ましい。赤外光を吸収できる顔料、染料または金属微粒子を、光熱変換剤として好ましく用いることができる。
特に好ましい赤外吸収顔料は、カーボンブラックである。
赤外吸収顔料をマイクロカプセルの内部に添加する場合は、顔料に疎水化(親油化)処理を行うことができる。疎水化処理としては、親油性樹脂を顔料表面にコートする方法がある。
赤外吸収顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合は、顔料に親水化処理を行うことができる。親水化処理としては、親水性樹脂を顔料表面にコートする方法、界面活性剤を顔料表面に付着させる方法、あるいは、反応性物質(例、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアナート化合物)を顔料表面に結合させる方法を採用できる。
顔料の粒径は、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.01乃至0.5μmであることがさらに好ましい。
顔料を親水性ポリマー中に分散させる場合、インク製造やトナー製造に用いられる公知の分散技術が適用できる。
好ましい赤外吸収染料は、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料(特開昭58−112793号、同58−224793号、同59−48187号、同59−73996号、同60−52940号、同60−63744号の各公報記載)、アントラキノン染料、フタロシアニン染料(特開平11−235883号公報記載)、スクアリリウム染料(特開昭58−112792号公報記載)、ピリリウム染料(米国特許第3881924号同4283475号の各明細書、特開昭57−142645号、同58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、特公平5−13514号、同5−19702号の各公報記載)、カルボニウム染料、キノンイミン染料およびメチン染料(特開昭58−173696号、同58−181690号、同58−194595号の各公報記載)である。
市販の赤外吸収染料(例えば、エポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125、エポリン社製)を用いてもよい。
メチン染料がさらに好ましく、シアニン染料(英国特許第434875号、米国特許第4973572号の各明細書、特開昭58−125246号、同59−84356号、同59−216146号、同60−78787号の各公報記載)が最も好ましい。シアニン染料は、下記式で定義される。
Bo−Lo=Bs
上記式において、Bsは、塩基性核であり;Boは、塩基性核のオニウム体であり;そして、Loは、奇数個のメチンからなるメチン鎖である。
赤外吸収染料の場合、Loは、7個のメチンからなるメチン鎖であることが好ましい。
一方、赤外吸収染料をマイクロカプセル内に添加する場合は、比較的疎水性の染料を用いることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属は、光照射によって熱融着することが好ましい。具体的には、融点が1000℃以下であることが好ましい。
金属微粒子を構成する金属としては、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbおよびそれらの合金が好ましく、Re、Sb、Te、Ag、Au、Cu、Ge、PbおよびSnがより好ましく、Ag、Au、Cu、Sb、GeおよびPbがさらに好ましく、Ag、AuおよびCuが最も好ましい。
金属微粒子は、表面を親水性化処理することによって、親水性ポリマー中に分散することが好ましい。表面親水性化処理としては、親水性物質(例、界面活性剤)による表面処理、親水性物質との表面化学反応、あるいは親水性ポリマー被膜の形成のような手段を採用できる。保護コロイド性の親水性高分子皮膜を設けるなどの方法を用いることができる。親水性物質との表面化学反応が好ましく、表面シリケート処理が最も好ましい。鉄微粒子の表面シリケート処理では、70℃のケイ酸ナトリウム(3%)水溶液に鉄微粒子を30秒浸漬する方法によって表面を充分に親水性化することができる。他の金属微粒子も同様の方法で表面シリケート処理を行うことができる。
金属微粒子に代えて、金属酸化物微粒子または金属硫化物微粒子を用いることもできる。
微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、0.003乃至5μmであることがさらに好ましく、0.01乃至3μmであることが最も好ましい。
光熱変換剤の画像形成層への添加量は、5乃至50質量%であることが好ましく、7乃至40質量%であることがさらに好ましく、10乃至30質量%であることが最も好ましい。
画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。
着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
無機微粒子の平均粒径は、5nm乃至10μmが好ましく、10nm乃至1μmがさらに好ましい。
無機微粒子は、画像形成層に1.0乃至70質量%含まれることが好ましく、5.0乃至50質量%含まれることがさらに好ましい。
界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
可塑剤の画像形成層への添加量は、0.1乃至50質量%であることが好ましく、1乃至30質量%であることがさらに好ましい。
画像形成層は、マイクロカプセルを含む各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。塗布液に使用する液状媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。
塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2であることが好ましい。なお、画像形成層を配向膜の上に設けてもよい。
親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2であることがさらに好ましい。
水溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、0.1乃至30質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。25℃における水溶液のpHは、10乃至13.5であることが好ましい。水溶液の温度は、5乃至80℃が好ましく、10〜70℃がさらに好ましく、15乃至50℃がさらに好ましい。処理時間は、0.5乃至120秒間が好ましい。陽極酸化被膜と水溶液との接触方法は、浸漬またはスプレーによる吹き付けが好ましい。
親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。
水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリンプルラン)が含まれる。
水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65質量%以上であることが好ましい。
二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。
オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2であることが好ましい。
平版印刷原版は、画像状に加熱して画像を形成する。直接的には、熱記録ヘッドによって、平版印刷原版を画像状に加熱できる。その場合は、光熱変換剤は不要である。
ただし、熱記録ヘッドは画像の解像度が一般に低いため、光熱変換剤を用いて画像露光による光エネルギーを熱エネルギーに変換することが望ましい。一般に、画像露光に用いる露光装置の方が、熱記録ヘッドよりも高解像度である。
露光方法には、アナログデータである原稿(オリジナル)を介しての露光と、オリジナルのデータ(通常はデジタルデータ)に対応させた走査露光とがある。
オリジナルを介しての露光では、光源としてキセノン放電灯または赤外線ランプが用いられる。キセノン放電灯のような高出力の光源を使用すれば、短時間のフラッシュ露光も可能である。
光熱変換剤を含む画像形成層にレーザーを走査露光すると、光熱変換剤によりレーザーの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。そして、平版印刷原版の加熱部分(画像部)において、重合性化合物が反応して疎水性領域が形成される。同時に、加熱した領域のマイクロカプセルが破壊され、親水性化合物により隔離されていたシェルポリマーと親水性支持体表面が接触することにより結合が生じる。その結果、加熱した領域の画像形成層が、強固に親水性支持体表面に付着する。
図2に示すように、親水性支持体(1)および画像形成層(2)を有する平版印刷原版に、画像状に光(L)を照射すると、光熱変換剤により光エネルギーが熱エネルギーに変換され、加熱した領域のマイクロカプセルが破壊され、熱反応性化合物が反応して疎水性領域(2a)が形成される。疎水性領域(2a)では、シェルポリマーのカチオン性基(−N+R3)と親水性支持体表面のアニオン性基(−O−)が接触することによりイオン結合が生じる。その結果、疎水性領域(2a)が、強固に親水性支持体表面に付着する。
これに対して、露光されない領域(2b)には変化はない。
図5に示すように、アルミニウム支持体(101)および画像形成層(102)を有する平版印刷原版に、画像状に光(L)を照射すると、光熱変換剤により光エネルギーが熱エネルギーに変換され、加熱した領域のマイクロカプセルが破壊され、熱反応性化合物が反応して疎水性領域(102a)が形成される。疎水性領域(102a)では、シェルポリマーの官能基(−CO−CH2−CO−R)と支持体のアルミニウムとが接触することにより錯体が形成される。その結果、疎水性領域(102a)が、強固にアルミニウム支持体表面に付着する。
これに対して、露光されない領域(102b)には変化はない。
画像状に加熱した平版印刷原版は、現像することにより、平版印刷版を製版できる。具体的には、水または水性溶媒により非加熱部分(非画像部を除去することができる。ただし、非画像部を除去する処理(現像処理)を実施しなくても、画像状に加熱した平版印刷原版を直ちに印刷機に装着し、インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけでも、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で、印刷機を稼動させると、湿し水、インク、または擦りにより非加熱部分(非画像部)の画像形成層を除去することができる。
また、製版した印刷版をさらに全面加熱して、画像部に残存する未反応の重合性化合物を反応させ、印刷版の強度(耐刷性)をさらに改善することもできる。
図3に示すように、残存する画像形成層(2a)は疎水性領域として機能して油性インク(3)が付着する。
一方、露出した親水性支持体(1)の表面は親水性領域として機能して、湿し水(4)が付着する。
図6に示すように、残存する画像形成層(102a)は疎水性領域として機能して油性インク(103)が付着する。
一方、露出したアルミニウム支持体(101)の表面は親水性領域として機能して、湿し水(104)が付着する。
(アルミニウム支持体の作製)
99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe 0.30質量%、Si 0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu0.013質量%を含むJIS−A−1050合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理では、溶湯中の不要なガス(例えば水素)を除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃にて60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ソーダ水溶液で50℃にて30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液で50℃にて30秒間中和して、スマット除去処理を行った。
この後、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は3号珪酸ソーダ1.5質量%水溶液を70℃に保ちアルミウェブの接触時間が15秒となるよう通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2であった。以上のように作製した支持体の中心線表面粗さRaは、0.25μmであった。
2−メトキシエタノール220gに、N,N−ジメチル−N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N−(3−スルホプロピル)アンモニウム47.0g、シクロヘキシルメタクリレート42.4gおよび2−メルカプトエタノール2.8gを溶解した。溶液を窒素雰囲気下で70℃に昇温し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)640mgを加えて6時間反応させた。反応終了後、水2kgに投入し、析出物を濾取、乾燥することにより、末端にヒドロキシル基を有するアンモニウム基含有ポリマーからなるカチオン性基とヒドロキシル基とを有する高分子化合物75.3gを得た。数平均分子量(GPCによるポリスチレン換算)は、2500であった。
(アンモニウム基を有するイソシアナート付加物の合成)
酢酸エチル125gに、得られたカチオン性基とヒドロキシル基とを有する高分子化合物75gと市販のイソシアナート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)100gとを加え、水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)160mgを添加した後、1時間攪拌した。次いで50℃で3時間撹拌を行なった。このようにアンモニウム基を含有するイソシアネート付加物の溶液(50質量%)を得た。
酢酸エチル35gに、得られたアンモニウム基を含有するイソシアネート付加物20g、市販のイソシアナートオリゴマー(MR200、日本ポリウレタン工業(株)製)5g、下記のビニルエーテル化合物10g、下記の光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に水50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.5質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.40μmであった。
水100g、マイクロカプセル分散液(マイクロカプセルの固形分換算で5g)および下記の感熱性酸発生剤0.5gを混合して、画像形成層塗布液を調製した。画像形成層塗布液を、作製したアルミニウム支持体の上に塗布し、オーブンを用い80℃で90秒乾燥して、画像形成層を形成した。乾燥後の画像形成層の塗布量は、1.0g/m2であった。このようにして、平版印刷原版を製造した。
作製した平版印刷原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter3244VFS、Creo社製)にて、250mJ/cm2の版面エネルギー、2400dpiの解像度の条件で画像露光した。この時、画像部と非画像部のコントラストは良好であり、焼き出しが確認できた。
次に、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給し、次にインクを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、30枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、2万枚であった。
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル30gに、実施例1で得られたイソシアナート付加物30g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルA−TMMT、新中村化学工業(株)製)10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に、テトラエチレンペンタミンの1質量%水溶液50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.8質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.32μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。なお、この画像形成層では、感熱性酸発生剤は、酸発生剤としてではなく、熱重合開始剤として機能する。
製造した平版印刷原版を用いて、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、25枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、14000枚であった。
(アンモニウム基を有するアルコールの合成)
アセトン200gに、N,N−ジエチルエタノールアミン117gとヨードエタン116gを溶解し、一日静置した。析出した白色固体を濾別し、再度アセトン200gに分散した。この分散液を濾別、乾燥することにより、N,N,N−トリエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヨージド210gを得た。
得られたN,N,N−トリエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヨージド28gを水50gに溶解した水溶液と、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム19gを水50gに溶解した水溶液とを混合し、1時間攪拌した。析出物を濾別、乾燥することにより、N,N,N−トリエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート19gを得た。
酢酸エチル39gに、得られたN,N,N−トリエチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート6gと市販のイソシアナート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)65gとを加え、水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)120mgを添加した後、1時間攪拌した。次いで50℃で3時間撹拌を行なった。このようにして、アンモニウム基を含有するイソシアネート付加物の溶液(50質量%)を得た。
酢酸エチル30gに、得られたアンモニウム基を含有するイソシアネート付加物30g、実施例1で用いたビニルエーテル化合物10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に水50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.5質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.40μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。
(製版、印刷および評価)
製造した平版印刷原版を用いて、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、22枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、12000枚であった。
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル30gに、実施例3で得られたイソシアナート付加物30g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルA−TMMT、新中村化学工業(株)製)10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に、p−フェニレンジアミンの1質量%水溶液50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.6質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.36μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例1と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。なお、この画像形成層では、感熱性酸発生剤は、酸発生剤としてではなく、熱重合開始剤として機能する。
製造した平版印刷原版を用いて、実施例1と同様に、製版、印刷および評価した。その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、23枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、1万枚であった。
(アルミニウムと錯体を形成できるイソシアナート付加物の合成)
酢酸エチル38.0gに、2−ヒドロキシエチルアセトアセテート5.4gと市販のイソシアナート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)65.2gとを加え、水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)120mgを添加した後、1時間攪拌した。次いで50℃で3時間撹拌を行なった。このようにしてアルミニウムと錯体を形成できる官能基(アセトアセチル基)を有するイソシアネート付加物の溶液(50質量%)を得た。
酢酸エチル35gに、得られたアルミニウムと錯体を形成できるイソシアネート付加物20g、市販のイソシアナートオリゴマー(MR200、日本ポリウレタン工業(株)製)5g、実施例1で用いたビニルエーテル化合物10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に水50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.6質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.36μmであった。
水100g、マイクロカプセル分散液(マイクロカプセルの固形分換算で5g)および実施例1で用いた感熱性酸発生剤0.5gを混合して、画像形成層塗布液を調製した。画像形成層塗布液を、実施例1で作製したアルミニウム支持体の上に塗布し、オーブンを用い80℃で90秒乾燥して、画像形成層を形成した。乾燥後の画像形成層の塗布量は、1.0g/m2であった。このようにして、平版印刷原版を製造した。
作製した平版印刷原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したイメージセッター(Trendsetter3244VFS、Creo社製)にて、250mJ/cm2の版面エネルギー、2400dpiの解像度の条件で画像露光した。この時、画像部と非画像部のコントラストは良好であり、焼き出しが確認できた。
次に、現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付け、湿し水を供給し、次にインクを供給し、さらに紙を供給して印刷を行った。
その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、25枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、1万枚であった。
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル30gに、実施例5で得られたアルミニウムと錯体を形成できるイソシアナート付加物30g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルA−TMMT、新中村化学工業(株)製)10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に、テトラエチレンペンタミンの1質量%水溶液50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.5質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.40μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例5と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。なお、この画像形成層では、感熱性酸発生剤は、酸発生剤としてではなく、熱重合開始剤として機能する。
製造した平版印刷原版を用いて、実施例5と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、29枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、9千枚であった。
(アルミニウムと錯体を形成できるイソシアナート付加物の合成)
酢酸エチル37.2gに、4−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン4.6gと市販のイソシアナート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)65.2gとを加え、水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)120mgを添加した後、1時間攪拌した。次いで50℃で3時間撹拌を行なった。このようにしてアルミニウムと錯体を形成できる官能基(ピリジニル基)を有するイソシアネート付加物の溶液(50質量%)を得た。
酢酸エチル30gに、得られたアルミニウムと錯体を形成できるイソシアネート付加物30g、実施例1で用いたビニルエーテル化合物10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に水50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.6質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.29μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例5と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。
(製版、印刷および評価)
製造した平版印刷原版を用いて、実施例5と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、26枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、9千枚であった。
(マイクロカプセル分散液の調製)
酢酸エチル30gに、実施例3で得られたアルミニウムと錯体を形成できるイソシアナート付加物30g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(NKエステルA−TMMT、新中村化学工業(株)製)10g、実施例1で用いた光熱変換剤4gおよびアニオン界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.2gを溶解して油相を得た。
別に、ポリビニルアルコール(PVA205、(株)クラレ製)の4質量%水溶液80gを調製して水相とした。
油相と水相とを混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。乳化物に、p−フェニレンジアミンの1質量%水溶液50gを加え、室温で30分、さらに65℃で3時間攪拌し、マイクロカプセル分散液を調製した。分散液の固形分濃度は20.6質量%、マイクロカプセルの平均粒径は0.36μmであった。
調製したマイクロカプセル分散液を用いた以外は、実施例5と同様に画像形成層を形成し、平版印刷原版を製造した。なお、この画像形成層では、感熱性酸発生剤は、酸発生剤としてではなく、熱重合開始剤として機能する。
製造した平版印刷原版を用いて、実施例5と同様に、製版、印刷および評価した。
その結果、機上現像枚数(良好な印刷物が得られるようになるのに要した紙の枚数)は、24枚であった。一方、耐刷枚数(印刷物がかすれ始めた枚数)は、1万枚であった。
酢酸エチル24.2gに、ラクトン環を有する化合物(1)4.2gと市販のイソシアネート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)40gとを加え、水浴中でオクチル酸第一錫(スタノクト、吉富製薬(株)製)120mgを添加した後、1時間攪拌した。次いで50℃で3時間攪拌を行った。このようにしてラクトン環を有するイソシアネート付加物の50質量%溶液を得た。
酢酸エチル17gに、ラクトン基を有するイソシアネート付加物10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(SR444、日本化薬(株)製)、下記の光熱変換剤0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(ODB、山本化成製)1gおよび界面活性剤(パイオニンA−41C、竹本油脂(株)製)0.1gを溶解して油相とした。
油相および水相を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液(1)の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.3μmであった。
(画像形成層の形成)
実施例1で作製したアルミニウム支持体上に、下記組成の画像形成層塗布液をバー塗布した後、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.8g/m2の画像形成層を形成して平版印刷原版を得た。
────────────────────────────────────────
画像形成層塗布液組成
────────────────────────────────────────
水 100g
マイクロカプセル分散液(固形分換算で) 5g
下熱重合開始剤 0.5g
下記のフッ素系界面活性剤 0.2g
────────────────────────────────────────
得られた平版印刷原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載の露光装置(Trendsetter3244VX 、Creo社製)にて、出力17W、外面ドラム回転数133rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、印刷機(SOR−M、ハイデルベルグ社製)のシリンダーに取り付けた。エッチ液(EU−3、富士写真フイルム(株)製)/水/イソプロピルアルコールの1/89/10(容量比)混合液を湿し水として供給し、さらに墨インク(TRANS−G(N)、大日本インキ化学工業(株)製)を用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を100枚行った。
画像形成層の未露光部の印刷機上での機上現像が完了し、印刷用紙にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を機上現像性として計測した。
結果を第1表に示す。
100枚印刷して非画像部にインキ汚れがない印刷物が得られたことを確認した後、続けて500枚の印刷を行った。合計600枚目の印刷物の細線チャート(10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、60、80、100および200μmの細線を露光したチャート)を25倍のルーペで観察し、途切れることなくインキで再現された細線幅により、細線再現性を評価した。細線再現性における細線幅が細いほど、平版印刷原版の感度が高い。
結果を第1表に示す。
細線再現性の評価において印刷を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像形成層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷用紙におけるインキ濃度が低下した。インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性を評価した。
結果を第1表に示す。
ラクトン環を有する化合物(1)に代えて、ラクトン環を有する化合物(3)、(5)、(6)および(10)をそれぞれ用いた以外は、実施例9と同様に平版印刷原版を作製して評価した。結果は第1表に示す。
(画像記録層の形成)
ラクトン環を有するイソシアネート付加物に代えて、市販のイソシアネート付加物(タケネートD−110N、三井武田ケミカル(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に平版印刷原版を作製して評価した。結果は第1表に示す。
────────────────────────────────────────
平版印刷原版 ラクトン環を有する化合物 機上現像性 細線再現性 耐刷性
────────────────────────────────────────
実施例9 (1) 20枚 18μm 5000枚
実施例10 (3) 20枚 18μm 4000枚
実施例11 (5) 20枚 16μm 6000枚
実施例12 (6) 30枚 16μm 7000枚
実施例13 (10) 25枚 16μm 6000枚
比較例1 なし 20枚 20μm 3000枚
────────────────────────────────────────
11 アルミニウム板
12 陽極酸化皮膜
13 親水性表面
2 画像形成層
2a 露光部
2b 未露光部
21 マイクロカプセル
21c コア
21s シェル
22 親水性バインダー
23 光熱変換剤
3 油性インク
4 湿し水
−O− アニオン性基
−OH ノニオン性親水性基
−N+R3 カチオン性基
L 光
101 アルミニウム支持体
102 画像形成層
102a 露光部
102b 未露光部
121 マイクロカプセル
121c コア
121s シェル
122 親水性バインダー
123 光熱変換剤
103 油性インク
104 湿し水
−CO−CH2−CO−R アルミニウムと錯体を形成する官能基
L 光
Claims (21)
- 画像形成層並びに親水性支持体からなり、画像形成層中に重合性化合物を含むマイクロカプセルが分散しており、マイクロカプセルの外部の画像形成層中に親水性化合物を含む平版印刷原版であって、マイクロカプセルのシェルが親水性支持体表面に対して付着性のポリマーからなることを特徴とする平版印刷原版。
- シェルのポリマーがウレタン結合またはウレア結合を含む主鎖を有する請求項1に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーが、アルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である請求項1に記載の平版印刷原版。
- 多価イソシアナートが、ポリオールとジイソシアナートとの付加物である請求項3に記載の平版印刷原版。
- ジイソシアナートが、キシリレンジイソシアナートである請求項4に記載の平版印刷原版。
- 重合性化合物がビニルエーテル基またはエポキシ基を有し、画像形成層がさらに感熱性酸前駆体を含む請求項1に記載の平版印刷原版。
- 重合性化合物がエチレン性不飽和基を有し、画像形成層がさらに熱重合開始剤を含む請求項1に記載の平版印刷原版。
- 画像形成層または任意に設けられる層が、光熱変換剤を含む請求項1に記載の平版印刷原版。
- 親水性支持体がアルミニウム板からなる請求項1に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーがカチオン性基を有し、マイクロカプセルの外部の親水性化合物がノニオン性親水性基を有し、そして、親水性支持体の親水性表面がアニオン性基を有する請求項1に記載の平版印刷原版。
- カチオン性基がオニウム基である請求項10に記載の平版印刷原版。
- オニウム基がアンモニウム基、ホスホニウム基、スルホニウム基およびヨードニウム基からなる群より選ばれるである請求項11に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーが、カチオン性基を有するアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である請求項10に記載の平版印刷原版。
- 親水性支持体が、シリケート処理された陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板からなる請求項10に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーがアルミニウムと錯体を形成できる官能基を有する請求項9に記載の平版印刷原版。
- 錯体を形成する官能基が、中間に一個の炭素原子が介在している二個のカルボニル基を含む請求項15に記載の平版印刷原版。
- 錯体を形成する官能基が、非共有電子対を有する窒素原子を含む請求項15に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーが、アルミニウムと錯体を形成できる官能基を有するアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である請求項15に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーがラクトン環を含む請求項1に記載の平版印刷原版。
- ラクトン環が5員環または6員環である請求項19に記載の平版印刷原版。
- シェルのポリマーが、ラクトン環を含むアルコール、フェノール、チオールまたはアミンと多価イソシアナートとの反応生成物である請求項19に記載の平版印刷原版。
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