JP4023950B2 - 風味だしの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、風味豊かな風味だしの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に工業スケールにおいて、鰹節などの節類からのだしの抽出は、タンクを用いて抽出するバッチ式で行われている。この方法は、鰹節などの節類と熱水又はアルコール溶液とを混合撹拌し、濾過/圧搾して抽出液を得る方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のバッチ式で得られる抽出液は、鰹節などの燻し臭が非常に強く、また、エキスの固形分濃度も5%以下と低いものであった。そのため高濃度エキスを製造するためには濃縮工程が不可欠であり、この濃縮工程によってエキスの香り成分が失われ、風味が弱くなるという問題があった。また、エキス分の収率も低いという問題があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、香り及び旨味成分の両方に富んだエキスを作業性よく、かつ、高い収率で抽出することができる風味だしの製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の風味だしの製造法は、粗砕した節を、該節の10〜70重量%に相当する水又はアルコール溶液に懸濁してカラムに充填し、20〜85℃で0.5〜1時間静置してから水又はアルコール溶液を通液してエキスを抽出する工程(1)と、さらに蛋白分解酵素液を通液してエキスを抽出する工程(2)を有することを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、最初の工程(1)によって風味と旨味成分に富んだエキスを効率よく抽出することができる。また、このエキスは固形分濃度が10〜30%と高いため、濃縮することなくそのまま風味だしとして用いることができる。また、工程(2)における蛋白分解酵素液の通液は、工程(1)と同じカラムを用いて、カラムに残った抽出残渣にそのまま酵素溶液を通液すればよいので、作業性よく全体としての回収率を上げることができる。そして、工程(1)で得られた抽出液と混合することにより、さらに旨味を増すことができると共に、エキスの収率を高めることができる。
【0007】
【発明の実施形態】
本発明のだしの製造法は、粗砕した節をカラムに充填し、水又はアルコール溶液を通液して抽出する工程(1)と、上記カラムに残った抽出残渣に酵素溶液を通液して抽出する工程(2)からなる。以下、各工程について説明する。
【0008】
・工程(1)
本発明において、だしを抽出する原料として用いられる節類としては、特に制限はないが、例えば、鰹節、宗田鰹節、鯖節、メジ節、これらの製造過程ででる副産物、またはそれらの混合物が挙げられる。また、その大きさは、粗砕後4〜20メッシュのものが好ましく、6〜16メッシュのものがより好ましい。大きさが20メッシュより細かい場合は、抽出する際に節粉がカラム内で膨張し、圧力が上がって抽出が困難となり、4メッシュを超える場合は、カラムに充填される節粉の量が少なくなり、また抽出効率も悪くなるため好ましくない。そして、原料をカラムに効率よく充填するため、原料の10〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%の水又はアルコール溶液に懸濁して充填し、さらに20〜85℃で0.5〜1時間静置保温してから抽出をはじめることにより抽出効率を上げることができる。
【0009】
使用する水又はアルコール溶液の量、すなわち、上記カラムに充填する際に加える水又はアルコール溶液の量と、通液する水又はアルコール溶液の量との合計量は、原料100重量部に対して60〜180重量部であることが好ましく、より好ましくは、60〜120重量部である。上記水の量が上記範囲外であると、香りや味が弱く、燻臭も強くなるため好ましくない。なお、アルコール溶液としては1〜80重量%濃度の水溶液が好ましく使用される。
【0010】
抽出温度は、20〜85℃であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。抽出温度が20℃未満であると、有効成分の溶出が遅くなるため抽出液の固形分濃度が低くなり、85℃を超えると節に含まれる脂質が抽出されてしまい抽出液が濁るため好ましくない。
【0011】
また、通液速度は、1時間にカラム容量の何倍の容量を流すかを示すSpace Velocity(以下、SVという)で表すと、SV=0.1〜2.5h-1が好ましく、SV=0.5〜1.5h-1がより好ましい。通液速度がSV=0.1h-1未満であると、抽出に時間がかかり、SV=2.5h-1を超えると抽出効率が悪く、抽出液の固形分濃度が低くなるため好ましくない。
【0012】
この工程(1)で得られる抽出液(以下、水抽出液という)は、非常に風味がよく、固形分濃度を高くすることができるため、濃縮せずにそのまま調味液等としても用いることができる。
【0013】
・工程(2)
上述した工程(1)の後に、同じカラムにそのまま酵素溶液を通液して、上記抽出残渣からさらに抽出を行い、このエキスを工程(1)のエキスに混合して用いることにより、風味をより向上させると共に、エキスの収率を高めることができる。
【0014】
本発明において使用する酵素は、通常の蛋白質分解に使用される酵素が使用できるが、中性蛋白質分解酵素であることが好ましく、それらを1種又は2種以上を併用してもよい。また、風味を増すためにペプチダーゼなどの酵素を使用してもよい。
【0015】
酵素の使用量は、使用する酵素の力価にもよるが、例えば、蛋白消化力が10,000u/gの酵素の場合、原料の1〜1.5重量%であることが好ましく、1〜1.2重量%であることがより好ましい。なお、ここでいう蛋白消化力は、ミルクカゼインを基質として、pH7.0、温度37.0±0.5℃の条件で60分間に反応濾液1ml中にチロシン100μgに相当するアミノ酸を生成する酵素量を1単位(u)として表したものである。
【0016】
本発明においては、酵素溶液の量は、原料の100〜150重量%が好ましい。また、その濃度は、0.5〜1.2%であることが好ましく、0.5〜0.8%であることがより好ましい。濃度が0.5%未満であると、分解効率が悪く抽出液の固形分濃度が低くなり、また、1.2%を超えると、得られた抽出液が濁るため好ましくない。
【0017】
そして、酵素溶液は、通液速度SV=0.1〜1h-1、より好ましくはSV=0.1〜0.5h-1で8〜18時間通液することが好ましい。通液時間が8時間未満であると抽出効率が悪く、18時間を超えると分解液に濁りが発生するため好ましくない。
【0018】
また、酵素溶液を通液する時の温度は、使用する酵素の最適温度範囲に設定すればよい。
【0019】
そして、収率を上げるために酵素溶液を通液した後にさらに水押しすることが好ましく、必要に応じて濃縮してもよい。
【0020】
この工程(2)で得られる抽出液(以下、分解液という)は、酵素を失活させてから上記水抽出液と混合する。
【0021】
本発明においては、上述した抽出の際にカラムを1本ずつ並列にして抽出してもよく、2本以上直列にして連続抽出してもよいが、2本以上直列にして連続抽出することがより好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
実施例1
本荒節の表面を削って中厚品に加工したもの(小林食品株式会社製)を、家庭用ミキサーで粗砕して10メッシュパス品を調製した。この本荒節の調製品615gを水150mlと混合して、カラム(容量550ml、φ4.0cm×50cm)2本に充填して直列につなぎ、55〜60℃で45分間静置保温した。その後、同温の温水を用いてSV=0.5h-1の通液速度で抽出を行い、水抽出液の固形分濃度(Brix)が4.0%になるまで回収を行った。その時回収した水抽出液量は、500ml(固形分含量17.7%)であった。
【0023】
その後、55〜60℃の0.8%酵素溶液(商品名「プロテアーゼAアマノG」(10,000u/g)、アマノ製)1000mlをSV=0.5h-1の通液速度で通液し、さらに同温度の水を用いて同じ通液速度で水押しを行い、押水の固形分濃度が4%になるまで分解液を回収し、分解液1600ml(固形分含量6.3%)を得た。得られた分解液は、90℃で20分間以上処理して酵素を失活させた。各工程で得られた抽出液全体を混合して風味だしを得た。
【0024】
抽出過程における抽出液の固形分濃度の変化を図1に示す。
図1から分かるように、水抽出液は、固形分濃度が非常に高く、さらに酵素溶液で抽出することにより、固形分の収率を上げることができる。
【0025】
比較例1
実施例1と同様の原料615gに水3075mlを加えて撹拌しながら95℃以上で、30分間微沸騰させた後、濾過/圧搾し、さらにフィルターに通して水抽出液2432ml(固形分含量4.4%)を得た。
【0026】
実施例1で得られた風味だしと、比較例1で得られた風味だしの特性を比較した結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004023950
【0028】
表1から、実施例1の風味だしは、比較例1の風味だしに比べて、燻し臭がなく風味、旨味ともによく、収量が大幅に増大することが分かる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の抽出方法によれば、工程(1)によって、燻し臭や魚の生臭みが少なく、節特有の風味及び旨みに富んだエキスを得ることができる。また、このエキスは、固形分濃度が高いため濃縮工程を行うことなく風味だしとして利用することができる。
【0030】
また、工程(2)によって、カラムに残った抽出残渣に蛋白分解酵素液を通液することにより、エキスの回収率を高めることができる。その場合、工程(1)と同じカラムを用いて、そのままカラムに酵素溶液を通液するだけでよいので、作業性を向上させて製造工程を簡略化することができる。
【0031】
そして、工程(1)で得られたエキスと、工程(2)で得られたエキスとを混合することによって、風味、旨味共に良好な風味だしを収率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の抽出方法による抽出液の固形分濃度の変化を表すグラフである。

Claims (3)

  1. 粗砕した節を、該節の10〜70重量%に相当する水又はアルコール溶液に懸濁してカラムに充填し、20〜85℃で0.5〜1時間静置してから水又はアルコール溶液を通液してエキスを抽出する工程(1)と、さらに蛋白分解酵素液を通液してエキスを抽出する工程(2)を有することを特徴とする風味だしの製造法。
  2. 前記節が、鰹節、鯖節、メジ節、及びそれらの節削り、節生産過程ででる副産物、又はこれらの混合物から選ばれたものである請求項1記載の風味だしの製造法。
  3. 前記工程(1)の抽出温度が、20〜85℃である請求項1又は2記載の風味だしの製造法。
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