JP4023855B2 - 耐熱性を増強したグルコースイソメラーゼを提供する方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
異性化糖製造において利用されうるグルコースイソメラーゼは、本酵素が固定化酵素(菌体とともに固定化される場合を含め)として高い温度で長時間連続して利用されることから、酵素的性質が優れているとともに酵素の熱安定性が高いことが工業上重要であり、一般的に耐熱性酵素が求められている。本発明は工業上有用なグルコースイソメラーゼの耐熱性を改善する方法を提供し、本発明の方法で改良したグルコースイソメラーゼはグルコースからフラクトースへの工業的異性化方法に有用に利用することが出来る。
【0002】
【従来の技術】
上述したごとく異性化糖製造において利用されうるグルコースイソメラーゼは、酵素的性質が優れていることとともに酵素の熱安定性が高いことが工業上重要であり、一般的に耐熱性酵素が選択され用いられている。しかし、さらに安定に長時間連続して利用出来る酵素が望まれることは自明であり、その問題点を改良することは工業上極めて重大な意義を持つ。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
そのためには、さらに耐熱性に優れた酵素を分離、選択することでも可能であるが、本発明者らは蛋白質工学技術を用いて既存の有用な性質を持った酵素をより耐熱性に改変することで、より安定に長期間有効に使用し得るグルコースイソメラーゼを開発する方法を考案した。
【0004】
【課題を解決するための手段】
酵素蛋白質を構成するアミノ酸のうち、ある特定のアミノ酸を他の特定のアミノ酸に変換することにより酵素の性質を改良することが出来る。その一般的な方法として変異によって得た変異酵素の中から、選抜により優良な酵素を取得し、その酵素の変異部位のアミノ酸配列を知る方法が考えられる。さらに蛋白質工学といわれる技術により目的酵素の遺伝子を改変し、計画的に特定の位置のアミノ酸を特定のアミノ酸に変換することにより酵素の性質を改良することが出来る。今日、蛋白質工学技術を応用して実用酵素の性質を改変することが比較的容易に行なわれるようになった。この技術の有用性は、酵素蛋白質を構成するアミノ酸配列に計画的に変更を加えることにより、望ましい方向にのみ酵素の性質を改変して行ける可能性を持つことである。
【0005】
本発明はそれらの技術を工業上有用な酵素であるグルコースイソメラーゼに適用し、放線菌およびその類縁微生物、なかでも相互にアミノ酸の保存性が高いStreptomyces属(ストレプトミセス属)細菌のグルコースイソメラーゼの、次の配列
に示すアミノ酸配列のうち251 番目および 252 番目のアミノ酸(N末端から 2 番目のセリン(S)を 1 番目としている)がリジン(K)およびタイロシン(Y)であるグルコースイソメラーゼのタイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に置換することにより、グルコースイソメラーゼの耐熱性を増強する方法、あるいはその他の方法で作製した変異と本発明を組み合わせて、グルコースイソメラーゼの耐熱性を増強する方法を提供する。
【0006】
【発明の具体的な説明】
グルコースイソメラーゼ遺伝子のクローニング
工業生産に用いられることの出来るグルコースイソメラーゼ生産菌としては、いくつかの微生物が知られているが、その中で放線菌に属するものではStreptomyces(ストレプトミセス)、Ampllariella(アンプラリエーラ)、Actinoplanes(アクチノプラネス)が周知である。それらの中で我々は本発明を特にStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGIに適用した。なぜならば、図2に示すようにStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGIでは本発明を適用し、変換すべきアミノ酸配列が酵素の一次配列上で非常に良く保存されている故である。Streptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子のクローニング方法は、既に知られている一般的な遺伝子クローニング法、例えば、モレキュラー・クローニング、ア・ラボラトリー・マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Molecular Cloning,A Laboratory Mannual,Cold Spring Harbor Laboratory,1989)に記載の方法などが例示される、によって得ることができる。
【0007】
部位特異的変異による遺伝子改変と変異グルコースイソメラーゼの生産
酵素タンパクの特定の位置のアミノ酸配列を変換することにより、酵素の性質を改変することは蛋白質工学の技術を用いて容易に行なうことが出来る。クローニングされた遺伝子に部位特異的な変異を導入する方法は様々な方法が考案されているが、種々の方法を市販キットを用いることで実施出来る。
部位特異的変異を導入したStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子から生産されるGIは、その酵素的性質を試験するため簡便に精製、取得する必要がある。そのためには遺伝子組換え、その他の操作が容易なE.coliで部位特異的変異を導入した遺伝子を発現させることが有効である。しかしながら、Streptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子の発現に必要なプロモーターおよびRNAポリメラーゼ結合配列などはE.coliでは直接機能しないため、部位特異的変異を導入したStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子の構造のうち、遺伝子の発現に必要なプロモーターおよびRNAポリメラーゼ結合配列などはE.coliで効率的に機能するDNA配列と置き換える必要がある。 我々は、そのために公知の発現ベクターpTrc99A(ファルマシアバイオテク)のプロモーターおよびRNAポリメラーゼ結合配合を利用したが、その他にも同様の発現ベクターの利用が可能である。さらに、これらのベクターと部位特異的変異を導入したStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子との連結には、適当な位置に存在する制限酵素サイトを利用することや、合成DNAリンカーを用いる方法、あるいはPCR法によりDNA塩基配列を付加、改変することにより、結合に必要なDNA塩基配列を新規に導入することにより行なうことが出来る。
E.coli用発現ベクターに連結した部位特異的変異を導入したStreptomyces(ストレプトミセス)由来のGI生産遺伝子は、適当なE.coli宿主に形質転換し、その培養菌体から変異GIを回収する。この時使用するE.coli宿主はGI欠損株が望ましく、例えばE.coli HB101などを使用することが出来る。
【0008】
変異GIの耐熱性試験
E.coli宿主により生産された変異GIは適当な条件下に耐熱性を親株GIと比較し、耐熱性の向上した酵素を選択する。この時、酵素使用条件に併せたpH条件、あるいは活性の発現に効果的な金属イオンの添加などが必要になる。Streptomyces(ストレプトミセス)由来のGIの場合pHは中性付近、金属イオンはCo2+あるいはMg2+イオンを添加して行なった。酵素の耐熱性は一定時間加熱後に酵素の残存活性を求め、親酵素と比較し改善の認められたものを選択した結果、請求項に記載の優良変異酵素を見い出し、本発明を完成させた。以下に、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0009】
【実施例】
実施例1
(耐熱性の増強されたS.griseofuscus GIの作製)
(1)Streptomyces GIの構造、遺伝子あるいはアミノ酸配列などについては、これまでにS.violaceoniger(Argos,P., et al., Biochemistry,18,5698(1979))、S.olivochromogenes(Tiraby,G., et al., Proceedings of the American Society for Microbiology Meeting on Genetics and Molecular Biology of Industrial Microoranisms (1988))、S.rubiginosus(Wong,H.C., et al., J. Bacteriology,173,6849(1991))、S.griseofuscus S41(Kikuti,T., et al., Agric.Biol.Chem.,54,2469(1990))などについて報告がある。
我々はS.griseofuscusから遺伝子をクローン化した。当研究所保存のS.griseofuscusの生産するGIを精製し、そのN末端アミノ酸配列を決定したところAgric.Biol.Chem.,54,2469(1990)記載の配列と完全に一致した。そこでAgric.Biol.Chem.,54,2469(1990)記載のDNA配列を参考に合成DNAを作成し、それをプローブとしてS.griseofuscusより斉藤および三浦らの方法(Biochem.Biophys.Acta.,72,619(1963))により調製し、制限酵素BamHI消化した染色体DNAから、ショットグンクローニングした。
コロニーハイブリダイゼーション陽性クローンからプラスミドDNAを調整したところ5.6kbのDNA断片が確認された。常法によりDNA塩基配列を決定したところ、GI構造遺伝子全領域と考えられる配列が見い出された。GIタンパク質開始アミノ酸をコードする開始コドンATGから終始コドンTTGまでの塩基配列を図3に記載した。
【0010】
(2)クローニングしたGI遺伝子のE.coliでの発現
クローニングしたStreptomycesのGI遺伝子は、遺伝子組換え操作を容易とするため、および部位特異的変異の導入により作製した変異遺伝子由来の変異GIを容易に取得するためE.coli発現ベクターに連結してE.coliに導入し、発現させた。E.coli発現ベクターとの連結は、StreptomycesのGI遺伝子の開始コドンATGを含む領域にPCR法を用いて制限酵素NcoIサイトを作製し、E.coli発現ベクターpTrc99AのNcoIサイトの下流に連結した。その結果、S.griseofusus GIの場合、第4図に示すようにGIのN末端アミノ酸が1アミノ酸のみ変化した。同様にしてS.albus GIの場合、図に示すようにN末端アミノ酸が1アミノ酸のみ変化した。
【0011】
(3)遺伝子改変による変異GIの作製
252番アミノ酸タイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)へ変異させるためには図5(1)に示した合成DNAプローブを用いた。このプローブを用いて部位特異的にGI遺伝子の252番アミノ酸タイロシン(Y)をコードする塩基配列TACをフェニルアラニン(F)をコードするTTCに変異させた。変異にはT7-GEN In Vitro Mutagenesis Kit (United States Biochemical社)を用い、方法はそのプロトコールに従った。
【0012】
(4)変異部位の確認
DNA塩基配列の確認はサンガーのダイデオキシ法により行い、アミノ酸配列の確認はリジルエンドペプチダーゼによって部分消化した変異GIから回収したペプチッド断片をアミノ酸シーケンサー(476A パーキンエルマー社)を用いてアミノ酸シーケンスして確認した。
【0013】
(5)変異GIの取得
作製した変異GIは、変異GI遺伝子を導入したキシロースイソメラーゼ欠損E.coli HB101(xyl5)をIPTG添加条件下に培養し、得られた培養菌体を超音波破砕した後、その遠心上清から回収した。遠心上清は60〜70℃で10分間加熱してE.coli由来の非耐熱性蛋白を変性凝集させ、遠心により除いた。この上清液をpH7.5およびpH6.0の条件下でDEAE陰イオンクロマトグラフィーを2回行なうことにより精製、取得した。
【0014】
(6)252Y→F変異GIの耐熱性試験
252Y→F変異GIはCo2+を0.1mM濃度に添加した条件下に90℃で1〜3時間加熱し、加熱後残存活性を測定した。親GI酵素も同様に試験し、無処理の場合との活性の残存率を相対値で表して比較した。その結果Y→F変異GIは酵素の熱変性による酵素活性の半減するまでに要する時間(熱失活の半減期)が2.2倍に延長されていた。その結果は図6にグラフとして示した。
【0015】
実施例2
(耐熱性の増強したS.albus GIの作製)
(1)S.albus GI遺伝子のクローニング
当研究所保存のS.albusより、S.griseofuscus GIの遺伝子の一部(SphI-SphI 2.6kb)を含むDNA断片をプローブとして用いて、GI遺伝子をPstI断片としてクローニングした。コロニーハイブリダイゼーション陽性クローンからS.griseofuscus GIあるいは上述した公表されているGI遺伝子に相同な配列を持つ遺伝子断片を見い出した。
【0016】
(2)変異GIの取得と耐熱性試験
クローニングしたS.albus GI遺伝子はDNA塩基配列を決定し、上述のS.griseofuscus GI遺伝子と比較したところ、S.griseofuscus GIの252番タイロシン(Y)と相同の位置と考えられる253番目タイロシン(Y)の近傍に図2に示したように保存されたアミノ酸配列が存在していた。
そこで、S.griseofuscus GIの場合と同様にしてY→F変異GIを作製し、その変異GIの耐熱性を試験した。その結果、S.griseofuscus GIの場合と同様に90℃加熱による残存活性の半減期が約2倍に延長された。
S.albus GI以外のStreptomyces GIでもS.griserofuscus GIの252番タイロシン(Y)の位置と相同な領域と考えられる領域のアミノ酸配列は良く保存されており、例えば第2図に示すようにS.olivochromogenesおよびS.violaceonigerなどが例示される。また、Streptomyces由来のGI間の酵素蛋白全領域にわたる一次配列上の相同性は、上述した文献(Agric.Biol.Chem.,54,2469(1990))等に示されている結果からも高い相同性を持っていることが知られている。従って、実施例1および2で示すことの出来た効果は、ここに例示したS.griseofuscusおよびS.albus GIに特異的な現象ではなく、広くStreptmyces GIに普遍的に適応出来る方法であることは明瞭である。
【0017】
実施例3
(252Y→F変異S.griseofuscus GIの251番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換したGI)
図5(2)に示した合成DNAプローブを用いて実施例1の場合と同様にして、耐熱性の増強した252Y→F変異GIの252番目アミノ酸フェニルアラニン(F)のN末端側(251番目)アミノ酸のリジン(K)をアルギニン(R)に変換した変異酵素を作製した。作製した親酵素に2ヶ所のアミノ酸置換を導入した251K→R,252Y→F変異GIの耐熱性を実施例1の場合と同様に試験したところ、第6図に示すように親酵素に比べ大きく耐熱性が低下した。この結果は、本発明によって得られる効果は252番目アミノ酸をタイロシン(Y)からフェニルアラニン(F)とすることによって得られることは、実施例1および2の結果から明かであるが、同様にそのN末端側(251番目)アミノ酸がリジン(K)であることがより有効であることを示している。またこのことは実施例4に示す結果からも明らかである。
【0018】
実施例4
(S.griseofuscus GIの251番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換したGI)
図5(3)に示した合成DNAプローブを用いて実施例1の場合と同様にして、S.griseofuscus GIの251番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換したGIを作製した。作製した251K→R変異GIの耐熱性を実施例1の場合と同様に試験したところ、第6図に示すように実施例3で作製した親酵素に2ヶ所のアミノ酸置換を導入した251K→R,252Y→F変異GIと比べてもさらに大きく耐熱性が低下した。
【0019】
本例および実施例3の結果から本発明によって得られる効果は、フェニルアラニン(F)に変換すべき位置(S.griseofuscus GIの場合は252番目)のタイロシン(Y)のN末端側のアミノ酸はリジン(K)であることがより望ましいが、変換すべきタイロシン(Y)のN末端側のアミノ酸がリジン(K)とは異なったアミノ酸であった場合(少なくとも本例および実施例3に示すようにアルギニン(R)であっても)にもタイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に変換することで耐熱性を向上させることが出来ることを示している。
【0020】
実施例5
(253Y→F変異S.albus GIの252番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換したGI)
実施例3に示したS.griseofuscus GIの場合と同様にして、実施例2で作製した253Y→F変異S.albus GIの252番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換した変異酵素252K→R,253Y→F変異GIを作製し、その変異GIの耐熱性を試験した。
その結果、S.griseofuscus GIの場合と同様に親酵素に比べ90℃加熱における活性の半減期が約60%に低下した。
【0021】
実施例6
(252番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換したS.albus GI)
実施例4に示したS.griseofuscus GIの場合と同様にしてS.albus GIの252番目アミノ酸リジン(K)をアルギニン(R)へ置換した変異酵素252K→R変異GIを作製し、その変異GIの耐熱性を試験した。
その結果、実施例5で作製した252K→R,253Y→F変異GIよりもさらに耐熱性が低下することが明らかになった。
【0022】
実施例5および6の結果は、実施例3および4で示した結果がS.griseofuscusGIにのみ限定された現象ではなく、酵素蛋白一次配列上の相同性の高いStreptomyces GIに共通した現象であることを示しており、本発明の効果が広く相同性の高いGIに適用可能な有用な方法であることを示していることは明らかである。
一方、本発明と同様に蛋白質工学技術を用いてGIの耐熱性の改善を行なったことが報告されているActinoplanes missouriensisの場合(Nadir,T., et al., Biochem.,31,2239(1992))、第2図に示すように本発明で変異を導入した領域と相同と考えられる領域のうちS.griseofuscus GI(252番目)およびS.albus GI(253番目)でタイロシン(Y)である位置は親酵素でフェニルアラニン(F)であるが、そのN末端側253番目のリジン(K)をアルギニン(R)に変換すると耐熱性が向上することが報告されている。しかし、その結果は、本発明の実施例3、4、5および6で示した結果と全く異なった結果であり、従って本発明の独自性および新規性になんらの影響を与えるものでないことは明瞭である。
【0023】
実施例7
(複数の変異を組み合わせることにより耐熱の向上したGI)
上述したようにS.griseofuscus GIの252番目のアミノ酸残基および酵素の構造、即ちアミノ酸配列の相同性の高いGI、特にStreptomyces由来のGIにおいてS.griseofuscus GIの252番目タイロシン(Y)に相当すると考え得る位置の、例えばS.albus GIでは253番目のタイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)へ変換することにより耐熱性を大きく向上させることが出来ることを示した。さらにこの変異と他の位置に導入した変異との組み合わせにより、一層の耐熱性の向上を計ることも可能である。一例を実験例として示す。
【0024】
A.missouriensisの場合319番目のリジン(K)をアルギニン(R)に変換すると耐熱性が向上すると報告されている(Biochem.,31,2239(1992))。相当する位置の(K)の存在をS.griseofuscus GIで検索したところ、312番目のリジン(K)が相当すると考えられた(第7図)。S.griseofuscus GIの252Y→F変異GIの312番目リジン(K)をコードする遺伝子の配列をAAGからAGGに部位特異的変異法により変換し、変異酵素252Y→F,312K→R変異GIを作製し、耐熱性を試験したところ図に示すように耐熱性は252Y→F変異GIよりもさらに向上した。従って、252Y→F変異に他の変異を組み合わせることによりさらに耐熱性を向上させられることが示された。
【0025】
【発明の効果】
グルコースイソメラーゼは工業的には固定化酵素として長時間連続して使用されるという特性上から、酵素的本質が優良であることとともに高い熱安定性を持つことが要求される。本発明によって提供されるグルコースイソメラーゼは、高度に耐熱性が増強されることにより酵素の安定性が向上し、工業上より有用な異性化糖製造方法を提供することが出来る。さらに、本発明で改善が期待できるグルコースイソメラーゼは、工業的に有用に使用されている放線菌およびその類縁微生物、なかでもStreptomyces属(ストレプトミセス属)細菌のグルコースイソメラーゼの改良に特に有効であり、工業上特に有用な効果が期待できる方法を提供する。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】 Streptomyces griseofuscusのグルコースイソメラーゼ(GI)の遺伝子配列から推定される全アミノ酸配列をアミノ酸一文字表記で示す。図中の番号は本酵素のN末端アミノ酸であるセリン(S)を1番とした時のアミノ酸残基番号である。また、図中の下線で示した配列はアミノ酸シークエンスにより部分的に決定したアミノ酸配列と一致した配列を示している。
【0027】
【図2】 各種Streptomyces GIおよびA.missouriensis GIの部分アミノ酸配列の相同性を比較した図である。
【0028】
【図3】 S.griseofuscusのグルコースイソメラーゼ(GI)の全遺伝子配列を示す。
【0029】
【図4】 1)はS.griseofuscus GI遺伝子をE.coliで生産するときに変化するGIN末端のアミノ酸配列を示す。
2)はS.albus GI遺伝子をE.coliで生産するときに変化するGIN末端のアミノ酸配列を示す。
【0030】
【図5】 1)はS.griseofuscus GIの252番目およびS.albus GIの253番目のタイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に変換するための部位特異的変異導入のための合成DNAプライマーの配列を示す。
2)はS.griseofuscus GIの252番目およびS.albus GIの253番目のタイロシン(Y)をフェニルアラニン(F)に変換し、さらにS.griseofuscus GI遺伝子の251番目およびS.albus GIの252番目のリジン(K)をアルギニン(R)に変換するための部位特異的変異導入のための合成DNAプライマーの配列を示す。
3)はS.griseofuscus GIの312番目のリジン(K)をアルギニン(R)に変換するための部位特異的変異導入のための合成DNAプライマーの配列を示す。
【0031】
【図6】 各変異酵素を90℃で図に示した時間加熱したときの各変異GIの残存活性を示す。
【0032】
【図7】S.griseofuscus GIの312番目のアミノ酸リジン(K)近傍のアミノ酸配列の相同性をA.missouriensis GIと比較した図。
Claims (4)
- Streptomyces属(ストレプトミセス属)細菌グルコースイソメラーゼの遺伝子を単離取得し、その遺伝子に部位特異的変異を導入することにより、グルコースイソメラーゼに耐熱性を増強するために改良を加える請求項1または2に記載の方法。
- 請求項1乃至3の方法により、改良されたStreptomyces属(ストレプトミセス属)の細菌の耐熱性グルコースイソメラーゼ。
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