JP4022423B2 - 青果物包装袋用プロピレン樹脂組成物とそのフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動包装適性の優れた青果物包装袋用ポリプロピレン樹脂組成物及びそのフィルムに関する。詳しくは、内容物の自動充填が容易で、透明性、内容物視認性に優れ、かつ薄肉化が可能な青果物包装袋用ポリプロピレン樹脂組成物及びそのフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックフィルムは食品包装や繊維包装等に多く使用されている。特に、青果物包装袋としては、透明性や自動包装適性が良好なため、ポリプロピレン未延伸フィルムが多用されている。これらのフィルムからなる包装袋は一般消費者が購入後、他のゴミと混ざった状態で廃棄物となるため、再利用の比率がきわめて低い。ゴミの排出量低減のためにフィルムを薄膜化すると、腰が弱くなり自動包装適性の点で問題が生じる。
【0003】
腰の強いポリプロピレンフィルムとして延伸ポリプロピレンフィルム表面にヒートシール性樹脂を積層したフィルムの利用が提案されている(特開平6−297657号公報)。この提案によれば、透明性が良好で、腰が強いフィルムが得られるため薄肉化は達成されるものの、自動包装適性に劣る問題が生じる。
【0004】
すなわち、フィルムを筒状に加工した後、袋底部に相当する部分をシールし、得られた袋の上部から内容物を落下充填し、次いで袋上部をシールする自動包装工程において、内容物を落下充填する際、内容物と袋内表面との滑りが悪く、内容物が袋に完全に収まらないまま袋上部をシールしてしまうトラブルが多発することが確認された。特に、ピーマン等の軽量かつ表面光沢の高い青果物において、充填不良が顕著であった。更に袋上部をシール後、充填袋の形態を一様にするために、袋を寝かした状態でベルトコンベア上で振動を加え馴らした後、段ボール詰めする自動馴らし行程では、内容物と袋内表面との滑りが悪く、充分馴染まないといった問題があることが判明した。そのため、充填袋をラインから抜き出し、人の手で更に振動を加え内容物を馴らす必要が発生する。人手を必要とする頻度が高くなると、所定時間内に所定数を段ボールへ充填できず、経済性が劣る問題があることが判明した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、上記従来技術を鑑み、薄肉化が可能で、透明性、内容物視認性に優れ、自動包装適性に優れる青果物包装袋とそれに用いるプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のプロピレンランダム共重合体と特定のプロピレンブロック共重合体とアンチブロッキング剤を含有する樹脂組成物が、滑り性が良好で自動包装適性に優れることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、融点が145℃以下のプロピレンランダム共重合体(A)100重量部に対し、プロピレン単独重合体又はエチレン単位の含有量が2重量%以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体よりなるプロピレン重合体ブロック部(b−1)が60〜95重量%とエチレン単位の含有量が20〜95重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体よりなるプロピレン共重合体ブロック部(b−2)が40〜5重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を1〜10重量部、アンチブロッキング剤(C)を0.1〜0.5重量部含有し、かつ、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が、プロピレン重合体ブロック部(b−1)のMFR(MFRb−1)とプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のMFR(MFRB)とが、式(1)を満たすものである、青果物の包装袋用のプロピレン樹脂組成物であって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とするプロピレン樹脂組成物である。
式(1) 0.01≦MFRB/MFRb−1≦0.5
【0010】
また、本発明の第2の発明は、第1の発明のプロピレン樹脂組成物を薄膜状に成形してなる、青果物の包装袋用のプロピレン樹脂フィルムであって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とするプロピレン樹脂フィルムである。
【0012】
本発明の第3の発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に第2の発明のプロピレン樹脂フィルムが配されているポリプロピレンフィルムを、プロピレン樹脂フィルム層が内面になるように加工した、青果物の包装袋であって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とする包装袋である。
【0014】
【発明の実施の形態】
プロピレンランダム共重合体(A)
本発明のプロピレンランダム共重合体(A)は、プロピレンとプロピレンを除くα−オレフィンとのランダム共重合体である。共重合させるα−オレフィンとしては、炭素数が2〜20(プロピレンを除く)のα−オレフィンが挙げられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等を挙げることができ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。なかでも製造コストの点からエチレン、及び/又は1−ブテンが好適である。
【0015】
プロピレンランダム共重合体(A)は、その融点が145℃以下、好ましくは140℃以下、より好ましくは138℃以下であることが重要である。融点が145℃を越えるとヒートシール性が劣る。融点の下限は、特に規定されるものではないが、フィルムにベタツキが生じることがあるため、110℃以上が好ましい範囲とされる。フィルムにベタツキが生じても、アンチブロッキング剤の配合量の調整等で対処が可能であれば、より低融点のプロピレンランダム共重合体を使用することは、当然可能である。
【0016】
プロピレンランダム共重合体(A)の融点は、α−オレフィン単位の種類や含有量等により調整可能である。従来から知られている典型的なチーグラーナッタ触媒による共重合体では、たとえばα−オレフィンがエチレンの場合、プロピレン単位の含有量は95.0〜98.5重量%程度、及びエチレン単位の含有量は1.5〜5.0重量%程度である。コモノマーの炭素数が増加するのに伴い融点は高温側に変化するので、これを考慮しプロピレン含量を変化させればよい。新しいタイプの共重合体として知られるメタロセン触媒による共重合体では、共重合性が高くコモノマー増量に伴う融点の低下幅が大きいので、たとえばα−オレフィンがエチレンの場合、プロピレン単位の含有量は95.0〜99.0重量%程度、及びエチレン単位の含有量は1.0〜5.0重量%程度である。
【0017】
プロピレンランダム共重合体(A)の、JIS−K6758(条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って測定したMFR(MFRA)は、2〜20g/10分、好ましくは5〜10g/10分であることが好ましい。MFRAが高すぎると、得られるフィルムの厚み精度が悪くなり、一方、MFRAが低すぎると、押出成形性が悪化し、生産性が低下することがある。
【0018】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、以下のプロピレン重合体ブロック部(b−1)とプロピレン共重合体ブロック部(b−2)とからなる。
【0019】
プロピレン重合体ブロック部(b−1)は、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体より選ばれる。プロピレン・エチレンランダム共重合体の場合、エチレン単位の含有量は、2重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下である。エチレン単位の含有量が2重量%を越えると、耐熱性が低下する。フィルム成形時等のベタツキの点でプロピレン単独重合体を選択することが好ましい。
【0020】
プロピレン重合体ブロック部(b−1)の、JIS−K6758(条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って測定したMFR(MFRb-1)は、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは10〜40g/10分である。MFRb-1が50g/10分を越えると、滑り性が不足する場合がある。一方、MFRb-1が1g/10分未満のときは、透明性が悪化することがある。
【0021】
プロピレン共重合体ブロック部(b−2)は、エチレン・プロピレンランダム共重合体よりなる。エチレン・プロピレンランダム共重合体は、エチレン単位を20〜95重量%、好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜90重量%の範囲で含有する。一方、プロピレン単位を5〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、より好ましくは10〜60重量%の範囲で含有する。プロピレン共重合体ブロック部のプロピレン単位含有量が過大な場合、滑り性が低下する、一方、過小な場合には、透明性及び透視性が低下する。
【0022】
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、上記(b−1)と(b−2)とが、重量基準で(b−1):(b−2)が、60〜95重量%:5〜40重量%、好ましくは70〜95重量%:5〜30重量%、より好ましくは75〜95重量%:5〜25重量%である必要がある。(b−1)が超過すると滑り性が不足する。一方、(b−2)が超過すると透明性不良となる。
【0023】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、JIS−K6758(条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って測定したMFR(MFRB)が、好ましくは0.1〜20g/10分、より好ましくは1.0〜10g/10分である。MFRBが高すぎると、透明性が悪化し、低すぎると滑り性が悪化する場合がある。
【0024】
本発明においては、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が、そのMFR(MFRB)と、構成成分である(b−1)のMFR(MFRb-1)とが、式(1)を満たすことが特に重要となる。さらには、式(1´)を満たすことが好ましく、式(1´´)を満たすことがより好ましい。
式(1) 0.01≦MFRB/MFRb-1≦0.5
式(1´) 0.05≦MFRB/MFRb-1≦0.4
式(1´´) 0.10≦MFRB/MFRb-1≦0.3
MFRB/MFRb-1が、0.01に満たないと透明性・外観が悪化する。一方、0.5を越えると滑り性が不足する。
【0025】
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が、上記式(1)を満たすことによって、本発明の組成物をフィルム状に成形しても、プロピレン共重合体ブロック部(b−2)が配向することなく粒状に存在するようになるため、フィルムの透明性、透視性を損なうことなく、フィルム表面に凸凹を与えることができる。そして、後述するアンチブロッキング剤によるフィルム表面の凸凹と相俟って、効果的なフィルム表面形状とすることができ、内容物との滑り性を高めることが可能となる。
【0026】
さらに、プロピレンランダム共重合体のMFR(MFRA)とMFRb-1との関係が、式(2)を満たすことが好ましく、式(2´)を満たすことがより好ましい。
式(2) 0.04≦MFRA/MFRb-1≦20
式(2´) 0.125≦MFRA/MFRb-1≦1
【0027】
本発明に用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、上記の諸条件を満足すればいかなる方法で製造してもよいが、2段連続重合法を採用することにより好適に製造することができる。この2段連続重合法は、オレフィン重合触媒の存在下に、プロピレン又はプロピレンとエチレンとを重合させて所定量のかつ所定の組成比を有するプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンランダム共重合体(b−1)を生成させる第1重合工程、次いでプロピレンとエチレンとを共重合させてエチレン・プロピレンランダム共重合体(b−2)を生成させる第2重合工程、を順に連続的に実施することからなる。
【0028】
MFRの調整は、それぞれの重合行程における分子量調整剤の存在量により、調整可能である。第1重合行程で任意のMFRb-1のプロピレン重合体ブロック部を生成させた後、第2重合行程において、得られるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のMFRBが、式(1)を満たすように、分子量調整剤により調節することができる。
【0029】
アンチブロッキング剤(C)
アンチブロッキング剤はプロピレン樹脂フィルム用として用いられるものであれば、制限なく使用できる。具体的には無機系アンチブロッキング剤及び有機系アンチブロッキング剤が挙げられる。
【0030】
無機系アンチブロッキング剤としては、合成又は天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
【0031】
有機系アンチブロッキング剤としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルシリルトセスキオキサン(シリコーン)、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド(ユリア樹脂)、フェノール樹脂等を用いることができる。
【0032】
また、アンチブロッキング剤は表面処理されたものが望ましい。表面処理剤としては、アクリル酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸等の有機酸、ヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸ソーダ等の縮合リン酸塩、界面活性剤、金属石鹸、高級アルコール、エステル、シリコーン、フッソ樹脂、シランカップリング剤等を用いることができる。なかでも有機酸が好ましく、特にクエン酸が好適である。
【0033】
アンチブロッキング剤は、平均粒径が1.0〜7.0μm、細孔容積が0.4〜1.6ml/gの無機系アンチブロッキング剤が好ましい。
【0034】
プロピレン樹脂組成物
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレンランダム共重合体(A)100重量部に対して、1〜10重量部、好ましくは2〜8重量部、より好ましくは3〜6重量部の割合で用いられる。プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が、1重量部未満のときは滑り性が不足する。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が10重量部を越えると、透明性不良となる。
【0035】
アンチブロッキング剤(C)は、プロピレンランダム共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜0.5重量部、好ましくは0.15〜0.4重量部、特に好ましくは0.2〜0.3重量部の割合で用いられる。アンチブロッキング剤が0.1重量部未満ではフィルムの開口性が不足し、0.5重量部を越えると透明性が不良となる。
【0036】
本発明においては、本発明の組成物をフィルム状に成形すると、フィルム表面に、アンチブロッキング剤に起因する凸凹が生じるので、前述したプロピレン共重合体ブロック部(b−2)によるフィルム表面の凸凹と相俟って、効果的なフィルム表面形状になっていると考えられる。
【0037】
より詳しくは、アンチブロッキング剤に起因する凹凸は、プロピレン共重合体ブロック部に起因する凹凸にくらべ微細であると考えられ、このように大小の凹凸が同時に存在することにより、内容物との接触面積が減少すると考えられる。したがって、表面光沢の高い(すなわち表面平滑性が高い)青果物又は、表面光沢が高くかつ軽量な青果物を内容物としても、内容物とフィルム間の滑り性が良好なため、青果物包装時の充填作業性に優れる、特に自動充填包装時にも操業性が損なわれないため生産性に優れる。また、アンチブロッキング剤を添加しない場合、フィルム同士でのブロッキングが発生し、内容物包装以前の段階でフィルム取り扱いが非常に困難となる。したがって、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)及びアンチブロッキング剤(C)の両者の存在が必須となる。
【0038】
本発明のプロピレン樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、防曇剤、界面活性剤等の公知の添加剤を配合することができる。プロピレン樹脂組成物の製造には、プロピレンランダム共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)及びアンチブロッキング剤(C)と必要に応じ添加される添加剤を均一に混合できる方法であればいずれでも採用できるが、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(商品名)等で混合し、その混合物を押出機等で溶融混練する方法が好ましく用いられる。
【0039】
本発明のプロピレン樹脂フィルムは、上記プロピレン樹脂組成物を、通常のT−ダイ法又はインフレーション法によりシ−トを得た後、このシートを一軸或いは二軸方向に延伸し、薄膜状に成形することによって製造することができる。
【0040】
本発明のプロピレン樹脂フィルムの好ましい態様は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの両面又は片面に、上記プロピレン樹脂フィルムがヒートシール層として配されているポリプロピレンフィルムである。
【0041】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いられる結晶性プロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、或いは、過半重量割合のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)などとのランダム、ブロック又はグラフト共重合体である。このような結晶性プロピレン系重合体のアイソタクチックインデックス(I.I)は、40%以上、中でも60%以上、特に80%以上のものが好ましい。したがって、プロピレン単独重合体を使用することが最も好ましいが、その場合にはI.Iが90%以上、中でも95%以上、特に98%以上のものを使用することが、フィルムの腰の強さ、フィルム送り出し部の紙落ち性、高速自動包装適性の観点から好適である。また、メルトフローレート(MFR)は0.5〜10g/10分、特に1〜5g/10分のものが好ましい。これら結晶性プロピレン系重合体は単独の種類でも、或いは、複数種類の重合体の混合物としても使用することもできるし、結晶性プロピレン系重合体を主成分としてなる樹脂でも良い。
【0042】
上記結晶性プロピレン系重合体は、その特性を低下させない範囲内の量で、例えば30重量%以下の範囲内で、その他の配合材を含有してなるものでも良く、その様な配合材の例として、エチレン重合体、ブテン重合体、石油樹脂、テルペン樹脂、スチレン樹脂等の炭化水素重合体(それらの水添物も含む)等の他の熱可塑性重合体を挙げることができる。更に、この結晶性プロピレン系重合体には、もちろん、酸化防止剤や耐候剤等の安定剤、加工助剤、着色剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を含んでいても良い。これら添加剤の中でも、フィルム走行中に静電気蓄積を防止し、紙落ち性を向上させるために帯電防止剤を含有させ、及び/又は、青果物包装時の内容物視認性を向上させるために防曇剤を含有させることが好ましい。該帯電防止剤の中でも好ましいものとしては、グリセリンの脂肪酸エステル、アルキルアミン、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、及びその脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0043】
本発明のポリプロピレンフィルムの製造は、特に制限されるものではないが、例えば、基材層の結晶性プロピレン系重合体の片面又は両面に、該表面層用組成物を溶融共押出することによってシート状となし、これらを二軸延伸する方法が、この組成物を容易に、均一にかつ薄く積層できることから好ましい。しかし、未延伸又は一軸延伸した基材層シートに該表面層用組成物を溶融押出し被覆した後、二軸延伸又は基材層の延伸方向と直角方向に一軸延伸する方法も採用することができる。
【0044】
上記二軸延伸のうちの先ず縦延伸については、ロール周速差を利用して行なうことができる。すなわち、90〜140℃、好ましくは105〜135℃の温度で3〜8倍、好ましくは4〜6倍に延伸し、次に、引き続いて横方向にテンターオーブン中で3〜12倍、好ましくは6〜11倍に延伸する。ヒートシール時の熱収縮防止のため、横延伸に引き続き、120〜170℃の温度で熱セットするのが望ましい。
【0045】
更に、印刷適性、帯電防止剤のブリードを促進する等の目的で、コロナ処理等の処理を施すことができる。
【0046】
本発明のポリプロピレンフィルムの層構成は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム層をA層、本発明のプロピレン樹脂組成物からなるヒートシール層をB層、その他の層をC層とすると、A/B、B/A/B、C/A/B、A/C/B等が例示できる。ここで、C層としては、ヒートシール性付与層、開口性付与層、ガスバリア性付与層、アンカーコート剤による接着性付与層等が挙げられる。
【0047】
本発明のポリプロピレンフィルムは、薄肉化が可能となり、厚さが5〜100μm、好ましくは10〜35μmを達成することができる。プロピレン樹脂組成物からなるヒートシール層は厚さが0.1〜10μm、好ましくは0.3〜3μm程度が好ましい。
【0048】
本発明のプロピレン樹脂フィルム及び本発明のポリプロピレンフィルムは、袋状に加工して、青果物包装袋として使用することができる。ポリプロピレンフィルムを用いる場合には、プロピレン樹脂組成物からなるヒートシール層が内面となるように加工することが、内容物との滑り性を発現させる目的のために、好ましい。
【0049】
青果物とは、野菜、根菜、果実、花卉、きのこ類を言う。そして、本発明のフィルムを用いて包装するのに適した青果物としては、下記のものが例示できる。例えば、アーティチョーク、浅葱、小豆、アスパラガス、アボカド、アロエ、杏、苺、無花果、いよかん、ウド、梅、エシャロット、枝豆、エノキ茸、オクラ、オリーブ、オレンジ、カイワレダイコン、柿、カブ、カボチャ、カリフラワー、キウイ、菊、キクラゲ、キャベツ、キュウリ、金柑、銀杏、栗、グリーンピース、胡桃、グレープフルーツ、クレソン、ゴギョウ、コケモモ、ごぼう、小松菜、コリアンサ、サクランボ、ザクロ、さつまいも、里芋、ザボン、サヤインゲン、サヤエンドウ、サラダナ、椎茸、シソ、シメジ、ジャガイモ、シャンツァイ、春菊、生姜、スイカ、スウィーティー、スズシロ、スズナ、スターフルーツ、ズッキーニ、スモモ、セリ、セロリ、ゼンマイ、そら豆、ターサイ、大根、大豆、タカノツメ、筍、玉葱、タラノメ、チンゲンサイ、ツクシ、テコポン、冬瓜、トウモロコシ、トマト、ドリアン、トリュフ、ナガイモ、長ネギ、ナス、ナズナ、夏ミカン、菜の花、なめこ、ナガウリ、日本梨、ニラ、人参、大蒜、パイナップル、白菜、ハコベ、パセリ、ハッサク、バナナ、パパイア、バンペイユ、ピーマン、びわ、フキ、フキノトウ、フクロタケ、ブドウ、プラム、ブルーベリー、プルーン、ブロッコリー、ほうれん草、ホトケノザ、ポンカン、マイタケ、マスカット、マッシュルーム、マツタケ、マンゴー、マンゴスチン、ミカン、ミツバ、ミョウガ、メロン、桃、もやし、モロヘイヤ、ヤマトイモ、ユズ、洋ナシ、ヨモギ、ライチ、ラズベリー、ラディッシュ、リンゴ、レタス、レモン、レンコン、ワケギ、ワサビ等が挙げられる。特に軽量かつ表面光沢の高い青果物が適当であり、好ましくはアーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ、ラズベリー等が挙げられる。より好ましくはピーマンである。
【0050】
【実施例】
以下に本発明について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の各項目の測定値は、以下の方法で測定した。
【0051】
(1)MFR JIS−K6758(条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って測定した(単位:g/10分)。
(2)融点 示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温速度で結晶化させ、更に10℃/分の昇温速度で融解させたときに得られる融解曲線の最大ピークの温度とした(単位:℃)。
(3)エチレン単位の含有量、1−ブテン単位の含有量 赤外分光光度計を用いて、732cm−1、720cm−1(エチレン単位の含有量)、770cm−1(1−ブテン単位の含有量)の特性吸収から常法により測定した(単位:重量%)。なお、赤外分光光度計による測定は13C−NMRによる定量値により検量線を作成し定量した。
【0052】
(4)HAZE ASTM−D1003に準拠して、得られたフィルムをヘイズメータにて測定した(単位:%)。この値が小さい程透明性が優れていることを意味する。
(5)LSI 得られたフィルムを(株)東洋精機制作所製の視覚透視度試験機を用い、狭角拡散透過光(LSI)を測定する。この値が小さい程透視性が優れていることを意味する。
(6)GLOSS JIS−Z8741に準拠して、得られた樹脂フィルムをグロスメータにて測定した(単位:%)。この値が大きい程光沢が優れていることを意味する。
(7)フィルム同士のスリップ性 得られた樹脂フィルムを温度40℃の雰囲気下に1日間状態調整した試料をそれぞれASTM−D1894に準拠して、試料フィルムのヒートシール層同志をスリップテスター法にて静摩擦係数で評価した。この値が小さいほど滑り性が優れていることを意味する。
(8)ピーマンとの滑り性 ASTM−D1894に準拠して、荷重をピーマンの自重(約40g)としたときの、フィルムのヒートシール層とピーマンとの静摩擦係数を測定した。また、ピーマンに40gの荷重を加えた場合(総荷重約80g)の、フィルムのヒートシール層とピーマンとの静摩擦係数を測定した。この値が小さいほど滑り性が優れていることを意味する。
(9)ピーマン実包装 縦ピロー包装機にてピーマンを充填包装する際の、自動包装適性を評価した。
包装機:KAWASHIMA製 KBF―110P、ショット数:60個/分
自動包装適性について以下の評価基準とした。
○:ヒートシールバーに青果物が挟まれなく、かつ、機械の振動のみで充填袋が馴らされ、問題なく自動充填包装できる。
△:ヒートシールバーに青果物が挟まることがしばしばあり、又は充填袋を馴らすための人の補助がしばしば必要となる。
×:ヒートシールバーに青果物が挟まれることが頻繁に発生する、又は充填袋を馴らすための人の補助が頻繁に必要。
【0053】
実施例1
プロピレンランダム共重合体(A)として、MFRA 5.8g/10分、融点 136℃、エチレン単位含有量 2.0重量%、1−ブテン単位含有量 12重量%のプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(PP−A1)100重量部に対し、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)として、MFRB 8.0g/10分、プロピレン重合体ブロック(b−1)はプロピレン単独重合体共重合体、MFRb-1 33g/10分、プロピレン共重合体ブロック(b−2)エチレン単位含有量 80重量%、(b−2)含有量 15重量%、MFRB/MFRb-1 0.24のプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−B1)3重量部、アンチブロッキング剤(C)として富士シリシア(株)製SY350(合成シリカ、体積平均径2.0μm)を0.3重量部、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを0.05重量部、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン−3−(3´、5´−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)を0.10重量部配合し、溶融混練しプロピレン樹脂組成物を得た。
上記プロピレン樹脂組成物をヒートシール層とし、その反対側のスキン層には、MFR 5.8g/10分のプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体100重量部に対し、アンチブロッキング剤(SY350)0.2重量部を含有する樹脂組成物を用い、また、ヒートシール層とスキン層に挟まれた基材層には、MFR 3.0g/10分の結晶性プロピレン単独重合体100重量部に対し、防曇剤として、ステアリン酸モノグリセリド(花王(株)製エレクトロストリッパーTS5)1.0重量部を含有する樹脂組成物を用い、二軸延伸複層フィルムを得た。
【0054】
フィルムの製造方法は、上記の各組成物をヒートシール層/基材層/スキン層の3層シートが形成されるようにTダイから共押出し、冷却ロールで急冷することにより、厚さ約1mmのシートを得た。このシートをテンター式逐次二軸延伸装置にて140℃で縦方向に5倍の延伸倍率で延伸し、引き続きテンター炉内で164℃に予熱をかけた後160℃で横方向に8倍の延伸倍率で延伸し、さらにヒートシール層両及びスキン層面をコロナ放電処理した。このようにして、フィルム全厚み15μm(ヒートシール層厚み1μm、スキン層厚み1μm)の3種3層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
ピーマン実包装時には、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムのヒートシール層が袋の内面となるよう自動包装機に設置する。評価結果を表1に示す。
【0055】
実施例2
プロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−B1)の配合量を5重量部に変更した以外は実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示す。
【0056】
比較例1
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を、MFRB 2.1g/10分、プロピレン重合体ブロック(b−1)はプロピレン単独重合体共重合体、MFRb-1 2.8g/10分、プロピレン共重合体ブロック(b−2)エチレン単位含有量 55重量%、(b−2)含有量 10重量%、MFRB/MFRb-10.75のプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−B2)に代えた以外は実施例2と同様に行った。評価結果を表1に示す。このものは、実施例に比べ、ピーマンとの滑り性に劣るものであった。
【0057】
比較例2
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)に代えて、MFR 0.35g/10の高密度ポリエチレン(HDPE)を用いた以外は実施例1と同様に行った。このものは、実施例に比べ、ピーマンとの滑り性には優れるが、透明性・透視性・光沢に劣るものであった。
【0058】
比較例3
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。このものは、実施例に比べ、ピーマンとの滑り性に劣るものであった。
【0059】
比較例4
アンチブロッキング剤(C)を使用しなかった以外は実施例1と同様に行った。このものは、実施例に比べ、フィルム同士の滑り性・ピーマンとの滑り性に劣るものであった。
【0060】
【表1】
【0061】
【発明の効果】
本発明のプロピレン樹脂組成物によれば、フィルムに加工した際に、透明性、内容物視認性を損なうことなく、滑り性を向上させる効果を奏する。したがって、ピーマンのような軽量かつ表面光沢の高い青果物であっても、フィルムとの滑り性が良好となるので、自動包装装置によっても、充填不良がなく、人手をかける必要がないので、経済性をも向上させることが可能となる。
Claims (3)
- 融点が145℃以下のプロピレンランダム共重合体(A)100重量部に対し、プロピレン単独重合体又はエチレン単位の含有量が2重量%以下のプロピレン・エチレンランダム共重合体よりなるプロピレン重合体ブロック部(b−1)が60〜95重量%とエチレン単位の含有量が20〜95重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体よりなるプロピレン共重合体ブロック部(b−2)が40〜5重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を1〜10重量部、アンチブロッキング剤(C)を0.1〜0.5重量部含有し、かつ、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が、プロピレン重合体ブロック部(b−1)のMFR(MFRb−1)とプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のMFR(MFRB)とが、式(1)を満たすものである、青果物の包装袋用のプロピレン樹脂組成物であって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とするプロピレン樹脂組成物。
式(1) 0.01≦MFRB/MFRb−1≦0.5 - 請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物を薄膜状に成形してなる、青果物の包装袋用のプロピレン樹脂フィルムであって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とするプロピレン樹脂フィルム。 - 二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に請求項2に記載のプロピレン樹脂フィルムが配されているポリプロピレンフィルムを、プロピレン樹脂フィルム層が内面になるように加工した、青果物の包装袋であって、
青果物が、アーティチョーク、アボカド、杏、無花果、エシャロット、枝豆、カリフラワー、金柑、銀杏、栗、胡桃、サクランボ、ザクロ、サヤインゲン、サヤエンドウ、シメジ、スウィーティー、セロリ、そら豆、タカノツメ、トリュフ、ナス、ピーマン、プラム、ブルーベリー、プルーン、マスカット、マッシュルーム、マンゴー、マンゴスチン、ユズ又はラズベリーであることを特徴とする包装袋。
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