JP4021691B2 - 相変化型光情報記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

相変化型光情報記録媒体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アドレス信号が認識可能な程度に成膜後の反射率が高く、レーザーを用いた初期化を無くすか又は軽減できる相変化型光情報記録媒体、及びその製造方法に関する。更に詳しくは、結晶化度の高い記録膜を形成するための第一記録層(結晶化促進層)を設け、記録前後の反射率差を小さくした相変化型光情報記録媒体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
相変化型光情報記録媒体は、一般に、プラスチック基板/誘電体材料層/カルコゲン系相変化記録層/誘電体材料層/Al又はAg系合金からなる冷却反射層という、基板と4層の機能性薄膜からなる層構成を持っている。
ここで用いられているカルコゲン系相変化記録層は熱履歴により結晶と非結晶の構造をとる。通常は、情報記録前に反射率の高い結晶状態となっていて、情報記録により反射率の低い非結晶のマークが形成される。
生産工程上は、各層の成膜プロセスが終了した時点では非結晶の状態であり、反射率が低く情報を書き込むためのアドレス情報が読み取れないので、レーザー光を照射することにより加熱し結晶状態に変化させて出荷される。この結晶化状態に変化させるプロセスは初期化プロセスと呼ばれている。
【0003】
初期化の方法には、半導体レーザーによる方法(特許第2892818号公報)が最も多用されている。但し、この初期化プロセスは、光情報記録媒体作製プロセス上、他の工程と比べて時間が長くかかるので、初期化装置を数多く設置しなければならないなどの問題を抱えている。
そこで、時間を短縮する方法として、半導体レーザー・アレイによる方法(特開平10−112065号公報)、フラッシュランプによる方法(特許第02846129号公報)などが考案されている。しかし、フラッシュランプによる方法は基板を加熱してしまい、基板自体に変形を起こさせてしまう可能性があるので、その対策として、基板の吸収波長領域を減衰させるフィルターを介して光照射を行うという方法が取られている(特開平10−188363号公報)。
【0004】
また、特開2001−297482号公報には、初期設定段階又はプレディング段階を使用することなく使用され得る相変化型の再書き込み可能な光学式記録素子として、記録層が2つのサブ層からなるものが開示されている。
しかし、この公報に具体的に開示されているのは、実質的にSbからなるサブ層とTeInからなるサブ層の組み合わせのみであり、しかも実施例(例1)によれば、SbターゲットとTeIn0.37ターゲットを用いて記録ディスクを作成したところ、反射率は約7%で、記録のために十分なトラッキングを可能にするには低すぎ、16時間室温で保持したところ反射率が10.5%まで増加したと記載されている(〔0035〕〜〔0036〕参照)。
この記載からみて、この公報に記載されたような通常のスパッタリングによる方法では、記録膜作成後に室温保持という処理を加えなければ満足な反射率を有する素子(媒体)が得られないと解される。
しかも、この公報には、本発明の必須の構成要件であるGeを含む第一記録層と共晶系組成近傍の組成比のSbTeを主成分とする第二記録層からなる記録層を有し、実用上十分な反射率を有する相変化型光情報記録媒体について全く記載がなく、このような媒体を通常のスパッタリングで製造できること、更には、より高い反射率の媒体を得るため、第二記録層成膜時に基板材料の過重たわみ温度未満の温度に基板を加熱することなどについて記載も示唆もされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、レーザー光を照射して加熱することにより記録層の物性(結晶状態と非結晶状態)を変えて記録マークを作り、記録マーク部と他の部分との状態の違いに起因する読み出しレーザー光の反射率の違いを利用する相変化型光情報記録媒体において、初期化プロセス・タイムを軽減するか又は無くすことが出来る記録媒体及びその製造方法、即ち、記録媒体を構成する各層の成膜プロセス後において、従来のような(完全な)初期化プロセスを実施しなくても、記録層が結晶化した高い反射率を有する記録媒体及びその製造方法の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜)の発明によって解決される。
1) 基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体であって、該記録層が、Geを含む第一記録層(結晶化促進層)、及び共晶系組成近傍の組成比のSbTe(原子%で、70≦Sb≦80、20≦Te≦30)からなる第二記録層を有し、記録後消去したときの反射率に対する記録前の反射率の割合が60%以上であることを特徴とする相変化型光情報記録媒体。
2) Geを含む第一記録層の中に、Geの組成比よりも少ない量のBiを含むことを特徴とする1)記載の相変化型光情報記録媒体。
3) Geを含む第一記録層が、Ge層と、これよりも薄いBi層の二層からなることを特徴とする1)記載の相変化型光情報記録媒体。
4) 記録後消去したときの反射率に対する記録前の反射率の割合が80%以上であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
5) 基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体の製造方法であって、該記録層が、第一記録層(結晶化促進層)、第二記録層を有する場合において、第二記録層成膜時に、基板材料の過重たわみ温度未満の温度に基板を加熱することを特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方法。
6) 基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体の製造方法であって、該記録層が、第一記録層(結晶化促進層)、第二記録層を有する場合に、第二記録層成膜時又は第二記録層成膜工程の上流工程において、基板材料の過重たわみ温度未満の温度に基板を加熱すると共に、製膜用の真空槽内にArガス又はArガスを含む希ガスを導入することを特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方法。
7) 導入するArガスの圧力が2×10−3〜2×10−2Torrであることを特徴とする6)記載の相変化型光情報記録媒体の製造方法。
【0007】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
初期化プロセスを無くすか又は初期化プロセスの比重を小さくするためには、成膜終了後の完成した光情報記録媒体の反射率が高くなければならない。反射率が高いということは、完成した光情報記録媒体の記録層が結晶化状態にあるか又は結晶化状態に近い構造を持っているということである。このような結晶化状態に近い構造を得るためには、記録層の結晶化を容易にするための材料、構造及びプロセスを採用する必要がある。
相変化記録材料の中でも共晶系と呼ばれているSbTeは、結晶化温度が比較的低いため、基板上に膜厚200nm程度の下部誘電体層(下地層)を成膜する時の基板温度の上昇により、成膜後の状態で60%以上の光情報記録媒体としての反射率を持つ。但しSbTeのみでは記録後のマークの安定性は低く、保存状態で温度が80℃前後に上昇すると記録したアモルファス状態のマークが結晶化してマークが読めなくなってしまうなどの不具合を生ずる。
【0008】
これに対し、本発明では、保存安定性を向上させることができる材料、特に効果が確認されているGeを含む第一記録層を先に成膜し、保存安定性を確保した上で、反射率の高い共晶系組成近傍の組成比のSbTe(原子%で、70≦Sb≦80、20≦Te≦30)からなる第二記録層を成膜して、少なくともこの二層を有する記録層とすることにより、記録後消去したときの反射率に対する記録前の反射率の割合が60%以上である相変化型光情報記録媒体を得ることに成功した。
60%以上の反射率があると、記録前にレーザー初期化する際の時間を短縮できる。また、上記共晶系近傍組成の記録材料は、繰り返し記録時の熱衝撃に強く、優れた繰り返し記録特性を有すると共に、高密度記録及び多回数の記録に対しても対応可能な優れた物性を有する。
【0009】
光情報記録媒体としての保存特性を確保するためには、第一記録層の材料としてGeが必須の構成成分である。しかし、第一記録層をGe単体で作成すると、成膜時に放電が不安定になる場合があるため、第一記録層は、このGeと第二記録層の結晶化促進を発現させる材料とにより構成する。これにより第二記録層の結晶化が促進され、記録開始前の反射率と記録後の反射率の比率を小さくすると共に、記録層全体の反射率を向上させて、光情報記録媒体のレーザー初期化を軽減できる。
結晶化促進を発現させる材料の具体例としては、Bi(融点270.95℃)が最も結晶化促進効果が大きく、その他には、In(融点156.4℃)、Sn(融点231.97℃)、Se(融点220.2℃)など融点の低い金属元素を挙げることができる。従って、Geを含む第一記録層材料としては、二元ならばBiGe、InGe、SnGe、SeGe、三元ならばBiInGe、BiSnGe、BiSeGe、InSnGe、InSeGe、SnSeGeを挙げることができる。更に、四元、五元とすることも可能であるが、Biの結晶化促進効果が最も大きいので、Biの含有量の多い方が相対反射率を上げる面では有利となる。
但し、BiがGeより多くなると、記録特性上アモルファスレベルの反射率が上昇してしまい、信号比が小さくなり、モジュレーション特性の劣化を招く。
【0010】
なお、第一記録層の膜厚は、1.2〜4.8nm、好ましくは1.8〜2.8nmとし、第二記録層の膜厚は、10〜25nm、好ましくは13〜17nmとする。また、第一記録層を積層構造とする場合には、Ge層の膜厚を0.7〜2.6nm、好ましくは1.1〜1.5nm、Biなどの他の材料からなる層の膜厚を、0.5〜2.2nm、好ましくは0.7〜1.3nmとする。
第一記録層を積層構造とする利点としては、保存性向上に有効なGeと第二記録層の結晶化促進に有効な材料を任意の割合で用いて適宜製作できることが挙げられる。即ち、保存性を向上させたい、結晶化を更に促進させたいなどの目的に応じて割合を変更することが容易となる。
更に、記録開始前の反射率が記録後の反射率の80%以上であれば、レーザーにより改めて初期化を行う必要がなくなり、製造工程を一工程削減できる。
【0011】
上記相変化型光情報記録媒体の製造方法としては、まず、記録開始前の反射率と記録後の反射率の比率を小さくする最も効果的な方法の一つとして、結晶化転移が容易となるように熱を加えておく方法、具体的には相変化記録層(本発明では第二記録層)の膜形成時又は相変化記録層の膜形成工程よりも上流の工程において、基板が吸収する波長の光を照射し、基板及び記録層材料を基板材料の過重たわみ温度(ポリカーボネートでは125℃)未満に加熱する工程を設ける方法が挙げられる。
上記の方法の内、相変化記録層の膜形成工程よりも上流の工程において単に基板を加熱する方法は、本出願人の先願に係る特願2001−81859号として既に提案したが、この方法は本発明の光情報記録媒体の製造にも適用できる。
しかし、単純に基板を加熱するだけではある温度以上で反射率の飽和が起きてしまうこともあるため、本発明では更に反射率を向上させることができる方法及び条件についても提示した。
【0012】
上記のような方法で基板を加熱すると、次の三つの技術的効果がある。
一つ目は、第一誘電体層の厚みが薄い場合、第一誘電体層の成膜のプロセス条件や膜厚に依らずに基板温度をコントロールすることができること、二つ目は、記録層成膜時に熱により記録層材料の結晶化が一層容易になること、三つ目は、基板の脱ガス化が進み、吸着ガス及び水分による反射率の低下を防ぐことができることである。
更に、基板を加熱することで、通常の薄い膜厚の第一誘電体層(下部保護層)を有する場合でもレーザー照射による初期化を軽減できるか、或いはレーザー照射による初期化を必要としない光情報記録媒体を容易に製造することができる。また、記録層を二層化することにより、その材料の結晶化温度よりも低い温度で結晶化させることができる。結晶化促進材料を含む同じ組成の材料でも、同時に成膜してしまうと成膜後の反射率が上がらず、二層化して成膜することにより初めて成膜後の反射率が上がるのは、結晶化促進層を含む第一層目が種結晶となり、そこを結晶核として促進材料が第二記録層成膜中に拡散しながら成膜されていくという過程をとるためと思われる。
【0013】
また、加熱時に真空槽内にAr(アルゴン)ガス又はArガスを含む希ガスを導入すると、成膜後の反射率を向上させることができると共に、Arガスを含まないときよりも高い反射率とより均一な反射率分布を得ることができる。
図1に、加熱時に導入するArの流量と記録前の相対反射率の関係を示す。
即ち、第二記録層成膜直前の温度を45℃に制御し〔E−タイプフィルム状熱電対(安立計器社製SE4699)で測定〕、Arの流量を変化させ、成膜速度を変えた場合に得られる媒体について、記録前の相対反射率を測定した結果である。この図から、成膜速度が1.4nm/秒以上の場合に相対反射率が80%以上になること、及び、Ar流量が0〜70sccmの範囲では、Arを導入しない場合(y軸上の場合)よりも相対反射率が向上することが分る。
導入するArガスの好ましい圧力は、2×10−3〜2×10−2Torrである(実施例3参照)。Arガスの圧力が大き過ぎると、雰囲気ガスであるArが加熱している基板を冷却することになり、却って反射率を下げてしまうことになる。
【0014】
また、反射率を向上させる別の方法としては、第二記録層の成膜速度を1.4nm/秒以上とする方法がある。この方法によれば、これよりも遅い成膜速度のときに比べてより高い反射率を得ることができ、記録前の反射率が記録後の反射率の80%以上であるようにすることができる。通常は、ゆっくり成膜した方が結晶性の良い膜が得られるが、本発明では結晶化促進材料を用い成膜前に加熱することにより逆に速い成膜速度のときに結晶性の良い膜が得られる。しかしそのメカニズムは今のところ明らかではない。
図2に、第二記録層の成膜速度と記録前の相対反射率の関係を示す。
即ち、第二記録層成膜直前の基板温度が45℃になるように制御し〔E−タイプフィルム状熱電対(安立計器社製SE4699)で測定〕、加熱時にアルゴンを導入しないで成膜した場合の成膜速度と得られる媒体の記録前相対反射率の関係を測定したものであり、上記図2のy軸上の場合に相当する。
この図から、1.4nm/秒以上の成膜速度であれば、80%以上の相対反射率となることが分る。
【0015】
ところで、第二記録層の膜厚を20nmとすると、成膜速度が8nm/秒の場合の成膜時間は2.5秒となり成膜制御性に問題はないが、成膜速度が20nm/秒以上の場合には成膜時間が1秒以下となり、成膜時の膜厚制御性、即ち、ある投入スパッタ電力におけるスパッタ時間の実効的な制御性に限界を生じ、その結果、各記録媒体毎の膜厚のバラツキが発生し、記録特性及び保存特性に影響を与える。
スパッタ時間の実効的な制御性に限界が生ずる理由としては、通常のスパッタ方式では、放電開始直後の0.05〜0.2秒間は放電着火の遅延が起ることがあるからである。例えば、成膜時間が1秒で放電着火遅延が0.2秒であった場合、その誤差は膜厚として2割に達し、光記録媒体としての記録特性に影響を与えてしまう。
その対策としては、単位時間当りの成膜速度を変えずに単位時間当りの実成膜時間をシェアする方法、即ち、成膜方法をパルス状の波形を有する直流放電スパッタとすればよい。これにより、記録層膜厚のバラツキが少なく安定した高速成膜が可能となる。
【0016】
放電開始時、即ちスパッタカソードにマイナス電圧が印加された直後0.05〜0.2秒間に放電着火の遅延が起るにも拘らずパルス状電圧印加が良い理由としては、パルス波形の電圧が放電トリガー的に働くためと考えられる。
しかし、パルス状のDC(直流)をカソードに印加するにしても成膜時間以上又は成膜時間と同等の印加時間では全く効果がない。また、放電が安定して継続する周期でパルス化されていない場合は実質的に効果はないものと考えられる。更に、少なくともパルス化することにより、スパッタ処理がなされる実質時間では高速の成膜速度で処理し、かつ、膜厚制御性安定域に達するのに十分な程度にトータルの成膜時間を長くする必要がある。もともと膜厚制御性安定域に達する時間以上の成膜時間がある場合は別として、膜厚制御性安定域に達する時間よりも短い成膜時間の場合には、特に、周波数やデューティ(ターゲットに負電荷をかける時間比率)を考慮する必要がある。再現性が取れる範囲では、予め実効成膜速度を求めておいて、膜厚制御時に補正すればよい。
【0017】
また、本発明では、パルス状波形の周波数が1〜100kHzであり、スパッタリングに有効な電圧となる(即ち、カソード電極に負の電圧を供給し、ターゲットに負電荷をかける)時間比率を75%以上とすることが好ましい。この条件下では、放電遅延が無く安定した高速成膜ができる。これに対し、上記時間比率が75%未満の場合には、放電遅延の影響を加味した係数を考慮する必要がある。
図3に、パルス状波形が50kHzで周期が20μ秒の場合のパルス波形の一例を示す。図中、カソード電圧は、スパッタリングターゲットに印加される電圧、リバース電位は、ターゲット表面に残った電荷をキャンセルするための逆電位、リバースタイムは、該逆電位をかける時間であり、周期からリバースタイムを引いた時間がターゲットに負電荷をかける時間であって、その比率がデューティ(%)である。
【0018】
図4に、デューティと膜厚/実効スパッタ時間(nm/秒)の関係を示すが、デューティが75%未満では実効的に成膜速度が低下してしまうことが観察されている。デューティが75%未満では、前述したように膜厚補正をする必要がある。
更に、第二記録層成膜時又は第二記録層成膜工程の上流工程において、Arガス又はArガスを含む希ガスを導入しながら基板を加熱すると共に、第二記録層成膜時の成膜速度を1.4nm/秒以上とすることにより、光情報記録媒体のas depo.(成膜後)反射率を更に向上させることができる。
なお、本発明で用いる基板は、基板側から光を照射する場合には、記録・再生・消去可能な程度に透明である必要があるが、それ以外の場合には透明でも不透明でも良い。
【0019】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0020】
実施例1 (膜厚約72nmの第一誘電体層を設け、加熱なしで反射率60%以上の媒体を製造する例)
光情報記録媒体の溝情報を形成したNiスタンパを用いて成形した厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に、成膜室又は成膜用ターゲットを多数持つ多層成膜用のマグネトロンスパッタ装置を用いて、光情報記録媒体の各層を順次成膜した。
まず、第一誘電体層として、膜厚約72nmのZnS・SiO(ZnS80モル%−SiO20モル%)膜を形成した。
次に、相変化記録層として、最初に、膜厚2.5nmのBi49Ge51からなる第一記録層を形成し、次いで、膜厚20nmのSb78Te22(結晶化温度124℃)からなる第二記録層を形成した。このときの基板の温度を、それまでのプロセスと同一条件下でE−タイプフィルム状熱電対(安立計器社製SE4699)により測定したところ、相変化記録層成膜直前で33℃となっていた。
次に、第二誘電体層として、膜厚12nmの、第一誘電体層と同一組成のZnS・SiO膜を形成した。
次に、第二誘電体層のSと反射層のAgとの反応防止層として、膜厚4nmのSiC膜を形成した後、膜厚140nmのAgの反射層を形成した。
最後に、紫外線硬化樹脂からなるオーバーコート層を形成し、更に厚さ0.6mmの溝なし基板と貼り合わせて、板厚1.2mmの光情報記録媒体を得た。
【0021】
上記のようにして作製した光情報記録媒体の反射率を、特性評価装置(パルステック工業株式会社製−RW自動評価システムDDU−1000)により、波長650nmの半導体レーザーを使って測定し評価した。
まず、この光情報記録媒体を7mWの信号イレース・レーザー強度でイレース(消去)し、イレースした後の反射率の値とイレースしていない成膜直後の部分とを比べたところ、イレースしていない部分の反射率は、信号イレース・レーザー強度でイレースした部分の反射率の69%となった。
この、イレースしていない部分をレーザー初期化装置で処理したところ、通常約60秒かかる初期化時間の約半分に当る32秒で初期化が完了し、初期化時間を大幅に短縮できた。
レーザー初期化後の光情報記録媒体の反射率は、膜厚140nmでガラス上に成膜したAgスパッタ膜を87.7%基準の反射率比較対象として用いた場合の換算値として19%の反射率となった。19%という値は通常のレーザー初期化工程品と同じ反射率である。
また、初期化後の光情報記録媒体のジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ6.5%と64%であった。
記録チェック後、この光情報記録媒体を80℃85%RHの高温高湿槽に100時間保管し、再度ジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ7.1%と62%であり、その変化が問題となるレベルではなかった。
【0022】
実施例2 (膜厚約72nmの第一誘電体層を設け、加熱して反射率60%以上の媒体を製造する例)
実施例1と同様にして、光情報記録媒体を作製した。
まず、実施例1と同一組成・同一膜厚の第一誘電体層を形成した。
次に、相変化記録層として、最初に、膜厚2.5nmのBi49Ge51膜を形成した後、3kWの赤外線ランプを用い、制御温度を120℃として、基板を正面から加熱して第一記録層を形成した。このときの基板の温度は、それまでのプロセスと同一条件下でE−タイプフィルム状熱電対(安立計器社製SE4699)により測定したところ、相変化記録層成膜直前で45℃となっていた。制御温度とポリカーボネート基板の表面温度との関係を表1に示した。
更に、基板温度が下がらないうちに、実施例1と同一組成・同一膜厚の第二記録層を形成した。このときの成膜方法は通常のDCスパッタ法であり、成膜速度は1.4nm/秒とした。
その後の第二誘電体層以降は、実施例1と全く同様にして形成し光情報記録媒体を得た。
【0023】
得られた光情報記録媒体の成膜直後の反射率を、実施例1と同様にして測定し評価したところ、7mWイレース有無の反射率比較では、イレースしていない部分の反射率はイレースした部分の反射率の80%となった。また、光情報記録媒体としての反射率は18.0%であった。
更に、この光情報記録媒体の記録特性及び保存特性を調べた。
評価は、650nm、NA0.6の光ピックアップを有するドライブを用い、線記録密度0.267μm/bit、トラックピッチ0.74μm、記録線速度8.5m/秒とし、信号は8/16変調して行った。
その結果、このディスクの初期ジッターは、6%台であった。また1000回の書換え後でも8%台を維持し、繰り返し記録消去の特性変化が比較的小さく良好であった。
保存試験として、80℃85%RHの条件下で100時間の保存試験を行い、1%を超えるジッター変化の有無で寿命判定をしたが、ジッター変化は1%以下であり、保存特性は良好であった。
【0024】
実施例3 (Arガス導入で反射率が1%向上した例)
基板加熱時にスパッタ装置の真空槽内にArガスを導入した点以外は、実施例2と全く同様にして光情報記録媒体を作製した。このときのAr導入量は5sccmであり、真空槽内のガス圧は表2にあるように2.0×10−3Torrであった。
得られた光情報記録媒体の成膜直後の反射率を、実施例2と同様にして測定し評価したところ、7mWイレース有無の反射率比較では、イレースしていない部分の反射率はイレースした部分の反射率の81%となり、1%の反射率向上が認められた。更に、反射率の分布は全面で±1.5%以内であり、ほぼ均一であった。
【0025】
実施例4 (第二記録層をパルスDCスパッタすることにより、反射率が4.9%向上した例)
第二記録層を、成膜速度を上げたパルスDCスパッタ法で成膜した点以外は、実施例2と全く同様にして光情報記録媒体を作製した。このときのパルスの周期は50kHz、陰極となるスパッタ電極に負電圧を印加する時間比率は80%とした。また成膜速度は、負電圧の値がパルス化しないときに24nm/秒となる条件:DC電圧−558V、電流2.7A(=約1.5kW)とした。スパッタ時間は1.04秒とした。
得られた光情報記録媒体の成膜直後の反射率を、実施例2と同様にして測定し評価したところ、7mWイレース有無の反射率比較では、イレースしていない部分の反射率はイレースした部分の反射率の84.9%となり、4.9%の反射率向上が認められた。
【0026】
実施例5 (Arガス導入及び第二記録層をパルスDCスパッタすることにより、反射率が5.9%向上した例)
基板加熱時にArガスを導入し、第二記録層を、成膜速度を上げたパルスDCスパッタで成膜した点以外は、実施例2と全く同様にして光情報記録媒体を作製した。このときのAr導入量は30sccmとし、パルスの条件と成膜速度は実施例4と同じにした。
得られた光情報記録媒体の成膜直後の反射率を、実施例2と同様にして測定し評価したところ、7mWイレース有無の反射率比較では、イレースしていない部分の反射率はイレースした部分の反射率の85.9%となり、5.9%の反射率向上が認められた。
【0027】
実施例6(Arガス無しでスパッタする例)
真空槽内にArを導入しない点以外は、実施例3と全く同じ条件で光情報記録媒体を作製した。そのときの真空槽内のガス圧は表2に示したように10−5Torr未満の高真空度であった。
得られた光情報記録媒体の成膜直後の反射率を、実施例3と同様にして測定し評価したところ、7mWイレース有無の反射率比較では、イレースしていない部分の反射率はイレースした部分の反射率の80%となった。但し、ステンレス製の基板固定冶具が接触する中央部及び周辺部では、反射率が多少(5〜10%)下がっていた。この反射率の分布ムラを無くすためには、均一化のための追加的レーザー初期化を行う必要があった。
【0028】
実施例7(記録層を通常スパッタした例)
実施例4におけるパルスDCスパッタに代えて、パルス形状でない通常のスパッタ成膜を行った。成膜速度は24nm/秒、即ち、膜厚20nmの第二記録層を成膜するのに0.83秒に設定した。
成膜後の実際の膜厚を測定したところ、20nmの膜厚設定に対し、15〜20nmの範囲でややばらついた結果となった。
【0029】
比較例1(通常のスパッタを行い、記録層を二層に分けない例)
Bi、Ge、Sb、Teの組成比が実施例1と同一になるようにターゲットを形成し、記録層を二層に分けずに膜厚22.5nmで成膜した点以外は、実施例1と全く同じ条件で光情報記録媒体を作製し、この媒体を実施例1と全く同様にして測定し評価したところ、溝情報が読めないためイレースできなかった。
そこで、位置を固定し、絶対反射率のみを測定したところ5%以下であった。
次に、レーザー初期化を行ったところ60秒を要した。また、レーザー初期化したこの光情報記録媒体について、実施例1と同様にして測定したところ、ジッター、モジュレーション、高温高湿保存後の変化も全て同じ結果となった。
【0030】
比較例2 (膜厚約72nmの第一誘電体層を設け、基板材料の過重たわみ温度以上に加熱する例〕
実施例2において、基板温度が基板材料であるポリカーボネートの過重たわみ温度(125℃)以上の130℃までとなるように加熱を行ったところ、ポリカーボネート基板は、温度と成膜した膜の応力により変形し、基板の平面性を留めない程にベコベコになった。
【0031】
【表1】
Figure 0004021691
【0032】
【表2】
Figure 0004021691
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、記録開始前の反射率、及び高温保存信頼性が高く、レーザー初期化負荷が軽減されるか又は初期化が不要であり、より均一な反射率分布を有する相変化型光情報記録媒体、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱時に導入するArの流量と記録前の相対反射率の関係を示す図。
【図2】第二記録層の成膜速度と記録前の相対反射率の関係を示す図。
【図3】パルス状の直流スパッタの電圧波形の一例を示す模式図。
【図4】パルス印加時の印電圧印加デューティと実質成膜速度を示す図。

Claims (7)

  1. 基板上に少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体であって、該記録層が、Geを含む第一記録層(結晶化促進層)、及び共晶系組成近傍の組成比のSbTe(原子%で、70≦Sb≦80、20≦Te≦30)からなる第二記録層を有し、記録後消去したときの反射率に対する記録前の反射率の割合が60%以上であることを特徴とする相変化型光情報記録媒体。
  2. Geを含む第一記録層の中に、Geの組成比よりも少ない量のBiを含むことを特徴とする請求項1記載の相変化型光情報記録媒体。
  3. Geを含む第一記録層が、Ge層と、これよりも薄いBi層の二層からなることを特徴とする請求項1記載の相変化型光情報記録媒体。
  4. 記録後消去したときの反射率に対する記録前の反射率の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の相変化型光情報記録媒体。
  5. 基板上に、少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体の製造方法であって、該記録層が、第一記録層(結晶化促進層)、第二記録層を有する場合において、第二記録層成膜時に、基板材料の過重たわみ温度未満の温度に基板を加熱することを特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方法。
  6. 基板上に、少なくとも第一誘電体層、記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層した光情報記録媒体の製造方法であって、該記録層が、第一記録層(結晶化促進層)、第二記録層を有する場合に、第二記録層成膜時又は第二記録層成膜工程の上流工程において、基板材料の過重たわみ温度未満の温度に基板を加熱すると共に、製膜用の真空槽内にArガス又はArガスを含む希ガスを導入することを特徴とする相変化型光情報記録媒体の製造方法。
  7. 導入するArガスの圧力が2×10−3〜2×10−2Torrであることを特徴とする請求項6記載の相変化型光情報記録媒体の製造方法。
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