JPH10226173A - 光記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光記録媒体およびその製造方法

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JPH10226173A
JPH10226173A JP9227168A JP22716897A JPH10226173A JP H10226173 A JPH10226173 A JP H10226173A JP 9227168 A JP9227168 A JP 9227168A JP 22716897 A JP22716897 A JP 22716897A JP H10226173 A JPH10226173 A JP H10226173A
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optical recording
recording layer
layer
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JP9227168A
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English (en)
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Junji Tominaga
淳二 富永
Isamu Kuribayashi
勇 栗林
Makoto Takahashi
真 高橋
Takashi Kikukawa
隆 菊川
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TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
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  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Optical Recording Or Reproduction (AREA)
  • Manufacturing Optical Record Carriers (AREA)
  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 相変化型光記録媒体を製造する際に、律速段
階であった記録層の初期化工程を迅速化し、かつ、初回
の書き換えから安定した記録再生特性を実現する。ま
た、初期化工程が不要であり、かつ記録時と同じ線速度
では書き換えが不可能な追記型の相変化型光記録媒体を
提供する。 【解決手段】 透明基板上に、少なくとも1層のSb系
薄膜と少なくとも1層の反応薄膜とからなる記録層を有
し、Sb系薄膜と反応薄膜とが接しており、Sb系薄膜
が、Sbを95原子%以上含有するSb系材料を成膜し
たものであって、かつ、厚さが70A 以上であり、反応
薄膜構成材料がSbとの混合により相変化記録材料とな
るものである光記録媒体。反応薄膜は、In、Ag、T
eを主成分とするか、これらとSbとを主成分とする
か、Ge、Teを主成分とするか、これらとSbとを主
成分とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相変化型の光記録
媒体と、その製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高密度記録が可能で、しかも記録
情報を消去して書き換えることが可能な光記録媒体が注
目されている。書き換え可能型の光記録媒体のうち相変
化型のものは、レーザー光を照射することにより記録層
の結晶状態を変化させて記録を行い、このような状態変
化に伴なう記録層の反射率変化を検出することにより再
生を行うものである。相変化型の光記録媒体は単一の光
ビームの強度を変調することによりオーバーライトが可
能であり、また、駆動装置の光学系が光磁気記録媒体の
それに比べて単純であるため、注目されている。
【0003】相変化型の光記録媒体には、結晶質状態と
非晶質状態とで反射率の差が大きいこと、非晶質状態の
安定度が比較的高いことなどから、Ge−Te系材料が
用いられることが多いが、最近、カルコパイライトと呼
ばれる化合物を応用することが提案されている。
【0004】カルコパイライト型化合物は化合物半導体
材料として広く研究され、太陽電池などにも応用されて
いる。カルコパイライト型化合物は、化学周期律表を用
いるとIb-IIIb-VIb2やIIb-IVb-Vb2 で表わされる組成で
あり、ダイヤモンド構造を2つ積み重ねた構造を有す
る。カルコパイライト型化合物はX線構造解析によって
容易に構造を決定することができ、その基礎的な特性
は、例えば月刊フィジクスvol.8,No.8,1987,pp-441や、
電気化学vol.56,No.4,1988,pp-228 などに記載されてい
る。
【0005】これらのカルコパイライト型化合物の中で
特にAgInTe2 は、SbやBiを用いて希釈するこ
とにより、線速度7m/s 前後の光記録媒体の記録層材料
として使用できることが知られている(特開平3−24
0590号公報、同3−99884号公報、同3−82
593号公報、同3−73384号公報、同4−151
286号公報等)。
【0006】このようなカルコパイライト型化合物を用
いた相変化型光記録媒体の他、特開平4−267192
号公報や特開平4−232779号公報、特開平6−1
66268号公報には、記録層が結晶化する際にAgS
bTe2 相が生成する相変化型光記録媒体が開示されて
いる。
【0007】従来の相変化型光記録媒体では、真空成膜
装置などを用いて記録層を形成しているため、形成直後
の記録層は非晶質状である。これを書き換え型の媒体と
して利用する場合には、一般に初期化と呼ばれる操作に
より、記録層を結晶化する必要がある。
【0008】初期化の方法としては、成膜後に記録層の
結晶化温度まで基板を加熱して結晶化させる方法(特開
平2−3131号公報)、成膜後にレーザービームを照
射して結晶化させる固相初期化と呼ばれる方法(特開平
4−366424号公報、同2−201734号公報、
同3−76027号公報)、カルコゲン化合物の光特性
を利用してフラッシュ光を成膜後の基板に照射し、いわ
ゆる光黒化によって擬似的に結晶化させる方法(特開平
4−281219号公報)、高周波を用いて誘導加熱に
よって結晶化させる方法、成膜中に基板を加熱して結晶
化させる方法(特開平2−98847号公報)、第1層
目の誘電体を形成し、次いで記録層を形成した後、これ
を加熱して結晶化し、さらに誘電体を形成する方法(特
開平2−5246号公報)などが提案されている。
【0009】しかし、レーザービーム照射による初期化
は長時間を要し、生産性に問題がある。また、媒体全体
を加熱する方法では、安価な樹脂基板を使いにくいとい
う問題がある。すなわち、初期化処理の際の加熱によっ
て樹脂基板が歪み、トラッキングなどに支障をきたすよ
うになってしまう。また、フラッシュ光を用いる方法で
は、完全に結晶化するためには複数回の照射が必要であ
り、生産性に問題がある。
【0010】このため、現在、工業的に適当な方法とし
て利用されているのは、バルクイレーザーと呼ばれる装
置を用いる方法である。バルクイレーザーは、出力の高
いガスレーザーや半導体レーザーのビームをあまり絞ら
ずに照射して、多数のトラックを一挙に結晶化させる装
置である。バルクイレーザーでは、記録層を限定的に加
熱できるため基板の温度上昇が小さくなるので、耐熱性
の低い樹脂基板の利用が可能である。
【0011】しかし、バルクイレーザーでは、12cm径
の光記録ディスクを初期化するときでさえ数分間程度の
時間が必要であるため、光記録ディスク生産工程におけ
る律速段階となっている。現在広く利用されている相変
化記録層はTeGeSbを主成分としたものであるが、
この材料を用いる限りにおいては上記したような初期化
処理が避けられないものであった。
【0012】しかも、従来の相変化型記録媒体では、初
期化後、安定した消去率を得るまでには書き換えを何回
か繰り返す必要があった。このため、一般に、10回程
度書き換えを繰り返してから特性評価を行っていた。こ
のように消去率が不安定となるのは、初期化処理直後の
書き換え時には、AgSbTe2 結晶相やIn−Te結
晶相の生成が完全ではないからと考えられる。
【0013】従来の相変化型記録媒体で必要とされた初
期化処理を不要とするために、本出願人は、特願平7−
47822号において、In−Ag−Te−Sb系の記
録層を形成するに際し、Sb+Inをスパッタする工程
とAg+Teをスパッタする工程とを分離して設ける
か、Sbをスパッタする工程とInをスパッタする工程
とAg+Teをスパッタする工程とを分離して設けるこ
とを提案している。このような工程により形成された記
録層は、少なくとも一部が結晶化している。この方法に
より形成された記録層は、繰り返し記録を行って層中の
元素を十分に拡散および混合した後では、上記したバル
クイレーザーにより初期化した場合と同様な反射率変化
が得られる。しかし、記録層形成直後から数回目までの
書き換えに際しては、従来の相変化型記録媒体と同様に
消去率が安定しない。具体的には、形成時に結晶化した
領域と書き換え時に結晶化した領域とでは反射率が異な
るため、書き換え領域が記録層全面に及ぶまでは反射率
が安定しないのである。書き換え型のデジタルビデオデ
ィスク(DVD−RAM)などで利用されるマークエッ
ジ記録の場合には、このような反射率のばらつきが生じ
ると、マークエッジと誤認されるという問題が生じ得
る。
【0014】特開平8−106647号公報には、Ag
SbTe2 膜とIn−Sb膜とが交互に積層されるか、
AgSbTe2 膜とIn膜とSb膜とが交互に積層され
たAgInSbTe系人工格子膜よりなる記録層を設け
た相変化型記録媒体が記載されている。同公報では、結
晶化しているAgSbTe2 膜を用いるために記録層全
体の初期化エネルギーがわずかで済むことを、効果のひ
とつにしている。
【0015】しかし、本発明者らの研究によれば、Ag
SbTe2 膜とIn−Sb膜とを積層した場合、上記し
た特願平7−47822号記載の発明と同様に、記録層
形成直後から数回目までの書き換えの際に反射率が安定
しない。また、AgSbTe2 膜とSb膜とIn膜とを
積層した場合も、数回目までの書き換えの際に反射率が
安定しない。書き換えの際に結晶質部で安定した反射率
を得るためには、結晶質部にIn−Te結晶相が存在し
ている必要がある。しかし、同公報のようにInがAg
SbTe2 膜中に存在せず、In−Sb膜やIn膜とし
て存在していると、InがTeと結合してIn−Te結
晶相を形成することが困難となる。そして、同公報のよ
うに初期化を低エネルギーで行う場合、初期化時にIn
−Te結晶相を十分に形成することはできないため、さ
らに書き換えを数回繰り返してIn−Te結晶相を十分
に形成できるまでは、反射率が安定しないのである。な
お、同公報には、初期化の具体的条件(線速度、レーザ
ーパワー等)は記載されていない。
【0016】しかも、同公報にはSb膜やIn−Sb膜
を5nm以下の厚さとした例しか記載されていない。これ
らの膜は、5nm以下の厚さでは結晶質膜とはならない。
このため、記録層形成直後の反射率が著しく低くなって
しまう。反射率が低いとレーザー光のフォーカシングが
困難となって均一な加熱が行えなくなるため、初期化を
均一に行うことができなくなる。
【0017】なお、同公報には、In−Sb膜中のIn
含有率についての記載はない。ただし、同公報の実施例
では、InとSbとをIn膜とSb膜とに分離する積層
構成と、両元素を分離せずにIn−Sb膜とする単層構
成とを単純に比較しているので、In−Sb膜の組成は
In膜とSb膜とを合わせたときの組成と同じと考えら
れる。そして、In膜とSb膜とは厚さが同じになって
いることから、In−Sb膜のIn含有率は10〜15
原子%程度であると考えられる。In含有率がこのよう
に高いと、例え膜を厚くしても結晶質膜として形成する
ことが困難となるため、やはり初期化の際に上記した問
題が生じる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、記録
層の初期化処理が製造の際の律速段階であった相変化型
光記録媒体において、製造時間を短縮し、かつ、初回の
書き換えから安定した記録再生特性を実現することであ
る。また、本発明の他の目的は、初期化処理が不要であ
り、かつ記録時と同じ線速度では書き換えが不可能な追
記型の相変化型光記録媒体を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(19)のいずれかの構成により達成される。 (1) 透明基板上に、少なくとも1層のSb系薄膜と
少なくとも1層の反応薄膜とからなる記録層を有し、S
b系薄膜と反応薄膜とが接しており、Sb系薄膜が、S
bを95原子%以上含有するSb系材料を成膜したもの
であって、かつ、厚さが70A 以上であり、反応薄膜構
成材料がSbとの混合により相変化記録材料となるもの
である光記録媒体。 (2) Sb系薄膜が結晶化している上記(1)の光記
録媒体。 (3) 反応薄膜が、In、AgおよびTeを主成分と
するか、In、Ag、TeおよびSbを主成分とするI
n−Ag−Te系材料を成膜したものである上記(1)
または(2)の光記録媒体。 (4) In−Ag−Te系材料中のIn、Ag、Te
およびSbの原子比を 式I−1 (Inx Agy Te1-x-y1-z Sbz で表わしたとき、 x=0.1〜0.3、 y=0.1〜0.3、 z=0〜0.5 である上記(3)の光記録媒体。 (5) Sb系材料およびIn−Ag−Te系材料の少
なくとも一方が元素M(Mは、H、Si、C、V、W、
Ta、Zn、Ti、Ce、TbおよびYの少なくとも1
種)を含有し、記録層中の元素M含有率が5原子%以下
であり、かつSb系材料の元素M含有率が5原子%以下
である上記(3)または(4)の光記録媒体。 (6) 記録層中において、Agの一部がAuで置換さ
れている上記(3)〜(5)のいずれかの光記録媒体。 (7) 記録層中において、Sbの一部がBiで置換さ
れている上記(3)〜(6)のいずれかの光記録媒体。 (8) 記録層中において、Teの一部がSeで置換さ
れている上記(3)〜(7)のいずれかの光記録媒体。 (9) 記録層中において、Inの一部がAlおよび/
またはPで置換されている上記(3)〜(8)のいずれ
かの光記録媒体。 (10) 反応薄膜が、GeおよびTeを主成分とする
か、Ge、TeおよびSbを主成分とするGe−Te系
材料を成膜したものである上記(1)または(2)の光
記録媒体。 (11) 記録層中におけるSb系薄膜と反応薄膜との
間の界面の数が20以下である上記(1)〜(10)の
いずれかの光記録媒体。 (12) 透明基板側から反射率を測定したとき、製造
直後の反射率R0 と、繰り返し記録後の記録層の結晶質
部における反射率RC と、繰り返し記録後の記録層の非
晶質部における最低反射率RA との関係が RA <R0 ≦RC である上記(1)〜(11)のいずれかの光記録媒体。 (13) 記録再生用のレーザー光波長における記録層
の吸収率を、結晶質部でAcとし、非結晶質部でAaと
したとき、 Ac/Aa≧0.9 であるか、前記透明基板の下側から記録再生用のレーザ
ー光を照射したとき、透過率が1%以上であるか、 Ac/Aa≧0.9 であって、かつ前記透過率が1%以上である上記(1)
〜(12)のいずれかの光記録媒体。 (14) レーザー光照射によりSb系薄膜構成材料と
反応薄膜構成材料との混合が生じて記録マークが形成さ
れ、かつ記録マーク形成時の線速度でレーザー光を照射
したときには記録マークの結晶化が不可能である上記
(1)〜(11)のいずれかの光記録媒体。 (15) 上記(1)〜(13)のいずれかの光記録媒
体の記録層を連続したレーザー光で照射することによ
り、Sb系薄膜構成材料と反応薄膜構成材料との混合を
行う混合処理工程を有する光記録媒体の製造方法。 (16) 混合処理工程において、レーザー光に対する
記録層の線速度VM を、書き換えを行うときのレーザー
光に対する記録層の線速度VW に対し 0.2VW ≦VM となるように制御する上記(15)の光記録媒体の製造
方法。 (17) VW ≦VM となるように制御する上記(16)の光記録媒体の製造
方法。 (18) 上記(1)〜(14)のいずれかの光記録媒
体を製造する方法であって、0.5×10-2Pa以下まで
減圧した後にスパッタ雰囲気ガスを導入したスパッタ室
内において、Sb系薄膜のスパッタを行う光記録媒体の
製造方法。 (19) 上記(1)〜(14)のいずれかの光記録媒
体を製造する方法であって、記録層形成後、60〜12
0℃で熱処理する工程を有する光記録媒体の製造方法。
【0020】
【作用および効果】従来の相変化型記録媒体では、スパ
ッタ法により形成された単層の非晶質記録層を加熱・徐
冷することにより、初期化(結晶化)する。初期化後、
書き換え(オーバーライト)用レーザー光を照射する
と、記録パワーを加えた領域では記録層が溶融し、続く
急冷により非晶質ないし微結晶となって反射率が低下
し、記録マークとなる。一方、消去パワーを加えた領域
では変化は生じず、初期化後の反射率が維持される。こ
れ以降の書き換えの際にも、新たに記録マークとする部
位で記録パワーを加え、その他の部位では消去パワーを
加える。照射前の状態が結晶質であっても非晶質ないし
微結晶であっても、記録パワーを加えた部位は全て非晶
質ないし微結晶の記録マークとなり、また、消去パワー
を加えた部位は全て結晶質となり、オーバーライト記録
が可能となる。
【0021】一方、本発明の光記録媒体では、Sb系薄
膜と反応薄膜とを積層した後、通常、混合処理を施す。
この混合処理とは、Sb系薄膜構成元素と反応薄膜構成
元素とを混合するために、記録層をレーザー光で照射し
て加熱する処理のことである。混合処理により、記録層
は、Sb結晶相中にAg−Sb−Te等の非晶質相が分
散した状態となる。記録層の反射率は、混合処理前は結
晶化しているSb系薄膜のために比較的高いが、混合処
理により低下する。ただし、混合処理後の反射率は、非
晶質部(記録マーク)における反射率よりは高くなる。
【0022】混合処理は、形成直後の記録層を記録可能
な状態に変化させるという意味において、従来の相変化
型記録媒体における初期化処理と同様である。しかし、
従来の初期化処理では、記録層は結晶化して反射率が上
がるが、混合処理では、記録層はSb結晶相中に非晶質
が分散された状態となり、反射率は低下する。
【0023】混合処理後、上記した従来の相変化型記録
媒体と同様な記録および書き換え(オーバーライト)を
行うことになる。記録パワーを加えた領域では記録層が
溶融し、続く急冷により非晶質ないし微結晶となって記
録マークとなる。一方、消去パワーを加えた領域では、
AgSbTe2 等の結晶化が生じて反射率が上昇する。
これ以降の書き換えについては、上記した従来の相変化
型記録媒体と同様にして行われる。
【0024】本発明では、混合処理後、最初に書き換え
用レーザー光を照射した後の記録マークおよび結晶質部
の各反射率は、2回目以降の照射後におけるそれぞれの
反射率と同等となる。すなわち、単層の非晶質記録層を
初期化した従来の相変化型記録媒体や、上記特願平7−
47822号記載の光記録媒体、上記特開平8−106
647号公報記載の光記録媒体と異なり、初回の記録お
よび書き換えのときから反射率の安定性が高い。
【0025】ここで、本発明の光記録媒体において、製
造直後(混合処理前)の反射率をR0 とし、繰り返し記
録後の記録層の結晶質部における反射率をRC とし、繰
り返し記録後の記録層の非晶質部(記録マーク)におけ
る最低反射率をRA とすると、 RA <R0 ≦RC となる。なお、これらの反射率は、基板側から測定した
値である。また、非晶質部における最低反射率とは、非
晶質化が最も進んで最も反射率が低くなったときの値で
ある。記録層形成直後の反射率R0 は、通常、RC より
低くなるが、上記したように結晶化しているSb薄膜の
ために比較的高くなり、例えばRC の60%程度以上と
することができる。このため、混合処理の際にレーザー
光のフォーカシングを精度よく制御でき、均一な混合処
理が可能となる。また、反応薄膜も結晶化している場合
には、両薄膜の組成や厚さ等を最適なものとし、かつ、
記録層と共に媒体表面に設けられる誘電体層や反射層の
材質、厚さ等を最適なものとすることにより、R0 をR
C と同等にできる。このような場合には、混合処理を省
略することもできる。
【0026】以下に説明するように、本発明では、混合
処理の際の媒体の線速度を、従来の初期化処理の際に要
求される媒体の線速度よりも著しく速くできるため、生
産性が向上する。
【0027】従来の初期化処理では、スパッタ法により
形成された単層の非晶質記録層を加熱・徐冷して結晶化
する。一方、相変化型記録媒体においてオーバーライト
により非晶質の記録マークを消去する(結晶化する)際
にも、記録マークを加熱・徐冷する。形成直後の記録層
と記録マークとは非晶質という点では同じであるが両者
はエネルギー状態が異なるため、初期化の際にはより高
いエネルギーが必要となり、かつ、冷却速度を遅くする
ためにより遅い線速度が必要となる。ここで、オーバー
ライトの際に消去率が−25 dB 以下となる線速度を書
き換え可能な線速度とし、消去率が最も良好となる線速
度を書き換え可能な最適線速度と定義すると、初期化に
必要な線速度は、書き換え可能な最適線速度の1/3〜
1/2程度となる。このため、レーザー光の照射により
初期化を行う場合には長時間を要するのである。
【0028】これに対し本発明では、混合処理の際のレ
ーザー光に対する記録層の線速度をVM とし、混合処理
後の書き換え可能な最適線速度をVW とすると、 VW ≦VM とできる。このため、混合処理に要する時間は、従来の
初期化に要する時間よりも著しく短くなる。なお、線速
度VM を速くするためには混合処理の際にレーザー光の
パワーを上げればよい。VM の上限は特にないが、一般
のバルクイレーザーや記録装置を用いる場合には、通
常、 VM ≦5VW となる。
【0029】また、混合処理の際に線速度VM を遅くす
れば、低パワーのレーザー光で混合処理が可能となる。
このため、従来の初期化と同等の線速度で混合処理を行
う場合には、必要なレーザーパワーが極めて小さくて済
む。ただし、実用的な速度で混合処理を行うためには、
通常、 0.2VW ≦VM とすることが好ましい。
【0030】本発明の光記録媒体は、書き換え耐久性が
良好である。単層の非晶質記録層を初期化して作製され
る従来のIn−Ag−Te−Sb系媒体では、書き換え
を1万回程度繰り返すと消去率が低下して実質的に書き
換えが不可能となってしまう。しかし、同様にIn−A
g−Te−Sb系媒体である本発明の第1の態様では、
書き換え回数10万回以上まで十分な消去率を維持でき
る。また、Te−Ge−Sb系媒体である本発明の第2
の態様も、従来のTe−Ge−Sb系媒体よりも書き換
え耐久性が良好である。
【0031】このような書き換え耐久性の向上は、以下
に説明するように、反応薄膜と結晶化したSb系薄膜と
を積層して混合処理することにより、初めて実現すると
考えられる。
【0032】第1の態様では、In−Ag−Te−Sb
系記録層に消去パワーを加えて結晶化させたとき、Ag
SbTe2 結晶相の他にSbの微細結晶相が存在するこ
とが反射率を高くし、消去率を高くするために必要であ
る。しかし、単相の非晶質記録層を初期化する従来の方
法では、初期化時に初めてSb微細結晶が形成されるた
め、Sb微細結晶中にAgが拡散しやすく、書き換えの
繰り返しによってAgの拡散がさらに進み、Sb微細結
晶のはたらきが阻害される。このため、書き換えの繰り
返しに伴なって消去率が低下してしまう。これに対し本
発明では、反応薄膜と結晶化したSb系薄膜とが混合さ
れる際に、AgがAg−TeやAgSbTe2 といった
安定な化合物を形成した後、Sb相と混合されるため、
Sb微細結晶中にAgが拡散しにくく、繰り返し書き換
えを行っても消去率の低下が小さい。
【0033】一方、第2の態様では、Teが第1の態様
におけるAgと同様な振る舞いをする。この態様では、
TeがGeTe2 やSb2 Te3 といった安定な化合物
を形成した後、Sb相と混合されるため、Te単独の拡
散が抑えられ、書き換え耐久性が向上する。
【0034】本発明の光記録媒体は、上述した書き換え
可能型の他に、追記型として用いることもできる。本発
明の光記録媒体を追記型として用いる場合、両薄膜の混
合処理は行わない。本発明における追記型記録媒体は、
上述した書き換え方法を用いた場合、すなわち、書き換
え可能型記録媒体用の駆動装置を用いた場合に、記録は
可能であるが消去が不可能なものである。具体的には、
記録パワーを加えたときにSb系薄膜と反応薄膜との混
合が可能であり、かつ、混合が生じた領域に記録時と同
じ線速度で消去パワーを加えたとき、その領域の結晶化
が不可能であるものである。本発明の光記録媒体では、
製造直後の反射率を比較的高くできると共に、混合処理
により反射率を大きく低下させることが可能なため、初
期化が不要でかつ特性の良好な追記型光記録媒体が実現
する。なお、このような追記型記録が可能な記録層は、
両薄膜の組成や厚さ等を適宜設定することにより実現で
きる。
【0035】本発明では、第1の態様および第2の態様
において上述した効果が実現するが、書き換え耐久性は
第1の態様がより良好である。また、第1の態様では記
録層をより薄くできる結果、光の吸収が少なくなるの
で、反射率を高くできると共に、誘電体層により変調度
を大きく向上させることが可能となる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0037】本発明の光記録媒体は、透明基板上に、少
なくとも1層のSb系薄膜と少なくとも1層の反応薄膜
とからなる記録層を有する。記録層中において、Sb系
薄膜と反応薄膜とは接している。
【0038】Sb系薄膜は、Sb含有率が95原子%以
上、好ましくは97原子%以上であるSb系材料をスパ
ッタ法などにより成膜したものである。Sb系薄膜の厚
さは、70A 以上とされる。Sb系薄膜中のSb含有率
が低すぎてもSb系薄膜が薄すぎても、Sb系薄膜の結
晶化が困難となり、本発明の効果が実現しなくなる。
【0039】反応薄膜は、Sbとの混合により相変化材
料が生成される材料を成膜したものである。
【0040】<第1の態様:In−Ag−Te−Sb系
>本発明の第1の態様における反応薄膜は、In−Ag
−Te系材料をスパッタ法などにより成膜したものであ
る。In−Ag−Te系材料は、In、AgおよびTe
を主成分とするか、In、Ag、TeおよびSbを主成
分とする。
【0041】In−Ag−Te系材料中のIn、Ag、
TeおよびSbの原子比を 式I−1 (Inx Agy Te1-x-y1-z Sbz で表わしたとき、好ましくは x=0.1〜0.3、 y=0.1〜0.3、 z=0〜0.5 であり、より好ましくは x=0.15〜0.28、 y=0.15〜0.28、 z=0.1〜0.5 であり、さらに好ましくは z=0.2〜0.4 である。
【0042】xが小さすぎると、記録層中のIn含有率
が相対的に低くなりすぎる。このため、記録マークの非
晶質化が不十分となって変調度が低下し、また、信頼性
も低くなってしまう。一方、xが大きすぎると、記録層
中のIn含有率が相対的に高くなりすぎる。このため、
記録マーク以外の反射率が低くなって変調度が低下して
しまう。
【0043】yが小さすぎると、記録層中のAg含有率
が相対的に低くなりすぎる。このため、記録マークの再
結晶化が困難となって、繰り返しオーバーライトが困難
となる。一方、yが大きすぎると、記録層中のAg含有
率が相対的に高くなり、過剰なAgが混合処理時に単独
でSb相中に拡散することになる。このため、書き換え
耐久性が低下すると共に、記録マークの安定性および結
晶質部の安定性がいずれも低くなってしまい、信頼性が
低下する。すなわち、高温で保存したときに記録マーク
の結晶化が進んで、C/Nや変調度が劣化しやすくな
る。また、繰り返して記録を行なったときのC/Nおよ
び変調度の劣化も進みやすくなる。
【0044】また、x+yが小さすぎるとTeが過剰と
なってTe相が形成される。Te相は結晶転移速度を低
下させるため、消去が困難となる。一方、x+yが大き
すぎると、記録層の非晶質化が困難となり、信号が記録
できなくなる可能性が生じる。
【0045】zが大きすぎるても記録層の非晶質化が困
難となり、信号が記録できなくなる可能性が生じる。z
は0であってもよいが、反応薄膜にSbを含有させるこ
とにより書き換え耐久性が向上するため、好ましくはz
が上記範囲となるようにSbを含有させる。zが最適範
囲内の値であるとき、記録層の結晶化温度は最も低くな
るため、記録層形成時に結晶化が進み、混合処理に要す
るエネルギーが著しく小さくなるか、混合処理を施さな
くても十分に安定な書き換えが可能となる。なお、記録
層形成時に結晶化が進んでも、両薄膜が混合することは
ない。すなわち、両薄膜は独立した結晶化膜として存在
する。
【0046】Sb系薄膜および/または反応薄膜は、元
素Mを含むことが好ましい。Mは、H、Si、C、V、
W、Ta、Zn、Ti、Ce、TbおよびYの少なくと
も1種の元素である。元素Mは、書き換え耐久性を向上
させる効果、具体的には、書き換えの繰り返しによる消
去率の低下を抑える効果を示す。また、高温・高湿など
の悪条件下での信頼性を向上させる。このような効果が
強力であることから、元素MのうちV、Ta、Ceおよ
びYの少なくとも1種が好ましく、VおよびTaの少な
くとも1種がより好ましく、Vが特に好ましい。
【0047】元素Mの含有率は、記録層全体で好ましく
は5原子%以下、より好ましくは3原子%以下である。
記録層中でのM含有率が高すぎると、相変化に伴なう反
射率変化が小さくなって十分な変調度が得られなくな
る。上記のような効果を十分に発揮させるためには、記
録層中のM含有率を0.5原子%以上とすることが好ま
しい。
【0048】なお、元素MをSb系材料に含有させる場
合、Sb系材料中のM含有率は5原子%以下、好ましく
は3原子%以下とする。Sb系材料中のM含有率が高す
ぎると、Sb系薄膜が結晶質膜とならず、本発明の効果
が実現しない。Sb系薄膜は、実質的にSbだけ、また
はSbと元素Mとだけからなることが好ましい。
【0049】Sb系薄膜の厚さおよび反応薄膜の厚さ
は、目的とする記録層組成(両薄膜混合後の組成)が得
られるように、両薄膜の組成に応じて適宜決定すればよ
い。
【0050】ただし、Sb系薄膜の厚さは、70A 以
上、好ましくは80A 以上である。Sb系薄膜が薄すぎ
ると、Sb系薄膜が均質な結晶質膜とならずに非晶質状
態となり、本発明の効果が実現しない。
【0051】一方、Sb系薄膜が厚すぎると、それに伴
なって反応薄膜も厚くする必要が生じるので、記録層全
体が厚くなって光吸収が増大する。このため、高反射率
が得られず、変調度も低くなってしまう。Sb系薄膜の
厚さは、好ましくは150A以下、より好ましくは11
0A 以下である。
【0052】また、このようなSb系薄膜の厚さに対応
する反応薄膜の厚さは、好ましくは25〜100A 、よ
り好ましくは30〜90A である。反応薄膜が薄いと連
続膜とならずに島状となることがあるが、第1の態様で
は反応薄膜は連続膜である必要はない。
【0053】なお、本明細書では、各薄膜の厚さを、成
膜レート×成膜時間で算出される計算値で表わす。
【0054】記録層は、1層のSb系薄膜と1層の反応
薄膜とからだけ構成されていてもよいが、記録層を3層
以上の構成とすることにより、書き換え耐久性が著しく
向上し、また、混合に必要なエネルギーを小さくするこ
とができる。記録層中に両薄膜が合計で3層以上存在す
る場合、記録層は、Sb系薄膜と反応薄膜とが交互に同
数積層された偶数層構成であってもよく、両端が同種の
薄膜となる奇数層構成であってもよいが、奇数層構成で
あって記録層両端が反応薄膜であるものが最も好まし
い。記録層両端が反応薄膜である構成、すなわち、すべ
てのSb系薄膜の両側に反応薄膜が存在する構成とする
ことにより、両薄膜構成材料の混合が迅速かつ均一に行
われるので、混合に必要なエネルギーをより小さくする
ことができる。
【0055】なお、両薄膜の積層数が多すぎると記録層
が厚くなりすぎるので、記録層中におけるSb系薄膜と
反応薄膜との間の界面の数は、好ましくは20以下、よ
り好ましくは10以下とする。
【0056】Sb系薄膜と反応薄膜とを合わせた記録層
全体の構成元素の原子比を 式I−2 {(Ina Agb Te1-a-b1-c Sbc
1-dd で表わしたとき、好ましくは a=0.1〜0.3、 b=0.1〜0.3、 c=0.5〜0.8、 d=0〜0.05 であり、より好ましくは a=0.15〜0.28、 b=0.15〜0.28、 c=0.55〜0.65、 d=0.005〜0.05 である。
【0057】a、bを上記範囲に限定する理由は、前記
式I−1におけるx、yの限定理由と同様である。ま
た、dの限定理由、すなわちM含有率の限定理由は、上
述したとおりである。
【0058】上記式I−2においてcが小さすぎると、
相変化に伴なう反射率差は大きくなるが結晶転移速度が
急激に遅くなって消去が困難となる。一方、cが大きす
ぎると、相変化に伴なう反射率差が小さくなって変調度
が小さくなる。
【0059】記録層にはAg、Sb、TeおよびInだ
けを用いることが好ましいが、Agの一部をAuで置換
してもよく、Sbの一部をBiで置換してもよく、Te
の一部をSeで置換してもよく、Inの一部をAlおよ
び/またはPで置換してもよい。
【0060】AuによるAgの置換率は、好ましくは5
0原子%以下、より好ましくは20原子%以下である。
置換率が高すぎると、記録マークが結晶化しやすくなっ
て高温下での信頼性が悪化する。
【0061】BiによるSbの置換率は、好ましくは5
0原子%以下、より好ましくは20原子%以下である。
置換率が高すぎると記録層の吸収係数が増加して光の干
渉効果が減少し、このため結晶−非晶質間の反射率差が
小さくなって変調度が低下し、高C/Nが得られなくな
る。
【0062】SeによるTeの置換率は、好ましくは5
0原子%以下、より好ましくは20原子%以下である。
置換率が高すぎると結晶転移速度が遅くなりすぎ、十分
な消去率が得られなくなる。
【0063】Alおよび/またはPによるInの置換率
は、好ましくは40原子%以下、より好ましくは20原
子%以下である。置換率が高すぎると、記録マークの安
定性が低くなって信頼性が低くなる。なお、AlとPと
の比率は任意である。
【0064】なお、繰り返し書き換え後の記録層の吸収
係数kは、結晶状態のときが3.3程度、微結晶ないし
非晶質のときが2.2程度である。
【0065】記録層中には、微量不純物としてCu、N
i、Zn、Fe、O、N、C等の他の元素が含まれてい
てもよいが、これらの元素の含有率の合計は、0.05
原子%以下であることが好ましい。
【0066】記録層の組成は、電子線プローブマイクロ
アナリシス(EPMA)やX線マイクロアナリシスなど
により測定することができる。
【0067】記録層の厚さは、好ましくは95〜500
A、より好ましくは130〜300Aとする。記録層が
薄すぎると結晶相の成長が困難となり、相変化に伴なう
反射率変化が不十分となる。一方、記録層が厚すぎる
と、記録マーク形成時に記録層の厚さ方向へAgが多量
に拡散し、記録層面内方向へ拡散するAgの比率が小さ
くなってしまうため、記録層の信頼性が低くなってしま
う。また、記録層が厚すぎると、前述したように反射率
および変調度が低くなってしまう。
【0068】<第2の態様:Te−Ge−Sb系>本発
明の第2の態様では、反応薄膜として、Ge−Te系材
料を成膜したものを用いる。Ge−Te系材料は、Ge
およびTeを主成分とするか、Ge、TeおよびSbを
主成分とする。
【0069】Ge−Te系材料中のGe、TeおよびS
bの原子比を 式II−1 Gex Sby Te1-x-y で表わしたとき、好ましくは 0.12≦x≦0.35、 0≦y≦0.30 であり、より好ましくは 0.10≦y である。
【0070】xが小さすぎると、記録マークが結晶化し
にくくなり、消去率が低くなってしまう。xが大きすぎ
ると、多量のTeがGeと結合することになり、その結
果、Sbが析出して記録マークが形成しにくくなる。
【0071】yが大きすぎると、Sbが析出して記録マ
ークが形成しにくくなる。yは0であってもよいが、反
応薄膜にSbを含有させることにより書き換え耐久性が
向上するため、好ましくはyが上記範囲となるようにS
bを含有させる。
【0072】Sb系薄膜の厚さおよび反応薄膜の厚さ
は、目的とする記録層組成(両薄膜混合後の組成)が得
られるように、両薄膜の組成に応じて適宜決定すればよ
いが、好ましくは下記厚さとする。
【0073】Sb系薄膜の厚さは、70A 以上、好まし
くは80A 以上であり、また、好ましくは100A 以
下、より好ましくは90A 以下である。Sb系薄膜が薄
すぎると均質な結晶質膜とならずに非晶質状態となり、
本発明の効果が実現しない。一方、Sb系薄膜が厚すぎ
ると、それに伴なって反応薄膜も厚くする必要が生じる
ので、記録層全体が厚くなって光吸収が増大する。この
ため、高反射率が得られず、変調度も低くなってしま
う。
【0074】また、このようなSb系薄膜の厚さに対応
する反応薄膜の厚さは、好ましくは70〜100A 、よ
り好ましくは80〜90A である。
【0075】第2の態様における記録層は、第1の態様
と同様に3層以上の構成としてもよく、この態様におい
ても記録層両端が反応薄膜である構成が好ましい。記録
層中におけるSb系薄膜と反応薄膜との間の界面の数の
好ましい範囲は、第1の態様と同様である。
【0076】記録層全体の構成元素の原子比を 式II−2 Gea Sbb Te1-a-b で表わしたとき、 0.08≦a≦0.25、 0.20≦b≦0.40 である。
【0077】aを上記範囲に限定する理由は、上述した
式II−1におけるxの限定理由と同様である。
【0078】上記式II−2においてbが小さすぎると、
Teが多くなりすぎるために高温での保存時に記録マー
クが結晶化しやすくなって、信頼性が低くなってしま
う。bが大きすぎると、Sbが析出して記録マークが形
成しにくくなる。
【0079】記録層の厚さは、好ましくは140〜50
0 Aである。記録層が薄すぎると結晶相の成長が困難と
なり、相変化に伴なう反射率変化が不十分となる。一
方、記録層が厚すぎると、前述したように反射率および
変調度が低くなってしまう。
【0080】記録層の形成方法 上記各態様において、Sb系薄膜および反応薄膜の形成
は、いずれもスパッタ法により行うことが好ましい。ス
パッタ条件は特に限定されず、例えば、複数の元素を含
む材料をスパッタする際には、合金ターゲットを用いて
もよく、ターゲットを複数個用いる多元スパッタ法を用
いてもよい。なお、Sb系薄膜と反応薄膜とは、どちら
を先に形成してもよいが、追記型として用いる場合に
は、記録光入射側にSb系薄膜が存在するように、Sb
系薄膜を先に形成する。形成順序をこのようにすること
により、記録前が高反射率で記録後が低反射率となる、
いわゆるHigh To Low 記録が可能となる。
【0081】スパッタ法では、スパッタ室(真空槽)内
を減圧した後、Ar等のスパッタ雰囲気ガスを導入し、
スパッタを行う。本発明では、Sb系薄膜の形成に使用
するスパッタ室について、スパッタ雰囲気ガスを導入す
る前の圧力(以下、到達ガス圧という)を、好ましくは
0.5×10-2Pa以下、より好ましくは0.2×10-2
Pa以下、さらに好ましくは5×10-4Pa以下とする。そ
して、このように減圧したスパッタ室内にAr等のスパ
ッタ雰囲気ガスを導入し、スパッタを行う。このような
条件でSb系薄膜を形成することにより、Sb微細結晶
の生成が促進される。そして、Sb系薄膜と反応薄膜と
の形成が終了した段階で、Sb系薄膜に必要とされる結
晶化が実質的に完了している。したがって、Sb系薄膜
形成の際の到達ガス圧を上記範囲とすることは、前述し
た混合処理に要する時間の短縮に有効である。ただし、
より有効なのは、本発明を上述した追記型の光記録媒体
に適用する場合である。
【0082】本発明を追記型光記録媒体に適用する場
合、混合処理は行わないので、記録層形成時の結晶化の
程度が重要である。到達ガス圧を上記範囲とすれば、S
b系薄膜の結晶化が記録層形成時に実質的に完了するた
め、非晶質化した記録マークとの間の反射率差を大きく
でき、高い変調度が得られる。
【0083】また、到達ガス圧を上記範囲とすること
は、追記型光記録媒体における記録再生特性の安定化に
も有効である。記録光照射により記録マークを形成する
際には、記録マーク周囲の温度も上昇するので、Sb系
薄膜の結晶化が不十分であると、記録マーク形成時にそ
の周囲の反射率が上がってしまう。このため、再生信号
の波形が変形し、ジッターやエラーの悪化原因となる。
これに対し、Sb系薄膜が十分に結晶化していて反射率
が実質的に飽和状態にあれば、記録マーク周囲での反射
率上昇は生じない。
【0084】なお、到達ガス圧を上記範囲とすること
は、特に第1の態様において有効である。
【0085】Sb薄膜と反応薄膜とを同一のスパッタ室
内で形成する場合、到達ガス圧を上記範囲とした後、両
薄膜を続けて形成すればよい。すなわち、反応薄膜の後
にSb系薄膜を形成する場合でも、反応薄膜形成後に再
び上記範囲まで減圧する必要はない。
【0086】スパッタ前の減圧が不十分でSb系薄膜の
結晶性が不十分となったときには、記録層を熱処理すれ
ばSb系薄膜の結晶化を進めることができるので、必要
に応じ結晶化促進のための熱処理を施してもよい。この
ときの熱処理温度は60〜120℃とすることが好まし
い。熱処理温度が低すぎると、結晶化に要する時間が長
くなりすぎる。一方、熱処理温度が高すぎると、ポリカ
ーボネート等の樹脂基板を用いた場合に基板にダメージ
を与えてしまう。熱処理は反射率の向上が飽和するまで
行えばよいので、熱処理時間は特に限定されないが、生
産効率の点では、通常、1時間以下であることが好まし
い。
【0087】なお、本発明を書き換え可能型光記録媒体
に適用する場合には、Sb系薄膜の結晶化が不十分であ
っても混合処理の条件を制御することなどにより解決で
きるので、上記熱処理は、通常、追記型光記録媒体だけ
に適用される。
【0088】上記熱処理は、Sb系薄膜の結晶化の程度
の指標ともなる。上記熱処理により記録層の反射率が向
上する場合には、Sb系薄膜の結晶化が不十分であると
いうことになり、上記熱処理によっても記録層の反射率
が向上しない場合、すなわち、反射率が飽和している場
合には、十分に結晶化していることになる。ただし、熱
処理前の反射率が熱処理後の反射率の95%以上であれ
ば、実用的には十分な特性であるといえるので、熱処理
を施さないで使用することもできる。
【0089】<混合処理および書き換え>本発明の光記
録媒体に対する混合処理および書き換えは、前述したよ
うに行われる。記録パワーは、パルス状に加えてもよ
い。一つの信号を少なくとも2回の照射で記録すること
により記録マークでの蓄熱が抑制され、記録マーク後端
部の膨れ(ティアドロップ現象)を抑えることができる
ので、C/Nが向上する。また、パルス状照射により消
去率も向上する。記録パワーおよび消去パワーの具体的
値は、実験的に決定することができる。なお、再生用レ
ーザー光には、記録層の結晶状態に影響を与えない低パ
ワーのものを用いる。
【0090】本発明の光記録媒体への記録に際し、レー
ザー光に対する記録層の線速度は、通常、0.8〜20
m/s 程度、好ましくは1.2〜16m/s である。第1の
態様では記録層のSb含有率を変更することにより、ま
た、第2の態様では記録層のTe含有率を変更すること
により、それぞれ書き換え可能な最適線速度を制御する
ことができる。具体的には、第1の態様ではSb含有率
を高くすることにより、また、第2の態様ではTe含有
率を高くすることにより、それぞれ書き換え可能な最適
線速度を速くすることができる。
【0091】本発明の光記録媒体は、混合処理、書き換
えおよび再生に用いる光を、広い波長域、例えば100
〜5000nmの範囲から自在に選択できる。
【0092】<媒体構造>本発明の光記録媒体の具体的
な構成例を図1に示す。同図において光記録媒体1は、
基板2上に下部誘電体層3、記録層4、上部誘電体層
5、反射層6および保護層7を有する。なお、記録層4
は2層構成としてある。
【0093】この構成の光記録媒体では基板2を通して
記録層4に光ビームが照射されるので、基板2は、用い
る光ビームに対して実質的に透明である材質、例えば、
樹脂やガラスなどから構成されることが好ましい。これ
らのうち、取り扱いが容易で安価であることなどから、
基板の材質としては樹脂が好ましい。具体的には、アク
リル樹脂、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリオレ
フィン等の各種樹脂を用いればよい。基板の形状および
寸法は特に限定されないが、通常、ディスク状とし、厚
さは0.5〜3mm程度、直径は50〜360mm程度とす
る。基板の表面には、トラッキング用やアドレス用等の
ために、グルーブ等の所定のパターンが必要に応じて設
けられる。
【0094】下部誘電体層3は、記録層の酸化を防ぎ、
また、記録時に記録層から基板に伝わる熱を遮断して基
板を保護する。上部誘電体層5は、記録層を保護すると
共に、記録後、記録層に残った熱を熱伝導により放出す
るために設けられる。また、両誘電体層を設けることに
より、変調度を向上させることができる。各誘電体層に
用いる誘電体は特に限定されず、例えば、SiO2 等の
酸化ケイ素やSi34 等の窒化ケイ素、ZnS等の硫
化亜鉛、あるいはこれらの混合物など、透明な各種セラ
ミックスを用いればよく、また、各種ガラスなどを用い
てもよい。また、例えば、La、Si、OおよびNを含
有する所謂LaSiONや、Si、Al、OおよびNを含有す
る所謂SiAlON、あるいはYを含有するSiAlON等も好まし
く用いることができる。これらの中では、例えば波長4
00〜850nmの範囲での屈折率が1.4以上であるも
のが好ましく、特に屈折率が1.8以上であるものが好
ましい。なお、上記波長範囲は、現在のCDプレーヤの
使用波長である780nmや、次世代の記録波長として実
用化が進められている630〜680nmを含むものであ
り、本発明の光記録媒体に対し好ましく使用される波長
範囲である。使用する誘電体材料は、具体的にはSi3
4 、ZnSとSiO2 との混合物、ZnSとSi3
4 との混合物、ZnSとTa25 との混合物などが好
ましい。下部誘電体層3の厚さは、好ましくは500〜
3000 A、より好ましくは1000〜2500 Aとす
る。下部誘電体層をこのような厚さとすることにより、
記録に際しての基板損傷を効果的に防ぐことができ、し
かも変調度も高くなる。上部誘電体層5の厚さは、好ま
しくは100〜300 A、より好ましくは150〜20
0 Aとする。上部誘電体層をこのような厚さとすること
により冷却速度が速くなるので、記録マークのエッジが
明瞭となってジッターが低くなる。また、このような厚
さとすることにより、変調度を高くすることができる。
【0095】なお、例えば後述するように、下部誘電体
層3および/または上部誘電体層5を、組成の異なる2
層以上の誘電体層から構成してもよい。
【0096】各誘電体層は、スパッタ法や蒸着法等の気
相成長法により形成することが好ましい。
【0097】反射層6の材質は特に限定されないが、通
常、Al、Au、Ag、Pt、Cu等の単体あるいはこ
れらの1種以上を含む合金などの高反射率金属から構成
すればよい。反射層の厚さは、300〜2000 Aとす
ることが好ましい。厚さが前記範囲未満であると十分な
反射率が得にくくなる。また、前記範囲を超えても反射
率の向上は小さく、コスト的に不利になる。反射層は、
スパッタ法や蒸着法等の気相成長法により形成すること
が好ましい。
【0098】保護層7は、耐擦傷性や耐食性の向上のた
めに設けられる。この保護層は種々の有機系の物質から
構成されることが好ましいが、特に、放射線硬化型化合
物やその組成物を、電子線、紫外線等の放射線により硬
化させた物質から構成されることが好ましい。保護層の
厚さは、通常、0.1〜100μm 程度であり、スピン
コート、グラビア塗布、スプレーコート、ディッピング
等、通常の方法により形成すればよい。
【0099】媒体からの反射率を高くするためには、下
部誘電体層が屈折率の相異なる2層の誘電体層からなる
積層体を少なくとも1つ含み、前記積層体において屈折
率のより高い誘電体層が基板側に存在する構成とするこ
とが好ましい。この構成における好ましい例を図2に示
す。図2において光記録媒体1は、基板2上に高屈折率
層31、低屈折率層32、記録層4、上部誘電体層5、
反射層6および保護層7を有する。この構成では、高屈
折率層31および低屈折率層32が上記積層体となる。
【0100】高屈折率層31を構成する誘電体材料は、
上記した誘電体材料のうち比較的高屈折率のもの、例え
ば、波長400〜850nmでの屈折率が2以上であるも
のが好ましい。
【0101】低屈折率層32を構成する誘電体材料は、
比較的低屈折率のもの、例えば、波長400〜850nm
での屈折率が2未満のものが好ましい。このような誘電
体材料としては、SiO2 、MgF2 、CaF2 、Li
2 やこれらの混合物などが好ましい。なお、このよう
な積層体を2以上重ねればさらに反射率が向上するが、
積層体数が多すぎると変調度の低下が著しくなるため、
積層体の数は1〜2とすることが好ましい。
【0102】高屈折率層31の厚さは500〜1500
Aとすることが好ましく、低屈折率層32の厚さは30
0〜1500 Aとすることが好ましい。また、積層体を
2つ設ける場合には、基板側の積層体では、高屈折率層
が好ましくは750〜900A、より好ましくは800
〜850 A、低屈折率層が好ましくは400〜500A
であり、記録層側の積層体では、高屈折率層が好ましく
は750〜900 A、より好ましくは800〜850
A、低屈折率層が好ましくは1000〜1400A、より
好ましくは1200〜1300 Aである。
【0103】基板2、記録層4、上部誘電体層5、反射
層6および保護層7については、図1に示す構成例と同
様である。
【0104】図5に、本発明の光記録媒体の他の構成例
を示す。この構成の光記録媒体では、オーバーライトに
よるジッター増大をさらに抑制することが可能である。
以下、図5の構成を選択する理由を説明する。
【0105】相変化型光記録媒体では、結晶−非結晶間
の反射率の違いを利用するため、記録マーク以外の領域
(結晶状態)における記録層の吸収率(Ac)と記録マ
ーク(非結晶状態)における記録層の吸収率(Aa)と
が異なることが多く、一般にAc<Aaとなっている。
なお、AcおよびAaは、いずれも記録再生用レーザー
光の波長における値である。このため、オーバーライト
領域が結晶であったか非結晶であったかによって記録感
度および消去率が異なることになる。この結果、オーバ
ーライトによって形成される記録マークに長さおよび幅
のばらつきが生じて、ジッターが大きくなり、エラーと
なることもある。高密度化のために記録マークの両端に
情報を担持させるマークエッジ記録を行っている場合に
は、記録マークの長さの変動の影響を受けやすいため、
エラーがさらに多くなってしまう。この問題を解決する
ためには、AcをAaに近づけて好ましくはAc/Aa
≧0.9とし、より好ましくはAc=Aaとし、さらに
好ましくは、潜熱の影響を考慮してAc>Aaとするこ
とが望ましい。このためには、記録層やそれを挟んで設
けられる誘電体層の厚さを制御すればよいが、通常の構
造の媒体では、Ac/Aa≧0.9とすると、記録マー
ク以外の領域における媒体からの反射率(Rc)と記録
マークにおける媒体からの反射率(Ra)との差が小さ
くなって、C/Nが低くなるという問題が生じてしま
う。
【0106】このような事情から、例えば特開平8−1
24218号公報では、基体上に第1誘電体層、記録
層、第2誘電体層、反射層、第3誘電体層、紫外線硬化
樹脂層を順に積層した構成の光学情報記録媒体におい
て、Ac>Aaとし、反射層として透過性の極薄金属
膜、SiまたはGeを用い、第3誘電体層として屈折率
が1.5より大きな誘電体を用いる旨の提案がなされて
いる。光透過性の反射層と高屈折率の第3誘電体層とを
設けることにより、Rc−Raを大きく保ったままAc
/Aaを上記範囲とすることが可能となる。
【0107】なお、AcおよびAaは、各層の光学定数
と記録再生用レーザー光の波長とから、算出することが
できる。
【0108】図5の光記録媒体は、反射層6を上記特開
平8−124218号公報に記載された反射層と同様な
構成とし、反射層6と保護層7との間に最上部誘電体層
8を設けた片面記録型媒体である。基体2、下部誘電体
層3、記録層4、上部誘電体層5および保護層7は、図
1に示す光記録媒体と同様な構成である。なお、図1、
図2および図5のそれぞれには片面記録型媒体を示して
あるが、このような媒体を2枚接着して両面記録型媒体
としたり、片面記録型媒体に保護基体を接着したりして
もよい。
【0109】図5において反射層6は、光透過率が高い
極薄の金属層から構成されるか、記録・再生波長が含ま
れる近赤外から赤外域にかけての透過性が高いSiやG
e等から構成されることが好ましい。反射層の厚さは、
記録層の記録マーク以外の領域と記録マークとの間での
吸収率差を補正できるように適宜決定すればよい。反射
層の好ましい厚さ範囲は構成材料によって大きく異なる
ので、構成材料に応じて厚さを適宜決定すればよい。例
えばAu等の金属を用いる場合には、反射層の厚さを好
ましくは400 A以下、より好ましくは100〜300
Aとし、SiまたはGeを用いる場合には、反射層の厚
さを好ましくは800 A以下、より好ましくは400〜
700 Aとする。反射層が薄すぎるとC/Nの低下を招
き、反射層が厚すぎると前述した吸収率補正効果が不十
分となる。
【0110】反射層を金属から構成する場合、Auまた
はAu合金が好ましい。Au合金としては、Auを主成
分とし、Al、Cr、Cu、Ge、Co、Ni、Mo、
Ag、Pt、Pd、Ta、Ti、BiおよびSbの少な
くとも1種を含むものが好ましい。
【0111】この反射層も、スパッタ法や蒸着法等の気
相成長法により形成することが好ましい。
【0112】反射層6上に必要に応じて設けられる最上
部誘電体層8は、好ましくは保護層7よりも屈折率の高
い材料から構成する。このような最上部誘電体層を設け
ることにより、前記特開平8−124218号公報記載
の発明と同様に、記録マークとそれ以外の領域との間の
反射率差を大きく保ったまま、前記Ac/Aaを大きく
することができる。
【0113】最上部誘電体層の構成材料は、下部誘電体
層および上部誘電体層の説明において挙げた各種誘電体
から選択すればよい。
【0114】最上部誘電体層の厚さは、好ましくは30
0〜1200 A、より好ましくは400〜900 Aであ
る。最上部誘電体層が薄すぎると信号出力が低くなって
しまい、厚すぎると、隣接トラックの信号が消去される
現象(クロスイレーズ)が生じてしまう。
【0115】上記したようにAcとAaとを制御する構
造では、透明基板の下側から記録再生用のレーザー光を
照射したときの透過率、すなわち入射光に対する透過光
の比率が、1%以上であることが好ましく、3%以上で
あることがより好ましい。この場合の透過率は、透明基
板上に無機層だけが存在する状態で測定した値である。
すなわち、図5の構成において保護層7を除いた状態で
あり、記録層、誘電体層、反射層等の無機層間での多重
反射の結果としての透過率を意味する。透過率がこのよ
うな範囲にあれば、Aaに対するAcの比率が向上す
る。そして、Ac/Aaを上記した好ましい範囲とする
ことが容易となる。
【0116】なお、上記透過率は、分光光度計で測定す
ればよい。測定する領域は特に限定されず、結晶質部で
あっても非晶質部であってもよいが、通常は、グルーブ
の存在しない結晶質領域(ミラー部)で測定すればよ
い。
【0117】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0118】<実施例1>In−Ag−Te−Sb系(Sb系薄膜→反応薄膜) 射出成形によりグルーブを同時形成した直径120mm、
厚さ0.6mmのディスク状ポリカーボネート基板2の表
面に、下部誘電体層3、記録層4、上部誘電体層5、反
射層6および保護層7を形成し、図1の構成を有する光
記録ディスクとした。グルーブは、幅0.74μm 、深
さ650A 、ピッチ1.48μm とした。
【0119】下部誘電体層3は、ZnSおよびSiO2
をターゲットとしてスパッタ法により形成した。SiO
2 /(ZnS+SiO2 )は15モル%とした。下部誘
電体層の波長780nmにおける屈折率は、2.33であ
った。下部誘電体層3の厚さは2000 Aとした。
【0120】次に、スパッタ装置の真空槽内を0.04
×10-2Paまで減圧した後、Arガスを導入して圧力を
5×10-1Paとし、スパッタ法により厚さ90A のSb
系薄膜(Sb100%)を、続いて厚さ80A の反応薄
膜{(Ag0.25In0.25Te0.50.7 Sb0.3 }を形
成し、記録層4とした。反応薄膜の組成はICPにより
測定した。なお、本明細書の実施例では、記録層の組成
をすべて原子比で表わしてある。
【0121】記録層の結晶状態を電子線回折により調べ
たところ、Sb系薄膜が結晶化していることが確認され
た。一方、反応薄膜は非晶質であった。この記録層の電
子線回折像は、図3に示されるものと同様であった。な
お、図3は、厚さ120A のSb系薄膜(Sb100
%)と厚さ50A の反応薄膜(Ag0.25In0.2 Te0.
55)とを積層した記録層の電子線回折像である。図3か
ら、Sb結晶が存在することがわかる。また、図3にお
いて分析された記録層表面の透過型電子顕微鏡写真を、
図4に示す。図4において、明度の高い領域がSb系薄
膜であり、明度の低い領域が反応薄膜である。この反応
薄膜は連続膜ではなく、島状であることがわかる。一
方、Sb系薄膜は連続膜となっている。
【0122】上部誘電体層5は、下部誘電体層3と同様
にして形成した。上部誘電体層5の厚さは200 Aとし
た。
【0123】反射層6はAuをターゲットに用いてスパ
ッタ法により形成し、厚さは1500A とした。保護層
7は、紫外線硬化型樹脂をスピンコート法により塗布
後、紫外線照射により硬化して形成した。硬化後の保護
層厚さは5μm であった。
【0124】このようにして作製した相変化型光記録デ
ィスクを、サンプル1Aとした。
【0125】比較のために、合金ターゲットを用いて単
層構造の記録層を形成した以外はサンプル1Aと同様に
して、サンプル1Bを作製した。サンプル1Bの記録層
の厚さは、サンプル1AのSb系薄膜と反応薄膜との合
計厚さと同じとし、また、サンプル1Bの記録層の組成
は、サンプル1AのSb系薄膜と反応薄膜とを合わせた
ものとした。
【0126】反射率は、サンプル1Aが15%、サンプ
ル1Bが6%であった。なお、本明細書の実施例におけ
る反射率は、基板側から測定した値であり、測定波長は
680nmである。また、反射率は、ディスク評価機のR
F信号出力を換算することにより求めた。
【0127】サンプル1Bを線速度3m/s で回転させな
がら、出力8mWのレーザー光を照射することにより、記
録層の初期化(結晶化)を行った。なお、本明細書の実
施例におけるレーザー光は、波長680nmのものであ
る。初期化後、反射率は20%に向上していた。また、
初期化後、書き換え可能な最適線速度を測定したとこ
ろ、6m/s であった。
【0128】次に、サンプル1Aを、サンプル1Bにお
ける書き換え可能な最適線速度より速い8m/s (初期化
時の線速度の約2.7倍)で回転させながら、出力8mW
のレーザー光を照射した。レーザー光照射後、反射率は
10%に低下し、Sb系薄膜と反応薄膜とが混合された
ことがわかった。
【0129】次に、両サンプルについて、記録消去特性
の比較を行った。
【0130】各サンプルを、サンプル1Bにおける書き
換え可能な最適線速度6m/s で回転させながら、記録パ
ワー10mW、消去パワー5mWで1−7変調の信号を記録
したした。記録後の反射率は、消去パワーを加えた結晶
質部では両サンプルとも20%であり、記録マークの非
晶質部では両サンプルとも8%であった。そして、7T
(249.48ns)信号のC/Nは、両サンプルとも5
5 dB であり、十分な信号強度が得られた。しかし、サ
ンプル1Bの消去率は、書き換え回数5回目まで安定し
なかった。具体的には、初回から6回目までの書き換え
で消去率が−22 dB から−28 dB まで向上した。書
き換え6回目以降は、消去率は−28 dB でほぼ安定し
たが、約1万回の書き換え後には消去率が−25 dB を
上回ってしまい、書き換えが困難となった。一方、サン
プル1Aの消去率は、書き換え初回から10万回目程度
まで−30 dB と安定していた。
【0131】この実施例の結果から、本発明においてS
b系薄膜と反応薄膜との混合処理に要する時間は、従来
の初期化に要する時間よりも著しく短いことがわかる。
そして、本発明では、従来と同等以上の記録再生特性が
得られ、特に、本発明により書き換え可能回数が約10
倍向上することがわかる。
【0132】<実施例2>In−Ag−Te−Sb系(反応薄膜→Sb系薄膜) 反応薄膜の次にSb系薄膜を形成した以外は実施例1の
サンプル1Aと同様にして、サンプル2を作製した。記
録層形成工程における真空槽内の到達ガス圧も、同様と
した。サンプル2の反射率は13%であった。電子線回
折の結果、Sb系薄膜が結晶化していることが確認され
た。一方、反応薄膜は非晶質であった。
【0133】サンプル2について、サンプル1Aと同様
にしてSb系薄膜と反応薄膜との混合を行った。レーザ
ー光照射後、反射率はサンプル1Aと同様に10%とな
り、混合されていることが確認された。
【0134】次に、サンプル2について、サンプル1A
と同様にして記録消去特性を調べたところ、記録後の反
射率および7T(249.48ns)信号のC/Nはサン
プル1Aと同じであった。また、消去率も、サンプル1
Aと同様に書き換え初回から10万回目程度まで−30
dB と安定していた。
【0135】<実施例3>In−Ag−Te−Sb系(V添加) Sb系薄膜の組成をSb991 とした以外は実施例1の
サンプル1Aと同様にして、サンプル3を作製した。記
録層形成工程における真空槽内の到達ガス圧も、同様と
した。サンプル3の反射率は、15%であった。電子線
回折の結果、Sb系薄膜が結晶化していることが確認さ
れた。
【0136】サンプル3について、サンプル1Aと同様
にしてSb系薄膜と反応薄膜との混合を行った。レーザ
ー光照射後、反射率は13%であった。
【0137】次に、サンプル3について、記録パワーを
12mWとやや大きくした以外はサンプル1Aと同様にし
て記録消去特性を調べたところ、消去パワーを加えた結
晶質部では20%でありサンプル1Aと同じであった
が、記録マークの非晶質部では6%と低くなった。そし
て、7T(249.48ns)信号のC/Nは58 dB と
高くなり、信号強度の向上が認められた。また、消去率
は、書き換え初回から15万回目程度まで−30 dB と
安定しており、書き換え可能回数がサンプル1Aの約
1.5倍、サンプル1Bの約15倍まで向上することが
確認された。
【0138】<実施例4>In−Ag−Te−Sb系(Ta添加) Sb系薄膜の組成をSb99Ta1 とした以外は実施例2
のサンプル2と同様にして、サンプル4を作製した。記
録層形成工程における真空槽内の到達ガス圧も、同様と
した。サンプル4の反射率は、15%であった。電子線
回折の結果、Sb系薄膜が結晶化していることが確認さ
れた。
【0139】サンプル4について、サンプル2と同様に
してSb系薄膜と反応薄膜との混合を行った。レーザー
光照射後、反射率は9%であった。
【0140】次に、サンプル4について、記録パワーを
12mWとやや大きくした以外はサンプル2と同様にして
記録消去特性を調べたところ、消去パワーを加えた結晶
質部では22%、記録マークの非晶質部では10%と、
いずれもサンプル2よりもやや高くなった。そして、7
T(249.48ns)信号のC/Nは58 dB と高くな
り、信号強度の向上が認められた。また、消去率は、書
き換え初回から13万回目程度まで−30 dB と安定し
ており、書き換え可能回数がサンプル2の約1.3倍、
サンプル1Bの約13倍まで向上することが確認され
た。
【0141】<実施例5>In−Ag−Te−Sb系(3層構造) 記録層を3層構成とした以外は実施例1のサンプル1A
と同様にして、サンプル5を作製した。記録層形成工程
における真空槽内の到達ガス圧も、同様とした。記録層
は、基板側から、反応薄膜、Sb系薄膜、反応薄膜の順
で形成した。Sb系薄膜は、サンプル1Aと同組成で厚
さは90A とし、反応薄膜はサンプル1Aと同組成で厚
さは40A とした。記録層の全厚は、サンプル1Aと同
じ170A となる。サンプル5の反射率は、18%であ
った。電子線回折の結果、Sb系薄膜が結晶化している
ことが確認された。一方、反応薄膜は非晶質であった。
【0142】サンプル5について、サンプル1Aと同様
にしてSb系薄膜と反応薄膜との混合を行った。レーザ
ー光照射後、反射率は15%であった。
【0143】次に、サンプル5について、記録パワーを
12mWとやや大きくした以外はサンプル1Aと同様にし
て記録消去特性を調べたところ、消去パワーを加えた結
晶質部では25%でありサンプル1Aよりも高くなっ
た。一方、記録マークの非晶質部では8%であり、サン
プル1Aと同じであった。そして、7T(249.48
ns)信号のC/Nは56 dB と高くなり、信号強度の向
上が認められた。また、消去率は、書き換え初回から2
0万回目程度まで−30 dB と安定しており、書き換え
可能回数がサンプル1Aの約2倍、サンプル1Bの約2
0倍まで向上することが確認された。
【0144】<実施例6>In−Ag−Te−Sb系(追記型) まず、厚さ80A のSb系薄膜(Sb100%)をスパ
ッタ法により形成し、次いで、厚さ100A の反応薄膜
(Ag0.25In0.25Te0.5 )を、いずれもスパッタ法
により形成し、記録層とした。記録層をこのようにして
形成した以外は実施例1のサンプル1Aと同様にして、
サンプル6を作製した。なお、記録層形成工程における
真空槽内の到達ガス圧も、サンプル1Aのときと同様と
した。サンプル6の反射率は20%であった。電子線回
折の結果、Sb系薄膜が結晶化していることが確認され
た。一方、反応薄膜は非晶質であった。
【0145】次に、サンプル6を、線速度6m/s で回転
させながら、消去パワーを加えず記録パワー10mWで1
−7変調の信号を記録した。記録マークの非晶質部にお
ける反射率は8%であった。そして、7T(249.4
8ns)信号のC/Nは55 dB であり、十分な信号強度
が得られた。
【0146】記録後のサンプル6について、書き込み時
と同じ線速度6m/s でレーザー光を照射したところ、レ
ーザー光のパワーによらず記録マークを消去(結晶化)
できなかった。また、消去を容易にするために、線速度
をコンパクトディスクと同じ1.2m/s まで遅くした場
合でも、同様に消去は不可能であった。なお、消去が可
能となったのは、線速度を0.6m/s まで遅くしたとき
であった。
【0147】この結果から、本発明では、追記型として
使用可能な相変化型光記録媒体を初期化操作なしで実現
できることがわかる。
【0148】記録層形成工程における到達ガス圧による
比較 記録層形成工程における到達ガス圧を変えたほかはサン
プル6と同様にして、下記表1に示すサンプルを作製し
た。これらのサンプルの反射率を表1に示す。次に、こ
れらのサンプルをドライオーブンに投入して80℃で熱
処理した。ドライオーブンから取り出したサンプルを十
分に冷却した後、再び反射率を測定した。このようにし
て、反射率が飽和するまでの熱処理時間を求めた。結果
を表1に示す。なお、表1には、サンプル6についての
結果も示してある。
【0149】
【表1】
【0150】表1から、到達ガス圧が0.5×10-2Pa
より高い場合には、反射率が飽和するまでに長時間の熱
処理が必要であって、量産効率が著しく低くなることが
わかる。これに対し到達ガス圧が0.5×10-2Pa以
下、特に0.2×10-2Pa以下であると、反射率の飽和
に要する熱処理時間が短くて済み、量産効率が高くなる
ことがわかる。そして、サンプル6では、作製時に既に
反射率が飽和しており、熱処理の必要がないことがわか
る。なお、各サンプルの飽和反射率は、サンプル6の反
射率と同じであった。
【0151】<実施例7>Te−Ge−Sb系(Sb系薄膜→反応薄膜) まず、厚さ76A のSb系薄膜(Sb100%)を、次
いで、厚さ264A の反応薄膜(Ge2 Te5 )を、い
ずれもスパッタ法により形成し、記録層とした。なお、
記録層形成工程における真空槽内の到達ガス圧は、実施
例1と同様とした。記録層をこのようにして形成した以
外は実施例1のサンプル1Aと同様にして、サンプル7
Aを作製した。電子線回折の結果、サンプル7AではS
b系薄膜が結晶化していることが確認された。一方、反
応薄膜は、非晶質状態であった。
【0152】比較のために、合金ターゲットを用いて単
層構造の記録層を形成した以外はサンプル7Aと同様に
して、サンプル7Bを作製した。サンプル7Bの記録層
の厚さは、サンプル7AのSb系薄膜と反応薄膜との合
計厚さと同じとし、また、サンプル7Bの記録層の組成
は、サンプル7AのSb系薄膜と反応薄膜とを合わせた
ものとした。
【0153】各サンプルについて、反射率を測定したと
ころ、サンプル7Aは13%、サンプル7Bは4%であ
った。
【0154】サンプル7Bを線速度3m/s で回転させな
がら、出力8mWのレーザー光を照射することにより、記
録層の初期化(結晶化)を行った。初期化後、反射率は
18%に向上していた。また、初期化後、書き換え可能
な最適線速度を測定したところ、6m/s であった。
【0155】次に、サンプル7Aを、サンプル7Bの書
き換え可能な最適線速度6m/s より速い8m/s (初期化
時の線速度の約2.7倍)で回転させながら、出力8mW
のレーザー光を照射した。レーザー光照射後、反射率は
8%となり、Sb系薄膜と反応薄膜とが混合されたこと
がわかった。
【0156】次に、両サンプルについて、記録消去特性
の比較を行った。
【0157】各サンプルを、サンプル7Bにおける書き
換え可能な最適線速度6m/s で回転させながら、記録パ
ワー10mW、消去パワー5mWで1−7変調の信号を記録
した。記録後の反射率は、消去パワーを加えた結晶質部
では両サンプルとも18%であり、記録マークの非晶質
部では両サンプルとも5%であった。そして、7T(2
49.48ns)信号のC/Nは、両サンプルとも55 d
B であり、十分な信号強度が得られた。しかし、サンプ
ル7Bの消去率は、書き換え回数10回目まで安定しな
かった。具体的には、初回から11回目までの書き換え
で消去率が−20 dB から−28 dB まで向上した。書
き換え11回目以降は、消去率は−28dB でほぼ安定
したが、約4千回の書き換え後には消去率が−25 dB
を上回ってしまい、書き換えが困難となった。一方、サ
ンプル7Aの消去率は、書き換え初回から1万回目程度
まで−28 dB と安定していた。
【0158】この実施例の結果から、記録層をTe−G
e−Sb系のものとした場合でも、実施例1と同様な効
果が実現することがわかる。
【0159】<実施例8>Te−Ge−Sb系(反応薄膜→Sb系薄膜) 反応薄膜の次にSb系薄膜を形成した以外は実施例7の
サンプル7Aと同様にして、サンプル8を作製した。サ
ンプル8の反射率は、11%であった。電子線回折の結
果、Sb系薄膜が結晶化していることが確認された。一
方、反応薄膜は非晶質であった。
【0160】サンプル8について、サンプル7Aと同様
にしてSb系薄膜と反応薄膜との混合を行った。レーザ
ー光照射後、反射率はサンプル7Aと同様に8%となっ
た。
【0161】次に、サンプル8について、サンプル7A
と同様にして記録消去特性を調べたところ、記録後の反
射率および7T(249.48ns)信号のC/Nはサン
プル7Aと同じであった。また、消去率も、サンプル7
Aと同様に書き換え初回から1万回目程度まで−28 d
B と安定していた。
【0162】<比較例>記録層を4層構成とした以外は
実施例1のサンプル1Aと同様にして、サンプルを作製
した。記録層は、基板側から、Sb系薄膜、反応薄膜、
Sb系薄膜、反応薄膜の順で形成した。Sb系薄膜は、
サンプル1Aと同組成で厚さは45A とし、反応薄膜は
サンプル1Aと同組成で厚さは40A とした。記録層の
全厚は、サンプル1Aと同じ170A となる。電子線回
折の結果、Sb系薄膜が非晶質であることが確認され
た。また、反応薄膜も非晶質であった。
【0163】このサンプルは、反射率が4%と著しく低
かった。このサンプルに、サンプル1Aと同条件で混合
処理を施したところ、反射率は5%となった。混合処理
後、書き換え用レーザー光を照射したところ、消去パワ
ーを加えた領域が結晶化せず、記録媒体としての使用が
不可能であった。
【0164】なお、このサンプルに対し、混合処理の代
わりにサンプル1Bと同条件で初期化処理を施したとこ
ろ、反射率は20%まで向上した。
【0165】この比較例の結果から、Sb系薄膜が薄す
ぎて結晶化していないと、本発明の効果が実現しないこ
とがわかる。
【0166】<実施例9>図5の構成[In−Ag−Te−Sb系(Sb系薄膜→
反応薄膜)] 図5に示す構成の光記録ディスクサンプル9を作製し
た。
【0167】このサンプル9では、下部誘電体層3の厚
さを2300 Aとし、Sb系薄膜の厚さを85 Aとし、
反応薄膜の厚さを75 Aとし、反射層6の厚さを100
Aとし、最上部誘電体層8の組成を下部誘電体層と同じ
とし、その厚さを500 Aとしたほかは、実施例1のサ
ンプル1Aと同様とした。
【0168】波長680nmにおけるサンプル9のAc/
Aaは、0.94となる。また、保護層7を除いた状態
で基板2側から波長680nmのレーザー光を照射し、ミ
ラー部における透過率を分光光度計で測定したところ、
8.4%であった。
【0169】サンプル9の反射率は、17%であった。
サンプル9について、サンプル1Aと同様にしてSb系
薄膜と反応薄膜との混合を行った後、記録消去特性を調
べたところ、サンプル1Aと同様な特性が得られた。
【0170】以上の各実施例の結果から、本発明の効果
が明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光記録媒体の構成例を示す部分断面図
である。
【図2】本発明の光記録媒体の構成例を示す部分断面図
である。
【図3】結晶構造を表わす図面代用写真であって、Sb
系薄膜の上にIn−Ag−Te系反応薄膜を積層した構
成の記録層の電子線回折像である。
【図4】薄膜を表わす図面代用写真であって、Sb系薄
膜の上にIn−Ag−Te系反応薄膜を積層した構成の
記録層の透過型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の光記録媒体の構成例を示す部分断面図
である。
【符号の説明】
1 光記録媒体 2 基板 3 下部誘電体層 31 高屈折率層 32 低屈折率層 4 記録層 5 上部誘電体層 6 反射層 7 保護層 8 最上部誘電体層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G11B 7/26 531 G11B 7/26 531 (72)発明者 菊川 隆 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板上に、少なくとも1層のSb系
    薄膜と少なくとも1層の反応薄膜とからなる記録層を有
    し、Sb系薄膜と反応薄膜とが接しており、Sb系薄膜
    が、Sbを95原子%以上含有するSb系材料を成膜し
    たものであって、かつ、厚さが70A 以上であり、反応
    薄膜構成材料がSbとの混合により相変化記録材料とな
    るものである光記録媒体。
  2. 【請求項2】 Sb系薄膜が結晶化している請求項1の
    光記録媒体。
  3. 【請求項3】 反応薄膜が、In、AgおよびTeを主
    成分とするか、In、Ag、TeおよびSbを主成分と
    するIn−Ag−Te系材料を成膜したものである請求
    項1または2の光記録媒体。
  4. 【請求項4】 In−Ag−Te系材料中のIn、A
    g、TeおよびSbの原子比を 式I−1 (Inx Agy Te1-x-y1-z Sbz で表わしたとき、 x=0.1〜0.3、 y=0.1〜0.3、 z=0〜0.5 である請求項3の光記録媒体。
  5. 【請求項5】 Sb系材料およびIn−Ag−Te系材
    料の少なくとも一方が元素M(Mは、H、Si、C、
    V、W、Ta、Zn、Ti、Ce、TbおよびYの少な
    くとも1種)を含有し、記録層中の元素M含有率が5原
    子%以下であり、かつSb系材料の元素M含有率が5原
    子%以下である請求項3または4の光記録媒体。
  6. 【請求項6】 記録層中において、Agの一部がAuで
    置換されている請求項3〜5のいずれかの光記録媒体。
  7. 【請求項7】 記録層中において、Sbの一部がBiで
    置換されている請求項3〜6のいずれかの光記録媒体。
  8. 【請求項8】 記録層中において、Teの一部がSeで
    置換されている請求項3〜7のいずれかの光記録媒体。
  9. 【請求項9】 記録層中において、Inの一部がAlお
    よび/またはPで置換されている請求項3〜8のいずれ
    かの光記録媒体。
  10. 【請求項10】 反応薄膜が、GeおよびTeを主成分
    とするか、Ge、TeおよびSbを主成分とするGe−
    Te系材料を成膜したものである請求項1または2の光
    記録媒体。
  11. 【請求項11】 記録層中におけるSb系薄膜と反応薄
    膜との間の界面の数が20以下である請求項1〜10の
    いずれかの光記録媒体。
  12. 【請求項12】 透明基板側から反射率を測定したと
    き、製造直後の反射率R0 と、繰り返し記録後の記録層
    の結晶質部における反射率RC と、繰り返し記録後の記
    録層の非晶質部における最低反射率RA との関係が RA <R0 ≦RC である請求項1〜11のいずれかの光記録媒体。
  13. 【請求項13】 記録再生用のレーザー光波長における
    記録層の吸収率を、結晶質部でAcとし、非結晶質部で
    Aaとしたとき、 Ac/Aa≧0.9 であるか、前記透明基板の下側から記録再生用のレーザ
    ー光を照射したとき、透過率が1%以上であるか、 Ac/Aa≧0.9 であって、かつ前記透過率が1%以上である請求項1〜
    12のいずれかの光記録媒体。
  14. 【請求項14】 レーザー光照射によりSb系薄膜構成
    材料と反応薄膜構成材料との混合が生じて記録マークが
    形成され、かつ記録マーク形成時の線速度でレーザー光
    を照射したときには記録マークの結晶化が不可能である
    請求項1〜11のいずれかの光記録媒体。
  15. 【請求項15】 請求項1〜13のいずれかの光記録媒
    体の記録層を連続したレーザー光で照射することによ
    り、Sb系薄膜構成材料と反応薄膜構成材料との混合を
    行う混合処理工程を有する光記録媒体の製造方法。
  16. 【請求項16】 混合処理工程において、レーザー光に
    対する記録層の線速度VM を、書き換えを行うときのレ
    ーザー光に対する記録層の線速度VW に対し 0.2VW ≦VM となるように制御する請求項15の光記録媒体の製造方
    法。
  17. 【請求項17】VW ≦VM となるように制御する請求項16の光記録媒体の製造方
    法。
  18. 【請求項18】 請求項1〜14のいずれかの光記録媒
    体を製造する方法であって、0.5×10-2Pa以下まで
    減圧した後にスパッタ雰囲気ガスを導入したスパッタ室
    内において、Sb系薄膜のスパッタを行う光記録媒体の
    製造方法。
  19. 【請求項19】 請求項1〜14のいずれかの光記録媒
    体を製造する方法であって、記録層形成後、60〜12
    0℃で熱処理する工程を有する光記録媒体の製造方法。
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