JP4020773B2 - スピーカ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピーカ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スピーカ装置としては、従来より種々のものが開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
また、近年家庭用や車載用としてよく用いられているスピーカ装置としては、図1に示すようなものがある。このスピーカ装置100は、ムービングコイル方式によるものであり、ポールヨーク106の上部に環状マグネット104が配置され、この環状マグネット104の上部に環状プレート105が配置されている。これらポールヨーク106、環状マグネット104、環状プレート105によって磁気回路107が形成されている。
【0003】
磁気回路107の磁気ギャップ107aには、ボイスコイルボビン103の端部に巻回されたボイスコイル102が配置されており、ボイスコイルボビン103は略円錐形状のコーン形振動板であるダイヤフラム101の中央孔に固着されている。この中央孔にはキャップ113が取り付けられている。
ダイヤフラム101は、エッジ108およびダンパ109を介してフレーム112に樹脂製のダイヤフラムホルダ101aによって弾性的に支持されており、これにより、ダイヤフラム101、ボイスコイル102およびボイスコイルボビン103が一体となった状態でスピーカ装置100の中心軸X方向に振動可能となっている。
【0004】
また、フレーム112には、正負の入力端子110が取り付けられており、正負の入力端子110にはボイスコイル102の両端がそれぞれリード線(錦糸線)111を介して電気的に接続されている。
そして、入力端子110に駆動信号(駆動電流)が供給されることにより、磁気回路107の磁気ギャップ107a内でボイスコイル102が駆動信号に応じた電磁駆動力を受け、これにより、ボイスコイル102がボイルコイルボビン103およびダイヤフラム101と一体となってスピーカ装置100の中心軸X方向に振動し、ダイヤフラム101から駆動信号に応じた音響エネルギーが放射される。
なお、マグネット104の代わりに電磁マグネットとして作用する励磁コイルを用いて磁気回路を形成するものもある。
【0005】
【特許文献1】
特公昭56−15196号公報(第1頁、第1図)
【特許文献2】
実開昭57−106387号公報(第2−3頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のように樹脂製のダイヤフラムホルダ101aを用いた場合には、ダイヤフラム101の振動と磁気回路107の振動が融合して混変調歪みが生じやすいという問題が生じる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、上述した従来技術において生じる混変調歪みの発生という問題が一例として挙げられる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した発明は、マグネットおよびヨークを含む磁気回路と、前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルと、前記ボイスコイルに結合された状態で振動可能な略円盤状の振動板と、前記振動板の周縁に接続されて筐体に固定されるホルダとを備えるスピーカ装置であって、
前記ホルダが、ポリプロピレンおよびタングステンのハイブリット材であり、かつ、前記ホルダの比重が9.0〜12.0であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係わる実施の形態について図面に基づいて説明する。図2は本発明に係るスピーカ装置の断面図、図3はスピーカ装置の背面図、図4はスピーカ装置の正面図である。
【0010】
このスピーカ装置10は、外側に略半球殻状の筐体11を有しており、一方の側に円形の開口12を有している。開口12の中心には、円錐形をしたセンターキャップであるドーム部13が前方(図2において左側)に突出して設けられている。
筐体11の内部フレーム11aには、ヨーク14がネジ15により取り付けられており、このヨーク14にドーム部13がネジ16で取り付けられている。ヨーク14の外周には、このヨーク14との間に磁気ギャップ17を形成して磁気回路18を構成するマグネット19が設けられている。
なお、マグネット19は、直流電源により励磁されるものであってもよいし、永久磁石を用いたものであってもよい。
【0011】
磁気ギャップ17には、細い銅線などからなるボイスコイル20が前後に移動自在に設けられている。なお、図2では、明瞭化のために、磁気ギャップ部分17を他の部分より拡大した比率で示してある。
【0012】
ドーム部13の周囲には、同心円状にプレート22a、22bが設けられている。内側のプレート22aの内周縁は、取付け材23を介してドーム部13とヨーク14との間に固定されている。また、外側のプレート22bの外周縁は、ホルダとしてのダイヤフラムホルダ24により、ヨーク14の外側に設けられているマグネット19との間に固定されている。
なお、従来のようにダイヤフラムホルダ24を樹脂により形成すると、後述するダイヤフラム25の振動と磁気回路18の振動が減衰率の低い材質により融合してしまい、混変調歪みが発生するため、本発明に係るスピーカ装置10では、後述するような材料を用いて形成されている。
【0013】
両プレート22a,22bの前方には略円盤状の振動板であるダイヤフラム25が設けられており、ダイヤフラム25の内周縁はドーム部13と取付け材23との間に固定されている。また、ダイヤフラムの外周縁は、ダイヤフラムホルダ24に取り付けられている。ダイヤフラム25の幅方向中央部分は、両プレート22a、22b間の磁気ギャップ17部分においてボイスコイル20に接続されている。
なお、ダイヤフラム25の内周縁付近および外周縁付近には、同心円状にエッジ26a、26bが設けられている。エッジ26a、26bは略円弧状に曲げられており、ダイヤフラム25がスムーズに振動できるようにするとともに、振動時の異常な動きを抑制するようになっている。
【0014】
筐体11の後部にはバックチャンバー27が設けられており、バックチャンバー27の内部には吸音材28が詰められている。また、筐体11の背面には、正負両極用に一対のスピーカ端子29a、29bがネジ30により取付けられている。
一方、筐体11の前面縁部には、複数本(ここでは例えば5本)のデェフューザ31が、ネジ32により等間隔で取り付けられている。
このデェフューザ31は、ダイヤフラム25等を保護するとともに、指向性の強い高音を拡散させるためのものである。
【0015】
従って、スピーカ端子29a、29bからボイスコイル20に信号電流が流れると、ボイスコイル20は磁界を発生し、磁気回路18との作用でボイスコイル20が前後に振動するので、ダイヤフラム25が前後に振動し、空気の粗密波として音を発生することになる。
【0016】
次に、ダイヤフラムホルダ24に高比重・高減衰材を用いた場合の応答について図を参照しながら説明する。
なお、図5(A)、(B)には、本発明に係るスピーカ装置10におけるインパルス応答波形およびインパルス応答が示されている。ダイヤフラムホルダ24を形成する高比重・高減衰材として、比重が10.0以上となるような樹脂/タングステンのハイブリッド材を用いた。なお、樹脂としては、ポリプロピレンを用いるのが望ましく、図5(A)、(B)のインパルス応答試験における樹脂/タングステンのハイブリッド材でもポリプロピレン樹脂を用いた。
【0017】
また、図6から図11には、従来より使用されている種々の材質をダイヤフラムホルダ24に用いた場合のインパルス応答波形およびインパルス応答が示されている。
すなわち、図6(A)および(B)では比重0.9のPP(ポリプロピレン)を用いた場合、図7(A)および(B)では比重1.2のABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)を用いた場合、図8(A)および(B)は比重2.7のアルミを用いた場合、図9(A)および(B)では比重7.2の亜鉛を用いた場合、図10(A)および(B)は比重8.5の真鍮を用いた場合、図11(A)および(B)は比重19.3のタングステンを用いた場合を示している。
【0018】
ダイヤフラムホルダ24の剛性を上げるためには、アルミダイキャストが一般的に用いられている。このようなダイヤフラムホルダは、軽量で厚肉に出来るメリットがあるが、材料固有の共振が大きい。
また、振動系からの音を正確に伝えるために、振動系を支えるダイヤフラムホルダには更なる減衰量・高比重化を求めた。目標は合金の減衰量で合金以上の比重である。ピュアタングステンも検討したが、樹脂タングステンに着目し、数多くの材料コンパウンドの結果、目標を達成できる材料となった。
なお、上記の合金としては、一般に小物機械部品、電器部品として使用されている最も一般的な合金を念頭に置いた。
【0019】
以上説明したように、ダイヤフラムホルダ24を、樹脂/タングステンのハイブリット材により構成したので、従来のダイヤフラムホルダ24に比較して、高比重・高減衰であり、ダイヤフラム25および磁気回路18の振動が融合し難く、混変調歪みが生じにくい。
また、樹脂としてポリプロピレンを用いることにより、引張り強度を高めるとともに、合金よりも軽量とすることができる。
【0020】
ここで、比重を10.0以上としたのは、比重9以下では減衰率が低く、12.0以上にすると脆くなるためである。
これにより、従来のダイヤフラムホルダと比較して高比重・高減衰であるため、スピーカ装置10全体の外径ボリュームはそのままで重量を増加させることができ、磁気回路18の反作用成分を低減して、混変調を低減することができる。
【0021】
なお、本発明のスピーカ装置10は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、前述の実施形態においては、ドーム形のスピーカ装置について説明したが、コーン形スピーカ装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のスピーカ装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係るスピーカ装置の断面図である。
【図3】図2中III方向から見た背面図である。
【図4】図2中IV方向から見た正面図である。
【図5】本発明に係るスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図6】ダイヤフラムホルダの材料にPPを用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図7】ダイヤフラムホルダの材料にABSを用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図8】ダイヤフラムホルダの材料にアルミを用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図9】ダイヤフラムホルダの材料に亜鉛を用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図10】ダイヤフラムホルダの材料に真鍮を用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【図11】ダイヤフラムホルダの材料にタングステンを用いたスピーカ装置のインパルス応答波形およびインパルス応答を示すグラフである。
【符号の説明】
10 スピーカ装置
11 筐体
17 磁気ギャップ
18 磁気回路
20 ボイスコイル
24 ダイヤフラムホルダ(ホルダ)
25 ダイヤフラム(振動板)

Claims (1)

  1. マグネットおよびヨークを含む磁気回路と、前記磁気回路の磁気ギャップに配置されたボイスコイルと、前記ボイスコイルに結合された状態で振動可能な略円盤状の振動板と、前記振動板の周縁に接続されて筐体に固定されるホルダとを備えるスピーカ装置であって、
    前記ホルダが、ポリプロピレンおよびタングステンのハイブリット材であり、かつ、前記ホルダの比重が9.0〜12.0であることを特徴とするスピーカ装置。
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