JP4019931B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に用いられ、電動モータを用いてドライバーの操舵動作を補助する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車用の電動パワーステアリング装置には、ドライバーが操舵部材に加える操舵トルクを検出するトルク検出機構が上記操舵部材から操向車輪に至る操舵系の途中に設けられている。この検出機構は、操舵部材に連結されるトーションバーの入力側及び出力側にそれぞれターゲット付きの回転体を設け、ターゲットに対向して配置されたセンサによりトーションバーの捻れ量すなわち、トーションバーの入力側と出力側との相対回転量を検出し、これに基づき操舵トルクを検出するように構成されている。そして、電動パワーステアリング装置では、検出したトルクに従って電動モータへの指令値を決定し、減速機構を介して操舵系にモータ回転力を伝達させることにより、当該操舵系に操舵補助力を付与してドライバーの操舵動作を補助する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−116095号公報(第4頁、第1図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような従来装置の操舵系には、ドライバーの操舵動作や自動車走行に伴う路面抵抗などに応じて当該操舵系に摩擦を与える構成要素が多数存在している。具体的には、上記トーションバーの下方に連結されたピニオン軸と、このピニオン軸に接続されるとともに、両端部が左右の上記操向車輪にそれぞれ連結されたラック軸とを有するラックピニオン式伝達機構が操舵系に含まれており、上記ピニオン軸とラック軸との接続部分などで摩擦が発生する。
【0005】
ところが、従来装置では、上記のような摩擦要素で生じる摩擦に関して適切な指針が定められておらず、発生した摩擦の大きさによっては、ドライバーの操舵フィーリングが低下したり、トルク検出機構が路面からの外乱を早急、かつ精度よく検出できずに、その外乱の補償を適切に行えなかったりすることがあった。また、路面状態の検出精度及びドライバーに体感させる操舵動作と車両挙動との一体感などの操舵特性(ひいては、操舵部材のふらつき感などの操舵フィーリング)を高める観点でいえば、操舵系の摩擦を極力小さくすることが好ましいが、ただ単に摩擦を小さくするだけでは操舵系全体が上記トーションバーを含んだ単なる振動系となり、逆に操舵フィーリングの低下や外乱補償の精度低下を招く。
【0006】
したがって、本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、操舵フィーリングが低下するのを防止することができるとともに、外乱に対して適切に対応することが可能な操舵系の摩擦を決定するための新たな技術的手段を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、操舵部材から操向車輪に至る操舵系の途中に設けたトルク検出機構により検出したトルクに基づいて、電動モータからの回転力を前記操舵系に付与し操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵系において、前記操舵部材と前記トルク検出機構との間の摩擦をFiとし、前記トルク検出機構と前記操向車輪との間の摩擦をFoとしたときに、下記の不等式(1)を満足するように、
Fo ≦ Fi ――(1)
前記摩擦Fi及びFoを決定しており、
前記トルク検出機構の前記操舵部材側に設けられる部材を回転自在に支持する軸受を備えるとともに、
前記摩擦Fiが前記摩擦Fo以上となるように、前記軸受に予圧を付与した状態で前記部材を支持させたことを特徴とするものである。
【0008】
上記のように構成された電動パワーステアリング装置での操舵系において、その上側の上記摩擦Fiを下側の上記摩擦Fo以上に設定することにより、本願の発明者は、操舵フィーリングが低下するのを防止することができるとともに、路面からの外乱に対して適切に対応することができることを見出した。すなわち、本願の発明者は、まず上記トルク検出機構を境にして操舵系に加わる摩擦を上側及び下側に分け、さらには上側摩擦Fiを比較的大きくすることにより、ドライバーが操舵部材のふらつき感を感知するのを抑制して操舵フィーリングが低下するのを防止できることに着目した。しかも、上側摩擦Fi以下の下側摩擦Foを選択することにより、当該ステアリング装置は上記トルク検出機構によって外乱を早急、かつ精度よく検出させてその補償を適切に行わせることができるとともに、操舵フィーリングが低下するのを防ぐことができることを見出した。
【0011】
また、上記電動パワーステアリング装置は、前記トルク検出機構の前記操舵部材側に設けられる部材を回転自在に支持する軸受を備えるとともに、
前記摩擦Fiが前記摩擦Fo以上となるように、前記軸受に予圧を付与した状態で前記部材を支持させている。
したがって、上記軸受によって確実に上側摩擦Fiを下側摩擦Fo以上とすることができ、操舵フィーリング及び外乱補償性に優れた装置をさらに確実に構成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電動パワーステアリング装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の要部構成を示す縦断面図である。図において、当該装置は、例えば自動車に搭載され、操舵部材(ステアリングホイール)1に加わるドライバーの操舵動作に応じて、図示を省略した操向車輪の向きを変える操舵軸2を備えている。この操舵軸2には、上記操舵部材1が上端部に取り付けられる筒状の取付軸21と、この取付軸21に一体回転可能に連結された筒状の入力軸22と、トーションバー23を介在させて入力軸22に同軸的に連結された筒状の出力軸24が設けられており、公知のラックピニオン式伝達機構(図示せず)などを介して出力軸24に連結される左右の上記操向車輪での転舵動作を行うようになっている。
【0013】
上記取付軸21はステアリングコラム25内に収納された状態で車体側に固定されるものであり、その下端部にはトーションバー23の一端部を内嵌固定した入力軸22の上端部がピン26により連結されている。また、上記トーションバー23の他端部はピン27により出力軸24の下端部に内嵌固定されている。
上記入力軸22及び出力軸24は、車体側に固定され、かつ図の上下に分離可能な上側及び下側ハウジングH1,H2の内部にニードル軸受31及び玉軸受32、33を介してそれぞれ回転自在に取り付けられている。また、ニードル軸受31は、ラジアル方向に所定荷重(予圧)が付与された状態で入力軸22を支持しており、後述の上側摩擦Fiを増大させる摩擦付与手段としての機能を有している。
また、上記出力軸24には、ウォーム41及びこれに噛み合うウォームホイール42を有する減速機構4と、上記ウォーム41が出力軸に一体回転可能に取り付けられ、制御ユニット(ECU)5により制御される操舵補助用の電動モータ6とが連結されている。これら減速機構4と電動モータ6とが、操舵部材1から上記操向車輪に至る操舵系Aにモータ回転力による操舵補助力を付与する操舵補助部を構成している。
【0014】
上記操舵系Aには、その途中の箇所にトルク検出機構Bが組み込まれている。このトルク検出機構Bは、ドライバーの操舵動作に応じて操舵部材1から操舵系Aに入力される操舵トルクを検出するとともに、その検出した操舵トルクを基に電動モータ6を駆動させ上記操舵補助力を用いてドライバーの操舵動作をアシストさせる。また、トルク検出機構Bは、上記操向車輪側から操舵系A側に逆入力される外乱、例えば自動車走行に伴う操向車輪と路面との間での摩擦(操舵抵抗)に起因して操舵系Aに作用する力(つまり、操向車輪側から出力軸24に作用して当該出力軸24を一方向に回転させようとする回転トルク)も検出する。そして、トルク検出機構Bは、検出した外乱を低減するように電動モータ6を駆動させて、当該外乱の補償を行わせるようになっている。なお、外乱には、操向車輪を支持する支持構造などの自動車個々の構造により定められ、ドライバーによる操舵動作に対し反作用的に操舵系Aに働く復元トルクとしてのセルフアライニングトルクが含まれている。また、このような外乱補償を行わせることにより、操舵部材1を介してドライバーに外乱の影響が伝えられるのを防いで操舵フィーリングが低下するのを防止することができる。
【0015】
具体的には、上記トルク検出機構Bには、入出力軸22、24間に設けられた上記トーションバー23と、入力軸22に一体回転可能に取り付けられた筒状の回転体71の下端外周に形成されたターゲット71aと、出力軸24に一体回転可能に取り付けられた筒状の回転体72の上端外周に形成されたターゲット72a及び72bとが設けられている。ターゲット71a、72a及び72bは、例えば磁性体製の凹凸を周方向に一定ピッチで歯車状に形成し、回転によりその周辺に周期的な磁性変化をもたらすものであり、ターゲット72a及び72bの一方及び他方はそれぞれ相対角検出及び絶対角検出に用いられている。
さらに、上記トルク検出機構Bには、センサハウジング8の内部で上記ターゲット71a、72a及び72bに対向して配置されるとともに、磁気抵抗効果素子(MR素子)等の磁気的変化を電気信号に変えて出力する複数のセンサが含まれており、これらセンサからの出力信号が上記ECU5の演算部51に逐次出力されるようになっている。そして、演算部51が上記出力信号に基づいて、入出力軸22、24間の相対角(相対回転量)を検出しドライバーの操舵動作や外乱に応じて操舵系Aに入力したトルクを演算により求め、駆動制御部52が演算部51で求めたトルクに応じて電動モータ6を駆動するための駆動信号を生成して、当該モータ6を駆動させることによって操舵アシストや外乱補償を行わせる。
【0016】
また、上記操舵系Aには、図2も参照して、ドライバーの操舵動作や自動車走行に伴う路面抵抗などに応じて摩擦を生じる構成(摩擦)要素が含まれており、当該操舵系Aでは、上記操舵部材1とトルク検出機構Bとの間で当該操舵系Aに加わる上側の摩擦Fiと、トルク検出機構Bと操向車輪との間で当該操舵系Aに加わる下側の摩擦Foとが、次の不等式、Fi≦Foを満足するように、これらの上側摩擦Fi及び下側摩擦Foの値を決定している。また、上側摩擦Fiと下側摩擦Foとの和の値で得られる操舵系A全体の摩擦力は、1.5〜2.0(N)(好ましくは2.0(N))である。また、上側摩擦Fiの好ましい範囲は1.2〜1.3(N)であり、下側摩擦Foの好ましい範囲は0.7〜0.8(N)である。
【0017】
詳細にいえば、トーションバー23の上方で操舵部材1との間にて操舵系Aに上側摩擦Fiを付与する摩擦要素には、上記ニードル軸受31が含まれている。このニードル軸受31は、上側摩擦Fiが下側摩擦Fo以上となるように、ラジアル方向の予圧を従来例に比べて大きくして取り付けられたものであり、上側摩擦Fiが例えば1.2(N)となるよう入力軸22とハウジングH1との間に組み込まれている。そして、操舵部材1がドライバーに回転操作されると、この軸受31はドライバーの回転操作に従った操舵部材1からの回転(入力)トルクThを入力軸22との転がり接触により減衰させて、操舵トルクTiとしてトーションバー23に伝える。そして、トルク検出機構Bがトーションバー23の捻れ量に基づき操舵トルクTiを検出してこのトルクTiに応じたモータ回転力Taを電動モータ6から操舵系Aに付与させる。
【0018】
一方、トーションバー23の下方で操向車輪60との間にて操舵系Aに下側摩擦Foを付与する摩擦要素には、ウォーム41とウォームホイール42との噛み合い部及び出力軸24側に連結された上記ラックピニオン式伝達機構内部の摺動部が含まれており、これら摩擦要素全体で下側摩擦Foが0.8(N)以下となるよう材質等が選定され、当該要素が構成されている。また、上記摺動部には、出力軸24に連結されるピニオン軸と、このピニオン軸のピンオンと噛み合うラック歯部を有し、左右の操向車輪60に連結されたラック軸とを有するラックピニオン式伝達機構において、上記ピンオンとラック歯部との噛み合い部、ラック軸をピニオン軸側に押圧するサポートヨークと当該ラック軸との摺動面、及び各操向車輪60の近傍でラック軸をガイドするラックガイドと当該ラック軸との摺動面とがある。そして、例えばドライバーの操舵動作に応動して自動車がカーブを走行すると、路面からコーナリングパワー(C.P.)が操向車輪60に働き、そのコーナリングパワーに応じたセルフアライニングトルク(S.A.T)が操舵系Aに入力され、下側摩擦Foによって減衰されてトーションバー23に伝えられる。そして、トルク検出機構Bがトーションバー23の捻れ量に基づきセルフアライニングトルクを検出してこのトルクを低減するようモータ回転力Taを操舵系Aに付与させる。
【0019】
以上のように、本実施形態による電動パワーステアリング装置では、その操舵系Aに加わる摩擦に関して、ドライバーの操舵フィーリングに比較的影響を与え易い上側摩擦Fiと、上記外乱と相互に影響を及ぼしあう下側摩擦Foとに分け、さらには上側摩擦Fiが下側摩擦Fo以上となるように、これらの各摩擦Fi、Foを決定している。これにより、操舵フィーリングが低下するのを防ぐことができるとともに、上記トルク検出機構Bによって外乱を早急、かつ精度よく検出させてその補償を適切に行わせることができる。すなわち、上側摩擦Fiを比較的大きくすることにより、ドライバーが操舵部材1のふらつき感を感知するのを抑制することができる。さらに、下側摩擦Foを比較的小さくすることにより、操向車輪側からの逆入力(外乱)の変動を少しでも早くトルク検出機構Bに伝えて精度よく検出させることができ、当該外乱をいち早く補償させることが可能となる。また、このように外乱補償性を向上させることができることから、外乱が操舵系Aを介してドライバーに伝わるのを阻止することができ、外乱の影響によってドライバーの操舵フィーリングが低下するのを防ぐことができる。
【0020】
また、本実施形態では、上記上側摩擦Fiと下側摩擦Foとの和の値を2.0(N)以下に制限しているので、下側摩擦Foを1.0(N)以下に制限することができ、トルク検出機構Bにより外乱を高精度に素早く検出させて適切な外乱補償をより確実に行わせることができる。
これに対して、上記従来例では、操舵系全体の摩擦は2.0(N)前後の値であったが、その上側及び下側摩擦は例えば0.5(N)及び1.5(N)と下側摩擦の方が3倍以上の値に設定されており、そのトルク検出機構が外乱を高精度に素早く検出するのが困難であった。
【0021】
尚、上記の説明では、摩擦付与手段としてラジアル方向に予圧を付与した状態で入力軸22を支持するニードル軸受31を用いた場合について説明したが、本発明の摩擦付与手段は上記上側摩擦Fiを大きくするものであれば何等限定されるものではない。但し、上記ニードル軸受31のように、ステアリング装置が本来的に有する部材を用いて上側摩擦Fiを大きくする場合の方が部品点数の増加を抑えてコスト安価に当該装置を構成できる点で好ましい。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、車両走行に伴う外乱に対する補償を適切に行うことができるとともに、ドライバーが体感する車両操作感に優れた電動パワーステアリング装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の要部構成を示す縦断面図である。
【図2】上記電動パワーステアリング装置の操舵系に加わる力(トルク及び摩擦)を模式的に表した図である。
【符号の説明】
1 操舵部材
22 入力軸(操舵部材側に設けられる部材)
23 トーションバー
31 ニードル軸受
A 操舵系
B トルク検出機構
Claims (1)
- 操舵部材から操向車輪に至る操舵系の途中に設けたトルク検出機構により検出したトルクに基づいて、電動モータからの回転力を前記操舵系に付与し操舵補助を行う電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵系において、前記操舵部材と前記トルク検出機構との間の摩擦をFiとし、前記トルク検出機構と前記操向車輪との間の摩擦をFoとしたときに、下記の不等式(1)を満足するように、
Fo ≦ Fi ――(1)
前記摩擦Fi及びFoを決定しており、
前記トルク検出機構の前記操舵部材側に設けられる部材を回転自在に支持する軸受を備えるとともに、
前記摩擦Fiが前記摩擦Fo以上となるように、前記軸受に予圧を付与した状態で前記部材を支持させたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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