JP4017538B2 - スチレン系樹脂発泡性粒子とその製造方法及びスチレン系樹脂発泡成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂の剛性とオレフィン系樹脂の優れた弾性を兼ね備え、常温下で発泡剤を長期に渡って保持することが可能であり、また、揮発性有機化合物の含有量の少ない改質されたスチレン系樹脂発泡性粒子、その製造方法、またその発泡性粒子から得られた発泡成形体に関する。本発明の発泡性粒子は型物成形して工業製品の緩衝包装材、あるいは自動車の構造部材、エネルギー吸収材、または住宅分野、レジャー分野等に広く用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂の発泡成形体は、軽量でありかつ剛性も高く、また断熱性にも優れるため、住宅用断熱や包装用緩衝材などに広く使用されている。
スチレン系樹脂を発泡させて発泡成形体とするには幾つかの方法があるが、その中の一つに発泡性粒子(発泡性ビーズ)を用いる方法がある。この方法は、まずスチレン系樹脂の粒子を材料とし、この粒子に揮発性発泡剤を含浸させて発泡性粒子とし、次いでこの発泡性粒子に水蒸気を接触させて、粒子を加熱し発泡させて予備発泡粒子を作り、その後この予備発泡粒子を金型内に充填し、金型内へ水蒸気を吹き込んで、粒子をさらに発泡させるとともに互いに融着させて、発泡成形体とするものである。
【0003】
しかし、スチレン系樹脂からなる発泡成形体は、樹脂の特徴から衝撃に対して脆く、また油、溶剤に対して弱いという欠点を有している。
そのようなスチレン系樹脂の欠点を克服するものとして、エチレン系樹脂からなる発泡体やプロピレン系樹脂からなる発泡成形体またはエチレンとスチレンの重合体からなる発泡成形体(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0004】
しかし、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂からなる樹脂粒子は、含浸せしめた揮発性発泡剤が逸散しやすく、発泡性粒子を製造した後、速やかに予備発泡して発泡粒子とする必要があり、または発泡性粒子を加圧容器内に保存する必要があった。それに比較し、スチレン系樹脂は揮発性発泡剤の保持性が良いので、該発泡剤を含浸せしめた後、未発泡粒子及び予備発泡粒子を問わず長時間放置した後でも十分な発泡力が保持される。従って、オレフィン系樹脂からなる発泡性粒子はスチレン系樹脂からなる発泡性粒子に比べ、保管及び輸送に際して不利な面があった。
【0005】
また、スチレンとエチレンの重合体からなる発泡性粒子は、上述したオレフィン系樹脂単独品に比べれば、発泡剤の保持は良いものの、やはり、常温、常圧にて放置すれば短時間で揮発性発泡剤が逸散してしまい、短時間で発泡成形体を製造する必要があり、保管状態や揮発性発泡剤の量を調整する必要があった。このような課題を解決するためにスチレン−オレフィン共重合樹脂を基材樹脂とし、その基材樹脂と相溶性があり常圧下250℃以上の沸点を有しかつ常温で液状の物質が基材樹脂に対し0.2〜7質量部含浸させた発泡性粒子が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この発泡性粒子は、揮発性発泡剤の保持性がある程度向上するものの、その保持性は未だ不十分であった。
【0006】
また、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂を予め押出機になどの混練機にて溶融ブレンドし、揮発性発泡剤を含浸させ、発泡させた発泡成形体も幾つか提案されている。
一つは、オレフィン系樹脂を全樹脂量に対して1〜15質量%含有するビニル芳香族重合体原料を熱溶融したペレットに発泡剤を含浸発泡させた発泡成形体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
もう一つは、スチレン系樹脂とエチレン系樹脂とスチレン−イソプレン−スチレンブロックからなる特定のトリブロック共重合体からなる樹脂組成物を発泡させて得られる発泡成形体が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
前者は実質的に発泡粒子の気泡径を調整するためにオレフィン系樹脂を混合するものであり、実質的にオレフィン系樹脂は5質量%程度であり、スチレン系樹脂発泡成形体の物性を大きく変化させるものではない。また、後者は一定ガス量を含浸した後、5〜60倍発泡の範囲で発泡成形体が得られるかどうかという評価のみで、揮発性発泡剤の保持性については言及されておらず、また、本発明者らがこの請求範囲内で揮発性発泡剤の保持性を評価した結果、揮発性発泡剤の減少が確認された。
【0008】
更に、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の混合物に発泡剤を含浸する際には、均一な発泡成形体を得るために、トルエンなどの可塑剤を添加した水性媒体中で発泡剤を含浸する必要があり、必然的に揮発性有機化合物の含有量が多くなってしまうという問題がある。
スチレン系樹脂発泡粒子および発泡成形体中の揮発性有機化合物の含有量を減らすための方策としては、可塑剤として平均炭素数が20〜35個でかつ常温で液体のパラフィン類を使用することが提案されている(例えば、特許文献5,6参照。)。
しかし、パラフィン類を添加するとスチレン系樹脂のガラス転移温度(Tg)が低下し、発泡成形体の耐熱性が低くなってしまうという問題があった。
【0009】
また、押出含浸法として所定量のペレット径と長さを有し、且つ、発泡倍率が1.5倍以下であり、製品発泡倍率が2〜100倍になる特性を有する発泡剤含有熱可塑性樹脂ペレットが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。
しかし、特許文献7に記載された技術は、円柱状のペレットを得る方法であり、円柱の両端面であるカット面に、開口した気泡が露出してしまうため、発泡剤の逸散が速い傾向が見られた。また、このペレットを製造する際には、発泡剤含有樹脂を紐状に押出し冷却した後、円柱状にカットするために、その時に受ける残留応力の程度によって、成形条件や樹脂により、成形時に球状の発泡性樹脂粒子を得にくい問題があった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭48−101457号公報
【特許文献2】
特開昭57−111330号公報
【特許文献3】
特公昭47−26097号公報
【特許文献4】
特開平6−49256号公報
【特許文献5】
特開2001−220458号公報
【特許文献6】
特開2002−249614号公報
【特許文献7】
特開平7−124982号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した通り、従来のスチレン−オレフィン混合樹脂からなる発泡性粒子は、冷凍保管もしくは密閉容器中での加圧保管等をしない限りは、粒子中からの揮発性発泡剤の逸散を防止することができなかった。
また、近年、シックハウス症候群の問題などに鑑みて揮発性有機化合物の放散の少ない製品が求められているが、従来技術にあってはスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の混合物に発泡剤を含浸する際に、均一な発泡成形体を得るために、トルエンなどの可塑剤を添加した水性媒体中で発泡剤を含浸する必要があり、必然的に揮発性有機化合物の含有量が多くなってしまうという問題がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、常圧、室温下においても揮発性発泡剤の逸散が少なく、製造後の保管、輸送が容易で、高度に発泡させることができ、揮発性有機化合物の含有量が少なく、かつスチレン樹脂製発泡体よりも耐衝撃性や緩衝性に優れた発泡体を製造可能なスチレン系樹脂発泡性粒子とその製造方法及びスチレン系樹脂発泡成形体の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂を特定の割合で混合し、その溶融混合物に押出機中で発泡剤を圧入後に押出し、発泡を抑制した状態で切断粒子化することで、経日での発泡剤の減少が少なく、また、揮発性有機化合物の含有量が少なく、さらに通常のスチレン系樹脂の発泡成形機にて成形可能であり、耐衝撃性および緩衝性などの物性が向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は、70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部と、0〜15質量部のスチレン系エラストマーとを含む樹脂組成物と、揮発性発泡剤との混合物を液体中に押出すと同時に切断して得られた発泡性粒子であって、発泡倍率が1.5倍以下であり、且つ揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡性粒子を提供する。
本発明のスチレン系樹脂発泡性粒子において、オレフィン系樹脂が、密度0.900〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
また、スチレン系エラストマーが、水素添加されたスチレン-ブタジエンブロック共重合体または水素添加されたスチレン-イソプレンブロック共重合体であることが好ましい。
さらに、揮発性発泡剤が、少なくとも50質量%以上のイソペンタンを含むことが好ましい。
また本発明は、70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部と、スチレン系エラストマー0〜15質量部とを押出機に供給し加熱溶融させて樹脂組成物とし、該押出機途中より揮発性発泡剤を樹脂組成物100質量部に対して3〜15質量部圧入した後、発泡剤含有溶融樹脂を多孔ダイから液体中に押出し、該樹脂の発泡を1.5倍以下に抑制しながら、押出しと同時に液体中で樹脂を切断し、揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下である発泡性粒子を得ることを特徴とするスチレン系樹脂発泡性粒子の製造方法を提供する。
本発明の方法において、発泡剤含有溶融樹脂を押出、切断する部位に存在する液体が、15〜60℃の範囲で且つダイ流入時の樹脂温度より100〜200℃低く調温された水であることが好ましい。
さらに本発明は、上記スチレン系樹脂発泡性粒子を発泡成形してなり、密度0.014〜0.2g/cm3であり、且つ揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のスチレン系樹脂発泡性粒子(以下、発泡性粒子と略記する)は、必須成分として、70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂、任意成分としてスチレン系エラストマー及び適宜な添加剤を含む樹脂組成物と、揮発性発泡剤(以下、発泡剤と略記する)との混合物を液体中に押出すと同時に、発泡倍率を1.5倍以下に抑制しながら、液体中で切断して得られたものである。
【0016】
本発明の発泡性粒子の必須成分であるスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体(ホモポリマー)の他、スチレンとアクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸などとの共重合体やポリスチレンにジエン系ゴムエラストマーを混合したりジエン系ゴムエラストマーにスチレン系モノマーをグラフト重合することなどにより得られる耐衝撃性ポリスチレンなどが使用できる。これらのスチレン系樹脂は1種または2種以上混合して使用できる。この中でも特に好ましいのはスチレンの単独重合体である。
【0017】
本発明の発泡性粒子の必須成分であるオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−エチレンとα−オレフィンとのコポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、アイオノマーなどエチレンと極性モノマーとのコポリマー、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレン単独重合体のマトリックス中に約20%までのエチレン−プロピレンゴム(EPR)を含むインパクト共重合体(ブロック共重合体ともいう)、ポリブテン−1などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は1種または2種以上混合して使用できる。この中でもポリエチレン系樹脂が好ましい。特に好ましいのは樹脂密度が0.900〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂であり、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。
【0018】
本発明の発泡性粒子に配合し得るスチレン系エラストマーとしては、スチレン系モノマーと共役ジエンとのランダム共重合体、ブロック共重合体またはこれらの水素添加共重合体等が挙げられ、それらの中でも、水素添加共重合体が特に好ましい。水素添加されたスチレン系モノマー−共役ジエン共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合体(S−VIS)等が挙げられる。
【0019】
本発明の発泡性粒子において、樹脂組成物中のスチレン系樹脂、オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーの組成比は、70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部に対し、スチレン系エラストマー0〜15質量部の範囲とする。上記混合樹脂中のスチレン系樹脂が70質量%より少ないか、オレフィン系樹脂が30質量%を超えると、発泡剤の保持性が十分に得られなくなり、スチレン系樹脂が90質量%を超えると、スチレン系樹脂単独の発泡体との物性差がほとんど見られなくなり、耐衝撃性、耐油性、耐溶剤性が悪くなる。
【0020】
本発明の発泡性粒子においてスチレン系エラストマーは任意成分であるが、スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の混合性を改良するために、樹脂組成物中に配合することが好ましい。特にオレフィン系樹脂の組成比率が比較的高い場合には、粒子中に発泡剤を長期に渡って保持するのに有効である。ただし、添加量がスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部に対して15質量部を超えると、押出し中の樹脂粘度が低下し、粒子の発泡を抑制するのが難しくなり、好ましくない。スチレン系エラストマーを添加する場合、その添加量はスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部に対して3〜10質量部の範囲が好ましい。
【0021】
本発明において用いられる発泡剤としては、発泡性粒子を押し出す段階では発泡を抑えやすく、また常温下では発泡性粒子中から逸散しにくく、粒子を発泡させる段階では高度に発泡し易いものが好ましい。従って、発泡剤としては、常温、常圧下では気化せず、蒸気加熱で容易に気化する特性を有する発泡剤が好適であり、沸点が20〜60℃の範囲にあるものが好ましい。沸点が20℃未満では、押出中に発泡剤の気化が始まりやすく粒子の発泡を抑制することが困難であり、沸点が60℃を越えると、発泡性粒子を蒸気加熱して発泡粒子とする際の発泡性が悪くなり好ましくない。
【0022】
発泡剤としては、例えばノルマルペンタン(沸点36℃)、イソペンタン(沸点28℃)、シクロペンタン(沸点49℃)、シクロペンタジエン(沸点41℃)等を単独もしくは2種以上混合して使用することができる。また、上記ペンタン類を主成分として、ノルマルブタン、イソブタン、プロパン等の沸点が20℃以下の発泡剤を共沸点が20℃以上になる範囲で混合して使用することもできる。これらの内、特に好ましい発泡剤はイソペンタンであり、発泡剤成分中に少なくとも50質量%以上のイソペンタンを含むものが好適である。イソペンタンが発泡剤として好適な理由は、ノルマルペンタンより沸点が低いにも関わらず、発泡性粒子中に保持されやすく、発泡時により高度に発泡するという利点を有しているからである。これは、イソペンタンの分子立体構造が作用しているものと推定される。発泡剤成分中のイソペンタンが50質量%を下回ると、発泡性粒子中での保持性が不十分となるので好ましくない。
【0023】
また、発泡剤の圧入量としては、樹脂組成物100質量部に対して3〜15質量部が適正である。発泡剤の圧入量が3質量部を下回ると、発泡性粒子の発泡性が不十分となり、有用な発泡成形体が得られない。一方、発泡剤の圧入量が15質量部を超えても、発泡性の更なる上昇は見込めず、かえって押し出しが不安定となり好ましくない。特に好ましい範囲としては、4〜10質量部である。
【0024】
また、本発明の発泡性粒子には、例えばタルク、炭酸カルシウム、マイカ、あるいはクエン酸と重炭酸ナトリウムなどの、発泡の際に気泡の大きさを調整するための気泡調整剤や、顔料、安定剤、充填剤、帯電防止剤等の種々の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜、添加することができる。
【0025】
本発明の発泡性粒子は、発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴としている。
本発明において、発泡剤以外の揮発性有機化合物とは、ノルマルヘキサン(沸点約70℃)とノルマルヘキサデカン(沸点約280℃)の間の沸点を有する有機化合物であり、具体的には、シクロヘキサン、エチルベンゼン、トルエン、スチレン、ノルマルプロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の物質である。スチレン系樹脂の発泡剤として通常用いられる、プロパン、ブタン、ペンタン、ジメチルエーテル等は沸点が70℃未満であるので、上記揮発性有機化合物には含まれない。
【0026】
発泡性粒子中に含まれる上記揮発性有機化合物は、発泡性粒子を加熱発泡、成形してスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と略記する)を製造する際に揮発し難く、大部分が発泡成形体中に残留してしまう。従って、発泡性粒子中の揮発性有機化合物の含有量が多いと、その発泡性粒子から作製される発泡成形体中の揮発性有機化合物含有量が多くなってしまう。本発明の発泡性粒子は、揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下、好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下と低く、発泡成形体からの揮発性有機化合物の放散も少なくなることから、環境衛生上好ましいものである。発泡性粒子の揮発性有機化合物の含有量が500ppmを超えると、発泡成形体からの揮発性有機化合物の放散が増え、環境衛生上好ましくない。
【0027】
また本発明の発泡性粒子は、発泡していないか、もしくは1.5倍以下の発泡に抑えられていることを特徴としている。発泡性粒子の発泡倍率が1.5倍を超えると、発泡性粒子中に含有されている発泡剤の保持性が悪化してしまう。発泡剤の保持性を良好にする観点から、発泡性粒子の発泡倍率が1.3倍以下であることがより好ましい。
【0028】
本発明の発泡性粒子は発泡剤の保持性に優れており、製造後、常圧、雰囲気温度18℃の条件下で3日間放置後の発泡性粒子中に含まれる発泡剤量が2質量%以上である。発泡性粒子中に含まれる発泡剤量が2質量%を下回ると、発泡性粒子の発泡性が不充分となり、有用な発泡成形体が得られないばかりでなく、発泡剤の保持性が優れた発泡性粒子とはいいがたい。好ましくは3〜10質量%であり、10質量%を超えても発泡性の更なる上昇は見込めない可能性がある。特に好ましくは3〜6質量%である。
【0029】
発泡剤保持能力を判定する方法として、発泡性粒子を常圧、雰囲気温度18℃の条件下で3日間放置後の発泡性粒子中に含まれる揮発性発泡剤量を指標とすると、本発明の発泡性粒子は製造1時間後に対する3日間放置後の発泡剤量の減少率は10〜40%程度である。
発泡剤の減少率=(製造1時間後の発泡剤量−3日間放置後の発泡剤量)/製造1時間後の発泡剤量×100(%)
従って、製造時に十分な量の発泡剤を粒子中に含ませておけば、製造後に常圧(約1気圧)、18℃温度条件下に3日間放置されたとしても、粒子中に発泡成形に必要とされる発泡剤量2質量%以上が残存しており、良好な発泡性を示す。また、該温度より低い温度条件下で保管すれば、更に長期に渡って発泡性を維持することが可能である。例えば、本発明の発泡性粒子を製造後に常圧、10℃温度条件下に14日以上保管し、次に常圧、18℃温度条件下に3日間放置したとしても、粒子中に含まれる発泡剤量が2質量%以上あり、良好な発泡性を示すことが可能である。本発明の発泡性粒子を発泡成形することにより、スチレン系樹脂の剛性とオレフィン系樹脂の優れた弾性を兼ね備えた、産業上有用な発泡成形体が得られる。また、本発明の発泡性粒子は発泡剤の保持性が良好であり、長期に渡って発泡性能を維持することができるので、従来の冷凍保管、密閉容器中での加圧保管等の必要がなく、冬期であれば大気温度下で、夏季においても一般的な保冷倉庫内に保管することが可能となり、保管および輸送において経済的に有利である。
【0030】
本発明の発泡性粒子は、70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部と、スチレン系エラストマー0〜15質量部とを押出機に供給し加熱溶融させて樹脂組成物とし、該押出機途中より発泡剤を樹脂組成物100質量部に対して3〜15質量部圧入した後、発泡剤含有溶融樹脂を多孔ダイから液体中に押出し、押出しと同時に液体中で樹脂を切断し、液体から分離して製造される。液中で押出した樹脂を切断する際、その液体の温度は15〜60℃とするのが好ましく、更に好ましくは20℃〜40℃である。この液体の温度が15℃より低い場合、ダイ表面の冷却が強くなり、ダイ内の圧力が上昇し押出が困難となる。また、60℃より高い場合は、樹脂粒子の発泡を抑えることが困難となり、更に80℃を超えると切断された樹脂粒子が合着し易くなるので好ましくない。また、上記液体温度はダイ流入時の樹脂温度より100〜200℃低いことが好ましい。樹脂温度との温度差が100℃未満の場合は樹脂粒子の冷却が不十分であり発泡を抑制するのが難しく、温度差が200℃を超える場合は粒子表面と内部の温度差の為に粒子が変形し、球状にならなくなるので好ましくない。この液体としては水が好ましい。
【0031】
この発明の発泡性粒子を製造するのに適した装置の一例を図1に示す。この製造装置は、樹脂流れ方向(図1において左から右への方向)上流側に樹脂組成物原料を投入する原料供給ホッパー11と、それよりも樹脂流れ方向下流側に高圧ポンプ13を有する発泡剤供給口12と、樹脂流れ方向末端に多孔ダイ2とがそれぞれ設けられた押出機1と、多孔ダイ2の出口を覆うように設けられ、内部にカッター31を回転駆動可能に配置すると共に、内部に水を循環するように構成されたカッティング室3と、カッティング室3に水を供給するための水槽6及び送水ポンプ4と、カッティング室3内でカットした発泡性粒子を水とともに導入し、水と発泡性粒子とを分離する脱水乾燥機5と、脱水乾燥機5で分離した発泡性粒子を貯留する容器7とを備えて構成されている。押出機1としては、樹脂の押出成形において用いられる公知の押出機、例えば単軸押出機、二軸押出機、タンデム式押出機等の中から適宜選択して使用し得る。押出機1は、原料供給ホッパー11から樹脂組成物原料を投入し、押出機1内で加熱混練して樹脂組成物とし、それを樹脂流れ方向下流に向けて移送する。樹脂組成物が発泡剤供給口12に達すると、高圧ポンプ13で圧送された発泡剤が樹脂組成物中に混合される。その後、発泡剤含有溶融樹脂は多孔ダイ2からカッティング室3内に押し出され、水と接触するとともに、水中でカッター31によって切断される。切断された樹脂は、ほぼ均一な粒径の球状粒子となり、循環水流によりカッティング室3から脱水乾燥機5に搬送される。脱水乾燥機5で水と分離、乾燥された発泡性粒子は、容器7に貯留される一方、水は水槽6に送られる。
【0032】
本発明の発泡成形体は、上述した本発明に係る発泡性粒子を発泡成形して得られる。発泡性粒子を発泡成形する方法は特に限定されないが、例えば、発泡性粒子に水蒸気を接触させて、粒子を加熱し発泡させて予備発泡粒子を作り、その後この予備発泡粒子を金型内に充填し、金型内へ水蒸気を吹き込んで、粒子をさらに発泡させるとともに互いに融着させて発泡成形体を製造する方法が好ましい。
【0033】
本発明の発泡成形体は、密度0.014〜0.2g/cm3であり、且つ揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴としている。
本発明の発泡成形体において、発泡成形体の密度が上記範囲未満であると、発泡成形品の強度が不十分となる。一方、発泡成形体の密度が上記範囲を超えると、成形性、柔軟性が悪くなり、好ましくない。本発明の発泡成形体の密度は、成形性と柔軟性、そして成形品の強度の点で、0.03〜0.1g/cm3の範囲とすることがより好ましい。
また本発明の発泡成形体は、揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下、好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下と低く、環境衛生上好ましいものである。揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppmを超えると、発泡成形体からの揮発性有機化合物の放散が増え、環境衛生上好ましくない。
【0034】
【実施例】
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明の効果を明確にする。以下の実施例と比較例において、発泡性粒子の発泡倍率、発泡性粒子中に含まれる揮発性有機化合物含有量、発泡性粒子中に含まれる発泡剤量、発泡成形体の密度を測定しているが、これらはそれぞれ以下の方法にて測定した値である。
【0035】
<発泡性粒子の発泡倍率>
発泡性粒子の発泡倍率は、全く発泡していない粒子と微発泡した粒子の密度比で求めた。具体的には、発泡性粒子を製造する際に発泡剤を全く圧入せずに押出した状態での粒子サンプルを採取し、その後、発泡剤を圧入して発泡性粒子を製造しそれぞれの粒子の密度を測定し、下記の式にて粒子の発泡倍率を算出した。粒子の発泡倍率=発泡剤圧入なしの粒子密度/発泡剤を圧入した発泡性粒子の密度
ここで、粒子の密度は以下の方法にて測定した。
JIS K 7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」A法(水中置換法)記載の方法に準じて測定した。
まず、試験体を電子天秤にて精秤する。次に試験体を専用容器(内径76mm×高さ30mmの透明アクリル円筒の開口部に16メッシュステンレス金網と天秤に吊すフックを取付けたもの。浮く場合は重りを加える。)に入れ、23℃の蒸留水中に、試験体付着の気泡を取り除いて浸漬させ、電子天秤にて試験体(専用容器を含む)の質量を測定した。試験体の密度ρは次式で算出した。
密度ρ(kg/m3)=m1/(m1−(m2−Δm))
(ただし、式中m1は試験体の体積(g)であり、m1は浸漬液中で測定した試験体の未補正質量(g)であり、Δmは液中浸漬した専用容器と重りの見かけの質量減少(g)を示す。)
【0036】
<発泡性粒子中に含まれる揮発性有機化合物含有量>
試料約12mgを精秤後、日本分析工業社製ヘッドスペースサンプラーJHS−100A型にセットし150℃、10分間加熱し、発生した揮発成分を20℃に保持されたテナックスTA吸着管にトラップ濃縮した。次にこの吸着管を熱脱着して、島津製作所社製ガスクロマトグラフ質量分析計QP5000を用いて分析を行った。その分析条件は、カラムがJ&W社製DB−1(0.25φmm×60m、膜厚0.25μm)を使用し、注入口温度:240℃、インターフェイス温度:260℃、キャリアガス:ヘリウム1.0mL/分、スプリット比:1/10で、カラム温度40℃、3分保持後200℃まで15℃/分で昇温し、さらに300℃まで25℃/分で昇温し、300℃にて4.5分保持した温度条件下、TICモードにて分析を行った。
得られたクロマトグラムよりn−ヘキサンとn−ヘキサデカンのピーク保持時間の間に検出されるピーク全てについて、シクロヘキサン、エチルベンゼン、スチレン、n−プロピルベンゼン及びi−プロピルベンゼンはそれぞれ標準品を用いて定量し、その他の成分ピークはトルエン換算にて定量した。但し0.3μg/g以上のピークを定量対象としこの定量値の総和を揮発性有機化合物含有量とした(単位:ppm)。
【0037】
<発泡性粒子中に含まれる発泡剤量>
0.5cm3程度の発泡性粒子を精秤しサンプルとして準備し、島津製作所社製の熱分解炉PTR−1Aの分解炉入口にセットし、15秒間ヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入気体を排出する。次に、密閉後サンプルを200℃の炉心に挿入し60秒間加熱して気体を放出させ、この放出気体を島津製作所社製のガスクロマトグラフGC−14B(検出器:TCD)を用いて定量する。その測定条件は、カラムがジーエルサイエンス社製ボラパックQ(80/100)3mmφ×1.5mを用い、カラム温度:100℃、キャリアガス:ヘリウム、キャリアガス流量:1mL/分、注入口温度:100℃、検出器温度:120℃、とした。
【0038】
<発泡成形体の密度>
JISK7222:1999記載の方法にて測定した。すなわち、成形体から10×10×5cmの試験片を試料のセル構造を変えないように切断し、その質量を測定し、次式にて算出した。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
【0039】
[実施例1]
本実施例では、図1に示した装置を用いて発泡性粒子を製造した。
ポリスチレン(東洋スチレン株式会社製 HRM10N)85質量%とポリエチレン(日本ポリケム株式会社製 SF240)15質量%との混合樹脂を、気泡調整剤として微粉末タルク0.2質量部とともにφ90mmの単軸押出機に供給し、加熱溶融した後、発泡剤として樹脂組成物100質量部に対し6質量部のイソペンタンを圧入し、溶融混合した。次いで、押出機中で溶融樹脂を混練冷却して、樹脂温度179℃にて押出孔φ0.5mm×200個の多孔ダイを通して30℃の水で満たされたカッティング室の中に100kg/hrの押出量で押出し、直ちに水中でカットし、遠心脱水機を通して脱水し、直径約1.2mmの発泡性粒子を得た。
得られた発泡性粒子の発泡倍率を測定したところ、発泡倍率は1.3倍であった。
また、得られた発泡性粒子中に含まれる揮発性有機化合物含有量を測定したところ、264ppmであった。
また、得られた発泡性粒子を製造後1時間大気中に放置後、含まれる発泡剤量を測定したところ4.4質量%のイソペンタンが含まれていた。この発泡性粒子を常圧(約1気圧)、18℃温度条件下で3日間放置し、再度発泡性粒子中に含まれる発泡剤量を測定したところ3.2質量%であった。
この3日間放置した発泡性粒子を、箱型発泡機に入れて発泡させ予備発泡粒子とし、24時間放置したのち、300×300×50mmの成形型に充填し、ゲージ圧1.0kg/cm2の水蒸気を20秒間吹き込んで成形し発泡成形体を得た。得られた発泡成形体は0.033g/cm3の密度で表面平滑性、発泡粒子の融着性の良い良好なものであった。得られた発泡成形体中に含まれる揮発性有機化合物含有量を測定したところ、260ppmであった。
【0040】
[実施例2〜4,比較例1〜2]
実施例1と同様の設備を用い、表1に示すように、原料配合組成、発泡剤の種類、冷却水温度等をそれぞれ変えた以外は、実施例1と同様の方法で発泡性粒子および発泡成形体を製造し、発泡性粒子の発泡倍率、発泡性粒子中に含まれる揮発性有機化合物含有量、発泡性粒子中に含まれる発泡剤量、発泡成形体の密度、および発泡成形体中に含まれる揮発性有機化合物含有量を測定した。それらの結果を表1にまとめて記す。
【0041】
[比較例3]
この比較例3は、実施例1と同様の樹脂配合組成、発泡剤量にて溶融樹脂を多孔ダイから押出したが、水中に直接押出さずに一旦大気中に押出した後、直ちに水中に導き、紐状樹脂を水槽中で冷却しながら引き取った後にカットする、所謂ストランドカット法により発泡性樹脂ペレットを作製した。得られた発泡性粒子は、円柱状ペレットであり、カット面にはペレット中に形成された気泡が露出していた。この発泡性粒子の発泡倍率、発泡性粒子中に含まれる揮発性有機化合物含有量、発泡性粒子中に含まれる発泡剤量、発泡成形体の密度、および発泡成形体中に含まれる揮発性有機化合物含有量を測定し、結果を表1にまとめて記す。
【0042】
図2及び図3に、作製した発泡性粒子の粒子表面状態を示す。図2は実施例1で得られた発泡性粒子の粒子表面状態を示す図であり、図3は比較例3で得られた発泡性粒子(発泡性樹脂ペレット)の粒子表面状態を示す図である。図2に示す発泡性粒子は、溶融樹脂を多孔ダイから水中に押し出すと同時にカットして粒子を形成したことで、得られた発泡性粒子はほぼ球状になっており、またその表面には気泡が見られない。一方、図3に示す発泡性粒子(発泡性樹脂ペレット)は、上述した通りストランドカット法により作製したことで円柱状をなしており、そのカット面には気泡が剥き出しになっていることがわかる。
【0043】
[比較例4]
実施例1と同様の樹脂配合組成であるが、発泡剤を圧入せずに樹脂粒子を作製した。次にこの樹脂粒子を圧力容器中に入れ、分散剤、可塑剤(トルエン)を加えた水性媒体中、発泡剤としてイソブタンを樹脂粒子100質量部に対し15質量部加え、70℃で4時間、発泡剤含浸処理を行った。室温まで冷却後、脱水し、発泡性粒子を得るとともに、これを発泡させて32倍の発泡成形体を得た。その発泡性粒子と発泡成形体中に含まれる、発泡剤以外の揮発性有機化合物含有量は、それぞれ2327ppm、2219ppmであった。結果を表1に記す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1の結果から、本発明に係る実施例1〜4でそれぞれ作製した発泡性粒子は、発泡倍率が1.5倍以下であり、3日間放置後の発泡性粒子中に含まれる発泡剤量は2.8質量%以上であり、これらの発泡性粒子が良好な発泡剤保持性を有していることがわかる。また、これらの発泡性粒子中に含まれる発泡剤以外の揮発性有機化合物含有量は300ppm以下と低い含有量であった。
また、実施例1〜4でそれぞれ作製した発泡性粒子を発泡して得られた発泡成形体は、密度が0.025〜0.092g/cm3であり、且つ、発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が300ppm以下であった。
【0046】
比較例1は、発泡性粒子の発泡倍率が1.8倍であり、本発明の発泡倍率の上限(1.5倍)を超えており、本発明に係る実施例1〜4の発泡性粒子と比べて発泡剤の保持性が悪い。
比較例2は、スチレン系樹脂が60質量%、オレフィン系樹脂が40質量%の組成であり、オレフィン系樹脂の配合比率を高く設定した結果、発泡剤の含有量が低く、3日間放置後の発泡性粒子中に含まれる発泡剤量が1.6質量%となり、発泡後の成形体の密度が0.220g/cm3と高くなった。
比較例3は、ストランドカット法により作製し、図3に示す通り円柱状をなしており、そのカット面に気泡が露出しているものであり、3日間放置後の発泡性粒子中に含まれる発泡剤量が2.4質量%となり、実施例1と比べて発泡剤の保持性が悪かった。また発泡後の成形体の密度が0.125g/cm3と実施例1で得られた発泡成形体(密度0.033g/cm3)よりも高くなった。
比較例4は、発泡剤を含まない樹脂粒子を作製後、発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造したために、発泡剤含浸時に用いた可塑剤(トルエン)等が発泡性樹脂粒子中に含浸され、発泡性粒子中及び発泡成形体中に含まれる揮発性有機化合物含有量がそれぞれ2327ppm、2219ppmと高くなった。
【0047】
【発明の効果】
本発明の発泡性粒子は、スチレン系樹脂の剛性とオレフィン系樹脂の優れた弾性を兼ね備えた、産業上有用な発泡成形体が得られる。
また、本発明の発泡性粒子は、発泡剤の保持性が良好であり、長期に渡って発泡性能を維持することができるので、従来の冷凍保管、密閉容器中での加圧保管等の必要がなく、冬期であれば大気温度下で、夏季においても一般的な保冷倉庫内に保管することが可能となり、保管および輸送において経済的に有利である。さらに、本発明の発泡性粒子及びそれを発泡成形した発泡成形体は、揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下と低く、発泡成形体からの揮発性有機化合物の放散が少なくなることから、環境衛生上好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の発泡性粒子の製造方法に好適な製造装置を示す概略構成図である。
【図2】 本発明に係る実施例1で得られた発泡性粒子の粒子表面状態を示す図である。
【図3】 ストランドカット法により作製した比較例3で得られた発泡性粒子の粒子表面状態を示す図である。
【符号の説明】
1…押出機、2…多孔ダイ、3…カッティング室、4…送水ポンプ、5…脱水乾燥機、6…水槽、7…容器、11…原料供給ホッパー、12…発泡剤供給口、13…高圧ポンプ、31…カッター。
Claims (7)
- 70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部と、0〜15質量部のスチレン系エラストマーとを含む樹脂組成物と、揮発性発泡剤との混合物を液体中に押出すと同時に切断して得られた発泡性粒子であって、発泡倍率が1.5倍以下であり、且つ揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡性粒子。
- オレフィン系樹脂が、密度0.900〜0.935g/cm3のポリエチレン系樹脂である請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡性粒子。
- スチレン系エラストマーが、水素添加されたスチレン-ブタジエンブロック共重合体または水素添加されたスチレン-イソプレンブロック共重合体である請求項1または2に記載のスチレン樹脂発泡性粒子。
- 揮発性発泡剤が、少なくとも50質量%以上のイソペンタンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡性粒子。
- 70〜90質量%のスチレン系樹脂と10〜30質量%のオレフィン系樹脂との混合樹脂100質量部と、スチレン系エラストマー0〜15質量部とを押出機に供給し加熱溶融させて樹脂組成物とし、該押出機途中より揮発性発泡剤を樹脂組成物100質量部に対して3〜15質量部圧入した後、発泡剤含有溶融樹脂を多孔ダイから液体中に押出し、該樹脂の発泡を1.5倍以下に抑制しながら、押出しと同時に液体中で樹脂を切断し、揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下である発泡性粒子を得ることを特徴とするスチレン系樹脂発泡性粒子の製造方法。
- 発泡剤含有溶融樹脂を押出、切断する部位に存在する液体が、15〜60℃の範囲で且つダイ流入時の樹脂温度より100〜200℃低く調温された水であることを特徴とする請求項5記載のスチレン系樹脂発泡性粒子の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のスチレン系樹脂発泡性粒子を発泡成形してなり、密度0.014〜0.2g/cm3であり、且つ揮発性発泡剤以外の揮発性有機化合物の含有量が500ppm以下であることを特徴とするスチレン系樹脂発泡成形体。
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