JP4017092B2 - 発生ガス分析装置およびガス導入インターフェース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、熱天秤(TG)や示差熱分析装置(DTA)等の熱分析装置に連結され、それら熱分析装置で発生したガスを分析する質量分析装置等の発生ガス分析装置、および同装置に用いられるガス導入インターフェースに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱分析装置は、無機化合物や有機化合物の熱分解反応や、揮発成分を含む物質の物理特性を分析する研究分野で広く利用されている。さらに、熱分解のメカニズムは、熱分解時に発生するガスを分析することにより、一層理論的な検討が可能となる。そこで、従来から熱分析装置と質量分析装置とを連結し、熱分析装置において試料を加熱した際に発生するガスを質量分析装置に導入して分析する複合的な分析手法が提案されている。
【0003】
さて、この種の分析手法を実現するには、熱分析装置と質量分析装置とを連結するガス導入インターフェースが必要となる。周知のとおり、熱分析装置は大気中に設けた反応室内に試料を配置して加熱するが、一方の質量分析装置は真空雰囲気下の分析室内にガス(分析対象)を導入して分析を実行する。したがって、大気圧下で発生したガスを真空雰囲気下の分析室内に導入するために、従来は、図3の(a)または(b)に示す構成のガス導入インターフェースが用いられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、図3(a)のガス導入インターフェースは、単にトランスファーチューブ1で熱分析装置10の反応室11(大気圧)と質量分析装置20の分析室21(真空雰囲気)とを連通しただけの構成である。トランスファーチューブ1は、両室11,21の圧力差を補うために一定長(質量分析装置20の真空排気能力に依存するが、一般には内径0.25mmφ以下の細管で長さ5m以上)のキャピラリー管が用いられている。
【0005】
この構成によれば、トランスファーチューブ1の途中でガスの排出を伴わないので、熱分析装置10からキャピラリー管に取り込んだ発生ガスのすべてを質量分析装置20へ導入することができ、測定感度が高いという利点がある。しかしながら、上記のとおり両室11,21の圧力差を補うためにトランスファーチューブ1を細径でかつ長尺とする必要があり、したがってガスの導入速度が遅く、熱分析との間のリアルタイムなガス分析を行うことができないという欠点があった。
【0006】
一方、図3(b)はこのような欠点を解消するために、ガス導入経路の途中にセパレータ2と称する真空排気装置を挿入し、熱分析装置10に連通したトランスファーチューブ1の下流側端部1aを、このセパレータ2内に開口した構成となっている。
セパレータ2は、図3(c)に示すごとき概略構成のもので、トランスファーチューブ1を通して熱分析装置10から送られてきたガスのうち、低質量成分のキャリアガス(例えば、ヘリウムガス)だけを強制排気してトランスファーチューブ1内を負圧にするとともに、高質量のガスを質量分析装置20側のキャピラリー管3へ導入して、分析室21へと供給できる機能を備えている。
【0007】
このように、セパレータ2はキャリアガスを除去して分析対象ガスの濃度を高める機能を有しているため、質量分析装置20による測定感度の向上が期待できる。しかしながら、熱分析装置10の反応室11内で発生した分析対象ガスに、低質量のガス成分(例えば、水素ガス成分)が含まれていた場合、セパレータ2はこの低質量のガス成分をもキャリアガスとともに排気してしまう。したがって、分析対象ガス成分のうち、低質量のものについては逆に質量分析装置20による測定感度が低下するという欠点があった。
【0008】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、大気中のガス発生源で生じた分析対象ガスを、真空雰囲気下の分析室内へ速やかに導入できるようにするとともに、分析対象ガス成分を質量の大きさ如何にかかわらず高濃度で分析室内へ導入できるようにすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明の発生ガス分析装置は、大気中のガス発生源で生じたガスを真空雰囲気下の分析室内に導入して分析する発生ガス分析装置であって、外管と、この外管の中空部内に挿入された内管とを備え、上記内管の一端を分析室内に連通するとともに、該内管の他端開口部を外管の中間部に配置し、且つ、外管の中空部内を一端側から真空排気するとともに、該外管の他端をガス発生源に連通したことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、外管内を真空排気することで負圧に保つため、ガス導入経路の長さが短くても分析室内の真空雰囲気を破壊することがない。したがって、ガス導入速度が速く、分析室側でのリアルタイムな測定が可能となる。
しかも、発生ガスを分析室内に導入する内管は、外管の中空部内に開口しているため、外管を流れるガスをそのまま取り込むことができるので、分析対象ガス成分を質量の大きさ如何にかかわらず分析室内へ導入できるので、発生ガス全体の測定感度が向上する。勿論、外管内に導入されたキャリアガスは、真空排気により外部へ排出されるので、内管へ取り込まれる分析対象ガスの濃度は高まる。
【0011】
また、この発明は、真空雰囲気下の分析室内に大気中のガス発生源で生じたガスを導入するためのガス導入インターフェースにも具現化することができる。すなわち、この発明のガス導入インターフェースは、外管と、この外管の中空部内に挿入された細径の内管とを備え、内管の一端を前記分析室内に連通するとともに、該内管の他端開口部を外管の中間部に配置し、且つ、外管の中空部内を一端側から真空排気するとともに、該外管の他端をガス発生源に連通することを特徴とする。
【0012】
ここで、内管には、発生ガスの接触による化学反応が少ないキャピラリー管を用いることが好ましい。この種のキャピラリー管としては、例えば、石英キャピラリー管や内壁を不活性化処理した金属キャピラリー管がある。そして、この内管を、外管から挿脱自在とすれば、高分子材料の高沸点成分が内管内で凝縮する等の汚染が生じた場合にも、内管のみを簡易に交換することができ、メンテナンス時の作業性が向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態を示す概略構成図である。この実施形態は、熱天秤(TG)等の熱分析装置10をガス発生源とし、同装置10の反応室11内で発生したガスを、発生ガス分析装置としての質量分析装置20に導入して分析するシステムへの適用例を示す。
【0014】
周知のとおり、熱天秤(TG)等の熱分析装置10は、反応室11内に試料を収容してその温度を変化させ、温度変化に伴う試料の物理化学的挙動を測定する機能を備えている。反応室11内は大気圧となっており、試料の加熱に伴い反応室11内にガスが発生する。
一方、質量分析装置20は、分析室21内に導入されたガス成分を分析するもので、分析室21内はターボ分子ポンプ等の高真空系22により真空雰囲気下に保たれ、電磁気的相互作用を利用して原子・分子のイオンを質量の違いによって分析できる機能を備えている。
【0015】
熱分析装置10の反応室11と質量分析装置20の分析室21とは、ガス導入インターフェース30により連通されており、反応室11内に発生したガス(分析対象ガス)を、このガス導入インターフェース30を経由して質量分析装置20の分析室21内に導入する。
ガス導入インターフェース30は、図2に示すように、外管31および内管32からなる二重管で構成され、外管31にはステンレス管が、一方、内管32には細径(例えば、内径0.25mmφ以下)の石英キャピラリー管が用いられている。さらに、外管31は、保温のための保護管33により被覆されており、この保護管33の内部にはヒータ線34が外管31と接触するように設けられている。ヒータ線34は、外管31および内管32を通過する分析対象ガスの凝固を防止するためのもので、これら各管31,32を周囲から加熱している。
【0016】
図1に示すように、外管31の一端開口部31aは、熱分析装置10の反応室11に連通しており、また、外管31の他端開口部31bは、接続金具35を介して質量分析装置20の近傍に設けたセパレータ36に連通してある。セパレータ36の中空部内は、図示しない真空ポンプにより真空排気されている。したがって、外管31の中空部内は、セパレータ36に連通する他端開口部31b側から真空排気される。
【0017】
一方、内管32の一端開口部32aは、熱分析装置10寄りの位置で外管31の中空部内に開口している。また、内管32の他端32bは、接続金具35およびセパレータ36を貫通して、質量分析装置20の分析室21内に連通している。
【0018】
接続金具35には、内部に外管31の他端開口部31bとセパレータ36とを連通するための中空通路が形成してあり、また外管31およびセパレータ36の接続部はシール部材によって真空シールされている。さらに、この接続金具35は、内管32を着脱自在に固定しており、内管32の軸方向への自由な移動を規制している。
【0019】
内管32は、この接続金具35側から外管31の中空部内に挿脱自在となっており、内管32の中空部内が汚染された場合は、容易に外管31から引き出し、新しい内管32と交換できるようになっている。
図3に示したような従来のトランスファーチューブ1は、単一の石英キャピラリー管により構成され、同管の外周にヒータ線等の保温構造が一体化されていたので、石英キャピラリー管内が汚染された場合、そのメンテナンスや交換に多くの時間を費やしていた。この実施形態では、上述したように外管31および内管32の二重管として、細径のキャピラリー管で構成される内管32は、外管31から容易に挿脱できる構造としたので、メンテナンス時の作業性がよい。
【0020】
上述した構成によれば、熱分析装置10の反応室11に連通する外管31の中空部内は、反応室11が大気圧であっても、真空排気により負圧状態に保たれる。したがって、この外管31の中空部に内管32の一端32aを開口させ、その他端32bを質量分析装置20の分析室21内に連通させても、分析室21内の真空雰囲気を破壊するおそれがない。外管31の内部は真空排気により強制的に負圧状態とするため、外管31の長さに依存することなくその負圧状態が保たれる。したがって、ガス導入経路の長さを短くでき、熱分析装置10の反応室11で発生したガスを速やかに質量分析装置20の分析室21内に導入することができる。
【0021】
また、熱分析装置10の反応室11で発生したガス(分析対象ガス)は、外管31の中空部内で分離されることなく、内管32の一端部32aに導入されて質量分析装置20の分析室21内へと流入する。したがって、図3(b)に示した従来構造のごとく、セパレータ2により分析対象ガスの低質量成分が排出されることがないので、質量分析装置20による分析対象ガス全体の測定感度を高めることができる。
【0022】
なお、この発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ガス発生源は熱分析装置の反応室に限定されるものではない。すなわち、本発明は、大気中で発生したガスを分析するための各種ガス分析(例えば、発生ガス分析(EGA)や昇温脱離分析(TDS,TPD))に適用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、外管と、この外管の中空部内に挿入された内管とを備え二重管構造を採用し、内管の一端を分析室内に連通するとともに、該内管の他端開口部を外管の中間部に配置し、且つ、外管の中空部内を一端側から真空排気するとともに、該外管の他端をガス発生源に連通したので、大気中のガス発生源で生じた分析対象ガスを、真空雰囲気下の分析室内へ速やかに導入でき、しかも分析対象ガス成分を質量の大きさ如何にかかわらず高濃度で分析室内へ導入できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】ガス導入インターフェースの管部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】従来の発生ガス分析装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
10:熱分析装置 11:反応室
20:質量分析装置 21:分析室
30:ガス導入インターフェース
31:外管 32:内管
36:セパレータ
Claims (4)
- 大気中のガス発生源で生じたガスを真空雰囲気下の分析室内に導入して分析する発生ガス分析装置であって、
外管と、この外管の中空部内に挿入された内管とを備え、
前記内管の一端を前記分析室内に連通するとともに、該内管の他端開口部を前記外管の中間部に配置し、
且つ、前記外管の中空部内を一端側から真空排気するとともに、該外管の他端を前記ガス発生源に連通したことを特徴とする発生ガス分析装置。 - 真空雰囲気下の分析室内に大気中のガス発生源で生じたガスを導入するためのガス導入インターフェースであって、
外管と、この外管の中空部内に挿入された細径の内管とを備え、
前記内管の一端を前記分析室内に連通するとともに、該内管の他端開口部を前記外管の中間部に配置し、
且つ、前記外管の中空部内を一端側から真空排気するとともに、該外管の他端を前記ガス発生源に連通することを特徴とするガス導入インターフェース。 - 前記内管を、前記外管から挿脱自在としたことを特徴とする請求項2に記載したガス導入インターフェース。
- 前記内管を、キャピラリー管で形成したことを特徴とする請求項2または3に記載したガス導入インターフェース。
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