JP4017029B2 - カバーレイ用接着剤およびカバーレイフィルム - Google Patents

カバーレイ用接着剤およびカバーレイフィルム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバーレイ用接着剤およびカバーレイフィルムに関する。より詳しくは、本発明は、耐熱性、加工性、および接着性に優れ、低吸湿性である熱可塑性ポリイミドを含むカバーレイ用接着剤およびカバーレイフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の高機能化、高性能化、小型化が進んでおり、それらに伴って用いられる電子部品に対する小型化、軽量化が求められてきている。そのため、電子部品を実装する配線板も通常の硬質プリント配線板に対し、可撓性のあるフレキシブルプリント基板(以下、FPCという)が注目され、急激に需要を増している。
【0003】
このFPCには、銅箔等の導電体によって回路が形成された導体面を保護する目的で、回路表面にポリイミド等からなるカバーレイフィルムと呼ばれるフィルムが張り合わされている。このカバーレイフィルムを接着する方法として、片面に接着剤の付いたカバーレイフィルムを所定の形状に加工して、FPCと重ね、位置合わせをした後、プレス等で熱圧着する方法が一般的に用いられる。
【0004】
このようなカバーレイフィルムの張り合わせには、主にエポキシ系接着剤およびアクリル系接着剤が用いられている。しかし、これらの接着剤は、半田耐熱性が低く、高温時の接着強度が低く、さらに可撓性に乏しいという問題があり、カバーレイとして使用するポリイミドフィルムの性能を十分に活かすことができない。
【0005】
また、カバーレイフィルムの接着剤層の厚みが薄い場合等においては、FPCとカバーレイフィルムとの間にボイドが発生することがあり、一方、接着剤層の厚みが厚い場合においては、穴開け部等に接着剤がはみ出して、導通不良を生ずる等の問題があった。
【0006】
一方、現在、ポリイミド系の接着剤として、例えば、3,3' ,4,4' −ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンから得られる芳香族ポリイミドとポリマレイミドとを混合した樹脂組成物から得られる接着フィルムが知られており、ポリイミドフィルムなどの基材と銅箔を接着させるFPCの製造方法が提案されている(特開平2−138789)。このようなポリイミド系の接着剤は、耐熱性に優れるが、接着性に劣り、吸水性も高いことから、特にカバーレイ用接着剤としての用途には向かない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らはかかる実状に鑑み、上記従来の問題点を解決し、充分な機械強度を有しつつ、耐熱性に優れ、更に加工性、接着性、特には低吸湿性に優れた熱可塑性ポリイミドからなるカバーレイ用接着剤及びカバーレイフィルムを提供することを目的に鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のカバーレイ用接着剤の要旨とするところは、一般式(1)
【0009】
【化4】
Figure 0004017029
【0010】
(式中、Xは芳香環を含む二価の基を示す。)で表されるエステル酸二無水物;および
一般式(2)
【0011】
【化5】
Figure 0004017029
【0012】
(式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2−、−NHCO−、−C(CH2−、−C(CF2−、−C(=O)O−、または結合であり、mおよびnは1以上以下の整数である。Yは同一または異なってもよい。)で表されるジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を含むことにある。
【0013】
かかるカバーレイ用接着剤において、前記一般式(2)で表されるジアミンは、
化学(1)
【0014】
【化6】
Figure 0004017029
【0015】
表され得る。
【0016】
かかるカバーレイ用接着剤において、エポキシ樹脂は、全量の1〜50重量%含まれ得る。
【0017】
かかるカバーレイ用接着剤において、反応硬化後の吸水率は、1.5%以下、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1.0%以下であり得る。ここで、「カバーレイ用接着剤の反応硬化後」とは、例えば樹脂組成物をシート状に成形し、100℃で10分間、150℃で20分間乾燥させたのち、150℃で3時間加熱硬化させた後をいう。
【0018】
本発明のカバーレイフィルムの要旨とするところは、フィルムの片面又は両面に上記いずれかに記載のカバーレイ用接着剤を積層してなることにある。好ましくは、このフィルムは、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルサルファイドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルムである。
【0019】
本発明のカバーレイフィルムは、上記のいずれかのカバーレイ用接着剤をフィルム状に成形してなり得る。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の用語「カバーレイフィルム」とは、プリント基板、特にフレキシブルプリント基板上の回路が形成された導体面を保護する為のフィルムをいい、「カバーレイ用接着剤」とは、このようなプリント基板とカバーレイフィルムとを張り合わせる為の接着剤をいう。また、場合によっては、本発明のカバーレイ用接着剤は、フィルム状に形成され、そのまま単層でカバーレイフィルムとなり得る。
【0021】
一般式(1)化7
【0022】
【化7】
Figure 0004017029
【0023】
(式中、Xは芳香環を含む二価の基を示す。)で表されるエステル酸二無水物を構成成分として含む本発明のカバーレイ用接着剤は、優れた低吸水率を有するため、半田耐熱性に優れた特性を有する。本発明に用いられるエステル酸二無水物の好ましい例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、3,3’,4,4’−エチレングリコールベンゾエートテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−ナフタレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,2−エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,3−トリメチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,4−テトラメチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,5−ペンタメチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0024】
一般式(2)
【0025】
【化8】
Figure 0004017029
【0026】
で表されるジアミンの好ましい例としては、式中、Yが、−C(=O)−、−SO2 −、−O−、−S−、−(CH2 m −、−NHCO−、−C(CH3 2 −、
−C(CF3 2 −、−C(=O)O−、または結合であり、mおよびnが1以上10以下の整数であるような化合物が挙げられる。
【0027】
また、一般式(2)において、複数個のYは同一または2種以上の置換基であり得る。また、各ベンゼン環の水素は、当業者の考え得る範囲内で、種々の置換基で適宜置換され得る。例えば、メチル基、エチル基、Br,Cl等のハロゲン基をあげることができるが、これらの置換基に限定されない。
【0028】
さらに、本発明者らは、一般式(2)で表されるジアミンのアミノ基がメタ位に結合していることにより、これを用いたポリイミド組成物の溶媒に対する溶解性が上がることを見出し、接着剤として用いる際に優れた有用性を示すことに着目した。
【0029】
具体的には、ジアミンとして、一般式(2)において、特にアミノ基が一般式(3)
【0030】
【化9】
Figure 0004017029
【0031】
(式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2−、−NHCO−、−C(CH2−、−C(CF2−、−C(=O)O−、または結合であり、mおよびnは1以上5以下の整数である。Yは同一または異なってもよい。)に示すように、メタ位についているのが好ましい。メタ位にアミノ基があることにより、生成されるポリイミドの有機溶媒への溶解性がより良好となり、加工性が優れる。
【0032】
一般式(2)または一般式(3)で表されるジアミンは、1種または2種以上混合して用いうる。
【0033】
本発明にかかる樹脂組成物に含まれるポリイミド樹脂は、その前駆体であるポリアミド酸重合体を脱水閉環して得られる。このポリアミド酸溶液は、上記一般式(1)で表されるエステル酸二無水物及び上記一般式(2)または(3)で表される1種以上のジアミン成分を、エステル酸二無水物と全ジアミン成分とが実質的に等モルになるように使用し、有機極性溶媒中で重合して得られる。
【0034】
このポリアミド酸またはポリイミドは、まず、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気中において、一般式(2)および/または一般式(3)で表される1種以上のジアミンおよび一般式(1)で表されるエステル酸二無水物より選択される1種以上の酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解または拡散させて得られるポリアミド酸重合体より得られる。
【0035】
各モノマーの添加順序は特に限定されず、酸二無水物を有機極性溶媒中に先に加えておき、ジアミン成分である上記一般式(2)及び/または一般式(3)を添加して、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよいし、ジアミン成分を有機極性溶媒中に先に適量加え、次に酸二無水物を加え、最後に残りのジアミン成分を加えて、ポリアミド酸重合体の溶液としてもよい。この他にも、当業者に公知の様々な添加方法がある。
【0036】
ポリアミド酸溶液の生成反応に用いられる有機極性溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチルー2ーピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,p−,m−,またはp−クレゾール、キシノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γーブチロラクトンなどをあげることができる。さらに必要に応じて、これらの有機極性溶媒とキシレンあるいはトルエンなどの芳香族炭化水素とを組み合わせて用いることもできる。
【0037】
上記得られたポリアミド酸重合体を、熱的または化学的方法により、脱水閉環し、ポリイミド樹脂を得る。イミド化の方法としては、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する熱的方法、脱水剤を用いて脱水する化学的方法のいずれも用いられる。
【0038】
ポリアミド酸重合体を熱的に脱水閉環する方法では、溶液の溶媒を熱的に蒸発させてイミド化を進め、本発明のポリイミド樹脂を得ることもできるが、溶液状態のまま加熱脱水して、溶液状のポリイミド樹脂を得ることもできる。ポリアミド酸重合体を化学的に脱水閉環する方法では、溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒を加え有機溶媒を蒸発させ、加熱して乾燥させつつイミド化を進め、本発明のポリイミド樹脂を得ることもでき、また、溶液状態で脱水剤及び触媒を加えてイミド化し、ポリイミド樹脂溶液を得ることもできる。有機溶媒の蒸発は、150℃以下の温度で約5分から90分の時間の範囲内で行うのが好ましい。また、イミド化のための加熱温度は常温以上約250℃以下の範囲内で適宜選択し、加熱方法は、徐々に行う方法を採用する方がよい。化学的方法による脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、および芳香族酸無水物があげられる。また、触媒としては、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、イソキノリン等の複素環第3級アミン類などがあげられる。
【0039】
このうち、化学的方法によると、上記加熱温度を低温にすることができ、イミド化に要する時間も短縮され、生成するポリイミドの伸び、あるいは引っ張り強度等の機械特性も良好となり好ましい。熱的方法および化学的方法との併用も用い得る。
【0040】
このようにして得られたポリイミド樹脂は、低吸水性を有し、またガラス転移温度が比較的低温であるため、低吸水性及び低温接着を可能とする優れた接着剤材料となり得る。本発明のカバーレイ用接着剤は、このような優れたポリイミド樹脂を含む為、硬化後において、1.5%以下、好ましくは1.3%以下、特に好ましくは1.0%以下という優れた低吸水率が発現され得る。
【0041】
本発明にかかるカバーレイ用接着剤は、さらにエポキシ樹脂を含むことがある為、ポリイミドの有する優れた耐熱性及び低吸水率等の特性に、さらに良好な接着性が付与されている。
【0042】
本発明に使用されるエポキシ樹脂としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック系エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック系エポキシ樹脂、ポリフェノール系エポキシ樹脂、ポリグリコール系エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等が用いることができる。
【0043】
エポキシ樹脂の混合割合は、カバーレイ用接着剤全量の1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%加えるのが望ましい。少なすぎると接着強度が低く、多すぎると柔軟性、耐熱性に劣るものとなる。
【0044】
本発明のカバーレイ用接着剤には、さらに、吸水性、耐熱性、接着性等の向上の為に必要に応じて、酸二無水物系、アミン系、イミダゾール系等の一般に用いられるエポキシ硬化剤、促進剤や種々のカップリング剤を併用し得る。また、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、例えば、ビスマレイミド、ビスアリルナジイミド、フェノール樹脂、シアナート樹脂等をさらに加えて、本発明のカバーレイ用接着剤を得ることもできる。このような他の樹脂は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0〜50重量部、好ましくは5〜30重量部含有させることが好ましい。さらに、熱硬化性樹脂に対する各種硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤を用い得る。
【0045】
本発明のカバーレイ用接着剤には、さらに他の熱可塑性樹脂を含有させることもできる。他の熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコン樹脂、ウレタン系樹脂、およびゴム系樹脂等が挙げられるが、これに限定されない。このような熱可塑性樹脂は、ポリイミド樹脂100重量部に対して、0〜50重量部、好ましくは5〜30重量部含有させるのが望ましい。
【0046】
本発明のカバーレイ用接着剤は、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤、およびその他の成分を均一に攪拌混合することによって得られる。このとき、ポリイミド溶液にそのままエポキシ化合物、エポキシ硬化剤、およびその他の成分を添加し、樹脂組成物溶液とし得る。あるいは、ポリイミド溶液に低沸点溶媒を添加して、さらにエポキシ樹脂、エポキシ硬化剤等を加えて、攪拌混合し、本発明のカバーレイ用接着剤を調製し得る。この他に、ポリアミド酸の重合に用いた溶媒を良く溶かすが、ポリイミドが溶解しにくい貧溶媒中に、ポリイミド溶液を投入してポリイミド樹脂を析出させて未反応モノマーを取り除いて精製し、乾燥して固形のポリイミド樹脂としてから、適宜、本発明のカバーレイ用接着剤とすることもできる。貧溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン等が例として挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
また、この場合、特に限定されないが、このようにして得られた精製ポリイミド樹脂を、他のエポキシ樹脂等と共に再び有機溶媒に溶解し、濾過精製ワニスの状態とすることもできる。このとき使用される有機溶媒は、特に限定されず、当業者に公知のいずれの有機溶媒でも使用できる。
【0048】
従来のポリイミド系接着剤は、銅箔等の金属およびポリイミド等の樹脂フィルムに対して接着性が十分でなく、またエポキシ樹脂との混合は、その難溶性より困難であったが、本発明にかかるカバーレイ用接着剤は、銅箔等の金属箔やポリイミドフィルムとの接着性が良好であり、またその有機溶媒に対する溶解性が良好であるという特性をも併せ持ち、使用に際し加工性に優れる。その具体的な使用態様は、当業者が実施しうる範囲内で種々の方法があるが、例えば、あらかじめシート状に成形しておき、シート状接着剤として用い得る。また、本発明のカバーレイ用接着剤は、ガラス布、ガラスマット、芳香族ポリアミド繊維布、芳香族ポリアミド繊維マット等にワニスとして含浸し、樹脂を半硬化させ、繊維強化型のシート状接着剤として用いることも可能である。このようなカバーレイ用接着剤は、シート状に成形されているので、そのまま単層で、カバーレイフィルムとして用いることもできる。また、ベースとなる樹脂性フィルムに積層して多層構造のカバーレイフィルムを調製することもできる。
【0049】
さらに、本発明のカバーレイ用接着剤は、ワニスとしてそのまま用いることもできる。具体的には主には樹脂性フィルムの片面もしくは両面に、本発明のカバーレイ用接着剤を溶解したワニスを塗布、乾燥し、二層または三層構造、あるいはそれ以上の多層構造としてカバーレイフィルムを調製し得る。
【0050】
ここで、カバーレイフィルムのベースとなる樹脂性フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルサルファイドフィルム、およびポリエーテルエーテルケトンフィルム等の耐熱性フィルムが用いられるが、これに限定されない。
【0051】
シート状に成形されたカバーレイ用接着剤は単層のまま、あるいはベースのフィルムに重層して作成されたカバーレイフィルムは、プリント基板上に積層される。カバーレイフィルムをプリント基板に積層するには、加熱加圧して接着することが好ましい。さらに、このようにカバーレイフィルムを積層したプリント基板に、補強用の銅箔・アルミ箔、42合金箔等の金属箔、エポキシ樹脂−ガラスクロスの複合耐熱板等の別の層を設けることもできる。この場合は、プリント基板と補強板とが、単層や多層にしたカバーレイフィルムを挟んで、積層される。
【0052】
本発明のカバーレイ用接着剤の使用を図を参照しながら例示するが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
すなわち、例えば図1(a)に示すように、樹脂性フィルム10と、上記のようにして得られた本発明のカバーレイ用接着剤層12と、回路14が形成されたフレキシブルプリント基板16の導体面とを順に重ねあわせ、同図(b)に示すように、熱圧着することにより簡単に接着できる。さらに同図(c)に示すように、樹脂性フィルム10上の所定位置にフォトリソグラフィー法やスクリーン印刷法等によってレジスト膜18を形成して、樹脂性フィルム10及びカバーレイ用接着剤層12をアルカリエッチングすることにより、これらに穴20を開けることができる。このようにカバーレイフィルムを積層した後、穴あけ加工することにより、比較的簡単にカバーレイフィルムが接着されたフレキシブルプリント基板を得ることができる。
【0054】
本発明のカバーレイ用接着剤を使用する場合の接着条件としては、接着硬化するために必要十分である接着条件であればよく、具体的には加熱温度150℃〜250℃、圧力0.1〜10MPaで加熱時間5〜20分程度の条件で加熱加圧することが好ましい。
【0055】
本発明のカバーレイ用接着剤は、反応硬化後の吸水率が、1、5%以下、好ましくは、1、3%以下、特に好ましくは、1、0%以下という優れた低吸水率を示し、また半田耐熱性に優れ、かつ耐熱性、接着性ともに優れており、接着剤として使用する際約250℃以下の温度で接着可能である。さらに本発明のカバーレイ用接着剤は、フレキシブルプリント基板の複雑なパターンの間への流れ性に優れる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これら実施例は、本発明を説明するものであり、限定するためのものではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行い得る。
【0057】
(実施例1)容量500mlのガラス製フラスコにジメチルホルムアミド(DMF)280gに3、3' −ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン(以下、BAPP−Mという)0.1487molを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌溶解する。さらにこの溶液を氷水で冷やしつつ、かつフラスコ内の雰囲気を窒素置換して撹拌しながら、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3' ,4,4' −テトラカルボン酸二無水物(以下、ESDAという)0.1487molを粘度に注目しながら徐々に添加した。粘度が1500ポイズに達したところでESDAの添加をやめ、ポリアミド酸重合体溶液を得た。
【0058】
このポリアミド酸溶液にDMF150g、β−ピコリン35g、無水酢酸60gを加え1時間撹拌した後、さらに100℃で1時間撹拌し、イミド化させた。その後、高速で撹拌したメタノール中にこの溶液を少しづつ垂らした。メタノール中に析出した糸状のポリイミドを100℃で30分乾燥後、ミキサーで粉砕し、メタノールでソックスレー洗浄を行い、100℃で2時間乾燥させ、ポリイミド粉末を得た。
【0059】
上記で得たポリイミド粉末30gを70gのDMFに溶解した。得られたワニスをガラス板上に流延し、100℃で10分間乾燥後、ガラス板より引き剥し、鉄枠に固定しさらに150℃で20分乾燥し、厚み25μm のシートを得た。得られたシートをポリイミドフィルム(アピカル50AH、鐘淵化学工業社製)上に銅箔パターン(200μm ピッチ)を形成したフレキシブル印刷回路基板とAl板との間に挟み込み、温度200℃、圧力3MPaで20分加熱加圧し、Al板付きフレキシブル積層板を得た。
【0060】
(実施例2)実施例1で得たワニスをポリイミドフィルム(アピカル50AH、鐘淵化学工業社製)の両面に塗布し、乾燥させて三層構造の接着剤シートを得た。得られたシートをポリイミドフィルム(アピカル50AH、鐘淵化学工業社製)上に銅箔パターン(200μm ピッチ)を形成したフレキシブル印刷回路基板とAl板との間に挟み込み、温度200℃、圧力3MPaで20分加熱加圧し、Al板付きフレキシブル積層板を得た。
【0061】
(実施例3)実施例1で得られたポリイミド粉末20g、TETRAD−C(三菱瓦斯化学社製)5gを83gのDMFに溶解した。得られたワニスをガラス板上に流延し、100℃で10分間乾燥後、ガラス板より引き剥し、鉄枠に固定しさらに150℃で20分乾燥し、厚み25μm のシートを得た。得られたシートをポリイミドフィルム(アピカル50AH、鐘淵化学工業社製)上に銅箔パターン(200μm ピッチ)を形成したフレキシブル印刷回路基板とAl板との間に挟み込み、温度200℃、圧力3MPaで20分加熱加圧し、Al板付きフレキシブル積層板を得た。
【0062】
(比較例1)容量500mlのガラス製フラスコにDMF280gにBAPP−Mを0.1338molおよびパラフェニレンジアミン0.01487molを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌溶解する。さらにこの溶液を氷水で冷やしつつ、かつフラスコ内の雰囲気を窒素置換して撹拌しながら、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下、BTDAという)を0.07435mol加えた後、ESDA0.07435molを粘度に注目しながら徐々に添加した。粘度が1500ポイズに達したところでESDAの添加をやめ、ポリアミド酸重合体溶液を得た。
【0063】
このポリアミド酸溶液にDMF150g、β−ピコリン35g、無水酢酸60gを加え1時間撹拌した後、さらに100℃で1時間撹拌し、イミド化させた。その後、高速で撹拌したメタノール中にこの溶液を少しづつ垂らした。メタノール中に析出した糸状のポリイミドを100℃で30分乾燥後、ミキサーで粉砕し、メタノールでソックスレー洗浄を行い、100℃で2時間乾燥させ、ポリイミド粉末を得た。
【0064】
上記で得たポリイミド粉末20gを83gのDMFに溶解した。得られたワニスをガラス板上に流延し、100℃で10分間乾燥後、ガラス板より引き剥し、鉄枠に固定しさらに150℃で20分乾燥し、厚み25μm のシートを得た。得られたシートをポリイミドフィルム(アピカル50AH、鐘淵化学工業社製)上に銅箔パターン(200μm ピッチ)を形成したフレキシブル印刷回路基板とAl板との間に挟み込み、温度200℃、圧力3MPaで20分加熱加圧し、Al板付きフレキシブル積層板を得た。
【0065】
以上の各実施例及び比較例で得られたAl板付きフレキシブル印刷回路基板について半田耐熱性、配線パターン間流れ性(Al板をエッチングした後の外観評価)、フレキシブル印刷回路基板とAl板の密着性を評価した。また、各接着シートの吸水率も併せて評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
Figure 0004017029
【0067】
なお、半田耐熱性は、得られた積層板を260℃半田浴に10秒浸漬したときの外観評価が、膨れがなく良好のものを○とした。配線パターン間流れ性は、実施例または比較例で得られた積層板から、Al板をエッチングによって除去した後、光学顕微鏡でパターン間を観察して、気泡等の有無を調べて評価した。
【0068】
密着性は、引き剥がし強度の測定として、JISC6481に準拠した。
【0069】
また、吸水率は、ASTM D570に基づいた測定により算出した。フィルム状のカバーレイ用接着剤、例えば実施例1でいうところの厚み25μmのシートを、150℃で3時間加熱して硬化させた接着剤シートをさらに、150℃で30分間乾燥させたものの重量をW1 とし、24時間蒸留水に浸したあと表面を拭き取ったものの重量をW2 とし、下記式により算出した。
【0070】
吸水率( %)=(W2 −W1 )÷W1 ×100
【0071】
【発明の効果】
本発明のカバーレイ用接着剤は、接着剤として使用するときに200℃程度の温度で接着できる。すなわち、従来の耐熱接着剤と異なり、接着に高温を要せず、ポリイミドフィルムに対しても高い接着力を示し、高温まで高い接着力を保持する。本発明のカバーレイ用接着剤はまた、低吸水率であるため、半田浴に浸漬する際の膨れ等を生じない半田耐熱性を有する。さらに、本発明のカバーレイ用接着剤は、複雑なパターンを有する回路上に使用される為のパターン間の流れ性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るカバーレイフィルムをフレキシブルプリント基板に接着する方法を説明するための図であり、同図(a)、(b)、および(c)は、各工程を示す断面説明図である。
【符号の説明】
10;樹脂性フィルム
12;カバーレイ用接着剤
16;フレキシブルプリント基板
20;穴

Claims (7)

  1. 一般式(1)
    Figure 0004017029
    (式中、Xは芳香環を含む二価の基を示す。)で表されるエステル酸二無水物;および
    一般式(2)
    Figure 0004017029
    (式中、Yは、−C(=O)−、−SO2−、−O−、−S−、−(CH2−、−NHCO−、−C(CH2−、−C(CF2−、−C(=O)O−、または結合であり、mおよびnは1以上以下の整数である。Yは同一または異なってもよい。)で表されるジアミンとを反応させて得られるポリイミド樹脂を含むことを特徴とする、カバーレイ用接着剤。
  2. 前記一般式(2)で表されるジアミンが、化学(1)
    Figure 0004017029
    表されることを特徴とする請求項1に記載のカバーレイ用接着剤。
  3. エポキシ樹脂を全量の1〜50重量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のカバーレイ用接着剤。
  4. 反応硬化後の吸水率が1.5%以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するカバーレイ用接着剤。
  5. 前記請求項1乃至請求項4のいずれかに記載するカバーレイ用接着剤をフィルム状に成形してなることを特徴とするカバーレイフィルム。
  6. 樹脂性フィルムの片面又は両面に、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のカバーレイ用接着剤を積層してなることを特徴とするカバーレイフィルム。
  7. 前記樹脂性フィルムが、ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項6に記載のカバーレイフィルム。
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