JP4016563B2 - エアバッグ用カバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ用カバーに関し、詳しくは、自動車などの高速移動体の衝突事故などの際に、その衝撃や変形を感知することにより作動して膨張展開することにより、乗員を保護するエアバッグの収納カバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバッグシステムは、自動車などの衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置とから成る。エアバッグ装置は、エアバッグ、エアバッグ作動装置およびそれを収納するカバーから成り、これら装置は、ステアリングホイール、助手席前面のインストルメントパネル内、フロント及びサイドピラー、座席シート側面部などに設置される。そして、車両の衝突などにより大きな衝撃を受けた際には、エアバッグケース内に収納されているエアバッグが膨張し、エアバッグカバーを内部から押し開き、当該エアバッグを車室内に展開させる様になっている。
【0003】
上記の様な構造に使用されるエアバッグカバーとしては、金属を芯材としたウレタン発泡成形品の他、製品重量の軽量化のため、変性ポリフェニレンオキサイドと6−ナイロンとのポリマーアロイといった硬質プラスチックを芯材に使用し、6−ナイロンネット等による補強材をインサートしたウレタン発泡成形品などがある。
【0004】
ところで、変性ポリフェニレンオキサイドと6−ナイロンとのポリマーアロイを芯材として使用した場合、製品重量は軽量化できるが低温時の展開性能が低下する傾向があり、また、ネット状の補強材をインサートするため、多数の複雑な製造工程が必要である。
【0005】
上記の問題を解決するため、ソフト感のある熱可塑性エラストマーを使用した表皮層と、形状保持性のある硬い熱可塑性エラストマーを使用したコア層から成り、そして、上記のウレタン発泡成形の製造工程を簡略化して生産性を向上させた二色射出成形カバーが提案されている(特開平1−202550号公報、特開平2−171362号公報、特開平2−220946号公報、特開平3−189252号公報)。更に、単層射出成形による上記の二色射出成形カバーの欠点であるコストの低減化も提案されている(特開平2−171364号公報、特開平4−151348号公報、特開平4−314648号公報、特開平5−38996号公報)。そして、これらの提案により、通常の射出成形機によりエアバッグカバーの成形が可能となり、しかも、成形サイクルが短縮された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最新のエアバッグ装置は、インストルメントパネルの助手席前面の開口部に設置されたり、フロント又はサイドピラー等に設置されるケースもあり、この場合、隣接する部材との剛性感・外観の差がより少ないものが求められる。前記の二色射出成形カバーや単層射出成形カバーの場合は、エアバッグ展開時にドアを容易に開裂させるための薄肉部(ティアライン)を持つことから、剛性感が悪く、耐熱変形性において十分満足できるものではない。
【0007】
また、例えば、図5に示す様なエアーバッグドア構造に使用される従来のエアバッグ用カバー(1)は、単層構造であり、そして、一般部とこの裏面より分岐して成るヒンジ部(2)と相手部材との取付部(3)を有する。なお、図5中、符号(4)は爪係り止め部、(5)はエアバッグ、(6)はインフレーター、(7)はエアバッグ・モジュールケースを表す(以下、同じ)。
【0008】
しかしながら、従来の単層構造のエアバッグ用カバーは、剛性感が大幅に改善されているものの、自動車の内装部品として十分とは言い難く、その一方、製品剛性確保のために使用する材料の剛性を向上させていくと、このヒンジ部に応力集中が起こり易くなり、より破損し易くなるといった問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、インストルメントパネル内やフロント及びサイドピラー等に設置されるエアバッグ用カバーであって、エアバッグ膨張時に破壊および飛散が無く且つ剛性感および耐熱変形性に優れたカバーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定成分を特定割合で配合した特定の物性をもつ2種の熱可塑性エラストマーを使用した積層構造のエアバッグ用カバーが、剛性感および耐熱変形性に優れ、しかも、エアバッグ膨張時に破壊、飛散、また、2種のエラストマーの接着面が剥がれることなく展開するという安全性の高いことを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、次の材料にて構成された上側部材(I)とその裏打部材(II)とから成ることを特徴とするエアバッグ用カバーに存する。
【0012】
上側部材(I):曲げ弾性率が550〜1300MPa、−30℃におけるアイゾット衝撃強さが10KJ/m2以上の熱可塑性エラストマーであって、当該熱可塑性エラストマーは以下の成分(A)及び(B)を含有する組成物から成り、そして、当該組成物は、以下の成分(F)及び/又は(G)を任意成分として含有することができ、成分(G)を含有する場合、その割合は成分(A)及び(B)の合計量に対して20重量%以下の割合である。
裏打部材( II ):メルトフローレート(MFR)が6〜20g/10分、引張破壊強さが15MPa以上、曲げ弾性率が250〜650MPa、−40℃におけるアイゾット衝撃強さが30KJ/m 2 以上の熱可塑性エラストマーであって、当該熱可塑性エラストマーは以下の成分(C)〜(E)を含有し、これらの合計量に対し、成分(D)の割合が10〜30重量%である組成物から成る。
【0013】
成分(A):MFRが5〜100 g /10分、23℃におけるアイゾッド衝撃強度が5KJ/m 2 を超えるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
成分(B):MFRが3g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
成分(C):MFRが30〜100 g /10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
成分(D):MFRが0.5g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
成分(E):MFRが0.1〜20 g /10分で且つ密度が0.875g/cm3以下であるエチレン・オクテン共重合体ゴム。
成分(F):タルク。
成分(G):スチレンと共役ジエンのブロック共重合体および/またはその水素添加物。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のエアバッグ用カバーは、上側部材(I)とその裏打部材(II)とから成る。上側部材(I)は車室側部材に相当し、裏打部材(II)は補強部材として機能する。なお、本明細書に記載の物性値は、後述の測定方法に従って測定された値を意味する。
【0015】
先ず、本発明のエアバッグ用カバーの上側部材(I)について説明する。上側部材(I)は、曲げ弾性率が550〜1300MPa、−30℃におけるアイゾット衝撃強さが10KJ/m2以上の熱可塑性エラストマーにて構成される。斯かる熱可塑性エラストマーは、好ましくは、次の成分(A)及び(B)を含有する組成物から成る。
【0016】
成分(A):メルトフローレート(MFR)が5〜100g/10分、23℃におけるアイゾッド衝撃強度が5KJ/m2を超えるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
【0017】
成分(B):MFRが3g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
【0018】
上記の成分(A)のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号、特開昭57−63310号、特開昭63−43915号などの各公報に記載された様に、高立体規則性触媒の存在下、気相流動床、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用して得ることが出来る。
【0019】
プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRが5g/10分以下の場合は、流動性が低下し成形加工性が悪くなり、また、フローマークといった外観不良が発生し易くなる傾向にある。一方、MFRが100g/10分を超える場合は、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが低下する傾向にあり、展開試験時の割れ及び飛散が発生し易い傾向にある。プロピレン・エチレンブロック共重合体の23℃におけるアイゾッド衝撃強度が5KJ/m2以下の場合は、低温衝撃性能が低下する傾向がある。
【0020】
上記の成分(B)のエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)としては、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとしての5−エチリデンノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン等を水素の共存下、可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とから形成される触媒、カミンスキー型触媒などを使用し、気相流動床、溶液法、スラリー法などの製造プロセスを適用した連続的な共重合により得ることが出来る。
【0021】
EPDMの具体的例としては、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジクロロペンタジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1−4ヘキサジエン共重合体ゴム等が挙げられる。EPDMのエチレン含量は、通常35〜85重量%、好ましくは40〜80重量%、更に好ましくは45〜75重量%である。
【0022】
EPDMのMFRが3g/10分を超える場合は、低温のアイゾット衝撃性能が低下する傾向にある。また、エチレン含量が上記範囲を超える場合は、アイゾット衝撃強強さが低下する傾向にあり、上記範囲未満の場合は、引張破壊強さが低下する傾向にある。
【0023】
本発明において、上側部材(I)を構成する熱可塑性エラストマーは、目的に応じ、次の成分(F)及び/又は(G)を含有することが出来る。
【0024】
成分(F)はタルクであり、は主として製品の剛性感を向上させるために使用される。タルクの比表面積は、通常37、000cm2/g以上、好ましくは40、000cm2/g以上、平均粒径は、通常1.0〜6.0μm、好ましくは1.5〜5.5μm、平均アスペクト比は、通常5以上、好ましくは6以上とされる。斯かるタルクの使用とにより、衝撃性能を著しく低下させず、剛性感を向上させることが可能である。
【0025】
成分(G)は、スチレンと共役ジエンのブロック共重合体および/またはその水素添加物であり、熱可塑性エラストマーの低温アイゾッド衝撃性能および引張破壊強さを調整する目的で配合される。上記の共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン又はこれらの混合物が挙げられる。スチレンと共役ジエンのブロック共重合体(エラストマー)としては、MFRが20g/10分以下であり、スチレンブロック部が20〜40重量%、特に25〜35重量%のエラストマーが好ましい。
【0026】
成分(G)の具体的例としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(以下、単に「S−B−S」)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(以下、単に「S−I−S」)、スチレン・ブタジエン・イソプレンブロック共重合体(以下、単に「S−BI−S」)、スチレン・ブタジエン共重合体の水素添加物(以下、単に「水添S−B−S」)である、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0027】
前記の成分(A)及び(B)の合計量に対する、成分(A)の割合は、通常55〜75重量%、好ましくは60〜70重量%であり、成分(B)の割合は、通常25〜45重量%、好ましくは30〜40重量%である。成分(A)の割合が55重量%未満の場合は、剛性感および耐熱変形性に劣り、75重量%を超える場合は、低温時の展開性能に劣る傾向がある。一方、成分(B)の割合が25重量%未満の場合は、低温展開性能に劣り、45重量%超える場合は、剛性および耐熱変形性に劣る傾向がある。
【0028】
前記の成分(F)及び(G)の割合は、それぞれ、前記の成分(A)及び(B)の合計量に対し、通常20重量%以下、好ましくは3〜15重量%である。成分(F)の割合が20重量%を超える場合は、低温衝撃性に劣る傾向にあり、成分(G)の割合が20重量%を超えた場合は、流動性が低下して加工性に劣る傾向がある。
【0029】
次に、本発明のエアバッグ用カバーの裏打部材(II)について説明する。裏打部材(II)は、MFRが6〜20g/10分、引張破壊強さが15MPa以上、曲げ弾性率が250〜650MPa、−40℃におけるアイゾット衝撃強さが30KJ/m2以上の熱可塑性エラストマーにて構成される。斯かる熱可塑性エラストマーは、好ましくは、次の成分(C)〜(E)を含有する組成物から成る。
【0030】
成分(C):MFRが30〜100g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
【0031】
成分(D):MFRが0.5g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
【0032】
成分(E):MFRが0.1〜20g/10分以で且つ密度が0.875g/cm3以下であるエチレン・オクテン共重合体ゴム。
【0033】
上記の成分(C)のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、前記の成分(A)と同様の製造プロセスで得ることが出来る。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRが30g/10分以下の場合は、流動性が低下し、上側部材との融着強度が十分に得られない傾向があり、MFRが100g/10分を超えた場合は、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが低下する傾向にあり、展開試験時の割れ、飛散が発生し易い傾向にある。
【0034】
上記の成分(D)のエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)は、MFRの数値を除き、前記の成分(B)のEPDMと同じである。MFRが0.5g/10分を超える場合は、上側部材との融着界面において表層剥離(デラミネーション)を発生し易くなり、融着強度が低下する傾向がある。
【0035】
上記の成分(E)のエチレン・オクテン共重合体ゴムは、例えば、気相流動床、溶液法、スラリー法、高圧重合法などによって得ることが出来る。重合触媒としては、ハロゲン化チタンの様なチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム・マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム・マグネシウム錯体の様な有機アルミニウム・マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、アルキルアルミニウムクロリド等の有機金属化合物との組み合わせによる、所謂チグラー型触媒、国際公表公報:WO91/04257号明細書などに記載されている様なメタロセン触媒が挙げられる。メタロセン触媒は、アルモキサンを含まないものでもよいが、、メタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒(所謂カミンスキー系触媒)が好ましい。
【0036】
エチレン・オクテン共重合体ゴムのMFRが0.1g/10分未満の場合は、流動性が低下し、上側部材との融着強度が十分に得られない傾向があり、MFRが20g/10分を超える場合は、引張破壊強さ及び引張破壊伸びが低下する傾向にあり、展開試験時の割れ及び飛散が発生し易い傾向にある。それに加え、上側部材との融着界面において表層剥離(デラミネーション)を発生し易くなり、融着強度が低下する傾向がある。一方、密度が0.875g/cm3を超える場合は、低温衝撃性が低下する傾向がある。
【0037】
前記の成分(C)〜(E)の合計量に対する、成分(C)の割合は、通常40〜60重量%、好ましくは45〜55重量%であり、成分(D)及び(E)の割合、それぞれ、通常10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%である。成分(C)の割合が40重量%未満の場合は、エアバッグ装置の保持性と高温展開性に劣る傾向があり、60重量%を超える場合は、低温時の展開性能に劣る傾向がある。成分(D)の割合が10重量%未満の場合は、上側部材との融着強度に劣る傾向にあり、30重量%を超える場合は、高温展開性能に劣る傾向がある。成分(E)の割合が10重量%未満の場合は、引張破壊強度および引張破壊伸びが劣る傾向があり、30重量%を超える場合は、低温時の展開性能に劣る傾向がある。
【0038】
本発明において、前記の上側部材(I)及び裏打部材(II)には、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じ、以下の任意成分を配合することが出来る。任意成分としては、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、前記以外の各種熱可塑性エラストマー、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤などが挙げられる。
【0039】
そして、上側部材(I)及び裏打部材(II)を構成する熱可塑性エラストマー(組成物)は、通常の、押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、ニーダー等を使用し、常法に従って構成成分を混練して製造されるが、押出機、特に二軸押出機を使用して製造するのが好ましい。
【0040】
次に、図1〜4に基づいて本発明のエアバッグ用カバーの好ましい構造について説明する。なお、上記の図1及び2は、本発明のエアバッグ用カバーの好ましい構造を説明するためのエアーバッグドア構造の説明図であり、図3は金属インサート部の一例の説明図、図4は図3のA−A線の断面説明図である。
【0041】
先ず、図1に示す構造について説明する。この構造は、上側部材(8)に裏打部材(11)が一体に裏打ちされたエアバッグ用カバーにおいて、上側部材(8)のカバー開口予定部にはドア回転軸側にヒンジ側破断予定部(9)及びドア開放部側に開放側破断予定部(10)が設けられ、開放破断予定部(10)の外側に沿ってエアバッグ・モジュールケース(7)への上側部材取付部(13)が一体に形成されていると共に、裏打部材(11)はその本体部分が上側部材(8)と一体化されていると共に、当該本体部には上側部材(8)のヒンジ側破断予定部(9)の内側に沿ってカバー回転軸と成るヒンジ部とエアバッグ・モジュールケース(7)へのヒンジ取付部(12)が形成されていることを特徴とする。
【0042】
次に、図2に示す構造について説明する。この構造は、上側部材(8)に裏打部材(11)が一体に裏打ちされたエアバッグ用カバーにおいて、上側部材(8)のカバー開口予定部には少なくともドア回転軸側にヒンジ側破断予定部(9)が設けられていると共に、裏打部材(11)はその本体部が上側部材(8)と一体化されていると共に、当該本体部には上側部材(8)のヒンジ破断予定部の内側に沿って回転軸となるヒンジ部およびエアバッグ・モジュールケース(7)へのヒンジ取り付け部(12)が形成され、カバー開口予定部の開放部側には開放側破断予定部(10)と当該開放側破断予定部の外側に沿ってエアバッグ・モジュールケース(7)への補強部材取付部(14)が形成されいていることを特徴とする。
【0043】
また、上記の構造以外に、車室内のピラー部からエアバッグ用カバーを展開させる等の場合を想定し、図3及び図4に示す構造も好適に採用することが出来る。図3及び図4に示す構造は、上側部材(17)のエアバッグ展開時の回転軸かつ車体取付部(金具インサート部)(15)となる部分が設けられ、上側部材(17)と金属インサート部品(19)を一体化するための裏打部材(18)により裏打ち、充填されていることを特徴とする。なお、図3中の符号(16)はインストルメントパネルを表す。
【0044】
次に、本発明のエアバッグ用カバーの成形法について説明する。本発明のエアバッグ用カバーは、予め、裏打部材を成形し、上側部材を成形の際にインサート部品として配し上側部材と一体に形成することが出来る。裏打部材の成形には、通常の射出成形法、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法などの各種成形法を使用するが出来る。更に、公知のダブルインジェクシヨン成形法を使用し、同時または先に、裏打部材を成形後、上側部材を成形することにより一体に形成することも可能である。成形温度は、通常100〜300℃、好ましくは150〜280℃、射出圧力は、通常5〜100MPa、好ましくは10〜80MPa、金型温度は、通常20〜80℃、好ましくは20〜60℃である。
【0045】
本発明のエアバッグ用カバーは、表皮層および必要に応じて合成樹脂発泡層を有した構造としてもよい。この場合の成形方法としては軟質ポリ塩化ビニールやオレフィン系熱可塑性エラストマーの表皮層とポリオレフィン系樹脂の発泡層とからなる複合シートを真空成形などにて賦形後、エアバッグ用カバー及び当該カバーが取り付けられた相手部材に接着させる方法や表皮層を接着剤などにより成形品表面に貼付する方法などが挙げられる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[I]原材料:使用した原材料は次の表1〜表7に示す通りである。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
[II]評価方法:
各種の評価は以下の(1)〜(7)に示す方法で行なった。但し、(2)〜(6)における測定試料は、インラインスクリュータイプ射出成形機(日本製鋼所(株)製射出成形機「N100B」)を使用し、射出圧力50MPa、射出温度220℃、金型温度40℃にて成形したピースを使用した。また、(7)における測定試料は、インラインスクリュータイプ射出成形機(新潟鉄工所(株)製射出成形機「NN350」)を使用し、220℃の温度で成形したエアバッグ用カバーを助手席エアバッグ周囲を形成する部分のインストルメントパネル金型にインサート成形したもの(以下インストルメントパネル)で評価を行った。
【0056】
この際、実施例1〜9、12〜15及び比較例1〜16は、図1に示す形状に射出成形したエアバッグ用カバーをインストルメントパネル金型にインサート成形し、実施例10は、図2に示す形状に射出成形したエアバッグ用カバーをインストルメントパネル金型にインサート成形し、実施例11は、図3に示す予め頭部を補強材で被覆したボトルを金型にインサート成形したエアバッグ用カバー(ピラーガーニッシュ・エアバッグ用カバー)を車体に直接固定して評価を行った。
【0057】
(1)MFR(g/10分):
JIS−K−6758に準拠して温度230℃、荷重21.17Nにて測定。
【0058】
(2)密度:
JIS K6758に準拠して測定。
【0059】
(3)曲げ弾性率(MPa):
JIS−K−7203に準拠してスパン間64mm、曲げ速度2mm/minにて測定。
【0060】
(4)アイゾット衝撃強さ(KJ/m2):
JIS−K−7110に準拠したノッチ付き試験片を使用し、−35℃にて測定。測定後、アイゾット衝撃強さが30KJ/m2以下の場合は低温展開試験を実施しなかった。
【0061】
(5)耐熱変形性:
JIS−K−7116に準拠した曲げクリープ試験治具を使用し、曲げ弾性率評価用試験片の幅方向(10mm幅)を荷重に対して平行にして測定。110℃雰囲気下で2.2MPaの荷重を加えた際の変形量が4mm以下の場合を耐熱変形性良好とした。
【0062】
(6)融着強度:
予め、幅120mm、長さ120mm、厚み2mmのピースに裏打部材(II)を成形し、幅120mm、長さ120mm、厚み4mmのピース成形用金型にインサート後、上側部材(I)を射出成形し、2材料を融着させたピースを使用した。当該ピースを幅30mmに切削し、両材料を剥離させ、その際の強度を測定して融着強度(N)とした。融着強度が20N以上の場合は展開試験時に融着面での剥離が発生し難いことが分かっており良好とした。
【0063】
(7)デラミネーション:
前記(6)の評価後、剥離面を黙視にて観察し表層剥離(デラミネーション)現象が発生していない場合を良好とした。
【0064】
(8)展開テスト:
エアバッグ装置とエアバッグ用カバーを固定し、展開テスト温度(−40℃、80℃)の恒温槽内に1時間放置した後、展開テストを実施した。そして、以下の表8に示す不都合な現象があった場合を不良とし、その様な現象がなく正常な展開がなされた場合を良好とした。
【0065】
【表8】
(a)カバーが割れて飛散する。
(b)カバーが鋭利な形状に割れて正常な展開が出来ない。
(c)カバーが取り付け部より引きちぎられた。
(d)ヒンジ部が破断した。
(e)展開時の変形が大きかった。
(f)取り付け用のインサート金具などが抜けた。
(g)インサート部付近に割れが発生した。
【0066】
実施例1〜17及び比較例1〜14
表1〜7に示す原材料を使用し、表9〜14に示す配合組成(重量部)にて上側部材を配合し、表15及び16に示す配合組成(重量部)にて裏打部材を配合し、この表9〜14に示す配合組成の合計量100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」)0.1重量部を添加し、L/D=33、シリンダー径45mmの二軸押出機(池貝製「PCM45」)にて200℃の温度に設定して溶融混練しペレットを得た。
【0067】
そして、実施例1〜9、12〜15、比較例1〜16については、図1に示す形状(構造X)に、実施例10については図2に示す形状(構造Y)に、実施例11については図3に示す形状(構造Z)に射出成形し、また、この際の裏打部材種については表9〜14に示した裏打部材を使用し、上記の評価を行なった。これらの評価結果を表9〜16に示す。
【0068】
【表9】
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
【表12】
【0072】
【表13】
【0073】
【表14】
【0074】
【表15】
【0075】
【表16】
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、インストルメントパネル内やフロント及びサイドピラー等に設置されるエアバッグ用カバーであって、エアバッグ膨張時に破壊および飛散が無く且つ剛性感および耐熱変形性に優れたカバーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエアバッグ用カバーの好ましい構造を説明するためのエアーバッグドア構造の一例の説明図
【図2】本発明のエアバッグ用カバーの好ましい構造を説明するためのエアーバッグドア構造の他の一例の説明図
【図3】金属インサート部の一例の説明図
【図4】図3のA−A線の断面説明図
【図5】従来のエアバッグ用カバーの構造を説明するためのエアーバッグドア構造の一例の説明図
【符号の説明】
1:エアバッグ用カバー
2:ヒンジ部
3:相手部材との取付部
4:爪係り止め部
5:エアバッグ
6:インフレーター
7:エアバッグ・モジュールケース
8:エアバッグカバー開口部
9:ヒンジ破断予定部
10:開放側破断予定部
11:裏打部材
12:ヒンジ部取付部
13:上側部材取付部
14:補強部材取付部
15:車体取付部(金属インサート部)
16:インストルメントパネル
17:上側部材
18:裏打部材
19:金属インサート部品
Claims (4)
- 次の材料にて構成された上側部材(I)とその裏打部材(II)とから成ることを特徴とするエアバッグ用カバー。
上側部材(I):曲げ弾性率が550〜1300MPa、−30℃におけるアイゾット衝撃強さが10KJ/m2以上の熱可塑性エラストマーであって、当該熱可塑性エラストマーは以下の成分(A)及び(B)を含有する組成物から成り、そして、当該組成物は、以下の成分(F)及び/又は(G)を任意成分として含有することができ、成分(G)を含有する場合、その割合は成分(A)及び(B)の合計量に対して20重量%以下の割合である。
裏打部材(II):メルトフローレート(MFR)が6〜20g/10分、引張破壊強さが15MPa以上、曲げ弾性率が250〜650MPa、−40℃におけるアイゾット衝撃強さが30KJ/m2以上の熱可塑性エラストマーであって、当該熱可塑性エラストマーは以下の成分(C)〜(E)を含有し、これらの合計量に対し、成分(D)の割合が10〜30重量%である組成物から成る。
成分(A):MFRが5〜100 g /10分、23℃におけるアイゾッド衝撃強度が5KJ/m 2 を超えるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
成分(B):MFRが3g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
成分(C):MFRが30〜100 g /10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体。
成分(D):MFRが0.5g/10分以下であるエチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体ゴム。
成分(E):MFRが0.1〜20 g /10分で且つ密度が0.875g/cm 3 以下であるエチレン・オクテン共重合体ゴム。
成分(F):タルク。
成分(G):スチレンと共役ジエンのブロック共重合体および/またはその水素添加物。 - 上側部材(I)において、成分(A)及び(B)を含有する組成物の両者の合計量に対する、成分(A)の割合が55〜75重量%、成分(B)の割合が25〜45重量%である請求項1に記載のエアバッグ用カバー。
- 裏打部材(II)において、成分(C)〜(E)を含有する組成物のこれらの合計量に対する、成分(C)の割合が40〜60重量%、成分(E)の割合が10〜30重量%である請求項1又は2に記載のエアバッグ用カバー。
- 上側部材(I)において、成分(F)の割合が成分(A)及び(B)の合計量に対して20重量%以下である請求項1〜3の何れかに記載のエアバッグ用カバー。
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