JP4015692B2 - 生体接着性マイクロスフェア、ならびに、薬物送達およびイメージングシステムにおけるそれらの使用 - Google Patents

生体接着性マイクロスフェア、ならびに、薬物送達およびイメージングシステムにおけるそれらの使用 Download PDF

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Description

発明の背景
本発明は、一般に、薬物送達システムの分野、特に、胃腸、膣、および呼吸性の薬物送達の分野に存する。
本発明は、Edith Mathiowitz, Donald Chickering III,およびJules S. Jacobによって、1992年4月24日に出願された、「生体接着性マイクロスフェア、ならびに、薬物送達およびイメージングシステムにおけるそれらの使用」と題する、U.S.S.N.第07/873,480号の一部継続出願である。
薬物送達は、送達される作用物質および投与経路によって、種々の形態をとる。好ましい投与様式は、非侵襲性である;すなわち、鼻腔または口腔経路による投与である。しかし、いくつかの化合物は、このような投与には適さない。なぜなら、胃腸管内の条件により分解される、または、血管にうまく浸透しないからである。
薬物送達のための制御された放出システムは、しばしば、身体の特定領域に薬物を投与するために設計される。胃腸管では、薬物が所望の作用部位を越えて輸送されないこと、および、薬物が局所的効果を上げるかまたは血流中にはいる機会を得る前に除去されないことが、重要である。薬物送達システムが、適当な内臓の内層に接着するように作成され得れば、その成分は、接触の近接度および期間の関数に基づき、標的組織に送達される。
ポリマーと胃腸組織と間の接着的結合の発達には、2つの主要局面がある:(i)生体接着性材料の表面特性、および(ii)ポリマーが接触する生体接着性材料本来の性質である。腸粘膜は、吸収性の上皮細胞およびムチンを分泌する細胞の連続した1層から形成される。この粘膜の上に重なっているのは、不連続な保護コーティング、すなわち粘液であり、この粘液は、95%より高含量の水、ならびに、電解質、タンパク質、脂質、および糖タンパク質(この糖タンパク質は、粘液のゲル様特徴の原因である)から構成されている。これらの糖タンパク質は、シアル酸基またはL−フコース基のいずれかが末端の、共有結合的に結合した炭化水素鎖を有するタンパク質コアからなる。腸粘液の糖タンパク質の炭化水素構造は、上皮細胞膜の一部の糖タンパク質の炭化水素構造と同様のものである。粘液の糖タンパク質は、本来は微生物および寄生菌が腸壁上にそれら自体を定着し得るために進化させた炭化水素結合リガンドに対する「ダミーレセプター」として作用する。粘液の1機能には、これらのリガンドおよび関連する無効な作用物質を遮断し、それによって粘膜を保護することがある。
経口的に摂取された産物は、上皮表面または粘液のいずれかに接着し得る。生体活性物質の送達には、単に粘液層に接着する(粘液接着(mucoadhesion)は実質的に生体有効能を改善し得るのであるが)ポリマー性デバイスよりは、上皮に接着するポリマー性デバイスのほうが有効である。数種のイメージングの目的においては、上皮および粘液の両方への接着が望ましいが、胃潰瘍または潰瘍性大腸炎のような病理状態においては、粘液層下の細胞への接着が起こり得る。
胃腸管での生体接着は、以下の2段階で進行する:(1)合成材料の粘液基質への接触点での粘弾性的変形、および、(2)接着性合成材料と粘液または上皮細胞との間の結合の形成。
いくつかのマイクロスフェア製剤(formulation)が、経口薬物送達の手段として提案されてきた。これらの製剤は、一般に、カプセル化した化合物を保護し、かつ、その化合物を血流中に送達するために役立つ。腸溶製剤は、放出を遅らすとともに、経口的に投与された薬物を保護する目的で何年間も広く用いられてきた。カプセル化した薬物を保護するとともに、化合物を血流中に送達するために設計された他の製剤は、PCT/US90/06430およびPCT/US90/06433に記載されているような、ゼインなどの疎水性タンパク質;Steinerへの米国特許第4,976,968号に記載されているような「プロテイノイド」;またはUAB Research Foundation and Southern Research Instituteによる欧州特許出願第0333523号に記載されているような合成ポリマーで形成されている。EPA第0333523号は、ワクチンの経口投与に使用するため、抗原を含有する、直径が10ミクロンより小さいマイクロパーティクルについて記載している。これらのマイクロパーティクルは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリオルトエステル、ポリ(エステルアミド)、ポリヒドロキシ酪酸および、ポリ無水物のようなポリマーから形成されており、かつ、腸でパイアー斑を通じて、主として大きさの関数に基づき、吸収される。
粘膜の内層を通してのこれらのパーティクルの吸収をコントロールまたは増加するための、または、鼻腔または胃腸経路によるパーティクルのさらなる輸送を遅らすための方法または手段があれば、有効であろう。
DucheneらのDrug Dev. Ind. Pharm. 14(2&3), 283-318 (1988)では、薬物送達のための生体接着性システムの薬学的および医学的局面を記載している。「生体接着」は、長期にわたり生体組織に接着するための材料の能力として定義される。生体接着は、明らかに、胃が空になることおよび腸の蠕動により生じる、ならびに繊毛運動による変位により生じる、不十分な滞留時間の問題に対する1つの解決法である。充分な生体接着を起こすには、生体接着物質(bioadhesive)とレセプター組織との間に密接な接触が存在し、生体接着物質が組織表面および/または粘液の間隙に侵入し、そして機械的、静電的、または化学的結合が形成されなければならない。これらのポリマーの生体接着特性は、ポリマー本来の性質および周辺媒体(media)本来の性質の両方に影響される。
Ducheneらは、粘液試料を含有するプレートとポリマーコーティングガラスプレートとの間の表面張力を測定することによって、ポリマーの生体接着性についての試験を行った。粘膜溶液よりむしろ腸膜を用いる他のシステム、ならびに、ラットおよびゼラチンカプセル中の放射性ラベルされたポリマー性材料を用いるインビボでの研究についても記載している。多数のポリマーがその生体接着性について特徴付けされたが、主として「優れている」または「劣っている」との観点からの特徴付けであった。ポリカルボフィル(polycarbophile)およびアクリル酸ポリマーは、最大接着力がまだ11mN/cm2であったが、接着性が最も優れているとして注目されていた。
他にも生体接着性ポリマーの使用について調査した人々がいる。Smartらは、J. Pharm. Pharmacol. 36:295-299 (1984)で、皿状の粘膜と接触しているポリマーコーティングガラスプレートを用いて粘膜への接着を試験する方法について、報告した。アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ペクチン、およびポリビニルピロリドンを包含する、種々のポリマー性材料が試験された。Gurneyらは、Biomaterials 5, 336-340 (1984)で、接着性は、物理的および機械的な結合(すなわち、二次的化学結合;および/または一次的な、イオン結合または共有結合)によって影響を受け得ると結論した。Parkらは、Alternative Approaches to Oral Controlled Drug Delivery: Bioadhesives and In-situ Systems 163-183、J.M.AndersonおよびS.W. Kim編、Recent Advances in Drug Delivery (Plenum Press NY 1984)で、ムチン/上皮表面に対するポリマーの接着性を定量するための、細胞内での蛍光プローブの使用について報告した。これらの結果は、高い電荷密度を有するアニオン性ポリマーが接着性ポリマーとして好ましいであろうことを示した。
これらの研究はいずれも、マイクロスフェアと腸組織との間の引張測定の研究を含んでいなかった。マイクロスフェアは、粘膜流(mucosal flow)、蠕動運動、高い表面性対体積比のような、他の要因にも影響され得る(MikosらのJ. Colloid Interface Sci. 143, 2:366-373 (1991年5月)およびLehrらのJ. Controlled Rel. Soc. 13:51-62 (1990)、これらは両方とも、薬物送達のために使用されるポリマーの生体接着特性について開示している:それぞれ、ポリ無水物およびポリアクリル酸について)。Mikosらは、生体接着力は表面積の関数であり、そして、インビトロで測定したとき、直径900ミクロンを越える粒子(10.9mN/cm2に等しい、直径約1200μのスフェアに対し120μNの最大接着力を有する)についてのみ重要である、と報告している。しかし,彼らはまた、次のことにも注目している。すなわち、上記の接着力はインビボでは充分な接着力ではない、ということである。なぜなら、粒子サイズが大きいほど、これらの大粒子と置換するのに役立ち得る粘膜に沿っての、より大きな流量条件にもまた支配されるからである。さらに、Mikosらは、750μより小さいパーティクルに対する非常に小さい力を見いだした。Lehrらは、インビトロシステムを用いて、アクリル酸のコポリマーから形成された、直径が500ミクロンを越える、2個の市販のマイクロパーティクルをスクリーニングし、一方のコポリマー「ポリカルボフィル」はコントロールに対し接着性を増大させたが、もう一方のポリマーは増大させなかったことを確認した。ポリマー性コーティングもまた、ポリヒドロキシエチルメタクリル酸に付与され、インビボモデルにおいて試験された。Mikosらの表1に示されるように、最大接着力は、ポリカルボフィルについて、およそ9mN/cm2であった。
インビトロにおける生体接着性の測定のための多くの従来技術の手法は、引張実験に基づいている。これらの手法は、主に大きな錠剤またはガラス上へのポリマーでコーティングされたプレート用に設計された。個々のマイクロカプセルと腸組織との間の接着力を直接測定するための手法は、ほとんど知られていない。いくつかの出版物は、フローチャンネル法について報告している。しかし、唯一の報告結果は静的測定であり、この場合の個々のパーティクルに作用した粘膜接着力は、Mikosらの記述のように、腸粘膜じゅうに小さな粒子を置き、そして沈み込んだ表面積および指向性(directional)接触角度をビデオ鏡検を用いて測定することによって決定された。
従って、本発明の目的は、粘膜を通した薬物送達に有用な生体接着性のポリマー性マイクロスフェアを提供することにある。
さらなる本発明の目的は、イメージング研究に利用され得る、ポリマー性マイクロスフェアを提供することにある。
本発明の他の目的は、ポリマー性マイクロスフェアの生体接着性を測定する方法を提供することにある。
発明の要旨
治療または診断を目的とする、薬物または生体活性物質を含有するマイクロカプセルの形態での生体接着性ポリマー、または、このマイクロカプセルのコーティングとしての生体接着性ポリマーについて記載する。これらのポリマー性マイクロスフェアはすべて、本明細書中に記載の引張測定装置を用いた場合、少なくとも11mN/cm2(110N/m2)の生体接着力を有する。生体接着性マイクロスフェアの作成のための技術について、およびインビトロでのマイクロスフェアと胃腸管の選択されたセグメントとの間の生体接着力を測定する方法もまた記載する。この定量方法は、(一方では、)化学的性質、表面モルホロジー、および薬物充填マイクロスフェア寸法と、(他方では)生体接着力との相関性を確立し、比較的大きな群の天然および合成ポリマーから、理論的考察からは、生体接着性マイクロスフェアに有用であるはずである最も有望な材料をスクリーニングする手段を提供する。
これらの方法および材料は、広範囲な薬物、特に、スルホンアミド(例えば、スルファサラジン)およびグリココルチコイド(例えばベタメタゾン(bethamethasone))、腸疾病の治療に用いられる薬物、または、経口ワクチン、の経口投与に特に有用である。イメージングのために使用される硫酸バリウムを含有する生体接着性マイクロスフェアは、従来のバリウムの投与に比べ、次の利点を有する:(1)胃および腸における、バリウムの粘膜へのより均一な被覆とより良好な接着とを生じる。および、(2)局部的なpHから硫酸バリウムを保護することによって、硫酸バリウムの沈澱という問題を排除する。放射線不透過物質のカプセル化、および、同一種のポリマー中(ではあるが、それらのマイクロカプセルを同時投与したときに、異なる放出速度を有する2種のマイクロカプセル中)の薬物は、薬物送達のために有用であるとともに、GI管における送達システムの正確な位置を研究するのにも有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、ポリマー性マイクロスフェアの生体接着力を測定するために使用する組織チャンバの側面図である。
図2は、典型的P(CPP:SA)マイクロスフェアについてのステージ位置(mm)に対する力(mg)のグラフである。
図3aは、種々のポリマーについての投影表面積あたりの剥離力(mN/cm2)である。この研究に用いたポリマーには、次のものが包含される:アルギネート(試験実施の数時間前に調製した1試料(ナルギネート(f))(直径およそ700μ)および試験実施の数ヶ月前に調製し、そしてCa+溶液中に放置した別試料(アルギネート(o))(直径およそ2400μ)、アルギネート/ポリエチレンイミド(アルギネート/PEI)(直径およそ2100μ)、カルボキシメチルセルロース(CMC)(直径およそ1800μ)、キトサン(高分子量)(直径およそ2000μ)、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)(直径およそ2900μ)、ポリ乳酸:MW=2,000(ホットメルト技術によって作成した1試料(PLA 2K HM))(直径およそ780μ)および溶媒蒸発技術によって作成した1試料(PLA 2K SE)(直径およそ800μ)、ポリスチレン(直径およそ800μ)、スダンレッド染料とともに作成したポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−コ−セバシン無水物](P(CPP:SA))(直径およそ780μ)、およびポリ[フマル酸無水物−コ−セバシン酸無水物](酸性オレンジ染料とともに作成した1試料)(P(FA:SA)A)(直径およそ780μ)および染料を含有しない1試料(P(FA:SA)B)(直径およそ780μ)。力は、7分間の接着後、腸組織からマイクロスフェアを取り除くのに必要な重量(mg)として、Cahn電子天秤を用いて測定した後、力の単位(mN)に換算した。次に、これらの力を、各々の場合について、組織と接触している表面積で割ることによって規格化した。この表面積は、組織表面の高さより下に侵入したマイクロスフェアの球面状キャップの投影によって決定した(面積=πR2−π(R−a)2、ここで、「R」はマイクロスフェア半径であり、そして「a」は侵入した深さである)。力/表面積値はすべて、測定標準誤差(SEM)とともに示してある。
図3bは、図3aに記載のポリマー性マイクロスフェアについての剥離の仕事量(nJ)のグラフである。仕事量の値は、Cahn電子天秤で作成した、距離に対する力のグラフの曲線より下の面積から決定し、そして、測定標準誤差とともに示してある。
図3cは、図3aに記載のポリマー性マイクロスフェアについての、投影表面積あたりの剥離の仕事量(μJ/cm2)のグラフである。仕事量/表面積値はすべて、測定標準誤差(SEM)とともに示してある。
図3dは、図3aに記載のポリマーから作成したマイクロスフェアならびにオレイン酸ダイマー(FAD)およびポリセバシン酸(P(SA))(平均直径およそ780μ)についての、組織伸長(mm)の評価のグラフである。
図4aは、マイクロスフェア直径に対する剥離重量のグラフである。本研究のマイクロスフェアは、ホットメルト技術によって作成し、スダンレッド染料とともに作成したポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン−コ−セバシン酸無水物]であった。マイクロスフェア直径は、試験実施前にマイクロメーターで測定した。剥離重量は、Cahn電子天秤で測定した重量であり、7分間の接着後、腸組織からマイクロスフェアを取り除くために必要とされる重量である。
図4bは、P(CPP:SA)マイクロスフェアについての、マイクロスフェア直径(ミクロン)に対する剥離力/表面積(mN/cm2)のグラフである。この図では、図4aからの値を力の値に換算し、そして図3aでの記載のように投影表面積で規格化した。
図5aは、ホットメルト技術で作成した、ポリ[フマル酸無水物−コ−セバシン酸無水物](P(FA:SA))についての、マイクロスフェア直径(ミクロン)に対する剥離重量(mg)のグラフである。マイクロスフェア直径は、試験実施前にマイクロメーターで測定した。剥離重量は、Cahn電子天秤で測定した重量であり、7分間の接着後、腸組織からマイクロスフェアを取り除くために必要とされる重量である。
図5bは、P(FA:SA)についての、マイクロスフェア直径に対する投影表面積あたりの剥離力のグラフである。この図では、図5aからの値を力の値に換算し、そして図3aでの記載のように投影表面積で規格化した。
図6a、6b、および6cは、硫酸バリウムを充填したP(CPP:SA)マイクロスフェアを餌として与えたラットのX線写真である。
図7aはSprague-Dawleyラットにおける、バリウム、ポリスチレン、およびP(CPP:SA)についての、ビーズサイズの関数としての、腸および胃の通過時間(時間)のグラフである。
図7bは、Sprague-Dawleyラットの胃でのマイクロスフェアの滞留時間(時間)である。
図7cは、Sprague-Dawleyラットの腸管でのマイクロスフェアの滞留時間(時間)である。
図8aは、ラット粘膜に接着するマイクロスフェアのSEMである。
図8bは、図1の装置内で、Cahn電子天秤を用いて、ブタ空腸から剥離中の、P(FA:SA)マイクロスフェアの写真である。
発明の詳細な説明
一般的には、ポリマーの組織への接着は、(i)物理的結合または機械的結合、(ii)一次的化学結合または共有化学結合、および/または、(iii)二次的化学結合(すなわちイオン結合)によって達成され得る。物理的結合または機械的結合は、粘液の間隙、または粘膜のひだに、接着材料が堆積しまたは包摂されることから起こる。生体接着特性に寄与する二次的化学結合は、分散性相互作用(すなわち、ファンデルワールス相互作用)および、水素結合を包含するもっと強い特異的相互作用からなる。水素結合形成に関与する親水性官能基は、水酸基(-OH)およびカルボキシル基(-COOH)である。
接着性ポリマー性マイクロスフェアは、以下詳細に述べるように、化学的組成、および、表面積のような物理的特性の関数に基づき形成される、物理的結合および化学的結合に基づいて、選択されてきた。これらのマイクロスフェアは、粘膜への接着力が11mN/cm2より大きいことによって特徴付けされる。これらのマイクロスフェアのサイズは、直径でナノパーティクルからミリメートルまでの範囲である。接着力は、ポリマー組成、生物学的基材、粒子のモルホロジー、粒子の幾何学的性質(例えば、直径)および表面修飾の関数である。
生体接着性マイクロスフェアの形成において有用なポリマーの種類
生体接着性マイクロスフェアを形成するために使用し得る適切なポリマーは、可溶性および不溶性、生分解性および非分解性ポリマーを包含する。これらは、ハイドロゲルまたは熱可塑性ポリマー、ホモポリマー、コポリマーまたはブレンド、天然ポリマーまたは合成ポリマーであり得る。しかし、主特徴は、このポリマーが、ラットの腸粘膜組織に適用されたとき、110N/m2(11mN/cm2)と100,000N/m2の間の生体接着性相互作用を生じなければいけないことである。
本明細書中に記載の力は、他に記述がなければ、ラット腸粘膜上で実施された測定を言う。別種の動物で実施された、同一の接着性測定は、ラットを使って得られた測定とは異なる。この違いは、異なる動物種の粘液層における組成的および幾何的差異および粘膜上皮における細胞の差異の両方に起因する。しかし、どんな動物が研究されていても、データは、同一の総体的傾向が優勢である(すなわち、ラット、ヒツジ、ブタなどにおいて、P(FA:SA)がPLAより強い接着を生じる)ことを示している。
粘液層は、食餌、位置、GI活性、性別、および健康状態によって、種間および動物個体間でさえも異なる。Spiro, R.G. の”Glycoproteins,” Annual Review of Biochemistry, 39, 599-638, 1970; Labat-Robert, J.およびDecaeus, C.の”Glycoproteins du Mucus Gastrique: Structure, Function, et Pathologie,” Pathologie et Biologie (Paris), 24, 241, 1979に述べられているように、一般に、GI粘液は、95%の水および5%の電解質、脂質、タンパク質、および糖タンパク質から形成されている。しかし、この後半部分の割合は、非常に変化し得る。タンパク質(糖タンパク質のタンパク質コアを包含する)は、この後半部分の60%から80%の間のいずれでもあり得る。C.F. Code編、Alimentary Canal、(Washington: American Physiological Society, 1967)、第1063頁−第1085頁の、Horowitz, M.I.の”Mucopolysaccharides and Glycoproteins of the Alimentary Tract”。糖タンパク質は、典型的には、およそ200万の分子量を有し、かつ、L−フコースまたはシアル酸残基で終わる共有結合的に結合した炭化水素側鎖を有する(およそ81.4−74.4重量%)、タンパク質コア(およそ18.6−25.6%)からなる。Spiro, R.G.の”Glycoproteins,” Annual Review of Biochemistry, 39, 599-638, 1970; Scawen, M. およびAllen, A. の”The Action of Proteolytic Enzymes on the Glycoprotein from Pig Gastric Mucus,” Biochemical Journal, 163, 363-368, 1977; Horowitz, M.I.およびPigman, W.のThe Glycoconjugates、第560頁、 (New York:Academic Peess, Inc., 1977); Glycoproteins:Their Composition, Structure and Function (A. Gottschalk編、第434頁−第445頁 (Amsterdam: Elsevier Publishing Company, Inc., 1966)) 中のPigman, W. およびGottschalk, A.の”Submaxillary Gland Glycoproteins”。これらの糖タンパク質組成における種および位置の違いは、C.F. Code編、Alimentary Canal (Washington: American Physiological Society, 1967)第1063頁−第1085頁の、Horowitz, M.I.の”Mucopolysaccharides and Glycoproteins of the Alimentary Tract”によって報告されている。
生体接着性パーティクルがそれら自体をGI管粘液内層に埋め込み、または、巻き込むためには、個々のパーティクルの半径は天然粘液層の厚みと同じ程の厚さであるべきである。胃粘液層の厚さは、典型的には、ラットでは、5から200μまで、およびヒトでは、10から400μまで多様であることが示されている。しかし、時には、ヒトで1000μもの厚さに達することがある(Spiro, R.G.の”Glycoproteins,”Annual Review of Biochemistry, 39, 599-638, 1970 ; Labat-Robert, J. およびDecaeus, C. の”Glycoproteins du Mucus Gastrique: Structure, Fonction, et Pathologie,”Pathologie et Biologie (Paris), 24, 241, 1979 ; Mucus and Mucosa, Ciba Foundation Symposium 109 (J. NugentおよびM. O'Connor編)第137編(London: Pitman, 1984)のAllen A. , Hutton, D.A., Pearson, J.P.およびSellers, L.A.の”Mucus Glyco protein Structure, Gel Formation and Gastrointestinal Mucus Function”に述べられている)。粘液の厚さによる明白な物理的差異が、本明細書中に記載の研究で観察された。例えば、ラットおよびサルの粘液層は、プタおよびヒツジで観察された粘液層より、実質的に薄かった。接着性の一般的な順序は、本研究全体を通して維持されたが、接着の粘着性(tenacity)は、粘液の量の多さに依存性があることは留意すべきである。
過去には、二種類のポリマーが、有用な生体接着特性を示すようにみえた:親水性ポリマーおよびハイドロゲルである。親水性ポリマーという大きな分類では、カルボキシル基(例えば、ポリ[アクリル酸])を包含する親水性ポリマーは、最高の生体接着特性を示す。最高濃度のカルボキシル基を有するポリマーが、柔らかい組織上の生体接着に対して選択される材料であるはずだと推量するかもしれない。他の研究では、最も有望なポリマーは次の通りであった:アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびメチルセルロース。これらの材料のいくつかは、水溶性であるが、それ以外は、ハイドロゲルである。
ポリ[ラクチド−コ−グリコリド]、ポリ無水物およびポリオルトエステルのような迅速な生体崩壊性の(bioerodible)ポリマーは、これらの滑らかな表面が崩壊すると、そのカルボキジル基が外部表面に曝される、生体接着性薬物送達システムのための、優れた候補である。さらに、ポリ無水物およびポリエステルのような、不安定な結合を含有するポリマーは、それらの加水分解反応性が周知である。これらの加水分解分解速度は、一般に、ポリマー骨格の単純な変化によって変えられる。
代表的な天然ポリマーは、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血漿アルブミンまたはコラーゲンのようなタンパク質、およびセルロース、デキストラン、ポリヒアルロン酸のような多糖類、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルおよびアルギン酸のポリマーを包含する。代表的な合成ポリマーは、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキサイド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびそれらのコポリマーを包含する。合成的に修飾した天然ポリマーは、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエスチル、およびニトロセルロースを包含する。他の関連するポリマーとしては、メチルセルロース、エチルセルロス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、およびポリビニルフェノールが包含されるが、これらに限定されない。代表的な生体崩壊性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびそれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酪酸(butic acid))、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ[ラクチド−コ−グリコリド]、ポリ無水物、ポリオルトエステル、それらのブレンドおよびコポリマーを包含する。
これらのポリマーは、Sigma Chemical Co., St. Louis, MO.、Polysciences, Warrenton, PA、Aldrich, Milwaukee, WI、Fluka, Ronkonkoma, NY、および、BioRad, Richmond, CA.のような供給元から得ることができる。または、標準的技術を用いて、これらの供給元から得られるモノマーから、合成され得る。
以下に詳細に示す研究では、粘膜への接着力について、多様なポリマー性マイクロスフェアを比較した。キトサンのような、正に荷電したハイドロゲル数種と同様に、アルギネートおよびカルボキシメチルセルロースのような、表面に露出したカルボキシル基を有する、負に荷電したハイドロゲルを試験した。この選択の背後にある理由は、ほとんどの細胞膜は、実際に負に荷電しており、そして、胃腸管壁への良好な生体接着を得る際、なにが最も重要な性質なのか、については、まだ明確な結論がないという事実である。(a)非崩壊性の中性ポリスチレン、および、(b)半結晶性の生体崩壊性ポリマー(分解するにつれてカルボキシル基を現わす、または、生成する)を包含する、熱可塑性ポリマー、ポリラクチド、およびポリ無水物もまた試験した。ポリ無水物は、生体接着性送達システムのための、さらに良好な候補である。なぜなら、加水分解が進むと表面崩壊を引き起こし、どんどんカルボキシル基が外部表面に曝されるからである。しかし、ポリラクチドは、バルク崩壊によって、もっとゆっくりと崩壊する。ポリラクチドをベースとする生体接着性ポリマー性システムの設計では、高濃度のカルボン酸を有するポリマーが好ましい。これは、低分子量(Mw 2000)ポリマーを使用することによって、達成され得る。なぜなら、低分子量ポリマーは、末端基に高濃度のカルボン酸を含有するからである。
引張手法を用いた、生体接着特性の測定
図1に示したように、ポリマーマイクロスフェアとラットの腸組織のセグメントとの間の接着力は、Cahn DCA-322を使って測定し得る。この装置部分は、ビルヘルミー(Wilhelmy)プレート手法を用いて接触角度および表面張力を測定するために設計されているが、きわめて正確な微量天秤でもある。このDCA-322システムは、微量天秤スタンドアセンブリ、Cahn DACSコンピュータ、およびOkidata Microline 320ドットマトリックスプリンタを含む。微量天秤ユニットは、固定した(stationary)試料およびタラループ(tare loop)、ならびに、ステップモータにより駆動する移動ステージからなる。この天秤は、3.0gまでの重量の試料を測定し得、かつ、0.001ダイン(10nN)に値する感度を有する。ステージ速度は、メーカー出荷時に装備されたモータを使って20から264μ/秒まで、または、任意の低速モータを使って2から24μ/秒まで調整し得る。接着力は、ポリマー試料を試料ループの1つに取り付けること、そして接着性基質10(すなわち腸組織)を、移動ステージ20上であって試料ループの下になるように置くことによって測定した。接着性測定のため、摘出した腸から1.5cmの切片を切り出した。次いで、縦長にスライスし、そして内腔側(lumen side)が曝されるように平坦に広げた。次に、図1に示したように、試料を温度制御チャンバ30内に入れ、試料端をクランプ32で締め、そして、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、pH7.4、モル浸透圧294mOSm)でおよそ0.9cmの高さまで浸した。生理学的状態は、チャシバ中で維持されていた。次に、このチャンバを微量天秤室内に入れ、そして、ワイヤーに取り付けられ、微量天秤の試料ループから吊り下げたマイクロスフェアを組織に接触させた。このマイクロスフェアをおよそ0.25mNの力を加えながら7分間組織に接触させ、次いで、剥離に必要な力を記録しながら、組織試料から垂直に引き離した。接触面積は、組織表面の高さより下にビーズが侵入(penetration)した深さによって定義される球面状のキャップの表面積として推定した。力値は、このキャップの投影面積(面積=πR2−π(R−a)2、ここで、「R」はマイクロスフェアの半径であり、そして「a」は侵入した深さである)により換算した。1000μmを越える大きさのマイクロスフェアについては、a=500μmを使用し、1000μmより小さいマイクロスフェアについては、a=Rを使用した。
時間に対する力と同様に、距離に対する力のグラフを調べた。図2に、P(CPP-SA)(20:80)マイクロスフェアについてのステージ位置に対する力の典型的グラフを示す。記録は、組織セグメント上にマイクロスフェアを吊るしたところから始める。位置ゼロから点Aまでの力が0の水平な線は、ステージを組織とマイクロスフェアとの間に接触が生じるまで上方に動かした距離にあたる。マイクロスフェアが最初に組織と接触する点は、位置Aとして表す。点Bは、最大の力がかかった点であって、この力は、実験毎に異なり得、かつ、組織への侵入程度に間接的に影響を与え得る。位置Bでは、ステージを、マイクロスフェアと組織との間の接触および接着性結合の形成を起こすために静止させる。セグメントBCは、0mgの力がかかった点(点C)までのステージの下方への動きを示す。引張実験の初めの部分(CD)では、力は、ステージ位置の関数として増加するが、スフェアと粘液との接触面積は一定であり、そして、埋まったスフェアの表面の面積と等しいと考えられる。点Dは、最大接着力または「ピーク荷重」を表す。この曲線の次の部分(DE)では、ポリマー性デバイスの粘液からの部分的剥離が接触面積の幾分かの変化とともなって起こっている期間であることを示している。最終点(E)は、スフェアが、粘膜層から完全に剥離した点である。いくつかの場合では、マイクロスフェアが接触を開始した位置の上方4mmの高さに移動するまで、剥離は起こらない。
これらのグラフから、試料への圧縮(compression)にかかった最大の力(点B)、最大の接着性引張力(点D)、ステージが接触を開始した点からステージの移動が停止した点まで移動する距離(すなわち、侵入または圧縮変形(距離BC))、試料の完全剥離に必要な距離(すなわち、伸長または引っ張り変形(距離CE))を決定することが可能であった。また、圧縮エネルギー(AB、水平軸およびBから水平軸までの垂直軸で囲まれた面積)、変形中のエネルギー損失(圧縮エネルギーからBC、水平軸、およびBから水平軸までの垂直軸で囲まれた面積をマイナスした面積)、および剥離の仕事量または引張エネルギー(面積CDE)を決定することも可能であった。この種の解析を用いて、多様な個々のマイクロスフェアの接着力を定量化し、そして、これらの力とポリマーの物理的および化学的特性とを相関づけることができた。最大接着力は、重要な因子であるが、生体接着剤として使用する材料を評価する単独決定要素にはなり得ない。他の有用なパラメータには、降伏点(引張曲線が直線からはずれる点で定義される)、剛性(引張曲線の直線部分の初期の傾き)、および剥離の仕事量が包含される。剥離の仕事量のデータに基づくと、アルギネートおよびポリ(フマル酸無水物−コ−セバシン酸無水物)は強力な生体接着剤である。
ポリマーの修飾
ポリマーは、マイクロスフェア送達デバイスを作り得る、または既存のマイクロスフェアをコートし得る、市販の材料から選択した。いくつかの例では、マイクロスフェア加工前または後のどちらかに、ポリマー性材料を修飾して生体接着を(11mN/cm2より大きな力の値まで)改善し得た。
例えば、これらのポリマーは、生分解中に使用可能な(accessible)、またはポリマー表面上のカルボキシル基の数を増やすことによって、修飾され得る。また、これらのポリマーは、ポリマーにアミノ基を結合することによっても修飾され得る。また、これらのポリマーは、生体接着特性を有するリガンド分子を共有結合的にポリマー性マイクロスフェアの表面露出分子に結合させる、多くの異なる結合化学のどれを利用することでも修飾され得る。
1つの有用なプロトコルは、DMSO、アセトン、またはTHFのような非プロトン性溶媒中で試薬としてカルボニルイミダゾール(CDI)を用いて、ポリマー鎖上の水酸基を「活性化」することを含む。CDIは、水酸基と、イミダゾリルカルバメート錯体を形成し、これはタンパク質のようなリガンドの遊離アミノ基の結合によって置換され得る。この反応は、N−求核置換反応であり、そしてポリマーに対して、リガンドは安定なN−アルキルカルバメート結合を生じる。「活性化」されたポリマーマトリックスへのリガンドの「カップリング」は、9〜10のpH領域で最大であり、かつ、通常は、少なくとも24時間を要する。得られるリガンド−ポリマー錯体は、安定で、かつ加水分解に長時間の耐性がある。
別のカップリング方法は、N−ヒドロキシスルホサクシンイミド(スルホNHS)とともに、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC)または「水溶性CDI」を利用して、まったくの水性環境において生理的pH7.0で、ポリマーの露出カルボキシル基をリガンドの遊離アミノ基にカップリングすることを含む。簡単には、EDACおよびスルホNHSは、ポリマーのカルボン酸基と共に、活性化されたエステルを形成する。これは、リガンドのアミン末端と反応してペプチド結合を形成する。得られたペプチド結合は、加水分解に耐性がある。この反応へのスルホ−NHSの利用によって、EDACの結合効率は10倍まで増加し、かつ、このリガンド−ポリマー錯体の生存能力を保証する、非常に穏やかな条件を与える。
これらのプロトコルのいずれを用いても、ポリマーマトリックスを溶解しない適切な溶媒系で、ヒドロキシル基またはカルボキシル基のどちらかを含有するポリマーのほとんどすべてを「活性化」することが可能である。
遊離の水酸基またはカルボキシル基を有するリガンドをポリマーに結合するための有用なカップリング手順には、架橋剤すなわちジピニルスルホンの利用が含まれる。この方法は、生体接着特性を有する糖または他のヒドロキシル性化合物を、ヒドロキシル性マトリックスに結合するのに有用である。簡単には、この活性化は、ジビニルスルホンがポリマーのヒドロキシル基と反応して、そのポリマーのビニルスルホニルエチルエーテルを形成する反応を含む。ビニル基は、アルコール、フェノール、およびアミンにさえカップリングする。活性化およびカップリングはpH11で行われる。この結合は、1〜8のpH範囲で安定であり、そして、腸を通る運搬にも適している。
二重結合でリガンドとポリマーをカップリングするための、当業者に公知の適当なカップリング方法(UV架橋の利用を包含する)は、いかなるものも、本明細書中の記載のポリマー性マイクロスフェアへの生体接着性リガンドの結合に利用され得る。レクチンの結合によって修飾され得るいかなるポリマーも、薬物送達またはイメージング用途の生体接着性ポリマーとして使用され得る。
共有結合的にマイクロスフェアに結合してムチンおよび粘膜細胞層に対して特異的な標的となるレクチンは、生体接着剤として使用され得る。有用なレクチンリガンドは次のものから単離されるレクチンを包含する:
Figure 0004015692
任意の正に荷電したリガンド(ポリエチレンイミンまたはポリリシンなど)の任意のマイクロスフェアへの付着は、粘液の正味の負電荷に対してビーズをコーティングするカチオン基の静電引力により、生体接着性を改善し得る。ムチン層のムコ多糖類およびムコタンパク質、特にシアル酸残基は、負電荷コーティングに反応性である。ムチンに対する高い結合親和性を有する任意のリガンドはまた、CDIなどの適切な化学物質を有する大部分のマイクロスフェアに共有結合的に結合し得、腸へのマイクロスフェアの結合に影響すると期待される。例えば、ムチンまたはその他の無傷のムチンの成分に対して生じたポリクローナル抗体は、マイクロスフェアに共有結合的に結合したとき、増加した生体接着性を提供する。同様に、腸管の管腔表面上にむきだした特定の細胞レセプターに対する抗体が、適切な化学物質を用いるマイクロスフェアにカップリングするとき、ビーズの滞留時間を増加する。リガンド親和性は、静電荷のみに基づく必要はなく、ムチン中の溶解性のような有用な物理的パラメーターまたはその他の炭化水素基に対する特異的親和性に基づく。
純粋なまたは部分的に精製された形態の任意のムチンの天然成分とマイクロスフェアとの共有結合付着は、ビーズ−腸界面の表面張力を減少し、ムチン層中のビーズの溶解性を増加し得る。有用なリガンドのリストは、以下を含み得るがこれに限定されない:シアル酸、ノイラミン酸、n-アセチル-ノイラミン酸、n-グリコリルノイラミン酸、4-アセチル-n-アセチルノイラミン酸、ジアセチル-n-アセチルノイラミン酸、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、グルコース、マンノース、フコース、天然に存在するムチンの化学処理により調製される部分精製された任意の画分(例えば、ムコタンパク質、ムコ多糖、およびムコ多糖-タンパク質複合体)、および粘膜表面上のタンパク質または糖構造に対して免疫反応性の抗体。
過剰のカルボン酸ペンダント側鎖(例えば、ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸)を含むポリアミノ酸の付着はまた、生体接着性を増強する有用な手段を提供する。15,000から50,000kDaの分子量範囲のポリアミノ酸を用いて、マイクロスフェアの表面に付着する120〜425アミノ酸残基の鎖を生じる。ポリアミノ鎖は、ムチンストランド中で鎖もつれ、およびカルボン酸荷電を増加することにより生体接着性を増強する。
マイクロスフェアの形成
本明細書で使用されるように、用語「マイクロスフェア」は、(外壁と異なる材料のコアを有する)マイクロパーティクルおよびマイクロカプセルを包含し、5mmまでのナノメーター範囲の直径を有する。マイクロスフェアは、全体が生体接着性ポリマーでなり得、または生体接着性ポリマーの外部コーティングのみを有する。
以下の実施例で特徴付けられるように、マイクロスフェアは、種々の方法を用いて種々のポリマーから作製され得る。ポリ乳酸ブランクマイクロスフェアを3つの方法を用いて作製した:E.Mathiowitzら、J. Scanning Microscopy、4、329 (1990) ; L.R. Beckら、Fertil. Steril.、31、545 (1979) ; およびS. Benitaら、J. Pharm. Sci.、73、1721 (1984)により記載された溶媒蒸発 ; E. Mathiowitzら、Reactive Polymers、6、275 (1987)により記載された熱溶融マイクロカプセル化;およびスプレー乾燥。モル比20:80のビス-カルボキシフェノキシプロパンおよびセバシン酸から作られるポリ無水物P(CPP-SA) (20:80)(Mw 20,000)を、熱溶融マイクロカプセル化により調製した。ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸)(20:80)(Mw 15,000)プランクマイクロスフェアを熱溶融マイクロカプセル化により調製した。ポリスチレンマイクロスフェアを溶媒蒸発により調製した。
ポリマー溶液をリザーバーから微小液滴形成装置を用いて攪拌イオン性浴に滴下することにより、ヒドロゲルマイクロスフェアを調製した。アルギン酸塩、キトサン、アルギン酸塩/ポリエチレンイミド(PEI)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)に対する特定の条件を表1に示す。
a.溶媒蒸発 この方法では、ポリマーをメチレンクロライドのような揮発性有機溶媒中に溶解する。薬物(溶解性または微細粒子として分散される)をこの溶液に加え、そしてこの混合物を、ポリ(ビニルアルコール)などの表面活性剤を含む水溶液中に懸濁する。得られるエマルジョンを大部分の有機溶媒が蒸発するまで攪拌し、固体のマイクロスフェアを得る。いくつかの異なるポリマー濃度を用いた:0.05〜0.20 g/ml。この溶液に薬物を添加し、1%(w/v)ポリ(ビニルアルコール)(シグマ)を含む激しく攪拌された蒸留水中に懸濁する。4時間後(攪拌しながら)、有機溶媒をポリマーから蒸発させ、そして得られたマイクロスフェアを水で洗浄し、凍結乾燥機中で一晩乾燥する。種々のサイズ(1〜1000ミクロン)および形態を有するマイクロスフェアがこの方法により得られ得る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定なポリマーに有用である。
しかし、ポリ無水物のような不安定なポリマーは、水の存在により作製工程の間に分解し得る。これらのポリマーに対しては、以下の2つの方法が、完全に無水の有機溶媒中で行われ、より有用である。
b.熱溶融マイクロカプセル化 この方法では、まず、ポリマーを、最初、溶融し、そして次いで、色素の固体粒子または50ミクロン未満までふるわれた薬物と混合する。この混合物を非混和性溶媒(シリコン油のように)中に懸濁し、そして、連続攪拌して、ポリマーの融点以上5℃まで加熱する。一旦、エマルジョンが安定化すれば、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。得られたマイクロスフェアを石油エーテルを用いてデカンテーションにより洗浄し、流動性(free-flowing)の粉末を得る。1〜1000ミクロンの間のサイズを有するマイクロスフェアはこの方法で得られる。この手法で調製されたスフェアの外部表面は、通常、平滑で濃密である。この手順は、ポリエステルおよびポリ無水物から作られるマイクロスフェアを調製するのに用いられる。しかし、この方法は、1000〜50,000の間の分子量を有するポリマーに制限される。
c.溶媒除去 この手法は、主に、ポリ無水物用に設計されている。この方法では、薬物を、メチレンクロライドのような揮発性有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液中に分散または溶解する。この混合物を、有機油(シリコン油のような)中に攪拌することにより懸濁して、エマルジョンを形成する。溶媒蒸発とは異なり、この方法は、高融点および種々の分子量を有するポリマーからマイクロスフェアを作成するのに用いられ得る。1〜300ミクロンの間の範囲のマイクロスフェアがこの手順により得られ得る。この手法で生成されたスフェアの外部の形態は、用いたポリマーのタイプに高度に依存する。
d.スプレー乾燥 この方法では、ポリマーをメチレンクロライド(0.04 g/mL)中に溶解する。既知量の活性薬物を、ポリマー溶液中に懸濁(不溶性薬物)または共-溶解(可溶性薬物)する。次いで、この溶液または分散液をスプレー乾燥する。ミニスプレー乾燥機(Buchi)の代表的なプロセスパラメーターは以下の通りである:ポリマー濃度=0.04 g/mL、入口温度=-24℃、出口温度=13-15℃、アスピレーター設定=15、ポンプ設定=10mL/分、スプレー流れ=600 Nl/時、およびノズル直径=0.5 mm。1〜10ミクロンの間の範囲のマイクロスフェアを、用いたポリマーのタイプに依存する形態で得た。この方法は、主に、腸管のイメージングを改善するために設計されたマイクロスフェアを調製するのに使用される。なぜなら、この応用では、粒子サイズは10μを超えるべきでないから。
e.ヒドロゲルマイクロスフェア アルギネートのような、デルタイプポリマーから作られたマイクロスフェアは、従来のイオン性ゲル化手法で製造される。ポリマーを、最初、水溶液中に溶解し、硫酸バリウムまたは特定の生体活性剤と混合し、そして次いで、微小液滴形成装置を用いて押し出される。この装置は特定の例では液滴を破壊するのに窒素ガスの流れを使用する。ゆっくり攪拌された(約100〜170 RPM)イオン性硬化浴を、押し出し装置の下に置き、生成する微小液滴を捕獲する。マイクロスフェアを、ゲル化がおこるのに十分な時間放置するために、20〜30分間、浴中に放置してインキュベートする。マイクロスフェア粒子サイズは、種々のサイズの押し出し機を用いることにより、あるいは窒素ガスまたはポリマー溶液の流速を変えることにより制御される。表1は、マイクロスフェアを製造するのに使用された、種々のヒドロゲル、その濃度、およびイオン性浴を要約する。
Figure 0004015692
キトサンマイクロスフェアは、このポリマーを酸性溶液に溶解し、そしてこのポリマーをトリポリホスフェートと架橋することにより調製され得る。カルボキシメチルセルロース(CMC)マイクロスフェアは、このポリマーを酸性溶液に溶解し、そしてマイクロスフェアを鉛イオンと共に沈殿させることにより調製された。アルギネート/ポリエチレンイミド(PEI)は、アルギネートマイクロスフェア上のカルボキシル基の量を低減するために、調製された。これらのシステムの利点は、種々の化学物質を用いて、これらの表面の特性をさらに修飾する能力にある。負に荷電したポリマー(例えば、アルギネート、CMC)の場合、種々の分子量の、正に荷電したリガンド(例えば、ポリリシン、ポリエチレンイミン)が、イオン的に付着し得る。
マイクロスフェアに取り込まれ得る材料
この生体接着性ポリマーにカプセル化され得る材料には、特に制限はない。有機化合物、無機化合物、タンパク質、多糖類、核酸、または他の材料を包含する、任意の種類の生物活性剤が、標準的な手法を用いて取り込まれ得る。
有用なタンパク質の例には、インスリン、成長ホルモン(ソマトメチン(somatometin)、形質転換成長因子、および他の成長因子を包含する)のようなホルモン、経口ワクチン用の抗原、ラクターゼまたはリパーゼのような酵素、およびパンクレアチンのような消化補助剤(digestive aid)が包含される。
有用な薬物の例には、Marion Pharmaceuticalsから入手されるCarafateTMのような潰瘍治療剤、L-DOPAのような神経伝達材料、Searle Pharmaceuticalsから入手されるMetolazoneのような抗高血圧薬剤または塩分排泄剤、Lederle Pharmaceuticalsから入手されるAcetazolamideのようなカーボニックアンヒドラーゼ(carbonic anhydrase)阻害剤、グリブリドのようなインスリン様薬物、血中グルコース低下薬物のスルホニルウレア類、Brown Pharmaceuticalsから入手されるAndroida FおよびICN Pharmaceuticalsから入手されるTestred(メチルテストステロン)のような合成ホルモン、およびメベンダゾール(VermoxTM、Jannsen Pharmaceutical)のような駆虫剤が包含される。膣内層または他の内層が粘膜である開口部(直腸など)に適用するための、他の薬物には、殺精子薬剤(spermacides)、酵母またはトリコモナス治療剤、および抗痔治療剤が包含される。
抗原は1種またはそれ以上のタイプの生体接着性ポリマー中にマイクロカプセル化され得、ワクチンを提供する。ワクチンは、胃腸管中で種々の滞留時間を有するように、製造され得る。他のファクターの中でも特に、保持時間が異なることにより、1種より多くのタイプの抗体(IgG、IgM、IgA、IgEなど)の産生を刺激し得る。
イメージングのための好ましい方法では、バリウムなどの放射線不透過材料をポリマーで被覆する。他の放射性材料または磁性材料を、この放射線不透過材料の代わりに、あるいはこの放射線不透過材料に加えて用い得る。他の材料の例には、放射線不透過の、気体または気体放出化合物が包含される。
患者への生物接着性マイクロスフェアの投与
マイクロスフェアは、懸濁液または軟膏の形で、鼻、口、直腸、または膣を介して粘膜に投与される。経口投与または局所投与のための、薬学的に受容可能なキャリアが公知であり、そしてポリマー性材料との親和性に基づいて決定される。他のキャリアには、MetamucilTMなどの増量剤(bulking agent)が包含される。
これらのマイクロスフェアは、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患の治療のために、特に有用である。潰瘍性大腸炎では炎症は結腸に限られるのに対し、クローン病では口から結腸まで胃腸管全体にわたって炎症病変が見い出される。スルファサラジンは、上記の疾患を治療するために用いられる薬物のうちの1つである。スルファサラジンは、結腸内で細菌により開環され、抗生物質であるスルファピリジンと抗炎症剤である5−アミノサリチル酸となる。5−アミノサリチル酸は活性な薬物であり、局部的に必要とされる。分解生成物(5−アミノサリチル酸)を直接投与することは、より有益であり得る。生体接着性薬物送達システムは、腸管内に薬物を長時間滞留することにより、治療効果(therapy)を向上させ得る。クローン病のためには、5−アミノサリチル酸を腸の上部に滞留することが、非常に重要である。なぜなら、結腸中で細菌がスルファサラジンを開環するので、腸の上部の炎症を治療する唯一の方法は5−アミノサリチル酸の局部投与だからである。
胃腸のイメージング
硫酸バリウム懸濁液は、D. Sutton編、A Textbook of Radiology and Imaging、第2巻、Churchill Livingstone、London(1980)に記載されているように、上部胃腸管の試験のために用いられる一般的な造影剤である。しかし、この硫酸バリウム懸濁液は、飲みにくいこと(unpalatability)および溶液から沈殿しやすいことなどの、好ましくない性質を有している。
いくつかの性質が重要である:(a)粒子サイズ:粒子サイズに比例する沈降速度(すなわち、粒子が細かいほど、懸濁液はより安定である);(b)非イオン性媒体:硫酸バリウム粒子上の電荷は粒子の凝集速度に影響を及ぼし、そして凝集は胃の内容物の存在により増強される;および(c)溶液のpH:懸濁液の安定性はpH5.3で最高となる。しかし、懸濁液は、胃を通過すると必然的に酸性化され、そして沈殿しやすくなる。
硫酸バリウムを適切なサイズのマイクロスフェア中にカプセル化することにより、個々の造影要素の剥離が良好となり、そして、もしポリマーが生体接着特性を示すならば、過剰の胃液の存在下で、優先的に胃の粘膜を被覆することが補助され得る。胃腸管のより遠位のセグメントを標的とする生体接着性を用いると、他の方法では容易に得られないような、ある種の壁面イメージングもまた提供され得る。
イメージングプロセスを増強するために気体と硫酸バリウムの両方を利用する、二重造影法のためには、粘膜表面を適切に被覆することが特に必要とされる。二重造影を達成するためには、患者の胃腸管中に空気または二酸化炭素を導入しなければならない。これは、典型的には、経鼻胃管によって達成され、制御された度合いで胃の膨満が引き起こされる。研究によれば、多数の接着性マイクロスフェアそれぞれから、それぞれ気泡を放出することにより、同様の結果が得られ得、そしてこのイメージングプロセスは胃を越えて腸のセグメントに適用し得る。
インビボでの生体接着性評価法の1つは、硫酸バリウムのような放射線不透過材料、または放射線不透過材料と炭酸ナトリウムのような気体発生剤の両方を、1つの生体接着性ポリマー中にカプセル化することを利用する。この放射線不透過材料の経口投与の後に、その胃および腸領域への分配をイメージ分析を用いて試験する。
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより、さらに理解される。
実施例1:ポリマー性マイクロスフェアの生体接着特性の評価
700〜800μmおよび700〜2400μmの範囲の直径のマイクロスフェアを用いて、熱可塑性ポリマーおよびヒドロゲルのそれぞれに対するポリマーの生体接着能力について評価した。本研究において用いた引張型実験は、従来技術より優れた利点を提供する。その機構により、単一マイクロスフェアと腸粘膜との間の生体接着力を測定し得る。実験を水中で行ったので、空気/液体界面における表面張力とマイクロスフェア/粘膜接触面における力とを区別するという問題は排除された。
表3a、3b、3cおよび3dに示した結果から、アルギネートおよびポリ酸無水物などのカルボン酸基濃度の高いポリマーが、より強い生体接着性結合を生み出すことが示される。ポリ(フマル酸-コ-セバシン酸)無水物(20:80)で得られた極端に高い力(50mN/cm2)は、生体崩壊性ポリマーが非常に有望な生体接着性送達システムであることを示す。
結果はまた、異なった形態をもたらす異なった製造方法からは、異なった生体接着力を示すことが示唆される(例えば、溶媒蒸発法により生成されたPLAマイクロスフェアは、熱融解マイクロカプセル化法により生成されたPLAマイクロスフェアよりずっと強く接着する)。優れた生体接着特性を有することがわかったポリカルボフィルの接着力と比較すると、本明細書に記載したポリマーのほとんどが100N/m2と400N/m2との間の範囲の力を示すのに対して、ポリカルボフィルは1061ダイン/cm2(106.1N/m2または10.61mN/cm2)を示すことがわかる。
表3dに示したように、種々のポリマーについての組織の伸長の評価もまた、ほとんどのヒドロゲルおよび最も強力な接着性の熱可塑性ポリマーが、長い伸長数を示したことを示す。
実施例2:生体接着力に及ぼすマイクロスフェアの直径の効果
生体接着力に及ぼすマイクロスフェエアの直径の効果を、400μm〜1700μmの大きさの範囲のP(CPP:SA)(20:80)マイクロスフェアおよびP(FA:SA)(20:80)マイクロスフェアを用いて、上述した方法を用いて検討した。
結果を図4a、4b、5aおよび5bに示す。マイクロスフェアの直径が減少しても、接着力は低下しなかった。それとは反対に、直径が750μmから少なくとも400μmまで小さくなるにつれて、測定される力がはっきりと増加する。
実施例3:非放出性マイクロスフェアのX線像を用いるインビボでの通過時間の研究
マイクロスフェアを硫酸バリウムと共にロードし、それらを放射性-不透明にした。Sprague Dawleyラットを麻酔し、そして2mlの水に懸濁した100mgのマイクロスフェアのスラリーまたはコントロールとして純粋な硫酸バリウムの蒸留水の懸濁液のどちらかを強制給食した。次いで動物を代謝かごの中で飼育し、そして糞便を4日間の間3時間毎に集めた。時間の間隔をきめてラットにX線照射し、胃および腸中へのマイクロスフェアの分布を調べた。集めた糞便もまた、X線照射して、GI管を通るマイクロスフェアの全通過時間をモニターした。
図6、7a、7bおよび7cに、マイクロスフェアの通過時間をまとめる。異なったpHおよび生理学的条件で試験を行った:胃(低pH領域)、および腸(基礎的環境近位から遠位領域へのそれぞれ5〜7のpH領域)、図7a、b、およびc。
データは、カプセル化しなかった硫酸バリウムが9時間後に胃から消え、ポリスチレンおよびP(CPP:SA)(20:80)にカプセル化した硫酸バリウムが18時間後に消えたが、一方P(FA:SA)(20:80)、P(FA:SA)(50:50)またはPSAにカプセル化した硫酸バリウムは35時間後まで消えなかったことを示した。この低pHで、全てのマイクロスフェアは中性であるが、依然として長い滞留時間を有していた。アルギン酸エステルマイクロスフェア(600ミクロンより小さい直径)の中には、48時間を越えて胃にとどまるものもあった。アルギン酸エステルは、胃での最長の滞留時間を示した(48時間)。
腸に対しても同様の結果が得られた;ヒドロゲルの群からのアルギン酸エステルマイクロスフェアは、最も長い滞留時間を示したが、P(FA:SA)(20:80)および(50:50)などの生体崩壊性ポリマーで形成されたマイクロスフェアもまた、長い滞留時間を有していた(30時間)。これらのpH領域(7.5〜8.0)で、熱可塑性ポリマーは負に帯電し、それがポリマーの生体接着性を増強する。ポリ酸無水物およびヒドロゲルを用いたインビボでの結果は、マイクロスフェアの生体接着によってそれらの胃腸系通過が遅れることを示す。これらの結果はインビトロでのデータと相関性があった。
図7aに示した結果を基に、より小さいマイクロスフェアが、腸内で長い滞留時間を有する傾向にあることが明らかである。これらの結果と文献の結果(例えば、Ch'ng, H. S., H. Park, P. Kelly,およびJ. R. Robinson, J.Pharm. Sci. 74: 399-405)とを比較すると、106N/m2の接着力を有するポリカルボフィルが、GI管中で24時間保持されることを示す。約200N/m2の接着力により、28時間の滞留時間が得られた。
走査型電子顕微鏡(S.E.M.)を用いてさらに分析すると、マイクロスフェアが空腸の表面に結合することが示された。典型的な実験においては、5匹のラットにポリ[ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン-コ-セバシン酸](P[CPP:SA])(20:80)で作られたポリ酸無水物マイクロスフェアを給餌した。マイクロスフェアの大きさを、300〜400ミクロンの間で変化させた。100mgのスフェアを2mlの蒸留水に懸濁し、そして給餌針(Gavage needle)(ゲージ16)を用いて胃の中へ入れた。給餌の5時間後、ラットを屠殺し、そしてそれらの腸を調査してG.I.管中のマイクロスフェアの分布を測定した。マイクロスフェアを腸内で検出したが、あるものは食物に付着しており、その他は組織に付着していた。組織にスフェアが付着した領域を生理食塩水で洗浄し、改変した「Karnofskyの」固定液で固定し、等級の異なる一連のエタノールで脱水し、そして臨界点乾燥を行った。試料を金で溶射コートし、そしてS.E.M.で試験した。腸壁へのマイクロスフェア付着の典型的な例を図8に示す。
実施例4:高い生体接着力を有するポリアクリルアミドマイクロスフェアの調製
マイクロスフェアの調製。
ポリアクリルアミドマイクロスフェアを、水性エマルジョン中のアクリルアミドとヘキサン中のビスメタクリルアミドとを重合させることにより生成した。以下のストック溶液を用いた:
1.蒸留水中の30%アクリルアミド(w/v)、10%ビスメチルアクリルアミド(w/v)。ストック溶液を、吸着床イオン交換樹脂の混合物で処理して市販調製物中に通常見られるアクリル酸を除去した。
2.1.2MトリスpH7.7。
3.40%過硫酸アンモニウム(w/v)
4.TEMED(N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン)
2mlのアクリルアミドストック、1mlのトリスストック、0.1mlの過硫酸アンモニウム、および2mlの蒸留水で、最終容量5.1mlの12%アクリルアミド/4%ビスメチルアクリルアミド溶液を作る。この溶液を、水流による減圧下脱気し、重合反応を阻害する溶解酸素を除去した。
アクリルアミド溶液を、オーバーヘッドスターラーで約500rpmの速度で攪拌している300mlのn-ヘキサン中に滴下した。約0.25mlのSPAN 85を溶液に添加し、エマルジョン液滴の会合を防いだ。エマルジョンがおおよそ所望の大きさになるまで、1〜2分間緩やかに攪拌した。重合を開始させるために、1mlのTEMEDをn-ヘキサン相に添加し、30分間攪拌を続けた。ビーズを回収し、そして溶液を一連の等級のふるいに通すことにより、大きさに従って分別した。300μMと800μMとの間の直径を有するスフェアを選んで、さらに研究した。
実施例5:ポリアクリルアミドマイクロスフェアの表面活性化
ポリアクリルアミドマイクロスフェアを、カルボニルジイミダゾール(CDI)で処理し、ポリエチレンイミンまたはポリリシンなどのカチオン試薬に共有結合させた。典型的には、ポリアクリルアミドビーズの半分のバッチを、0.5Mの炭酸ナトリウムと振とうしながら60℃で1時間インキュベートした。炭酸ナトリウム溶液を、インキュベート中に2回新しい溶液と交換した。この手順は、ビーズの加水分解、およびCDI反応に利用可能な遊離カルボキシル基の生成を意図している。
次いで、ビーズは、2回ドライアセトンと交換して溶媒交換し、次いで、アセトン中で4.0%(w/v)のCDIと25℃で1時間インキュベートした。新鮮なCDI溶液とさらに1時間のインキュベーションを繰り返した。次いで、ビーズをアセトンで2回洗浄し、結合していないCDIを除去し、次いで0.2Mのホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)中の10%(w/v)のポリエチレンイミン(MW 1800)または1%ポリリシンと4℃で24時間インキュベートした。ビーズをホウ酸緩衝液で2回洗浄し、そして必要になるまで2Mの塩化アンモニウム中に保存した。塩化アンモニウムは「遊離」CDI結合部位を不活性化した。ビーズを使用直前に10mMのトリス(pH7.0)で3回洗浄した。
マイクロスフェアは、以下のような「点在試験」により試験し得る。マイクロスフェアを、切開した腸組織セグメント中にふりかける。次いで、これらのセグメントを緩衝液中に入れて、ゆっくり動く振とう器上で4℃で30分間インキュベートした。次いで試料を立体顕微鏡で分析した。代表的な結果を、同様の大きさのマイクロスフェアのCahn微量天秤での得られる力に対応する測定価と共に表2に示す。
Figure 0004015692
実施例6:ラット腸へのビーズ付着のインビトロでの試験の比較
マイクロスフェアの相対的な生体接着能力を比較する別の方法は、異なるポリマー粒子を生理学的条件下で単離したラット腸とインキュベートすることであった。典型的には、新たに屠殺したラットから腸を取り除き、約10mlのDPBSで軽く洗浄し、ステンレススチールロッド上に裏返しにして、試験用セグメントに分けた。切断末端を合わせて縫合することによりセグメントを嚢にして、次いでDPBSで満たした。次いで、腸嚢を一定の範囲の大きさのマイクロスフェアの既知の数と約30r.p.m.の攪拌速度で4℃で30分間インキュベートした。試験終了後に、腸に付着したビーズの数および付着しなかったマイクロスフェアの数を数えた。典型的な実験の結果を、表3に記載する。
Figure 0004015692
実施例8:生体接着性を増強するためのCDI化学およびレクチンのカップリングを用いるヒドロゲルマイクロスフェアの表面活性化
50%(w/v)のTonopaqueTM(Lafayette Pharmaceuticals, Lafayette, Indiana)造影剤を含有する2%(w/v)のアルギネート溶液を用い、上記の押し出し方法を用いてアルギネートビーズを調製した。このビーズを1.3%(w/v)のCaCl2浴中で1時間「硬化」させた。次いで、このビーズを湿った状態でふるいにかけ(wet-sieved)、そして500〜800ミクロンの範囲のサイズのビーズのみを用いた。典型的には、50個から1000個のビーズを各実験に用いる。
アルギネートビーズの表面の水酸基を、CDI(カルボニルジイミダゾール)化学を用いて活性化した。簡単にいうと、ビーズを、5容量の無水アセトン中に合計5回交換して、浸漬することによって、溶媒交換を行った。次に、このビーズを、CDI(4.0w/v%)0.4gmを含有する無水アセトン10mL中で、20℃で24時間振とうしながらインキュベートした。CDI溶液を廃棄し、そしてビーズを無水アセトンで数回洗浄して未結合のCDIを除去した。
胃腸管におけるムチンの末端α-L-フコース残基に高親和性のUlex Europaeus(UEA-I、M.W. 63,000)由来のレクチンを、活性化アルギネートビーズにカップリングした。この活性化ビーズを2mL、の0.2Mホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)に再懸濁し、それに0.4mgのUEA-1レクチン(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を加えた。このビーズをレクチン溶液中で少なくとも24時間室温で振とうしながら、インキュベートした。このビーズをホウ酸塩緩衝液中で数回洗浄して、未結合のレクチンを除去し、そしてホウ酸塩緩衝液中の0.5%(w/v)のグリシン中で1時間インキュベートして、レクチンが結合していない活性化部位を「クエンチ」した。
UEA-1アルギネートビーズをHanks緩衝液中の裏返されたラットの小腸とインキュベートしたところ、ほとんど100%のビーズが5分以内に粘膜/ムチン層に付着し、そして少なくとも3時間はしっかりと結合したままであった。このタイプの表面修飾は、生体接着性を改良するために、表面のカルボキシル基または水酸基を含有するいかなるタイプのビーズにも用いられ得た。
レクチンでコートされたマイクロスフェアをまた、まず、アルギネートを修飾し、次いでマイクロスフェアを調製することによって、作製した。広い範囲での用途には、押し出しデバイスを用いてマイクロスフェアを作る前に、アルギネートを前処理することが望ましい。1つの実験においては、アルギネート粉末0.5gmを、無水DMSO中0.2gmのCDI(アルギネートはDMSOに溶解しない)で、室温で48時間処理した。次に、活性化アルギネートを過剰のDMSOで洗浄して未反応のCDIを除去し、そしてUEA-1-ビオチン化レクチン0.5mgを含有する0.2Mホウ酸塩緩衝液(pH9.5)10mLを上記粉末に加えた。リガンドのカップリング工程を4℃で24時間続けた。ホウ酸塩緩衝液で注意深く洗浄することによって、膨張した(swollen)粉末から未結合のレクチンを除去した。処理したアルギネートを蒸留水で洗浄し、そして水に溶解して2%(w/v)アルギネート溶液を作った。次いで、このアルギネート溶液を用いて1.3%塩化カルシウム浴中に押し出すことによって、マイクロスフェアを作った。最終的なビーズは、インビトロで裏返された腸の嚢に対して優れた生体接着性を示した。
最終的なビーズ上のビオチン化レクチンの存在を、市販のVector stein−西洋ワセビペルオキシダーゼ(HRP)キットでインキュベーションすることによって確認した。Vector steinは、ビーズに付着したビオチン化レクチンと結合するアビジン−ビオチン−HRP複合体を利用する。ペルオキシダーゼ活性をジアミノベンジジンおよび過酸化水素との反応によって可視化した。この反応によって、初めは白色のマイクロスフェアが暗褐色となり、そのことによってレクチンの存在が確認された。
実施例9:生体接着性を改良するための、ポリ(フマル酸無水物−コ−セバシン酸無水物)を有するコーティング薬物
未処理のDexatrimTMおよびContacTMを、まず、改造したCahn電子天秤(DCA 322型)を用いて、新鮮な摘出されたラットの小腸における接着性について、生理学的条件下で、引張試験を行った。次いで、この材料を塩化メチレン中に溶解した20:80の割合のポリ(フマル酸無水物−コ−セバシン酸無水物)(P(FA:SA)20:80)で浸して(dip)コートした。コーティングの後、同じ引張試験を繰り返した。表3に示された結果は、両方の場合で、コートされていない試料に対して、コートされた試料の接着性結合において著しい改良を明らかに示した。
Figure 0004015692
組織の伸びおよび剥離作用のような特性は、生体接着性の度合いと強い相関関係を有する。ContacTMの平均の組織の伸びは、0.948mmから1.227mmで増加し(29%の増加)、そして平均の剥離作用は、コーティングによって26.46nJから144.14nJまで増加した(445%の増加)。
実施例10:FA:SAマイクロスフェアとヒツジの腸との結合
生体接着性に関する種差の重要性を評価するために、p(FA:SA)(50:50)マイクロスフェアと新らたに屠殺したヒツジの腸との結合を試験した。Cahn微量天秤装置で試験したあらゆるマイクロスフェアの最高の力をも一貫して示したため、p(FA:SA)マイクロスフェアを用いた。
安楽死溶液を注入することによって、屠殺した後すぐに、絶食していない動物から空腸を取り出し、そしてこの腸を冷却したダルベッコPBS(DPBS)中に入れた。この組織について2つの実験を行った:CAHNの力測定およびマイクロスフェアのインキュベーション研究。
CAHNの実験のために、ヒツジの空腸(1cm×1cm)の切片を切り取り、そしてCAHNの組織チャンバ中のDPBS中に入れた。直径600〜750μを有する3つのp(FA:SA)(20:80)マイクロスフェアを、7分間の接着時間を用いて試験した。この実験結果を以下の表5に示す:
Figure 0004015692
ヒツジの腸を用いて測定した相互作用は、ラットの腸を用いて測定した相互作用より実質的に大きかった。例えば、生体接着性の破断強度(fracture strength)は、ラットの組織とp(FA:SA)との間で測定された生体接着性の破断強度より10倍も大きかった。試料を剥離する際に行われる作用(すなわち、剥離作用)もまた、以前に記録されたいかなる作用よりもはるかに大きかった。さらに、これらの値(破断強度および作用)はより大きくなり得るが、微量天秤が、完全な剥離の前にその位置に到達したという事実は記録し得なかった。
生体接着性は、主として粘液層とマイクロスフェアの相互作用によることが判明した。ヒツジの腸における保護粘液コーティングが、ラットにおいて観察されたコーティングよりはるかに厚いということが観察された。これらの違いは食餌によるものであり得る;ヒツジは草食性であるが、ラットはヒトと同様に雑食性である。
インキュベーション研究のために、腸を縦に切り、4cm長をペトリ皿中の歯科用ワックスにピンでとめた。この腸を冷却した生理食塩水でかるく洗浄して管腔の内容物を除去した。しかし、粘膜表面を覆う広範囲の粘液層を流し取るようなことは行われなかった。直径300〜500ミクロンの範囲の数百個のビーズを固定した切片上に散在させ、そしてDPBS(pH7.4)中で4℃でインキュベートした。1時間後、この腸をDPBS中に浸漬することによって簡単に洗浄して、弱く結合しているビーズを洗浄し、マイクロスフェアの結合の程度を評価した。少なくとも80%のビーズが、腸に付着したままであり、そしてしっかりと結合していることが判明した。
組織学研究のための固定および脱水による結合したビーズの喪失を防ぐために、腸の切片を蒸留水で5秒間簡単に洗浄して接着用緩衝液の塩を除去し、液体窒素で素早く凍結させ、そしてS.E.M.用に凍結乾燥した。この試料の(the sampled)S.E.M.は、肉眼的な観察で確認した。粘液のストランドは、全ての絨毛構造を完全に覆っていた。多くの場合、マイクロスフェアのビーズの直径の少なくとも1/2を粘液層に包み込み、ほとんどのスフェアは、その表面上にかなりの吸着を示した。明らかに、粘液の付着は、FA:SAマイクロスフェアを管腔表面にしっかりと固定し、そして上皮への薬物送達を増強する親密な接触を提供した。
実施例11:マイクロスフェアとサルの腸との結合
高カロリーの菜食性の食餌のサルの食事を持続してとっており、そして屠殺前に絶食をさせなかった5歳のメスのサルから空腸を得た。この組織をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中で、氷上で冷却状態に保った。この組織の切片(1cm×2cm)を切り取り、そして微量天秤分析のためにCAHN組織チャンバに入れた。3つの異なる熱可塑性物質(ポリ無水物)を、生体接着性について分析した:p(CPP:SA)(20:80)、p(FA:SA)(20:80)、およびp(FA:SA)(50:50)。この平均の結果を以下のように表6に示す:
Figure 0004015692
p(FA:SA)(50:50)マイクロスフェアは、サルの組織に対する最も強い接着性を示しているようであった。破断強度は、ラットの腸組織で測定された値のおよそ1/2の大きさであった。この組織は、ほんのわずかの粘液が表面上に見られ得るということで独特のものであった。強い相互作用が認められたときでさえ、生体接着性物質と生組織との間に伸びる粘液の特徴的なストランドを見ることは困難であった。しかし、ラットの腸組織を分析するときに通常見られる伸びと比較して、かなり長い組織の伸びを測定した。
CAHN微量天秤を用いて生体接着性の試験を行った種々のマイクロスフェアを、「スプリンクル試験(sprinkle test)」を用いてインビトロで生体接着性の試験を行った。インキュベーションの結果により、FA:SAビーズのみがいくらか著しい生体接着性を示すが、このビーズの初期の添加の20%だけが1時間後にサルの腸にしっかりと結合し続けることが確認された。この実験を同じ条件下でヒツジの腸で行った場合には、少なくとも80%の初期ビーズが付着し続けた。サルの腸からの粘液の欠如の合計は、ヒツジの腸の充分な粘液のカバーに比べて、生体接着性における差異について少なくとも1つの明らかな理由を示唆する。
S.E.M.によって、空腸の形態を十分に保存し、そして粘液ストランドの明らかな欠如を確認した。一般に、ビーズは、粘液の網目構造が無傷であるよく散在した位置に結合したか、さもなくば、絨毛をカバーする上皮細胞に直接付着した。ある場合においては、ビーズまたはビーズの小さい集合体は、隣接する絨毛構造の間で機械的にひっかかるようである。この実験結果は、FA:SAマイクロスフェアと吸収性の上皮との直接的な結合は起こるが、ポリマー性のスフェアと粘液との接着はさらに強く、そして生体接着プロセスのさらに重要な成分であることを示唆する。
本明細書中に記載の方法および生体接着性のマイクロスフェアの組成物の修飾および変更は、当業者にとって上記の詳細な説明から明らかである。このような修飾および変更は、添付の請求の範囲内で生じることが意図される。

Claims (10)

  1. ラットの腸粘膜で測定された110N/m2と100,000N/m2との間の接着力と等しい接着力をポリマー表面に有するマイクロスフェアであって、該ポリマーが、荷電した基またはリガンドを介して該粘膜に結合し、かつ
    リスチレンおよびフマル酸とセバシン酸のコポリマーからなる群から選択され、
    薬剤をカプセル化している、マイクロスフェアであって、該測定は、以下の工程:
    (a)生理的条件下で、pH7.4およびモル浸透圧294mOsmでの緩衝化生理食塩水の存在下で、切除したラット腸粘膜の内腔側と該マイクロスフェアとを7分間接触させる工程;および
    (b)該粘膜から該マイクロスフェアを垂直に引き離し、他方で剥離のために必要な力を記録する工程、
    を包含する張力技術を用いて生体接着性特性を測定することによってなされる、マイクロスフェア。
  2. 前記ポリマーがマイクロスフェア全体を形成する、請求項1に記載のマイクロスフェア。
  3. 前記ポリマーが異なる材料で形成されたマイクロスフェアの表面上にコートされる、請求項1〜2のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
  4. 前記薬剤が、タンパク質、多糖類、無機化合物、および有機化合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
  5. 前記薬剤が、ガス類、ガス発生剤、および放射線不透過化合物からなる群から選択される、請求項4に記載のマイクロスフェア。
  6. 前記マイクロスフェアが薬学的なキャリアと組み合わせて存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
  7. 前記マイクロスフェアは、画像化によって検出可能な化合物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
  8. 前記化合物は、画像化によって検出可能な形態の硫酸バリウムである、請求項に記載のマイクロスフェア。
  9. 前記マイクロスフェアは、薬物を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のマイクロスフェア。
  10. 前記薬物は、スルフォンアミド、グルココルチコイド、腸疾患の処置のための薬物または経口ワクチンである、請求項に記載のマイクロスフェア。
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