JP4015415B2 - プリプレグの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強化繊維と熱硬化性樹脂とからなる繊維強化複合材は、軽量で優れた機械特性を有することから、釣竿、ゴルフシャフト等のスポーツレジャー用部材、航空機、自動車、船舶、建築物等の部材として広く用いられている。
かかる繊維強化複合材は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等の強化繊維に含浸させ、半硬化状態とした、シート状等の繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグを複数積層させた後、加熱、加圧し、プリプレグを硬化することにより製造されている。なお、本明細書では、「繊維強化熱硬化性樹脂プリプレグ」のことを単にプリプレグと称す。
【0003】
一般に、プリプレグは、プリプレグを担持シートにより担持した担持シート付きプリプレグの形態で製造されている。以下、図2に基づいて、従来のプリプレグの製造装置について簡単に説明する。
図2に示す従来のプリプレグの製造装置は、炭素繊維等の強化繊維若しくは強化繊維の織物等を供給するクリール101と、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シートを供給する巻出しロール103、104と、所定の温度に加熱されたニップロール105〜107と、巻出しロール103から供給された担持シートを巻取る巻取りロール108と、製造された担持シート付きプリプレグを巻取る巻取りロール109とを具備して構成されている。
【0004】
かかる構成の製造装置によれば、以下のようにして、担持シート付きプリプレグが製造される。
すなわち、クリール101から供給された強化繊維110は、コーム102により一方向に揃えられ、開繊手段(図示略)により開繊された後、第1のニップロール105に供給される。
同時に、第1のニップロール105には、巻出しロール103、104から、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート120、130が供給され、ニップロール105を構成する一対のロール間において、強化繊維110は、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート120、130により挟持され、積層体111が形成される。なお、積層体111は形成されると同時に、第1のニップロール105により加熱及び加圧される。さらに、積層体111は、第2、第3のニップロール106、107により順次、加熱及び加圧される。
【0005】
このように、積層体111を複数のニップロール105〜107により加熱及び加圧し、熱硬化性樹脂を強化繊維110に含浸させることにより、プリプレグが生成される。次いで、巻出しロール103から供給された担持シートのみを剥離し、巻取りロール108により巻取り、担持シート付きプリプレグ112を得た後、これを巻取りロール109により巻取ることにより、担持シート付きプリプレグ112が製造される。
【0006】
なお、本明細書では、強化繊維の織物等の強化繊維束も含めて、単に「強化繊維」と称す。
【0007】
しかしながら、上記従来のプリプレグの製造装置を用いた場合には、積層体がニップロールに接する時間が短いことに起因して、積層体が十分に加熱されないままニップロールを通過し、樹脂の含浸が不十分となる恐れがあった。
そこで、かかる問題を解決するために、図3に示すように、第1のニップロール105と第2のニップロール106との間に熱板140を配置し、プリプレグを生成する前に熱板140上を通過させることにより、積層体111を予熱することが提案されている。また、熱板140を設ける代わりに、赤外加熱ヒータ(図示略)を配置し、赤外加熱ヒータから赤外線を照射することにより、積層体111を予熱することも提案されている。
このように、プリプレグを生成する前に、熱板若しくは赤外加熱ヒータにより積層体を予熱することにより、樹脂の含浸をより確実に行うことができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プリプレグを生成する前に積層体を予熱する予熱手段として、熱板、赤外加熱ヒータのいずれを採用した場合においても、予熱によって、積層体を構成する樹脂が軟化するため、開繊手段により開繊させたにもかかわらず、開繊幅が狭くなり、所望の繊維目付のプリプレグが得られない恐れがあった。
【0009】
また、予熱手段として熱板を採用した場合には、積層体の片面側からのみ加熱を行うため、他方の面側まで十分に予熱されない恐れがあった。また、生産効率の向上を図るために、積層体の搬送速度を大きくした場合には、熱板に対して積層体が押し付けられる力が弱まり、熱板と積層体との密着性が低下するため、熱板による予熱効率が一層低下し、予熱が不十分となる恐れがあった。そのため、十分な予熱を行うためには、熱板の長さを長くし、積層体の熱板への接触時間を長くする必要があり、生産性が低下するという問題があった。
また、予熱手段として赤外加熱ヒータを採用した場合には、赤外線により積層体全体を加熱するため、効率良く予熱することができるものの、非接触で加熱を行うため、温度制御が難しく、安定してプリプレグを製造することが困難となる恐れがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、予熱を行う際に、開繊幅が狭くなることを防止し、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することが可能な手段を提供することを第一の目的とする。また、生産性を低下させることなく、安定して予熱を行うことができ、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを安定して製造することが可能な手段を提供することを第二の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するべく検討を行った結果、以下のプリプレグの製造方法を発明するに到った。
本発明のプリプレグの製造方法は、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグの製造方法において、片面に熱硬化性樹脂を塗布した一対の担持シートで強化繊維を挟持して、積層体を形成する工程と、
前記積層体を複数の加熱部材により加熱する工程であり、それらの加熱部材は、隣接する加熱部材が前記積層体の異なる面に接し、かつ、隣接する前記加熱部材間を通過する時の前記積層体の進行方向がその直前の進行方向と異なるように配置され、張力をかけながら前記積層体の両面を交互に加熱する工程と、
前記積層体を加熱、加圧することにより、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させ、プリプレグを生成する工程とを有することを特徴とするプリプレグの製造方法。
そして、片面に熱硬化性樹脂を塗布した一対の担持シートで強化繊維を挟持して、積層体を形成する積層体形成手段と、前記積層体に張力をかけながら、前記積層体の両面を交互に加熱する加熱手段と、前記積層体を加熱、加圧することにより、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させ、プリプレグを生成するプリプレグ生成手段とを具備することを特徴とする装置により好適に実施可能である。
【0012】
すなわち、本発明のプリプレグの製造方法においては、プリプレグ生成手段によりプリプレグを生成する前に、加熱手段(予熱手段)により、積層体に張力をかけながら、積層体の予熱を行うことを特徴としている。
かかる構成とすることにより、予熱を行う際には、強化繊維がその延在方向に引っ張られた状態となるので、予熱により樹脂が軟化しても、各繊維の動きが拘束され、開繊幅が狭くなることを防止することができ、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができる。
【0013】
また、本発明のプリプレグの製造方法を好適に実施可能な前記装置において、前記加熱手段は、前記積層体に接して加熱を行う複数の加熱部材を具備し、前記複数の加熱部材は、隣接する前記加熱部材が前記積層体の異なる面に接し、かつ、隣接する前記加熱部材間を通過する時の前記積層体の進行方向がその直前の進行方向と異なるように、配置されていることが好ましい。
【0014】
加熱手段を、積層体に接して加熱を行う複数の加熱部材により構成すると共に、隣接する加熱部材間を通過する時の積層体の進行方向がその直前の進行方向と異なるように、複数の加熱部材を配置することにより、積層体が隣接する加熱部材の存在により引っ張られた状態となる。また、積層体は各加熱部材と接する際に加熱されるので、積層体に張力をかけながら、積層体の予熱を行うことができる。
【0015】
また、隣接する加熱部材が積層体の異なる面に接するように、複数の加熱部材を配置する構成としているので、積層体の両面を複数の加熱部材により交互に加熱することができる。また、積層体は張力がかかった状態で加熱部材に接するため、加熱部材に対して積層体が押し付けられた状態を維持することができる。したがって、積層体の搬送速度を大きくしたとしても、積層体と加熱部材との密着性が低下する恐れがない。
このように、積層体を両面側から加熱することに加えて、加熱部材に対して積層体が押し付けられる力が低下する恐れがないので、加熱部材による積層体の予熱を安定して行うことができ、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを安定して製造することができる。また、予熱効率を向上することができるので、樹脂含有率を低くした場合においても、短時間で予熱を終了することができ、生産性にも優れている。また、積層体を加熱部材に接触させて予熱を行うため、予熱を行う際の加熱温度についても簡易に制御することができ、安定してプリプレグを製造することができる。
【0016】
さらに、本発明者は、積層体の予熱を安定して行うことができると共に、予熱効率を向上することができる結果、樹脂の含浸速度を著しく向上させることができ、プリプレグの生産効率を著しく向上できると共に、プリプレグ生成手段の構造を簡略化できることを見出した。具体的には、プリプレグ生成手段としてはニップロール等が用いられているが、本発明者は、ニップロール等の数を少なくしても、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを安定して製造できることを見出した。
【0017】
また、加熱部材に対して積層体が押し付けられる圧力は、積層体にかかる張力の指標であり、加熱部材に対して積層体が押し付けられる圧力が高い(あるいは低い)ということは、積層体にかかる張力が高い(あるいは低い)ことに相当するが、加熱部材に対して積層体が押し付けられる圧力が0.01〜0.5kg/cm2であることが好ましい。
本発明者は、加熱部材に対して積層体が押し付けられる圧力がこの範囲となるように、積層体に張力をかけながら予熱を行うことにより、上記の効果、すなわち、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができるという効果、及び積層体の予熱を安定して行うことができると共に、予熱効率を向上することができるという効果を安定して得ることができることを見出した。
【0018】
また、前記加熱部材の前記積層体と接する面が曲面であることが好ましい。このように、加熱部材の積層体と接する面を曲面とすることにより、隣接する加熱部材間における積層体の搬送を滑らかに行うことができるので、好適である。
【0020】
本発明のプリプレグの製造方法は、積層体に張力をかけながら、積層体を加熱する工程を有するものであるので、予熱を行う際に、開繊幅が狭くなることを防止することができ、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る実施形態について説明する。
(プリプレグの製造装置)
図1に基づいて、本発明に係る一実施形態のプリプレグの製造装置、及びこの製造装置を用いたプリプレグの製造方法について説明する。
本実施形態のプリプレグの製造装置は、炭素繊維等の強化繊維を供給するクリール(強化繊維供給手段)1と、クリール1から供給された強化繊維を一方向に揃えるためのコーム2と、片面にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が塗布された離型紙等の担持シートを供給する巻出しロール3、4と、所定の温度に加熱されたニップロール5〜7と、巻出しロール3から供給された担持シートを巻取る巻取りロール8と、製造された担持シート付きプリプレグを巻取る巻取りロール9とを具備して構成されている。
【0022】
さらに、本実施形態のプリプレグの製造装置には、第1のニップロール5と第2のニップロール6との間に、第1のニップロール5において生成された積層体の予熱を行う加熱手段(予熱手段)40が設けられており、本実施形態のプリプレグの製造装置においては、この加熱手段40を備えている点が特徴的なものとなっている。
【0023】
なお、本実施形態では、便宜上、積層体から見て、巻取りロール8により巻取る担持シートを供給する巻出しロール3側を「上側」、もう一方の担持シートを供給する巻出しロール4側を「下側」として説明するが、上下の構成は逆であっても構わない。
【0024】
本実施形態のプリプレグの製造装置において、クリール1から供給された強化繊維10は、コーム2により一方向に揃えられ、開繊手段(図示略)により開繊された後、第1のニップロール5に供給される。また、巻出しロール3から供給され、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート20は、第1のニップロール5を構成する上側のロールに供給され、巻出しロール4から供給され、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート30は、第1のニップロール5を構成する下側のロールに供給される。そして、ニップロール5を構成する一対のロール間において、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート20、30により強化繊維10を挟持した積層体11が形成される。
【0025】
なお、このとき、熱硬化性樹脂が塗布された側の面が強化繊維10側に位置するように、熱硬化性樹脂が塗布された担持シート20、30が第1のニップロール5に供給されるようになっている。このように、巻出しロール3、4、第1のニップロール5により、片面に熱硬化性樹脂が塗布された担持シート20、30により強化繊維10を挟持した積層体11を形成する積層体形成手段50が構成されている。
【0026】
また、第1のニップロール5において形成された積層体11は、加熱手段40により予熱された後、さらに、第2、第3のニップロール6、7を順次通過するように構成されているが、ニップロール5〜7は熱硬化性樹脂の軟化点以上の所定の温度に加熱されているので、ニップロール5〜7を通過する際に、積層体11は加熱及び加圧される。これによって、熱硬化性樹脂を強化繊維10に含浸させ、プリプレグが生成されるようになっている。このように、本実施形態では、ニップロール5〜7によりプリプレグ生成手段60が構成されている。
なお、ニップロール5〜7の加熱温度は、用いる熱硬化性樹脂の種類により異なるが、例えば、70〜130℃に設定される。また、ニップロール5〜7から積層体11にかかる線圧は、例えば、10〜50kg/cm(1〜5t/m)に設定される。
【0027】
次に、剥離手段(図示略)により、巻出しロール3から供給された担持シートのみを剥離し、巻取りロール8により巻取ることにより、担持シート付きプリプレグ12を得た後、これを巻取りロール9により巻取ることにより、担持シート付きプリプレグ12が製造される。
【0028】
以下、第1のニップロール5と第2のニップロール6との間に設けられた加熱手段40の構造について詳述する。
加熱手段40は、互いに離間配置され、所定の温度に加熱された3個の円柱状の第1〜第3の加熱ロール(加熱部材)41〜43により構成されており、積層体11はこれら加熱ロール41〜43に接するように搬送されて加熱されるようになっている。なお、十分な予熱効果を得るためには、加熱ロール41〜43の加熱温度がニップロール5〜7と同等以上に設定されていることが好ましい。また、加熱ロール41〜43は積層体11の動きに合わせて自由に回動するものであっても良いし、駆動手段に接続され、所定の周速度で回動されるものであっても良い。また、回動せずに、完全固定されたものであっても良い。但し、積層体11の搬送を滑らかに行うためには、完全固定されたものよりは、回動可能なものであることが好ましい。
【0029】
また、図示するように、加熱ロール41〜43は、ニップロール5〜7を構成する下側のロールと平行に配置されているが、積層体11は、図示左側から奇数番目の第1、第3の加熱ロール41、43の上端部側を通過し、偶数番目の第2の加熱ロール42の下端部側を通過するように構成されている。換言すれば、加熱ロール41〜43は、隣接する加熱ロール41〜43が積層体11の異なる面に接するように配置されており、図示左側から奇数番目の第1、第3の加熱ロール41、43は積層体11の下面に接し、偶数番目の第2の加熱ロール42は積層体11の上面に接するように構成されている。そして、積層体11の両面を加熱ロール41〜43により交互に加熱できるようになっている。
【0030】
さらに、隣接する加熱ロール41〜43間を通過する時の積層体11の進行方向がその直前の進行方向と異なるように構成されている。具体的には、第1の加熱ロール41に接するまでの積層体11の進行方向は水平方向である。これに対して、第1、第2の加熱ロール41、42間を通過する積層体11の進行方向は、第1の加熱ロール41の上端部側から第2の加熱ロール42の下端部側に向かう方向となるので、図示右下がりの方向となっている。また、同様に、第2、第3の加熱ロール42、43間を通過する積層体11の進行方向は、第2の加熱ロール42の下端部側から第3の加熱ロール43の上端部側に向かう方向となるので、図示右上がりの方向となっている。
【0031】
このように、隣接する加熱ロール41〜43が積層体11の異なる面に接し、かつ、隣接する加熱ロール41〜43間を通過する時の積層体11の進行方向がその直前の進行方向と異なるように、加熱ロール41〜43を配置することにより、積層体11が隣接する加熱ロール41〜43の存在により引っ張られた状態となるので、積層体11に張力をかけながら、予熱を行うことができる。
ここで、加熱ロール41〜43に対して積層体11が押し付けられる圧力は、積層体11にかかる張力の指標となるが、加熱ロール41〜43に対して積層体11が押し付けられる圧力が0.01〜0.5kg/cm2であることが好ましい。なお、各加熱ロール41〜43の対向側には、加熱ロール41〜43と共に積層体11を挟持する対向ロールが配置されていないので、積層体11が加熱ロール41〜43に押し付けられる力は、一対のロールで積層体11を挟持して加圧するニップロール5〜7から受ける力よりは、はるかに小さいものである。
【0032】
本実施形態のプリプレグの製造装置は以上のように構成されており、本実施形態のプリプレグの製造装置では、プリプレグ生成手段60によりプリプレグを生成する前に、加熱手段(予熱手段)40により、張力をかけながら、積層体11を予熱することを特徴としている。そのため、予熱を行う際に、強化繊維がその延在方向に引っ張られた状態となるので、予熱により樹脂が軟化しても、各繊維の動きが拘束され、開繊幅が狭くなることを防止することができ、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができる。
【0033】
また、本実施形態において、積層体11の予熱を行う加熱手段40を3個の加熱ロール41〜43により構成する共に、隣接する加熱ロール41〜43が積層体11の異なる面に接するように、加熱ロール41〜43を配置する構成としているので、積層体11の両面を加熱ロール41〜43により交互に加熱することができる。また、積層体11は張力がかかった状態で加熱ロール41〜43に接するため、加熱ロール41〜43に対して積層体11が押し付けられた状態を維持することができる。したがって、積層体11の搬送速度を大きくしたとしても、積層体11と加熱ロール41〜43との密着性が低下する恐れがない。
【0034】
このように、積層体11を両面側から加熱することに加えて、加熱ロール41〜43に対して積層体11が押し付けられる力が低下する恐れがないので、加熱ロール41〜43による積層体11の予熱を安定して行うことができ、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを安定して製造することができる。また、予熱効率を向上することができるので、樹脂含有率を低くした場合においても、短時間で予熱を終了することができ、生産性にも優れている。また、積層体11を加熱ロール41〜43に接触させて予熱を行うため、予熱を行う際の加熱温度についても簡易に制御することができ、安定してプリプレグを製造することができる。
【0035】
さらに、本実施形態のプリプレグの製造装置を用いることにより、積層体11の予熱を安定して行うことができると共に、予熱効率を向上することができる結果、樹脂の含浸速度を著しく向上させることができ、プリプレグの生産効率を著しく向上できると共に、加熱手段40の後に設けるニップロールの数を少なくすることができ、プリプレグ生成手段60の構造の簡略化を図ることができる。
【0036】
また、加熱ロール41〜43に対して積層体11が押し付けられる圧力を0.01〜0.5kg/cm2の範囲となるように、積層体11の予熱を行うことにより、上記の効果、すなわち、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができるという効果、及び積層体11の予熱を安定して行うことができると共に、予熱効率を向上することができるという効果を安定して得ることができる。
【0037】
なお、積層体11が押し付けられる圧力が0.01kg/cm2未満の場合には、積層体11にかかる張力が小さくなりすぎ、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができない恐れがある。また、積層体11と加熱ロール41〜43との密着性が低下し、加熱ロール41〜43による積層体11の予熱を安定して行うことができない恐れがあると共に、予熱効率が低下する恐れもある。
また、積層体11が押し付けられる圧力が0.5kg/cm2超の場合には、担持シートに張力がかかりすぎる結果、製造後に担持シートに収縮が発生し、プリプレグ表面の平滑性が低下する恐れがある。
【0038】
また、本実施形態では、加熱手段40を円柱状の加熱ロール41〜43により構成したが、加熱ロール41〜43の積層体11と接する面は曲面であるため、隣接する加熱部材41〜43間における積層体11の搬送を滑らかに行うことができ、好適である。
なお、加熱手段40を構成する加熱部材としては、円柱状の加熱ロールに限定されるものではなく、半円柱状の加熱部材など、積層体11と接する面が曲面であれば、いかなる加熱部材を用いても良い。また、積層体11の搬送に支障がなければ、加熱部材の積層体11と接する面は曲面である必要もない。
また、加熱部材の配置位置や個数についても適宜設計することが可能であり、隣接する加熱部材が積層体11の異なる面に接し、かつ、隣接する加熱部材間を通過する時の積層体11の進行方向がその直前の進行方向と異なるように、複数の加熱部材を配置すれば、本実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0039】
また、本発明は、かかる構成の加熱手段40に限定されるものではなく、少なくとも積層体11に張力をかけながら予熱を行うことが可能な構成とすれば良く、かかる構成とすることにより、少なくとも、予熱を行う際に、開繊幅が狭くなることを防止することができ、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができるという効果を得ることができる。
【0040】
また、本実施形態のプリプレグの製造方法によれば、本実施形態のプリプレグの製造装置と同様の効果を得ることができる。
【0041】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例及び比較例について説明する。以下の実施例、比較例において、強化繊維として炭素繊維、担持シートとして離型紙を用い、製造装置を変えてプリプレグの製造を行った。なお、以下の実施例、比較例において、特に明記していない条件については、すべて共通とした。
【0042】
(実施例1)
図1に示したプリプレグの製造装置(以下、装置1という。)を用い、繊維目付が150g/m2、樹脂含有率が25質量%の炭素繊維プリプレグを製造した。製造条件は以下に示す通りとした。なお、第1〜第3の加熱ロールに積層体が押し付けられる圧力を測定した結果も合わせて示す。
第1のニップロールの加熱温度:70℃
第2のニップロールの加熱温度:110℃
第3のニップロールの加熱温度:110℃
第1のニップロールから積層体にかかる線圧:1.0t/m
第2のニップロールから積層体にかかる線圧:1.5t/m
第3のニップロールから積層体にかかる線圧:1.5t/m
第1〜第3の加熱ロールの加熱温度:110℃
積層体の第1の加熱ロールへの接触時間:0.8秒
積層体の第2の加熱ロールへの接触時間:1.6秒
積層体の第3の加熱ロールへの接触時間:0.8秒
第1の加熱ロールに積層体が押し付けられる圧力:0.09kg/cm2
第2の加熱ロールに積層体が押し付けられる圧力:0.045kg/cm2
第3の加熱ロールに積層体が押し付けられる圧力:0.09kg/cm2
【0043】
(比較例1)
図2に示した従来のプリプレグの製造装置(以下、装置2という。)を用い、繊維目付が150g/m2、樹脂含有率が25質量%の炭素繊維プリプレグを製造した。なお、装置2は、第1のニップロールと第2のニップロールとの間に、積層体の予熱を行う加熱手段が設けられていない以外は、装置1と全く同様の構造を有するものであるが、ニップロールの加熱温度、ニップロールから積層体にかかる線圧は実施例1と同様とした。
【0044】
(比較例2)
図3に示した従来のプリプレグの製造装置(以下、装置3という。)を用い、繊維目付が150g/m2、樹脂含有率が25質量%の炭素繊維プリプレグを製造した。なお、装置3は、第1のニップロールと第2のニップロールとの間に、積層体の予熱を行う熱板が設けられている以外は、装置1と全く同様の構造を有するものであるが、熱板の長さは3m、熱板の加熱温度は100℃とした。また、ニップロールの加熱温度、ニップロールから積層体にかかる線圧は実施例1と同様とした。
【0045】
(実施例2)
樹脂含有率を35質量%とした以外は実施例1と同様にして、装置1を用い、炭素繊維プリプレグを製造した。
(比較例3)
樹脂含有率を35質量%とした以外は比較例1と同様にして、装置2を用い、炭素繊維プリプレグを製造した。
(比較例4)
樹脂含有率を35質量%とした以外は比較例2と同様にして、装置3を用い、炭素繊維プリプレグを製造した。
【0046】
(プリプレグの評価)
各実施例、比較例において、第2、第3のニップロール通過後のプリプレグに対して、以下のようにして樹脂の含浸状態の評価を行った。
プリプレグの製造が定常状態となった後、装置を止め、第2、第3のニップロール通過後の積層体をそれぞれ取り出した。次いで、各積層体から一方の離型紙を剥離し、1枚の離型紙によりプリプレグを担持した離型紙付きプリプレグとした後、これを、直径10cmのパイプの外周に沿って、プリプレグ側がパイプ側になるように、繊維方向に1周巻き付けた。この状態を10秒間保持した後、プリプレグを水平な状態に戻し、プリプレグの表面を肉眼で観察した。なお、評価面積は0.1m2とした。
樹脂の含浸が不十分な場合には、プリプレグ内に微細な気泡が残った状態となるので、このように、パイプの外周に沿って曲げた場合、気泡が押し出され、気泡が形成された部分が盛り上がった状態となる。この盛り上がった部分のことを「繊維浮き」と称す。繊維浮きの発生状態から、下記基準に基づいて、樹脂の含浸状態を評価した。
<樹脂の含浸状態>
○:繊維浮きがほとんどなく、樹脂の含浸が完了している。
△:部分的に小さい繊維浮きがあり、樹脂の含浸がやや不十分である。
×:全体に渡って大きな繊維浮きがあり、樹脂の含浸が全く不十分である。
【0047】
(結果)
樹脂含有率を25質量%とした実施例1、比較例1、2において、得られた結果を表1に示す。また、樹脂含有率を35質量%とした実施例2、比較例3、4において、得られた結果を表2に示す。なお、表1、表2には、用いた装置、及び、製造したプリプレグの炭素繊維目付、樹脂含有率についても合わせて示している。
樹脂含有率が高い程、また、通過させたニップロールの数が多い程、樹脂を含浸させやすいが、表1、表2に示すように、本発明の装置1を用い、樹脂含有率を25質量%、35質量%とした実施例1、2では、第2のニップロール通過後においても、繊維浮きがほとんどなく、樹脂の含浸が完了していることが判明した。すなわち、本発明の装置1を用いた場合には、樹脂含有率を25質量%と低くしても、計2個のニップロール(第1、第2のニップロール)を通過させるだけで、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを製造できることが判明した。
【0048】
これに対して、積層体を予熱する加熱手段を具備しない従来の装置2を用い、樹脂含有率を25質量%とした比較例1では、第3のニップロール通過後においても、樹脂の含浸が全く不十分であった。また、同じ装置2を用い、樹脂の含有率を35質量%と多くした比較例3では、比較例1に比較して結果が多少良くなっているものの、第2のニップロール通過後では、樹脂の含浸が全く不十分であり、第3のニップロール通過後においても、樹脂の含浸がやや不十分であった。換言すれば、積層体の予熱を行わない場合には、樹脂の含浸を十分に行うためには、少なくとも4個以上のニップロールを配置させる必要があることが判明した。
【0049】
また、積層体を予熱する加熱手段として熱板を備えた従来の装置3を用い、樹脂含有率を25質量%とした比較例2では、積層体を予熱する加熱手段を具備しない装置2を用いた比較例1に比較すると、結果が良くなっているものの、第2、第3のニップロール通過後のいずれにおいても、樹脂の含浸はやや不十分であった。また、同じ装置3を用い、樹脂の含有率を35質量%と多くした比較例4では、比較例2に比較して結果が良くなっており、第3のニップロール通過後には樹脂の含浸が完了していたものの、第2のニップロール通過後の樹脂の含浸はやや不十分であった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
以上の結果から、本発明により、樹脂の含浸効率を著しく向上することができるので、樹脂含有率を低くしても、少ない数のニップロールで樹脂を含浸させることができ、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを効率良く、かつ安定して製造することができることが判明した。
【0053】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のプリプレグの製造方法によれば、プリプレグを生成する前に、張力をかけながら、積層体を予熱する構成を採用しているので、予熱を行う際に、強化繊維の開繊幅が狭くなることを防止し、所望の繊維目付のプリプレグを安定して製造することができる。
また、本発明において、加熱手段を、積層体に接して加熱を行う複数の加熱部材により構成すると共に、隣接する加熱部材が積層体の異なる面に接し、かつ、隣接する加熱部材間を通過する時の積層体の進行方向がその直前の進行方向と異なるように、複数の加熱部材を配置することが好ましく、かかる構成とすることにより、生産性を低下させることなく、安定して予熱を行うことができ、樹脂の含浸状態が良好なプリプレグを効率良く、かつ安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る一実施形態のプリプレグの製造装置を示す概略図である。
【図2】 図2は、従来のプリプレグの製造装置を示す概略図である。
【図3】 図3は、従来のプリプレグの製造装置のその他の構造例を示す概略図である。
【符号の説明】
10 強化繊維
20 熱硬化性樹脂を塗布した担持シート
30 熱硬化性樹脂を塗布した担持シート
11 積層体
12 担持シート付きプリプレグ
1 クリール(強化繊維供給手段)
2 コーム
3、4 巻出しロール
5、6、7 ニップロール
8、9 巻取りロール
40 加熱手段(予熱手段)
41、42、43 加熱ロール(加熱部材)
50 積層体形成手段
60 プリプレグ生成手段
Claims (2)
- 強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグの製造方法において、
片面に熱硬化性樹脂を塗布した一対の担持シートで強化繊維を挟持して、積層体を形成する工程と、
前記積層体を複数の加熱部材により加熱する工程であり、それらの加熱部材は、隣接する加熱部材が前記積層体の異なる面に接し、かつ、隣接する前記加熱部材間を通過する時の前記積層体の進行方向がその直前の進行方向と異なるように配置され、張力をかけながら前記積層体の両面を交互に加熱する工程と、
前記積層体を加熱、加圧することにより、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させ、プリプレグを生成する工程とを有することを特徴とするプリプレグの製造方法。 - 前記加熱部材の前記積層体と接する面が曲面である請求項1に記載のプリプレグの製造方法。
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