JP2004225183A - 強化繊維束の開繊方法および開繊装置 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】強化繊維束の開繊を、より高速で、かつ、単繊維切れや毛羽の発生を防止しながら行うことができる開繊方法と開繊装置を提供する。
【解決手段】連続的に走行する強化繊維束をその強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールに緊張下に順次接触させて開繊する際に、ロール軸方向に振動する横振動ロールを用いて開繊した後、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールを用いてさらに開繊する。
【選択図】 図1
【解決手段】連続的に走行する強化繊維束をその強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールに緊張下に順次接触させて開繊する際に、ロール軸方向に振動する横振動ロールを用いて開繊した後、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールを用いてさらに開繊する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向性プリプレグを製造するような場合に用いる強化繊維束の開繊方法および開繊装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、FRP(繊維強化プラスチック)の成形に一方向性プリプレグが用いられる。そのような一方向性プリプレグは、たとえば、複数本の、炭素繊維束等の強化繊維束を一方向に並行するように引き揃え、各強化繊維束を開繊、拡幅して強化繊維シートとした後、その強化繊維シートに、Bステージのエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を塗布した離型紙をその樹脂塗布面において重ね合わせ、離型紙上のマトリクス樹脂を強化繊維シートに転移、含浸することによって製造される。いわゆるホットメルト法と呼ばれる方法であるが、このとき強化繊維束の開繊の程度に斑があると、得られる一方向性プリプレグに割れができたり、割れができないまでも強化繊維の目付が不均一になったりする。その場合、当然、成形されるFRPは特性の不均一なものとなる。すなわち、強化繊維束の開繊の良否は、一方向性プリプレグの特性、ひいてはFRPの特性を左右する。
【0003】
さて、そのような一方向性プリプレグの製造における強化繊維束の開繊は、従来、連続的に走行する、一方向に並行するように引き揃えられた強化繊維束を、柱軸方向に振動する円柱体に緊張下に接触させたり(たとえば、特許文献1参照)、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた、ロール軸方向に振動する複数本の横振動ロールに緊張下に接触させたり(たとえば、特許文献2参照)、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた、少なくとも1個が偏芯ロールである複数本のロールに緊張下に接触させたりすることによって行っている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、これら従来の方法は、いずれも、特に、強化繊維束を幅広く拡げて薄い強化繊維シートを得ようとすると、強化繊維束を円柱体や横振動ロール、偏芯ロール等に強く押し当てる必要があり、そのため、強化繊維束を構成している単繊維が切れたり毛羽が発生したりするという問題がある。かかる不都合は、強化繊維束が高弾性率のものである場合や、走行速度を増大させたような場合に特に顕著に現れ、そのような強化繊維シートを用いて得られる一方向性プリプレグは、品位の低いものとなる。また、当然、そのような一方向性プリプレグによっては、均質で特性に優れたFRPは得られない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭56−43435号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平10−292238号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平7−268754号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、強化繊維束の開繊を、より高速で、かつ、単繊維切れや毛羽の発生を防止しながら行うことができる強化繊維束の開繊方法と開繊装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的に走行する強化繊維束をその強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールに緊張下に順次接触させて開繊するに際し、ロール軸方向に振動する横振動ロールを用いて開繊した後、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールを用いてさらに開繊することを特徴とする強化繊維束の開繊方法を提供する。強化繊維シートを得るような場合には、一方向に互いに並行するように引き揃えられた複数本の強化繊維束を開繊する。
【0009】
通常、横振動ロールは周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動させ、縦振動ロールは周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動させる。
【0010】
また、強化繊維束として炭素繊維束を用いる場合には、炭素繊維束を50〜180℃の範囲内の温度に保ちながら開繊するのが好ましい。
【0011】
本発明は、また、上述した目的を達成するために、連続的に供給される強化繊維束を開繊する、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールを有し、かつ、複数本のロールは、ロール軸方向に振動する横振動ロールと、強化繊維束の走行方向に関して横加振ロールよりも下流側に設けた、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールとを含んでいることを特徴とする強化繊維束の開繊装置を提供する。
【0012】
通常、横振動ロールは周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動せしめられ、縦振動ロールは周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動せしめられる。
【0013】
また、横振動ロールや縦振動ロールは、通常、それぞれ複数本設けられるが、隣り合う横振動ロール同士や縦振動ロール同士は、互いに逆位相になるように振動せしめるのが好ましい。
【0014】
さらに、横振動ロールや縦振動ロールには、それらと対をなす自由回転ロールが設けられているのが好ましい。
【0015】
また、強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールよりも上流側には、撚り止めロールが配置されているのが好ましい。
【0016】
上述の横振動ロールや縦振動ロール、自由回転ロール、撚り止めロールは、周方向に等配された、ロール軸方向に延びる凸部を有するラダーロールであるのが好ましい。
【0017】
さらに、強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールの上流側や、横振動ロールおよび縦振動ロールに対向する位置に強化繊維束の加熱手段が設けられているのも好ましい。
【0018】
本発明の開繊方法や開繊装置によれば、薄い強化繊維シートを得ることができ、それにマトリクス樹脂を含浸することで一方向性プリプレグを製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一形態に係る強化繊維束の開繊装置を示すもので、図示しない多数個のパッケージから繰り出される多数本の強化繊維束1、1、・・・は、自由回転する引揃えロール2、2、コーム3を経て一方向に互いに並行するようにシート状に引き揃えられ、導入ロール4に導かれる。コーム3と導入ロール4との間には、強化繊維束1、1、・・・を加熱するヒータ5が設けられている。
【0020】
導入ロール4を通過した強化繊維束1、1、・・・は、次いで開繊手段6に導かれ、開繊、拡幅されて強化繊維シート8となる。
【0021】
開繊手段6は、強化繊維束1、1、・・・の走行方向(図面左方から右方に向かう方向)に沿って設けた、この例では2本の、図示しない加振源によってロール軸方向に振動せしめられる横振動ロール6a、6aを有する。また、強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して横振動ロール6a、6aの後方には、この例では2本の、図示しない加振源によって、強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して上下方向(図面上下方向)に振動せしめられる縦振動ロール6b、6bが設けられている。さらに、横振動ロール6a、6aにはそれらと対をなす自由回転ロール6c、6cが、縦振動ロール6b、6bにはそれらと対をなす自由回転ロール6d、6dが、それぞれ設けられている。また、開繊手段6の下方には、ヒータ7が設けられている。
【0022】
強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して開繊手段6の後方には、4本のパウダブレーキロール9、・・・9が設けられている。
【0023】
さて、多数個のパッケージから繰り出される、多数本の強化繊維束1、1、・・・は、自由回転する引揃えロール2、2、コーム3を経て一方向に互いに並行するようにシート状に引き揃えられ、さらにヒータ5によって予熱された後、導入ロール4を経て開繊手段6に導かれる。
【0024】
開繊手段6に導かれた強化繊維束1、1、・・・は、ヒータ7によって所望の温度に保たれながら、まず、横振動ロール6aおよび自由回転ロール6cによって開繊、拡幅された後、縦振動ロール6bおよび自由回転ロール6dによってさらに開繊、拡幅され、もはや繊維束の体をなさない強化繊維シート8となる。このとき、パウダブレーキロール9、・・・9は、開繊される強化繊維束1、1、・・・の張力を安定させるように作用する。なお、開繊の際の張力は、強化繊維の単繊維1,000本あたり0.2〜1Nの範囲内となるようにするのが好ましい。張力があまり低すぎると開繊作用が低くなり、高すぎると単繊維切れや毛羽を生じやすくなる。
【0025】
上記において、強化繊維束は、たとえば、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束のようなものである。なかでも、本発明は、比較的高弾性率で、単繊維切れや毛羽を生じやすい炭素繊維束を開繊する場合に好適である。炭素繊維束としては、たとえば、ポリアクリロニトリル系繊維やピッチ系繊維等を原料繊維とする、単繊維数1,000〜100,000本のものを用いることができる。なお、本発明は、ただ1本の強化繊維束を開繊、拡幅する場合でも適用することができるが、通常は、少なくとも10本の強化繊維束に対して適用する。
【0026】
強化繊維束の走行速度は、遅すぎると開繊、拡幅の効率が悪くなり、速すぎると開繊、拡幅の幅が小さくなって多くの横振動ロールや縦振動ロールが必要になり、広い設置スペースも必要になってくるので、3〜20m/分程度とするのが好ましい。
【0027】
ヒータ5やヒータ7は、必須のものではない。ただ、強化繊維束が炭素繊維束である場合、炭素繊維束には、通常、サイジング剤が付着せしめられていることから、そのまま開繊するよりも、加熱してサイジング剤を軟化せしめた状態で開繊するほうが高い開繊効果が得られる。そのため、炭素繊維束を開繊する場合には、炭素繊維束をヒータ5で予熱し、ヒータ7で50〜180℃程度の温度に保ちながら開繊するのが好ましい。50℃よりも低い温度ではサイジング剤の軟化が十分でないことがあり、180℃を超えるとサイジング剤が変質したりロール等との摩擦が大きくなって単繊維切れや毛羽を生ずることがある。
【0028】
導入ロール4は、一方向に互いに並行かつシート状に引き揃えられた強化繊維束1、1、・・・をその配列状態を乱さないように開繊手段6に導入するためのものである。特に、強化繊維束に撚りがあると、導入ロールの表面で強化繊維束がロール軸方向に移動し、配列状態が乱れやすい。配列状態が乱れると、得られる強化繊維シートに割れができることがあり、その場合、均質な一方向性プリプレグを得られなくなる。
【0029】
導入ロールとしては、外径が一様な自由回転ロールであってもよいが、ラダーロールを用いるのが好ましい。ラダーロールは、図2に示すように、ロール軸方向に延びるかまぼこ状の凸部10aを周方向に等配してなるもので、強化繊維束1が凸部10aによって把持され、その移動が防止される。凸部10aの高さは、等配個数や強化繊維束の巻付角にもよるが、隣接する凸部10a間で強化繊維束1がロール表面に接触しないような高さとする。なお、等配個数は、図2における凸部10aの配角θが5〜50°、好ましくは10〜40°になるようにするとよい。個数があまり多いと撚りを止める効果が小さくなり、また、あまり少ないと凸部における強化繊維束の接触角が大きくなって強化繊維束に単繊維切れや毛羽ができやすくなるからである。なお、自由回転ロールを用いる場合もそうであるが、ラダーロールの凸部の表面は、平滑すぎると強化繊維束との接触面積が大きくなって、たとえばサイジング剤の転写による単繊維の巻付きや単繊維切れが起こったりするようになり、また、あまり粗いと強化繊維束が傷ついて単繊維切れを生じやすくなるので、粗さが3〜20S程度の梨地仕上げとしておくのが好ましい。
【0030】
強化繊維束は、上述したように、まず、横振動ロール6a、自由回転ロール6cによって開繊、拡幅され、さらに縦振動ロール6b、自由回転ロール6dによって開繊、拡幅される。この開繊、拡幅は、強化繊維束を構成している単繊維の、横振動ロールによるロール軸方向への移動と、縦振動ロールによる、強化繊維束の走行方向に関して上下方向への移動によって行われるが、このとき、横振動ロール6a、縦振動ロール6bと対をなす自由回転ロール6c、6dは、単繊維の移動に対して支点のように作用する。なお、まず、縦振動ロール6b、自由回転ロール6dを用いて開繊、拡幅し、次に横振動ロール6a、自由回転ロール6cを用いて開繊、拡幅することも可能ではあるが、横振動ロール6a、自由回転ロール6cを用いて開繊、拡幅し、次に縦振動ロール6b、自由回転ロール6dを用いて開繊、拡幅する場合にくらべて開繊効果は劣る。なお、自由回転ロール6c、6dは、必須のものではないが、これを設けると、上述したようにそれらが単繊維の移動に対して支点のように作用し、開繊効果が向上するようになる。
【0031】
横振動ロール6aや縦振動ロール6bは、上述の例ではそれぞれ2本設けているが、強化繊維束の種類や太さ、振動の大きさ等にもよるものの、通常、それぞれ1〜5本程度、合わせて2〜10本程度とする。あまり多く設けても開繊効果に大きな変わりはなく、むしろ、設備費が上昇するようになる。また、横振動ロールや縦振動ロールをそれぞれ複数本設ける場合、隣り合う横振動ロール同士、縦振動ロール同士が互いに逆位相になるように振動させると、開繊装置の振動を抑制できるので好ましい。なお、横振動ロール、縦振動ロール、自由回転ロールの本数が多い場合(段数が多い場合)、それらの間に強化繊維束を通しにくくなるので、横振動ロールおよび縦振動ロールか、自由回転ロールか、いずれか一方を昇降できるようにしておくのも好ましい。
【0032】
横振動ロール6aや縦振動ロール6b、自由回転ロール6c、6dは、外径が一様な自由回転ロールであってもよいが、やはり図2に示したようなラダーロールを用いるのが好ましい。
【0033】
横振動ロール6aは、強化繊維束の種類や太さ、強化繊維束の走行速度等にもよるが、周波数1〜20Hz、振幅1〜30mm程度の範囲内で振動させる。通常は、振動数5〜15Hz、振幅5〜20mm程度とする。振動数や振幅があまり小さいと開繊作用が低くなり、また、あまり大きいと強化繊維束の擦過による単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすくなるからである。
【0034】
また、縦振動ロール6bは、これも強化繊維束の種類や太さ、強化繊維束の走行速度等にもよるが、周波数10〜30Hz、振幅1〜5mm程度の範囲内で振動させる。通常は、振動数15〜25Hz、振幅1〜3mm程度とする。横振動ロール6aと同様、振動数や振幅があまり小さいと開繊作用が低くなり、また、あまり大きいと強化繊維束の擦過による単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすくなるからである。
【0035】
さて、開繊によって得られた強化繊維シートは、それを一方向性プリプレグの製造装置に供することで一方向性プリプレグとすることができる。すなわち、たとえば、図3に示すように、図1、図2に示した開繊装置によって得られる強化繊維シート8の上下面に、導入ロール11、11を介して導入される、Bステージのエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のマトリクス樹脂を塗布した離型紙12、12をその樹脂塗布面が強化繊維シート8側を向くように重ね合わせ、ヒータ13で予熱した後、加熱された含浸ロール14、14間に通して離型紙12、12上のマトリクス樹脂を強化繊維シート8に転移、含浸する。すなわち、一方向性プリプレグとする。マトリクス樹脂の転移、含浸後は、引取ロール15、15を経て上側の離型紙12を剥ぎ取り、下側の離型紙12ごとロール状に巻き取り、一方向性プリプレグのロール体16とする。この場合、強化繊維シートを構成する単繊維1,000本あたりの張力を1〜5Nの範囲内とするのが好ましい。張力があまり低すぎると、マトリクス樹脂の転移、含浸の際に単繊維の配列が乱れることがあり、その場合、得られる一方向性プリプレグに割れができることがある。また、高すぎると、単繊維が張力によって元の強化繊維束の形態に戻ろうとして一方向強化繊維シートに割れができることがあり、その場合、やはり得られる一方向性プリプレグに割れができるようになる。また、マトリクス樹脂の含浸性も低下し、マトリクス樹脂の未含浸部分ができることがある。
【0036】
【実施例および比較例】
実施例1:
図1に示した装置を用い、強化繊維束として、450本の、平均単繊維径7μm、単繊維数3,000本の炭素繊維束(東レ株式会社製“トレカ”M40JB−3K)を8m/分の速度で走行させながら開繊、拡幅した。単繊維1,000本あたりの張力は0.6Nに設定した。
【0037】
ヒータ5、ヒータ7としては赤外線ヒータを用い、ヒータ5で炭素繊維束を80℃に予熱し、ヒータ7では炭素繊維束が77℃になるように加熱した。この77℃という温度は、上記炭素繊維束に付着せしめられているサイジング剤の軟化点温度である。
【0038】
導入ロール4としては、図2に示したようなラダーロールを用いた。なお、このラダーロールは、直径が30mm、凸部10aの配角θが45°、凸部10aの高さが1.5mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。
【0039】
また、横振動ロール6a、自由回転ロール6cとしては、それぞれ2本の、図2に示したようなラダーロールを用いた。このラダーロールは、直径が40mm、凸部10aの配角θが30°、凸部10aの高さが2mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。縦振動ロール6b、自由回転ロール6dとしては、それぞれ2本の、図2に示したようなラダーロールを用いた。このラダーロールは、直径が30mm、凸部10aの配角θが22.5°、凸部10aの高さが2mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。そして、横振動ロールは周波数8Hz、振幅10mmで振動させ、縦振動ロールは周波数15Hz、振幅2mmで振動させた。
【0040】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.05mm、目付が50g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約2.5倍の幅に開繊、拡幅されていた。
実施例2:
実施例1において、横振動ロールの周波数を10Hz、振幅を10mmとし、縦振動ロールの周波数を20Hz、振幅を2mmとした。
【0041】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.04mm、目付が40g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約3倍の幅に開繊、拡幅されていた。
実施例3:
実施例1で得られた炭素繊維シートを用い、図3に示した装置を用いて一方向性プリプレグを製造した。炭素繊維シートには、単繊維数1,000本あたり3Nの張力が加わるようにした。
【0042】
また、マトリクス樹脂としては、一液硬化型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製“エピコート”828:50重量%、同社製ビスフェノールA型グリシジルエーテル“エピコート”1001:40重量%、ジシアンジアミド:3重量%および3(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素:7重量%の混合物)を用い、ヒータ13による炭素繊維束の加熱温度は150℃とした。
【0043】
得られた一方向性プリプレグは、厚みが0.07mm、炭素繊維の体積含有率が70%、目付が70g/m2であり、割れ等は認められなかった。
実施例4:
実施例1において、炭素繊維束の走行速度を0.3m/分、横振動ロールの周波数を15Hz、振幅を15mmとした。
【0044】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.03mm、目付が30g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約4.4倍の幅に開繊、拡幅されていた。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグは、厚みが0.05mm、炭素繊維の体積含有率が60%、目付が50g/m2であり、割れ等は認められなかった
比較例1:
実施例1において、それぞれ2本の縦振動ロール6bおよび自由回転ロール6dを除去した。この方法は、上述した特開平10−292238号公報(特許文献2)に記載される方法に対応するものである。
【0045】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.08mm、目付が80g/m2で、開繊の程度は開繊前の炭素繊維束の幅からみて約1.3倍であった。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグには、連続した割れが認められた。
比較例2:
実施例1において、それぞれ2本の横振動ロール6aおよび自由回転ロール6cを除去した。
【0046】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.07mm、目付が70g/m2で、開繊の程度は開繊前の炭素繊維束の幅からみて約1.7倍であった。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグには、連続した割れが認められた。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、ロール軸方向に振動する横振動ロールと、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールとを組み合わせ、まず横振動ロールを用いて開繊した後、縦振動ロールを用いてさらに開繊するので、実施例と比較例との対比からも明らかなように、強化繊維束の開繊、拡幅を、より高速で、かつ、単繊維切れや毛羽の発生を防止しながら行うことができる。そのため、本発明によって得られる強化繊維シートを用いれば、均質で品位に優れた一方向性プリプレグを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態に係る開繊装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した開繊装置で用いる導入ロール、横振動ロール、縦振動ロール、自由回転ロールの一例を示す概略正面図である。
【図3】本発明が好ましく適用される一方向性プリプレグの製造装置の概略正面図である。
【符号の説明】
1:強化繊維束
2:引揃えロール
3:コーム
4:導入ロール
5:ヒータ
6:開繊手段
6a:横振動ロール
6b:縦振動ロール
6c:自由回転ロール
6d:自由回転ロール
7:ヒータ
8:強化繊維シート
9:パウダブレーキロール
10:ラダーロール
10a:凸部
11:導入ロール
12:離型紙
13:ヒータ
14:含浸ロール
15:引取りロール
16:一方向性プリプレグのロール体
【発明の属する技術分野】
本発明は、一方向性プリプレグを製造するような場合に用いる強化繊維束の開繊方法および開繊装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、FRP(繊維強化プラスチック)の成形に一方向性プリプレグが用いられる。そのような一方向性プリプレグは、たとえば、複数本の、炭素繊維束等の強化繊維束を一方向に並行するように引き揃え、各強化繊維束を開繊、拡幅して強化繊維シートとした後、その強化繊維シートに、Bステージのエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂を塗布した離型紙をその樹脂塗布面において重ね合わせ、離型紙上のマトリクス樹脂を強化繊維シートに転移、含浸することによって製造される。いわゆるホットメルト法と呼ばれる方法であるが、このとき強化繊維束の開繊の程度に斑があると、得られる一方向性プリプレグに割れができたり、割れができないまでも強化繊維の目付が不均一になったりする。その場合、当然、成形されるFRPは特性の不均一なものとなる。すなわち、強化繊維束の開繊の良否は、一方向性プリプレグの特性、ひいてはFRPの特性を左右する。
【0003】
さて、そのような一方向性プリプレグの製造における強化繊維束の開繊は、従来、連続的に走行する、一方向に並行するように引き揃えられた強化繊維束を、柱軸方向に振動する円柱体に緊張下に接触させたり(たとえば、特許文献1参照)、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた、ロール軸方向に振動する複数本の横振動ロールに緊張下に接触させたり(たとえば、特許文献2参照)、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた、少なくとも1個が偏芯ロールである複数本のロールに緊張下に接触させたりすることによって行っている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、これら従来の方法は、いずれも、特に、強化繊維束を幅広く拡げて薄い強化繊維シートを得ようとすると、強化繊維束を円柱体や横振動ロール、偏芯ロール等に強く押し当てる必要があり、そのため、強化繊維束を構成している単繊維が切れたり毛羽が発生したりするという問題がある。かかる不都合は、強化繊維束が高弾性率のものである場合や、走行速度を増大させたような場合に特に顕著に現れ、そのような強化繊維シートを用いて得られる一方向性プリプレグは、品位の低いものとなる。また、当然、そのような一方向性プリプレグによっては、均質で特性に優れたFRPは得られない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭56−43435号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平10−292238号公報
【0006】
【特許文献3】
特開平7−268754号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の技術の上述した問題点を解決し、強化繊維束の開繊を、より高速で、かつ、単繊維切れや毛羽の発生を防止しながら行うことができる強化繊維束の開繊方法と開繊装置を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的に走行する強化繊維束をその強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールに緊張下に順次接触させて開繊するに際し、ロール軸方向に振動する横振動ロールを用いて開繊した後、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールを用いてさらに開繊することを特徴とする強化繊維束の開繊方法を提供する。強化繊維シートを得るような場合には、一方向に互いに並行するように引き揃えられた複数本の強化繊維束を開繊する。
【0009】
通常、横振動ロールは周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動させ、縦振動ロールは周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動させる。
【0010】
また、強化繊維束として炭素繊維束を用いる場合には、炭素繊維束を50〜180℃の範囲内の温度に保ちながら開繊するのが好ましい。
【0011】
本発明は、また、上述した目的を達成するために、連続的に供給される強化繊維束を開繊する、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールを有し、かつ、複数本のロールは、ロール軸方向に振動する横振動ロールと、強化繊維束の走行方向に関して横加振ロールよりも下流側に設けた、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールとを含んでいることを特徴とする強化繊維束の開繊装置を提供する。
【0012】
通常、横振動ロールは周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動せしめられ、縦振動ロールは周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動せしめられる。
【0013】
また、横振動ロールや縦振動ロールは、通常、それぞれ複数本設けられるが、隣り合う横振動ロール同士や縦振動ロール同士は、互いに逆位相になるように振動せしめるのが好ましい。
【0014】
さらに、横振動ロールや縦振動ロールには、それらと対をなす自由回転ロールが設けられているのが好ましい。
【0015】
また、強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールよりも上流側には、撚り止めロールが配置されているのが好ましい。
【0016】
上述の横振動ロールや縦振動ロール、自由回転ロール、撚り止めロールは、周方向に等配された、ロール軸方向に延びる凸部を有するラダーロールであるのが好ましい。
【0017】
さらに、強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールの上流側や、横振動ロールおよび縦振動ロールに対向する位置に強化繊維束の加熱手段が設けられているのも好ましい。
【0018】
本発明の開繊方法や開繊装置によれば、薄い強化繊維シートを得ることができ、それにマトリクス樹脂を含浸することで一方向性プリプレグを製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一形態に係る強化繊維束の開繊装置を示すもので、図示しない多数個のパッケージから繰り出される多数本の強化繊維束1、1、・・・は、自由回転する引揃えロール2、2、コーム3を経て一方向に互いに並行するようにシート状に引き揃えられ、導入ロール4に導かれる。コーム3と導入ロール4との間には、強化繊維束1、1、・・・を加熱するヒータ5が設けられている。
【0020】
導入ロール4を通過した強化繊維束1、1、・・・は、次いで開繊手段6に導かれ、開繊、拡幅されて強化繊維シート8となる。
【0021】
開繊手段6は、強化繊維束1、1、・・・の走行方向(図面左方から右方に向かう方向)に沿って設けた、この例では2本の、図示しない加振源によってロール軸方向に振動せしめられる横振動ロール6a、6aを有する。また、強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して横振動ロール6a、6aの後方には、この例では2本の、図示しない加振源によって、強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して上下方向(図面上下方向)に振動せしめられる縦振動ロール6b、6bが設けられている。さらに、横振動ロール6a、6aにはそれらと対をなす自由回転ロール6c、6cが、縦振動ロール6b、6bにはそれらと対をなす自由回転ロール6d、6dが、それぞれ設けられている。また、開繊手段6の下方には、ヒータ7が設けられている。
【0022】
強化繊維束1、1、・・・の走行方向に関して開繊手段6の後方には、4本のパウダブレーキロール9、・・・9が設けられている。
【0023】
さて、多数個のパッケージから繰り出される、多数本の強化繊維束1、1、・・・は、自由回転する引揃えロール2、2、コーム3を経て一方向に互いに並行するようにシート状に引き揃えられ、さらにヒータ5によって予熱された後、導入ロール4を経て開繊手段6に導かれる。
【0024】
開繊手段6に導かれた強化繊維束1、1、・・・は、ヒータ7によって所望の温度に保たれながら、まず、横振動ロール6aおよび自由回転ロール6cによって開繊、拡幅された後、縦振動ロール6bおよび自由回転ロール6dによってさらに開繊、拡幅され、もはや繊維束の体をなさない強化繊維シート8となる。このとき、パウダブレーキロール9、・・・9は、開繊される強化繊維束1、1、・・・の張力を安定させるように作用する。なお、開繊の際の張力は、強化繊維の単繊維1,000本あたり0.2〜1Nの範囲内となるようにするのが好ましい。張力があまり低すぎると開繊作用が低くなり、高すぎると単繊維切れや毛羽を生じやすくなる。
【0025】
上記において、強化繊維束は、たとえば、炭素繊維束、ガラス繊維束、アラミド繊維束のようなものである。なかでも、本発明は、比較的高弾性率で、単繊維切れや毛羽を生じやすい炭素繊維束を開繊する場合に好適である。炭素繊維束としては、たとえば、ポリアクリロニトリル系繊維やピッチ系繊維等を原料繊維とする、単繊維数1,000〜100,000本のものを用いることができる。なお、本発明は、ただ1本の強化繊維束を開繊、拡幅する場合でも適用することができるが、通常は、少なくとも10本の強化繊維束に対して適用する。
【0026】
強化繊維束の走行速度は、遅すぎると開繊、拡幅の効率が悪くなり、速すぎると開繊、拡幅の幅が小さくなって多くの横振動ロールや縦振動ロールが必要になり、広い設置スペースも必要になってくるので、3〜20m/分程度とするのが好ましい。
【0027】
ヒータ5やヒータ7は、必須のものではない。ただ、強化繊維束が炭素繊維束である場合、炭素繊維束には、通常、サイジング剤が付着せしめられていることから、そのまま開繊するよりも、加熱してサイジング剤を軟化せしめた状態で開繊するほうが高い開繊効果が得られる。そのため、炭素繊維束を開繊する場合には、炭素繊維束をヒータ5で予熱し、ヒータ7で50〜180℃程度の温度に保ちながら開繊するのが好ましい。50℃よりも低い温度ではサイジング剤の軟化が十分でないことがあり、180℃を超えるとサイジング剤が変質したりロール等との摩擦が大きくなって単繊維切れや毛羽を生ずることがある。
【0028】
導入ロール4は、一方向に互いに並行かつシート状に引き揃えられた強化繊維束1、1、・・・をその配列状態を乱さないように開繊手段6に導入するためのものである。特に、強化繊維束に撚りがあると、導入ロールの表面で強化繊維束がロール軸方向に移動し、配列状態が乱れやすい。配列状態が乱れると、得られる強化繊維シートに割れができることがあり、その場合、均質な一方向性プリプレグを得られなくなる。
【0029】
導入ロールとしては、外径が一様な自由回転ロールであってもよいが、ラダーロールを用いるのが好ましい。ラダーロールは、図2に示すように、ロール軸方向に延びるかまぼこ状の凸部10aを周方向に等配してなるもので、強化繊維束1が凸部10aによって把持され、その移動が防止される。凸部10aの高さは、等配個数や強化繊維束の巻付角にもよるが、隣接する凸部10a間で強化繊維束1がロール表面に接触しないような高さとする。なお、等配個数は、図2における凸部10aの配角θが5〜50°、好ましくは10〜40°になるようにするとよい。個数があまり多いと撚りを止める効果が小さくなり、また、あまり少ないと凸部における強化繊維束の接触角が大きくなって強化繊維束に単繊維切れや毛羽ができやすくなるからである。なお、自由回転ロールを用いる場合もそうであるが、ラダーロールの凸部の表面は、平滑すぎると強化繊維束との接触面積が大きくなって、たとえばサイジング剤の転写による単繊維の巻付きや単繊維切れが起こったりするようになり、また、あまり粗いと強化繊維束が傷ついて単繊維切れを生じやすくなるので、粗さが3〜20S程度の梨地仕上げとしておくのが好ましい。
【0030】
強化繊維束は、上述したように、まず、横振動ロール6a、自由回転ロール6cによって開繊、拡幅され、さらに縦振動ロール6b、自由回転ロール6dによって開繊、拡幅される。この開繊、拡幅は、強化繊維束を構成している単繊維の、横振動ロールによるロール軸方向への移動と、縦振動ロールによる、強化繊維束の走行方向に関して上下方向への移動によって行われるが、このとき、横振動ロール6a、縦振動ロール6bと対をなす自由回転ロール6c、6dは、単繊維の移動に対して支点のように作用する。なお、まず、縦振動ロール6b、自由回転ロール6dを用いて開繊、拡幅し、次に横振動ロール6a、自由回転ロール6cを用いて開繊、拡幅することも可能ではあるが、横振動ロール6a、自由回転ロール6cを用いて開繊、拡幅し、次に縦振動ロール6b、自由回転ロール6dを用いて開繊、拡幅する場合にくらべて開繊効果は劣る。なお、自由回転ロール6c、6dは、必須のものではないが、これを設けると、上述したようにそれらが単繊維の移動に対して支点のように作用し、開繊効果が向上するようになる。
【0031】
横振動ロール6aや縦振動ロール6bは、上述の例ではそれぞれ2本設けているが、強化繊維束の種類や太さ、振動の大きさ等にもよるものの、通常、それぞれ1〜5本程度、合わせて2〜10本程度とする。あまり多く設けても開繊効果に大きな変わりはなく、むしろ、設備費が上昇するようになる。また、横振動ロールや縦振動ロールをそれぞれ複数本設ける場合、隣り合う横振動ロール同士、縦振動ロール同士が互いに逆位相になるように振動させると、開繊装置の振動を抑制できるので好ましい。なお、横振動ロール、縦振動ロール、自由回転ロールの本数が多い場合(段数が多い場合)、それらの間に強化繊維束を通しにくくなるので、横振動ロールおよび縦振動ロールか、自由回転ロールか、いずれか一方を昇降できるようにしておくのも好ましい。
【0032】
横振動ロール6aや縦振動ロール6b、自由回転ロール6c、6dは、外径が一様な自由回転ロールであってもよいが、やはり図2に示したようなラダーロールを用いるのが好ましい。
【0033】
横振動ロール6aは、強化繊維束の種類や太さ、強化繊維束の走行速度等にもよるが、周波数1〜20Hz、振幅1〜30mm程度の範囲内で振動させる。通常は、振動数5〜15Hz、振幅5〜20mm程度とする。振動数や振幅があまり小さいと開繊作用が低くなり、また、あまり大きいと強化繊維束の擦過による単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすくなるからである。
【0034】
また、縦振動ロール6bは、これも強化繊維束の種類や太さ、強化繊維束の走行速度等にもよるが、周波数10〜30Hz、振幅1〜5mm程度の範囲内で振動させる。通常は、振動数15〜25Hz、振幅1〜3mm程度とする。横振動ロール6aと同様、振動数や振幅があまり小さいと開繊作用が低くなり、また、あまり大きいと強化繊維束の擦過による単繊維切れや毛羽立ちが起こりやすくなるからである。
【0035】
さて、開繊によって得られた強化繊維シートは、それを一方向性プリプレグの製造装置に供することで一方向性プリプレグとすることができる。すなわち、たとえば、図3に示すように、図1、図2に示した開繊装置によって得られる強化繊維シート8の上下面に、導入ロール11、11を介して導入される、Bステージのエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のマトリクス樹脂を塗布した離型紙12、12をその樹脂塗布面が強化繊維シート8側を向くように重ね合わせ、ヒータ13で予熱した後、加熱された含浸ロール14、14間に通して離型紙12、12上のマトリクス樹脂を強化繊維シート8に転移、含浸する。すなわち、一方向性プリプレグとする。マトリクス樹脂の転移、含浸後は、引取ロール15、15を経て上側の離型紙12を剥ぎ取り、下側の離型紙12ごとロール状に巻き取り、一方向性プリプレグのロール体16とする。この場合、強化繊維シートを構成する単繊維1,000本あたりの張力を1〜5Nの範囲内とするのが好ましい。張力があまり低すぎると、マトリクス樹脂の転移、含浸の際に単繊維の配列が乱れることがあり、その場合、得られる一方向性プリプレグに割れができることがある。また、高すぎると、単繊維が張力によって元の強化繊維束の形態に戻ろうとして一方向強化繊維シートに割れができることがあり、その場合、やはり得られる一方向性プリプレグに割れができるようになる。また、マトリクス樹脂の含浸性も低下し、マトリクス樹脂の未含浸部分ができることがある。
【0036】
【実施例および比較例】
実施例1:
図1に示した装置を用い、強化繊維束として、450本の、平均単繊維径7μm、単繊維数3,000本の炭素繊維束(東レ株式会社製“トレカ”M40JB−3K)を8m/分の速度で走行させながら開繊、拡幅した。単繊維1,000本あたりの張力は0.6Nに設定した。
【0037】
ヒータ5、ヒータ7としては赤外線ヒータを用い、ヒータ5で炭素繊維束を80℃に予熱し、ヒータ7では炭素繊維束が77℃になるように加熱した。この77℃という温度は、上記炭素繊維束に付着せしめられているサイジング剤の軟化点温度である。
【0038】
導入ロール4としては、図2に示したようなラダーロールを用いた。なお、このラダーロールは、直径が30mm、凸部10aの配角θが45°、凸部10aの高さが1.5mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。
【0039】
また、横振動ロール6a、自由回転ロール6cとしては、それぞれ2本の、図2に示したようなラダーロールを用いた。このラダーロールは、直径が40mm、凸部10aの配角θが30°、凸部10aの高さが2mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。縦振動ロール6b、自由回転ロール6dとしては、それぞれ2本の、図2に示したようなラダーロールを用いた。このラダーロールは、直径が30mm、凸部10aの配角θが22.5°、凸部10aの高さが2mmであり、凸部10aの表面は粗さ10Sの梨地表面に加工されている。そして、横振動ロールは周波数8Hz、振幅10mmで振動させ、縦振動ロールは周波数15Hz、振幅2mmで振動させた。
【0040】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.05mm、目付が50g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約2.5倍の幅に開繊、拡幅されていた。
実施例2:
実施例1において、横振動ロールの周波数を10Hz、振幅を10mmとし、縦振動ロールの周波数を20Hz、振幅を2mmとした。
【0041】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.04mm、目付が40g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約3倍の幅に開繊、拡幅されていた。
実施例3:
実施例1で得られた炭素繊維シートを用い、図3に示した装置を用いて一方向性プリプレグを製造した。炭素繊維シートには、単繊維数1,000本あたり3Nの張力が加わるようにした。
【0042】
また、マトリクス樹脂としては、一液硬化型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製“エピコート”828:50重量%、同社製ビスフェノールA型グリシジルエーテル“エピコート”1001:40重量%、ジシアンジアミド:3重量%および3(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素:7重量%の混合物)を用い、ヒータ13による炭素繊維束の加熱温度は150℃とした。
【0043】
得られた一方向性プリプレグは、厚みが0.07mm、炭素繊維の体積含有率が70%、目付が70g/m2であり、割れ等は認められなかった。
実施例4:
実施例1において、炭素繊維束の走行速度を0.3m/分、横振動ロールの周波数を15Hz、振幅を15mmとした。
【0044】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.03mm、目付が30g/m2で、元の炭素繊維束の形態は全くなく、開繊前の炭素繊維束の幅からみて約4.4倍の幅に開繊、拡幅されていた。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグは、厚みが0.05mm、炭素繊維の体積含有率が60%、目付が50g/m2であり、割れ等は認められなかった
比較例1:
実施例1において、それぞれ2本の縦振動ロール6bおよび自由回転ロール6dを除去した。この方法は、上述した特開平10−292238号公報(特許文献2)に記載される方法に対応するものである。
【0045】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.08mm、目付が80g/m2で、開繊の程度は開繊前の炭素繊維束の幅からみて約1.3倍であった。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグには、連続した割れが認められた。
比較例2:
実施例1において、それぞれ2本の横振動ロール6aおよび自由回転ロール6cを除去した。
【0046】
得られた炭素繊維シートは、厚みが0.07mm、目付が70g/m2で、開繊の程度は開繊前の炭素繊維束の幅からみて約1.7倍であった。また、実施例3と同様にして得た一方向性プリプレグには、連続した割れが認められた。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、ロール軸方向に振動する横振動ロールと、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールとを組み合わせ、まず横振動ロールを用いて開繊した後、縦振動ロールを用いてさらに開繊するので、実施例と比較例との対比からも明らかなように、強化繊維束の開繊、拡幅を、より高速で、かつ、単繊維切れや毛羽の発生を防止しながら行うことができる。そのため、本発明によって得られる強化繊維シートを用いれば、均質で品位に優れた一方向性プリプレグを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一形態に係る開繊装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した開繊装置で用いる導入ロール、横振動ロール、縦振動ロール、自由回転ロールの一例を示す概略正面図である。
【図3】本発明が好ましく適用される一方向性プリプレグの製造装置の概略正面図である。
【符号の説明】
1:強化繊維束
2:引揃えロール
3:コーム
4:導入ロール
5:ヒータ
6:開繊手段
6a:横振動ロール
6b:縦振動ロール
6c:自由回転ロール
6d:自由回転ロール
7:ヒータ
8:強化繊維シート
9:パウダブレーキロール
10:ラダーロール
10a:凸部
11:導入ロール
12:離型紙
13:ヒータ
14:含浸ロール
15:引取りロール
16:一方向性プリプレグのロール体
Claims (20)
- 連続的に走行する強化繊維束をその強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールに緊張下に順次接触させて開繊するに際し、ロール軸方向に振動する横振動ロールを用いて開繊した後、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールを用いてさらに開繊することを特徴とする強化繊維束の開繊方法。
- 一方向に互いに並行するように引き揃えられた複数本の強化繊維束を開繊する、請求項1に記載の強化繊維束の開繊方法。
- 横振動ロールを、周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動させる、請求項1または2に記載の強化繊維束の開繊方法。
- 縦振動ロールを、周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動させる、請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維束の開繊方法。
- 強化繊維束として炭素繊維束を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の強化繊維束の開繊方法。
- 炭素繊維束を50〜180℃の範囲内の温度に保ちながら開繊する、請求項5に記載の強化繊維束の開繊方法。
- 連続的に供給される強化繊維束を開繊する、強化繊維束の走行方向に沿って多段に設けた複数本のロールを有し、かつ、複数本のロールは、ロール軸方向に振動する横振動ロールと、強化繊維束の走行方向に関して横加振ロールよりも下流側に設けた、強化繊維束の走行方向に関して上下方向に振動する縦振動ロールとを含んでいることを特徴とする強化繊維束の開繊装置。
- 横振動ロールが、周波数1〜20Hz、振幅1〜30mmの範囲内で振動せしめられる、請求項7に記載の強化繊維束の開繊装置。
- 縦振動ロールが、周波数10〜30Hz、振幅1〜5mmの範囲内で振動せしめられる、請求項7または8に記載の強化繊維束の開繊装置。
- 複数本の横振動ロールおよび縦振動ロールを含み、かつ、隣り合う横振動ロール同士および/または縦振動ロール同士は互いに逆位相になるように振動せしめられる、請求項7〜9のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 横振動ロールおよび/または縦振動ロールが、周方向に等配された、ロール軸方向に延びる凸部を有するラダーロールである、請求項7〜10のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 横振動ロールおよび/または縦振動ロールと対をなす自由回転ロールが設けられている、請求項7〜11のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 自由回転ロールが、周方向に等配された、ロール軸方向に延びる凸部を有するラダーロールである、請求項12に記載の強化繊維束の開繊装置。
- 強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールよりも上流側に撚り止めロールが配置されている、請求項7〜13のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 撚り止めロールが、周方向に等配された、ロール軸方向に延びる凸部を有するラダーロールである、請求項14に記載の強化繊維束の開繊装置。
- 強化繊維束の走行方向に関して横振動ロールの上流側に強化繊維束の加熱手段が配置されている、請求項7〜15のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 横振動ロールおよび縦振動ロールに対向して強化繊維束の加熱手段が設けられている、請求項7〜16のいずれかに記載の強化繊維束の開繊装置。
- 請求項1〜6の何れかに記載の方法または請求項7〜17のいずれかに記載の装置によって製造された強化繊維シート。
- 請求項18に記載の強化繊維シートにマトリクス樹脂を含浸することを特徴とする一方向性プリプレグの製造方法。
- 請求項19に記載の方法によって製造された一方向性プリプレグ。
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