JP4015128B2 - 充電率推定方法、充電率推定装置、電池システム及び車両用電池システム - Google Patents

充電率推定方法、充電率推定装置、電池システム及び車両用電池システム Download PDF

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Description

本発明は、負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定方法及び充電率推定装置の技術分野に関するものである。
従来から、自動車等に搭載される鉛蓄電池等の二次電池に関し、残存する充電率を正確に知ることが要請されている。一般に、二次電池においては充電率と開回路電圧に相関があるため、開回路電圧を求めることにより充電率を推定することができる。しかし、二次電池の開回路電圧は充電又は放電を行っていない状態で行う必要があるとともに、充電又は放電の終了後に開回路電圧が安定するまでには長い時間を要する。そのため、所定の条件下で二次電池の開回路電圧を短時間内に測定し、開回路電圧の時間特性を近似する関数に基づき開回路電圧の収束値を求める方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特開平7−98367 特開2002−234408 特開2003−75518
上記従来の方法で二次電池の開回路電圧の収束値を求める場合、その精度は近似計算に用いる関数の精度に依存する。例えば、多項式関数や対数関数などの時間特性を持つ関数に基づき開回路電圧の収束値を計算する方法が一般的である。しかし、これらの関数は、二次電池の開回路電圧の時間特性を高い精度で近似することは困難であり、求めた開回路電圧の収束値の誤差が大きくなってしまう。よって、上記従来の方法により二次電池の充電率を推定する場合、近似計算に用いる関数の制約から高い精度を確保することは難しく、正確な充電率を推定し得ないことが問題となる。
そこで、本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、二次電池の開回路電圧を高い精度で近似して短時間内に開回路電圧の収束値を求め、二次電池の充電率を正確に推定することができる充電率推定方法等を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に記載の充電率推定方法は、負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定方法であって、充放電終了後の所定時間内に前記二次電池の電圧を測定し、時間軸上で複数の電圧測定値を取得し、前記複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、少なくとも前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定することを特徴とする。
この発明によれば、二次電池の充放電終了後の所定時間内に時間軸上で複数の電圧測定値を取得し、それによって逐次計算を行い二次電池の開回路電圧の収束値を求める。このとき、二次電池の開回路電圧の時間特性を近似するために4次以上の指数減衰関数を用いたので、多項式関数や対数関数を用いる場合に比べて格段に近似の精度を向上させることができる。そして、求めた開回路電圧の収束値に基づき二次電池の充電率を推定するようにしたので、開回路電圧の時間特性の精度を反映して正確な充電率の推定を行うことができる。
請求項に記載の充電率推定方法は、負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定方法であって、
充放電終了後の所定時間内に前記二次電池の電圧を測定し、時間軸上で複数の電圧測定値を取得し、前記複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、
少なくとも前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求める際に、
前記複数の電圧測定値を取得するタイミングに応じて、前記4次以上の指数減衰関数に含まれる所定の項を除外して前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、
前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定する
ことを特徴とする。
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、演算精度やシステムの制約に応じて臨機応変に指数減衰関数の次数を減らすことができ、演算量の削減を図ることができる。
請求項に記載の充電率推定方法は、請求項1に記載の充電率推定方法において、前記指数減衰関数として時間Tに対し、
Figure 0004015128
により表される関数F(T)を用い、9個の係数A1〜A9を決定することを特徴とする。
この発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、既存の逐次計算手法によって、関数F(T)に含まれる9個の係数A1〜A9を決定することにより、比較的少ない計算量で確実に開回路電圧の収束値を求めることができる。
請求項に記載の充電率推定方法は、請求項に記載の充電率推定方法において、前記複数の電圧測定値を第1のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換え、前記複数の電圧測定値を第2のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換え、前記複数の電圧測定値を第3のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換えて、それぞれ前記二次電池の開回路電圧の収束値を求めることを特徴とする。
この発明によれば、請求項に記載の発明の作用に加えて、指数減衰関数を用いた演算時に、指数減数関数の次数を電圧測定タイミングに応じて順次減らすことができ、必要な演算精度と演算量のバランスを考慮して充電率の推定演算を最適化することができる。
本発明に記載の充電率推定装置は、負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定装置であって、前記二次電池の電圧を測定する電圧センサと、前記充電率を推定するための演算を実行制御する制御部と、前記電圧センサから出力される電圧値と、前記制御部による演算処理に必要なデータを記憶する記憶部とを備え、前記制御部は、充放電終了後の所定時間内に前記電圧センサの出力を読み取り、時間軸上で複数の電圧測定値を取得して前記記憶部に格納し、前記記憶部から読み出した複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定することにより前記演算を実行制御することを特徴とする。
請求項に記載の充電率推定装置は、負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定装置であって、
前記二次電池の電圧を測定する電圧センサと、
前記充電率を推定するための演算を実行制御する制御部と、
前記電圧センサから出力される電圧値と、前記制御部による演算処理に必要なデータを記憶する記憶部と、を備え、
前記制御部は、充放電終了後の所定時間内に前記電圧センサの出力を読み取り、時間軸上で複数の電圧測定値を取得して前記記憶部に格納し、前記記憶部から読み出した複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求める際に、時間軸上で前記複数の電圧測定値を取得するタイミングに応じて、前記4次以上の指数減衰関数に含まれる所定の項を除外して前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、
前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定することにより前記演算を実行制御することを特徴とする。
請求項に記載の充電率推定装置は、請求項に記載の充電率推定装置において、前記制御部は、前記指数減衰関数として時間Tに対し、
Figure 0004015128
により表される関数F(T)を用い、9個の係数A1〜A9を決定することを特徴とする。
請求項に記載の充電率測定装置は、請求項に記載の充電率推定装置において、前記制御部は、前記複数の電圧測定値を第1のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換え、前記複数の電圧測定値を第2のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換え、前記複数の電圧測定値を第3のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
Figure 0004015128
に置き換えて、それぞれ前記二次電池の開回路電圧の収束値を求めることを特徴とする。
これら請求項に記載の発明によれば、上述の発明を適用した装置を構成し、比較的簡単な制御によって二次電池が搭載された装置の信頼性を向上させることができる。
請求項に記載の電池システムは、請求項から請求項のいずれかに記載の充電率推定装置を備えている。
この発明によれば、上述の充電率推定装置を備えた電池システムを構成し、信頼性が高く使い勝手に優れた電池システムを多様な分野において実現することができる。
請求項に記載の車両用電池システムは、請求項から請求項のいずれかに記載の充電率推定装置を備えるとともに、前記二次電池は、車両に搭載される負荷に電力を供給する車両用二次電池であることを特徴とする。
この発明によれば、上述の電池システムを車両用途に適用し、車両に搭載される負荷に電力を供給する車両用二次電池の充電率を推定するようにしたので、信頼性が高く使い勝手の良好な車両用電池システムを実現することができる。
以上説明したように本発明によれば、二次電池の開回路電圧の時間特性を4次以上の指数減衰関数で近似するようにしたので、短時間内に開回路電圧の収束値を求め、二次電池の充電率を正確に推定することが可能な充電率推定方法等を提供することできる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、自動車等の車両に搭載される二次電池の充電率を推定する機能を備えた車両用電池システムに対して本発明を適用する場合を説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用電池システムの概略の構成を示すブロック図である。図1においては、二次電池10と、充電回路11と、電圧センサ12と、制御部13と、記憶部14とを含んで車両用電池システムが構成され、二次電池10から車両のモータ等の負荷20に電力を供給する構成になっている。
図1の構成において、車両に搭載される負荷20に電力を供給するための二次電池10としては、例えば、車両用の鉛蓄電池が用いられる。充電回路11は、制御部13により充電動作を指示されたとき、所定の充電電量を供給して二次電池10を充電する。電圧センサ11は、二次電池10の両端の電圧を検出して、制御部13に電圧値を送出する。
また、制御部13は、CPU等により構成され、車両用電池システム全体の動作を制御するとともに、所定のタイミングで後述の充電率推定のための演算処理を実行し、求めた充電率を車両の制御装置等に送出する。そして、制御部13に接続された記憶部14は、制御プログラム等の各種プログラムを予め記憶するROMや、制御部13による処理に必要なデータを一時的に記憶するRAMなどを含んでいる。
次に、本実施形態に係る車両用電池システムにおいて、二次電池10の充電率の推定原理について説明する。上述したように、二次電池10の充電率は、二次電池10の開回路電圧と強い相関関係があるため、二次電池10の充電率を推定するには開回路電圧を求めればよい。しかし、二次電池10は、多くの場合、絶えず充放電が繰り返され、二次電圧10の電圧はほとんどの場合、分極を含んでいる。正確な二次電池10の充電率を推定するためには、分極の無い二次電池10の電圧の収束値を知る必要があるが、時間経過により分極が消えるまでには、十数時間から数日という極めて長い時間を要する。そのため、二次電池10が安定した状態の開回路電圧を実際に測定するのは困難であるため、本実施形態においては、開回路電圧の時間的な変動を高い精度で近似し得る関数を用い、逐次計算によって前記関数の係数を決定し、少なくとも決定された係数に基づいて短時間で開回路電圧の収束値を推定する。
本実施形態においては、二次電池10の開回路電圧の時間特性を近似するための関数として、4次以上の指数減衰関数を想定している。(1)式は、n次の指数減衰関数を一般的に表現する数式である。
Figure 0004015128
ただし、a1、a2、…an、b1、b2、…bn、c:係数
(1)式において、入力Xを経過時間とし、出力Yを開回路電圧とし、上記各係数を決定することにより、二次電池10の任意の時点における開回路電圧を高精度に近似することができる。
ここで、本実施形態において、後述するように(1)式に基づき開回路電圧を近似する場合、少なくともnを4以上に設定すれば十分に精度を確保できることが実験的に確認されている。そこで、以下では(1)式でn=4とした場合の4次の指数減衰関数を用いることを前提として説明を行う。
図2は、二次電池10の充電終了後60分間における開回路電圧の時間特性を示す図であり、4次の指数減衰関数を用いて開回路電圧を近似する場合の具体例を示す図である。図2においては、比較のために従来の方法として対数関数を用いる場合を示すとともに、実際に測定した二次電池10の開放電圧の実測値をプロットしている。ここで、図2における4次の指数減衰関数については、充電終了後の10分間の実測値を用いて各係数を逐次計算により求めることにより、次の(2)式を用いて計算を行った。
Figure 0004015128
また、図2における従来の対数関数については、同様の条件下で最適な係数を決定した上で、次の(3)式を用いて計算を行った。
Figure 0004015128
図2に示すように、従来の対数関数により求めた開回路電圧は、実測値のプロットと誤差があるのに対し、本実施形態の4次の指数減衰関数により求めた開回路電圧は、ほぼ実測値のプロットに一致していることがわかる。図2に示すように、時間が経過するに従って従来の対数関数の場合の誤差は大きくなっていき、二次電池10の電圧が収束する程度の時間になると、かなりの大きさになる。そして、従来の対数関数と、本実施形態の4次の指数減衰関数について、それぞれ求めた開回路電圧と実測値との相関係数Rを算出した。その結果、従来の対数関数の場合は、R=0.9865が得られたのに対し、本実施形態の4次の指数減衰関数の場合は、R=0.99998が得られ、格段に精度が向上したことが確認された。このように、従来の対数関数に比べ、本実施形態の4次の指数減衰は正確に開回路電圧を近似することができるため、充電率の推定精度を大きく向上させることができる。
次に、上記の指数減数関数により開回路電圧を近似する場合の次数と精度の関係について図3を用いて説明する。上記(1)式で示されるn次の指数減衰関数において、n=1〜5の範囲で変化させ、充電後10分間の二次電池10の電圧データにより、それぞれ適切な係数を定めた上で開回路電圧を算出した。そして、それぞれの次数に対応する経過時間7日後の開回路電圧の誤差を計算し、図3に示すように各誤差をプロットした。
図3からわかるように、(1)式の指数減衰関数の次数が1次、2次、3次の場合は、比較的大きな誤差となるが、4次、5次では十分に誤差が小さくなる。よって、(1)式の指数減衰関数の次数が少なくとも4次以上あれば、十分な精度を確保できる。一方、後述するように指数減衰関数を用いて逐次計算を実行する場合、できるだけ計算量を抑える必要があるので、本実施形態においては精度と計算量のバランスを考慮して4次の指数減数関数を用いるものとする。
次に、本実施形態に係る車両用電池システムにおいて実行される二次電池の充電率推定に関し、具体的な演算処理の流れを図4のフローチャートを用いて説明する。図4に示す演算処理は、主に制御部13が記憶部14に保持される制御プログラムに基づいて実行する処理であり、車両用電池システムにおける二次電池10の充電終了後に所定のタイミングで実行開始される。
図4に示す処理が開始されると、制御部13による演算処理に必要なパラメータの初期設定を行う(ステップS11)。ステップS11の初期設定の対象となるパラメータとしては、二次電池10の電圧サンプル値を取得する際のサンプリング間隔ΔTsとサンプル取得数Ns、及び二次電池10の開回路路電圧が安定するまでに要する安定時間Txがある。例えば、ΔTs=10(秒)、Ns=60(個)、Tx=100000(秒)などの初期設定値を用いればよい。この場合、二次電池10の特性に応じた適切な固定的な初期設定値を予め定めておくこともできるが、動作状況などに応じて初期設定地を適宜に変更できるようにしてもよい。
次に、制御部13が所定のタイミングで電圧センサ12から出力される電圧値を順次読み取って、時間軸上で二次電池10の複数の電圧サンプル値を取得する(ステップS12)。上述の初期設定値に基づき、サンプリング間隔ΔTsで測定されるNs個の電圧サンプル値が順次取得されることになる。制御部13は、取得された各電圧サンプル値を順次記憶部14に格納し必要に応じて読み出す。以下では、ステップS12で取得されたn番目(n=1,2,3・・・Ns)の電圧サンプル値をV(n)と表すものとする。
次に、二次電池20の開放電圧特性を近似するための4次の指数減衰関数に対応する係数の初期設定を行う(ステップS13)。ここで、図4の演算処理における上述した4次の指数減衰関数としては、次の(4)式で示すように、時間Tに対するF(T)を用いるものとする。
Figure 0004015128
ステップS13においては(4)式に含まれる係数A1〜A9について、予め記憶部14に記憶されている初期値を読み出して設定する。これらの係数A1〜A9は、最小二乗法に基づく最適解を導き出すために用いられ、後述するように計算の過程で値が順次更新されていく。なお、各係数A1〜A9の初期値としては、予め実験的に得られた所定値を用いればよい。
次に、上述の指数減衰関数F(T)を、n番目のサンプルタイミングのそれぞれに対し適用することにより、次の(5)式で表されるF(n)を計算する(ステップS14)。
Figure 0004015128
ステップS13においては、(5)式のF(n)について全部でNs個の計算値が得られることになる。
次に、ステップS14で得られたF(n)と、ステップS12で取得された電圧サンプル値V(n)との差であるR(n)を各サンプルタイミングについて計算する(ステップS15)。すなわち、次の(6)式で表されるNs個のR(n)を求める。
Figure 0004015128
次に、最小二乗法の適用に際しての各係数A1〜A9に対応する偏微分項を計算する(ステップS16)。ステップS15では、次の(7)式で表される各係数A1〜A9に対応する偏微分項を各サンプルタイミングについて求める。
Figure 0004015128
そして、ステップS16で得られた各偏微分項を用いて最小二乗法の連立方程式に適合する行列Bを計算する(ステップS17)。具体的には、次の(8)式で表される行列Bを求める。
Figure 0004015128
なお、(8)式の行列Bは、9×9の正方行列であり、かつ、B(x,y)=B(y,x)の対称行列である。
次に、ステップS15で得られたR(n)と、ステップS16で得られた偏微分項とを用いて、次の(9)式で表されるdRを計算する(ステップS18)
Figure 0004015128
続いて、ステップS17で得られた行列Bと、ステップS18で得られたdRとを用いて、次の(10)式で表される差分ddを計算する(ステップS19)。
Figure 0004015128
このように、ステップS19においては、係数A1〜A9のそれぞれに対応する9個の差分dd1〜dd9が得られ、これらに基づき最小二乗法の最適解を評価することができる。
そして、ステップS19で得られた9個の差分dd1〜dd9について、次の(11)式を満たすか否かを判断する(ステップS20)。
Figure 0004015128
なお、(11)式の右辺は、10−12に限られず、ゼロに近いと判断し得る所定値を用いることができる。判断の結果、(11)式を満たすと判断されると(ステップS20;YES)、各差分dd1〜dd9が十分ゼロに近いため、その時点で最小二乗法の最適解が得られたものとしてステップS22に進む。一方、(11)式を満たさないと判断されると(ステップS20;NO)、各差分dd1〜dd9が大きく最小二乗法の最適解が得られていないものとして、次の(12)式に基づき各々の係数A1〜A9を更新する(ステップS21)。
Figure 0004015128
ステップS21において係数A1〜A9が更新されると、再びステップS14に移行して、新しい係数A1〜A9を用いて最小二乗法を適用したステップS14〜S20の処理を継続する。
一方、ステップS20からステップS22に移行する場合は、開回路電圧が長期的に十分安定するときの収束値V0を次の(13)式により計算する(ステップS22)。
Figure 0004015128
そして、ステップS22で得られた開回路電圧の収束値V0と、この時点の係数A0〜A9を、それぞれ記憶部14に保存する(ステップS23)。これにより、安定状態の開回路電圧が推定されたことになり、必要に応じて記憶部14から読み出して利用することができる。
次に、ステップS22で得られた開回路電圧の収束値V0に基づき、二次電池10の充電率を計算する(ステップS24)。一般に、二次電池10の充電率は、開回路電圧の収束値V0及び周囲温度から所定の関数に基づき一律に決定できる。よって、二次電池10に適合する関数を予め求めておき、ステップS24で計算を行うことにより、二次電池10の充電率が推定できることになる。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用電池システムにおいて、図4に示す演算処理により推定された二次電池10の充電率は車両の制御装置等に送出され、多様な形態で利用することができる。例えば、充電率が所定値より小さい場合にアラームを表示したり、あるいはその時点の充電率を直接表示することができる。この場合、図4の演算処理において高い精度が確保されていることから、常に正確な充電率を推定できるため、信頼性が高く使い勝手の良好な車両用電池システムを実現することができる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。上述したように、本実施形態に係る車両用電池システムでは、逐次計算の精度を確保するため、開回路電圧を4次以上の指数減衰関数で近似する場合を説明した。しかしながら、4次以上の指数減衰関数を設定した場合であっても、車両用電池システムの状況によっては、低い次数の指数減衰関数を用いて逐次計算を行うような処理も可能である。以下、本実施形態の変形例においては、指数減衰関数の次数を実質的に低くすることにより演算量の低減を実現可能な演算処理の具体的方法を説明する。
本変形例においては、二次電池10に対して図4に示す処理を開始後、時間軸上で所定時間が経過したときの上記複数の電圧サンプル値を取得するタイミング(以下、電圧測定タイミングと呼ぶ)に応じて、指数減衰関数における各項の影響の度合が異なることを利用し、時間経過に伴って十分に小さくなる項を除外した指数減衰関数を用いて演算処理を行うものである。ここで、本変形例の具体例として、二次電池10として車両用鉛シール電池を想定した場合を説明する。このとき、二次電池10に適合する4次の指数減衰関数を決定し、逐次計算に用いる近似式を次の(15)式で与えるものとする。
Figure 0004015128
そして、上記(15)式に関し、第1〜4項に基づく開回路電圧の時間特性を検証した。その結果を、図5〜9に示す。まず、図5は、(15)式において、定数項のみを除いて、第1〜第4項の全ての成分を含む場合の時間特性であり、次の(16)式により算出したものである。
Figure 0004015128
図5に示すように、時間経過とともに各項は減衰していくので、開回路電圧がゼロに収束していく。しかし、処理開始後の短時間内では、(16)式の変化の影響が存在することがわかる。
次に、図6は、(15)式において第1項の成分のみを含む場合の時間特性であり、次の(17)式により算出したものである。
Figure 0004015128
同様に、(16)式おける第2〜4項の成分のみを含む場合として、図7は第2項の成分のみを含む場合の時間特性であり、図8は第3項の成分のみを含む場合の時間特性であり、図9は第4項の成分のみを含む場合の時間特性である。そして、図7の時間特性に対応する(18)式と、図8の時間特性に対応する(19)式と、図9の時間特性に対応する(20)式をそれぞれ以下に示す。
Figure 0004015128
Figure 0004015128
Figure 0004015128
図6〜図9に示すように、時間経過の初期段階での減衰の傾向は、(15)式の各項の成分ごとに異なり、長時間が経過するとゼロに収束していく。このとき、最も急峻に減衰するのは図6に示す第1項の場合であり、続いて第2項、第3項、第4項の順で減衰の度合が緩やかになることがわかる。また、図6〜図9と、(17)〜(20)式を比較すると、時間Tに対する係数が大きいほど、短時間で減衰する関係にある。
本変形例では、指数減衰関数における各項の減衰の度合に相違があることに着目し、時間特性における電圧測定タイミングを遅らせて特定の項を含まない形で演算処理を行うことにより、演算量の削減を図るものである。そして、上述したように二次電池10として車両用鉛シール電池を想定し、4次の指数減衰関数を適用する場合の電圧測定タイミングとの関係の具体例を表1に示す。
Figure 0004015128
まず、表1に示す適用条件において、図4に示す演算処理の開始時点から10秒経過前にステップS12で電圧サンプル値を取得する場合、第1〜4項の全てを含む形の指数減衰関数を適用する。このような初期段階では、指数減衰関数の各項の影響は比較的大きいため、演算精度を十分に確保するには、4項全てを用いて本来の4次の指数減数関数を適用して演算を行う必要がある。
これに対し、演算処理の開始時点から10秒経過したタイミングでは、指数減衰関数の第1項が無視できる程度に減衰するので、第1項を除き第2〜4項を含む形の指数減衰関数を適用する。また、演算処理の開始時点から60秒経過したタイミングでは、指数減衰関数の第1項に加えて第2項も無視できる程度に減衰するので、第1、2項を除き第3、4項を含む形の指数減衰関数を適用する。さらに、演算処理の開始時点から600秒経過したタイミングでは、指数減衰関数の第1、2項に加えて第3項も無視できる程度に減衰するので、第1〜3項を除き第4項のみを含む形の指数減衰関数を適用する。
このように、演算処理の開始時点から電圧測定タイミングまでに要する時間が長くなるほど、指数減衰関数の次数を実質的に減らすことができ、演算量を抑えることができる。このとき、逐次計算に対して確保すべき演算精度の要求に適合する範囲内で、指数減衰関数の各項についての適用の有無を判断する必要がある。例えば、許容誤差5%などの基準を設定し、上述の算出値が許容誤差よりも小さくなる場合、指数減数関数の該当する項を除外して演算を行うようにすればよい。
また、車両用電池システムにおけるシステム上の制約によって、演算処理の開始時点から電圧測定タイミングまでの時間が規定される場合がある。すなわち、車両用電池システムで、図4の処理を行う時間は、二次電池10の通常の充電及び放電を停止することになるため、一定の時間範囲内で図4の演算処理を完了させる必要があり、これにより電圧測定タイミングが制約を受ける可能性がある。従って、確保すべき演算精度とシステム上の制約の双方を考慮して、電圧測定タイミングと指数減衰関数の各項の適用条件を定めることが望ましい。
本変形例における演算処理を行う場合、基本的な処理の流れは図4のフローチャートと共通する。ただし、図4のステップS12で電圧サンプル値を取得するのに先立って、処理開始からの時間経過を計時し、予め設定された電圧測定タイミングの到来を監視する必要がある。そして、電圧測定タイミングにおいて取得した電圧サンプル値を用いてステップS13以降の処理を実行する際、4次の指数減衰関数に含まれる所定の項を除外する形で演算を行えばよい。
なお、本変形例においては、二次電池10として車両用鉛シール電池を想定した場合を説明したが、他の種類の二次電池を用いる場合であっても、本変形例を適用した演算処理を行うことが可能である。ただし、二次電池10の種類、特性に応じて指数減衰関数の形が異なるので、それぞれに最適な適用方法を考慮する必要がある。
以上説明したように、本実施形態においては、二次電池10の開回路電圧の時間特性を近似するために4次以上の指数減衰関数を用いる場合を説明したが、このような4次以上の指数減衰関数に加えて多項式関数等の他の関数を複合的に用いるようにしてもよい。
また、本実施形態において、二次電池10の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数を用いる場合を説明したが、このような4次以上の指数減衰関数に加えて多項式関数等の他の関数を複合的に用いるようにしてもよい。
また、本実施形態において、(4)式に示す4次の指数減衰関数は、9個の係数A1〜A9を含むものであるが、次の(21)式に示すように10個の係数A1〜A10を含む4次の指数減衰関数を用いてもよい。
Figure 0004015128
上記の(21)式において、−A9・Tで表される項を想定したものである。かかる項は、充電終了後の二次電池10から、例えば、制御部13や記憶部14に所定の電流を供給する場合の時間特性を考慮したものである。このような場合であっても、演算処理において(21)式の10個の係数A1〜A10を決定するようにすれば、本発明の効果を達成することができる。
また、本実施形態では、車両に搭載される車両二次電池の充電率を推定する構成を備えた車両用電池システムの場合を説明したが、本発明は車両用途に限られることなく、一般的な二次電池を搭載した各種装置に対して広く適用することができる。
本実施形態に係る車両用電池システムの概略の構成を示すブロック図である。 二次電池の充電終了後における開回路電圧の時間特性を示す図であり、4次の指数減衰関数を用いて開回路電圧を近似する場合の具体例を示す図である。 本実施形態で用いる指数減数関数により開回路電圧を近似する場合の次数と精度の関係について示す図である。 本実施形態に係る車両用電池システムにおいて実行される二次電池の充電率推定に関し、具体的な演算処理の流れを説明するフローチャートである。 本実施形態の変形例において、4次の指数減衰関数に関し、第1〜4項の全ての成分を含む場合の開回路電圧の時間特性である。 本実施形態の変形例において、4次の指数減衰関数に関し、第1項の成分のみを含む場合の開回路電圧の時間特性である。 本実施形態の変形例において、4次の指数減衰関数に関し、第2項の成分のみを含む場合の開回路電圧の時間特性である。 本実施形態の変形例において、4次の指数減衰関数に関し、第3項の成分のみを含む場合の開回路電圧の時間特性である。 本実施形態の変形例において、4次の指数減衰関数に関し、第4項の成分のみを含む場合の開回路電圧の時間特性である。
符号の説明
10…二次電池
11…充電回路
12…電圧センサ
13…制御部
14…記憶部
20…負荷

Claims (8)

  1. 負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定方法であって、
    充放電終了後の所定時間内に前記二次電池の電圧を測定し、時間軸上で複数の電圧測定値を取得し、前記複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、
    少なくとも前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求める際に、
    時間軸上で前記複数の電圧測定値を取得するタイミングに応じて、前記4次以上の指数減衰関数に含まれる所定の項を除外して前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、
    前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定する、
    ことを特徴とする充電率推定方法。
  2. 前記指数減衰関数として時間Tに対し、
    Figure 0004015128

    により表される関数F(T)を用い、9個の係数A1〜A9を決定することを特徴とする請求項1に記載の充電率推定方法。
  3. 前記複数の電圧測定値を第1のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換え、
    前記複数の電圧測定値を第2のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換え、
    前記複数の電圧測定値を第3のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換えて、それぞれ前記二次電池の開回路電圧の収束値を求めることを特徴とする請求項に記載の充電率推定方法。
  4. 負荷に電力を供給する二次電池の充電率を推定する充電率推定装置であって、
    前記二次電池の電圧を測定する電圧センサと、
    前記充電率を推定するための演算を実行制御する制御部と、
    前記電圧センサから出力される電圧値と、前記制御部による演算処理に必要なデータを記憶する記憶部と、を備え、
    前記制御部は、充放電終了後の所定時間内に前記電圧センサの出力を読み取り、時間軸上で複数の電圧測定値を取得して前記記憶部に格納し、前記記憶部から読み出した複数の電圧測定値を用いて逐次計算を行い、前記二次電池の開回路電圧の時間特性を近似する4次以上の指数減衰関数の係数を決定し、前記決定した係数に基づき前記二次電池の開回路電圧の収束値を求める際に、時間軸上で前記複数の電圧測定値を取得するタイミングに応じて、前記4次以上の指数減衰関数に含まれる所定の項を除外して前記二次電池の開回路電圧の収束値を求め、
    前記開回路電圧の収束値に基づき前記充電率を推定することにより前記演算を実行制御することを特徴とする充電率推定装置。
  5. 前記制御部は、前記指数減衰関数として時間Tに対し、
    Figure 0004015128
    により表される関数F(T)を用い、9個の係数A1〜A9を決定することを特徴とする請求項に記載の充電率推定装置。
  6. 前記制御部は、前記複数の電圧測定値を第1のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換え、
    前記複数の電圧測定値を第2のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換え、
    前記複数の電圧測定値を第3のタイミング以降に取得する場合は、前記関数F(T)を、
    Figure 0004015128
    に置き換えて、それぞれ前記二次電池の開回路電圧の収束値を求めることを特徴とする請求項に記載の充電率推定装置。
  7. 請求項から請求項のいずれかに記載の充電率推定装置を備えた電池システム。
  8. 請求項から請求項のいずれかに記載の充電率推定装置を備えるとともに、前記二次電池は、車両に搭載される負荷に電力を供給する車両用二次電池であることを特徴とする車両用電池システム。
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