JP4014979B2 - 超音波検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の圧電変換素子から発生される超音波を用いて被検体内の状態を可視化する超音波検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
被検体内部の状態を可視化して、被検体内の欠陥、例えば、ボイドや接合部の剥がれ等の有無等の検査を行う超音波検査装置が用いられている。ここで、水浸法での超音波検査においては、圧電変換素子(超音波の発生器およびセンサ)および被検体を水等の液体中に浸漬し、圧電変換素子を機械的に走査しながら超音波を送受信することにより、被検体の内部を可視化する(非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
小倉、「半導体パッケージの非破壊検査の現状」、非破壊検査、社団法人日本非破壊検査協会、平成13年5月、第50巻、第5号、P.291−292
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水浸法では圧電変換素子が液体中に浸漬されることから、圧電変換素子内に液体が侵入してその耐久性が低下し易くなる。また、密閉容器の内部に配置された被検体の内部検査を外部から行なうことが困難であった。
以上に鑑み、本発明は圧電変換素子を液体に浸漬することなく、かつ密閉容器の内部に配置された被検体の状態を外部から検査可能な超音波検査装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る超音波検査装置は、複数の圧電変換素子を有する圧電変換部と、前記圧電変換部と音響的に接続された平板状の固体音響伝搬媒体と、前記圧電変換部から圧電変換素子を選択して超音波を発生させる駆動部と、前記駆動部によって選択された圧電変換素子から送信された超音波の一部が液体音響媒体中の被検体から反射されてなる反射超音波に基づき、前記圧電変換部の圧電変換素子から発生した電気信号を検出する検出部と、前記検出部で検出された電気信号に基づき、前記被検体の内部状態を表す画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部で生成された画像を表示する表示部と、を具備することを特徴とする。
【0006】
複数配置された圧電変換素子を電子的に選択して送受信することにより、機械走査せずに可視化を行うことができる。また、内部に被検体を収容し、かつ液体音響媒体を蓄積する容器に対して、固体音響伝搬媒体を貫通させるか、あるいはその外面に音響的に接続することにより、圧電変換素子を容器外に配置したままで容器内の被検体の外形及び内部構造の可視化を行うことができる。
ここで、「音響的に接続」とは、異なる音響媒体同士での音響の伝達が可能な状態をいう。なお、音響媒体の間にカップラントを挟むことで、異なる音響媒体間での音響の伝達特性をより向上することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態に係る超音波検査装置は、圧電変換素子がマトリクス状または一列に配置されたアレイセンサがシュー材にカップラントを介して密着固定されている。このシュー材は、液体音響媒体を内包した検査容器の外表面に接続されるか、または開口部を通じて検査容器を貫通している。この結果、検査容器内に設置した被検体からの反射超音波、または透過超音波の電気信号の収集を行い、その収集データから可視化画像を合成することにより、内部検査を行うことが可能となる。
【0008】
ここで、検査容器内における被検体の表面の位置、即ち、圧電変換素子と検査体の表面(界面)とが既知の場合に、圧電変換素子から送信されこの界面から反射されて圧電変換素子に至るまでの反射超音波の伝播時間から、検査容器内の液体音響媒体の音速を求め、画像生成処理の際の補正用に用い、画像データの精度向上を図ることができる。
また、検査容器内に超音波送信角度を変更するための反射体を設置することにより、被検体に対して水平方向からの計測及び可視化を行うことができる。
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波検査装置の構成を説明する模式図である。同図に示すように、この超音波検査装置は、アレイセンサ6、送受信切替装置8、画像合成装置9、表示装置10を有し、容器1内の水2に浸漬された被検体3内の欠陥4を可視化して表すことができる。アレイセンサ6の前面には、平板形状のシュー材5がカップラント7を介して密着固定されている。また、容器1内に反射体13,固定ジグ15が設置されている。
【0010】
容器1は、水2および被検体3を収容する容器であり、水2に浸漬した状態で被検体3を超音波により検査するためのものである。
水2は、超音波を伝搬する液体の音響媒体の一種である。即ち、液体音響媒体としては水2以外の液体、例えば、油等を用いることが可能である。
被検体3は、超音波により内部状態を検査し、欠陥4(例えば、ボイド、結合の剥がれ等)の有無等の検査が行われる検査対象である。なお、被検体3は、固定ジグ15によって容器1内で位置決め、固定される。
シュー材5は、平板状の固体からなる音響媒体(固体音響媒体)であり、アレイセンサ6と被検体3との間での超音波の伝搬経路の一部となり、例えば、プラスチック、金属等適宜の材料で構成することができる。
アレイセンサ6は、圧電変換部として機能するものであり、複数の圧電変換素子20がアレー状に配列されている。圧電変換素子20は、電気を圧力に、圧力を電気に変換する変換素子であり、超音波を発信すると共に、被検体3中の欠陥4等から反射される反射超音波Xを受信することができる。
反射体13は、反射部として機能し、所定の圧電変換素子20から送信された超音波を反射してその伝搬方向を変化させ、被検体3の側方から入射させる。
カップラント7は、シュー材5とアレイセンサ6との間の音響的な結合状態を向上させるための媒介であり、通常は適度の粘性を有する半流動体の音響媒体、一例として、グリセリンが用いられる。シュー材5とアレイセンサ6との間にカップラント7を介在させることで、シュー材5とアレイセンサ6との間での超音波の伝達が効率的に行われるようになり、かつシュー材5、アレイセンサ6それぞれの界面での超音波の反射(一種の雑音)が低減される。
【0011】
送受信切替装置8は、アレイセンサ6内の複数の圧電変換素子20から、超音波を送信、受信する素子の選択等を行う装置であり、駆動素子切換回路21,信号発生部22,信号検出回路23,増幅部24を有する。
駆動素子切換回路21は、駆動部として機能するものであり、信号発生部22が発生した電気信号を入力させ、超音波を発生させる圧電変換素子20を選択するための切換回路である。
信号発生部22は、圧電変換素子20に超音波を発生させるための電気信号を発生するためのものであり、通例、発振回路を含む。
信号検出回路23は、検出部として機能するものであり、超音波を受信したことによって圧電変換素子20それぞれが発生した電気信号を検出する検出回路である。この検出に際し、圧電変換素子20を適宜に選択可能であり、選択された圧電変換素子20に対応する電気信号が増幅部24に送られる。このとき、複数の圧電変換素子20の選択を可能として、信号処理の並列性の向上を図っている。
増幅部24は、信号検出回路23によって検出された信号を増幅するためのものであり、信号検出回路23からの出力の数(選択された圧電変換素子20の数)に対応する個数分の増幅素子が存在する。
即ち、送受信切替装置8は、圧電変換素子20から反射超音波X(超音波エコーX)を受信する受信素子を選択し、選択された圧電変換素子20で発生した電気信号Eを増幅した後に画像合成装置9に順次送信する。
【0012】
画像合成装置9は、画像を生成する画像生成部として機能するものであり、A/D変換器25,および演算装置26を有する。A/D変換器25は、駆動素子切換回路21で受信した電気信号をアナログ−ディジタル変換する。
演算装置26は、音速補正部および画像生成部として機能するものであり、A/D変換器25によりディジタル化された信号に基づき、検査対象の状態を可視化するための信号処理を施す信号処理部である。
表示装置10は、画像合成装置9から導かれた情報を表示する表示装置であり、例えば、CRT、液晶表示装置を用いることができる。
【0013】
(超音波検査装置の動作)
以下に、超音波検査装置の動作を説明する。
(1)信号発生部22より駆動素子切換回路21を経て圧電変換素子20に入力された電気信号により、圧電変換素子20から超音波が送信される。圧電変換素子20から送信された超音波は、シュー材5、水2を介して被検体3内の欠陥4に達する。この超音波は、欠陥4により反射され反射超音波Xとなり、再び水2とシュー材5を介して圧電変換素子20に受信される。
【0014】
(2)受信した反射超音波Xによりそれぞれの圧電変換素子20から発生した電気信号が信号検出回路23、増幅部24、A/D変換器25により検出、増幅、デジタル変換され、演算装置26により画像合成処理される。
この画像合成処理は、超音波の送信から受信までの送受信伝播時間td、および反射超音波Xの強度(振幅値)Adを用いた開口合成処理によって行うことができる。
即ち、超音波の発信位置と受信位置を焦点とする送受信伝播時間tdに対応する距離一定の楕円面(等距離伝播面12)上に被検体3の超音波反射源(例えば、欠陥4)があることから、異なる発信位置および受信位置での楕円面の交差する位置が反射源位置となり、多くの発信位置(圧電変換素子20)と受信位置(圧電変換素子20)の組み合わせでの楕円面の重ね合わせを例えば、3次元画像メモリ上で行うことにより被検体3内部の画像を再構成できる。
具体的には、送信側、受信側それぞれで選択された1対の圧電変換素子20毎に、送受信伝播時間tdに対応した等距離伝播面12を計算し、計算された等距離伝播面12上に反射超音波Xの振幅値Adを加算する。送信側、受信側それぞれで選択された圧電変換素子20の組み合わせそれぞれに対応する複数の等距離伝播面12が算出され、これら複数の等距離伝播面12上での反射超音波Xの振幅値が加算されることで、被検体3の画像をその内部の欠陥4等を含めて生成できる。
送受信伝播時間tdは、超音波の送信から反射超音波Xを受信するまでに要する時間であり、送信側の圧電変換素子20から超音波を送信させた時刻t1と受信側の圧電変換素子20が超音波を受信した時刻t2の差(t2−t1)である。
【0015】
(3)送受信伝播時間tdから等距離伝播面12を計算するにあたって、「シュー材5と水2の界面」と「被検体3と水2の界面」の両界面での屈折を加味することが好ましい。具体的には、次の式(1)、(2)に表されるスネルの式を考慮して、等距離伝播面12がより精密に算出される。
C5/sinθ52=C2/sinθ25 ……式(1)
C2/sinθ23=C3/sinθ32 ……式(2)
ここで、C5:シュー材5中での超音波の速度
C2:水2中での超音波の速度
C3:被検体3中での超音波の速度
θ52:シュー材5から水2への超音波の入射(出射)角
θ25:シュー材5から水2への超音波の出射(入射)角
θ23:水2から被検体3への超音波の入射(出射)角
θ32:水2から被検体3への超音波の出射(入射)角
である。
【0016】
(4)容器1内に固定した反射体13によって、圧電変換素子20から送信した超音波を水平方向に反射させて、被検体3の側面に水平方向計測用超音波Zを入射させることができる。この水平方向計測用超音波Zは、被検体3の側面やその内部の欠陥4等で反射されて、圧電変換素子20で受信され、演算装置26での画像合成処理に用いることができる。
このように、水平方向計測用超音波Zのデータを取り込むことにより、被検体3の側面やその内部の欠陥4の水平位置計測、または水平方向からの画像化を同時に行うことが可能である。
なお、この水平方向計測用超音波Zの送信、受信を行う圧電変換素子20を反射超音波Xの送信、受信を行う圧電変換素子20と区分しておくことで、反射超音波Xによる被検体3の正面方向の画像と、水平方向計測用超音波Zによる被検体3の側面方向の画像とを区分することが容易になる。さらに、表示装置10での表示に際し、このように区分された正面画像、側面画像を異なる表示色で表示することで、画像に識別が容易に行える。
【0017】
(5)水2中での音速は水温等によって変動することから、音速を補正することでより精密な画像を生成できる。
この補正は水2中での音速の値自体を画像合成装置9に入力して記憶させることで行っても良いが、被検体3表面からの反射超音波Xの送受信伝播時間tdに基づいて行うこともできる。
シュー材5の厚さd5、シュー材5から被検体3の表面までの距離L、およびシュー材5中での音速C5が既知としたときに、水2中での音速C2は次の式(3)により算出することができる。
td=2・(d5/C5)+2・(L/C2) ……式(3)
ここで、被検体3の表面の形状の特徴(例えば、平面、曲面)に基づき、合成画像の画像解析により被検体3表面を抽出することで、水2中での音速を自動的に補正することが可能となる。具体的には、合成画像を2値化等することで、被検体3の輪郭を抽出し、この輪郭から圧電変換素子20に近い点を選択し、この点に対応する送受信伝播時間tdを求めて、水2中での音速C2の補正を行う。
【0018】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る超音波検査装置の構成を説明する模式図である。同図に示すように、この超音波検査装置は、アレイセンサ6を受信専用として用いると共に、追加のシュー材45と、シュー材45に対してカップラント47を介して密着固定された送信用のアレイセンサ46を有している。
シュー材45は、水2内でシュー材5に対して被検体3を挟んだ位置にシュー材5の表面に平行になるように固定された平板構造の固体音響媒体であり、シュー材5と同様の材料を用いることができる。
【0019】
送信用のアレイセンサ46には複数の圧電変換素子40がアレー状に配列され、アレイセンサ6と同様の構成である。
カップラント47は、シュー材45とアレイセンサ46との間の音響的な結合状態を向上させるための媒介であり、カップラント7と同様の材料を用いることができる。
【0020】
以下に、第2の実施形態に係る超音波検査装置の動作を説明する。
送受信切替装置8によって、アレイセンサ46内の複数の圧電変換素子40から特定の圧電変換素子40が選択駆動され、選択駆動された圧電変換素子40から透過超音波Uが送信される。透過超音波Uは、シュー材45、水2、被検体3の内部を透過し、更に水2とシュー材5を介してアレイセンサ6で受信される。複数の圧電変換素子20が発生する電気信号Eが送受信切替装置8によって選択的に検出される。画像合成装置9は、検出された電気信号Eから被検体3の透過画像を合成し、表示装置10は合成された透過画像合成処理結果を表示する。
この結果、容器1外にアレイセンサ6を設置したままで、水2内の被検体3内部の可視化を行うことができる。
【0021】
画像合成装置9での画像合成処理は、透過超音波Uの送受信伝播時間および振幅値に基づいて行われる。送信用の圧電変換素子40から受信用の圧電変換素子20に至る超音波の経路中に水2とは異なる媒体(例えば、被検体3自体や欠陥4等の内部構造)があると、その界面(例えば、被検体3や欠陥4等の表面)で超音波が反射され受信される透過超音波Uの振幅が減少する。また、媒体内部を透過超音波Uが通過することで送受信伝播時間が変化する。このように、送信用の圧電変換素子40から受信用の圧電変換素子20に至る超音波の経路(超音波透過経路)に対応して透過超音波Uの送受信伝播時間および振幅値を演算することで、被検体3内部の欠陥4の透過画像を合成することができる。
超音波透過経路の算出は、送信用の圧電変換素子40と受信用の圧電変換素子20間の位置関係に基づいて行われる。超音波透過経路の算出に際して、「シュー材5と水2の界面」と「シュー材45と水2の界面」の屈折を考慮することで、より精密に超音波透過経路を計算することができる。即ち、式(1)、(2)のスネルの式を適宜に加味する。
【0022】
【発明の効果】
本発明により、圧電変換素子(超音波センサ)を液体に浸漬することなく、かつ密閉容器の内部に配置された被検体の状態を外部から検査可能な超音波検査装置を提供することが可能となる。この結果、圧電変換素子が液体中に浸されなくなるため、その耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る超音波検査装置を表す模式図である。
【図2】 本発明の第2の実施形態に係る超音波検査装置を表す模式図である。
【符号の説明】
1…容器、2…水、3…被検体、4…欠陥、5、45…シュー材、6、46…アレイセンサ、7、47…カップラント、8…送受信切替装置、9…画像合成装置、10…表示装置、12…等距離伝播面、13…反射体、15…固定ジグ、20、40…圧電変換素子、21…駆動素子切換回路、22…信号発生部、23…信号検出回路、24…増幅部、25…A/D変換器、26…演算装置
Claims (4)
- 複数の圧電変換素子を有する圧電変換部と,
前記圧電変換部と音響的に接続された平板状の固体音響伝搬媒体と,
前記圧電変換部から第1,第2の圧電変換素子を選択して,それぞれから第1,第2の超音波を発生させる駆動部と,
前記第2の圧電変換素子から送信される第2の超音波を反射する反射部と,
前記第1の圧電変換素子から送信された第1の超音波の一部が液体音響媒体中の被検体から反射されてなる第1の反射超音波,および前記第2の圧電変換素子から送信され,前記反射部で反射された第2の超音波の一部が前記被検体から反射されてなる第2の反射超音波に基づき,前記圧電変換部の圧電変換素子から発生した電気信号を検出する検出部と,
前記検出部で検出された電気信号に基づき,前記第1の超音波に対応し,かつ前記被検体の内部状態を表す第1の画像,および前記第2の超音波に対応し,かつ前記被検体の内部状態を表す第2の画像を生成する画像生成部と,
前記画像生成部で生成された第1,第2の画像を表示する表示部と,
を具備することを特徴とする超音波検査装置。 - 前記固体音響伝搬媒体が貫通する開口部を有し,内部に前記被検体を収容すると共に,前記液体音響媒体を蓄積する容器
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。 - 前記固体音響伝搬媒体と外表面が音響的に接続され,かつ内部に前記被検体を収容すると共に,前記液体音響媒体を蓄積する容器
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。 - 前記圧電変換部から送信された超音波が,前記被検体の表面で反射されて該圧電変換部に受信されるまでの超音波伝搬時間に基づいて,前記液体音響媒体中の音速を補正する音速補正部と,
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。
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