JP4196643B2 - 超音波による内部欠陥の映像化方法、及び、装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非破壊検査法の一種である超音波探傷法に関し、金属、樹脂などからなる板、管、円柱などの各種の形状の被検体中に存在しうる内部欠陥の像を高分解能に表示する超音波による内部欠陥の映像化方法、及び、装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属、樹脂などからなる板、管、円柱などの各種形状の製品の内部欠陥を非破壊で検出し、更に内部欠陥の性状を詳しく調べることは、製造業にとって非常に重要な技術課題である。
【0003】
その目的は、製品の内部品質を詳細に検査して、有害な内部欠陥を有する製品の需要家への納入を防止すること、内部欠陥の性状から製造技術の問題点を調べ、内部欠陥が発生しない製造技術を確立することにある。内部欠陥として代表的なものとして、異物質の含有、ボイド、内部割れがある。例えば、鉄鋼製品の場合、異物質の含有とは、アルミニウムやカルシウムの酸化物である場合が多く、これらは非金属介在物と称されている。
【0004】
このような非破壊検査法と広く総称して呼ばれる検査法の中でも、製品内部の検査には超音波探傷法が適している。前述の通り、検査の対象は異物質の含有、ボイド、内部割れであるが、これらの内部欠陥の検出を行うことを探傷と称している。
【0005】
超音波探傷法で利用される超音波は縦波と横波に大別される。縦波は空気や水を伝わる音波と同様に物体や媒体を伝わる粗密振動(粗密波とも呼ばれる)である。被検体の表面に対し垂直に超音波を伝播させて探傷を行う場合(垂直探傷と称する)に用いられるのは、この縦波である場合が多い。
【0006】
横波はせん断ひずみの伝播であり、溶接部などの斜角探傷に用いられることが多い。
【0007】
一般に超音波の被検体への送信は、圧電振動子に電気パルスを印加して高周波のパルス振動を発生させ、この振動を適当な接触媒質(水や油など)を介して被検体に導くことにより行われる。超音波の受信は送信と逆の過程で行われ、圧電振動子が受けた振動によって生起された電圧あるいは電流を適当な電気機器で観測する。圧電振動子を内蔵し、受けた電気パルスにより超音波を発振するセンサを超音波送信子、圧電振動子を内蔵し、受けた振動を電気信号に変換するセンサを超音波受信子と称するが、構造に特別な違いはなく、圧電振動子を内蔵したセンサは、超音波の送信にも受信にも使えるのが一般的である。また、前記センサは超音波の送信および受信を兼用する場合が多く、このときこのセンサは超音波送受信子と称される。また、超音波送信子、超音波受信子、超音波送受信子という名称は、センサの機能からつけられた名称であるが、探査を行う道具という意味で超音波プローブや超音波探触子の名称も多く用いられる。
【0008】
圧電振動子による超音波送受信子を用いた超音波探傷法は、油などを介して超音波送受信子を被検体に当てがい超音波の送受信を行う直接接触法と水などの媒体を介在させて被検体に超音波を送受信する液浸法(媒体が水の場合は水浸法)とに大別される。液浸法には、
(1)超音波送受信子と被検体とが接触しない。
(2)超音波の被検体への入射強度を一定に維持することが容易である。
(3)音響レンズや球面振動子を用いて超音波ビームを集束させることにより、高い空間分解能で測定が可能である。
などの利点があり、高い空間分解能で被検体内部を詳細に評価する場合には好んで、液浸法が用いられる。
【0009】
従来技術として図9に示した水浸法(液浸法の一形態)を例にとり、超音波探傷の原理を以下に簡単に説明する。図9は検査する被検体を水に浸け、超音波プローブ111から、水を介して被検体110に超音波を送信し、該被検体110の表面および内部からの反射波(エコー)を、水を介して超音波プローブ111により受信して欠陥の検出を行う水浸探傷方法の一般的な構成を示している。この場合、超音波プローブ111は超音波の送信および受信を兼用している。超音波送受信子が発した超音波を被検体に当てると、その表面で超音波は反射して再度媒体を通り超音波送受信子へもどる(以下、この被検体表面からの反射波を、表面エコーと称する)。一方、これと同時に、超音波が入射した被検体表面に超音波振動が起こり、その振動が被検体内に伝播する。被検体内に何らの欠陥もなければ、伝播した超音波振動は、その被検体の反対側の表面(例えば板の表面に超音波を当てたのであれば板の裏面。以下、板以外の形状のものも総称するため、底面と称する。)まで伝わったのち、該底面で反射して被検体内を逆向きに伝播し、被検体の表面に向かって戻り、再度媒体を通り超音波送受信子へもどる(以下、この反射波を、底面エコーと称する)。
【0010】
被検体内に何らかの欠陥があった場合は、被検体に入射した超音波は該欠陥で反射し、被検体の表面に向けて戻り、媒体を通り抜けて超音波送受信子へもどる(以下、欠陥エコーと称する)。欠陥エコーが超音波送受信子へもどるタイミングは、伝播路程の長さ(以下、ビーム路程と称する)の差に応じて底面エコーよりも早くなる。この欠陥エコーを検出することが超音波探傷の基本原理である。
【0011】
このとき、超音波送受信子として音響レンズや球面振動子を用いて超音波ビームを一点に集束させることが可能なものを用い、超音波ビームが集束する細い部分を用いて測定を行うことにより、高分解能化を図ることが可能である。
【0012】
集束ビームを送受信する超音波送受信子を被検体に対し2次元走査し、被検体の内部欠陥を高分解能に映像化する方法にCスキャン超音波探傷法(非特許文献1を参照)があり、高分解能が必要な内部欠陥検出にはこの探傷法が多用されている。
【0013】
【非特許文献1】
(社)日本非破壊検査協会編集、「超音波探傷試験II」、(社)日本非破壊検査協会(2000)、p.151〜152
【0014】
一般にCスキャン探傷法では、図9に示すようにゲート回路114により欠陥エコーを抽出し、ピークディテクタ115で欠陥エコーの振幅を検出する構成を有し、得られるCスコープは欠陥エコーの振幅の2次元マップである。このように従来のCスキャン探傷法は欠陥エコーの振幅情報を利用している点に特徴がある。
【0015】
以下、従来のCスキャン探傷方法の問題点を図10を用いて説明する。
【0016】
第1の問題点:図10に示す集束ビームの被検体内部での形成状況の通り、集束ビームは焦点以外ではビーム径が大きく、焦点以外では分解能が低下し、被検体の様々な深さ(図10のz方向)に存在する内部欠陥を均一な分解能で映像化することが難しい。
【0017】
第2の問題点:極厚材の内部欠陥の映像化において、被検体の深い位置の欠陥像の分解能を改善するためには、集束ビームの焦点を被検体の深い位置に合わせる必要がある。超音波の波長をλとしたとき、直径Dの平板である超音波振動子の近距離音場限界距離X0は下式(1)で表される。
【0018】
X0=D2/(4・λ) (1)
【0019】
近距離音場限界距離とは、自然焦点のことであり、振動子の個々の要素点から放射された超音波の位相がほぼ揃い、干渉を起こさなくなる距離である(レンズ等で集束を行わなくても位相が合ってしまう距離である)。従って、集束ビームの焦点は近距離音場限界距離X0よりも探触子に近い位置に設定しないと、十分な集束効果が得られない。実用的には集束ビームの焦点距離FはX0/2よりも短くする必要があるといわれている。
【0020】
上記より、被検体の深い位置に集束ビームの焦点を設定するためには、X0を大きくする必要があり、そのためには超音波振動子の直径を大きくする必要があることがわかる。ただし、超音波振動子を電気的に駆動して超音波パルスを発信させるには超音波振動子の電気抵抗が低くなりすぎないようにする必要があり、超音波振動子の直径には限界が存在する。故に、極厚材の深い位置に集束ビームの焦点を設定することは技術的に難しく、例えば周波数2MHzを用いて鋼の被検体の内部欠陥の映像化を行うには深さ80mm程度が限界である。従ってこれより深い位置の内部欠陥は分解能の良い映像化が難しい。
【0021】
上記したCスキャン探傷方法のほかに高分解能な映像化を目的とした技術に開口合成法がある。図11に示す振動子アレイを被検体110の表面に接触させて欠陥映像化を行う場合を例に開口合成の原理を説明する。振動子アレイの各々の振動子から超音波を送信して欠陥エコーを検出し、超音波の送信からエコー受信までの時間から欠陥エコーの被検体110中でのビーム路程を測定する。個々の振動子120p(p=1,2,‥‥)から送信され受信される超音波は空間的に拡がりをもっているので、振動子120pで検出したエコーのビーム路程がWp(p=1,2,‥‥)であるとすると、半径Wpの中空の球Sp(p=1,2,‥‥)のうち、振動子120pが送受信する超音波の指向角範囲のどこかに反射源が存在する。全ての振動子を用いてエコーを検出し、中空の球Spの交点を求めると、この交点が欠陥像となる。図11は振動子1206、1208、12010、12013、12015が検出したエコーのビーム路程から欠陥像を合成する様子を示している。
【0022】
更に振動子アレイ120を紙面に垂直な方向に走査すれば(走査ストロークをLsとする。)、3次元の欠陥像を得ることができる。この方法は振動子アレイの全長をLとしたとき、L×Lsの大きさの大きい振動子の各点から超音波を送信してエコーを受信して欠陥像を得ることに相当するので、この方法では、電気インピーダンスのマッチングによる振動子径の制約なく、大きな振動子による欠陥映像化と同等の高い分解能が得られる特長がある。この技術の先行文献として、特許文献1や特許文献2などがあげられる。
【0023】
【特許文献1】
特開平7−49398号公報
【特許文献2】
特開平10−142201号公報
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法では特許文献1にも示されている通り、広い範囲にわたって欠陥エコーを検出するために、超音波送受信子には広い指向角が必要とされ、超音波ビームを狭い領域に集束させて測定を行うCスキャン探傷法とは相容れない技術とされてきた。
【0025】
よって、集束ビームを用いた超音波による内部欠陥の映像化において、下記の事項は極めて重要な課題になっていた。
【0026】
(1)内部欠陥の存在する深さによらず、均一な分解能で映像化を行う。
【0027】
(2)板厚が大きく、集束ビームの焦点が届かない深さであっても、高い分解能で映像化を行う。
【0028】
なお、上記(2)は(1)において焦点以遠にある内部欠陥の映像化を行う場合と等価なため、つまるところ、課題は(1)に集約される。
【0029】
本発明はこのような実情に鑑み、なされたもので、内部欠陥の存在する深さによらず、均一な分解能で映像化できるようにすることを課題とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水浸型超音波プローブと被検体との間に水を介在させ、該超音波プローブを被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体に向け送信し、該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を受信して内部欠陥を映像化する超音波による内部欠陥の映像化方法において、点集束型超音波プローブから、焦点の深さ位置を内部欠陥の存在する深さによらず被検体内部に設定した超音波集束ビームを被検体に向け送信して、該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を、前記焦点以遠にある内部欠陥からの反射波も含めて受信し、各測定点において、欠陥エコーのビーム路程を記録し、内部欠陥像の再構成を行うに当り、被検体の再構成像を同じ大きさの微小要素に分け、各測定点毎に計測したビーム路程から欠陥エコー源となりうる微小要素を選び出し、超音波ビームの指向性の計算値または実験値から、上記微小要素における超音波の入射強度を求めて、反射源としての評価値を集計する評価値カウンタに前記入射強度を増分として加え、全ての測定点について上記処理を行った後、前記評価値カウンタの値に応じて上記微小要素に濃淡や色をつけて、被検体の内部欠陥を表示することにより、前記課題を解決したものである。
【0033】
本発明は、又、水浸型超音波プローブと被検体との間に水を介在させ、該超音波プローブを被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体に向け送信し、該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を受信して内部欠陥を映像化する超音波による内部欠陥の映像化装置において、超音波集束ビームの焦点の深さ位置を、内部欠陥の存在する深さによらず被検体内部に設定した点集束型超音波プローブと、該点集束型超音波プローブから送信された超音波集束ビームの被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を、前記焦点以遠にある内部欠陥からの反射波も含めて受信する手段と、各測定点において、欠陥エコーのビーム路程を記録する手段と、内部欠陥像の再構成を行うに当り、被検体の再構成像を同じ大きさの微小要素に分け、各微小要素毎に反射源としての評価値を集計する評価値カウンタと、各測定点毎に計測したビーム路程から欠陥エコー源となりうる微小要素を選び出し、超音波ビームの指向性の計算値または実験値から、上記微小要素における超音波の入射強度を求めて、前記評価値カウンタに前記入射強度を増分として加える手段と、全ての測定点について上記処理を行った後、前記評価値カウンタの値に応じて上記微小要素に濃淡や色をつけて、被検体の内部欠陥を表示する手段と、を備えたことを特徴とする、超音波による内部欠陥の映像化装置を提供するものである。
【0034】
本発明によれば、集束ビームを用いた超音波による内部欠陥の映像化において、
(1)内部欠陥の存在する深さによらず、均一な分解能で映像化を行う。
(2)板厚が大きく、集束ビームの焦点が届かない深さであっても、高い分解能で映像化を行う。
ことが可能になる。
【0035】
本発明は、図2に示すとおり、球面振動子や音響レンズを用いて送信する点集束型超音波プローブからの超音波集束ビームには、球面振動子や音響レンズの中心に垂直な方向(ビームの中心軸)に平行な波だけではなく、ビームの中心軸に平行でない方向に指向する波がある角度範囲にわたり密に含まれている点に着目したものであり、一般的に開口合成法に適さないとされている超音波集束ビームに開口合成法を組み合わせることが可能であるという発見に基づくものである。(一般には開口合成を行うためには、超音波送受信子から広い指向角にわたり拡散する波を送信する必要があるとされている。)
【0036】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0037】
本発明の一実施形態に係る構成図を図1に示す。図1中、1は検査対象である被検体を示す。この例では被検体1は静止被検体であり、液浸法を用いて内部欠陥の映像化(イメージング)を行い、媒体は水を用いている。10は集束ビームを送受信する超音波プローブであり、送信回路11からの一定周期の電気パルスにより超音波集束ビームを被検体に向け送信するとともに、該被検体の表面および内部からの反射波(エコー)を受信する。受信された信号は受信増幅器12により、後の信号処理に都合のよい適正レベルに増幅される。超音波プローブ10は適当な走査手段によって被検体1に対し2次元走査(x−y走査)され、その位置はx方向位置検出手段21、y方向位置検出手段22によって検出され、欠陥像合成装置14に送られる。
【0038】
欠陥エコービーム路程計測回路13は表面エコー51と欠陥エコー52との受信タイミングの差、即ち、被検体1における欠陥エコー52のビーム路程(以下、被検体1におけるを省略し、欠陥エコーのビーム路程、または単にビーム路程と称する)を計測する。ビーム路程としては、超音波の伝播時間、あるいはそれに音速を掛け算した超音波の伝播距離のいずれを用いてもよい。計測された各ビーム路程は、欠陥像合成装置14に送られ、このときの超音波プローブ10の位置Pi,j(i:x方向の位置、j:y方向の位置)と対応付けて記録される。
【0039】
図3に本方法による欠陥像合成の方法を示す。図3は仮想的な3次元空間に被検体1の表面を設定し、その内部の欠陥が存在する可能性がある深さ範囲を3次元に微小要素Pfk,l,m(k:x方向の位置、l:y方向の位置、m:Z方向の位置)に分割する方法を示しており、更に位置Pi,jにて計測した欠陥エコーのビーム路程Wi,jから、該エコーの反射源となりうる微小要素を抽出する様子を示している。図中、ハッチングを施した要素は、深さが最も小さい位置の微小要素のなかで、Pi,jからの距離がWi,jとなる微小要素を示している。本実施例における欠陥像の合成手順は下記の通りである。
【0040】
欠陥像の合成手順1
(1)超音波プローブ10を所定ピッチで走査して各位置Pi,jで超音波の送受信信号から、欠陥エコービーム路程計測回路13によって欠陥エコーのビーム路程Wi,jを計測し、欠陥像合成装置14に記録する。
【0041】
(2)欠陥像合成装置14に記録された全ビーム路程Wi,jから欠陥が存在する可能性がある深さの範囲をもとめ、この深さの範囲に微小要素を設定し、3次元のアドレスPfk,l,mをつける。
【0042】
(3)各探触子位置Pi,jについて、Pfk,l,mとの距離を求め、計測したビーム路程Wi,jと比較し、所定の誤差の範囲で一致すれば、Pfk,l,mに設けたカウンターCk,l,mにカウント1を加算する。カウンターCk,l,mは3次元の配列であり、深さ方向位置を固定すると(mの値を固定)、二次元の配列となる。図4は更にその一部を抽出して示している。
【0043】
図4に入力されている数字は、その配列要素が上記比較工程で何回一致がみられたかを示している。
【0044】
(4)全探触子位置につき、上記計算を行った後、mを特定の値に固定し、Ck,l,mの内容をカウント値に応じて濃淡または色をつけて表示等すると、2次元の欠陥像(深さ方向位置を限定したCスコープ)が得られる。mの値を変化させて2次元欠陥像を作成すると深さ方向での欠陥形状の変化を観察できる。
【0045】
15は欠陥像表示装置であり、上記のように作成された2次元欠陥像をカウント値に応じて色または濃淡をつけて表示する。
【0046】
なお、欠陥像の表示は上記に限らず、mを固定することなく、3次元的に表示してもよいし、kまたはlの値を固定し、Bスコープのような断層像を表示してもよい。
【0047】
(実施例1)
図5(a)は上記実施形態の装置を用いて、厚さ120mmの鋼製試験片の深さ80mmの位置にある微小欠陥を周波数2MHz、振動子径:50.8mm、水中焦点距離:406mmの集束プローブを用いて、深さ60mmの位置に焦点を設定して測定した結果を示している。対比のため同条件での従来のCスキャン探傷による欠陥映像を図5(c)に示している。微小欠陥の存在する深さが超音波ビームの焦点から離れているため、従来のCスキャン探傷による欠陥映像はぼやけたものになっているが、本実施例の装置では欠陥の細かな構造まで明瞭に映像化できている。即ち、従来のCスキャン探傷で問題であった焦点以外での分解能低下を本実施例の装置で解決できることがわかる。
【0048】
(実施の形態2)
更に、下記の欠陥像の合成手順2によると欠陥像の鮮明さを更に向上させることができる。
【0049】
欠陥像の合成手順2
(1)超音波プローブ10を所定ピッチで走査して各位置Pi,jで超音波の送受信信号から、欠陥エコービーム路程計測回路13によって各位置Pi,jで検出した欠陥エコーのビーム路程Wi,jを計測し、欠陥像合成装置14に記録する。
【0050】
(2)欠陥像合成装置14に記録されたビーム路程Wi,jから欠陥が存在する可能性がある深さの範囲をもとめ、この深さの範囲に微小要素を設定し、3次元のアドレスPfk,l,mをつける。
【0051】
(3)各探触子位置Pi,jについて、Pfk,l,mとの距離を求め、計測したビーム路程Wi,jとを比較し、所定の誤差の範囲で一致すれば、超音波ビームの指向性の計算値または実験値から、上記Pfk,l,mにおける超音波の入射強度Ik,l,mを求めて、Pfk,l,mに設けたカウンターCk,l,mに増分Ik,l,mを加算する。本手順2においても、カウンターCk,l,mは3次元の配列であり、深さ方向位置を固定すると(mの値を固定)、二次元の配列となる。図6は更にその一部を抽出して示している。
【0052】
図6に入力されている数字は、上記比較工程で一致がみられた場合の超音波の入射強度Ik,l,mの合算値であり、図4の内容とは異なった値となっている(図4と図6は同一のデータを用いて得られたカウント値であり、手順に応じカウンタへの加算の方法を変えたものである)。
【0053】
(4)全探触子位置につき、上記計算を行った後、mを特定の値に固定し、Ck,l,mの内容をカウント値に応じて濃淡または色をつけて表示等すると、2次元の欠陥像(深さ方向位置を限定したCスコープ)が得られる。mの値を変化させて2次元欠陥像を作成すると深さ方向での欠陥形状の変化を観察できる。
【0054】
(実施例2)
上記手順2による欠陥像を図5(b)に示す。手順1による欠陥像図5(a)よりも更に欠陥像の鮮明さが増していることがわかる。
【0055】
また、図7はmの値を変化させて2次元欠陥像を作成して深さ方向での欠陥形状の変化を観察した結果を示している。欠陥像の合成手順に当り手順2を用いた。図7(a)〜(f)は上記実施の形態2の装置を用いて、厚さ160mmの鋼製試験片の深さ約60mmの位置にある微小欠陥を周波数2MHz、振動子径:50.8mm、水中焦点距離:406mmの集束プローブを用いて、深さ40mmの位置に焦点を設定して測定した結果を示している。対比のため同条件での従来のCスキャン探傷による欠陥映像を図8に示している。従来のCスキャン探傷では単に円形にみえる欠陥が、深さによって異なる位置に反射面を有することがわかり、本発明の方法により欠陥の3次元形状の把握が容易に出来ることがわかる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限るものではなく、被検体が鋼板の場合のみならず、例えばロールなどの円柱体や鋼管であっても適用でき、更に材質は鋼でなくても樹脂やその他金属あるいは全く別のものであっても適用可能であることは明らかである。また、被検体は静止物体に限る必要性はなく、移動物体が対象であってももちろん適用可能である。被検体を浸漬する媒体も水のほか、油やその他のものであってももちろんよい。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、異物質の含有、ボイド、内部割れなどの内部欠陥が存在しうる製品の品質評価において、製品の内部品質を詳細に検査して、有害な内部欠陥を有する製品の需要家への納入を防止できるようになり、更に内部欠陥の性状から製造技術の問題点を調べ、内部欠陥が発生しない製造技術を確立できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成にかかる装置を示す、一部断面図を含むブロック図
【図2】本発明に用いる集束ビームを示す図
【図3】本発明の欠陥像の合成方法を示す斜視図
【図4】カウント値の例を示す図表
【図5】本発明の効果の例を従来例と比較して示す図
【図6】図4と異なる加算方法によるカウント値の例を示す図表
【図7】本発明法による測定結果の一例を示す図
【図8】従来技術による欠陥映像の一例を示す図
【図9】従来技術の構成にかかる装置を示す、一部断面図を含むブロック図
【図10】従来技術の問題点をを説明するための斜視図
【図11】従来の開口合成法の原理を説明するための断面図
【符号の説明】
1、110…被検体
10、111…超音波プローブ
11、112…送信回路
12、113…受信増幅器
13…欠陥エコービーム路程計測回路
14…欠陥像合成装置
15…欠陥像表示装置
21…x方向位置検出手段
22…y方向位置検出手段
51…表面エコー
52…欠陥エコー
114…ゲート回路
115…ピークディテクタ
120…振動子アレイ
Claims (2)
- 水浸型超音波プローブと被検体との間に水を介在させ、該超音波プローブを被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体に向け送信し、該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を受信して内部欠陥を映像化する超音波による内部欠陥の映像化方法において、
点集束型超音波プローブから、焦点の深さ位置を内部欠陥の存在する深さによらず被検体内部に設定した超音波集束ビームを被検体に向け送信して、
該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を、前記焦点以遠にある内部欠陥からの反射波も含めて受信し、
各測定点において、欠陥エコーのビーム路程を記録し、
内部欠陥像の再構成を行うに当り、被検体の再構成像を同じ大きさの微小要素に分け、各測定点毎に計測したビーム路程から欠陥エコー源となりうる微小要素を選び出し、
超音波ビームの指向性の計算値または実験値から、上記微小要素における超音波の入射強度を求めて、反射源としての評価値を集計する評価値カウンタに前記入射強度を増分として加え、
全ての測定点について上記処理を行った後、前記評価値カウンタの値に応じて上記微小要素に濃淡や色をつけて、被検体の内部欠陥を表示することを特徴とする、超音波による内部欠陥の映像化方法。 - 水浸型超音波プローブと被検体との間に水を介在させ、該超音波プローブを被検体に対して相対的に走査しつつ、超音波を被検体に向け送信し、該被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を受信して内部欠陥を映像化する超音波による内部欠陥の映像化装置において、
超音波集束ビームの焦点の深さ位置を、内部欠陥の存在する深さによらず被検体内部に設定した点集束型超音波プローブと、
該点集束型超音波プローブから送信された超音波集束ビームの被検体の内部欠陥からの反射波(エコー)を、前記焦点以遠にある内部欠陥からの反射波も含めて受信する手段と、
各測定点において、欠陥エコーのビーム路程を記録する手段と、
内部欠陥像の再構成を行うに当り、被検体の再構成像を同じ大きさの微小要素に分け、各微小要素毎に反射源としての評価値を集計する評価値カウンタと、
各測定点毎に計測したビーム路程から欠陥エコー源となりうる微小要素を選び出し、超音波ビームの指向性の計算値または実験値から、上記微小要素における超音波の入射強度を求めて、前記評価値カウンタに前記入射強度を増分として加える手段と、
全ての測定点について上記処理を行った後、前記評価値カウンタの値に応じて上記微小要素に濃淡や色をつけて、被検体の内部欠陥を表示する手段と、
を備えたことを特徴とする、超音波による内部欠陥の映像化装置。
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