JP4014492B2 - 乗用車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車用空気入りタイヤに関し、さらに詳しくは、耐偏摩耗性を損なうことなく、新品時における雪上性能を向上させた乗用車空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
スタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤでは、トレッドゴムとして比較的軟らかいゴムを使用するため、ブロックやリブが倒れ込み易く、その倒れ込みに起因して偏摩耗を生じ易いという欠点がある。このような偏摩耗を抑制するために、一般的には溝壁面角度を大きく取るという対策が採られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、溝壁面角度を大きくすると、トレッド表面と溝壁面とのなす角度が鈍角になるためエッジ効果が低下して雪上性能が悪化することになる。
【0003】
特に、新品時のタイヤでは、トレッド表面に油分が付着していたり、製造工程での熱入れの影響のためにトレッドゴムが持つ本来の特性を発揮できない場合があり、上述したエッジ効果の低下による悪影響が顕著に現れる。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−99810号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐偏摩耗性を損なうことなく、新品時における雪上性能を向上することを可能にした乗用車用空気入りタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の乗用車用空気入りタイヤは、トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた空気入りタイヤにおいて、前記主溝の左右両側の壁面を、トレッド面から溝深さ0.5〜2.0mmの位置までの上縁部と、該上縁部より溝底側の主要部とに区分し、前記トレッド面の法線に対する前記主溝の壁面角度を、タイヤ赤道線側の主要部で7°〜10°とし、タイヤショルダー側の主要部で10°〜30°に設定する一方で、前記上縁部で−3°〜0°に設定したことを特徴とするものである。
【0007】
このように主溝の壁面を上縁部と主要部とに区分し、その壁面角度を上記の如く規定することより、主要部での壁面角度に基づいて耐偏摩耗性を良好にすると共に、上縁部での壁面角度に基づいてエッジ効果を確保して新品時の雪上性能を向上することが可能になる。なお、走行によりトレッド表層が摩耗したとき、主溝の壁面の上縁部は存在しなくなるが、その際にはトレッドゴム本来の特性に基づいて良好な雪上性能を発揮することができる。
【0008】
本発明において、トレッド部には、0℃でのJIS−A硬度が40〜70、好ましくは45〜60であるゴム組成物を使用することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成につき添付の図面を引用しながら詳細に説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0010】
図1は本発明の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのスタッドレス系トレッドパターンを示すものである。図1において、トレッド部10には、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝2とが設けられており、これら主溝1と横溝2とによって多数のブロック3が区分されている。また、各ブロック3にはタイヤ幅方向に延びる波形状のサイプ5が設けられている。
【0011】
図2は図1における主溝1の溝方向に直角な方向のA−A矢視断面図であり、図3は図1のB−B矢視断面図である。主溝1の左右両側の壁面は、トレッド面6から溝深さ0.5〜2.0mmの位置までの寸法aで規定される上縁部1aと、該上縁部1aより溝底側の主要部1bとに区分され、トレッド面6の法線に対する壁面角度が上縁部1aと主要部1bとで互いに異なっている。
【0012】
主溝1の主要部1bにおけるタイヤ赤道線側の壁面角度αは7°〜10°に、タイヤショルダー側の壁面角度βは10°〜30°に設定されている。一方、主溝1の上縁部1aにおける壁面角度γは−3°〜0°に設定されている。但し、図2及び図3において壁面角度γは0°であるため不図示である。ここで、主溝1の壁面角度は、壁面が溝底に向かって収束する方向にある場合を+(プラス)とし、その逆の場合を−(マイナス)としたものである。従って、上縁部1aにおける壁面角度γを−(マイナス)に設定した場合、主溝1の断面形状は図4のようなオーバーハング形状となる。また、主溝1の主要部1bにおける壁面角度α,βは上記のように設定されるが、主溝1の溝底の形状は特に限定されることはなく、図5に例示するように、石噛み等を防止するために溝底に段差を設けても良い。
【0013】
上述のように主溝1の壁面を上縁部1aと主要部1bとに区分し、主要部1bでの壁面角度α,βを大きくする一方で、上縁部1aでの壁面角度γを小さくすることにより、耐偏摩耗性を良好にしながら、エッジ効果を確保して新品時の雪上性能を向上することが可能になる。
【0014】
本発明では、主溝1の上縁部1aにおける壁面角度γは−3°〜0°に設定するが、この壁面角度γが0°を超えると新品時における雪上性能が不足し、逆に−3°未満であるとタイヤ製造時の故障の原因となる。上縁部1aの溝深さ方向の寸法aは、0.5〜2.0mm、より好ましくは0.5〜1.0mmとする。この寸法aが0.5mm未満であると雪上性能の改善効果が不十分になり、逆に2.0mmを超えると耐偏摩耗性が低下する。
【0015】
また、主溝1の主要部1bにおけるタイヤ赤道線側の壁面角度αは7°〜10°に、タイヤショルダー側の壁面角度βは10°〜30°に設定するが、この壁面角度αが7°未満であったり、壁面角度βが10°未満でであると耐偏摩耗性が不十分になる。つまり、タイヤが大きな横力を受けながら走行する場合、主溝1のタイヤショルダーS側に位置するブロック又はリブのエッジ部は大きく変形する傾向がある。そこで、横力による変形を抑えるために壁面角度βを10°以上にするのが有効である。しかしながら、壁面角度αが10°を超え、或いは、壁面角度βが30°を超えた場合、実質的な溝体積が減少するためウエット性能が低下することになる。また、壁面角度α,βを上述の上限値より大きくしつつウエット性能を確保するためには、トレッド部10の陸部表面積を減少させる必要があり、結果として十分な摩擦力を確保するができなくなる。これらの不都合を考慮して、壁面角度α,βを上記範囲に設定することにより、耐偏摩耗性とウエット性能とを両立することができる。
【0016】
図6は本発明の他の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのスタッドレス系トレッドパターンを示すものである。図6において、トレッド部10には、タイヤ周方向に直線状に延びる複数本の主溝1と、タイヤ周方向に直線状に延びると共に主溝1より狭い複数本の準主溝4と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝2とが設けられており、これら主溝1と準主溝4と横溝2とによって多数のブロック3が区分されている。また、各ブロック3にはタイヤ幅方向に延びる波形状のサイプ5が設けられている。
【0017】
本実施形態においても、主溝1の壁面角度を図1の実施形態と同様に設定することにより、耐偏摩耗性を損なうことなく、新品時における雪上性能を向上することができる。また、準主溝4の壁面角度も主溝1と同様に設定することによって新品時における雪上性能を一層向上することができる。
【0018】
図7は本発明の更に他の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのオールシーズン系トレッドパターンを示すものである。図7において、トレッド部10には、タイヤ周方向に直線状に延びる複数本の主溝1と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝2と、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ3本の横溝2を互いに連結する傾斜溝7とが設けられており、これら主溝1と横溝2と傾斜溝7とによって多数のブロック3が区分されている。また、各ブロック3にはタイヤ幅方向に延びるサイプ5が設けられている。
【0019】
本実施形態においても、主溝1の壁面角度を図1の実施形態と同様に設定することにより、耐偏摩耗性を損なうことなく、タイヤへの横力に対するエッジ効果を高め、とりわけ新品時における雪上性能を向上することができる。
【0020】
本発明は、特にトレッドゴムが軟らかいスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤに適用した場合に顕著な作用効果を奏する。これらスタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤのトレッド部には、0℃でのJIS−A硬度が40〜70、好ましくは45〜60であるゴム組成物が使用される。このようなゴム組成物は、氷雪路において良好な特性を発揮するものの、ブロックやリブの倒れ込みに起因して偏摩耗を生じ易いのである。
【0021】
【実施例】
先ず、図1のトレッドパターンを有するタイヤ(サイズ: 215/60R1695H)において、主溝の壁面角度α,β,γをそれぞれγ=0°,α=9°,β=10°とし、上縁部の寸法aだけを変化させた6種類のタイヤ1〜6を製作し、以下に示す要領により耐偏摩耗性の評価試験を実施した。
【0022】
その結果は、a=0mmとしたタイヤ1の評価結果を100とする指数で表1に示した。この指数値が大きいほど耐偏摩耗性が優れていることを意味する。
【0023】
〔耐偏摩耗性の評価試験方法〕
一般の舗装路を8000km走行後に主溝のセンター側のブロック列とショルダー側のブロック列の摩耗量をそれぞれ測定し、その差を求めた。この摩耗量の差の逆数を耐偏摩耗性の指標とした。
【0024】
【表1】
Figure 0004014492
【0025】
この表1より、主溝の上縁部の寸法aを2.0mm以下に設定すれば耐偏摩耗性が極端に低下することがないことを確認した。
【0026】
次に、図1のトレッドパターンを有するタイヤ(サイズ: 215/60R1695H)において、主溝の壁面角度α,βをそれぞれα=9°,β=10°とし、上縁部の寸法aをa=1.0mmとし、壁面角度γだけを変化させた6種類のタイヤ7〜12を製作し、以下に示す要領により雪上性能の評価試験を実施した。
【0027】
その結果は、γ=7°としたタイヤ7の評価結果を100とする指数で表2に示した。この指数値が大きいほど雪上性能が優れていることを意味する。
【0028】
〔雪上性能の評価試験方法〕
圧雪路面のテストコースにおいて、テストドライバーによる旋回時のフィーリング評価を行った。このフィーリング評価を雪上性能の指標とした。
【0029】
【表2】
Figure 0004014492
【0030】
この表2より、主溝の上縁部の傾斜角度γを0°以下にすることにより雪上性能が向上することを確認した。なお、傾斜角度γが−3°未満ではタイヤ製造上の問題が生じる。
【0031】
次に、図1のトレッドパターンを有するタイヤ(サイズ: 215/60R1695H)において、主溝の上縁部の寸法a及び壁面角度αをそれぞれa=1.0mm,α=7°とし、壁面角度β,γだけを変化させた5種類のタイヤ13〜17を製作し、上記と同様の耐偏摩耗性の評価試験、及び以下に示す要領によるウエット性能の評価試験をそれぞれ実施した。
【0032】
これらの結果はγ=β=7°としたタイヤ13の評価結果を100とする指数で表3に示した。これらの指数値が大きいほど耐偏摩耗性及びウエット性能が優れていることを意味する。
【0033】
〔ウエット性能の評価試験方法〕
ウエット路面のテストコースにおいて、水深約1mmの平地を定常円旋回走行しながら速度を上げていった際の最大横加速度を測定した。この最大横加速度をウエット性能の指標とした。
【0034】
【表3】
Figure 0004014492
【0035】
この表3より、主溝の上縁部の傾斜角度γを低角度(マイナスの角度)とし、主溝の主要部の傾斜角度βを30°以下の範囲でなるべく高角度にすることにより、ウエット性能の低下を最小限に止めながら優れた耐偏摩耗性が得られることを確認した。
【0036】
【発明の効果】
上述したように、本発明の乗用車用空気入りタイヤによれば、主溝の壁面を上縁部と主要部とに区分し、これら上縁部及び主要部における壁面角度を規定することより、耐偏摩耗性を損なうことなく、新品時における雪上性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのスタッドレス系トレッドパターンを示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A矢視断面図である。
【図3】図1におけるB−B矢視断面図である。
【図4】主溝の壁面角度の説明をするための説明図である。
【図5】主溝の壁面形状の説明をするための説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのスタッドレス系トレッドパターンを示す平面図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態からなる乗用車用空気入りタイヤのオールシーズン系トレッドパターンを示す平面図である。
【符号の説明】
1 主溝
1a 上縁部
1b 主要部
2 横溝
3 ブロック
4 準主溝
5 サイプ
6 トレッド面
7 傾斜溝
10 トレッド部
E タイヤ赤道線
S タイヤショルダー

Claims (2)

  1. トレッド部にタイヤ周方向に延びる主溝を設けた空気入りタイヤにおいて、
    前記主溝の左右両側の壁面を、トレッド面から溝深さ0.5〜2.0mmの位置までの上縁部と、該上縁部より溝底側の主要部とに区分し、前記トレッド面の法線に対する前記主溝の壁面角度を、タイヤ赤道線側の主要部で7°〜10°とし、タイヤショルダー側の主要部で10°〜30°に設定する一方で、前記上縁部で−3°〜0°に設定した乗用車用空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッド部を構成するゴム組成物は、0℃でのJIS−A硬度が40〜70である請求項1に記載の乗用車用空気入りタイヤ。
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