JP4013414B2 - 樹脂パネルの製造方法及び樹脂パネル - Google Patents

樹脂パネルの製造方法及び樹脂パネル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂パネルの製造方法及び樹脂パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車におけるウインドウ部材の材料としてはガラスが一般的であるが、ガラスは比重が大きいので軽量化のため、ガラスに代えてポリカーボネートあるいはアクリル等の樹脂を材料にした樹脂ウインドウも使用されている。樹脂ウインドウはガラスに比較して表面が柔らかく傷が付きやすいため、通常、少なくとも片面にハードコート処理を施す。ハードコート処理の代表的な方法としては、片面にハードコート層が形成された樹脂(ポリカーボネート)フィルム又はシートを、射出成形金型内にハードコート面が金型壁面と対向するように設置した状態で、溶融樹脂を金型内に射出して一体成形するインサート成形があげられる(例えば、特開平6−170883号公報)。
【0003】
樹脂フィルム又はシートは、金型内への配置前に、金型壁面の形状に沿った形状に成形することも可能であるが、余分な工数が必要であり、ハードコート処理等の作業上も扱いづらくなる。従って、製品の曲率がよほど大きい場合を除いて、平板状の樹脂フィルム又はシートを予備成形なしに金型内に配置し、キャビティ内に射出される溶融樹脂が樹脂フィルム又はシートを金型壁面に押圧することにより、所定の形状に成形する方法が一般的である。そして、樹脂フィルム又はシートの上端を固定し、他の部分は自由状態で金型内に配置し、溶融樹脂をキャビティの上側から下側に向かって流れるように射出する方法が実施されている。
【0004】
前記フィルムインサート法では、製品形状が大きく、また、曲率が大きくなるほどフィルム又はシートが製品形状、即ち金型内面の形状に追従し難くなる。そして、図8及び図9に示すように、金型のキャビティ30内に配置された状態で金型内面の形状に追従しきれなくなったフィルム(又はシート)31には、金型内でゲートから遠い位置に大きな波打ち(しわ)32が発生する。なお、図8では上側にゲート(図示せず)が配置されている。波打ち32が大きな状態で樹脂が射出されると、波打ちが解消されずに、図10に示すように製品33にすじや樹脂の回り込み、フィルムの折れ曲がり等の欠点部34やフィルム31の剥がれが発生して製品不良となる。また、フィルム31が折れ曲がった際にハードコート層が割れて、割れた部分が金型内に残る場合がある。ハードコート層の破片が金型内に残った状態で次の製品を製造すると、その破片が次に成形される製品に付着して次の製品まで不良品となる。
【0005】
このような波打ちに起因する不良品の発生を防止する方法として、特開平8−267504号公報や特開平10−109327号公報には、キャビティ内に溶融樹脂が所定量射出されるまで、インサートフィルムの周縁部を金型の所定位置に可動部材で押さえ付けておき、しわの発生を防止した状態で溶融樹脂の射出を行う方法が開示されている。可動部材は溶融樹脂がキャビティ内に完全に射出されるまでにキャビティ外へ退避する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記のように可動部材を使用してフィルム又はシートを所定位置に保持する構成では、フィルム又はシートの周縁を広い範囲にわたって所定位置に保持する必要があり、金型及び装置全体の構造が複雑になる。また、このようにフィルム又はシートの端部を金型の所定位置に押さえ付けておき、射出成形の途中で押さえ付けを解除する方法を、樹脂ウインドウのように成形品の一端側から溶融樹脂を射出して製造するものに適用するのは難しい。なせならば、フィルム又はシートの端部が押さえ付けられた状態で溶融樹脂が射出されたとき、その熱によって膨張するフィルム又はシートの絶対量が大きいため、フィルム又はシートの弛みが大きくなって、しわが発生する。
【0007】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は曲率あるいは型が大きな製品のフィルムインサート成形において、簡単な構成で製品表面にすじ、樹脂の回り込み、フィルム又はシートの剥がれ等の発生を防止できる樹脂パネルの製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、フィルム又はシートの一部を金型に固定した状態でフィルム又はシートをキャビティ内に配置し、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出してフィルム又はシートを成形樹脂表面に一体成形する樹脂パネルの製造方法において、成形品の表面にしわが発生し易い位置のフィルム又はシートと対向する金型面と反対側の金型面に凹部を設け、前記凹部と対向する箇所に切り欠きを設けたフィルム又はシートを金型の所定位置に固定して、溶融樹脂をキャビティ内に射出する。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記フィルム又はシートはその一端において前記金型に固定され、前記金型には前記フィルム又はシートの固定側にゲートの射出口が設けられ、前記凹部は前記射出口と反対側に設けられている。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記金型は可動金型が水平方向へ移動可能に設けられ、前記フィルム又はシートは上端で固定されて上下方向に延びるようにキャビティ内に配置される。
【0011】
請求項4に記載の発明では、樹脂製のパネル本体の表面にフィルム又はシートがインサート成形により一体成形された樹脂パネルであって、フィルム又はシートの周縁の一部にスリットが形成され、パネル本体には前記スリットが形成された部分と反対側の面に凸部が形成されている。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記樹脂パネルは自動車用の樹脂ウインドウである。
請求項6に記載の発明では、フィルム又はシートの一部を金型に固定した状態でフィルム又はシートをキャビティ内に配置し、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出してフィルム又はシートを成形樹脂表面に一体成形する樹脂パネルの製造方法において、成形品の表面にしわが発生し易い位置のフィルム又はシートと対向する金型面と反対側の金型面を構成する固定金型又は可動金型に、前記反対側の金型面に凹部を形成する位置と、該金型面が平坦になる位置とに移動可能な可動部材を設け、前記可動部材を金型面に凹部を形成する位置に配置した状態で、前記凹部と対向する箇所に切り欠きを設けたフィルム又はシートを金型の所定位置に固定して溶融樹脂をキャビティ内に射出し、溶融樹脂が所定量キャビティ内に射出された後、前記可動部材を金型面が平坦になる位置まで移動させて残りの溶融樹脂を射出する。
【0013】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項3及び請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記樹脂パネルは自動車用の樹脂ウインドウである。
従って、請求項1に記載の発明では、フィルム又はシートの一部が金型に固定された状態でフィルム又はシートがキャビティ内に配置され、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出されてフィルム又はシートが成形樹脂表面に一体成形される。金型に一部が固定されたフィルム又はシートの自由端のうち、ゲートから遠い部分に波打ち(しわ)が発生し、金型面に設けられた凹部と対応する位置に大きな波打ちが発生する。その状態で溶融樹脂によりフィルム又はシートが順次金型面に押し付けられながらフィルム又はシートが成形樹脂表面に一体成形される。凹部と対向する箇所に切り欠きがないと、その部分でフィルム又はシートが折れ曲がったり、しわになる。しかし、フィルム又はシートの当該部分に切り欠きが存在するため、フイルムはスリットが存在する状態で折れ曲がりやしわが発生せずに成形樹脂表面に一体成形される。
【0014】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、フィルム又はシートはその一端において前記金型に固定されるため、波打ちは固定部と反対側の端部に発生する。そして、フィルム又はシートの固定部である一端から自由端である他端までの距離が大きいため、波打ちが大きくなり易い。しかし、波打ちは凹部に集中し、フィルム又はシートには凹部と対応する位置に切り欠きが設けられているため、フィルム又はシートはスリットが存在する状態で折れ曲がりやしわが発生せずに成形樹脂表面に一体成形される。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、フィルム又はシートは上端で固定されて上下方向に延びるようにキャビティ内に配置されるため、水平に延びるように配置される場合に比較して、フィルム又はシートの一端を固定するだけでフィルム又はシートがキャビティに沿った位置に配置され易い。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様にして樹脂パネルを製造することができ、フィルム又はシートはスリットが存在する状態で折れ曲がりやしわが発生せずにパネル本体の表面に一体成形される。
【0017】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の発明において、前記樹脂パネルは自動車用の樹脂ウインドウであるため、自動車用の樹脂ウインドウの生産時の歩留まりが良くなる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、フィルム又はシートの一部が金型に固定された状態でフィルム又はシートがキャビティ内に配置され、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂が射出されてフィルム又はシートが成形樹脂表面に一体成形される。溶融樹脂が所定量キャビティ内に射出されるまでは、可動部材が金型面に凹部を形成する位置に配置されているため、凹部と対応する位置に波打ちの山が位置する。そして、その状態で溶融樹脂によりフィルム又はシートが順次金型面に押し付けられながらフィルム又はシートが成形樹脂表面に一体成形される。凹部と対向する箇所に切り欠きが存在するため、フィルム又はシートはスリットが存在する状態で折れ曲がりやしわが発生せずに成形樹脂表面に一体成形される。溶融樹脂が所定量キャビティ内に射出された後、金型面が平坦になる位置に配置され、残りの溶融樹脂が射出され、成形品はスリットと対応する反対側の面の凸部のない状態に形成される。
【0019】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項3及び請求項6のいずれか一項に記載の発明において、自動車用の樹脂ウインドウの製造に適用される。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を自動車の樹脂ウインドウに具体化した第1の実施の形態を図1〜図5に従って説明する。図1(a)〜(c)に示すように、樹脂パネルとしての樹脂ウインドウ1はほぼ長方形状に形成され、樹脂製のパネル本体2と、その表面にインサート成形により一体成形されたフィルム又はシート3(以下、単にフィルム3と称す。)とを備えている。フィルム3の周縁の一部にスリット4が形成され、パネル本体2にはスリット4が形成された部分と反対側の面に凸部5が形成されている。スリット4はその長さが、樹脂ウインドウ1を車体パネルに取り付けた際、ウェザストリップなどで覆われる長さに形成されている。例えば、樹脂ウインドウ1が800mm×500mm程度の大きさの場合、スリット4の長さは10mm程度である。パネル本体2及びフィルム3の材質にはポリカーボネートが使用されている。
【0021】
次に樹脂ウインドウ1の製造方法を説明する。フィルムインサート成形に使用される金型は、図2(a)に示すように、固定金型6と可動金型7とを備え、可動金型7が水平方向に移動可能に形成されている。固定金型6にはゲート8と、インサート用のフィルム3の一端を係止する係止部としての2本の係止ピン9と、フィルム3の上端を吸引する吸引孔10(図3にのみ図示)とが設けられている。図3に示すように、係止ピン9はゲート8の射出口8aを挟んで左右両側に突設されている。吸引孔10は複数設けられ、図示しない負圧源から負圧が作用するようになっている。
【0022】
固定金型6及び可動金型7の対向する面にはキャビティ11を形成するための凹部6a,7aが形成されている。キャビティ11の形状は可動金型7側から固定金型6を見た場合、図3に示すようにほぼ長方形状の成形品の形状に対応する部分の上側に、フィルム3の取付け部3aに対応する形状が膨出形成された形状となっている。また、水平面で切断した場合、図4に示すように固定金型6側に凸となる円弧状に形成されている。
【0023】
キャビティ11は全ての部分が同じ深さに形成されているのではなく、射出口8aから遠い側の端部、この実施の形態では下側の端部の所定位置に凹部11aが形成されている。凹部11aの位置は予め実験を行い、成形品にしわが発生し易い位置の近傍に設ける。この実施の形態のように成形品が横長で射出口8aが中央にある場合は、凹部11aは射出口8aと反対側の中央を挟んだ2箇所に設けられる。凹部11aの形状はキャビティ11の大きさや形状によって異なり、大きな波打ちが凹部11aと対応する位置に発生するように実験結果に基づいて設定される。
【0024】
この金型内にセットされるフィルム3は、図3に鎖線で示すように、キャビティ11と対応する形状に形成されるとともに、係止ピン9が嵌挿される孔3bと、射出口8aと対応する位置に形成され射出口8aより大きな孔3cとが取付け部3aに形成されている。また、フィルム3には凹部11aと対向する箇所に切り欠き12が形成されている。切り欠き12の大きさはキャビティ11内に溶融樹脂が射出されたときにフィルム3に発生する波打ちを最終的に吸収して、フィルム3がしわの無い状態でパネル本体2の表面に一体成形されたときにスリット4が形成される大きさに形成されている。フィルム3には片面にハードコート処理が施されている。
【0025】
次に前記のように形成された金型を使用して樹脂ウインドウを成形する場合の手順及び作用を説明する。
先ず可動金型7を開放位置に移動した状態でフィルム3をハードコート処理面が固定金型6と対向する状態で係止ピン9に係止して位置決めする。そして、負圧源から吸引孔10に吸引作用を及ぼさせ、フィルム3をその取付け部3aにおいて固定金型6に固定する。キャビティ11が上下方向に延びるように形成されているため、フィルム3は自重でキャビティ11に沿った状態に配置される。その状態で可動金型7を閉じる。成形品の曲率が大きな場合は、この段階でもフィルム3の取付け部3aから遠い部分が波打つた状態となる。
【0026】
次に溶融樹脂(ポリカーボネート)をゲート8からキャビティ11内に射出する。溶融樹脂がキャビティ11内に射出されると、フィルム3はその熱により膨張する。そして、溶融樹脂はキャビティ11内を射出口8aから離れた側及び下方に向かって順次フィルム3を固定金型6の壁面に押し付けながら移動する。
【0027】
成形品が大型の場合フィルム3の熱膨張によって伸びる絶対量が大きくなり、フィルム3はキャビティ11内で弛んだ状態となる。そして、溶融樹脂の流れによってその弛みが順次フィルム3の自由端側へ押されて図4に示すように、フィルム3の自由端側に大きな波打ち13が発生する。波打ち13が大きな状態のまま溶融樹脂が波打ち部分まで到達すると、溶融樹脂が波打ち部を均一に固定金型6の壁面に押さえ付けるのが難しくなり、図5に示すように、成形品(製品)14に波打ち13の頂点と対応する箇所にしわ15が発生したり、フィルム3が折れ曲がったり、あるいはパネル本体2とフィルム3との間に隙間が残った状態となって不良品となる。
【0028】
キャビティ11の深さが均一であれば波打ち13の山及び谷の位置は成形品の製造サイクル毎に変動する。しかし、この実施の形態ではキャビティ11の端部に凹部11aが存在するため、凹部11aと対応する位置に大きな波打ち13の山(又は谷)が存在する状態となりその他の部分の波打ち13は小さくなる。
【0029】
波打ち13が小さな状態、即ち波の高さが低くなると、溶融樹脂が波打ち部分を押圧しながら移動する際にフィルム3が均一に押し広げられ、成形品14にフィルム3のしわや折れ曲がりあるいは隙間が生じるのが防止される。大きな波打ち13が存在すると、溶融樹脂によりフィルム3が順次金型面に押し付けられる際に、フィルム3が折れ曲がったり、しわになる。しかし、フィルム3の当該部分に切り欠き12が存在するため、フィルム3は円滑に金型面に押し付けられ、折れ曲がりやしわが発生せずに成形樹脂(パネル本体2)の表面にスリット4が存在する状態で一体成形される。
【0030】
キャビティ11内に充填すべき所定量の溶融樹脂の射出が終了し、金型の冷却後、成形品14が金型から取り出され、取付け部3aとその周辺が除去されて、成形品(樹脂ウインドウ1)14が完成する。図1(b)に示すように、樹脂ウインドウ1はパネル本体2の表面にフィルム3が一体成形された状態に形成される。スリット4の長さは10mm程度のため、樹脂ウインドウ1を車体パネルに取り付ける際にウェザストリップ等で覆われ、支障を生じない。
【0031】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) 成形品14の表面にしわが発生し易い位置のフィルム3と対向する金型面と反対側の金型面に凹部11aを設け、凹部11aと対向する箇所に切り欠き12を設けたフィルム3を金型の所定位置に固定して、溶融樹脂をキャビティ11内に射出する。従って、大きな波打ち13が凹部11aと対応する位置に発生し、凹部11a以外の部分の波打ち13は小さくなり、フィルム3のすじ、樹脂の回り込み、フィルムの剥がれ、折れ曲がり、パネル本体2との間の隙間等は凹部11aと対応する位置にのみ発生可能となるが、フィルム3には当該箇所に切り欠き12が存在するため、不良品となるような大きなすじ、樹脂の回り込み、フィルムの剥がれ、折れ曲がり、パネル本体2との間の隙間等の発生を防止できる。また、ハードコート層の割れも発生せず、ハードコート層の破片が次の成形品に混入することが防止される。
【0032】
(2) フィルム3はその一端において金型に固定され、金型にはフィルム3の固定側にゲート8の射出口8aが設けられ、凹部11aは射出口8aと反対側に設けられている。従って、成形品14からゲート8に繋がるバリが成形品14の端部に位置する状態となり、バリの除去跡が目立たないようにする処理が簡単になる。
【0033】
(3) 金型は可動金型7が水平方向へ移動可能に設けられ、フィルム3は上端で金型に固定されて上下方向に延びるようにキャビティ11内に配置される。従って、水平に延びるように配置される場合に比較して、フィルム3の一端を固定するだけでフィルム3がキャビティ11に沿った位置に配置され易く、フィルム3のセットが簡単になる。
【0034】
(4) パネル本体2及びフィルム3は共に同じ材質で形成されているため、パネル本体2及びフィルム3が別の材質で形成された場合に比較してその界面の密着性が向上する。
【0035】
(5) パネル本体2及びフィルム3の材質にポリカーボネートを使用しているため、自動車の樹脂ウインドウ1として従来使用されている材料をそのまま使用でき、樹脂ウインドウ1としての必要な機能を確保できる。
【0036】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態を図6及び図7に従って説明する。この実施の形態では成形品14に凸部5がないものを製造可能な点が前記実施の形態と大きく異なっている。前記実施の形態と同一部分は同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0037】
この実施の形態ではキャビティ11に設けられる凹部11aが、成形途中で消失可能に構成されている。詳述すれば、凹部11aは可動金型7の凹部7aの所定位置に形成された孔16と、孔16内を摺動可能な可動部材17の先端面17aとによって形成され、可動部材17の先端面17aが凹部7aと同一面を構成する位置、即ち凹部7aを構成する金型面が平坦になる位置と、金型面に凹部11aを形成する位置(没入位置)とに移動可能となっている。可動部材17は例えば図示しない油圧シリンダによって作動される。
【0038】
次に前記のように形成された金型を使用して樹脂ウインドウを成形する場合の手順及び作用を説明する。
溶融樹脂がキャビティ11内に所定量射出されるまでは、可動部材17は可動金型7の凹部7aの所定位置に凹部11aを形成する没入位置に保持される。従って、前記実施の形態と同様にフィルム3が金型の所定位置にセットされ、可動金型7が閉じられて溶融樹脂の射出が開始され、所定量の溶融樹脂がキャビティ11内に射出されるまでは前記実施の形態と同じである。そして、図6に示すように、凹部11aと対応する位置に大きな波打ち13が発生する。
【0039】
溶融樹脂が所定量キャビティ11内に射出された後、可動部材17が作動され、可動金型7の金型面が平坦になる位置まで先端面17aが移動される。このとき溶融樹脂は流動性があるため、可動部材17は溶融樹脂を押しながら確実に所定位置まで移動される。
【0040】
そして、キャビティ11内に充填すべき所定量の溶融樹脂の射出が終了し、金型の冷却後、成形品14が金型から取り出され、取付け部3aと対応するばりが除去されて、成形品(樹脂ウインドウ1)14が完成する。図7に示すように、成形品14はスリット4と反対側の面(図7の下側面)に凸部5がなく、全体が一定の厚さとなる。
【0041】
従って、この実施の形態では前記実施の形態の(1)〜(5)の効果の他に、次に効果を有する。
(6) 凸部5がなく、全体が一定の厚さの成形品14を得ることができ、車体パネルの樹脂ウインドウ1の取付部(支持部)を改造せずに車体パネルに取り付けることができる。
【0042】
なお、実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 大きな波打ち13を所定位置に発生させるための凹部11aは2箇所に限らず成形品14の形状や大きさにより、適宜変更してもよい。
【0043】
○ 樹脂パネルは必ずしも湾曲しているものに限らず、平面状のものに適用してもよい。平面状のものでも大きなものの場合は、溶融樹脂の熱により波打ちが発生してしわ等が発生し易いが、前記各実施の形態のようにキャビティ11に設けた凹部11aと、フィルム3に設けた切り欠き12の存在により成形品にしわ等が発生するのを防止できる。
【0044】
○ フィルム3を固定金型6に固定する代わりに、可動金型7に固定してもよい。その場合、キャビティ11の形状は可動金型7側に凸となり、フィルム3はハードコート処理面が可動金型7の壁面と対向するように配置され、凹部11aは固定金型6側に形成される。
【0045】
○ フィルム3を金型に固定する場合、吸引孔10からの吸引作用をなくして、係止ピン9による位置決めと、係止ピン9よりフィルム3の端部寄りの部分を固定金型6と可動金型7とで挟持する構成としてもよい。この場合負圧源が不要となり、構成がより簡単になる。
【0046】
○ 金型を、可動金型7が上下方向へ移動する構成、即ちキャビティ11が水平に延びるように配置される構成としてもよい。
○ 自動車用の樹脂ウインドウ1に限らず、建築物の窓用の樹脂ウインドウや間仕切りあるいは装飾用のパネル等他の樹脂パネルに適用してもよい。この場合、フィルム3の片面のハードコート処理を省略してもよい。
【0047】
○ フィルム3はゲート8の射出口8aの近傍で固定すればよく、透明な樹脂パネルでない場合は、射出口8aの位置を成形品の端部と対向する位置ではなく、中央と対向する位置に配置してもよい。この場合は、フィルム3の固定に吸引孔を使用するのが好ましい。
【0048】
前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の発明(技術的思想)について、以下にその効果とともに記載する。
(1) フィルム又はシートの一部を金型に固定した状態でフィルム又はシートをキャビティ内に配置し、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出してフィルム又はシートを成形樹脂表面に一体成形する樹脂パネルの製造方法において、キャビティの成形品の表面にしわが発生し易い位置と対応する所定箇所に、フィルム又はシートの波打ちが発生し易い部分を設け、当該部分と対向する箇所に切り欠きを設けたフィルム又はシートを金型の所定位置に固定して、溶融樹脂をキャビティ内に射出する樹脂パネルの製造方法。この場合、射出成形時に所定箇所にフィルム又はシートの大きな波打ちが発生するが、当該箇所に切り欠きが存在するため、成形品にフィルム又はシートのしわや折れ曲がりあるいは隙間が生じるのを防止できる。
【0049】
(2) 請求項4に記載の発明において、前記パネル本体及びフィルム又はシートは共にポリカーボネートで形成されている。この場合、自動車の樹脂ウインドウとして従来使用されている材料をそのまま使用でき、樹脂ウインドウとしての必要な機能を確保できる。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜請求項7に記載の発明によれば、曲率あるいは型が大きな製品のフィルムインサート成形において、簡単な構成で製品表面にすじ、樹脂の回り込み、フィルム又はシートの剥がれ等の発生を防止できる。
【0051】
請求項2に記載の発明によれば、成形品からゲートに繋がるバリが成形品の端部に位置する状態となり、バリの除去跡が目立たないようにする処理が簡単になる。
【0052】
請求項3に記載の発明によれば、フィルム又はシートが水平に延びるように配置される場合に比較して、フィルム又はシートの一端を固定するだけでフィルム又はシートがキャビティに沿った位置に配置され易く、フィルム又はシートのセットが簡単になる。
【0053】
請求項5及び請求項7に記載の発明によれば、自動車用の樹脂ウインドウとして生産時の歩留まりが良くなる。
請求項6に記載の発明によれば、凸部がなく、全体が一定の厚さの成形品を得ることができ、樹脂パネルの取付部(支持部)の一部に凸部を避ける部分を形成する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は第1の実施の形態の樹脂ウインドウの概略斜視図、(b)は凸部と対応する位置の模式断面図、(c)はその部分拡大図。
【図2】 (a)は金型にフィルムがセットされた状態の模式断面図、(b)はその部分拡大図。
【図3】 固定金型のキャビティ部分の模式正面図。
【図4】 金型を凹部の位置において水平面で切断した状態の模式断面図。
【図5】 切り欠きがなく成形品にしわが発生した状態の模式断面図。
【図6】 第2の実施の形態の可動部材が没入位置にある模式断面図。
【図7】 同じく成形品が完成した状態の模式断面図。
【図8】 波打ちの発生状態を示す模式正面図。
【図9】 図8のIX−IX線における模式断面図。
【図10】 しわ等の欠点部が発生した成形品の斜視図。
【符号の説明】
1…樹脂ウインドウ、2…パネル本体、3…フィルム又はシート、4…スリット、5…凸部、6…固定金型、7…可動金型、8…ゲート、8a…射出口、11…キャビティ、11a…凹部、12…切り欠き、14…成形品、17…可動部材、17a…先端面。

Claims (7)

  1. フィルム又はシートの一部を金型に固定した状態でフィルム又はシートをキャビティ内に配置し、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出してフィルム又はシートを成形樹脂表面に一体成形する樹脂パネルの製造方法において、
    成形品の表面にしわが発生し易い位置のフィルム又はシートと対向する金型面と反対側の金型面に凹部を設け、前記凹部と対向する箇所に切り欠きを設けたフィルム又はシートを金型の所定位置に固定して、溶融樹脂をキャビティ内に射出する樹脂パネルの製造方法。
  2. 前記フィルム又はシートはその一端において前記金型に固定され、前記金型には前記フィルム又はシートの固定側にゲートの射出口が設けられ、前記凹部は前記射出口と反対側に設けられている請求項1に記載の樹脂パネルの製造方法。
  3. 前記金型は可動金型が水平方向へ移動可能に設けられ、前記フィルム又はシートは上端で固定されて上下方向に延びるようにキャビティ内に配置される請求項2に記載の樹脂パネルの製造方法。
  4. 樹脂製のパネル本体の表面にフィルム又はシートがインサート成形により一体成形された樹脂パネルであって、フィルム又はシートの周縁の一部にスリットが形成され、パネル本体には前記スリットが形成された部分と反対側の面に凸部が形成されている樹脂パネル。
  5. 前記樹脂パネルは自動車用の樹脂ウインドウである請求項4に記載の樹脂パネル。
  6. フィルム又はシートの一部を金型に固定した状態でフィルム又はシートをキャビティ内に配置し、ゲートからキャビティ内に溶融樹脂を射出してフィルム又はシートを成形樹脂表面に一体成形する樹脂パネルの製造方法において、
    成形品の表面にしわが発生し易い位置のフィルム又はシートと対向する金型面と反対側の金型面を構成する固定金型又は可動金型に、前記反対側の金型面に凹部を形成する位置と、該金型面が平坦になる位置とに移動可能な可動部材を設け、前記可動部材を金型面に凹部を形成する位置に配置した状態で、前記凹部と対向する箇所に切り欠きを設けたフィルム又はシートを金型の所定位置に固定して溶融樹脂をキャビティ内に射出し、溶融樹脂が所定量キャビティ内に射出された後、前記可動部材を金型面が平坦になる位置まで移動させて残りの溶融樹脂を射出する樹脂パネルの製造方法。
  7. 前記樹脂パネルは自動車用の樹脂ウインドウである請求項1〜請求項3及び請求項6のいずれか一項に記載の樹脂パネルの製造方法。
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