JP4013400B2 - 真空式下水道の伏越構造 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は真空式下水道の伏越構造に係り、特に、汚水発生源から真空ステーションまでの真空下水管路に障害物がある場合において、該障害物の揚程による真空度の低下を防止し、汚水搬送可能範囲の拡大を図ると共に、下水管の設計の自由度を高める真空式下水道の伏越構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空式下水道は、下水管内を真空(完全な真空ではなく、減圧状態を指称する。)にし、大気との圧力差を利用して汚水を収集するシステムである。
【0003】
この真空式下水道システムにおいては、家庭や工場等の衛生設備から排出される排水は、真空弁ユニット(中継ユニット)から真空下水管を経て真空ステーションへ送られ、その後、下水処理施設へ送られる。
【0004】
このような真空式下水道システムにおいて、真空下水管路に登り勾配がある場合、その勾配における揚程は、真空ステーションで発生した真空度を消費し、真空度の低下要因となり、搬送可能範囲を狭める原因となる。
【0005】
そこで、汚水発生源から真空ステーションまでの真空下水管路に障害物が形成される場合において、該障害物の揚程による真空度の低下を防止し、汚水搬送可能範囲の拡大を図るために、図2に示す如く、障害物(図では河川)1の一側に設けられた上流側真空下水管2と、障害物(河川)1の他側に設けられた下流側真空下水管7とを接続する伏越構造が用いられている。この伏越構造は、上流側真空下水管2が連なる気液分離器3と、下流側真空下水管7が連なる気液合流器6と、それぞれ障害物1の下側をくぐり気液分離器3と気液合流器6とを接続する通水管4及び通気管5とを有する。
【0006】
上流側真空下水管2は、下流側真空下水管7よりも若干の高さH(Hは図中記入なし)だけ高位に配設されているが、このHは通水管4内を下水が上流側真空下水管2から下流側真空下水管3に向って流れるのに必要な小さな水頭に相当する。
【0007】
このように構成された図2の真空式下水道の伏越構造において、上流側真空下水管2内を流れてきた気液混合流は分離器にて、空気と汚水に分離され、汚水は通水管を流下し、空気は通気管を流下する。汚水は通水管4を水頭Hに従って自然流下する如くしてくぐり抜けて下流側真空下水管7に達し、該下流側真空下水管7内をさらに下流に向って流れる。下流側真空下水管7内の負圧は気液合流器6、通気管5及び気液分離器3を経て上流側真空下水管2に伝達される。
【0008】
このような真空式下水道の伏越構造であれば、下流側真空下水管7と上流側真空下水管2とを連通する通気管5により、真空ステーションで発生した負圧を常時、真空下水管内に伝えているので、真空ステーションで発生した負圧が、この障害物をくぐる際の真空下水管における揚水のためには消費されず、この負圧が他箇所での揚程に有効に利用される。
【0009】
なお、通気管5を通水管4と併せて河川1の下側に配設することは特許第2639272号に記載されている。この特許第2639272号の第0032段落には、通水管4は下流に向って下り勾配となるように設けられると記載されている。
【0010】
図2では通気管は通水管と併せて河川等の障害物の下側に配置されているが、障害物の上側に配設することも公知である(例えば特開平7−268936号)。
【0011】
この特開平7−268936号には、上流側真空下水管2に逆止弁を設けると共に、この逆止弁と通水管4との間に大気開放弁を設け、且つ通気管に開閉弁を設け、この開閉弁を開放して通水管4の上流側を大気に連通させると共に開閉弁を閉弁して通水管4内の堆積物を上流側真空下水管2へブローアウトすることが記載されている
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
2のように通気管5を障害物1の下側に配設した伏越構造にあっては、この通気管5内に水が流入したり結露水が溜まったりした場合、気道が減少し、極端な場合には気道が閉塞し真空損失が生じるおそれがある。
【0013】
本発明は、この通水管内の水の滞留を防止でき、また滞留水を容易に除去できる伏越構造を提供することを目的とする
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明の第1の態様に係る伏越構造は、障害物の一側に設けられた気液分離器及び該気液分離器に連なる上流側真空下水管と、障害物の他側に設けられた気液合流器及び気液合流器に連なる下流側真空下水管と、それぞれ該障害物の下側をくぐり該気液分離器と気液合流器とを接続している通水管及び通気管とを有し、水及び空気が上流側真空下水管から下流側真空下水管に向って流れるよう構成された真空式下水道の伏越構造において、該通気管から水が流入する貯留部を設け、該貯留部と気液合流器とを配管で接続したことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第2の態様に係る伏越構造は、障害物の一側に設けられた気液分離器及び該気液分離器に連なる上流側真空下水管と、障害物の他側に設けられた気液合流器及び気液合流器に連なる下流側真空下水管と、それぞれ該障害物の下側をくぐり該気液分離器と気液合流器とを接続している通水管及び通気管とを有し、水及び空気が上流側真空下水管から下流側真空下水管に向って流れるよう構成された真空式下水道の伏越構造において、該通気管から水が流入する貯留部を設け、該貯留部と気液分離器とを配管で接続したことを特徴とするものである。
【0016】
かかる第1態様及び第2態様の伏越構造にあっては、通気管内に流入した水や通気管内で生じた結露水などの水は、貯留部に流入するため通気管内に滞留することがない。この貯留部に溜まった水は、この貯留部に接続された配管を介して排出することができる。
【0017】
この場合、通気管内を大気に連通させうる大気導入弁と、該気液合流器から該通気管内への負圧伝達を停止しうる仕切弁とを設けることが好ましい。また、前記配管に、通水管のエアブロー時に閉弁される開閉弁を設けることが好ましい。この仕切弁を閉じ、大気導入弁を開け、前記開閉弁を開けると、通気管内に大気が導入されてエアブローされ、貯留部内の水がスムーズに気液合流器に吸い出される
【0018】
【発明の実施の形態】
下、図1を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図2に示す従来例と同様に、障害物(本実施の形態では河川)1を横切るようにして伏越構造が設けられている。上流側真空下水管2が連なる気液分離器3と下流側真空下水管7が連なる気液合流器6とは、河川1の下側をくぐる通水管4及び通気管5により接続されている。下流側真空下水管7の下流側は真空ステーション(図示略)に接続され、その管内を減圧可能としている。
【0020】
この上流側真空下水管2から下流側真空下水管7に向って、通水管4内を汚水がくぐり抜けるのに必要な水頭H(図示略)が両真空下水管2,7間に存在している。
【0021】
この実施の形態では、通水管4は、気液分離器3に連なる立下り部4aと、該立下り部4aに連なり下流側に向って若干の(例えば0.5%以下程度)の上り勾配を有する略水平部4bと、この略水平部4bに連なり気液合流器6に接続された立上り部4cとからなる。
【0022】
通気管5も同様に気液分離器3に連なる立下り部5aと、この立下り部5aに連なる略水平部5bと、この略水平部5bに連なり気液合流器6に接続された立上り部5cとを有する。この通気管5の略水平部5bは下流側に向って若干の(例えば0.5%以下程度)の上り勾配となっている。なお、通気管と通水管とを同じ勾配にすると施工しやすい。
【0023】
この略水平部5bと立上り部5cとが連なる部分に、通気管5内の水が流れ込む貯留部としてのドレンポット10が接続されている。このドレンポット10の底部と気液合流器6とはドレン排出用の配管11で接続され、この配管11に開閉弁11aが設けられている。
【0024】
通気管5と気液合流器6との接続部の近傍にあっては、該気液合流器6から通気管5内への負圧伝達を停止しうる仕切弁12が設けられている。
【0025】
この通気管5内に大気を導入するように大気導入管13が該通気管5に接続され、この大気導入管13に大気導入弁14が設けられている。
【0026】
下流側真空下水管7と気液合流器6との接続部には逆止弁15が設けられているが、この逆止弁15はこれよりも下流側の下流側真空下水管7の途中部分に設けられても良い。ただし、気液合流器6を設置するピット内に逆止弁15を併置すれば、この逆止弁15の設置及びメンテナンスを容易に行うことができる。上流側真空下水管2に逆止弁又は開閉弁16が設けられている。
【0027】
このように構成された真空式下水道の伏越構造において、通常時にあっては開閉弁11aは開、仕切弁12は開、大気導入弁14は閉となっている。そして上流側真空下水管2内を流れてきた汚水は、気液分離器3から通水管4を自然流下する如くしてくぐり抜け、気液合流器6を介して下流側真空下水管7に達し、該下流側真空下水管7内をさらに下流に向って流れる。下流側真空下水管7内の負圧は気液合流器6、通気管5及び気液分離器3を経て上流側真空下水管2に伝達され、これによって上流側真空下水管2に設けられている揚程(図示略)においてエアリフト作用が行なわれる。
【0028】
通気管5内に水が流入したり結露水が生じた場合、この水はドレンポット10に流れ込むので、通気管5の気道が狭くなることが防止され、長期にわたって安定した作動が継続する。なお、ドレンポット10に水が溜まった場合には、この水を次のようにして排出する。即ち、仕切弁12を閉じ、次いで大気導入弁14を開けて通気管5内に大気を吸入させる。そうすると、ドレンポット10内がエアブローされ、水が配管11を介して気液合流器6へ排出される。
【0029】
ドレンポット10からの水の排出が終了した後は、大気導入弁14を閉とし、仕切弁12を開とし、通常運転に復帰する。なお、通水管4のエアブローを行うときには、弁11a,12,16を閉、弁14を開とする。弁16は通水管が長いとき(例えば100m)に設けられる。エアブロー時間が長い(例えば40秒)ので、弁16をエアブロー時に閉とし、その間の上流側の真空度の損失を防止する。
【0030】
この実施の形態に係る伏越構造にあっては、通気管5の略水平部5bが下流側へ向って下り勾配となっているので、この通気管5内に入った水や通気管5内で生じた結露水等の水はスムーズにドレンポット10へ流入する。従って、通気管5の略水平部5bに水が溜まることが確実に防止される。
【0031】
この実施の形態に係る伏越構造にあっては、通水管4の略水平部4bが下流側へ向って上り勾配となっているので、この略水平部4b内の気体の流れ方向と水の流れ方向とが合致するようになり、略水平部4b内を水及び気体がきわめてスムーズに流れる。
【0032】
この実施の形態では、逆止弁15を設けているので、気液合流器6から通気管5内への水が流れ込むことが防止される。
【0033】
なお、配管11は、配管11内への水の逆流が防止されるように気液合流器6又は気液分離器3に接続される
【0034】
上記実施の形態ではドレンポット10を気液合流器6側に配置しているが、ドレンポット10を気液分離器3側に配置し、配管11を気液分離器3に接続してもよい。
【0035】
図3は、通気管5の気液分離器3側にドレンポット10を配置した実施の形態に係る伏越構造の概略的な断面図である。配管11の一端は気液分離器3の上端に接続され、他端はドレンポット10の下部に接続されている。この配管11の途中に弁25が設けられている。通気管5の立上り部5aは弁22、配管21及び弁20を介して気液分離器3の上部に接続されている。この配管21からは大気導入用の配管23が分岐しており、この配管23に弁24が設けられている。この実施の形態のその他の構成は図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。このように構成された伏越構造においては、平常運転時には弁16,20,22,25が開、弁24が閉となっている。ドレンポット10からドレンを排出するときには、弁16,22,24,25が開、弁20が閉とされる。通水管4をエアーブローするときには、弁16,22,25が閉、弁20,24が開とされる。
【0036】
【発明の効果】
以上の通り、本発明(請求項1〜)によると、伏越構造の通気管内の水の滞留を防止し、下流側真空下水管から上流側真空下水管へ負圧を効率良く伝達することが可能となる
【図面の簡単な説明】
【図1】 施の形態に係る伏越構造の概略的な断面図である。
【図2】 従来例に係る伏越構造の概略的な断面図である。
【図3】 別の実施の形態に係る伏越構造の概略的な断面図である。
【符号の説明】
1 障害物(河川)
2 上流側真空下水管
3 気液分離器
4 通水管
5 通気管
6 気液合流器
7 下流側真空下水管
10 ドレンポット
11 配管
11a 開閉弁
12 仕切弁
14 大気導入弁

Claims (6)

  1. 障害物の一側に設けられた気液分離器及び該気液分離器に連なる上流側真空下水管と、
    障害物の他側に設けられた気液合流器及び気液合流器に連なる下流側真空下水管と、
    それぞれ該障害物の下側をくぐり該気液分離器と気液合流器とを接続している通水管及び通気管とを有し、水及び空気が上流側真空下水管から下流側真空下水管に向って流れるよう構成された真空式下水道の伏越構造において、
    該通気管から水が流入する貯留部を設け、該貯留部と気液合流器とを配管で接続したことを特徴とする真空式下水道の伏越構造
  2. 障害物の一側に設けられた気液分離器及び該気液分離器に連なる上流側真空下水管と、
    障害物の他側に設けられた気液合流器及び気液合流器に連なる下流側真空下水管と、
    それぞれ該障害物の下側をくぐり該気液分離器と気液合流器とを接続している通水管及び通気管とを有し、水及び空気が上流側真空下水管から下流側真空下水管に向って流れるよう構成された真空式下水道の伏越構造において、
    該通気管から水が流入する貯留部を設け、該貯留部と気液分離器とを配管で接続したことを特徴とする真空式下水道の伏越構造。
  3. 請求項1において、前記配管は前記貯留部の底部と気液合流器とを接続していることを特徴とする真空式下水道の伏越構造
  4. 請求項において、前記配管は前記貯留部の底部と気液分離器とを接続していることを特徴とする真空式下水道の伏越構造
  5. 請求項又はにおいて、該貯留部水面を大気に連通させうる大気導入弁と、該気液合流器から貯留部水面への負圧伝達を停止しうる仕切弁とを設けたことを特徴とする真空式下水道の伏越構造
  6. 請求項において、前記配管に開閉弁を設けたことを特徴とする真空式下水道の伏越構造
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