JP4013142B2 - 制振材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、内装材、建材、家電機器等に適用され、モーター等の振動発生源の振動エネルギーを吸収する制振材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の制振材料としては、ポリ塩化ビニル等の母材に、その双極子モーメント量を増大させる活性成分を配合した制振材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。この制振材料では、活性成分の配合によって制振材料における損失正接(tanδ)のピーク値を向上させている。
【0003】
一般に、この種の制振材料では、その損失正接のピーク値が高いほど、振動エネルギー吸収性能(以下、制振性能という。)が高まることが知られている。さらに、制振材料が使用される温度範囲に損失正接のピーク温度が存在すると、その制振性能が発揮され易く、実用的な制振材料が得られることになる。
【0004】
【特許文献1】
特許第3318593号公報(請求項1等)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の技術では、損失正接のピーク温度より高温側では、温度の上昇に伴う損失正接の低下が顕著となる。従って、制振性能の温度依存性が高いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、制振性能の温度依存性を抑制することができる制振材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の制振材料では、高分子材料(A)を母材とし、該母材の双極子モーメント量を増大させる活性成分(B)を配合した制振材料であって、前記高分子材料(A)は、硬化型ポリウレタンであり、前記活性成分(B)は、ベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物及びジフェニルアクリレート基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種であり、さらにオイル(C)及び充填剤(D)の各成分が配合され、前記高分子材料(A)の含有量は、40〜95重量%であるとともに、前記活性成分(B)、前記オイル(C)、及び前記充填剤(D)の含有量の合計は、5〜60重量%であり、かつ、前記活性成分(B)、前記オイル(C)、及び前記充填剤(D)の配合比を重量基準で、1:(0.2〜4.5):(0.2〜4.5)としたものである。
【0008】
請求項2に記載の発明の制振材料では、請求項1に記載の発明において、前記(C)成分は、プロセスオイルであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明の制振材料では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記(D)成分は、炭酸カルシウムであることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における制振材料は、高分子材料(A)を母材とし、その双極子モーメント量を増大させる活性成分(B)を配合し、さらにオイル(C)及び充填剤(D)を配合したものである。
【0012】
高分子材料(A)は、制振材料の母材として配合される。この(A)成分は、粘弾特性を有するものであれば特に限定されない。(A)成分の具体例としては、合成樹脂、エラストマー、ゴム類等が挙げられる。合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、ポリイソプレン、ポリスチレン、スチレン/ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体等が挙げられる。エラストマーとしては、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー等が挙げられる。ゴム類としては、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム(NBR)、スチレン/ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。
【0013】
これらの(A)成分は、単独で配合してもよく、複数の(A)成分をブレンドして配合してもよい。また、(A)成分は、熱可塑性高分子材料でもよく、硬化型高分子材料でもよい。これらの(A)成分の中でも、粘弾特性の温度依存性が小さく、特に高温使用時(例えば、制振材料の使用温度が40〜80℃の時)に安定した制振性能を発揮させることができることから、硬化型高分子材料が好ましい。硬化型高分子材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの硬化型高分子材料の硬化方法としては、湿気硬化、加熱硬化、光(紫外線等)硬化等が挙げられる。
【0014】
これらの硬化型高分子材料の中でも、成形性が良好であるとともに汎用性に優れることから、硬化型ポリウレタンがさらに好ましい。硬化型ポリウレタンとしては、2液型の硬化型ポリウレタン、1液型の硬化型ポリウレタン等が挙げられる。2液型の硬化型ポリウレタンは、主剤としてのポリオールと硬化剤としてのポリイソシアネートとを使用時に混合して各種硬化方法等によって硬化させるものである。ポリオールは、1分子中に活性水素基(−OH,−NH2)を2個以上持つ化合物であって、具体例としては、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネートは1分子中にイソシアネート基を2個以上持つ化合物であって、具体例としてはトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が挙げられる。
【0015】
1液型の硬化型ポリウレタンは、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基を空気中の水分と反応させることにより硬化する湿気硬化型ポリウレタン、イソシアネート基がブロック剤等でマスクされたものであって加熱することで硬化する加熱硬化型ポリウレタン等が挙げられる。
【0016】
(A)成分のJIS K 6253、タイプEデュロメータに準ずる硬度(JIS−E)は、好ましくは1〜50°、より好ましくは5〜40°、さらに好ましくは8〜25°である。この硬度が1°未満であると、制振性能が低下するおそれがある。一方、50°を超えると、フレキシブル性及び加工性が低下するおそれがある。架橋度によって合成樹脂やエラストマーとすることができ、硬度を容易に設定できることから、(A)成分としては硬化型ポリウレタンが好ましい。また、硬化型ポリウレタンの中でも、上述の硬度範囲に容易に設定することができることから、好ましくは2液型の硬化型ポリウレタン、より好ましくはポリプロピレングリコールとTDIとから構成される2液型の硬化型ポリウレタンである。
【0017】
(A)成分の含有量は、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは50〜90重量%、さらに好ましくは60〜85重量%である。この含有量が40重量%未満であると、成形性が悪化するおそれがある。一方、95重量%を超えると、十分な制振性能が得られないおそれがある。
【0018】
活性成分(B)は、母材の双極子モーメント量を増大させることにより、損失正接のピーク温度より高温側の損失正接を向上させるために配合される。ここで、制振材料中において(B)成分の分子は、双極子として存在する。この制振材料に外部から振動エネルギーが伝播すると、双極子が回転したり、その位相がずれたりし、双極子に変位が生じる。変位が生じた双極子は、不安定な状態となるため、元の安定な状態に戻ろうとする。この双極子の復元作用によって振動エネルギーの消費が生じるため、制振材料の制振性能が発揮されるようになっている。
【0019】
(B)成分の具体例としては、ベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物、ジフェニルアクリレート基を有する化合物、ベンゾフェノン基を有する化合物等が挙げられる。
【0020】
ベンゾチアジル基を有する化合物としては、例えばN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルスルフィド、N−シクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(OBS)、N,N−ジイソプロピルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DPBS)等が挙げられる。
【0021】
ベンゾトリアゾール基を有する化合物としては、例えばベンゼン環にアゾール基が結合したベンゾトリアゾールを母核とし、これにフェニル基が結合した2−{2’−ハイドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”テトラハイドロフタリミデメチル)−5’−メチルフェニル}−ベンゾトリアゾール(2HPMMB)、2−{2’−ハイドロキシ−5’−メチルフェニル}−ベンゾトリアゾール(2HMPB)、2−{2’−ハイドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール(2HBMPCB)、2−{2’−ハイドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル}−5−クロロベンゾトリアゾール(2HDBPCB)等が挙げられる。
【0022】
ジフェニルアクリレート基を有する化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジ−フェニルアクリレート等が挙げられる。
ベンゾフェノン基を有する化合物としては、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(HMBP)、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシド(HMBPS)等が挙げられる。
【0023】
これらの(B)成分は、単独で配合してもよく、複数を組み合わせて配合してもよい。これらの活性成分の中でも、母材中の双極子モーメント量を増大させる作用に優れることから、好ましくはベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物及びジフェニルアクリレート基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種、より好ましくはベンゾチアジル基を有する化合物、最も好ましくはN,N−ジシクロヘキシルベンゾチアジル−2−スルフェンアミド(DCHBSA)である。
【0024】
(B)成分の含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。この含有量が1重量%未満であると、十分な制振性能が得られないおそれがある。一方、50重量%を超えると、成形性が悪化するおそれがある。
【0025】
オイル(C)は、(B)成分とともに損失正接のピーク温度より高温側における損失正接を向上させるために配合される。(C)成分の具体例としては、プロセスオイル、シリコーンオイル等が挙げられる。プロセスオイルとしては、原油を精製して得られる精製プロセスオイル及び合成によって得られる合成プロセスオイルに分類される。精製プロセスオイルは、飽和脂肪族等を含有する混合物であって、その具体例としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及びアロマ系プロセスオイル等が挙げられる。合成プロセスオイルとしては、イソブテンを主体とし、一部ノルマルブテンが反応した共重合物質で長鎖状炭化水素の分子構造を持つイソブテン系プロセスオイル(日石ポリブテン、新日本石油化学(株)製)等が挙げられる。
【0026】
これらの(C)成分は、単独で配合してもよく、複数を組み合わせて配合してもよい。これらの(C)成分は、溶解度パラメータ(SP値)等を考慮して(A)成分との相溶性に優れるものを選択されることが好ましい。また、これらの(C)成分の中でも、損失正接を向上させる作用に優れることから、プロセスオイルが好ましい。
【0027】
(C)成分の含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。この含有量が1重量%未満であると、十分な制振性能が得られないおそれがある。一方、50重量%を超えると、成形性が悪化したり、(C)成分がブリードアウトするおそれがある。
【0028】
充填剤(D)は、上記(B)及び(C)成分との相互作用によって、損失正接のピーク温度よりも高温側において、温度の上昇に伴う損失正接の低下を抑制するために配合される。(D)成分の具体例としては、炭酸カルシウム、マイカ、カーボンブラック、シリカ、ガラス、カーボン、バライト、沈降硫酸バリウム等が挙げられる。また、(D)成分の形状としては、粉状、繊維状、鱗片状等が挙げられる。これらの(D)成分は単独で配合してもよく、複数を組み合わせて配合してもよい。これらの(D)成分の中でも、損失正接を向上させる作用に優れることから、炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、表面改質炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
(D)成分として炭酸カルシウムを使用する場合、比表面積の測定値から算出される平均粒径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜25μm、さらに好ましくは3〜20μmである。この平均粒径が1μm未満であると、損失正接を十分に向上できないおそれがある。一方、30μmを超えると、高分子材料に対する分散性が低下するとともに、成形性が悪化するおそれがある。
【0030】
(D)成分の含有量は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。この含有量が1重量%未満であると、十分な制振性能が得られないおそれがある。一方、50重量%を超えると、成形性が悪化するおそれがある。
【0031】
(B)、(C)及び(D)の含有量の合計は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。この含有量の合計が、5重量%未満であると、十分な制振性能が得られないおそれがある。一方、60重量%を超えると、成形性が悪化するおそれがある。
【0032】
(B)、(C)及び(D)の各成分の重量基準における配合比は、好ましくは(B):(C):(D)=1:(0.2〜4.5):(0.2〜4.5)、より好ましくは(B):(C):(D)=1:(0.3〜4.0):(0.3〜4.0)、さらに好ましくは(B):(C):(D)=1:(0.4〜3.6):(0.4〜3.6)である。この配合比よりも、(B)又は(D)成分が過剰であると、成形性が悪化するおそれがある。また、(B)又は(C)成分が過剰であると、(B)又は(C)成分がブリードアウトするおそれがある。
【0033】
この制振材料には、その他の成分として、難燃剤、腐食防止剤、着色剤、酸化防止剤、制電剤、安定剤、湿潤剤等を必要に応じて適宜配合することもできる。
この制振材料の制振性能は、動的粘弾性測定から算出される温度と損失正接の関係によって確認することができる。この制振材料は、損失正接のピーク温度よりも高温側において、温度の上昇に伴う損失正接の低下率が、(A)成分単体の低下率よりも小さくなるようになっている。この制振材料を0℃から80℃に昇温させた場合の損失正接(加振の周波数10Hz、昇温速度5℃/min)は、0.3以上5.0未満に維持されることが好ましく、0.4以上5.0未満に維持されることがより好ましく、0.5以上5.0未満に維持されることがさらに好ましい。この損失正接が0.3未満であると、十分な制振性能が発揮されないおそれがある。一方、5.0以上の損失正接は、(A)成分を母材として得ることは困難である。
【0034】
制振材料は、各成分を混練によって混合する混練法等によって調製される。混練法に使用される混練装置としては、熱ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機、押出機等が挙げられる。得られた制振材料は、プレス機、押出機、T−ダイ、射出成形機等の成形機や注型によって、シート状、ブロック状等の各種形状に成形することができる。
【0035】
(A)成分として、2液型の硬化型ポリウレタンを使用する場合は、ポリオールに(B)、(C)及び(D)の各成分を配合し、混合又は混練することによりポリオールに各成分を分散又は溶解させることが好ましい。その後、(B)、(C)及び(D)の各成分を含有するポリオールにポリイソシアネートを配合し、硬化させることが好ましい。この製造方法によると、ポリオールの柔軟なセグメントに(B)、(C)及び(D)の各成分が均一に分散又は相溶され、得られる制振材料の粘弾特性が十分に改質される。
【0036】
この制振材料はシート状に成形することによって、非拘束型制振シートを得ることができる。この非拘束型制振シートは、適用箇所に貼り合わせることによって、制振シートの一側面が拘束されていない非拘束型制振材料とすることができる。
【0037】
また、シート状に成形された制振材料を制振層とし、制振層の表面に制振層を拘束するための拘束層を貼り合わせることによって拘束型制振シートを得ることができる。拘束層としては、アルミニウム、鉛等の金属箔、ポリエチレン、ポリエステル等の合成樹脂から形成されるフィルム、不織布等が挙げられる。この拘束型制振シートは、制振層側を適用箇所に貼り合わせることによって制振層の両面が拘束されている拘束型制振材料とすることができる。
【0038】
制振材料は自動車、内装材、建材、家電機器等に適用され、モータ等の被制振箇所の振動エネルギーを吸収することができる。この制振材料は、温度変化を伴う被制振箇所に適用されることにより、その性能が十分に発揮される。被制振箇所の温度範囲としては、好ましくは−50〜80℃、より好ましくは−40〜80℃、さらに好ましくは−20〜80℃である。この温度が−50℃未満であると、制振性能が十分に発揮されないおそれがある。一方、80℃を超えると、(C)成分等がブリードアウトするおそれがある。
【0039】
さて、この制振材料は、(A)成分に(B)、(C)、(D)及びその他の成分を配合し、各種混練装置によって混練することにより得られる。このとき、(B)、(C)及び(D)の各成分の相互作用によって、損失正接のピーク温度よりも高温側、すなわち、(A)成分のガラス転移点よりも高温側における(A)成分の分子鎖の挙動が制御されると推測される。従って、損失正接のピーク温度より高温側における制振材料の粘弾特性が改質され、温度の上昇に伴う損失正接の低下率は、(A)成分単体の低下率よりも小さくなると考えられる。
【0040】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態の制振材料においては、(A)成分を母材とし、その双極子モーメント量を増大させる(B)成分を配合し、さらに(C)及び(D)成分を配合したものである。このように構成した場合、損失正接のピーク温度より高温側において、制振材料の粘弾特性が改質される。従って、制振性能の温度依存性を抑制することができる。また、損失正接のピーク温度より高温側において、損失正接を高い水準で維持されるため、制振性能を十分に発揮させることができる。
【0041】
・ この実施形態の制振材料においては、(C)成分はプロセスオイルであることが好ましい。このように構成した場合、損失正接のピーク温度より高温側の損失正接をより向上させることができ、制振性能の温度依存性をより抑制することができる。
【0042】
・ この実施形態の制振材料においては、(D)成分は炭酸カルシウムであることが好ましい。このように構成した場合、温度の上昇に伴う損失正接の低下を抑制することができ、制振性能の温度依存性をより抑制することができる。
【0043】
・ この実施形態の制振材料においては、(B)成分はベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物及びジフェニルアクリレート基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。このように構成した場合、損失正接のピーク温度より高温側において、損失正接をより向上することができる。従って、制振性能の温度依存性をより抑制することができる。
【0044】
・ この実施形態の制振材料においては、(A)成分は硬化型高分子材料であることが好ましい。このように構成した場合、粘弾特性の温度依存性を小さくすることができ、制振性能の温度依存性をさらに抑制することができる。
【0045】
・ この実施形態の制振材料においては、0℃から80℃に昇温させた場合の損失正接は、0.3以上5.0未満に維持されることが好ましい。このように構成した場合、モータ等の発熱体の近傍等、制振材料の使用温度が徐々に上昇する部分において、その制振性能を十分に発揮させることができる。
【0046】
・ この実施形態の制振材料においては、(A)成分として硬化型ポリウレタン、(B)成分としてベンゾチアジル基を有する化合物、(C)成分としてプロセスオイル及び(D)成分として炭酸カルシウムであることが好ましい。このように構成した場合、硬化型ポリウレタンに対する(B)、(C)及び(D)の各成分の相溶性を向上させることができ、得られる制振材料から各成分がブリードアウトすることを抑制することができる。従って、制振性能の安定化を図ることができる。また、プロセスオイルとしてナフテン系プロセスオイルを配合した場合、各成分の相溶性をさらに向上させることができ、制振性能の安定化をさらに図ることができる。
【0047】
・ この実施形態の制振材料の製造方法においては、(A)成分として2液型の硬化型ポリウレタンを使用する場合、ポリオールに(B)、(C)及び(D)の各成分を混合し、ポリオールに(B)、(C)及び(D)の各成分を分散又は溶解させることが好ましい。その後、(B)、(C)及び(D)の各成分を含有するポリオールにポリイソシアネートを配合し、ポリオールとポリイソシアネートを反応硬化させることが好ましい。この製造方法によると、ポリオールの柔軟なセグメントに(B)、(C)及び(D)の各成分が均一に分散又は相溶され、得られる制振材料の粘弾特性が十分に改質され、制振性能の温度依存性をさらに抑制することができる。
【0048】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1及び実施例2)
母材として2液型の硬化型ポリウレタン(ポリプロピレングリコール系主剤とTDI系硬化剤とを1:1の重量比で配合、商品名:PANDEX(登録商標)1145、大日本インキ化学工業(株)製)を用いた。まず、ポリプロピレングリコール系主剤を攪拌機に投入した。さらに、DCHBSA(サンセラーDZ、三新化学工業(株)製)、ナフテン系プロセスオイル(NS100、出光興産(株)製)、重質炭酸カルシウム(R重炭、比表面積から得られる平均粒径20μm、丸尾カルシウム(株)製)を加え、攪拌した。その後、TDI系硬化剤を配合し攪拌した後、シート状に成形し、80℃、3時間の条件で母材を加熱硬化させることにより、シート状の制振材料(厚さ0.8mm)を作製した。各例における(A)〜(D)成分の含有量を表1に示す。
(比較例1〜7)
表1に示す配合によって実施例1及び実施例2と同様にしてシート状の制振材料(厚さ0.8mm)を作製した。
【0049】
【表1】
各例におけるシート状の制振材料を36mm×5mmの寸法に切断し、動的粘弾性測定用の試験片とした。
【0050】
動的粘弾性測定装置(RSA−II:レオメトリック社製)を用いて試験片を加振しながら連続的に昇温した際の粘弾特性から損失正接(tanδ)を算出した。測定条件は、加振の周波数10Hz、測定温度範囲−20〜80℃、昇温速度5℃/minとした。実施例1及び比較例1〜4における温度と損失正接の関係を図1、実施例2及び比較例5〜7における温度と損失正接の関係を図2に示す。
【0051】
図1及び図2の結果から明らかなように、実施例1では(A)成分に対し、(B)、(C)及び(D)の各成分が配合されているため、0〜80℃の損失正接は0.5以上に維持され、温度依存性が抑制されていることがわかる。また、実施例2では、0.36以上に維持され、温度依存性が抑制されていることがわかる。さらに、実施例1及び実施例2では、0〜80℃の損失正接は高い水準で維持されていることがわかる。
【0052】
一方、比較例1では(A)成分単体であるため、0℃における損失正接が約0.4であるのに対し、80℃における損失正接は約0.2となっている。比較例2では、(A)成分に(B)成分が配合されているが、0℃における損失正接が0.4以上であるのに対し、80℃における損失正接は0.3以下となっている。比較例3では(A)成分に(C)成分が配合され、比較例4では(A)成分に(D)成分が配合されているが、0℃における損失正接が0.5以上であるのに対し、80℃における損失正接は0.35以下となっている。比較例5〜7では(A)成分に対し、(B)、(C)及び(D)から選ばれる2成分が配合されているが、0℃における損失正接が約0.5であるのに対し、80℃における損失正接は0.32以下となっている。このように比較例1〜7では、温度の上昇に伴う損失正接の低下が大きいことがわかる。また、比較例1〜7では、0〜80℃の損失正接は低い水準となっていることがわかる。
【0053】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態における制振材料は各種形状に成形され、適用物に適用されている。この他に、この制振材料は適用箇所にコーティングや充填させて使用することもできる。
【0054】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 前記(A)成分は、ポリイソシアネートとポリオールとから構成される2液型の硬化型ポリウレタンである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制振材料。このように構成した場合、制振材料の硬度を容易に設定することができる。
【0055】
(2) 温度変化を伴う被制振箇所に適用される請求項1から請求項3及び上記(1)のいずれか一項に記載の制振材料。このように構成した場合、制振性能を十分に発揮させることができる。
【0056】
(3) 上記(1)に記載の制振材料の製造方法であって、前記ポリオールに前記(B)、(C)及び(D)の各成分を混合させた後、前記ポリイソシアネートを配合することにより、前記ポリオールとポリイソシアネートを反応硬化させることを特徴とする制振材料の製造方法。この製造方法によると、制振性能の温度依存性をさらに抑制することができる。
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1から請求項3に記載の発明の制振材料によれば、制振性能の温度依存性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1及び比較例1〜4における制振材料の温度と損失正接の関係を示すグラフ。
【図2】 実施例2及び比較例5〜7における制振材料の温度と損失正接の関係を示すグラフ。
Claims (3)
- 高分子材料(A)を母材とし、該母材の双極子モーメント量を増大させる活性成分(B)を配合した制振材料であって、前記高分子材料(A)は、硬化型ポリウレタンであり、前記活性成分(B)は、ベンゾチアジル基を有する化合物、ベンゾトリアゾール基を有する化合物及びジフェニルアクリレート基を有する化合物から選ばれる少なくとも一種であり、さらにオイル(C)及び充填剤(D)の各成分が配合され、前記高分子材料(A)の含有量は、40〜95重量%であるとともに、前記活性成分(B)、前記オイル(C)、及び前記充填剤(D)の含有量の合計は、5〜60重量%であり、かつ、前記活性成分(B)、前記オイル(C)、及び前記充填剤(D)の配合比を重量基準で、1:(0.2〜4.5):(0.2〜4.5)としたことを特徴とする制振材料。
- 前記(C)成分は、プロセスオイルである請求項1に記載の制振材料。
- 前記(D)成分は、炭酸カルシウムである請求項1又は請求項2に記載の制振材料。
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