JP4012307B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,配線パターンと層間絶縁層とを順次積層していくいわゆるビルドアップの多層プリント配線基板の製造に関する。さらに詳細には,2層構造の層間絶縁層を有する多層プリント配線基板であって,その上層絶縁層(第2の層間絶縁層)の膜厚の均一化を図った多層プリント配線基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ビルドアップ方式の多層プリント配線基板には,図6に示すように層間絶縁層を,絶縁性重視の第1層(以下,「絶縁層」という)92とその上に形成される上層配線パターンの接着性重視の第2層(以下,「接着層」という)93との2層構造としたものがある。従来,このような多層プリント配線基板は,銅の下層配線パターン91が形成された基板90上にまず絶縁層92を形成し,その上に接着層93を形成し,そしてプレス等により表面を平坦化させるという方法で製造されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記した従来の製造方法には以下に説明する問題点があった。すなわち,従来の方法で製造された図6のものでは,接着層93の表面aこそ平坦化されているものの,絶縁層92と接着層93との界面bは必ずしも平坦でなくうねりがある。このため,下層配線パターン91上の絶縁層92の膜厚が不均一であり部分的には薄い箇所があった。このことから,下層配線パターン91と接着層93の上に形成される上層配線パターンとの間の絶縁性能が必ずしも設計どおりでなく,特に下層配線パターン91のエッジ等で絶縁不十分となる場合があった。
【0004】
さらに,接着層93の膜厚も不均一であるため,上層配線パターンの密着性も不均一となり,実装後の剥がし強度が部分的に弱くなる場合があった。また,界面bがうねっていることから,接着層93の表面aが平坦化直後には平坦であっても,経時により表面aもうねることがあった。この場合,接着層93の上にその後形成される上層配線パターンの加工精度が落ちたり,実装状態での部品の座りが悪くなったりした。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点の解決を目的としてなされたものである。すなわちその課題とするところは,第1の層間絶縁層と第2の層間絶縁層との界面と,第2の層間絶縁層の表面とがともに平坦面となり,絶縁性能や密着性能等の面内均一性に優れた製品が得られる多層プリント配線基板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決のためになされた本発明は,下層パターンを絶縁性物質で被覆して層間絶縁層とする多層プリント配線板の製造方法であって,前記下層パターンを絶縁性物質で被覆して第1の層間絶縁層を形成する工程と,前記第1の層間絶縁層に加圧してその表面を平坦化する工程(1)と,平坦化された前記第1の層間絶縁層上に第2の層間絶縁層を積層する工程と,前記第2の層間絶縁層の形成後にその表面を粗化する工程とを含み,前記第1の層間絶縁層を形成する絶縁性物質として,粗化の際に溶けないフィラーを混合したものを用い,前記第2の層間絶縁層を形成する絶縁性物質として,粗化の際に溶けるフィラーを混合したものを用いる。
【0007】
この製造方法では,まず,基板上の下層パターンが絶縁性物質で被覆され,これにより第1の層間絶縁層が形成される。そして,その上に第2の層間絶縁層が形成される前に,第1の層間層の表面が加圧により平坦化される。これにより,第1の層間層の表面が平坦面となる。その後,平坦化された第1の層間絶縁層上に第2の層間絶縁層が積層される。
【0008】
この製造方法により製造された多層プリント配線板では,第1の層間絶縁層と第2の層間絶縁層との界面と,第2の層間絶縁層の表面とがともにうねりのない平坦面となっている。このため,下層パターン上における第1の層間絶縁層の膜厚が均一である。また,第2の層間絶縁層の膜厚が板面内のどの場所でも均一である。したがって,絶縁性能や密着性能等の諸特性に面内のばらつきがなく,設計どおりの性能が得られる。また,第1の層間絶縁層と第2の層間絶縁層との界面が第2の層間絶縁層の表面と同様に平坦面なので,経時により第2の層間絶縁層の表面がうねることがない。
【0009】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においては,工程(1)を,第1の層間絶縁層が流動性を有する温度で行うことが好ましい。この工程は,第1の層間絶縁層を構成する絶縁性物質であって下層パターン上にあるものの一部を,下層パターンのない部分に流し込むことによりその表面を平坦化することを目的とするからである。
【0010】
本発明の多層プリント配線板の製造方法においてはまた,第1の層間絶縁層が,配線層間の絶縁性を確保するための絶縁層であり,第2の層間絶縁層が,上層パターンを形成するための接着剤層であることが好ましい。このようにすると,下層パターン上に均一な膜厚の絶縁層が存在することにより上層パターンと下層パターンとの間の絶縁性能が確保され,絶縁層の上に均一な膜厚の接着層が存在することにより上層パターンの密着性が確保される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,図面を参照しつつ詳細に説明する。まず,原基板上に下層パターンを形成したものを準備する。ガラスエポキシ基板またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1に18μm厚の銅箔がラミネートされてなる銅貼積層板を出発材料とする。この銅貼積層板の銅箔に通常用いられる方法でパターンエッチングを施し,銅の下層パターン2を形成する(図1)。このとき,必要に応じて基板1の適宜の場所にスルーホールを形成しておいてもよい。
【0012】
(絶縁層の形成)
下層パターン2の形成がなされた基板1に対し,絶縁層を形成して下層パターン2を被覆する。このための前処理として,基板1を水洗いし乾燥した後,酸性脱脂してソフトエッチングし,次いで,塩化パラジウムと有機酸とを含有する触媒溶液で処理してパラジウムの触媒核を付与する。このパラジウム触媒を活性化してから,硫酸銅,硫酸ニッケル,クエン酸,次亜リン酸ナトリウム,ホウ酸,界面活性剤を含有するめっき液で無電解めっきによりCu−Ni−P合金の粗化層を形成し,そして,その表面にホウふっ化スズとチオ尿素とを含有するめっき液で置換めっきによりスズ置換めっき層を形成する。粗化層は,針状の結晶組織を有し,優れたアンカー効果により樹脂層(絶縁層など)との密着性を確保する役割を有する。スズ置換めっき層は,後に樹脂層の粗化が行われる際に,局部電極反応により下層パターン2等の導体回路が溶解するのを防止する役割を有する。
【0013】
次に,絶縁層の材料を塗布する。ここで塗布するのは,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)の25%アクリル化物,ポリエーテルスルフォン(PES),イミダゾール硬化剤(四国化成製,商品名:2E4MZ−CN),感光性モノマーであるカプロラクトン変成トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成製,商品名:アロニックスM315),光開始剤(チバガイギー社製,商品名:イルガキュアー907),光増感剤(日本化薬製,商品名:DETX−S)の各々をジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に溶解したマトリックスに,フィラーとして平均粒径が0.5〜3μmの範囲内のシリカ粒子を混合したものである。
【0014】
この混合物にさらに,ノルマルメチルピロドリン(NMP)を添加してホモディスパー撹拌機で粘度7Pa・sに調製したものを,ロールコータにより基板1の表面に塗布する。このとき,30μm程度の厚さが得られるようにコーティングする。この塗布を行った状態では,図2に示すように,下層パターン2が絶縁層3で覆われているが,下層パターン2の有無を反映して絶縁層3の表面4がうねっており平坦でない。このうねりのためこの状態では,下層パターン2の上部における絶縁層3の膜厚に,場所による不均一が見られる。
【0015】
(絶縁層の平坦化)
次に,絶縁層3の表面4の平坦化のためのプレスを行う。このため図3に示すように,絶縁層3を塗布した基板1にカバーフィルム5を被せてプレス板6で板厚方向に加圧する。このとき,基板1およびプレス板6を80〜90℃程度に加熱しておき,加重は6〜7kgw/cm2 程度として60秒程度加圧する。加圧にあたり基板1等を加熱しておくのは,絶縁層3の流動性をよくしてプレスの効果を高めるためである。ただし,温度が90℃を超えると樹脂の硬化が始まってしまい後の工程に支障を来すので,樹脂が硬化しないようにそれ以下の温度にとどめておく。
【0016】
このプレスにより,絶縁層3を構成する材料であって下層パターン2の上に存在しているものの一部が,下層パターン2のない部分に流し込まれることとなる。これにより図4に示すように,絶縁層3の表面4が平坦化されうねりのない状態となる。この状態では,下層パターン2の上部における絶縁層3の膜厚に,場所による不均一がなくどの場所でも一定の膜厚となっている。カバーフィルム5はプレスの終了後に除去しておく。かくして形成され表面4の平坦化がなされた絶縁層3は,後に上層パターン形成のための粗化が行われる際に,粗化の効果が及ばないことにより絶縁性能を確保する役割を有している。
【0017】
(接着層の形成)
絶縁層3の表面4を平坦化したら,次にその上に接着層を積層する。接着層は,後に形成される上層パターン等の密着性を確保する役割を有する。このための接着層の材料は,前記した絶縁層の材料とマトリックスを同じくし,フィラーとしてシリカ粉末の代わりにエポキシ樹脂粒子(三洋化成製,商品名:ポリマーポール)を用いたものである。これをホモディスパー撹拌機で粘度7Pa・sに調製したものを,ロールコータにより表面4の上に塗布する。このとき,30μm程度の厚さが得られるようにする(下層パターン2のある場所で絶縁層3の厚さと接着層7の厚さとの合計が規格範囲内にあればよい)。これにより,図5に示すように,接着層7の表面8と,絶縁層3と接着層7との界面4とがともに平坦面である状態が得られる。
【0018】
この後,接着層7の上に上層パターン等が形成されることとなる。上層パターンの形成は,例えば次のようにして行われる。まず,接着層7の形成を行った状態の基板1を,クロム酸溶液に2分間浸漬する。これにより,接着層7に含まれるフィラーであるエポキシ樹脂粒子であって表面8およびその付近に位置しているものが溶解する。すなわち接着層7の表面8が粗化される。このとき,接着層7の下の絶縁層3には,エポキシ樹脂粒子が含まれていないため,絶縁層3にまで粗化が及ぶことはない。その後,中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗する。
【0019】
そして,パラジウムの触媒核(アトテック製)を付与してから無電解銅めっきにより3μm厚程度の銅めっき層を形成する。無電解銅めっきのめっき液は,EDTA,硫酸銅,ホルマリン,水酸化ナトリウム等を主成分とするものを用いればよく,70℃程度の浴温で30分くらいめっきすればよい。この銅めっき層に通常用いられる方法でパターンエッチングを施すことにより,上層パターンが得られる。ここにおいて,必要に応じて絶縁層3および接着層7の適宜の場所にバイアホールを形成しておいてもよい。
【0020】
図5に示す状態では,接着層7の膜厚は板面内のどの場所でも均一である。このため,接着層7の材料が経時により流動してその表面8にうねりが生じることがない。したがって,接着層7の表面8を粗化する際にも,下層パターン2の上部において一定の膜厚の絶縁層3,すなわち粗化が及ばない部分が存在しており,下層パターン2と後に形成される上層パターンとの間の良好な絶縁性が確保される。また,接着層7の表面8がうねりのない平坦面であるため,上層パターンのパターニングの際の加工精度がよく,形状精度のよい上層パターンが得られる。
【0021】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,下層パターン2の上に絶縁層3と接着層7とを続けて形成するにあたり,絶縁層3を形成した段階でプレスによりその表面4を平坦化し,その後に接着層7を形成することとしたので,接着層7の表面8と,絶縁層3と接着層7との界面4とがともに平坦面となる。このため,下層パターン2の上部における絶縁層3の膜厚が一定であり,下層パターン2と後に形成される上層パターンとの間の絶縁性能がよい。また,接着層7の膜厚が均一であり,上層パターンや実装状態での部品の密着性が確保される。さらに,接着層7の表面がうねることがないので,上層パターンの形状精度や実装状態での部品の位置精度が悪くなることもない。かくして,板面内での特性の均一性に優れた多層プリント配線板が製造され,絶縁性能その他の諸特性が設計どおりに得られるものである。
【0022】
なお,前記実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,使用した材質や薬剤の種類や配合は,これに限るものではなく,同様の特性が得られる他のいかなるものに置き換えてもよい。また,出発基板1の直上の下層パターン2の上の層間絶縁層に限らず,上層パターンの上にさらにビルドアップする段階にも適用できる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明の多層プリント配線基板の製造方法によれば,第1の層間絶縁層と第2の層間絶縁層との界面と,第2の層間絶縁層の表面とがともに平坦面となり,下層パターン上における第1の層間絶縁層の膜厚の均一性や板面全体における第2の層間絶縁層の膜厚の均一性が確保され,絶縁性能や密着性能等の面内均一性に優れた製品が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】出発基板に下層パターンを形成した状態を示す図である。
【図2】絶縁層を塗布して下層パターンを被覆した状態を示す図である。
【図3】絶縁層をプレスしてその表面を平坦化させる工程を示す図である。
【図4】絶縁層の表面が平坦化された状態を示す図である。
【図5】絶縁層の上に接着層を積層した状態を示す図である。
【図6】従来の製造方法で製造された多層プリント配線基板の断面を示す図である。
【符号の説明】
2 下層パターン
3 絶縁層(第1の層間絶縁層)
4 絶縁層の表面,絶縁層と接着層との界面
7 接着層(第2の層間絶縁層)
8 接着層の表面
Claims (3)
- 下層パターンを絶縁性物質で被覆して層間絶縁層とする多層プリント配線板の製造方法において,
前記下層パターンを絶縁性物質で被覆して第1の層間絶縁層を形成する工程と,
前記第1の層間絶縁層に加圧してその表面を平坦化する工程(1)と,
平坦化された前記第1の層間絶縁層上に第2の層間絶縁層を積層する工程と,
前記第2の層間絶縁層の形成後にその表面を粗化する工程とを含み,
前記第1の層間絶縁層を形成する絶縁性物質として,粗化の際に溶けないフィラーを混合したものを用い,
前記第2の層間絶縁層を形成する絶縁性物質として,粗化の際に溶けるフィラーを混合したものを用いることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。 - 請求項1に記載する多層プリント配線板の製造方法において,
前記工程(1)を,前記第1の層間絶縁層が流動性を有する温度で行うことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。 - 請求項1または請求項2に記載する多層プリント配線板の製造方法において,
前記第1の層間絶縁層が,配線層間の絶縁性を確保するための絶縁層であり,前記第2の層間絶縁層が,上層パターンを形成するための接着剤層であることを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
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