JP4011599B2 - ベルト調整機構ならびにこのベルト調整機構を備えたベルトホイストおよびベルト荷締機 - Google Patents

ベルト調整機構ならびにこのベルト調整機構を備えたベルトホイストおよびベルト荷締機 Download PDF

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Description

本発明は、ベルトホイストやベルト荷締機などに適用されるベルト調整機構、特に調整側ベルトの緊張部分の長さを確実,安全に調整できるようにしたベルト調整機構に関する。
一般に、調整側ベルトを用いたベルトホイストやベルト荷締機などでは、作業対象物を吊り上げたり締めたりするための当該調整側ベルトを、少なくともその緊張する方向に確実,安全に駆動できることが必要であり、本発明はこのような要請に応えるものである。
従来の、ベルト調整機構(荷締機)としては、第10図に示すように、
・固定側ベルトを回動ベースに取り付け、
・調整側ベルトの駆動ローラを基準ベースに取り付け、
・回動ベースを基準ベースに対して回動可能な形で設定し、
・回動ベースの、固定側ベルト取付部とは反対側の端部に、駆動ローラに対するピンチローラを取り付けた、
形式のもの、すなわち回動タイプのベルト調整機構がある(例えば特開平5−200678号公報参照)。
第10図は、回動タイプの調整ベルト機構の主要部分を概念的に示したものであり、
51は固定側ベルト,
52は調整側ベルト,
53は全体が略C形状であってその一方の端部に固定側ベルト51を取り付けた回動ベース,53aは固定側ベルト51の取付軸,
54は調整側ベルト52に対応した基準ベース,54aは当該基準ベースの一部であって回動ベース53の回動中心となる軸,
55は基準ベース54に設けたものでその表面がローレット加工されている駆動ローラ,55aは当該駆動ローラの回転軸,
56は回動ベース53の他方の端部に設けたピンチローラ,56aは当該ピンチローラの回転軸,
57は駆動ローラ55の操作レバー,
58は回動ベース53を時計方向に付勢してピンチローラ56に初期押圧力を付与するための予圧バネ,
59は操作レバー57の締付作用により駆動ローラ55とピンチローラ56とから荷締方向に送り出された調整側ベルト部分が当該駆動ローラに巻きつくことを防止するためのセパレータ,
をそれぞれ示している。
なお、固定側ベルト51および調整側ベルト52は、
・両ベルトが別体でそれぞれの端部にフックやアイなどの係止用部分を設けたセパレートタイプ,
・両ベルトが一体となったエンドレスタイプ,
などの周知のものである。
第10図(a)は、荷締対象の荷物にベルト(固定側ベルト51および調整側ベルト52)を回しただけで、当該ベルトにはまだ荷重が加わっていない初期状態である。
この段階では、ベルトがまだ緊張していないので、固定側ベルト51の荷重に基づく回動ベース53の時計方向への回動作用も強くはない。
操作レバー57を時計方向に回動操作すると、当該操作レバーと連動するラチエット機構(図示省略)が作動して駆動ローラ55は同方向に回転する。
この駆動ローラ55の回転にともなってピンチローラ56も回転し、これら双方のローラに挟まれた調整側ベルト52は図示右方向に送り出される。
その結果、回動ベース53と駆動ローラ55との間のベルト部分が緊張して固定側ベルト51および調整側ベルト52の荷重も大きくなり、当該回動ベースは時計方向に回動する。
これにともない、ピンチローラ56が駆動ローラ55の方に移動して、調整側ベルト52は当該駆動ローラに押し付けられる。
第10図(b)は、このときの押圧力により、調整側ベルト52が駆動ローラ55とピンチローラ56とに保持されたバランス状態を示している。このバランス状態では、概略、調整側ベルト52の被押圧部分が凹んで潰れているものの、後述の「食い付き」はまだ生じていない。
なお、操作レバー57を反時計方向に回動させた場合、時計方向の上記ラチエット機構は駆動ローラ55に対して作動しない。すなわち、操作レバー57は反時計方向については当該駆動ローラを負荷とすることなしに自由に回動可能である。
第10図(b)のバランス状態の調整側ベルト52をもっと強い締付け状態にするには、操作レバー57を(a)の状態に戻し、それから再び(b)の状態に回動するといった操作を繰り返せばよい。
逆に、調整側ベルト52を緩める場合は、ラチエット機構を反時計方向の駆動モードに切り替えてから、操作レバー57の同方向への操作により駆動ローラ55を当該方向に回転させればよい。操作レバー57は、荷締操作時とは逆に、時計方向への自由な回動が可能となる。
第11図は、第10図(b)の状態でベルト(固定側ベルト51,調整側ベルト52)が受ける荷重F1と調整側ベルト52がピンチローラ56から受ける力F2との関係を示している。
ピンチローラ56は、操作レバー57の時計方向への回動操作でベルトが緊張することによりA位置からB位置へと回動していく。
この回動時のピンチローラ56が調整側ベルト52を押さえる力F2(=ベルトへの荷重F1に基づいて回動ベース53が時計方向に回動することにより作用する力)は、当該ピンチローラのAからBへの移動に応じて大きくなる。
それは、第11図に示すように、調整側ベルト52に対する押圧力F2は「F2=F1*(L1/L2)*(1/cosθ)」と表され、ピンチローラ56が時計方向に回動するにしたがってθが90°に近づく、すなわち(1/cosθ)の値が大きくなるからである。
なお、
・F1はベルトの引張り荷重を示し、
・L1は軸54aを中心としたF1の回転モーメントにおける距離を示し、
・L2は軸54aとA点,B点(=調整側ベルト52とピンチローラ56との接点)との距離を示し、
・θはピンチローラ56の回動方向(=A点,B点における接線)と、A点,B点および中心軸55aを結ぶ線とのなす角を示している。
L1,L2は、回動ベース53およびピンチローラ56の構造,配置などに基づいて決まる定数(図示の場合はL2≒3*L1)であり、角度θはピンチローラ56(回動ベース53)が時計方向に回動するにしたがって大きくなる変数である。
第11図の調整側ベルト52に対する押圧力F2は、
・A点(θ=61.3°)では荷重F1の約0.7倍
・B点(θ=68.3°)では荷重F1の約1.0倍
となっている。
このように調整側ベルト52の押圧力F2が大きくなると、ピンチローラ56が調整側ベルト52に没入した状態となって両者間の摩擦力も増大する。調整側ベルト52は、この摩擦力などに基づくバランス状態(B点の状態)で安定的に保持される。
このバランス状態において、(いったん反時計方向に戻した後の)操作レバー57を荷締め方向(=時計方向)に回動操作して駆動ローラ55を時計方向に回転させようとすると、すでに調整側ベルト52に没入しているピンチローラ56は摩擦力によって軸54aを中心とした時計方向の回動力を受ける。
この回動力の「1/cosθ」に相当する成分が駆動ローラ55の回転軸55aの方向に作用する。
そして、調整側ベルト52は、ピンチローラ56から、第11図の安定状態における元々のF2(≒F1)に加えてこの新たな成分の押圧力を、当該F2と同じ方向に受けることになる。
新たな押圧力自体は、第11図のB点の場合でも略F2であって、ピンチローラ56がこれより少しでも時計方向に回動すると(そのときの1/cosθの応じた)F2以上の値となる。したがって、調整側ベルト52にはF2の倍以上の大きな押圧力が作用する。
荷締操作に基づくこのような調整側ベルト52への押圧力の増大により、ピンチローラ56が調整側ベルト52にいわば食い付いてしまい、調整側ベルト52は駆動ローラ55とピンチローラ56との間に固定されたようになる。
この食付き状態では、調整側ベルト52,駆動ローラ55およびピンチローラ56の各構成要素が互いにいわばロックされており、当該構成要素を駆動する、すなわち操作レバーを荷締方向に回動させることができない。
以上のように、回動タイプの調整側ベルト機構の場合、ベルト間の荷重F1とバランスした状態に押圧保持されている調整側ベルト52を駆動ローラ55で荷締め方向に送り出そうとすると、当該調整側ベルトは、瞬時に、回動ベース上のピンチローラ56からの当該押圧方向への新たな力をも、受けることになる。
そのため、ピンチローラ56が調整側ベルト52を駆動ローラ55に強く押圧してこれら双方のローラは食付き状態へと移行し、もはや駆動ローラ55を回転させて調整側ベルト52を荷締方向に送り出すことが困難になってしまうという問題点があった。
また、ある荷締め状態(バランス状態)で調整側ベルト52が駆動ローラ55から緩み方向(図示の反時計方向)に少しでも滑ると、上述の荷締め方向への送り出しのときとは逆に、ピンチローラ56(回動ベース53)がベルト間の荷重F1によって反時計方向に回動し、「ピンチローラ56の反時計方向への回動−第10図のθの減少−調整側ベルト52に対する押圧力F2の減少−ピンチローラ56の反時計方向への回動−θの減少−F2の減少・・・」といったことが再帰的に生じる。
そのため、調整側ベルト52を押さえる力のF2が瞬時に大きく減少してピンチローラ56による当該調整側ベルトの保持状態が一気に解除されてしまい、それまでベルトで固定されていた荷物などが急に崩れることもあり、作業者などに対する十分な安全性を確保できないという問題点があった。
さらには、調整ベルト52がピンチローラ56によって斜め方向(駆動ローラ55の回転軸55aに対して角度θの方向)に押圧されるため、当該ベルトの表面部分が損傷しやすいという問題点があった。
一方、ピンチローラ56を、調整側ベルト52の当該損傷が少なくなると考えられる位置(第11図でθ≒0の位置:ピンチローラ56が図面上で駆動ローラ55の略真上となる位置)に設定すると、調整ベルト52に対する、上述の1/cosθの応じた押圧力が減少し、かつ調整側ベルト52と駆動ローラ55との摩擦部分が短くなる(駆動ローラ55の略半周分となる)ため、調整側ベルト52を保持できなくなるという問題点があった。
そこで、本発明では、ピンチローラ用ベースと駆動ローラ用ベースとが(第10図,第11図のように回動するのではなく)相対的にスライドしながら移動するようにして、ピンチローラが駆動ローラに食い付いたり、調整側ベルトの保持状態が瞬時に解除されたりすることを防止する、すなわちベルト調整機構の動作の確実化・安全化を図ることを目的とする。
本発明は、ベルト(例えば調整側ベルト52,後述の調整ベルト24)の緊張部分の長さを、所定の駆動操作に基づいて調整できるようにしたベルト調整機構において、前記ベルトの駆動部(例えば後述の駆動ローラ13,26,26′)を設けた第1のベース(例えば後述の基準ベース12,調整側ベース22,モータユニット42)と、前記駆動部に対する押圧従動部(例えば後述のピンチローラ14,27,27′,17,18,33,34,33′,34′,35,36)を設けた第2のベース(例えば後述のスライドベース11,固定側ベース21,21′)とを備え、前記第1のベースおよび前記第2のベースを相対的にスライド可能な態様で設定したベルト調整機構である。
また、前記第1のベースおよび前記第2のベースを、前記駆動部と前記押圧従動部とを結ぶ線の方向が前記スライドの方向と一致する態様で設定したベルト調整機構である。
また、前記第2のベースに前記押圧従動部(例えば後述のピンチローラ17,18,33,34,33′,34′,35,36)を複数個設けたベルト調整機構である。
また、前記第2のベースに軸支されるアーム(例えば後述の湾曲アーム16,32,32′)に、複数個の前記押圧従動部(例えば後述のピンチローラ17,18,33,34,33′,34′,35,36)のそれぞれを設けたベルト調整機構である。
また、これらのベルト調整機構を備え、当該ベルト調整機構の作用により作業対象物を上下動させるベルトホイストである。
また、これらのベルト調整機構を備え、当該ベルト調整機構の作用により作業対象物を締め付けるベルト荷締機である。
このように、ベルトをその駆動部に押し付けて所定のバランス状態に保持するための押圧従動部を、当該駆動部にスライド移動可能な態様で構成している。そして、このバランス状態で駆動部が正逆いずれの回転方向(時計方向または反時計方向)に操作された場合にもベルトに対する押圧力が大きく変化しないようにしている。
これにより、締付け操作時において押圧従動部が駆動部に食い付いたりすることや、安定した荷締め状態においてベルトの保持が一気に解除されることなどが生じないようにできる。
また、押圧従動部と駆動部との相対的なスライド移動方向を、これらを結ぶ線方向に一致させている。
これにより、ベルトに対する押圧動作の一層の効率化を図ることができる。
また、駆動部に対する前記押圧従動部を複数個設け、これら押圧従動部それぞれの押圧作用でベルト荷重に対抗するようにしている。
これにより、押圧従動部の押圧保持用の有効表面積を大きくして、ベルトの保持作用をより確実なものにすることができる。
また、第2のベースに軸支されたアームにこの複数の押圧従動部を取り付け、ベルトに対する各押圧従動部の押圧作用の変化を抑えるようにしている。
これにより、ベルト荷重の変化などに対してもベルトを安定的に保持することができる。さらには、このアームを用いる場合において後述のように、当該アームの軸と当該アーム上のピンチローラの位置関係を、上記のθが小さく、かつ駆動部とベルトとの摩擦範囲を十分とれる形に設定することができる。
第1図は、スライドタイプの調整側ベルト機構の主要部分を概念的に示す説明図である。
第2図は、スライドタイプの調整側ベルト機構を備えた手動式のベルトホイストを示す説明図である。
第3図は、第2図のベルトホイストの側面を示す説明図である。
第4図は、第2図のベルトホイストの断面を示す説明図である。
第5図は、スライドタイプの調整側ベルト機構を備えた電動式のベルトホイストを示す説明図である。
第6図は、第1図に対応しており、ピンチローラを2個設けたベルト調整機構を示す説明図である。
第7図は、第4図に対応しており、ピンチローラを2個設けたベルトホイストの断面を示す説明図である。
第8図は、第5図に対応しており、ピンチローラを2個設けた電動式のベルトホイスト(その1)を示す説明図である。
第9図は、第5図に対応しており、ピンチローラを2個設けた電動式のベルトホイスト(その2)を示す説明図である。
なお、第10図および第11図は従来のベルト調整機構などを示す説明図である。
本発明を、添付の図面(第1図〜第9図)にしたがって詳細に説明する。
なお、第1図および第6図の調整側ベルト機構はともにベルト荷締機の場合を前提にしているが、これは単に第10図の従来例との対比を容易にするためである。
ベルトホイストの調整側ベルト機構では、固定側ベルトやフック等の吊具を用いる(第2図参照)。調整側ベルト機構の動作自体はベルト荷締機およびベルトホイストのいずれの場合も同じである。
第1図において、
11は全体が略L形状であってその一方の端部に固定側ベルト51を取り付けたスライドベース,11aは固定側ベルト51の取付軸,11bはスライド移動用の細長状の孔部,
12は調整側ベルト52に対応したスライドタイプの基準ベース,12aはスライド移動用のガイド,
13は基準ベース12に設けたものでその表面がローレット加工されている駆動ローラ,13aは当該駆動ローラの回転軸,
14はスライドベース11の他方の端部に設けたピンチローラ,14aは当該ピンチローラの回転軸,
をそれぞれ示している。
なお、固定側ベルト,調整側ベルトを含むその他の要素については第10図および第11図の参照番号を用いる。
第1図(a),(b)はそれぞれ第10図(a),(b)に対応しており、
・(a)はベルトに荷重が加わっていない初期設定状態
・(b)はベルトに荷重F1が加わったときのバランス状態
を示している。
初期設定状態(a)では、ピンチローラ14はもっぱら与圧バネ58の作用で調整側ベルト52を付勢している。この付勢力により、調整側ベルト52は滑ることなしに駆動ローラ13とピンチローラ14との間に保持される。
初期状設定態(a)における操作レバー57を時計方向に回動操作してベルトを緊張させた場合、スライドベース11はベルトの荷重F1を受けてガイド12aに案内されながら図示左方向に移動してバランス状態(b)となる。
なお、スライドベース11の移動は基準ベース12に対して相対的なものであり、スライドベース11を固定した場合には基準ベース12がスライドベースに対して移動する。
このとき、調整側ベルト52もスライドベース11の移動方向にピンチローラ14から効率的に押圧される。この移動方向は、ピンチローラの回転軸14aと駆動ローラの回転軸13とを結ぶ方向と略一致している。
ここで、バランス状態(b)において、いったん(a)の位置に戻した操作レバー57を時計方向に回動操作してベルトを締め付ける場合も、第10図のベルト調整機構とは違って、ピンチローラ14から調整ベルト52に新たな押圧力が加わることはない。
それは、ピンチローラ14が駆動ローラ13の回転力を受けても、当該ピンチローラを載せたスライドベース11が回動しないからである。
バランス状態(b)からさらにベルトを締め付けても、調整側ベルト52は、あくまでベルト荷重F1と略等しい押圧力をピンチローラ14から受けるのみである。
そのため、操作レバー57のベルト締付け方向への回動操作によってピンチローラ14が駆動ローラに食い付くような現象は生じない。
また、あるベルト締付け状態で調整側ベルト52が駆動ローラ13から少し滑ったとしても、第10図のベルト調整機構とは違って、調整側ベルト52への押圧力を減じるようなが再帰的動作は生じない。すなわち、調整側ベルト52を押さえる力が瞬時に大きく減少して、ピンチローラ14による当該調整側ベルトの保持状態が一気に解除されてしまうようなことは生じない。
第2図〜第4図の手動式のベルトホイストにおいて、
21は後述の固定用フック23およびピンチローラ27などを設けた固定側ベース(=第1図のスライドベース11),21aは当該固定側ベースの側板,21bは当該側板の連結軸,21cは後述の調整側ベース22が当該固定側ベースに対してスライド移動するための細長状の孔部(=第1図の孔部11b),
22は後述の駆動ローラ26などを設け、固定側ベース21に対して相対的にスライド移動する調整側ベース(=第1図の基準ベース12),22aは当該調整側ベースの側板,22bは当該側板の連結軸(≒第1図のガイド12a),22cは後述のピンチローラ27の軸部をよけるための孔部,
23は固定用フック(≒第1図の固定側ベルト51),23aは当該固定用フックの支持軸(=連結軸21b),
24は調整ベルト(=第1図の調整側ベルト52),
25は調整ベルト24に取り付けた吊下げ用フック,
26は調整ベルト24の駆動ローラ(=第1図の駆動ローラ13),26aは当該駆動ローラの回転軸,26bは当該回転軸に形成した螺子部,26cおよび26dは当該回転軸に形成したスプライン結合部,26eは当該回転軸に形成した環状の段部,
27は駆動ローラ26に対する従動ローラとしてのピンチローラ(=第1図のピンチローラ14),
28は駆動ローラ26や後述のラチエット車29aなどと同軸に設定した操作レバー(=第1図の操作レバー57),
29は操作レバー28の回動操作に基づいて駆動ローラ26を回転させるためのラチエット送り機構,29aは駆動ローラ26の回転軸26a(螺子部26b)と螺子結合したラチエット車,29bは当該回転軸のスプライン結合部26cに対応した鍔付き筒状の受け部,29cはスプライン結合部26dに対応した部分でラチエット車29aの左方向(第2図参照)への移動を規制する鍔付き筒状の抑え部,29dは当該抑え部に対するナット,29eはラチエット車29aと後述のラチエット車30aとの間に設けた摩擦板,29fは当該ラチエット車30aと受け部29bとの間に設けた摩擦板,
30は駆動ローラ26の逆転防止機構,30aは駆動ローラ26と同軸に設定したラチエット車,30bは当該ラチエット車に対する爪部,30cは当該爪部の回動軸(=連結軸22b),30dは当該爪部を図3の時計方向に付勢するバネ部材,
31は操作レバー28の一部であって駆動ローラ26の回転方向(吊下げ用フック25を上げる方向/下げる方向)を設定するための方向切換手段,31aはラチエット車29の駆動方向を選択的に設定する爪部,31bは当該爪部をその当該選択状態に保持するための付勢用バネ,31cは当該選択のための切換レバー,31dは当該切換レバーの回動軸,
をそれぞれ示している。
このように、第2図〜第4図のベルトホイストは、概略、
・例えば構造物やクレーンなどにセットされる固定用フック23
・固定用フック23およびピンチローラ27を設けた固定側ベース21
・駆動ローラ26を設け、固定側ベース21に対してスライド移動する調整側ベース22
・駆動ローラ26とピンチローラ27との回転作用により上下動する調整ベルト24および吊下げ用フック25
・方向切換手段31を備えた操作レバー28
・操作レバー28に応動して駆動ローラ26を回転させるラチエット送り機構29
・駆動ローラの逆転防止機構30
などからなっている。
ベルト調整機構を構成する固定側ベース21および調整側ベース22の相対的なスライド移動の態様は第1図のそれと同様である。
第2図および第3図において、方向切換手段31は吊下げ用フック25を上動させるモードに設定されている。
また、ラチエット車29aは摩擦板29eを十分押圧しており、ラチエット車29a,30aおよび受け部29bは摩擦板29e,29fを介して一体となって回動可能な状態である。
このとき、受け部29bの右側開口端部(第2図参照)は駆動ローラの回転軸26aの段部26eにあたっている。
一方、ラチエット車29aの左側端部(第2図参照)は抑え部29cの鍔部分から少し離れている(図示のS部分)。
この状態で操作レバー28をA方向(駆動ローラ26の正転方向)に回動させると、ラチエット車29aも爪部31aの作用によりA方向に回転し、当該ラチエット車は螺子部26bに対して右方向(第2図参照)に移動しようとする。
ところが、ラチエット車29aの先の受け部29bが上述のように段部26eにあたって右方向には移動できないので、当該ラチエット車と螺子部26bとはいわば一物になってA方向に回転する。すなわち駆動ローラ26が正転方向に回転して調整ベルト24(吊下げ用フック25)を上動させる。
この上動の際、逆転防止機構30のラチエット車30aがその爪部30bによって回転を阻止されることはない。
操作レバー28の上記時計方向への回動操作を止めると、ラチエット車30aはそのときの回転状態に爪部30bで保持される。そのため、摩擦板29eおよびラチエット車29aなどを介してラチエット車30aと密に結合している駆動ローラ26も、当該回動操作を止めたときの状態で保持される。
なお、駆動ローラ26を逆転させる、すなわち吊下げ用フック25を下動させる場合は、方向切換手段31の切換レバー31cを第3図の状態から反時計方向に略90°回動して他方の爪をラチエット車29aに係止させた上で、操作レバー28をB方向に操作すればよい。
この逆転操作により、ラチエット車29aが駆動ローラ26の螺子部26bに対してB方向に回動して左方向(第2図参照)に移動する。
この移動が可能なのは、上述のように、ラチエット車29aの左側端部(第2図参照)が抑え部29cの鍔部分から少し離れているからである。
ラチエット車29aが左方向に移動すると、当該ラチエット車と摩擦板29eとのそれまでの強い結合状態が解除されて、ラチエット車30aと受け部29bとの摩擦力も弱まる。
その結果、駆動ローラ逆転方向へのラチエット車30aの回転が爪部30bで抑止されているにもかかわらず、駆動ローラ26および(当該ローラとはその回転方向に連動する)受け部29bは調整ベルト24の吊下げ荷重によりB方向に回動する。すなわち、駆動ローラ26が反時計方向に逆転し、吊下げ用フック25が下動する。
この駆動ローラの逆転により、ラチエット車29aが右方向(第2図参照)に移動して再び摩擦板29eを押圧する。これにより逆転防止用のラチエット車30aと駆動ローラ26とが元の摩擦結合の状態に復帰して、当該駆動ローラの逆転は阻止される。
逆転操作の場合、このようなラチエット車29a,駆動ローラ26などの連続動作がいわば瞬時に繰り返される。
第5図の電動式のベルトホイストにおいて、
21′は固定用フック23および後述のピンチローラ27′などを設けた固定側ベース(=第1図のスライドベース11),21a′は当該固定側ベースの4個の側板,21b′は当該側板同士の連結軸,
26′は調整ベルト24の駆動ローラ(=第1図の駆動ローラ13),
27′は駆動ローラ26′に対する従動ローラとしてのピンチローラ(=第1図のピンチローラ14),
41は第2図〜第4図の操作レバー28や爪部31a,ラチエット車29aなどに相当するモータ,
42は当該モータやギヤボックス,制御部などを具備して第2図〜第4図の調整側ベース22に相当するモータユニット,
をそれぞれ示している。その他の各要素については第2図〜第4図の参照番号を用いる。
図示していないが、固定側ベース21′には上述のスライド移動用の孔部21cに相当するものが、またモータユニット42には(当該孔部に案内される)上述の連結軸22bに相当するものがそれぞれ形成されている。
第6図〜第9図は、上述のようにそれぞれ第1図〜第5図のベルト調整機構などに対応している。第1図〜第5図の場合との基本的な違いはピンチローラを2個にしたことである。
第6図〜第9図において、
15は全体がL字状であって2個のピンチローラを設けたスライドベース,15aは当該スライドベースの一方の端部側における固定側ベルト51の取付軸,15bはスライド移動用の細長状の孔部,15cは当該スライドベースの他方の端部側にそのスライド方向に延びる態様で形成した鉤状部,
16は当該鉤状部に設けたピンチローラ取付用の湾曲アーム(C字状アーム),16aは当該湾曲アームの軸,
17および18は湾曲アーム16の端部に設けたピンチローラ,17aおよび18aは当該ピンチローラの回転軸,
32は固定側ベース21の側板21aに設けたピンチローラ取付用の湾曲アーム(C字状アーム),32aは当該湾曲アームの軸,
33および34は湾曲アーム32の端部に設けたピンチローラ,
32′は固定側ベース21′の外方の側板21a′に設けたピンチローラ取付用の湾曲アーム(C字状アーム),32a′は当該湾曲アームの軸,
33′および34′は湾曲アーム32′の端部に設けたピンチローラ,
35および36は固定側ベース21′の外方の側板21a′に設けたピンチローラ,
をそれぞれ示している。なお、その他の各要素についてはそれぞれ対応する図で示した参照番号を用いる。
ここで、第6図,第7図および第8図の各ピンチローラ17,33,33′は、それぞれの回転軸と、対応の駆動ローラ13,26,26′の各回転軸とを結ぶ線の方向がスライドベース
15などのスライド方向(第7図および第8図の場合は図面の上下方向)と略一致している。
また、第9図の2つのピンチローラ35,36は、そのいわば合成中心と、対応の駆動ローラ26′の回転軸とを結ぶ線の方向がスライド方向(上下方向)と略一致している。すなわち、ピンチローラ35,36は、駆動ローラ26′の回転軸を通るスライド方向線に対して略線対称の位置関係にあり、当該スライド方向線の部分に単一の大きなピンチローラを設けることと等価である。
このように、第6図〜第9図の各ベルト調整機構も、第1図〜第5図のそれぞれと同じく、駆動ローラ側のベース(モータユニット)とピンチローラ側のベースとが相対的にスライド可能となっている。そのため、第10図の従来のベルト調整機構で問題となった「ベルトに対するピンチローラの食い付き」現象の発生を抑えることができる。
第6図〜第9図の各ベルト調整機構では、それぞれ2個のピンチローラの押圧作用によりベルト荷重F1に対抗している。
なお、第6図〜第8図のベルト調整機構の場合、いずれも2個のピンチローラそれぞれのベルト押圧部分の各位置と、湾曲アーム16,32,32′の軸の各位置とを、
・上述のθが小さくなり、
・駆動ローラ13,26,26′それぞれの周面の3/4程度の長さ(すなわちベルトを保持するのに十分な長さ)の部分に、ベルト(調整側ベルト52や調整ベルト24)の緊張部分が当接する、
ような関係に設定している。
そのため、操作レバー57やモータ41を駆動してベルトの緊張部分の長さを変えることにより湾曲アーム16,32,32′がいくらか回動したとしても、上述の「ベルトに対するピンチローラの食い付き」現象は問題化しない。
また、バランス状態の湾曲アーム16,32,32′が回動してその上の各ピンチローラのベルト押圧力の分担割合が変化しようとする場合、ベルト側からの反作用により当該湾曲アームは元の状態に戻ろうとする。
電動式のベルトホイストにおける駆動ローラのドライブ方式としてはモータからのダイレクトドライブ,ベルト駆動などの任意の手法を用いることができる。
また、駆動ローラ26,26′を正転/逆転させる手段として上述のもの以外の各種手法を用いてもよいことは勿論である。
以上のように、本発明のベルト調整機構は荷物,工事用製品などの各種物品を対象とするベルトホイストやベルト荷締機などに用いられる。そして、このベルトホイストは介護などの分野でも利用可能である。

Claims (6)

  1. ベルトの緊張部分の長さを、所定の駆動操作に基づいて調整できるようにしたベルト調整機構において、
    前記ベルトの駆動部を設けた第1のベースと、
    前記駆動部に対する押圧従動部を設けた第2のベースとを備え、
    前記第1のベースおよび前記第2のベースを相対的にスライド可能な態様で設定した、
    ことを特徴とするベルト調整機構。
  2. 前記第1のベースおよび前記第2のベースを、前記駆動部と前記押圧従動部とを結ぶ線の方向が前記スライドの方向と一致する態様で、設定した、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項記載のベルト調整機構。
  3. 前記第2のベースに前記押圧従動部を複数個設けた、
    ことを特徴とする請求の範囲第1項記載のベルト調整機構。
  4. 前記第2のベースに軸支されるアームに、前記押圧従動部のそれぞれを設けた、
    ことを特徴とする請求の範囲第3項記載のベルト調整機構。
  5. 請求の範囲第1項乃至第4項記載のいずれかのベルト調整機構を備え、当該ベルト調整機構の作用により作業対象物を上下動させる、
    ことを特徴とするベルトホイスト。
  6. 請求の範囲第1項乃至第4項記載のいずれかのベルト調整機構を備え、当該ベルト調整機構の作用により作業対象物を締め付ける、
    ことを特徴とするベルト荷締機。
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