JP4011395B2 - マイクロホン装置および音源方向判定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音源から出力される音波を受信し、この音波に基づく出力波形信号を出力するマイクロホン装置および音源方向判定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロホン装置は、マイクロホンで音波を受信し、このマイクロホンから出力される波形信号をアンプで増幅して出力する。マイクロホンとしては、一般的に、無指向性マイクロホンや、単一指向性マイクロホンが利用されている。
【0003】
マイクロホン装置の指向特性は、基本的にその装置で使用するマイクロホンの指向特性で決まる。無指向性マイクロホンは、図2(A)に示すように略円形形状の指向特性を有する。また、単一指向性マイクロホンは、図2(D)に示すように略カージオイド形状の指向特性を有する。
【0004】
ところで、近年、自動車などの車両では、カーナビゲーションシステムや、移動通信システムが広く普及し始めている。このようなシステムでは、たとえばマイクロホン装置で受信した音声を音声認識装置で解析した結果に基づいてカーナビゲーションシステムを動作させたり、マイクロホン装置で受信した音声を移動通信システムで送信したりする。
【0005】
このような用途で使用されるマイクロホン装置では、運転手の音声を確実に受信して、かつ、周囲の走行ノイズなどはなるべく受信しない特性のものが望まれる。このため、単一指向性マイクロホンを、車両内の運転手のなるべく近くで、運転手に向けて配置するのが一般的となっている。
【0006】
しかしながら、単一指向性マイクロホンを使用した場合、無指向性マイクロホンを使用するよりは改善されるものの、周囲の走行ノイズなどを多く受信してしまうことになる。単一指向性という単語から、正面のみに感度が高い特性を想像するが、実際は、側面側から音波を受信する感度が、正面から受信する場合の感度に比べて、わずかに数dB低いだけなのである。
【0007】
したがって、マイクロホン装置の出力信号は、運転手の音声に基づく成分とともに、周囲の走行ノイズなどの成分が含まれたものになってしまう。そのため、音声認識装置の認識率が悪化したり、移動通信システムの通話品質が低下することになる。
【0008】
そこで、使用するマイクロホンとして単一指向性の指向特性よりも正面以外の方向の感度を低く抑えたマイクロホンを使用することが考えられる。
【0009】
また、運転手の音声と走行ノイズとの受信レベルに差があることに着目して、マイクロホンの波形信号のレベルが所定の閾値レベルを超えたら、この波形信号を出力信号として出力することが考えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の考え方では車両内の運転手の音声のみを効率よく出力波形信号として出力することはできない。
【0011】
前者のマイクロホンの指向特性の改善については、現実的に単一指向性よりも適しているマイクロホンはない。
【0012】
たとえば、単一指向性よりも側面からの感度を減らし指向特性の形状を前方に鋭くした超指向性とよばれるマイクロホンがある。しかしながら、超指向性のマイクロホンは原理的に音波の波長以上の長さが必要であり、短いものでも30cm程度の長さになってしまう。このため、運転手の口元に向かって設置することは現実的ではなくなってしまう。
【0013】
また、側面からの感度が低い双指向性という指向特性のマイクロホンがある。双指向性マイクロホンは、図2(B)に示すような略8の字形状の指向特性を有する。双指向性の場合、側面感度は低いが背面感度が正面と同程度になっている。背面側からの音が問題であるならば、双指向性のマイクロホンの背面を覆えば改善するような気がする。しかしながら、双指向特性の背面を塞ぐと無指向性の特性に近くなってしまうのである。無指向性のマイクロホンは、音波による空気の直接的な動きよりも、空気が動くことによって発生する気圧の変化を主にとらえているマイクロホンである。気圧の変化はどの方向からの音波でも同様に発生するので指向特性は無指向性となる。振動板の片側を塞ぐと振動板の動きは気圧変化によるものが主体的となる。このため、単一指向性の場合も同様であるが、マイクロホンの振動板の正面以外の周囲を塞いでしまうと、その意図とは逆に、マイクロホンの指向特性が無指向性に近くなってしまうのである。
【0014】
後者の閾値レベルに基づく判定技術では、音声信号の出力レベルと走行ノイズの出力レベルとの間に所望のレベル差が必要である。しかしながら、音声信号の出力レベルは、話者の音声や抑揚、話者とマイクロホンの距離の変動、あるいは周囲の騒音レベルなどによって大きく変化してしまう。したがって、このような音声信号の出力レベルの変動を考慮すると、適切な閾値レベルが設定できなくなってしまうので、声がとぎれとぎれになったり、あるいは走行ノイズが常時出力されるといったことになってしまったりする。
【0015】
音声信号の出力レベルと走行ノイズの出力レベルとの絶対的なレベル差を確保するためには、運転手とマイクロホンとの距離をなるべく短くすればよい。とはいっても、運転手にマイクロホン付のヘッドセットを装着するよう強要するのも現実的ではない。実際のところ、マイクロホンをサンバイザー付近に取り付けるなどして、運転手との距離を縮めることになる。これで30cm〜40cm程度まで近づけることになる。しかしながら、ヘッドセットを装着した場合と違い、話者とマイクロホンの距離が変動するために音声の出力レベルは変動してしまう。また、この変動はマイクロホンと運転手の距離が近いほど変動レベルが大きくなってしまう。たとえば、この距離が30cmの場合、前後に5cm動いただけで音声信号のレベルは2倍程度変化してしまう。したがって、マイクロホンの設置場所を工夫したとしても、適切な閾値レベルを設定することは非常に難しい。
【0016】
そこで、本願発明者は、たとえば双指向性マイクロホンや、双指向性の正面側と背面側の感度を異なるように変更した指向特性を有するマイクロホンなどでは、音波の受信方向によって波形信号の位相が変化することに着目し、この性質を利用することで、上述の問題をうまく解決できることに想到し、本願発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以上の課題を解決するものであり、複数のマイクロホンから出力される波形信号同士の位相差に基づいて、音源の相対方向を判断することができる音源方向判定装置を得ることを目的とする。
【0018】
また、本願の他の発明は、複数のマイクロホンから出力される波形信号同士の位相差に基づいて音源の相対方向を判断し、この判断結果に基づいて出力波形信号を制御するマイクロホン装置を得ることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る音源方向判定装置は、音源の方向によって出力される波形信号の位相が大きく変化する第一のマイクロホンと、音源の方向によっては第一のマイクロホンとは異なる位相の波形信号を出力するマイクロホンであって、且つ、第一のマイクロホンと音波の波長に対して十分接近して配置された第二のマイクロホンと、各マイクロホンからそれぞれ出力される波形信号同士の位相を比較した結果に基づいて音源の方向を判定する判定手段と、を備えるものである。
【0020】
本発明に係る音源方向判定装置は、さらに、音源の方向によって出力される波形信号の位相が大きく変化する第一のマイクロホンとして、双指向特性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有するマイクロホンを使用するとともに、そのマイクロホンの高感度側の方向が、装置の正面とは反対側の向きに設置されているものである。
【0021】
他の発明に係る音源方向判定装置は、上述の発明に加え、第二のマイクロホンとして、無指向性マイクロホンを使用している。
【0023】
本願の発明に係るマイクロホン装置は、音源の方向によって出力される波形信号の位相が大きく変化する第一のマイクロホンと、音源の方向によっては第一のマイクロホンとは異なる位相の波形信号を出力するマイクロホンであって、且つ、第一のマイクロホンと音波の波長に対して十分接近して配置された第二のマイクロホンと、第一と第二のマイクロホンからそれぞれ出力される波形信号同士の位相を比較した結果に基づいて音源の方向を判定する判定手段と、判定された音源の方向によって、波形信号の出力レベルを変化させる、出力レベル可変手段と、を備え、第一のマイクロホンとして、双指向特性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有するマイクロホンを使用するとともに、第一のマイクロホンの高感度側の方向を、装置の正面とは反対側の向きに設置したものである。
【0024】
本願の他の発明に係るマイクロホン装置は、さらに、音波に基づく波形信号のレベルを検出するレベル検出手段を設け、出力レベルを変化させる出力レベル可変手段において、レベル検出手段の検出結果によっても出力レベルを変化させるようにしたものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係るマイクロホン装置および音源方向判定装置を、図面に基づいて説明する。
【0026】
実施の形態1.
【0027】
図1は、本発明の実施の形態1に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【0028】
音源方向判定装置は、主に、第二のマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、第一のマイクロホンとしての双指向性マイクロホン2と、これらのマイクロホン1,2が出力する波形信号同士の位相を比較し、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、を備える。
【0029】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、双指向性マイクロホン2と位相比較器3の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,2から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0030】
図2(A)は、図1に示す無指向性マイクロホン1の指向特性を示す指向特性図である。無指向特性の指向特性曲線は、略円形状になる。つまり、無指向性マイクロホン1から出力される波形信号の振幅は、音源の強さが一定で音源との距離も一定ならば、相対方向にかかわらずに一定である。
【0031】
図2(B)は、図1に示す双指向性マイクロホン2の指向特性を示す指向特性図である。双指向特性の指向特性曲線は、2つの円をつなげたような略8の字形状になる。
【0032】
つまり、双指向性マイクロホン2から出力される波形信号の振幅は、双指向性マイクロホン2と音源との距離だけでなく、双指向性マイクロホン2と音源との相対方向に応じて変化する。具体的には、双指向性マイクロホン2に対して図示外の振動面に垂直な方向あるいは平行な方向から音波を与えた場合、振動面と平行な方向からの音波よりも垂直な方向からの音波のほうが、大きな振幅の波形信号を出力させることができる。図2(B)では、振動面は、横軸上に配設されている。
【0033】
また、双指向性マイクロホン2は、図2(B)の横軸よりも上側に音源がある場合と、図2(B)の横軸よりも下側に音源がある場合とで、双指向性マイクロホン2から出力される波形信号の位相が180度ずれる。別の言い方をすれば、図2(B)の指向特性図で8の字の窪みの位置付近で位相が180度変化する。
【0034】
以下、このような指向特性図の窪みの部分で位相が大きく変化するポイントを位相特異点とも記載する。図2(B)ではAの部分が位相特異点である。
【0035】
なお、図2(B)の位相特異点A以外の部分では、位相がほとんど変化しない。つまり、図2(B)の横軸より上側であれば、どの方向であってもほとんど同じ位相の波形信号が得られる。また、図2(B)の横軸より下側であれば、上側と位相が180度ずれているが、どの方向であってもほとんど同じ位相の波形信号が得られる。
【0036】
したがって、たとえば、図2(B)の横軸の上側の音源から正の位相の音波が入力されて、双指向性マイクロホン2から正の位相の波形信号が出力された場合には、横軸の下側の音源から正の位相の音波を入力すると、双指向性マイクロホン2からは負の位相の波形信号が出力されることになる。以下、音波の正の位相に基づいて、双指向性マイクロホン2から正の位相の波形信号が出力される方向を双指向性マイクロホン2の正面方向と記載する。また、音源の正の位相に基づいて、双指向性マイクロホン2から負の位相の波形信号が出力される方向を双指向性マイクロホン2の背面方向と記載する。また、図2(B)の横軸の方向を双指向性マイクロホン2の側面方向と記載する。
【0037】
なお、無指向性マイクロホン1では、双指向性マイクロホン2と違い、その前後において位相が大きく変化する位相特異点Aが存在せず、音源の相対方向がどのような方向であっても、同一の位相の波形信号を出力する。
【0038】
ところで、無指向性マイクロホン1としては、圧力型マイクロホンがある。圧力型マイクロホンは、たとえば、ダイナミック型マイクロホン、コンデンサー型マイクロホン、エレクトレットコンデンサー型マイクロホンなどで実現される。
【0039】
この圧力型マイクロホンは、基本的に、振動板の正面側が開放されるとともに、背面側がハウジングで密閉された構造を有する。音波による空気の動きが振動板を動かす原理には2つの種類がある。1つは、空気の動きを直接的に受けて空気の動きに追従する動き方である。2つ目は、空気の動きによって発生した気圧の変化に振動板が動かされる動き方である。なお、この2種類の動きは後者の気圧による動きの方が圧倒的に大きい。圧力型マイクロホンの場合、背面側が密閉されているので振動板の背面側の気圧は一定となり、正面側の気圧の変化によって振動板が動かされる。気圧変化による動きが主体的であるので、圧力型マイクロホンはマイクの場所の気圧の変化に従った波形信号を出力する。マイクロホンの周囲の気圧変化は音源の相対方向によらないので、圧力型マイクロホンは音源の相対位置に関係なく、感度が一定となり、また、位相も音源の方向によって変化することはない。
【0040】
これに対して、双指向性マイクロホン2では違う動き方をしている。双指向性マイクロホン2としては、速度型マイクロホンがあり、たとえば、リボン型マイクロホンなどで実現される。
【0041】
この速度型マイクロホンは、振動板の周囲が開放される構造を有する。振動板の周囲が開放された場合、振動板の大きさが音波の波長に対して十分小さければ、振動板の正面側の気圧と背面側の気圧は全く同じになる。こうなると、振動板は、気圧の変化では動かされることはなく、空気の直接的な動きに従って動くことになる。
【0042】
速度型マイクロホンでは、振動板の正面側から音波がきた場合と、振動板の背面側から音波がきた場合とでは、振動板の振動方向が逆になる。たとえば、ある音源を振動板の正面側に配置して、あるタイミングで音波による空気の動きが、マイクロホンに向かってくる方向であったとする。正面側から向かってくる空気の動きに対しては、振動板は背面側に動く。同じ音源を同じ距離で振動板の背面側に配置して、同じタイミングで見ると、音波による空気の動きがマイクロホンに向かってくるということについては、正面側に音源がある場合と同じである。ただし、この場合は、振動板の背面側から空気が向かってくることになるので、振動板は正面側に向かって動く。この動きは音源が正面側にあるときの逆である。マイクロホンの波形信号出力は振動板の動きに従ったものであるから、速度型マイクロホンでは、音源の相対方向が正面側である場合と背面側である場合とでは、マイクロホンから出力される波形信号の位相が逆になっている。
【0043】
なお、圧力型マイクロホンと速度型マイクロホンを、音波の波長に対して十分近接して配設した場合、それぞれから出力される波形信号の位相は90度ずれたものになっている。これは、マイクロホンの周囲の気圧は、その近傍の空気の動きを積分したものだからである。音源が正面側にある場合、速度型マイクロホンの波形信号出力は、圧力型マイクロホンの波形信号出力より90度位相が進んでいる。また、音源が背面側にある場合、速度型マイクロホンの波形信号出力は、正面側と比較して180度位相が変化しているのであるから、圧力型マイクロホンの波形信号出力より90度位相が遅れることになる。
【0044】
図3に、単一周波数の正弦波を発する音源からくる音波を、無指向性マイクロホン1としての圧力型マイクロホン、および、双指向性マイクロホン2としての速度型マイクロホンにて受信した場合に、これらのマイクロホンから出力される波形信号を示す。
【0045】
この図で、圧力型マイクロホンから出力される波形信号をBとする。マイクロホンの近傍の空気の動きを積分したものが気圧の変化とすると、逆に気圧の変化を微分したものが空気の動きとなる。気圧が高いときに圧力型マイクロホンから正の波形信号が出力され、また、マイクロホンに正面側から向かってくる空気の動きによって速度型マイクロホンに正の波形信号が出力されるとすると、音源が正面側にあるときの速度型マイクロホンの波形信号出力は図3のAとなる。この波形信号は圧力型マイクロホンからの波形信号Bより90度位相が進んでいる。音源が背面側にあるときの速度型マイクロホンの波形信号出力は、音源が正面にあるときとは逆位相であるので、波形信号出力はAと逆位相のCとなる。
【0046】
したがって、無指向性マイクロホン1としての圧力型マイクロホンの波形信号出力Bを基準にして、双指向性マイクロホン2としての速度型マイクロホンの波形信号出力を見たとき、図3Aのように位相が進んでいれば、音源は正面側にあるといえる。また、逆に、図3Cのように位相が遅れていれば、音源が背面側にあることがわかる。
【0047】
この判定をおこなうのが、図1の位相比較器3である。位相比較器3では、無指向性マイクロホン1からの波形信号を基にして、双指向性マイクロホン2からの波形信号の位相が進んでいるのか、あるいは遅れているのかを判定する。そして、たとえば、位相が進んでいればハイレベルの位相判定信号を出力して、また、位相が遅れていればローレベルの位相判定信号を出力する。この位相判定信号を見て、ハイレベルならば音源は正面側にあり、ローレベルならば音源が背面側にあることになる。
【0048】
以上のように、この実施の形態1に係る音源方向判定装置は、無指向性マイクロホン1が出力する波形信号と、双指向性マイクロホン2が出力する波形信号との位相関係に基づいて、音源の相対方向を判定することができる。
【0049】
したがって、図4において、2つのマイクロホン1,2の設置状態における指向特性を重ねて示すように、この実施の形態1に係る音源方向判定装置を用いることで、音源が音源方向判定装置の正面側Aにあるのか、背面側Bにあるのかを判定することができる。そして、この判定結果に基づいて、たとえば照明などのスイッチをオンオフ制御することができる。また、この判定結果に基づいて、正面からの音声が無いときは、波形信号出力の振幅を絞ることで、周囲のノイズのレベルを減少させることができる。
【0050】
実施の形態2.
【0051】
図5は、本発明の実施の形態2に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【0052】
音源方向判定装置は、主に、第二のマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、双指向性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有する第一のマイクロホンとしてのマイクロホン5と、これらのマイクロホン1,5が出力する波形信号同士の位相を比較して、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、を備える。
【0053】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、マイクロホン5と位相比較器3の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,5から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0054】
上述の、双指向性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有するマイクロホン5は、たとえば、双指向性マイクロホン2の背面側を概ね覆うことで実現することができる。この場合、たとえば、図2(C)のような指向特性になる。
【0055】
双指向性マイクロホン2の振動板の背面側を不完全に閉じた場合、声などで空気が振動するとき、振動板の背面側の空気の動きが正面側より抑圧されるために、振動板の正面側と背面側の気圧は一致しなくなる。そのため、振動板の動きは、空気の直接的な動きによるものの他に、気圧の要素が混ざったものになる。
【0056】
その結果、図2(C)のような、双指向性マイクロホン2の正面側より背面側の感度が低くなって、2つの位相特異点Aも背面側に移動した歪んだ8の字形状の指向特性になる。
【0057】
この指向特性を、以下、ハイパーカージオイド特性と呼ぶことにする。狭義のハイパーカージオイド特性は、気圧の要素がある特定割合混ざったものであるが、ここでは、位相特異点Aが2つあって正面側と背面側の感度が異なる特性をすべてハイパーカージオイド特性と記載することにする。また、図2(C)の上方の8の字形状の大きい方を高感度側、小さい輪の方を低感度側とする。なお、マイクロホン5は、ハイパーカージオイドマイクロホン5と記載する。
【0058】
なお、ハイパーカージオイドマイクロホン5の背面側の密閉度をさらに上げていくと、背面側の感度がさらに低くなり、やがて位相特異点Aが一つになり背面側の感度の盛り上がりが消滅して、図2(D)のような特性になる。この図のような特性をカージオイド特性と呼ぶ。単一指向性マイクロホンは基本的にカージオイド特性である。
【0059】
ハイパーカージオイドマイクロホン5以外の構成要素は、実施の形態1の同名の各要素と同一のものであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
実施の形態2では、構成要素以外に、マイクロホンの設置方法に特徴がある。2つのマイクロホンを十分接近して配置するのは実施の形態1と同様であるが、実施の形態2では、特に、ハイパーカージオイドマイクロホン5の低感度側を装置の正面に向けて設置する。つまり、ハイパーカージオイドマイクロホン5の高感度側の方向が、装置の正面とは反対側の向きに設置されている。
【0061】
ハイパーカージオイド特性は、塞ぐ側の形状によって多くの特性があり得る。位相特異点Aの位置だけでなく、高感度側と低感度側の位相も形状によって変化する。それでも、実施の形態2においてのハイパーカージオイドマイクロホン5は、実施の形態1においての双指向性マイクロホン2と同様に扱える。
【0062】
無指向性マイクロホン1の波形信号出力と、ハイパーカージオイドマイクロホン5の波形信号出力との位相の関係は、図3のA,B,Cのような各90度の位相差の関係には無いが、無指向性マイクロホン1の波形信号出力を基準にして、ハイパーカージオイドマイクロホン5の高感度側の波形信号出力の位相が進んでいるということと、低感度側の位相が遅れているという関係は保たれる。また、それぞれの位相差も、90度より小さくなるものの、大きな位相差があることには変わりない。
【0063】
したがって、位相比較器3も実施の形態1と同様、無指向性マイクロホン1の波形信号出力に対して、位相が進んでいるか遅れているかの判定をすれば、音源が位相特異点Aの正面側にあるのか背面側にあるのかの判定ができる。
【0064】
以上のように、この実施の形態2に係る音源方向判定装置は、無指向性マイクロホン1が出力する波形信号と、ハイパーカージオイドマイクロホン5が出力する波形信号の位相の関係に基づいて、音源の相対方向を判定することができる。
【0065】
したがって、図6に2つのマイクロホン1,5の設置状態における指向特性を重ねて示すように、この実施の形態2に係る音源方向判定装置を用いることで、音源が音源方向判定装置の正面側Aにあるのか、その他周囲の方向Bにあるのかを判定することができる。そして、この判定結果に基づいて、たとえば照明などのスイッチをオンオフ制御することができる。また、この判定結果に基づいて、正面からの音声が無いときは、波形信号出力の振幅を絞ることで、周囲のノイズのレベルを減少させることができる。
【0066】
特に、この実施の形態2のように、ハイパーカージオイドマイクロホン5の低感度側を、音源方向判定装置の正面側とすることで、双指向性マイクロホン2を用いた場合よりも狭い角度範囲に音源があるのかどうかの判定ができる。双指向性マイクロホン2を用いた場合は、この範囲は180度固定であったが、ハイパーカージオイドマイクロホン5を用いることによって、この角度範囲を狭くできる。また、ハイパーカージオイドマイクロホン5の構造を変更することによって、この音源の位置判定の角度範囲をある程度自由に変更することができる。
【0067】
その結果、たとえば、自動車のサンバイザやその近傍の天井にこの音源方向判定装置を設置することで、運転手に的を絞って、発声しているかどうかの判断ができるようになる。
【0068】
実施の形態3.
【0069】
図7は、本発明の実施の形態3に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【0070】
音源方向判定装置は、主に、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての双指向性マイクロホン2と、無指向性マイクロホン1の波形信号出力の位相をシフトする位相シフタ6と、位相シフタ6の出力と双指向性マイクロホン2の波形信号出力とを特定の比率で加算する演算手段としての加算器7と、加算器7の出力と無指向性マイクロホン1の波形信号出力との位相を比較し、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、を備える。
【0071】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、双指向性マイクロホン2と加算器7の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,2から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0072】
実施の形態3では、実施の形態2においてハイパーカージオイドマイクロホン5を用いた代わりに、無指向性マイクロホン1の波形信号出力を位相シフタ6で位相を90度遅らせた信号と、双指向性マイクロホン2の波形信号出力を加算器7で加算した波形信号を用いる。
【0073】
図3において、無指向性マイクロホン1の波形信号出力はBであるが、これを90度位相を遅らせると、Cと同じ位相になる。位相を遅らせても振幅を変えなければ、Cと同じ位相で音源の相対方向によって振幅が変化しない波形信号ができることになる。以下、この無指向性マイクロホン1の出力の位相を90度遅らせた波形信号を無指向性マイクロホン+90度信号と記載することにする。
【0074】
音源が真正面にあるときの、無指向性マイクロホン1の出力と双指向性マイクロホン2の出力の振幅が同じだとして、無指向性マイクロホン+90度信号を、たとえば、振幅を半分にして、加算器7で加算したとする。
【0075】
音源が正面にある場合、双指向性マイクロホン2の出力と無指向性マイクロホン+90度信号は逆位相となるので、加算後の振幅は双指向性マイクロホン2の出力の半分となる。このとき、加算後の位相は変わらない。また、音源が背面側にあるときは、同位相となるので、振幅は1.5倍となり、位相も変わらない。さらに、音源が側面方向にあるときは、双指向性マイクロホン2の出力の振幅は小さいので、加算後の振幅と位相は無指向性マイクロホン+90度信号にほぼ等しくなる。
【0076】
加算器7での加算後の信号は正面と背面の位相が双指向性マイクロホン2と同様に逆であるので、途中のどこかに位相が反転する位相特異点Aがあるはずであるが、双指向性マイクロホン2で位相特異点Aがあった側面には位相特異点Aがなくなっている。加算器7での加算後の信号の位相特異点Aは、この場合、双指向性マイクロホン2の出力が、正面側と同じ位相で振幅が半分のポイントとなる。双指向性マイクロホン2の感度は、概略正面からの角度のコサインに比例しているので、そのポイント、つまり位相特異点Aは正面から概ねプラスマイナス60度付近にあることになる。
【0077】
加算器7での加算後の信号と、無指向性マイクロホン1からの波形信号を、図8に重ねて示す。使用しているマイクロホンは、無指向性マイクロホン1と双指向性マイクロホン2であるが、位相シフタ6と加算器7を使用することで、ハイパーカージオイドマイクロホン5に相当する信号を生成することができる。
【0078】
ハイパーカージオイドマイクロホン5に相当する信号を加算器7で生成する以外、他の構成要素は、実施の形態1の同名の各要素と同一のものであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
位相比較器3に入る信号の位相も、実施の形態1と全く同じである。したがって、位相比較器3も実施の形態1と同様、無指向性マイクロホン1の波形信号出力に対して、位相が進んでいるか遅れているかの判定をすれば、音源が図8の正面側Aにあるのか背面側Bにあるのかの判定ができる。
【0080】
以上のように、この実施の形態3に係る音源方向判定装置は、無指向性マイクロホン1と双指向性マイクロホン2を使用して、ハイパーカージオイドマイクロホン5を使用したような狭い角度範囲の音源の相対方向を判定することができる。
【0081】
したがって、応用面での利点など、実施の形態2と同様のことが言える。
【0082】
ハイパーカージオイドマイクロホン5の場合、位相特異点Aの場所はマイクロホンの構造で決まってしまうので、マイクロホンを作りかえない限り場所の変更はできない。しかし、実施の形態3の場合、加算器7の入力レベルを変更するだけで、位相特異点Aの場所を変更できる。
【0083】
また、ハイパーカージオイドマイクロホン5より一般的なマイクロホンで構成できることも利点となる。
【0084】
実施の形態4.
【0085】
図9は、本発明の実施の形態4に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【0086】
音源方向判定装置は、主に、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての双指向性マイクロホン2と、無指向性マイクロホン1の波形信号出力の位相をシフトする位相シフタ6と、位相シフタ6の出力レベルを可変する電圧制御アンプ8と、電圧制御アンプ8の出力と双指向性マイクロホン2の波形信号出力とを加算する演算手段としての加算器7と、加算器7の出力と無指向性マイクロホン1の波形信号出力との位相を比較し、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、を備える。
【0087】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、双指向性マイクロホン2と加算器7の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,2から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0088】
実施の形態3では、双指向性マイクロホン2の出力に対して、位相を90度遅らせた無指向性マイクロホン1からの出力を、加算器7で加算することによって位相特異点Aを移動させている。実施の形態4では、この加算量を可変出来るように、つまり、位相特異点Aの移動を制御できるよう、電圧制御アンプ8を追加した。
【0089】
図8は、双指向性マイクロホン2からの波形信号と、無指向性マイクロホン+90度信号の、加算器7での加算の比率は、2:1であった。この比率を2:√3(=31/2)にしたのが図10である。電圧制御アンプ8によって、この比率の変更を外部から制御可能としている。
【0090】
実施の形態4では、電圧制御アンプ8を追加して、加算器7で加算する比率が可変である以外、他の構成要素は実施の形態3の同名の各要素と同一のものであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
位相比較器3に入る信号の位相も、実施の形態1と全く同じである。したがって、位相比較器3も実施の形態1と同様、無指向性マイクロホン1の波形信号出力に対して、位相が進んでいるか遅れているかの判定をすれば、音源が図10の正面側Aにあるのか背面側Bにあるのかの判定ができる。
【0092】
以上のように、この実施の形態4に係る音源方向判定装置は、無指向性マイクロホン1と双指向性マイクロホン2を使用して、ハイパーカージオイドマイクロホン5を使用したような狭い範囲の音源の相対方向を判定することができる。また、その位相特異点Aの位置も外部から制御可能となる。
【0093】
したがって、応用面での利点など、実施の形態3と基本的に同様であり、さらに、ズーム機能付きのビデオカメラのマイクロホンとして、ズームに連動して、ズームの範囲に音源があるかどうかの判定をするなどの応用も可能となる。
【0094】
実施の形態5.
【0095】
図11は、本発明の実施の形態5に係るマイクロホン装置を示す回路図である。
【0096】
マイクロホン装置は、主に、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての双指向性マイクロホン2と、これらのマイクロホン1,2が出力する波形信号同士の位相を比較し、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、双指向性マイクロホン2からの波形信号出力と位相比較器3からの位相判定信号が入力され、位相判定信号のレベルに応じた増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する出力レベル可変手段としての電圧制御アンプ8と、を備える。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。
【0097】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、双指向性マイクロホン2と位相比較器3の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,2から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0098】
電圧制御アンプ8は、位相判定信号のレベルに応じた増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅し、これを出力波形信号として出力するものである。具体的には、位相判定信号のレベルが高ければ高い増幅率で、低ければ低い増幅率で、双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する。なお、低い増幅率は、0%であってもよい。
【0099】
これ以外の構成要素は、実施の形態1の同名の構成要素と同一のものであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0100】
マイクロホン装置の正面側に音源を配置すると、無指向性マイクロホン1からの波形信号よりも、双指向性マイクロホン2からの波形信号の方が、位相が進んでいるので、位相比較器3は、ハイレベルの位相判定信号を出力する。
【0101】
そして、位相比較器3からハイレベルの位相判定信号が出力されるので、電圧制御アンプ8は、所定の高い増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。
【0102】
逆に、マイクロホン装置の背面側に音源を配置すると、無指向性マイクロホン1からの波形信号よりも、双指向性マイクロホン2からの波形信号の方が、位相が遅れているので、位相比較器3は、ローレベルの位相判定信号を出力する。
【0103】
そして、位相比較器3からローレベルの位相判定信号が出力されるので、電圧制御アンプ8は、所定の低い増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。増幅率が0%であれば、出力波形信号に音源からの波形信号に基づく成分は含まれなくなる。
【0104】
以上のように、この実施の形態5に係るマイクロホン装置は、無指向性マイクロホン1が出力する波形信号と、双指向性マイクロホン2が出力する波形信号の位相の関係に基づいて、音源の相対方向を判定し、この判定結果に基づいて、音波に基づく波形信号の増幅率を切り替える。
【0105】
したがって、この実施の形態5に係るマイクロホン装置を用いることで、マイクロホン装置の正面側に音源がある場合には、その音源からの音波に基づく波形信号を増幅し、これを出力波形信号として出力することができる。また、マイクロホン装置の正面側に音源がない場合には、波形信号の増幅率を下げる。
【0106】
その結果、擬似的に、マイクロホン装置の正面側にある音源の音を効率よく出力波形信号に変換し、背面側にある音源の音を出力波形信号に変換しない指向特性を得ることができる。
【0107】
なお、電圧制御アンプ8に替えて、位相判定信号のレベルに応じてオンオフ制御されるスイッチを用いてもよい。この場合、増幅率は、100%と0%に切り替えられることになる。そして、位相判定信号がハイレベルであるときにオン制御し、位相判定信号がローレベルであるときにオフ制御することで、この実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0108】
ところで、実施の形態5では、実施の形態1に電圧制御アンプ8を加えた構成であった。位相判定信号は実施の形態1と同じ動作であるため、指向特性も実施の形態1の音源方向の判定と同じ範囲となる。
【0109】
この位相判定信号を得るまでの部分は、実施の形態1以外に、実施の形態2や、実施の形態3や、実施の形態4であっても構わない。この場合は、指向特性をより狭い範囲に限定したり、範囲を可変できたりする。
【0110】
実施の形態6.
【0111】
図12は、本発明の実施の形態6に係るマイクロホン装置を示す回路図である。
【0112】
マイクロホン装置は、主に、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての無指向性マイクロホン1と、複数のマイクロホンの中の1つのマイクロホンとしての双指向性マイクロホン2と、これらのマイクロホン1,2が出力する波形信号同士の位相を比較し、これらの位相比較の結果に基づいて変化する位相判定信号を出力する判定手段としての位相比較器3と、双指向性マイクロホン2からの波形信号出力のレベルを検出し、そのレベルに応じたゲイン制御信号を出力するレベル検出手段としてのレベル検出器9と、このゲイン制御信号と位相比較器3から出力される位相判定信号とを乗算して乗算信号を出力する乗算器10と、双指向性マイクロホン2からの波形信号が入力され、乗算器10からの乗算信号レベルが高いほど増幅率が上がる出力レベル可変手段としての電圧制御アンプ8と、を備える。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。
【0113】
また、無指向性マイクロホン1と位相比較器3の間、および、双指向性マイクロホン2と位相比較器3の間にはそれぞれ、これらのマイクロホン1,2から出力された波形信号の振幅を増幅する増幅アンプ4が設けられている。
【0114】
レベル検出器9は、双指向性マイクロホン2から出力される波形信号のレベルを検出し、そのレベルに応じたゲイン制御信号を出力する。
【0115】
図13に、レベル検出器9の入力信号レベルと、レベル検出器9から出力されるゲイン制御信号のレベルとの関係を示す入出力特性図を示す。実線がレベル検出器9の入出力特性線である。破線は、リニアアンプの入出力特性線である。
【0116】
そして、図13に示すように、このレベル検出器9は、入力レベルが所定の第一レベルよりも低い場合には、入力レベルに比例したレベルのゲイン制御信号を出力する。また、入力レベルが所定の第一レベルよりも高い場合には、略一定のレベルの制御信号を出力する。
【0117】
なお、第一レベルは、たとえば、この実施の形態6に係るマイクロホン装置が自動車の運転席上方に配設される場合には、運転席に座った人の通常の車内での声量に基づいて、その声量に基づく入力レベル程度、あいるは、それよりも少し小さいレベルに設定すればよい。
【0118】
これ以外の構成要素は、実施の形態5の同名の構成要素と同一のものであり、同一符号を付して説明を省略する。
【0119】
マイクロホン装置の正面側に音源を配置すると、無指向性マイクロホン1からの波形信号よりも、双指向性マイクロホン2からの波形信号の方が、位相が進んでいるので、位相比較器3は、ハイレベルの位相判定信号を出力する。
【0120】
レベル検出器9は、双指向性マイクロホン2からの波形信号のレベルに応じたゲイン制御信号を出力する。乗算器10は、このゲイン制御信号とハイレベルの位相判定信号を乗算し、これを乗算信号として出力する。
【0121】
そして、電圧制御アンプ8は、この乗算信号のレベルに応じた、所定の高い増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。
【0122】
逆に、マイクロホン装置の背面側に音源を配置すると、無指向性マイクロホン1からの波形信号よりも、双指向性マイクロホン2からの波形信号の方が、位相が遅れているので、位相比較器3は、ローレベルの位相判定信号を出力する。
【0123】
レベル検出器9は、双指向性マイクロホン2からの波形信号のレベルに応じたゲイン制御信号を出力する。乗算器10は、このゲイン制御信号とローレベルの位相判定信号を乗算し、これを乗算信号として出力する。このときの乗算信号はローレベルとの乗算なので、常にローレベルとなる。
【0124】
そして、電圧制御アンプ8は、この乗算信号のレベルに応じた、所定の低い増幅率で双指向性マイクロホン2からの波形信号を増幅する。この電圧制御アンプ8にて増幅された信号が、出力波形信号として出力される。なお、増幅率が0%であれば、出力波形信号に音源からの波形信号に基づく成分は含まれなくなる。
【0125】
図14に、この実施の形態6に係るマイクロホン装置の入出力特性を示す。
【0126】
マイクロホン装置の背面側に音源がある場合には、位相比較器3からローレベルの位相判定信号が出力されるので、出力波形信号は図14の入出力特性曲線Bに示すように、音源に基づく音波の入力レベルにかかわらず、常に低い出力レベルとなる。
【0127】
マイクロホン装置の正面側に音源がある場合には、位相比較器3からハイレベルの位相判定信号が出力されるので、出力波形信号は図14の入出力特性曲線Aに示すように、双指向性マイクロホン2に入力される音波の入力レベルに応じた出力レベルとなる。
【0128】
具体的には、たとえば、レベル検出器9での第一レベルを、運転席に座った人の通常の車内での声量以下に設定した場合、図14の(a)の範囲と(b)の範囲との関係で示すように(図14の入出力特性曲線Aの入力レベル(a)の範囲に対応する部分)、運転席に座った人の声を略一定のレベルにて出力することができる。なお、図14の(c)の範囲は、リニアアンプを使用した場合の出力レベル範囲である。図14で明らかなように、図14の(b)で示される出力レベルの範囲は、図14の(c)や(a)で示される範囲よりも狭くなっている。つまり、これはレベルが安定していると言える。
【0129】
また、第一レベル以下の音量の場合には、出力波形信号は、上記一定レベルよりも低いレベルで、かつ、入力レベルとリニアに変化するものとなる。
【0130】
以上のように、この実施の形態6に係るマイクロホン装置は、無指向性マイクロホン1が出力する波形信号と、双指向性マイクロホン2が出力する波形信号の位相の関係に基づいて、音源の相対方向を判断し、この判定結果に基づいて、正面側に音源がある場合にのみ、その音源からの音波に基づく出力波形信号を出力することができる。つまり、正面側に音源がある場合には、所定の大きさまでの音はリニアに出力し、それ以上の音量の音に対しては略一定のレベルで出力することができる。一方、背面側に音源がある場合には、きわめて低いレベルにしたり、全く出力しないようにすることができる。
【0131】
特に、第一レベルよりも音量が大きいときには、略一定の出力レベルとなるので、たとえば、頭の位置が動くなどして、運転席に座った人の声のレベルが変化したとしても、聞きやすい一定のレベルの音声信号として出力することができる。また、音声認識装置の音声入力信号としても好適に利用することができる。
【0132】
ところで、実施の形態6では、位相判定信号は実施の形態1と同じ構成になっているので、指向特性も実施の形態1の音源方向の判定と同じ範囲となる。
【0133】
この位相判定信号を得るまでの部分は、実施の形態1以外に、実施の形態2や、実施の形態3や、実施の形態4であっても構わない。この場合は、指向特性をより狭い範囲に限定したり、範囲を可変できたりする。
【0134】
【発明の効果】
本発明に係る音源方向判定装置では、複数のマイクロホンから出力される波形信号同士の位相関係に基づいて、音源の相対方向を判断することができる。
【0135】
また、本願の他の発明に係るマイクロホン装置では、複数のマイクロホンから出力される波形信号同士の位相関係に基づいて音源の相対方向を判断し、この判断結果に基づいて出力波形信号を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【図2】 各種のマイクロホン単体での指向特性を示す指向特性図である。(A)は無指向性マイクロホンの指向特性、(B)は双指向性マイクロホンの指向特性、(C)はハイパーカージオイドマイクロホンの指向特性、(D)は単一指向性マイクロホンの指向特性である。
【図3】 単一周波数の正弦波の音波を出力する音源からの音波を、速度型マイクロホンおよび圧力型マイクロホンにて受信した場合に、これらのマイクロホンから出力される波形信号を示す波形図である。
【図4】 図1の音源方向判定装置で使用した2つのマイクロホンの設置状態における指向特性を示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態2に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【図6】 図5の音源方向判定装置で使用した2つのマイクロホンの設置状態における指向特性を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態3に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【図8】 図7で使用した無指向性マイクロホンと、加算器で生成された波形信号の指向特性を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態4に係る音源方向判定装置を示す回路図である。
【図10】 図9で使用した無指向性マイクロホンと、加算器で生成された波形信号の信号特性を示す図である。
【図11】 本発明の実施の形態5に係るマイクロホン装置を示す回路図である。
【図12】 本発明の実施の形態6に係るマイクロホン装置を示す回路図である。
【図13】 図12中のレベル検出器の入出力特性を示す特性図である。
【図14】 図12のマイクロホン装置の入出力特性を示す特性図である。
【符号の説明】
1 無指向性マイクロホン
2 双指向性マイクロホン
3 位相比較器(判定手段)
4 増幅アンプ
5 ハイパーカージオイドマイクロホン
6 位相シフタ
7 加算器
8 電圧制御アンプ
9 レベル検出器
10 乗算器
Claims (4)
- 音源の方向によって出力される波形信号の位相が大きく変化する第一のマイクロホンと、
音源の方向によっては上記第一のマイクロホンとは異なる位相の波形信号を出力するマイクロホンであって、且つ、上記第一のマイクロホンと音波の波長に対して十分接近して配置された第二のマイクロホンと、
上記第一と第二のマイクロホンからそれぞれ出力される波形信号同士の位相を比較した結果に基づいて上記音源の方向を判定する判定手段と、を備え、
上記第一のマイクロホンとして、双指向特性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有するマイクロホンを使用するとともに、上記第一のマイクロホンの高感度側の方向を、装置の正面とは反対側の向きに設置したことを特徴とする音源方向判定装置。 - 前記第二のマイクロホンとして、無指向性マイクロホンを使用することを特徴とする請求項1記載の音源方向判定装置。
- 音源の方向によって出力される波形信号の位相が大きく変化する第一のマイクロホンと、
音源の方向によっては上記第一のマイクロホンとは異なる位相の波形信号を出力するマイクロホンであって、且つ、上記第一のマイクロホンと音波の波長に対して十分接近して配置された第二のマイクロホンと、
上記第一と第二のマイクロホンからそれぞれ出力される波形信号同士の位相を比較した結果に基づいて上記音源の方向を判定する判定手段と、
上記判定された音源の方向によって、波形信号の出力レベルを変化させる、出力レベル可変手段と、を備え、
上記第一のマイクロホンとして、双指向特性の正面側の感度と背面側の感度を異なるように変化させた指向特性を有するマイクロホンを使用するとともに、上記第一のマイクロホンの高感度側の方向を、装置の正面とは反対側の向きに設置したこと、を特徴とするマイクロホン装置。 - 音波に基づく波形信号のレベルを検出するレベル検出手段を設け、
前記出力レベル可変手段において、上記レベル検出手段の検出結果によっても出力レベルを変化させるようにしたこと、を特徴とする請求項3記載のマイクロホン装置。
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