JP4009921B2 - Frp製サンドイッチパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FRP製サンドイッチパネルに関し、とくに軽量で低コストのFRP製サンドイッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の構造体として用いるサンドイッチパネルには、たとえば発泡体や断熱材をコアに用いて、それを金属の板や木製の板で挟む構造を採っている。しかしながら、金属の板を使用する場合には剛性や強度は高いが、重量が重くまた組立に時間が掛かる欠点があった。一方、木製の板を使用する場合には、軽量ではあるものの剛性や強度が低いことが構造体として使う場合に難点であり、また木製であるため、湿気により杤ちることがあり寿命も極めて短い。
【0003】
これらの欠点を解決するために、金属に比べ比強度、比弾性率が高いFRPの板、特に炭素繊維を使用したCFRPの板が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
FRPのサンドイッチパネルについては、軽量かつ高強度、高剛性であることから種々の分野、特に土木・建材用途で使用されているが、サンドイッチパネルの成形のために、通常サンドイッチパネルの中に発泡体をコア材として使用している。通常コア材はウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、フェノールフォームなどの有機の発泡体が広く用いられているが、これらのフォーム材はいずれもポリマーに発泡剤を混入したものを原料に用いて製造する必要があるため、製造コストが高く付いており、これがサンドイッチパネルの製造コストを引き上げていた。
【0005】
また特に、近年低コストでかつ高強度のFRPを製造できる成形法として注目されている真空RTM法(Resin Transfer Molding)に使用するためには、コア材は真空の圧力に耐えることが必要であり、そのための高い圧縮強度を得るために、コア材の密度は高くならざるを得ず、通常の発泡体に比べさらにコストが高い上に重量も重いものを使用していた。従って結果的にそれを使用したサンドイッチパネルは、成形法としては低コストの方法を用いても、コア材の価格が高いために製造コストが高くなっていた。
【0006】
本発明の課題は、十分に高い機械的物性を備えた軽量のFRP製サンドイッチパネルを安価に製造することにあり、とくに屋根材等の建材用途に好適なFRP製サンドイッチパネルを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のFRP製サンドイッチパネルは、少なくとも一方にFRPを含む一対の板が間隙をもって配置され、該間隙に両板を接合するリブ構造体が介装されているFRP製サンドイッチパネルにおいて、中空の箱状物が、前記間隙の内部にて、前記箱状物の外周全面で前記両板および前記リブ構造体に接触するように配置されていることを特徴とするものからなる。
【0008】
このリブ構造体の材料には、FRP、金属、木材等を使用でき、リブ構造体は一対の板の成形と同時に配置し組み込むことが好ましい。
【0009】
前記一対の板間の間隙の寸法としては、板延在方向において、実質的に一定であってもよく、変化していてもよい。
【0010】
また、板自身の形状としては、単なる平板状のものでもよいが、たとえば、少なくとも一方の板が、山部と谷部が交互に配置された折板形状に形成されているものとすることもできる。この山部または/および谷部は、ある方向に直線状に延びるものの他、ピラミッド形等に立体的に形成されたものであってもよい。
【0011】
前記リブ構造体は、各種断面形状を採用できるが、さらに、トラスまたはラーメン構造体に構成することもできる。
【0012】
中空の箱状物としては、熱可塑性樹脂で作られたもの、熱硬化製樹脂で作られたもののいずれも使用できる。これら樹脂で作られた箱状物に強化繊維を巻き、サンドイッチパネル成形後には実質的にFRP製の箱状物が形成されるようにしてもよい。箱状物の表面に溝を形成しておけば、成形時に樹脂を拡散させることができる。また、箱状物の形状については、直方体形状の他、断面形状が台形のものも使用できる。
【0013】
また、本発明に係るFRP製サンドイッチパネルにおいては、耐火性をを向上するために、少なくとも一方の板のマトリックス樹脂がフェノール樹脂からなることが好ましい。さらに、少なくとも片面に、耐火材、たとえば耐火性の材料や耐火塗料からなる層を設けておくこともできる。
【0014】
さらに、本発明に係るFRP製サンドイッチパネルは、屋根材等の建材として好適に使用できるものである。その際、FRP製屋根材全体、あるいは屋根を構成するためのFRP製屋根材一単位全体について、立体的な形状に形成することが可能である。たとえば、少なくとも一方の板が、多面体状の立体形状部を有している構造や、少なくとも一方の板が、三次元曲面部をもつ立体形状部を有している構造とすることができる。またこれら立体形状部の両方をもつ構造とすることもできる。
【0016】
上記のような本発明に係るFRP製サンドイッチパネルにおいては、両板間の間隙に中空の箱状物が内包されるので、この箱状物もコア材および/またはリブとして機能してサンドイッチパネル全体の機械的物性を十分に高く確保しつつ、中空構造のため全体の軽量性も維持、あるいは他のリブ構造に比べ向上できる。そして、この中空の箱状物はサンドイッチパネル全体の成形前には単なる樹脂成形物でよいから、安価に製造できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明の基本技術思想について、本発明者らは、低コストかつ高い強度剛性を持つFRP製サンドイッチパネルを得るための最適なサンドイッチパネルの構造を鋭意検討した結果、サンドイッチパネルの板間の間隙に中空の箱状物を、コア材あるいはその一部の代わりに使用することによって、前述の課題を解決できることを見いだした。
【0018】
中空状の箱状物は成形の際にコア材の代わりに、FRP成形法として最も一般的なハンドレイアップ法でも用いることができる。さらに真空成形法においても中空状の箱状物の内圧が通常の空気圧と同じでよいので、全体を真空フィルム基材で覆って成形をする際にも、外気圧と圧力がつり合うことから、箱状物がつぶれることなく成形可能である。
【0019】
中空状の箱状物の素材は何であってもよいが、特に熱可塑性の樹脂を用いて、射出成形あるいはブロー成形によって製造されるものがコストの面から非常に有利である。さらに射出成形、あるいはブロー成形では所望の形状の中空箱状物が簡単に成形できる。従ってサンドイッチパネルの形状がどんなものであっても、中空の箱状物の形状を変えることによって作ることができる。例えば、サンドイッチパネルの間隙の寸法が変化しているものでも、また一方の板が山部と谷部が交互に配置された折板形状であっても、容易に作ることが可能である。
【0020】
中空の箱状物の大きさはどんなものであってもよいが、体積があまり小さいと、発泡体のコアに比べ軽量化効果が出にくく、したがって1,000cm3 以上のものが好適に用いられる。またあまり体積が大きいと構造上問題があるため、100,000cm3 以下が好ましい。
【0021】
発泡体のコアの代わりに用いる場合、その全部あるいは一部を中空の箱状物にすることによって、低コスト化が可能である。サンドイッチパネルの物性上の要求特性によっては、コア材として中空の箱状物と共に木材、コンクリートなどを使用することも可能である。
【0022】
本発明のサンドイッチパネルを形成する一対の板は、軽量化のために少なくとも一方がFRPを含む板である。この板の厚みとしては、0.6〜7mmが好ましい。0.6mm未満では所望の強度・剛性を得るのが難しいほか、衝撃によって板を貫通してしまうような傷が生じる可能性が高い。一方7mmを越えると、強度・剛性は十分であるが、重量の面で非常に重くなってしまう欠点がある。
【0023】
サンドイッチパネルに要求される各種特性によって、板としてはFRPと金属の一体構造の板も用いることができる。また、例えば、サンドイッチパネルを形成する板の内、下面はFRP、上面は耐火性の要求から金属、コンクリート、モルタルなどの不燃材で形成することも、可能である。
【0024】
FRPの強化繊維としてはガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが通常用いられる。軽量・高強度のFRPを得るためには、炭素繊維が最も好ましいが、コストとのバランスを取るため、ガラス繊維/炭素繊維のハイブリッドのものも好ましい。また用いられる繊維の形態としては、クロス、マット、ストランドなどを好適に用いることができる。さらに用いる炭素繊維の種類は、炭素繊維の高い強度・剛性を考えると、どんなものでもよいが、より低コストを考えると、いわゆるラージ・トウの炭素繊維を用いるのが最も好ましい。
【0025】
たとえば、炭素繊維糸1本のフィラメント数が通常の10,000本未満のものではなく、10,000〜300,000本の範囲、より好ましくは50,000〜150,000本の範囲にあるトウ状の炭素繊維フィラメント糸を使用する方が、樹脂の含浸性、強化繊維基材としての取扱い性、さらには強化繊維基材の経済性において、より優れるため、好ましい。またFRP構造体の表面に炭素繊維の織物を配置すると、表面の意匠性が高められ、より好ましい。また、必要に応じて、あるいは要求される機械特性等に応じて、強化繊維の層を複数層に積層して強化繊維基材を形成し、その強化繊維基材に樹脂を含浸する。積層する強化繊維層には、一方向に引き揃えた繊維層や織物層を適宜積層でき、その繊維配向方向も、要求される強度の方向に応じて適宜選択できる。
【0026】
また、FRPの樹脂としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが好適に用いられるが、特に建築材料・土木材料用途では、燃焼性の規格があるため、フェノール樹脂が最も好適に用いられる。
【0027】
サンドイッチパネルの構造としては、一対の板がある間隙をもって配置され、その間隙に上下の板を接合するリブ構造体があり、中空の箱状物が、前記間隙の内部にて、前記箱状物の外周全面で前記両板および前記リブ構造体に接触するように配置されていればどんな構造でもよい。また少なくとも一方の板が、山部と谷部が交互に配置された折板形状をしているサンドイッチパネルも用途によっては好適に用いられる。
【0028】
一対の板の形状としては用途に応じて、平板形状、波板形状などを使い分けることができる。また一対の板の間隔も、実質的に一定であるものの他、間隔が変化していても何ら問題はない。
【0029】
リブの形状も一対の板からいずれも垂直に延びて一対の板を繋いでいる構造を取れる他、トラス構造、ラーメン構造のリブ構造でもよい。
【0030】
本サンドイッチパネルを建築材料用途などに用いる場合には、耐火性の要求から少なくとも片面に耐火材が設けられていてもよい。耐火材としては、ロックウール成形板、樹脂発泡体、ロックウールのフェルト材、セラミックファイバーのフェルト材、耐火性塗料、発泡性塗料、耐火性シーラントなど、あるいはそれらの組み合わせたものが好適に用いられる。
【0031】
本発明のサンドイッチパネルの製造方法を以下に順を追って説明する。
(1)成形型上に強化繊維を配置する。この時強化繊維を配置する方法としては、繊維をそのまま型上に置く方法もあるが、製造の効率化からあらかじめクロスとした繊維を配置した方が好ましい。
【0032】
(2)強化繊維を巻いた中空の箱状物を強化繊維状に配置する。中空の箱状物はサンドイッチパネルの所望の形状に合わせて、ブロー成形あるいは射出成形などで成形されたものを用いることができる。また中空の箱状物の間には樹脂注入後リブとなるように強化繊維を挿入してもよい。強化繊維を挿入せずに、箱状物に巻いた強化繊維をリブとしてもよい。サンドイッチパネルの物性に応じてコア材については中空の箱状物のみでなく、有機の発泡体、木材、コンクリートなどを中空の箱状物と組み合わせて使用してもよい。
【0033】
(3)さらにサンドイッチパネルの上面になる強化繊維を配置する。
【0034】
(4)成形体全体を真空用フィルム基材で覆う。
【0035】
(5)覆われた内部を真空とする。
【0036】
(6)内部に樹脂を注入して強化繊維に含浸させる。この時含浸の補助手段として、中空の箱状物あるいはそれと合わせて使用するコア材の少なくとも一面に、樹脂の通り道となる溝を切ったものを用いてもよい。成形体が大型になると特にこのような樹脂含浸の補助手段が有効である。
【0037】
(7)樹脂を硬化させた後、脱型する。硬化には必要に応じて熱を与えてもよい。また脱型後にアフターキュアとしてさらに熱を加えてもよい。
【0038】
以下、本発明のより具体的な実施態様を図を用いて説明する。
図1は本発明の一実施態様を示したものである。サンドイッチパネル1は、上下の板2および、リブ3によって形成されたサンドイッチパネルの中に中空の箱状物4が包含されている。リブ3と中空箱状物4の側壁は一体成形されてもよい。
【0039】
図2は本発明の別の実施態様を示したものである。折板形状に賦形されたサンドイッチパネル11の上下の板12、およびリブ13によって形成されたサンドイッチパネル11の中に、中空の箱状物14が包含されている。リブ13と中空箱状物14の側壁は一体成形されてもよい。
【0040】
図3は本発明のさらに別の実施態様を示したものである。サンドイッチパネル21の上下の板22とリブ23、中空の箱状物24とおよびウレタン発泡体のコア25のサンドイッチパネル21の片面に耐火材26の層が形成されている。
【0041】
図4は本発明の中空の箱状物の一形態を示したものである。図4に示す中空箱状物31の表面(図示例では上下面)には、溝32が形成されており、成形の際の樹脂の流路として機能できるようになっている。
【0042】
図5は、サンドイッチパネル41の一対の板42a、42bのうちの一方の板42aが折板構造を有し、両板の間隙が板延在方向に変化している例を示している。43はリブ、44は中空箱状物を示している。リブ43と中空箱状物44の側壁は一体成形されてもよい。
【0043】
図6に示すサンドイッチパネル51では、一対の板52a、52b間に、リブ構造体としてトラス構造体53が設けられている。そして、内部の適当な位置に、中空の箱状物54とコア55が設けられた例を示している。
【0044】
さらに図7は、サンドイッチパネル61が全体として種々の形状を採り得ることを示しており、図示例ではピラミッド状に形成された部分62が連接された形状になっている。
【0045】
とくに図8に示すような半円形状に賦形されたサンドイッチパネル71とすることにより、屋根材として使用する上で、より好適なものとなる。図7において、72は一対の板、73はリブ、74は中空箱状物を示している。
【0046】
このように、本発明に係るFRPサンドイッチパネルは種々の形態を採り得る。とくに屋根材等の建材に好適な種々の形態とすることができ、かつ、前述の如く軽量でありながら十分な機械的物性を備えることができ、しかも安価に製造できる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のFRP製サンドイッチパネルによれば、低コストでかつ十分な物性を備えたサンドイッチパネルが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分断面図である。
【図2】本発明の別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分断面図である。
【図3】本発明のさらに別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分断面図である。
【図4】中空箱状物の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明のさらに別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分断面図である。
【図7】本発明のさらに別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの部分斜視図である。
【図8】本発明のさらに別の実施態様に係るFRP製サンドイッチパネルの斜視断面図である。
【符号の説明】
1、11、21、41、51、61、71 FRP製サンドイッチパネル
2、12、22、42a、42b、52a、52b、72 板
3、13、23、43、73 リブ
4、14、24、44、54、74 中空箱状物
25、55 コア
26 耐火材
53 トラス構造体
62 ピラミッド部分
Claims (16)
- 少なくとも一方にFRPを含む一対の板が間隙をもって配置され、該間隙に両板を接合するリブ構造体が介装されているFRP製サンドイッチパネルにおいて、中空の箱状物が、前記間隙の内部にて、前記箱状物の外周全面で前記両板および前記リブ構造体に接触するように配置されていることを特徴とするFRP製サンドイッチパネル。
- 前記間隙の寸法が、板延在方向において実質的に一定である、請求項1のFRP製サンドイッチパネル。
- 前記間隙の寸法が、板延在方向において変化している、請求項1のFRP製サンドイッチパネル。
- 少なくとも一方の板が、山部と谷部が交互に配置された折板形状に形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物が熱可塑性樹脂で作られていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物が熱硬化性樹脂で作られていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物の体積が、1000cm3 以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 少なくとも一方の板のマトリックス樹脂がフェノール樹脂であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 少なくとも一方の板のFRPの強化繊維として炭素繊維を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 強化繊維が、フィラメント数が10,000〜300,000本の範囲にあるトウ状の炭素繊維フィラメント糸を有することを特徴とする、請求項9のFRP製サンドイッチパネル。
- 前記リブ構造体がトラスまたはラーメン構造体からなる請求項1〜10のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 少なくとも片面に耐火材が設けられていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物が直方体である、請求項1〜12のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物の断面形状が台形である、請求項1〜12のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 中空の箱状物のいずれか一つの表面に溝を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネル。
- 請求項1〜15のいずれかに記載のFRP製サンドイッチパネルを用いてなるFRP製屋根材。
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